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サンフランシスコ平和条約第2条と領土問題――竹島・北方四島・尖閣・台湾・南シナ海を各国資料と判例で読む(AI作成)

第1 この記事の結論と対象

サンフランシスコ平和条約第2条は,日本が列挙された地域に対する権利,権原及び請求権を放棄することを定める。しかし,個々の島がその地域に含まれるか,放棄後にどの国へ帰属するかという問題を,常に同条だけで解決できるわけではない。国立公文書館所蔵の条約原本と関係政府の資料を分けて読む必要がある。

本記事は令和8年10月2日までに確認できた公開資料を基に,竹島,北方四島,尖閣諸島,台湾・澎湖諸島及び南沙・西沙諸島に関する条約の読み方を整理する。各政府の公表文書は,その政府の主張を示す資料であり,領有権を中立的に確定する裁判ではない。起草過程の詳細は第2条の起草過程の記事を参照されたい。

論点対応する条項条約文から直接分かること別に検討すること
竹島第2条(a)日本は朝鮮への権利等を放棄し,済州島・巨文島・鬱陵島を明示竹島が「朝鮮」に含まれるか
北方四島第2条(c)日本は千島列島等への権利等を放棄四島と「千島列島」の関係,日露間の文書
尖閣諸島第2条(b),第3条台湾等の放棄と南西諸島の米国施政を別に規定尖閣の法的位置,施政と主権の区別
台湾・澎湖諸島第2条(b)日本の権利等の放棄帰属先,後の外交文書
南沙・西沙諸島第2条(f)日本の権利等の放棄複数国の主張と後の国際法上の問題

第2 第2条の放棄と帰属先を区別する

1 条約の文言

条約第2条は,(a)朝鮮,(b)台湾・澎湖諸島,(c)千島列島・南樺太等,(f)新南群島・西沙群島について,日本による権利等の放棄を定めた。(a)を除くこれらの条項は,放棄後の取得国を名指ししていない。「日本が放棄した」と「ある国へ譲渡した」は異なる命題である。

第25条は,条約上の連合国の範囲と,非該当国に条約上の権利等を与えない原則を定める。もっとも,第25条は非締約国が他の根拠から領有権を取得したかどうかまで判定する条文ではない。署名国・批准国・非参加国の記事も参照されたい。

2 占領指令,施政権及び主権

連合国総司令部の占領期の指令は,その時点の行政上の範囲を定める資料である。他方,第3条の米国の施政は,行政・立法・司法上の権限に関する規定であり,第2条の権利等の放棄とは文言と機能が違う。占領指令SCAPIN-677の記事及び発効時の主権と施政の記事に,この区別の背景を整理した。

第3 竹島――第2条(a)の「朝鮮」に含まれるか

1 条約文と日本政府の説明

第2条(a)は朝鮮の独立を承認し,済州島,巨文島及び鬱陵島を含む朝鮮への日本の権利等の放棄を定める。竹島という島名は明記しない。日本外務省の竹島資料は,韓国側の竹島を放棄対象に追加する提案を米国が受け入れなかった経過等から,竹島は放棄対象に含まれないと説明する。これは日本政府の条約解釈である。

2 韓国政府の説明

韓国外交部の公式解説30頁~31頁は,第2条(a)が約3000の島のうち3島だけを例示したので,独島(日本名・竹島)の不記載から直ちに除外を推論できないとする。また,カイロ宣言及びSCAPIN-677を挙げ,朝鮮から分離された地域に独島が含まれると主張する。これは韓国政府の条約解釈である。

両者の争点は,3島の列挙の意味,起草資料の評価,戦前の権原,及び占領指令と講和条約の関係に及ぶ。単に「竹島の名がない」という一点,又は占領期に日本の行政範囲から除かれたという一点だけで,国際法上の帰属を判定することはできない。

第4 北方四島――第2条(c)の「千島列島」の範囲

1 条約文と日本政府の説明

第2条(c)は千島列島と,ポーツマス条約の結果として日本が主権を得た南樺太等に対する放棄を定めるが,島名を個別に列挙しない。日本外務省の北方領土Q&Aは,歯舞群島,色丹島,国後島及び択捉島は同条の「千島列島」に含まれないと説明する。同省は,ソ連が条約に署名しなかったことも指摘する。

2 日露両国外務省の共同資料と日ソ共同宣言

日露両国外務省の共同資料集の序文は,ソ連がヤルタ協定を四島を含む千島列島の移転の法的根拠と主張したことと,日本がヤルタ協定は領土問題の最終決定ではなく日本を拘束しないとすることを,双方の立場として記録する。共同資料に両論が記載されていることは,いずれかの主張への双方の同意を意味しない。

また,外務省の北方領土Q&Aによると,昭和31年の日ソ共同宣言は外交関係の回復と平和条約交渉の継続を定め,平和条約締結後の歯舞群島・色丹島の引渡しに触れた。これらの資料を無視して第2条(c)だけから現在の四島の帰属を結論付けることはできない。

第5 尖閣諸島――台湾放棄と米国施政の関係

1 日本,台湾及び中国の公表見解

日本外務省の尖閣諸島Q&Aは,尖閣諸島は第2条(b)の台湾・澎湖諸島に含まれず,第3条に基づく米国の施政地域に含まれ,沖縄返還時に施政権が日本へ返還されたと説明する。これに対し,台湾外交部の公表文書は,釣魚台列嶼が台湾に属し,台湾とともに中華民国へ返還されたとの立場を示す。中国外交部の公表文書も,中国の領土に属するとの立場を示す。

2 米国の施政は帰属判定ではない

米国務省の昭和46年の外交記録は,沖縄返還で米国が施政を移しても,尖閣の主権に関する対立する主張について判断を示さないという当時の米国の説明を記録する。これは1971年の米国政府文書であって,現時点の全ての米国政府見解を代弁するものではない。第3条に基づく施政の移転と領域主権の最終判断は区別すべきである。

第6 台湾・澎湖諸島と南沙・西沙諸島

1 台湾・澎湖諸島

第2条(b)は日本の放棄を定めるが,帰属先を明記しない。日華平和条約,日中共同声明及び日本政府の現在の説明との関係は,台湾の法的地位の記事で扱った。本記事で同条から特定政府への移転を追加的に読み込むことはしない。

2 南沙・西沙諸島

第2条(f)は日本が新南群島(南沙諸島)と西沙群島への権利等を放棄すると定めるが,受領国を指定しない。中国外交部の南シナ海に関する政府文書は,この条項に言及しつつ中国の主権を主張する。これは中国政府の立場である。第2条(f)の文言だけから南シナ海の各島の現在の帰属や海洋権益の範囲を確定することはできない。

第7 裁判例をどう読むか

1 朝鮮独立と国籍に関する最高裁判例

最高裁昭和36年4月5日大法廷判決(昭和30年(オ)第890号・民集15巻4号657頁)は,条約第2条(a)による朝鮮の独立と国籍の問題を扱った判例である。多数意見は,朝鮮に属すべき人への対人主権の放棄と日本国籍の喪失を論じた。この判例の主題は個人の国籍であって,竹島その他の島の帰属を判断したものではない。

2 竹島関係文書の情報公開訴訟

東京高裁平成26年7月25日判決(平成24年(行コ)第412号,平成25年(行コ)第231号)は,日韓会談関係文書の開示・不開示を争った。判決には竹島に関する外交資料の内容と公開による外交上の影響への言及がある。しかし,その主文が判断したのは情報公開処分の適法性であり,竹島の領有権ではない。国内裁判所の判決中に竹島の記述があることを,領有権を裁判で確定したことと読み替えてはならない。

第8 関連記事と出典

条約全体の構造は全27条の解説,領土条項の起草史は第2条の起草過程,戦後賠償の金額は戦後賠償の記事,第14条・第19条の請求権処理は賠償・請求権の記事を参照されたい。

1 国立公文書館「日本国との平和条約」(第2条・第3条)。
2 日本外務省「竹島問題の概要」,韓国外交部「Dokdo Q&A」30頁~31頁。
3 日本外務省「北方領土問題に関するQ&A」,日露両国外務省共同資料集序文。
4 日本外務省「尖閣諸島に関するQ&A」,台湾外交部の声明,中国外交部の文書,米国務省の外交記録。
5 中国外交部「南シナ海に関する政府文書」。
6 最高裁昭和36年4月5日大法廷判決,東京高裁平成26年7月25日判決。