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令和2年司法試験労働法第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した26項目と5段階の重み付け(AI作成)

第1 この記事の対象と結論

本稿は,令和2年司法試験労働法第2問について,法務省の出題の趣旨・採点実感を基に,26の評価項目と2500字以内の模範解答を示すものである。
団交拒否に対する救済の組立てと,名簿不提出・二重加入・管理職という拒否理由の分析が中心となる。

項目内容
対象問題令和2年司法試験・労働法第2問(配点50点)
問題文法務省・選択科目問題PDFの実頁24~25
答案の基準時令和2年8月12日。後の法令・判例を当時の根拠として遡及利用しない。
出題の趣旨実読済み。合冊PDF実頁35の第2問から36の環境法直前まで。
採点実感実読済み。実頁32の共通部分,33の第2問以降,34~35。第1問部分は対象外。
評価項目26項目。重み5は9項目。重み合計107。いずれも独自の整理である。
主要判例第二鳩タクシー事件,寿建築研究所事件。救済内容の裁量と成否判断を区別する。
答案分量2173字(見出し・句読点・空白・改行を含む完成答案本文)。
試験後の動向本稿は試験当時の問題を扱う。後発の法令・判例を答案の根拠にしていない。
同年度の案内令和2年司法試験論文式試験の主要7科目の模範解答(AI作成)は主要7科目を扱う記事である。
確認日令和8年10月18日

本稿の答案は,E組合の法適合性の立証を前提に,A社の継続的な拒否が団交拒否及び支配介入に当たり,団交応諾等の救済と団交を求め得る地位の確認が認められるとする。
損害賠償には,組合自身の損害等の要件が別に必要である。
法務省は唯一の模範解答や項目別配点を公表しているわけではなく,以下の重みは法務省の採点基準・得点予測ではない。

第2 評価項目の示し方と重み付けの基準

1 評価項目の示し方

出題の趣旨から設問の構造・法的論点・事実評価を,採点実感から論証の深さや典型的な誤りを抽出した。
一つの項目で一つの評価対象を扱い,記事全体を通じて番号を付した。
「必須」「高評価」「負例」「許容分岐」は重みとは別の区分であり,高評価や条件付き事項を全答案への累積的な必須事項にはしない。
原資料は合冊PDFの実頁で示し,「記載なし」は本問の関連範囲を実読した結果を意味する。

表の番号と内部の追跡番号は1対1であり,番号1はR1に対応する。
負例は番号15・20として独立の判断対象を残したため,公開表と内部集計の件数は一致する。
一般的な文章作法・手書き文字の読取りやすさ等は別の一般的指摘であり,重み集計に加えていない。

2 5段階の重み付けの基準

重み判断基準
5採点実感が評価の分かれ目とした事項,又は答案の骨格そのもの
4出題の趣旨が検討を求め,採点実感も取り上げた(高く評価した・多数の答案の不足を指摘した)事項
3どちらか一方が明示する中核の理由付け
2一方が軽い表現で触れる補強の事項,又は典型的な誤りとして指摘された事項
1一方が控えめに触れるだけの事項

本問に即して各項目を個別に判断したものであり,各段階に一定の件数を割り当てたものではない。
同じ結論でも,名簿確認の必要性や二重交渉の問題を制度趣旨から説明できるかが重要である。

第3 本問の概要

1 問題文と事実関係

公式問題文は,法務省の選択科目問題PDFの実頁24~25にある。
A社には従業員の85%が加入するB組合があり,ユニオン・ショップ協定とチェック・オフ協定がある。
営業第二課長Cは部下への叱責を理由として,労使の懲戒委員会による調査・決定を経て減給された。
B組合が解決済みとして取り合わなかったため,CはB籍を残したまま,F・Gと地域合同労組Eに加入した。

EがCの減給処分に関する団交を申し入れたところ,A社は,全組合員の氏名不開示,二重交渉の可能性,Cが管理職であることを理由として拒否した。
EはCを特定し,組合の名称・所在地・役員名を示し規約も添付し,Bが交渉しない事情を説明したが,拒否は続いた。
Cの職務は,人事考課表の提出,異動希望の取りまとめ,営業方針原案の提出,経営会議等での説明である。
役職手当は月12万円,割増賃金は支給されず,出退勤時刻は拘束されていない。

2 設問が求めること

設問立場・対象指定・除外到達点
1E組合がA社に求める救済機関・法的根拠・救済内容を挙げ,救済内容に係る論点も論じる。労委の救済と裁判所の地位確認・損害賠償,団交履行請求等の可否を区別する。
2設問1の救済の可否3つの拒否理由と支配介入を,具体的事実に即して評価する。不当労働行為の成否を救済の可否へ接続する。

C個人の減給処分の実体的有効性,Dの請求や,労基法上の割増賃金請求を独立に解く問題ではない。
労基法の管理監督者性を考えさせる事情があっても,問われているのは主として労組法上の利益代表者性である。

第4 評価項目と重み

1 救済機関・救済内容と裁量

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
1【必須】労働委員会を救済機関として挙げる5実頁36・第2問。労委を救済機関とする。実頁33・3⑵。両機関はほとんどの答案が指摘。
2【必須】裁判所を救済機関として挙げる5実頁36・第2問。裁判所を救済機関とする。実頁33・3⑵。両機関はほとんどの答案が指摘。
3【必須】団交拒否の救済根拠として労組法7条2号を示す5実頁36・第2問。団交拒否を根拠とする。実頁33・3⑵。2号だけの根拠にとどまる答案が多い。
4【必須】支配介入の救済根拠として労組法7条3号も示す5実頁36・第2問。支配介入も根拠とする。実頁33・3⑵。3号を挙げた答案は少数。
5【必須】労働委員会に誠実団交応諾命令を求める4実頁36・第2問。誠実団交応諾命令を例示。実頁33・3⑵。応諾命令は多くが指摘。
6【必須】労働委員会にポストノーティス等の再発防止を求める4実頁36・第2問。ポストノーティス等を例示。実頁33・3⑵。指摘できた答案は多くない。
7【必須】裁判所に団交を求め得る地位の確認を求める4実頁36・第2問。団交を求める地位確認を例示。実頁33・3⑵。地位確認は多くが指摘。
8【必須】裁判所に組合自身の被害の損害賠償を求める4実頁36・第2問。損害賠償等を例示。実頁33・3⑵。指摘できた答案は多くない。
9【高評価】労委の回復措置と司法救済の異同を不当労働行為制度の趣旨から説明する4実頁36・第2問。機関ごとに異なる救済を検討。実頁33・3⑵。制度趣旨からの比較を高く評価。
10【必須】労委は制度目的の範囲で救済内容を選択する広い裁量を持つと論ずる5実頁36・第2問。第二鳩タクシー事件を参照し裁量を論ずる。実頁33・3⑵。救済内容の論点を論じた答案は少ない。
11【必須】不当労働行為の成否には労委の要件裁量はなく、労委・裁判所で同一の法的判断になると示す4実頁36・第2問。寿建築研究所事件を参照し要件裁量を否定。実頁33・3⑵。同一判断の理論的根拠の記載が少ない。
12【許容分岐】裁判所への団交履行請求・応諾仮処分の可否を具体的請求権の性質から理由付きで論ずる4実頁36・第2問。団交請求・応諾仮処分の可否を検討。実頁33・3⑵。請求の可否の論述が少ない。

2 組合員名簿

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
13【必須】Cの減給という議題に照らし、C以外の全氏名が本件団交開始に必要かを検討する4実頁36・第2問。C以外を特定する必要事情を問う。実頁34・3⑵。議題による確認の必要性を評価。
14【高評価】議題によっては所属する者・人数の確認が必要となり、名簿不提出が正当理由となる場合も認める3本問の関連範囲に記載なし。実頁34・3⑵。議題によっては所属者・人数確認が必要。
15【負例】名簿の提出要求それ自体を常にプライバシー侵害・支配介入と断定しない2本問の関連範囲に記載なし。実頁34・3⑵。要求自体を一律違法とする答案を戒める。
16【高評価】組合員を特定しようとする行為が態様によって新たな不当労働行為となる危険も検討する3本問の関連範囲に記載なし。実頁34・3⑵。新たな侵害の危険の指摘はごく少数。

3 二重加入と二重交渉

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
17【必須】重複加入と、当該事項について現実に二重交渉となるおそれを区別する4実頁36・第2問。重複加入と現実の交渉危険を検討。実頁34・3⑵。3争点の一つとして分析の精粗を評価。
18【高評価】二重交渉が拒否の正当理由になり得る理由を、交渉権限・矛盾する要求や合意・重複負担等から説明する5実頁36・第2問。交渉のおそれと法の趣旨からの柔軟な検討を要求(理論的理由の詳細は間接)。実頁34・3⑵。拒否を正当化する理由の掘下げが不足。
19【必須】Bの解決済み回答とEからの通知を踏まえ、同一事項について現実の二重交渉のおそれを評価する4実頁36・第2問。当該団交事項の二重交渉危険を評価。実頁34・3⑵。解決済みだけで結論を出す答案が多い。
20【負例】複数組合主義や中立保持義務だけから二重交渉の結論を直接導かない2本問の関連範囲に記載なし。実頁34・3⑵。一般原則だけからの結論を戒める。

4 利益代表者と管理監督者

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
21【必須】組合の自主性確保という2条但書1号の趣旨・構造に沿い、職名だけで法適合性を否定しない5実頁36・第2問。Cの地位とEの自主性を検討。実頁34・3⑵。2条の趣旨・構造に沿う答案を高く評価。
22【必須】Cの人事考課表提出・異動希望の取りまとめ・原案提出・会議説明のみという権限実態を直接人事権限等に照らして評価する4実頁36・第2問。Cの勤務実態を利益代表者性に照らす。実頁34・3⑵。直接人事権限の事実評価は比較的できていた。
23【必須】機密接触を一般的人事情報と区別し、労働関係の計画方針の機密・組合員責任との直接抵触を検討する5実頁36・第2問。利益代表者性の検討を要求。実頁34・3⑵。機密接触への論及不足を指摘。
24【必須】Cの会議出席・人事情報への接触可能性を与件から評価し、情報を知り得るだけで利益代表者としない4実頁36・第2問。Cの勤務実態に即した判断を要求。実頁34・3⑵。機密接触への事実評価不足を指摘。
25【必須】労組法の利益代表者と労基法41条2号の管理監督者を区別し、手当・割増なし・時間自由だけで前者を判断しない5実頁36・第2問。利益代表者性を検討。実頁34・3⑵。管理監督者との混同を戒める。

5 支配介入

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
26【必須】名簿要求や拒否を含むAの態度が、Eの交渉主体性を否定し弱体化させる支配介入となるか独立に論ずる4実頁36・第2問。使用者の態度が組合を弱体化するかを論ずる。実頁33・3⑵。3号を挙げた少数答案を指摘。

6 重みの分布

重み1は0項目,2は2項目,3は2項目,4は13項目,5は9項目である。
総項目数N=0+2+2+13+9=26,重み合計W=1×0+2×2+3×2+4×13+5×9=107となる。
重み5は番号1~4,10,18,21,23,25である。
機関・禁止類型・救済裁量という骨格と,二重交渉の理由,利益代表者の趣旨・機密経路,管理監督者との区別を中心に置く。

第5 模範解答

1 答案の前提と表記

試験当時の法令と,その時点までの判例を基準とする。
以下は2173字であり,2500字の上限内である。
団交履行請求については否定説を採り,別の結論を採る答案でも理論と当てはめを一貫させる必要がある。

2 答案

第1 設問1
1 E組合は,都道府県労働委員会に,A社の団交拒否及び組合への支配介入を理由として,不当労働行為救済を申し立てることができる(労組法7条2号・3号,27条,27条の12第1項)。
求める救済は,Cの減給処分についての誠実団交応諾命令及び違反の認定と再発防止を内容とする文書の掲示・交付等のポストノーティスである。
救済命令は,侵害状態を是正して正常な集団的労使関係を迅速に回復する制度である。個々の侵害に適した是正には専門性を要するため,労働委員会は救済内容の選択について広い裁量を有するが,制度目的からの逸脱・濫用は許されない(第二鳩タクシー事件)。
団交応諾は合意達成に向けた誠実な交渉を命ずるもので,減給撤回への同意を当然に強制するものではない。

2 裁判所では,E組合がCの減給処分につき団交を求め得る地位の確認と,違法な団交拒否による損害の賠償を求めることが考えられる。
団交を具体的に履行する給付請求や応諾仮処分については,憲法28条・労組法7条2号を根拠に私法上の具体的団交請求権を認める考えもある。しかし,誠実交渉の給付内容の特定と強制履行に困難があることから,本件ではこれを否定する。
それでも,団交の当事者適格や交渉事項をめぐる私法上の法律関係の確認は可能である。A社はE組合の資格と団交義務を争っており,本件事項について団交を求め得る地位を確定すれば紛争解決に資するから,確認の利益がある。
損害賠償は,団交権侵害についてA社の故意・過失,E組合自身の損害及び因果関係がある場合に,民法709条に基づいて認められる。Cの減給額を当然にE組合の損害とはできない。
このように,労委の救済は正常な労使関係の回復を目的とする行政上の是正であり,裁判所による私法上の地位確認・損害填補と役割が異なる。

第2 設問2
1 救済の共通前提
労働委員会には,不当労働行為の成否について要件裁量はない(寿建築研究所事件)。救済内容の裁量とは異なり,成否は裁判所と同一の法的基準で判断される。

2 Cの利益代表者性
労組法2条但書1号は,組合の自主独立性を確保するため,使用者の利益を代表する者の参加を許す団体を法適合組合から除く。職名でなく,権限・職務の実質をみる。
Cは人事考課表を人事課へ提出し,異動希望を取りまとめるが,雇入れ・解雇・昇進・異動の直接決定権限は認め難い。営業方針は原案を部長に提出するだけで,経営会議等でも説明のみを行い,議事参加権限・議決権はない。
また,一般の人事情報や営業方針を知ることと,労働関係の計画・方針に関する機密に接し,職務上の義務責任が組合員としての誠意責任と直接抵触することとは異なる。Cの会議出席は担当案件の説明に限られ,労使交渉方針等の機密を扱う職務は示されていない。与件の権限・職務から,そのような直接抵触を認めるのは困難である。
12万円の手当,割増賃金不支給,出退勤時刻の自由は,労働時間規制の適用除外を目的とする労基法41条2号の管理監督者性に関係するが,組合の自主性を守る利益代表者性とは目的・要件が違う。これらだけで後者を肯定できない。
よって,Cの参加はE組合の自主性を失わせない。E組合が2条・5条2項への適合を立証すれば,5条1項の救済資格を得る。

3 団交拒否
Cの減給は組合員の待遇に関し,A社が再検討できる事項であり,義務的団交事項である。B組合役員が参加した懲戒委員会の決定も,E組合との交渉を尽くしたことにはならない。

⑴ 名簿
組合が雇用労働者を代表することと議題は確認される必要がある。議題によっては所属者・人数の確認が必要であり,名簿要求が常に違法であるわけではない。
しかし,本件ではCの氏名・職位と減給という議題が明示され,組合名・所在地・役員名・規約も示されている。C個人の処分の交渉に他の全組合員の特定は必要なく,不提出は拒否の正当理由にならない。
他方,必要な範囲を超える特定要求を組合活動の抑圧に用いる等の場合には,新たな支配介入を生じ得ることにも留意する。

⑵ 二重加入
重複加入自体は禁じられず,各組合の団交権も否定されない。ただし,同一事項につき相矛盾する要求・合意や交渉の反復を強い,紛争の解決を妨げる具体的なおそれがあれば,交渉権限の調整まで拒否する正当理由となり得る。複数組合主義や中立保持義務だけで結論は出ない。
B組合は本件を解決済みとして相談に取り合わず,E組合はその事情を通知している。B組合が同じ事項を改めて交渉する具体的事情はなく,抽象的可能性だけでE組合との団交を拒否できない。B組合の85%という組織率や両協定も,E組合の団交権を排除しない。
以上から,拒否は7条2号に当たる。

4 支配介入と救済
A社は,E組合の説明・反論を受けても根拠の乏しい理由で拒否を続け,E組合がCを代表して活動することを妨げている。この態度はE組合を交渉主体として否認し,その信用・団結を弱体化させるもので,7条3号にも当たる。
したがって,資格立証を前提に,誠実団交応諾及び再発防止のポストノーティスが認められる。団交を求め得る地位の確認も認められ,損害賠償は前述の損害等が認められる範囲で認容される。
以上

3 出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説

(1) 答案と評価項目の対応

評価番号答案の対応箇所扱い
1第1の1:「都道府県労働委員会に」実在箇所に対応
2第1の2:「裁判所では」実在箇所に対応
3第1の1:「団交拒否及び」実在箇所に対応
4第1の1:「労組法7条2号・3号」実在箇所に対応
5第1の1:「誠実団交応諾命令」実在箇所に対応
6第1の1:「ポストノーティス」実在箇所に対応
7第1の2:「団交を求め得る地位の確認」実在箇所に対応
8第1の2:「民法709条」実在箇所に対応
9第1の2:「行政上の是正」実在箇所に対応
10第1の1:「広い裁量」実在箇所に対応
11第2の1:「要件裁量はない」実在箇所に対応
12第1の2:「給付請求や応諾仮処分」条件付き事項を説明
13第2の3⑴:「C個人の処分の交渉に他の全組合員の特定は必要なく」実在箇所に対応
14第2の3⑴:「所属者・人数の確認が必要」実在箇所に対応
15第2の3⑴:「名簿要求が常に違法であるわけではない」実在箇所に対応
16第2の3⑴:「新たな支配介入を生じ得る」条件付き事項を説明
17第2の3⑵:「重複加入自体は禁じられず」実在箇所に対応
18第2の3⑵:「相矛盾する要求・合意や交渉の反復」実在箇所に対応
19第2の3⑵:「B組合は本件を解決済み」実在箇所に対応
20第2の3⑵:「中立保持義務だけで結論は出ない」実在箇所に対応
21第2の2:「組合の自主独立性を確保するため」実在箇所に対応
22第2の2:「Cは人事考課表を人事課へ提出し」実在箇所に対応
23第2の2:「組合員としての誠意責任と直接抵触」実在箇所に対応
24第2の2:「労使交渉方針等の機密を扱う職務は示されていない」実在箇所に対応
25第2の2:「目的・要件が違う」実在箇所に対応
26第2の4:「その信用・団結を弱体化させる」実在箇所に対応

(2) 機関の違いと二つの裁量

労委による救済は,侵害状態を除去して正常な集団的労使関係を回復するための是正措置である。
裁判所による地位確認・損害賠償は,私法上の法律関係や損害を扱う。
第二鳩タクシー事件が認める救済内容の広い裁量と,寿建築研究所事件が否定する不当労働行為の成否についての要件裁量は,対象とする判断が違う。
番号10と11を併せて読む必要がある。

具体的な団交履行請求の肯否と,団交を求め得る地位の確認は区別される。
給付内容・強制の困難を理由に前者を否定しても,争われている交渉資格・事項を後者によって確定する余地は残る。
また,損害賠償は組合自身の被害に関するもので,従業員の減給額をそのまま組合へ賠償させるものではない。

(3) 名簿確認と二重交渉

番号13~16は,名簿確認の必要性と,確認行為の態様を分けるものである。
特定の組合員の処分を議題とする本件と,組合の代表する人数等が問題となる議題とでは,確認に必要な範囲が異なる。
提出要求を一律に違法としたり,名簿提出を一律に団交の条件としたりすることは避けるべきである。
必要な確認であっても,加入者の探索を組合活動の抑圧に用いる態様なら別の不当労働行為が問題となる。

二重加入と二重交渉は同じではない。
各組合の団交権を認めつつ,矛盾する要求・合意や交渉の反復によって使用者にどのような負担が生じるのか,そのおそれが本件で具体化しているのかを説明する。
Bの「解決済み」という言葉だけで結論を出さず,Eからの通知後もBとの再交渉が現実に問題となるのかを検討する点が番号18・19の中心である。

(4) 利益代表者性と支配介入

番号21~25では,課長という呼称を,直接の人事権限や機密に接する職務へ置き換えてはならない。
人事考課や原案提出の役割と決定権限との距離を検討し,経営一般の情報と労働関係の計画・方針の機密も区別する。
機密を全く知り得ないと断定するのではなく,Cの職務上の義務責任が組合員責任と直接抵触するかを,与えられた事実から評価する。

番号4と26は,拒否理由の検討だけでは回収できない独立の評価である。
使用者の態度がE組合の交渉主体性を否定し,弱体化させる行為に当たるかを論じる必要がある。
本稿は,Eの具体的な説明・反論の後も根拠の乏しい拒否を継続する態度を重視して支配介入を認めるが,違法な団交拒否が常に自動的に支配介入にもなると一般化するものではない。

(5) 答案の弱点と扱わなかった事項

本稿の答案は,団交履行請求を否定する立場を採っている。
肯定説を採る場合には,私法上の権利の根拠,求める給付の具体性及び履行確保を一貫して論じる必要がある。
名簿確認による新たな侵害や二重交渉を拒める理由の具体例は,字数に応じて解説も参照されたい。
Cの減給処分自体の有効性,Dの退職に関する責任,割増賃金請求等は本問の救済主体・対象と異なるため,独立の検討対象としていない。

第6 関連記事

1 同じ年度の司法試験の記事

①令和2年司法試験論文式試験の主要7科目の模範解答(AI作成)
上記は主要7科目を扱う記事であり,本問の労働法答案そのものを収録する記事とは区別される。

2 同じ科目の別の年度の記事

①令和7年度司法試験労働法第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した33項目と5段階の重み付け(AI作成)
②令和6年司法試験労働法第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した40項目と5段階の重み付け(AI作成)
③令和5年司法試験労働法第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した30項目と5段階の重み付け(AI作成)

3 本問の論点に関連する記事

①労働協約(AIリライト)
関連する制度を確認するための導線であり,それぞれの記事の基準時・対象範囲を本問と混同しない。

第7 出典及び確認状態

1 公式資料

①法務省「令和2年司法試験問題」及び選択科目問題PDF:実頁24~25の労働法第2問を実読。
②法務省「令和2年司法試験論文式試験問題出題の趣旨」:実頁35の第2問見出しから36の次科目直前までを実読。
③法務省「令和2年司法試験の採点実感」の選択科目PDF:労働法の共通部分(実頁32),第2問(実頁33途中~34),共通評価・末尾(実頁35)を実読。
④法務省「令和2年司法試験の実施日程等について」:選択科目の試験日が令和2年8月12日であることを確認した。

2 法令

e-Gov法令検索の労働組合法について,施行履歴から平成28年4月1日施行版を取得し,本則2条・3条・5条・6条・7条・20条・27条・27条の12等を確認した。
e-Govの日本国憲法28条,民法の令和2年4月1日施行版709条・710条,労働基準法の同日施行版41条も確認した。
リンク先の現在表示と試験当時の適用版は区別する。

3 裁判例・行政資料

①第二鳩タクシー事件・最大判昭和52年2月23日(民集31巻1号93頁)の原文:実頁1~2の救済制度の趣旨・裁量に関する法廷意見を確認。
②寿建築研究所事件・最判昭和53年11月24日(集民125号709頁)の原文:実頁1~2を確認。要件裁量と是正措置の裁量を区別する。
③放送映画製作所事件・東京地判平成6年10月27日の原文:表題及び実頁35~36の課長の職務・機密情報・自主性に関する理由を確認。
④中ノ郷信用組合事件・東京都労委平成24年7月17日命令の原文:実頁1~2,9~12,14~15を確認。重複加入と実際の交渉危険を区別した行政命令である。
⑤団交を求め得る地位の確認に関する平成13年10月1日判決の原文:実頁14~16の判決理由を確認。
⑥昭和36年5月15日「組合員名簿の提出要求と団体交渉拒否の正当理由」:通達全文を確認した。行政解釈であり,裁判所の判断と同一視しない。

4 確認状態

公式資料が述べる出題上の要求と,本稿が行う評価単位への分解・重み付け・答案の結論は区別する。
本稿の評価表は公式資料からの独自抽出であり,労組法5条の資格立証や義務的団交事項等の説明には,独立して確認した法令・判決による補足も含む。
名簿確認の必要性,二重交渉の正当化理由及び支配介入の具体的評価を,唯一の確立判例の結論として示すものではない。
他の問題の公式解説や,試験後の法令・判例によって本問の答案要求を置き換えていない。