弁護士に事件を依頼すると、「あとは全部お任せ」で終わると思われがちです。
しかし実際には、良い結果を得るために依頼者ご自身にご協力いただきたい場面が数多くあります。
ここでは、細かい手続の説明ではなく、依頼者の立場で本当に大切なポイントだけをまとめました。
1 裁判は「弁護士と依頼者の二人三脚」です
裁判は、弁護士だけで進められるものではありません。
相手方が思わぬ反論をしてくると、それに答えるために、弁護士から改めて事情をお聞きしたり、追加の資料をお願いしたりすることがあります。
「一度話したのに、また聞かれた」と感じられるかもしれませんが、相手の出方に合わせて主張を組み立て直すために必要な作業です。
お手数でも、その都度ご協力ください。
2 裁判は「証拠がすべて」です
たとえ本当のことであっても、それを裏づける証拠がなければ、裁判所に真実と認めてもらえないことがあります。
裁判の勝ち負けは、証拠があるかないかで大きく左右されます。
ですから、少しでも証拠になりそうな書類・写真・データは、早めに弁護士にお渡しください。
書類をお渡しいただくときは、書き込みのないきれいな原本、またはそのコピーをお願いします。
メモを書き込んだコピーは、後で「原本と食い違う」と言われる原因になります。
なお、相手とのやりとりが決め手になりそうな場合、相手に無断で会話を録音しても、それが後日の証拠を残すためであれば、原則として問題ありません。
証拠になりそうな会話は、録音しておくことをおすすめします。
3 依頼した後は、相手と直接やりとりしないでください
弁護士に依頼した後は、相手方への連絡はすべて弁護士を通すのが原則です。
相手から直接連絡が来ても、「弁護士を通してください」と伝えていただくのが無難です。
やむを得ず直接話してしまった場合は、いつ・どんな内容だったかを簡単にメモに残しておいてください。
4 書面は独断で出さず、内容には目を通してください
裁判所に出す書面を、弁護士に相談せずご自身の判断で提出することは、絶対に避けてください。
一方で、相手方から出てきた書面や、弁護士が作成した書面には、ぜひ一度目を通してください。
裁判では、相手の主張を「認める」と、その点は後から争えなくなります。
ですから、どこを認めてどこを争うかは慎重に決める必要があり、依頼者ご自身が事実関係を確認してくださることがとても重要です。
5 裁判には時間がかかります
相手が争ってくる事件では、訴えを起こしてから一審の判決が出るまで、おおむね半年から一年ほどかかるのが通常です。
裁判の期日はおよそ一か月に一回のペースで開かれます。
そして、その多くは書面のやりとりを確認するだけなので、一回あたり五分ほどで終わります。
期日には弁護士が出席すれば足り、依頼者が毎回出席する必要はありません(もちろん、出席していただくことは自由です)。
6 和解には「和解の良さ」があります
裁判になっても、実際には話し合い(和解)で解決することが多くあります。
和解は、お互いが少しずつ譲り合って成立させるものですから、こちらの言い分が一〇〇%そのまま通ることはありません。
そのかわり、争いを早く、最終的に終わらせられるという大きなメリットがあります。
和解の細かい条件は当日に詰めることもあります。
条項の文言にこだわりたい場合は、和解の期日にご出席いただくと安心です。
和解の内容を第三者に知られたくない場合は、秘密を守るための工夫もできますので、遠慮なくお申し出ください。
7 勝訴しても、お金を回収できるとは限りません
これは、意外に思われる方が多い、とても大切な点です。
裁判で全面勝訴しても、相手が自分から支払ってこないことがあります。
その場合は、相手の預金や給料などを差し押さえて回収することになります。
しかし、相手の財産や勤務先がわからなければ、判決を得ても現実には回収できないことがあります。
裁判所が、勝った側のために相手の財産を調べてくれることはありません。
さらに、相手が破産してしまうと、回収がほとんどできなくなることもあります。
「判決=お金が返ってくる」ではない、ということをあらかじめご理解ください。
8 弁護士費用は、原則として相手に請求できません
裁判に勝つと「弁護士費用も相手が払うのでは」と思われがちですが、そうではありません。
判決で相手の負担とされる「訴訟費用」には、印紙代や郵券代などは含まれますが、依頼した弁護士への費用は含まれないのが原則です。
例外として、交通事故のように相手の違法な行為で損害を受けた事件では、弁護士費用の一部を損害として請求できる場合があります。
9 控訴と上告では、見通しがまったく違います
判決に不服がある場合、上級の裁判所に不服を申し立てられます。
一審判決への不服が「控訴」、控訴審判決への不服が「上告」です。
控訴では、判決が見直され、結論が変わることが一定程度あります。
これに対して上告は、憲法違反など限られた理由でしか認められず、結論が覆ることはほとんどありません。
「事実の認定が間違っている」という理由だけでは、上告は基本的に通りません。
10 弁護士は途中で変えることもできます
依頼した弁護士を、別の弁護士に変えること自体は可能です。
ただし、これまでの弁護士との費用の精算という問題は残ります。
方針に納得がいかないときは、まずは率直にご相談いただくのがよいと思います。
最後に
裁判は、専門的で分かりにくい手続の連続です。
だからこそ、疑問や不安を抱えたままにせず、その都度弁護士に遠慮なくお尋ねください。
依頼者と弁護士がしっかり情報を共有し、二人三脚で臣むことが、良い結果への一番の近道です。