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自白・供述の信用性をどう争うか―草加事件から作る検証チェックリスト(AI作成)

自白や関係者供述が詳細で一致しているときでも,その一致が独立した記憶に由来するとは限らない。供述の生成過程,変遷,誘導・情報共有の可能性,秘密の暴露,客観証拠との整合及び「真実ならあるはずの証拠」の有無を分けて検討する必要がある。本記事は,いわゆる草加事件に関する最高裁平成12年2月7日判決から,供述信用性を検証する実務チェックリストを作る。

第1 本記事の対象と結論

供述の信用性は,「詳しい」「複数人が一致している」「刑事手続で作成された調書である」という外形だけでは判断できない。少なくとも,供述がどのように得られたか,中核部分がいつどのように変わったか,捜査側から知り得ない事実を含むか,独立した物証に支えられているか,客観証拠と矛盾しないかを確認する。

実務上は,供述内容そのものを時系列化する表と,供述が生成された取調べ・聴取過程を時系列化する表を分ける。複数人の供述が一致している場合も,各供述者の独立性を先に検証する。

第2 草加事件判決の位置付け

最高裁平成12年2月7日第一小法廷判決(平成7年(オ)第793号)は,殺人事件で逮捕された少年らの供述等をめぐり,被害者の遺族が少年らに損害賠償を求めた民事事件の判決である。刑事事件の有罪・無罪を直接判断した判決ではない。

最高裁は,原審の事実認定について,供述の信用性を肯定するには経験則上看過できない疑問があるとして原判決を破棄し,事件を原審へ差し戻した。したがって,「最高裁が最終的に少年らの無実を確定した判決」と表現するのも正確ではない。

第3 最高裁が問題とした供述評価

1 秘密の暴露がない

秘密の暴露とは,捜査機関が把握しているが一般には知られておらず,供述者が実際に体験していなければ知り得ない事実を供述したことをいう。供述に具体性があるだけでは足りず,その情報源が捜査側の示唆,報道,他の供述者又は周囲の者ではないことを確認する。

2 中核部分が変遷している

周辺的な表現の違いと,犯行態様,役割分担,凶器,場所,時間など中核部分の変化を分ける。後の供述が詳しくなった場合も,記憶の自然な喚起なのか,取調べで示された情報への適合なのかを検討する。

3 誘導と情報共有の可能性がある

複数人の供述が一致していても,別々に独立して得られた一致でなければ相互補強にならない。取調官が同じ仮説を各人へ示した可能性,供述者間の接触,報道,家族・付添人との会話及び先行調書の読み聞かせ等を確認する。

4 客観証拠と整合しない

供述を前提に予想される現場状況,傷害,移動経路,時間,車両,衣服その他の物証と照合する。供述に合わせて客観証拠を説明するのではなく,まず客観証拠から許容される出来事の範囲を固定し,供述がその範囲内にあるかを検討する。

5 存在するはずの痕跡がない

消極的事実も重要である。供述が真実なら血痕,毛髪,繊維,指紋,損傷,目撃,通信又は移動記録等が残るはずなのに見つからない場合,なぜ残らないのかを具体的に検討する。「見つからなかったから直ちに虚偽」とは限らないが,予想される証拠の不存在を無視してはならない。

第4 自白・供述の7項目チェックリスト

  1. 取得状況―日時,場所,取調時間,休憩,録音録画,立会人,身体・心理状態及び約束・威迫の有無。
  2. 初期供述―最初に何を自発的に述べ,何を否定し,何を知らないと述べたか。
  3. 変遷―中核部分がいつ,どの質問・証拠提示の後に変化したか。
  4. 秘密の暴露―供述者しか知り得ない事実か,捜査側等から入手できなかったか。
  5. 独立性―他の供述者,報道又は取調官の仮説から汚染されていないか。
  6. 客観証拠―物証,通信,位置情報,診療記録,写真,映像及び時刻記録と整合するか。
  7. 消極的事実―真実なら存在するはずの痕跡又は第三者証拠がなくても合理的に説明できるか。

第5 記録の読み方と主張立証

供述調書だけを横に並べるのではなく,取調べ経過,証拠提示,供述変遷及び客観証拠を同じ時間軸へ置く。録音録画がある場合は,調書の文言が出た場面だけでなく,直前の質問,否定又は沈黙,言い直し及び休憩前後を確認する。

主張書面では,「供述が信用できない」と総括する前に,どの供述のどの部分が,どの客観証拠又は経験則と衝突するかを特定する。複数供述の一致を攻撃する場合は,共通する情報源又は誘導経路を示し,一致が独立した補強にならない理由を述べる。

反対に供述の信用性を主張する側は,秘密の暴露,初期段階からの一貫性,供述者間の遮断,客観証拠との一致及び虚偽供述をする動機の有無を具体的に示す。いずれの側も,供述の任意性・証拠能力の問題と,証拠能力を前提とした信用性の問題を混同しない。

第6 判決を使う際の限界

草加事件判決は民事損害賠償事件における事実認定の経験則を扱ったものである。個別の刑事事件で自白の任意性,証拠能力又は合理的疑いを判断するときは,刑事訴訟法,憲法,録音録画制度及びその後の刑事判例を別に確認する必要がある。

また,破棄差戻判決であるため,最高裁が損害賠償責任の最終結論を確定したと扱ってはならない。再審,国家賠償又は冤罪検証へ用いる場合も,対象事件の手続段階と証拠構造を個別に確認する。

第7 一次資料・判例秘書の確認状態

本記事は,裁判所ウェブサイト掲載の判決全文PDFで,事件番号,判決日,法廷,主文及び供述評価に関する判示を確認した。判例時報「平成12年度最高裁民事破棄判決等の実情」は,事件の位置付けと論点抽出のための二次資料として用いた。

判例秘書については,検索照会0件,収録確認0件,本文確認0件である。後続判例,差戻審の結論及び判例評釈は,本記事の調査範囲に含めていない。

第8 出典・関連記事

一次資料は,最高裁平成12年2月7日第一小法廷判決全文PDF(平成7年(オ)第793号)である。二次資料として,高部眞規子「平成12年度最高裁民事破棄判決等の実情(1)」(判例時報1744号)を参照した。

捜査・公判活動の問題点を検証報告書から横断的に整理した冤罪事件の検証報告書から見る捜査・公判活動の問題点及び年度全体を扱う平成12年度最高裁民事破棄判決等の実情も参照されたい。