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東大総長選考はどう変わったか―2020年の検証,2021年報告書と2026年の制度比較(AI作成)

第1 比較の結論と資料の読み方

東大総長選考を2020年と2026年で比べる場合,最も注意すべき点は,意向投票の回数を決める仕組みが異なることである。
2020年当時の過半数獲得まで投票を繰り返す方式を,2026年の選考へそのまま当てはめることはできない。
また,候補者名の公開,会議内の表決,監事の陪席及び記録の取扱いにも,現行規程から確認できる違いがある。

本記事は2026年10月3日を確認日とし,2020年の選考結果公表資料と検証報告書,2021年の報告書,2022~2025年の改正資料・議事録,現在の規程及び2026年の選考手順・評価項目の活用方法を照合したものである。
報告書の提言があること,その後の規程に対応する記載があること,実際の選考でその規程が適切に運用されたことは,別々に確かめる必要がある。
現在の制度全体は,東大総長選考の仕組み―誰が決めるのか,意向投票の資格・回数と選考・監察会議に整理している。

第2 2020年の選考と検証は何を扱ったか

1 藤井輝夫氏の選出と意向投票

東京大学の2020年公表資料によれば,第2次候補者は染谷隆夫氏,永井良三氏,藤井輝夫氏の3人であり,9月30日の意向投票ではそれぞれ635票,232票,951票であった。
白票251票を除いた有効投票は1818票で,藤井氏はその過半数を得た。
総長選考会議は10月2日に藤井氏を次期総長予定者に決定した。

2026年のように最多得票者と異なる者が選ばれた事例とは,結果の関係が違う。
それでも2020年に検証が行われたことは,選考過程の妥当性が,最終的な得票順との一致だけでは判断できないことを考える材料になる。

2 決定の成立と運営上の問題を区別する

2020年12月11日付け検証報告書は,藤井氏を予定者とした決定の成立を肯定する一方,第2次候補者選定時の議事運営,議事要旨,録音データ等について問題又は課題を指摘している。
検証の中心となった9月7日の会議内投票は,9月30日の学内意向投票とは別の手続である。
報告書が検証した会議内の投票を,教職員が行った意向投票の回数として数えるべきではない。

同報告書は,提供資料と聴き取り等に基づく検証の範囲及び前提も明示している。
したがって,報告書の結論を裁判所の判決と同視したり,選考に関係するすべての事情が解明されたと広げたりすることはできない。
制度を比較する上では,結果の成立に関する評価と,次回以降へ向けた運営改善の意見を分けて読むのが適切である。

第3 2021~2025年の改正経緯

改正経緯は,①2021年の検証後の提言,②2022年の組織・会議運営の整備,③2023~2024年の運用上の補正と法改正対応,④2025年の次期総長選考手順の見直し,という順に読む必要がある。
意向投票を現在の1回又は2回の方式に変えた正式な決定日は,2025年12月1日である。
2021年の報告書が出た時点で,その方式が決定していたわけではない。

時期決定・検討の段階内容と区別すべき点
2021年3月・11月報告書による提言運営・委員選出・構成員参画の課題を整理
2022年3月,4月施行組織・会議運営の規程整備無記名表決,記録,委員選出・任期など。投票回数変更は未完了
2023年3月運営了解事項の補正人事資料の非公開,陪席者,書面審議の条件を明確化
2024年1月・9月中間評価・運営方針会議への対応必須表決事項と会議の職務を調整
2025年6月・7月投票方式の複数案と再検討回数削減案を検討後,従来方式維持案も提示。正式決定ではない
2025年8月意見募集に出す案の取りまとめ3人なら1回,4人以上なら2回という案
2025年9月・10月学内パブリックコメント職員の参画拡大,投票の位置付け等への意見を検討
2025年12月1日内規・細則の改正決定・施行各15票賛成で成立。情報公開・参画拡大・総合考慮も整備

1 2021年―提言と国立大学法人法の改正

2021年3月のタスクフォース報告書は,2020年の検証を受け,委員の任期・選出,議事運営,情報提供及び意向投票の位置付けを検討した。
選考会議の主体的判断と構成員の参画をどう両立させるかが課題とされた。意向投票を残すだけでは,その重みや考慮方法の説明まで済んだことにはならない。
同報告書には,投票結果と異なる者を選ぶ場合の丁寧な説明を求めるアンケート意見もある。しかし,回答者の意見,報告書の提言,実際に成立した規程上の義務は区別しなければならない。

2021年11月の組織検討ワーキンググループ最終報告は,学内委員の輪番による選出,任期と審議の継続性,学外委員の選出手続・独立性・多様性などを整理した。
この組織検討と,後述する2025年の学内ワーキング・グループによる選考手順の検討は,時期も役割も異なる。

並行して,令和3年法律第41号が2021年5月21日に公布され,関係規定は2022年4月1日に施行された。
国立大学法人法上の会議名称が学長選考・監察会議へ改められ,学長の職務執行状況について報告を求める規定などが整備された。東大内部の検証後の改革と,全国の国立大学法人に関わる法改正を,一つの決定と扱うべきではない。

2 2022年―選考手順より先に組織と会議運営を整備

2022年1月21日の議事要旨は,規則等の改正案について学内の意見を聴き,3月に最終案を審議する方針を記録している。
同年3月16日の議事要旨では,2月の学内意見聴取を踏まえた案について,議長等を除く投票者12名が,それぞれ賛成12票・反対0票で改正・決定したことを確認できる。
内規の附則では,この改正の施行日は4月1日とされている。

ここで整えられたのは,重要事項の無記名表決,議決要件の確認,議長の任期・選出,監事の陪席,議事要旨・議事録・音声記録と公開の取扱いなど,会議を適正に運営するためのルールである。
3月16日の議事要旨は,録音データを法人文書管理規則に基づいて扱い,保存期間が満了したものは廃棄することも確認している。記録を作成するルールを整備したことは,永久保存や一般公開を定めたことと同じではない。
3月25日付けの退任議長の所感も,緊急に整えるべき会議運営の事項を優先し,総長の選考プロセス自体の見直しは次期会議へ引き継いだことを説明している。
したがって,2022年4月に意向投票の回数変更まで完了したという理解は正確でない。

委員を選ぶ側の手続も整備された。教育研究評議会の委員選出内規は3月15日,経営協議会の委員選出内規は3月16日に可決され,いずれも4月1日施行となった。
学内側は教育研究分野・部局の多様性を確保する輪番と3年間の選出期間を定めた。学外側は学外委員から成る推薦委員会,選考理由を付した候補者リスト,利益相反に関する基準などを設けた。
会議規則の3月24日改正・4月1日施行では,名称と職務の整備に加え,学内委員の任期3年,学外委員の任期2年・再任を含め通算6年以内という仕組みが確認できる。
総長候補者の選び方と,候補者を選考する委員自身の選び方は別の制度だが,後者の透明性・独立性も選考への信頼に関わる。

3 2023~2024年―運用上の補正と運営方針会議への対応

2023年3月15日の議事録のPDF4頁~5頁と同日の配付資料のPDF8頁~10頁からは,初年度の運営を踏まえ,運営了解事項を次のように修正したことが分かる。
①人事に関する意見交換では,議事録に加え配付資料も個別の承認を要せず非公開とする一方,非公開の旨と理由を公表する。
②議長が必要と認め,会議が承認した者を陪席させられるようにする。
③対面・オンラインでの審議を原則としつつ,必要な場合の書面・電子メール審議について,審議事項の事前提示と委員に異議がないことの確認を定める。
これは記録を廃止する改正ではなく,作成する記録と公開する範囲を分け,例外的な会議運営の条件を明らかにした改正である。

2024年1月24日の議事録のPDF10頁~11頁では,総長の中間評価結果を内規3条の必須表決事項から外す改正が,賛成11票で決定された。
理由は,評価文書を継続的な協議で作り上げる性質と,最後に改めて表決する扱いが適合しないというものである。中間評価そのものを廃止したという意味ではない。

同年は運営方針会議の導入に伴う改正もあった。9月18日の議事録のPDF3頁~4頁は,運営方針委員の選任・解任・任期に関する事項を表決事項へ加える内規案が賛成12票で承認されたことを記録する。
会議規則等の改正は9月26日,施行は10月1日である。この改正は運営方針会議に関する職務を整えるものであり,意向投票の回数を変える改正とは区別する必要がある。

4 2025年前半―意見聴取と投票方式の複数案

3月18日には,教育研究評議会の議事要旨のPDF1頁~2頁に記載されたとおり,運営方針委員である部局長の取扱いの明確化や,公共政策学連携研究部を含む委員選出制度の整備が行われた。関係内規の附則では4月1日施行である。
これは,後の代議員会に関する細則改正とは別の,選考・監察会議の学内委員を選ぶ側の改正である。

次期総長の選考手順については,3月4日~25日に科所長へのアンケートが行われ,4月16日の会議に集計結果と依頼文が提出された。
部局長等に対する意見聴取であり,学生・教職員全体の多数意思を測った調査と同視することはできない。

6月20日の議事録のPDF7頁~16頁では,1回だけの投票,2回目を上位2人又は3人に絞る方式,候補者を減らさず再投票する方式,順位に点数を付ける方式などが検討されている。
学内の支持を把握する意義がある一方,過半数獲得まで繰り返せば,選考・監察会議が自ら比較判断する余地を事実上狭めかねないという点が論点となった。
この段階の説明を,最終的に採用された方式として紹介してはいけない。

5 2025年7月・8月―従来方式の維持案から再検討へ

7月22日の議事録のPDF11頁~23頁では,学内ワーキング・グループが,従来の過半数獲得まで繰り返す方式を維持する方向を提示した。
その理由として,6年間の総長のリーダーシップを学内の支持で支えること,従来方式との連続性,構成員への説明のしやすさなどが挙げられた。
しかし,過半数を得る者を作り出すまで投票すると,会議の主体的選考が形骸化するのではないか,過半数の支持とリーダーシップを直結させてよいのか,という指摘も出た。結論をその場で確定せず,学内ワーキング・グループが再検討することとなった。

8月27日の議事録のPDF11頁~22頁では,再検討された複数案から,第2次候補者3人なら1回,4人以上なら2回,2回目は上位3人及び末位同数者という案を,意見募集に出す会議の案として取りまとめた。
候補者が多い場合に,候補者数が異なる条件で構成員の支持を把握し,選考のための情報を得るという説明である。過半数の獲得を2回目実施の条件にすると,その候補者を選ぶべきだという心理的な圧力が生じるとの議論もあった。
そのため,最終案は過半数の有無ではなく,候補者数によって回数を決める書き方となった。ただし,8月の取りまとめは意見募集のための案であり,規程の正式な改正決定は12月1日である。

6 2025年9月・10月―パブリックコメントで何が変わったか

9月25日~10月8日には,教職員と学生を対象に,学内のパブリックコメントが実施された。10月31日の公表用報告のPDF10頁~14頁によれば,回答者は36名で,教職員20名,学生16名であった。
職員・学生の参画を広げる意見,意向投票の最大限の尊重を求める意見,廃止を求める意見,投票の位置付けの透明な説明を求める意見など,方向の異なる意見が寄せられている。自由に回答した人の意見であって,この人数や分類を大学全体の賛否の割合として扱うことはできない。

12月1日の変更点資料のPDF15頁は,運営方針会議とパブリックコメントの意見等を踏まえた8月案からの変更を明示している。
意向投票の職員資格は,当初の部長級・各部局事務組織の長から,部長級・事務系の課長級職員へ広げられた。総長予定者を決める際の考慮資料を列記し,総合的に考慮する旨も明文化された。
一方,全ての教職員・学生に投票権を与える案や,過半数獲得まで投票を続ける案は,成立した細則の内容ではない。意見が提出されたことと,その意見が採用されたことを区別する必要がある。

7 2025年12月1日―正式決定された変更の内容

12月1日の議事録のPDF15頁~16頁によれば,議長を除く15名の無記名投票で,内規改正・細則改正とも賛成15票・反対0票となった。
内規は3分の2以上,細則は過半数という議決要件をそれぞれ満たし,改正が決定された。内規の附則は同日施行とし,細則の改正履歴も12月1日の改正を記載している。

同日の改正概要・新旧対照表では,主な変更を次のように整理できる。ここではPDF全体の頁数を用い,文書内の通し番号とは区別する。
①意向投票は,過半数獲得まで繰り返す方式から,候補者数に応じ1回又は2回とする方式へ変更した。4人以上の場合は,1回目に過半数を得る者がいても2回行う。2回目の対象外になった候補者を,それだけで総長予定者の選考対象から外す規定ではない。
②代議員会・経営協議会は第1次候補者を推薦し,選考・監察会議が審議・表決して第1次候補者を決定する,という役割を明確にした。推薦される本人の辞退確認や,推薦された選考・監察会議委員の審議参加制限も整備した。
③代議員会から推薦する者の氏名・得票数,経営協議会から推薦する者の氏名,第1次候補者として決定した者の氏名,第2次候補者の氏名・提出資料等の公表を整備した。意向投票については,全回の得票数と白票数を公表する扱いを明確にした。
④動画による所信表明の機会を設け,学生・教職員から集めた共通質問を取り入れる手順を整えた。2025年の検討資料が想定した動画の提供先は学内構成員と経営協議会であり,候補者氏名・提出資料の一般公開と,動画の提供範囲を混同すべきではない。
⑤代議員を選出する部局に公共政策学連携研究部を加え,学部を有する研究科から選ぶ教授会構成員以外の代議員を1名増やして2名とした。意向投票には部長級・事務系の課長級職員を加えた。
⑥総長像に照らし,候補者資料等,推薦書,調査,所信表明,意向投票の結果を総合的に考慮して予定者を決定することを明記した。意向投票は学内の信頼・支持を把握する材料として存続するが,その得票順で予定者を自動的に決める制度にはしていない。

このほか,求められる総長像の決定を必須表決事項から外した。継続的な議論で作り上げる性質を理由とするもので,総長像を定めること自体の廃止ではない。
オンライン投票を前提とする文言の整理,本部事務組織の代議員数6人の明記も行われた。ただし,オンライン投票が初めて導入されたという意味ではなく,本部の代議員が1人から6人へ実質的に増えたという意味でもない。改正概要は,本部の代議員が従前から6人だったことを説明している。
根拠は同資料のPDF22頁,41頁~42頁,58頁~59頁である。

8 決定済みの規程と引き続き検討された細部

12月1日に内規・細則が改正された一方,同日の議事録のPDF17頁以降では,第2次候補者を3人~5人に絞る具体的な協議手順は,引き続き検討する事項として扱われている。
内規上,あらかじめ手順を定めて実施する枠組みを整えたことと,その細部の全てを同日に決めたことは同じではない。

以上から読み取れる制度上の意味は,学内の参画と情報提供を拡大しながら,意向投票を選考材料として扱い,最終的な比較判断は選考・監察会議が負うという整理である。
ただし,投票回数を減らし主体的判断を明確にしたからこそ,実際の選考では,意向投票をどう評価し,他の材料とどう比較したかを説明することが一層重要になる。これは改正資料を踏まえた本記事の考察であり,特定の説明文言がそのまま法的義務になったと述べるものではない。

第4 現在の規程から確認できる具体的な違い

1 意向投票は過半数方式から候補者数に応じた方式へ

2020年当時,過半数獲得まで投票を繰り返す方式であったことは,検証報告書17頁及びタスクフォース報告書15頁で確認できる。
これに対し,現行細則5項では,第2次候補者3人なら1回,4人以上なら2回であり,2回目は上位3人及び3位同数の者を対象とする。
過半数を得た候補者がいないことを2回目実施の条件とはしていない。

2026年は第2次候補者が5人だったため2回行われ,2回目の最多得票者は染谷氏であった。
一方,2020年は3人の候補者について藤井氏が1回で有効投票の過半数を得た。
実施された回数だけを並べるより,回数を決める条件と,得票率の分母まで確認することが重要である。

2 候補者名の公開と所信表明

2020年検証報告書25頁~27頁は,当時の第1次候補者の氏名の取扱いと,第2次候補者の氏名等を学内限りとした通知を検討している。
現在の内規11条・13条・14条は,第1次候補者の氏名の公表,第2次候補者の氏名の告示と候補者資料等の公開,動画による所信表明の機会を定めている。
候補者を知るための情報公開と,人事に関する会議審議の公開は,対象が異なる。

この違いから,候補者の情報が公開される範囲は広がったといえる。
しかし,候補者名や資料を公開しただけで,最終的な候補者間の比較理由まで説明したことにはならない。
情報へのアクセスと,結論を理解できる説明の有無を別の項目として確認する必要がある。

3 表決,監事及び記録のルール

現行内規3条は,候補者・予定者の決定を表決事項として列挙し,議長を除く出席委員による無記名投票と,方法・議決要件の確認を定める。
同5条は原則として監事を陪席させ,議事進行の適正性について意見を述べる機会を設ける。
監事が候補者の優劣を決定する制度ではなく,手続の適正性を確認する仕組みとして位置付けられている。

運営了解事項1項・2項には,議事要旨,議事録及び音声による記録と,公開・非公開の区別がある。
記録を作成することと,一般に公開することは同じではない。
人事に関する意見交換の議事録・配付資料には非公開の取扱いがあり,音声記録も公開しないため,記録が存在することから全文公開の義務までは導けない。

比較する事項2020年資料で確認した取扱い現行規程で確認した取扱い
意向投票有効投票の過半数を得るまで繰り返す3人なら1回,4人以上なら2回
第1次候補者氏名学内を含め一般には発表しない取扱い決定後,速やかに氏名を公表
第2次候補者情報学内限りとする通知を検証氏名の告示,資料の公開,動画の所信表明
会議の表決・監事議事運営と検証可能性が課題となった表決事項・方法,監事の陪席と意見機会を明文化
記録と公開議事要旨の内容・音声データの取扱いを検証議事要旨・議事録・音声記録と公開例外を規定

この表は,確認した過去の取扱いと現在の規程の比較である。
主要な変更の決定日・理由は第3に整理した。ただし,規程の改正を確認できたことから,個々の選考で規程どおりの運用がすべて実施されたとまでは認定できない。

第5 2026年の絞り込み・表決・評価資料の比較方法

1 第1次候補者9人からの絞り込みと8月13日の手順変更

7月1日に公表された第1次候補者は9人であった。その後,宮園浩平氏から7月30日付けで辞退の申入れがあったことが公表されたため,公表資料を対応させると,残る候補者は8人となる。
根拠は,第1次候補者一覧と辞退のお知らせである。

ここで注意すべきなのは,選考開始時に掲載された3月13日付けの手順と,8月の面接・選定時の手順が同じではないことである。
前者では委員が適任者3人を選択するが,8月12日~13日の書面審議で2人に変更された。8月17日議事要旨は,第1次候補者の人数を踏まえた変更であり,8月13日付けの改訂であると説明する。
したがって,最初に掲載された3月の文書だけを見て,8月の選定を「委員1人が3人を選ぶ方式」と説明するのは正確でない。

改訂後の8月17日配付資料のPDF2頁による基本的な流れは,次のとおりである。
①多様性その他の考慮事項を検討する。
②各委員が無記名投票で適任者2人を選ぶ。
③得票上位3人を基本の適任者とする。3位同票によって上位者が4人以上になる場合の扱いは協議する。
④多様性の観点から追加が必要かを検討し,必要と判断した場合は追加者について無記名投票を行う。
⑤追加投票の結果も踏まえて協議し,合計5人を上限として適任者を選び,別に正式な表決を行って第2次候補者を決める。

つまり,「1人の委員が選ぶ人数は2人」と「基本的に選出する人数は上位3人」は別である。また,上位5人を単純に得票順で採用する方式とも異なる。
ただし,手順書自体が,基本の流れによらない場合にはその都度協議して扱いを決めるとしている。書面上の基本手順を確認できたことから,2026年の各段階でその手順が例外なく実施されたとまでは認定できない。

2 協議中の投票と第2次候補者を決める表決を分ける

同じ手順書は,協議を進めるために委員の意見の分布を確認する投票と,第2次候補者を正式に決める表決を区別する。
前者には議長も参加できるが,後者では内規3条2項により議長は投票できない。議長が何らかの投票に参加したという事実だけでは,正式表決の規程違反があったことにはならず,どちらの投票であるかの確認が必要である。

8月18日議事要旨は,手順書の説明,出席委員間の協議,正式な表決という順序を記載する。議長を除く出席委員15人の無記名投票で,賛成15人・反対0人により,大越慎一氏,菅野暁氏,染谷隆夫氏,藤垣裕子氏及び山本隆司氏の5人を第2次候補者とすることが議決された。
これは5人を第2次候補者とする決定に対する賛否であり,5人の誰を最終的な総長予定者にするかについての候補者別得票ではない。

同議事要旨からは,協議段階の投票の回数・各候補者の票数,当初の上位3人の氏名,追加者として選ばれた者の氏名,多様性をどう具体化したか,例外手順を採ったかまでは確認できない。
したがって,藤垣氏が多様性を理由に追加されたとか,性別が追加又は最終選出を決めたという推測は,この資料からは導けない。
また,基本の手順書に追加投票の段階があることと,実際に追加投票が何回行われたかを確認できることも区別する必要がある。

3 意向投票の2回と9月28日の最終表決の回数は別である

確認できる投票・表決を整理すると,次のようになる。

段階投票者・目的確認できる数字確認できない内容
第2次候補者を絞る協議選考・監察会議委員の意見分布を把握手順上は1人2人を選び,上位3人を基本とする実際の投票回数,各候補者の票数,追加の経緯
8月18日の正式表決議長を除く出席委員が第2次候補者を決定15人による賛成15・反対0候補者別の順位・得票はこの数字から判定できない
9月28日の学内意向投票学内の有資格者が候補者に単記投票2回実施。第2回は染谷1107,藤垣553,山本451,白票58誰の票が誰へ移ったかという個人別の動き
9月28日の総長予定者決定選考・監察会議が総合判断し正式表決藤垣氏を総長予定者とした結論最終表決の回数,候補者別票数又は賛否数,白票等の内訳

制度上,総長予定者の決定も内規3条1項3号・2項の正式表決事項であり,議長を除く出席委員の無記名投票による。内規2条2項は,通常の議決を議長を除く出席委員の過半数で決し,可否同数の場合は議長が決すると定める。
ただし,この規程を読むことから,9月28日に何人が正式表決に参加し,どの選択肢について何回投票したか,実際に何票で決まったかまでは分からない。「正式表決に議長は投票しない」と「議長は同数の場合も何も決められない」を同一視することもできない。

2026年10月3日に確認した令和8年度の活動状況一覧では,9月28日の第12回会議資料は掲載されているが,同会議の議事要旨・議事録へのリンクは確認できなかった。
当日の配付資料には通知案や公表案が含まれ,PDF9頁~10頁の公表イメージでは予定者名や得票数が未記入である。PDF13頁にある賛成15・反対0は8月18日の議事要旨案の記載であり,9月28日の最終表決の結果ではない。
これらの案や参考資料を,実施後の議決記録として扱うべきではない。確定した選考結果・意向投票結果は,別に公表された選考結果・理由・過程で確認する。

補助的な情報として,東大新聞の9月29日会見報道は,議長の説明として,意向投票の受け止め方等を協議し,各候補者の強み・弱みを議論した後,単記無記名投票で委員の意思確認を繰り返し,最終の評決に至った旨を伝えている。
これは会見についての二次資料であり,正式な議事録を独立に確認したものではない。同記事にも具体的な回数・票数は示されておらず,「意思確認を繰り返した」ことを「最終表決を複数回実施した」ことに置き換えることはできない。

4 評価項目22項目は点数を合算する選考方式ではない

3月13日決定の重点ポイント・評価項目は,総長像の前文と5つの資質等を,6つの重点ポイントと22の評価項目に整理する。表には「※評価の参考にのみ活用される」と明記されている。
評価軸には,品位・学識,国際的視野と改革実行力,組織運営とガバナンス能力,財務基盤強化と経営能力等があり,構成員の支持と合意形成もその中に位置付けられる。
しかし,この表自体には各項目の配点,必須の最低点,意向投票を点数に換算する式は示されていない。

さらに,3月13日議事録のPDF10頁~15頁は,表の使い方を具体的に議論している。
PDF14頁では,説明した委員が,委員個人による点付けの可能性と,会議全体として点数で選ぶ方式を区別し,後者ではないという理解を示した。議長も,項目ごとに点数を付けて足し上げる機械的な方式ではなく,着目すべき視点を示すものであり,重点の置き方には委員間で違いがあるという理解を示している。
PDF15頁では,重点ポイント・評価項目とその活用方法を決定し,公示時に公表するとともに,第1次候補者へ資料提出を求める際にも提供するとされた。

この議事録から確認できるのは,選考前に,評価表を共通の着眼点として使い,委員の異なる重点を踏まえて協議する設計が示されていたことである。
「統一の採点表が公開されていない」ことと,「公表済みの統一採点表に反して結論を出した」ことは別である。また,委員個人が何らかの採点をした可能性まで否定できない。
一方,この設計を確認しても,9月の審議でどの評価軸を最終的に優先し,どの資料を根拠に候補者間の優劣を判断したかまでは確定できない。

5 意向投票と他の資料をどう比較したかについて分かる範囲

内規16条は,総長像に照らし,候補者資料等,推薦書,面接を含む調査,所信表明及び意向投票結果を総合的に考慮すると定める。意向投票に一定の配点を与えて他の資料の点数と足し算することは定めていない。
また,意向投票で第1回の上位3人が第2回の投票対象になることから,最終選考の対象も当然にその3人だけに限定されたとはいえない。細則5項(2)は第2回意向投票の対象を定めるものであり,内規16条の総合判断の対象を同じように限定する規定ではない。

資料ごとの役割も同じではない。公表された候補者資料・所見は経歴や将来構想を示し,推薦書・面接調査は選考会議側の判断材料となる。学内構成員が視聴する所信表明動画と意向投票は,候補者の発信と構成員の選好を結ぶ材料である。
8月18日配付資料のPDF4頁にある候補者への通知案では,動画は約10分の所信表明と約5分の共通質問への回答から構成し,教育研究のための人材・環境と,構成員の大学運営・意思決定への参画という2つの共通質問を設ける予定が示されている。
ただし,これは予定の確認であり,実際の全候補者の動画内容・回答を視聴して比較したものではない。

最終的な公式公表理由のPDF1頁~2頁では,学術への信頼回復,文理融合,学内外のコミュニケーション及び国際経験が藤垣氏の評価として示されている。9月29日付けの議長メッセージも,意向投票の最多得票者とは異なる者を選んだことを認め,複数資料と協議による判断であると説明する。
これらから読み取れるのは,信頼・ガバナンス,分野を超えた連携,国際性と変革力を重視する理由の骨格である。どの文書のどの記述又は面接回答が決め手となったか,染谷氏・山本氏等との比較で何を優先したか,554票の差をどう評価したかは示されていない。
したがって,意向投票を考慮したとの公表上の説明は確認できるが,その比較衡量を公開資料だけで再現することはできない。

6 説明の充実に必要なのは比較判断の筋道である

今回の追加調査により,絞り込みの基本手順と8月の改訂,正式表決と協議中投票の区別,評価表を機械的な採点表としない設計までは確認できた。候補者名・投票結果・選考理由の公表に加え,これらの資料が検証の手掛かりとなる。
他方,9月28日配付資料のPDF1頁は,資料3-2「総長予定者の選考に係る資料」を非公開としている。ここに何が記録されているかは原文で確認できておらず,候補者別の点数表又は比較表が存在すると推測して補うこともできない。

説明の改善としては,①会議体が優先した評価軸と理由,②意向投票を支持・合意形成の判断にどう位置付けたか,③他の資料を根拠に投票結果と異なる結論へ至った比較判断の筋道,④協議中の意思確認とは区別した正式表決の回数・集計,を会議体として説明することが考えられる。
これは本記事の運用上の提案であり,固定配点の新設や,これら全ての個別公表を現行内規が義務付けていると述べるものではない。守秘と両立する説明の問題は,制度改正と分けて評価する必要がある。
公表理由の批判と反論の整理は,東大総長選考2026―藤垣裕子氏の選出理由と意向投票1107票対553票を参照されたい。

第6 確認範囲と今後掘り下げる論点

今回の追加調査では,2021年の提言と,2022~2025年の改正案・新旧対照表・議事要旨・議事録を対応させた。意向投票の回数変更について,2025年6月・7月・8月の異なる案と,12月1日の正式な改正決定を区別して確認した。
改正資料について第3に示した頁数はPDF全体の頁数である。資料内の通し番号や,2020年当時と現行規程の条文番号を混同しないようにした。アンケート・パブリックコメントの回答者の意見と,成立した規程の内容も区別した。

なお,2022年3月の総長選考会議の議事要旨には,当時の配付資料を公開しない旨の記載がある。そのため,同会議の非公開配付資料を原文で読んだとはしていない。公開された議事要旨,関連会議の資料・規程及び退任議長の所感によって確認した範囲である。
2025年8月の投票方式の議論で参照された過去の投票データ等にも非公開資料がある。議事録に記載された説明と,元データを独立に検証できたことは別であり,本記事は過去データ全体の再分析を行ったものではない。

2026年の追加調査では,第2次候補者の基本的な絞り込み手順,8月13日の改訂,8月18日の正式表決,3月13日に確認された評価表の使い方を第5に整理した。手順書と実施後の議事要旨,公表案と確定した公表文書,公式資料と会見の二次報道を区別した。
なお,現行細則には2026年3月13日の改正履歴もあるため,2025年末に成立した全文と現在の全文を完全に同一とは扱っていない。

なお残る未確認事項は,①8月の協議中投票の回数・候補者別票数・追加の実際の経緯,②9月28日の正式表決の回数・投票参加人数・集計,③候補者間の具体的な比較と意向投票の位置付け,④非公開の選考資料の内容である。
これは公開資料を確認した範囲の限界であり,資料が将来も公表されないこと,又は比較判断や適正な表決が行われなかったことを認定するものではない。別セッションでさらに調査する場合は,第12回会議の議事要旨等の追加公表と,会議体による比較判断・集計の公式説明の有無を確認し,新たな一次資料が得られた範囲で補う必要がある。

第7 出典・関連記事

①2020年の選考結果・選考理由・選考過程1頁~3頁。
②2020年総長選考過程検証報告書4頁~6頁,17頁,25頁~34頁。
③2021年3月タスクフォース報告書本文12頁~19頁及び2021年11月ワーキンググループ最終報告本文3頁~5頁。
④現行会議規則,現行内規,現行細則及び運営了解事項。
⑤2026年選考結果・理由・過程と令和8年度総長選考。

⑥改正経緯を追う年度別資料一覧:令和3年度,令和4年度,令和5年度,令和6年度,令和7年度。個別の決定・改正理由の根拠は第3の各項に示した。
⑦2025年12月1日改正の確認:配付資料のPDF15頁,22頁,41頁~42頁,58頁~59頁と,議事録のPDF15頁~17頁。新旧対照表は改正案であるため,決定されたことは議事録で,日付は内規の附則・細則の改正履歴でも併せて確認した。

⑧2026年の絞り込み:3月13日付け手順,8月12日~13日議事要旨,8月17日議事要旨,8月17日配付資料PDF2頁,8月18日議事要旨。
⑨評価表の設計・活用:重点ポイント・評価項目,3月13日議事録PDF10頁~15頁。
⑩最終選考の確認範囲:令和8年度活動状況,9月28日配付資料PDF1頁,9頁~10頁及び13頁,確定した選考結果・理由・過程PDF1頁~3頁,9月29日議長メッセージ。補助的な二次資料として東大新聞の会見報道を参照した。会見録原文又は最終表決の議事記録として扱ってはいない。

国立大学に共通する選考・任命,意向投票,公表義務及び監察の関係は,国立大学の学長選考-誰が決めるか,意向投票と公表義務を参照されたい。

現行制度を順に確認するには,東大総長選考の仕組みを参照されたい。
2026年の結果と説明責任を読むには,藤垣裕子氏の選出理由と意向投票1107票対553票へ進める。