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東大総長選考の仕組み―誰が決めるのか,意向投票の資格・回数と選考・監察会議(AI作成)

第1 東大総長は誰が決めるのか

東大総長選考では,学内の意向投票の最多得票者が自動的に総長になるわけではない。
東京大学総長選考・監察会議が,あらかじめ示した総長像に照らし,候補者資料,推薦書,面接を含む調査,所信表明及び意向投票の結果を総合して総長予定者を選ぶ。
その選考による国立大学法人の申出に基づき,文部科学大臣が任命するという仕組みである。

本記事は2026年10月3日現在,東京大学が令和8年度選考の関係資料として公表した規則・内規・細則に基づく制度解説である。
2026年の藤垣裕子氏の選出理由と意向投票1107票対553票の評価は,東大総長選考2026―藤垣裕子氏の選出理由と意向投票1107票対553票で検討している。
ここでは,選考主体,投票資格,投票回数,最終決定及び公表のルールを順に説明する。

第2 選考・監察会議の構成と役割

1 経営協議会と教育研究評議会から各同数を選ぶ

国立大学法人法12条は,経営協議会と教育研究評議会から選出される各同数の委員による学長選考・監察会議の選考を定めている。
これを受けた東京大学総長選考・監察会議規則2条では,経営協議会の学外構成員から選出された者と,教育研究評議会の構成員のうち法人役員を除いて選出された者で構成する。
委員総数は原則16人であり,この場合は各8人となるが,両会議が一致した議決で別段の人数を定める余地がある。

構成員が選考会議全体を直接選挙で選ぶ制度ではなく,経営と教育研究のそれぞれの立場から選出母体を設けた制度である。
「学外委員だけで総長を決める」「教授会が最終決定する」という説明は,いずれも正確ではない。

2 選考後も総長を監察する

同規則5条には,総長選考のほか,解任の申出,業務執行状況の確認及び中間評価などの任務がある。
総長の任期に関する事項の審議も担うため,選考時だけ活動する臨時の選挙管理機関とは役割が異なる。
選考会議の独立性を論じる場合は,総長を選ぶ機能と,選んだ総長の職務遂行を確認する機能の双方を見る必要がある。

第3 候補者推薦から意向投票までの流れ

1 第1次候補者の推薦と決定

内規9条・10条により,選考・監察会議は代議員会を設け,経営協議会にも推薦する者の選出を求める。
代議員会が推薦する者は原則10人を限度とし,経営協議会が推薦する者は2人程度であって,両者の重複も認められる。
推薦がそのまま第2次候補者又は総長予定者の決定になるわけではなく,選考・監察会議が審議して第1次候補者を決定し,その氏名を公表する。

代議員の選出に参加する教職員の範囲と,後の意向投票の資格者の範囲も同じではない。
細則1項には,意向投票資格を持つ所定の教員から選出する代議員のほか,それ以外の常勤教職員から選出する代議員の枠も定められている。
したがって,「意向投票ができない教職員は,推薦過程にも全く関与できない」と一括りにすべきではない。

2 第2次候補者は3人以上5人以内

内規12条では,第1次候補者に候補者資料等の提出と推薦人の指定を求め,推薦人に推薦書の提出を依頼する。
選考・監察会議は求められる総長像に照らし,これらを踏まえて面接を含む調査を行い,第2次候補者を3人以上5人以内で決定する。
第2次候補者の氏名と候補者資料等を公開し,意向投票に先立って,各候補者に動画による所信表明の機会を設ける。

2026年には第2次候補者が5人となったが,「毎回必ず5人」とするルールではない。
この候補者数の違いが,次に述べる意向投票の回数に関係する。

第4 意向投票は誰が何回投票するのか

1 投票資格は全教職員・全学生には与えられない

細則4項が定める教員側の基本的な資格者は,所定の常勤の教授・准教授と,教授会構成員である常勤の講師である。
職員側も,管理職手当の支給を受ける所定の管理・監督職であり,全職員ではない。
職員の対象職には部長・次長・課長等のほか,細則が個別に列挙する職があるため,実際の資格は職名と根拠規程を照合して判断する必要がある。

基準日は,選考開始の公示の日が属する月の初日である。
その時点で休職中又は出向中の者は含まれず,その後投票日までに資格要件を満たさなくなった場合は資格を失う。
兼務・任用形態等についての補足規定もあるため,教授という呼称だけで一律に資格があるとは判断できない。

学生であることだけでは意向投票の資格は与えられない。
ただし,これは総長選考について学生が意見を述べる機会まで否定する意味ではなく,意向投票という特定の手続の資格を説明するものである。
投票結果を読むときも,大学の全構成員の投票結果と,制度上の有資格者による結果を区別する必要がある。

2 候補者3人なら1回,4人以上なら2回

細則5項によれば,指定されたシステムで,一人の候補者を選ぶ無記名の意向投票を行う。
第2次候補者が3人の場合は1回,4人以上の場合は2回である。
2回目の対象は1回目の得票上位3人であり,3位に同数の者がある場合にはその者も加える。

第2次候補者数通常の意向投票回数2回目の対象
3人1回2回目は行わない
4人又は5人2回1回目の上位3人。3位同数の者も加える

この通常の手続は,過半数の得票者が出るまで繰り返す方式ではない。
4人以上の場合は1回目の過半数獲得の有無を条件とせず2回実施するため,「誰も過半数を得なかったから2回目になった」という説明は現在の細則と合わない。
例外として,内規16条2項による予定者決定の取消し後の再決定については,細則6項に必要に応じて意向投票を再度行う規定がある。

3 意向投票の得票数は公表する

細則5項は,各投票回の候補者別得票数を発表するとともに,終了後速やかに全投票回の結果を公表することを定める。
公表には候補者別得票数だけでなく白票数も含まれる。
投票率,白票を含む総投票数に対する得票率,白票を除いた候補者票に対する得票率は分母が違うため,比較する際には計算の基礎を示す必要がある。

第5 意向投票と会議内の最終表決はどう違うか

1 最多得票者を自動的に選ぶ規定はない

内規16条1項は,候補者資料等,推薦書,調査,所信表明及び意向投票の結果を,総長像に照らして総合的に考慮することを定める。
意向投票の結果は考慮要素に含まれるが,得票順だけで決める規定ではなく,得票数に何点又は何%を割り当てるという固定の配点も同項には書かれていない。
そのため,最多得票者と異なる候補者の選出だけを理由に,直ちに内規違反とはいえない。

逆に,会議が最終決定権を持つことを根拠に,意向投票を全く考慮しなくてよいとも説明できない。
制度の理解としては,「結果に拘束されないこと」と「結果を総合判断の材料にすること」の両方を押さえる必要がある。
個別の選考の適否は,実際の手続,考慮要素,事前の基準及び公表された理由を調べて判断する。

2 会議内では議長を除く出席委員が無記名で表決する

内規3条は,第1次候補者,第2次候補者及び総長予定者の決定を表決事項とし,議長を除く出席委員の無記名投票を定める。
内規2条によれば,会議の成立には委員の過半数の出席が必要であり,通常の議事は議長を除く出席委員の過半数で決する。
可否同数の場合は議長が決するが,これは議長が通常の無記名投票に一票を加えることとは異なる。

この会議内の表決と,前段階の学内意向投票は,投票する人,目的及び決定の効力が異なる。
会見で「投票を繰り返した」と説明されたとしても,それが学内意向投票なのか,会議内の意向確認なのか,規程上の最終表決なのかを確かめなければ,投票回数のルールに反したとは判断できない。

第6 選考理由の公表と人事情報の守秘

国立大学法人法12条7項は,選考結果その他省令で定める事項と,選考基準の設定・変更について公表を求めている。
国立大学法人ガバナンス・コードの補充原則3-3-1①・②も,人事審議への配慮と具体的な選考理由等の公表を求めるが,同コードは法的拘束力を持つ法令ではない。
法令の公表義務,コードの原則,より丁寧な説明を求める運用上の提案は区別して扱う必要がある。

運営に関する了解事項では,議事要旨,議事録,配付資料の公開を原則としつつ,人事に関する意見交換の議事録・配付資料を非公開とするなどの例外を定める。
音声記録は公開しない取扱いである。
したがって,候補者個人の評価資料が全面公開されていないことと,選考理由を公表しなくてよいことを混同してはならない。

第7 総長の任期と2026年の選考結果

総長の任期に関する規則2条により,任期は6年であり,引き続いての再任はできない。
ただし,欠員時の後任については前任者の残任期間とし,その場合に一回限りの連続再任を認める別の規定がある。
一般論として「どのような場合も6年,再任は一切できない」とまとめるのは正確ではない。

2026年9月28日の東京大学発表では,藤垣裕子氏が次期総長予定者に選出され,任期は2027年4月1日から2033年3月31日までとされている。
2026年10月3日時点では総長予定者の選出についての説明であり,就任済みの総長として扱わない。

第8 関連記事と確認資料

国立大学に共通する選考・任命,意向投票,公表義務及び監察の関係は,国立大学の学長選考-誰が決めるか,意向投票と公表義務を参照されたい。

2026年選考の理由と説明責任は,藤垣裕子氏の選出理由と意向投票1107票対553票を参照されたい。
旧制度との違いは,東大総長選考はどう変わったか―2020年の検証,2021年報告書と2026年の制度比較で扱う。
大学の自治の一般的な検討については,公立大学における学問の自由と大学の自治も参照できるが,公立大学法人と国立大学法人では適用する法人法制が異なる。

本記事の主な根拠は,国立大学法人法抜粋12条・15条,会議規則2条・5条,内規2条・3条・9条~16条,細則1項・4項~6項,任期規則2条・3条及び運営了解事項1項・2項である。
規程の本文を確認する際は,東京大学の令和8年度選考資料一覧と総長選考・監察会議の公表ページから,改正日も含めて確認されたい。