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通常共同訴訟で他の被告の主張・証拠は自分にも効くか―共同訴訟人独立の原則(民事訴訟法39条),主張共通の否定と証拠共通(最高裁昭和43年9月12日判決・昭和45年1月23日判決)(AI作成)

第1 この記事の対象と要点

1 想定する場面

本記事は,債権者が主たる債務者と保証人を一緒に訴えた場合や,交通事故の被害者が運転者と使用者を一緒に訴えた場合のように,一つの訴訟に複数の被告(又は原告)がいるものの,判決の内容を全員について一致させることまでは求められていない訴訟を扱う。
このような訴訟は「通常共同訴訟」と呼ばれ,民事訴訟法38条が要件を定めている。

実務では,共同被告の一人が詳しい反論をしている一方で,他の共同被告が答弁書を出さず欠席していることがある。
このとき,欠席した共同被告も,他の共同被告の反論や証拠の恩恵を当然に受けられるのかが問題になる。
本記事は,令和8年9月29日時点の民事訴訟法と,裁判所ウェブサイトで判決全文を確認した最高裁判例に基づいて,この問題を整理する。

2 要点

問題結論主な根拠
共同訴訟人の一人の訴訟行為は他の者に及ぶか及ばないのが原則である(共同訴訟人独立の原則)民事訴訟法39条
他の共同被告の主張は自分の主張になるか自分で援用しない限りならない(主張共通の否定)最高裁昭和43年9月12日判決,最高裁昭和45年1月23日判決
他の共同被告が出した証拠は自分の事件でも使われるか使われる(証拠共通)最高裁昭和45年1月23日判決
共同被告の一人が欠席したらどうなるかその者は相手方の主張した事実を自白したものとみなされ得る民事訴訟法159条3項・1項
他の共同被告の主張を自分のものにするには期日に出頭して援用するか,補助参加の申出をする民事訴訟法42条・45条,最高裁昭和43年9月12日判決

第2 通常共同訴訟と共同訴訟人独立の原則

1 通常共同訴訟とは

民事訴訟法38条は,訴訟の目的である権利又は義務が数人について共通であるとき,同一の事実上及び法律上の原因に基づくとき,又は同種であって事実上及び法律上同種の原因に基づくときは,その数人が共同訴訟人として訴え,又は訴えられることができると定める。
債権者が主たる債務者に対する請求と保証人に対する請求を一つの訴えで行う場合は,この規定によって一つの訴訟にまとめられる。

これに対し,民事訴訟法40条は,訴訟の目的が共同訴訟人の全員について合一にのみ確定すべき場合(必要的共同訴訟)について,一人の訴訟行為は全員の利益においてのみ効力を生ずる(1項),相手方の訴訟行為は全員に対して効力を生ずる(2項)などの特則を置いている。
主たる債務者に対する請求と保証人に対する請求は,別々に訴えることもでき,判決の結論が食い違っても法律上は許されるから,40条の対象にはならない。

2 民事訴訟法39条の内容

民事訴訟法39条は,「共同訴訟人の一人の訴訟行為,共同訴訟人の一人に対する相手方の訴訟行為及び共同訴訟人の一人について生じた事項は,他の共同訴訟人に影響を及ぼさない」と定める(共同訴訟人独立の原則)。
通常共同訴訟は,本来別々に起こすことができた複数の訴えを,審理の便宜のために一つにまとめたものにすぎない。
そのため,各共同訴訟人は,他の共同訴訟人の訴訟追行に縛られず,自分の判断と責任で訴訟を追行し,その結果を受けることになる。

この原則から,例えば,共同被告の一人が請求を認諾したり,相手方の主張する事実を認めたりしても,他の共同被告についてその効果は生じない。
他方,後で見るとおり,他の共同被告が有利な主張をしてくれても,自分がそれを援用しない限り,自分の事件の判断資料にはならない。

3 同時審判の申出がされた共同訴訟との違い

民事訴訟法41条は,共同被告の一方に対する権利と他方に対する権利とが「法律上併存し得ない関係にある場合」に,原告の申出があれば,弁論及び裁判を分離しないでしなければならないと定める(同時審判申出共同訴訟)。
典型は,代理人と称する者が契約をした場合の,本人に対する契約上の請求と,代理人に対する無権代理人の責任の追及である。
主たる債務者に対する請求と保証人に対する請求は,両方とも成り立ち得るから,この規定の対象ではなく,裁判所は弁論を分離することができる(民事訴訟法152条1項)。

第3 他の共同被告の主張は自分にも効くか(主張共通)

1 最高裁昭和43年9月12日判決

最高裁判所第一小法廷昭和43年9月12日判決(昭和42年(オ)第890号,民集22巻9号1896頁)は,土地の不法占有を理由とする損害賠償請求について,原審が,共同被告のうち二人がした賃料弁済の主張の効力を,その主張をしていない他の共同被告にも及ぼし,「共同訴訟人間の補助参加関係」があるとして請求を退けた事案である。

最高裁は,「通常の共同訴訟においては,共同訴訟人の一人のする訴訟行為は他の共同訴訟人のため効力を生じないのであつて,たとえ共同訴訟人間に共通の利害関係が存するときでも同様である」とした。
そして,共同訴訟人が相互に補助しようとするときは補助参加の申出をすることを要し,申出がないのに当然に補助参加と同一の効果を認めるとすれば,いかなる関係があるときにその効果を認めるかについて明確な基準を欠き,訴訟を混乱させるおそれがあるとして,原判決を破棄した。

2 最高裁昭和45年1月23日判決

最高裁判所第二小法廷昭和45年1月23日判決(昭和43年(オ)第282号,集民98号43頁)は,第一審以来弁論が併合されて審理されてきた二つの事件について,一方の事件だけの当事者である者がした主張を,他方の事件の訴訟資料として扱えるかを判断した。

最高裁は,両事件は弁論が併合されて審理されたにとどまり,必要的共同訴訟人としての関係はないから,一方の当事者の主張が他方の事件の訴訟資料となる余地はないとした。
共同訴訟人の一人がした主張は,他の共同訴訟人が援用しない限り,その者の事件の判断資料にならないということである(主張共通の否定)。

3 主張共通を認めるべきだとする考え方

学説には,共同訴訟人の一人がした主張が他の共同訴訟人に有利であり,他の共同訴訟人がこれと抵触する行為をしていない場合には,その者のためにも主張があったものと扱ってよいとする考え方もある。
共同被告の一人が十分に争っているのに,欠席した共同被告についてだけ異なる判断がされるのは不自然だ,という問題意識による。

もっとも,上記の二つの最高裁判決は,共同訴訟人間の主張の効力を否定しており,実務はこれを前提に動いている。
また,本記事では,主張共通を認める考え方には次の問題があると考える。
①何が他の共同訴訟人に「有利」かは訴訟の展開によって変わり,基準として不安定である。
②主張をした共同訴訟人は,その主張を撤回したり相手方と和解したりすることができ,他の共同訴訟人はこれを制御できない。
③争う意思を示していない共同被告についても,相手方はその主張に対応して攻撃防御を尽くさなければならなくなる。
④通常共同訴訟では弁論の分離ができるから,共通の審理が続くことが保障されていない。

第4 他の共同被告が出した証拠は自分にも効くか(証拠共通)

最高裁昭和45年1月23日判決は,主張については上記のとおり共通を否定する一方で,証拠については,「共同訴訟人の一人が提出した証拠は,その相手方に対するばかりでなく,他の共同訴訟人とその相手方に対する関係においても証拠として認定資料に供することができる」とした(証拠共通)。
裁判所は,一つの手続で取り調べた証拠から一つの心証を形成するのであり,事実の認定を共同訴訟人ごとに分けて行うことはできないからである。

証拠共通は,共同訴訟人にとって有利にも不利にも働く。
他の共同被告が提出した書証や,他の共同被告の申請で行った証人尋問の結果は,自分に不利な内容であっても,自分の事件の事実認定に使われ得る。
そのため,共同被告の一人であっても,他の共同被告が申請した証人の尋問に立ち会い,必要な反対尋問をすることが重要になる。

もっとも,証拠共通は,すでに当事者の主張がある事実について,その存否を証拠で認定する場面の問題である。
自分が主張していない事実(例えば,自分では主張していない弁済や相殺)を,他の共同被告の証拠から当然に認定してもらえるわけではない。
主張と証拠を分けて考え,必要な主張は自分でしておく必要がある。

第5 共同被告の一人が欠席したとき

1 擬制自白

民事訴訟法159条1項は,当事者が口頭弁論において相手方の主張した事実を争うことを明らかにしない場合には,その事実を自白したものとみなすと定め,同条3項は,当事者が口頭弁論の期日に出頭しない場合にこれを準用する。
ただし,公示送達による呼出しを受けた当事者については準用しない(同項ただし書)。

したがって,訴状等の送達を受けながら答弁書も出さずに欠席した共同被告については,原告の主張する請求原因事実が自白されたものとみなされ得る。
他の共同被告がその事実を詳しく争っていても,39条により,欠席した共同被告にはその効果が及ばない。

2 弁論の分離と先行する判決

裁判所は,口頭弁論の分離を命じることができる(民事訴訟法152条1項)。
共同被告の一人が欠席を続けると,裁判所がその者に対する請求だけを分離して終結し,先に判決をすることがある。
その判決が確定すると,その後に他の共同被告の事件で原告の請求が退けられても,先に確定した判決は原則として覆らない。
主たる債務者と保証人の関係でこの問題がどう扱われるかは,連帯保証人だけが先に敗訴したときで詳しく整理している。

第6 他の共同被告の主張を自分のものにする方法

1 期日に出頭して援用する

最も簡単なのは,期日に出頭し,又は準備書面を提出して,他の共同被告の主張を自分の主張として援用することである。
事実を自分で調べられない場合でも,他の共同被告が主張している事実を援用し,証拠共通により他の共同被告が提出した証拠を利用すれば足りることが多い。

2 補助参加の申出

最高裁昭和43年9月12日判決が述べるとおり,共同訴訟人が相互に補助しようとするときは,補助参加の申出をする必要がある。
民事訴訟法42条は,訴訟の結果について利害関係を有する第三者が当事者の一方を補助するため訴訟に参加できると定め,補助参加人は,攻撃又は防御の方法の提出その他一切の訴訟行為をすることができる(同法45条1項本文)。
ただし,補助参加人の訴訟行為は,被参加人の訴訟行為と抵触するときは効力を有しない(同条2項)。

共同被告の一人が,欠席している他の共同被告に補助参加すれば,その共同被告のために主張立証をすることができる。
もっとも,補助参加した者には,一定の場合を除き,その訴訟の裁判の効力が及ぶ(民事訴訟法46条)ことにも注意が必要である。

3 訴訟告知

当事者は,訴訟の係属中,参加することができる第三者に訴訟の告知をすることができ(民事訴訟法53条1項),告知を受けた者が参加しなかった場合も,参加することができた時に参加したものとみなされる(同条4項)。
訴訟告知の使い方は,訴訟告知の使い方で整理している。

第7 主たる債務者と保証人が共同被告になったときの注意

1 保証人の側

保証人は,主たる債務者が主張することができる抗弁をもって債権者に対抗することができる(民法457条2項)。
また,主たる債務者が債権者に対して相殺権,取消権又は解除権を有するときは,これらの権利の行使によって主たる債務者がその債務を免れるべき限度において,保証人は,債権者に対して債務の履行を拒むことができる(同条3項)。

しかし,これらの抗弁は,保証人が自分の訴訟で主張して初めて考慮される。
主たる債務者が詳しく争っていても,39条により,保証人の事件にはその主張が当然には及ばない。
主たる債務者から「こちらで対応するから何もしなくてよい」と言われていたとしても,それは主たる債務者と保証人の内部の事情にすぎず,保証人が欠席すれば,請求原因事実の自白が擬制され,先に敗訴判決を受けるおそれがある。
保証人は,少なくとも期日に出頭し,主たる債務者の主張を援用するとともに,同条2項・3項の抗弁を自ら主張しておくべきである。

2 債権者の側

債権者の側から見ると,欠席した保証人については早期に判決を得られることがある一方で,主たる債務者の事件では請求が退けられ,結論が食い違うことがある。
保証人に対する判決が先に確定した後に主たる債務者の勝訴判決が確定しても,保証人がこれを理由に強制執行を止められるかは別の問題として扱われる(連帯保証人だけが先に敗訴したとき)。

第8 関連記事

この問題を素材とした司法試験の問題の検討は,令和8年度司法試験民事系第3問の模範解答と予想される評価項目で行っている。
必要的共同訴訟の場合の扱いは,民事控訴における必要的共同訴訟と共同訴訟的補助参加で整理している。
確定判決に基づく強制執行への対抗手段は,強制執行に対する債務者の対抗手段で整理している。

第9 出典

1 法令

①民事訴訟法38条~42条・45条・46条・53条・152条・159条(e-Gov法令検索)
②民法457条(e-Gov法令検索)

2 裁判例

①最高裁判所第一小法廷昭和43年9月12日判決(昭和42年(オ)第890号,民集22巻9号1896頁)
②最高裁判所第二小法廷昭和45年1月23日判決(昭和43年(オ)第282号,集民98号43頁)

3 確認状態

条文は,e-Gov法令APIで令和8年9月28日時点を指定して取得した条文(民事訴訟法は令和8年6月24日施行の版,民法は同日施行の版)で確認した。
裁判例は,いずれも裁判所ウェブサイトの判決全文で,本記事で用いた判示を確認した。
第3の3の学説の考え方と,これに対する問題点の整理は,文献では確認しておらず,本記事の整理である。