第1 この記事の対象と三つの手続
1 令和8年8月29日現在の司法試験を扱う
この記事は,令和8年司法試験で導入された電子出願とCBTについて,①出願から受験票取得まで,②試験当日の端末操作と持込品,③端末・ネットワーク等の障害時の取扱い及び④受験特別措置を説明する。
受験資格,5年間の受験期間,試験科目及び合格後の流れは,司法試験とは―受験資格,5年間の受験期間,試験科目,合格判定及び合格後の流れで整理している。
令和8年司法試験では短答式試験と論文式試験の双方がCBTで実施されたが,出願方法としては電子出願と郵送出願が併存した。
令和9年以降の出願期間,手数料,アプリケーションの仕様及び紙の試験用法文の取扱いは変更され得るため,受験年度の受験案内とQ&Aを改めて確認する必要がある。
2 電子出願,CBT及び受験特別措置は別の場面である
電子出願は,マイナポータルを利用して受験申請,手数料納付及び受験票取得等を行う手続である。
CBTは,指定された試験会場のパソコンで問題を閲覧し,短答式の選択又は論文式答案の入力を行う試験方式である。
また,受験特別措置は,身体に障害がある場合などに,申出と審査を経て障害等の種類・程度に応じた措置を行う制度である。
電子出願を選んだことだけで私物パソコンを持ち込めるわけではなく,私物パソコンの使用は受験特別措置として認められた場合に限られる。
第2 電子出願は手数料の決済完了まで必要である
1 電子出願と郵送出願の違い
令和8年司法試験の出願方法は,電子出願と郵送出願の二つであった。
電子出願には電子証明書が有効なマイナンバーカードが必要であり,郵送出願では,事前に郵送で紙の受験願書を請求してから書留で提出する必要があった。
| 項目 | 電子出願 | 郵送出願 |
|---|---|---|
| 令和8年の出願期間 | 3月9日午前9時30分~4月2日午後11時59分 | 3月19日~4月2日(同日消印有効) |
| 令和8年の受験手数料 | 3万1000円 | 3万2000円 |
| 納付方法 | KOKO PASSを利用したPay-easy | 収入印紙 |
| 受験票 | マイナポータルから取得して自分で印刷 | 郵送 |
この日程と金額は令和8年司法試験のものである。
出願期間の最終日だけでなく,電子出願では受験手数料の納付期限も確認する必要がある。
2 事前準備と添付ファイル
電子出願では,①電子証明書が有効なマイナンバーカード,②ログインに用いるスマートフォン又はICカードリーダライタ等,③マイナポータルアプリ及び④マイナポータルの利用者登録を準備する。
パソコンに表示した二次元コードを対応スマートフォンで読み取り,ログイン後の入力をパソコンで行う方法も用意された。
令和8年の顔写真は拡張子が「.jpg」のファイルに限られ,顔写真を含む添付書類の合計容量は9MB以下とされた。
マイナポータルのFAQは,申請時のエラーが表示された場合,容量のほか,ファイル名に外字,絵文字,濁点又は記号等の特殊文字を使用していないかを確認するよう案内している。
3 申請送信前の確認画面を保存する
令和8年の電子出願要領によれば,申請情報の最終確認画面より先へ進むと,その後は入力内容を確認できず,出願後の電話による申請内容の確認にも回答しない取扱いとされた。
そのため,同要領は,送信前に入力内容を確認し,必要に応じて最終確認画面を保存するよう案内している。
選択科目,受験資格,受験希望エリア,連絡先及び添付書類は,申請送信前に受験案内と照合する必要がある。
不備願書は出願期間内に補正を完了する必要があるため,申請送信を出願期間の末尾まで待つことには補正時間を失う危険がある。
4 申請情報の送信だけでは出願は完了しない
令和8年の電子出願では,申請情報を送信した後,マイナポータルの「やること」に表示される「決済待ち」の申請を選び,KOKO PASSへ進んでPay-easyで受験手数料を納付する必要があった。
申請日が3月30日以前の場合は申請日の3日後の午後11時59分まで,3月31日以後の場合は一律に4月2日午後11時59分までが納付期限とされた。
電子出願が完了するのは,受験手数料を納付して決済済みとなった時点である。
納付後もマイナポータルの表示が「進行中(処理中)」となる場合があるため,「やること」から申請情報を開き,決済状況が「決済済み」であることを確認する必要がある。
第3 受験票と試験会場のパソコン
1 電子出願者は受験票を紙に印刷する
令和8年の電子出願者に対する受験票は,4月30日からマイナポータルに通知された。
マイナポータルの「さがす」,「証明書」,「国家資格の登録・各種申請」,「司法試験」の順に進み,「受験情報」から受験票をダウンロードする仕組みであった。
電子出願者は,受験票を紙に印刷して当日持参する必要があり,スマートフォン等の画面表示だけでは受験できない。
受験票を忘れ,又は紛失した場合は,当日の受付でその旨を申し出た上,本人確認書類を提示する取扱いとされている。
2 通常の受験では会場設置の端末を使用する
令和8年司法試験では,試験会場に設置されたWindows 11 Proのデスクトップ型パソコン,JIS配列のキーボード及びマウスを使用した。
モニターは解像度1920×1080ピクセル以上,サイズ23インチ以上とされ,キーボードの文字キーのキーピッチは19mmに統一された。
文字入力ソフトは日本語Microsoft IMEであり,学習機能は使用できる一方,予測変換機能は使用できなかった。
着席後から試験開始までの間には,タイピング等の操作性を確認する時間が設けられた。
第4 短答式と論文式のCBT操作
1 短答式は選択,見直し及び問題移動ができる
短答式試験では,画面の選択肢番号をクリックして解答し,同じ選択肢を再度クリックすると選択を外すことができる。
「後で見直す」にチェックを付けると一覧に見直し対象として表示され,前後の問題や解答内容一覧から別の問題へ移動できる。
問題をいったん飛ばして後から戻ることも,選んだ解答を修正することも可能である。
試験終了時には,選択した解答が自動で回収される。
2 論文式は答案欄,問題,法文及びメモを切り替える
論文式試験の画面には,問題エリア,答案作成エリア,試験用法文エリア及びメモ機能がある。
問題,答案及び法文の各エリアは表示・非表示と位置を切り替えることができ,1画面から3画面までの組合せを選べる。
答案作成エリアでは,答案の文字数と行数が表示され,設問が複数ある科目では上部の設問番号タブで答案入力欄を切り替える。
検索と置換,コピー,切取り,貼付け,元に戻す及びやり直す機能を利用できるが,問題文自体をコピーすることはできない。
3 答案入力欄の取違いは試験中に直す
令和8年司法試験の論文式答案は,1頁23行,1行当たり最大30文字であり,必須科目は1問につき8頁,選択科目は1問につき4頁が上限とされた。
選択科目で第1問と第2問の答案入力欄を取り違えた場合は零点となり,試験終了後の訂正申請には応じない取扱いであった。
試験時間中に取違いに気付いた場合は,コピー・貼付け機能等を使い,自分で正しい答案入力欄へ移す必要がある。
直接の入替えが文字数上限のため難しい場合は,メモ画面を介して答案を移す方法がQ&Aで示されている。
第5 問題文,試験用法文及びメモ用紙
1 問題文は画面だけで表示された
令和8年司法試験では,短答式・論文式とも,問題文は紙で配付されず,CBT画面に表示された。
問題画面にはマーカー,ペン,図形,拡大・縮小等の機能があるが,受験者は事前に法務省の体験版と操作マニュアルで操作を確認できる。
体験版は基本的な画面構成と操作方法を確認するためのものであり,本番とすべて同じではない。
例えば,体験版ではF11キー等で全画面表示を解除できたが,実際の試験ではこの操作を行うことができず,体験版の終了・答案保存の挙動も本番と異なる。
2 令和8年は紙と画面の法文を併用した
令和8年司法試験の論文式試験では,試験用法文をパソコン画面で閲覧できたほか,紙媒体でも配付された。
画面上では目次,文字列検索及び算用数字による条数検索を利用できた。
紙の試験用法文は論文式試験が終了するまで貸与されたものであり,線を引き,書き込みをし,又は折り目を付けることは禁止された。
全ての論文式試験を受け終えた後は,自分が使用した法文を持ち帰ることが認められたが,令和9年以降も紙媒体を配付するかは引き続き検討するとされている。
3 メモ用紙は各試験時間に1枚である
令和8年司法試験では,問題検討用として,試験時間ごとにA3用紙を二つ折りにしたメモ用紙が1枚配付され,追加配付はなかった。
このメモ用紙は持ち帰ることができ,筆記には会場備品のシャープペンシルを使用した。
CBT画面内のメモ機能にも文字を入力でき,画面を閉じても試験終了までは入力内容が残る。
ただし,試験終了時に答案として回収されるのは答案入力欄の内容だけであり,画面内のメモや問題文への書き込みは答案にならない。
第6 試験当日の持込品
1 受験票と顔写真付き本人確認書類が必要である
試験当日に必要なものは,①受験票と②有効期限内で顔写真付きの本人確認書類の原本である。
本人確認書類の例として,運転免許証,パスポート,マイナンバーカード,在留カード,特別永住者証明書及び運転経歴証明書が挙げられている。
これらの例のいずれも持っていない場合は,司法試験委員会への事前確認が必要である。
電子出願者の受験票は紙に印刷したものを持参する。
2 持ち込める物品は限定されている
令和8年のQ&Aが受験票のほかに持込みを認めたのは,①条件を満たすペットボトル入り飲用水,②ハンカチ又はハンドタオル,③ポケットティッシュ,④マスク,⑤ヘアゴム又はヘアピン,⑥眼鏡,⑦条件を満たす耳栓,⑧薬並びに⑨目薬又は点鼻薬である。
生理用品は,試験監督員等へ申し出た上で持ち込むことができる。
飲用水は,透明な1000ml以下のペットボトル1本に限られ,ラベルを外し,凍らせず,飲むとき以外はキャップを締めて足元に置くなどの条件がある。
耳栓は,金属製部品を使用せず電子機器でないことが一見して明らかなものに限られ,ヘッドホン型又はイヤーマフ型は持ち込めない。
3 電子機器,時計及び私物の筆記具は持ち込めない
携帯電話,スマートウォッチ及び音響機器等の電子機器に加え,時計とストップウォッチも試験室へ持ち込めない。
現在時刻と残り時間はCBTアプリケーションに表示され,携帯電話は電源を切ってロッカーへ入れる取扱いであった。
私物の筆記具も持ち込めず,会場備品のメモ用紙とシャープペンシルだけを使用する。
薬を試験時間中に服用する場合は,持込みと服用の際に試験監督員等へ申し出て,試験室外で服用する取扱いである。
第7 端末,ネットワーク及び停電等の障害
1 答案は入力の都度自動でバックアップされる
法務省Q&Aによれば,作成中の答案,問題文への書き込み及びメモ画面への書き込みは,入力の都度,自動でバックアップされる。
端末に不具合が生じても直前の状態から再開できる仕様とされ,答案を手動で保存する機能はない。
誤って答案を消した場合は,「元に戻す」ボタン又はCtrl+Zで直前の状態へ戻せる。
論文式操作マニュアルでは,「元に戻す」機能は入力操作の最大10回前までとされているため,自動バックアップと操作取消しを同じ機能として扱うべきではない。
2 ネットワーク障害があっても継続できる仕様である
CBTシステムは,ネットワーク障害が生じた場合でも試験を継続できる仕様と説明されている。
また,試験終了時には答案入力欄に入力された内容だけが自動で回収され,受験者が手動で提出又は保存する操作は予定されていない。
試験時間終了前に答案を提出して退出することはできない。
Word等,CBTシステム以外のアプリケーションも起動できない仕様である。
3 時間変更等は障害の具体的状況に応じて決まる
地震又は停電が発生した場合,法務省Q&Aは,事象の規模・内容等を考慮し,具体的状況に応じて試験時間を変更するなど適切な対応を行うとしている。
端末不具合の場合も,具体的状況に応じて試験時間の変更等を行うとされており,すべての障害について一律の延長時間が保証されているわけではない。
答案作成に不要な操作を意図的に行って端末へ負荷を掛けた場合は,時間延長等を行わず,不正行為として受験禁止等の措置を採ることがあるとされている。
受験案内は試験会場で試験監督員等の指示に従うよう求めており,端末の異常が生じた場合もその指示に従うことになる。
第8 受験特別措置の申出
1 原則として出願時に必要書類を提出する
身体に障害がある場合などに特別措置を希望する者は,通常の受験願書に加え,司法試験身体障害者等受験特別措置申出書,法科大学院における特別措置の状況,医師の診断書,身体障害者手帳の写しその他の障害や傷病の程度を証明する書類を提出する。
電子出願者は申出書を電子化してマイナポータルへアップロードし,その他の必要書類は,所定の表示をした封筒に入れて書留で郵送する取扱いである。
実施概要に記載された障害の区分と措置は例であり,記載された内容だけに限定されない。
基準に該当しない場合も個別審査を行うとされているため,必要な措置と提出資料は司法試験委員会へ確認することになる。
2 出願後の負傷等は早期の連絡が必要である
出願後に不慮の事故等で負傷した場合も,身体に障害がある場合に準じた受験特別措置の対象となり得る。
もっとも,申出が試験日の直前である場合や申出内容によっては対応できないことがあるため,特別措置が必要になった時点で早期に司法試験委員会へ問い合わせる必要がある。
令和8年は,受験特別措置の実施方法等を6月下旬から7月上旬頃までに決定し,受験票とは別に申出者へ郵送する予定とされた。
電子出願者についても,この特別措置の通知はマイナポータルだけではなく別便の郵送であった。
3 私物パソコンは許可された特別措置である
視覚障害又は上肢・体幹の機能障害等に対する措置例には,試験時間の延長,私物パソコン用電子データによる出題,私物パソコンによる答案作成,画面読み上げ又は音声入力等が含まれる。
どの措置を行うかは申出内容と審査によって決まり,通常のCBT端末を好みの端末へ変更できる制度ではない。
私物パソコンの使用を認められた場合,使用する機器とソフトを事前に申し出て許可を受け,原則として試験日前日に職員立会いの下でパソコンを初期化し,必要なソフトをインストールした後に封印する。
申し出た以外のソフトは使用できず,使用機能にも制限が設けられる。
第9 年度ごとの再確認と関連記事
1 受験年度の資料で更新事項を確認する
電子出願の開始・終了時刻,納付期限,手数料,受験票の通知日,試験会場,持込品及びCBTアプリケーションの仕様は,受験年度の受験案内とQ&Aで確認する必要がある。
法務省は令和8年の受験案内ページでも,国外居住者の添付方法,申請内容の最終確認及び添付ファイルのエラーについて公表後に案内を更新した。
CBT体験版も更新されるため,古い画面説明だけに依拠せず,法務省のデジタル化ページに掲載された最新版と操作マニュアルを使うことが重要である。
令和9年以降の紙の試験用法文については,令和8年8月29日現在,引き続き検討するとされている。
2 採点及び制度史との役割分担
①司法試験の合格点・採点・成績通知―短答式の足切り,論文式の最低ライン,総合点及び順位
②司法試験制度の改正経緯―旧司法試験から法科大学院・予備試験・在学中受験・CBTまで
第10 出典・参考資料
1 所管行政機関の解説・Q&A・運用資料
①司法試験委員会「令和8年司法試験受験案内」PDF1頁,6頁~7頁及び15頁~16頁(表紙要約並びに資料上3頁~4頁及び12頁~13頁)
②司法試験委員会「【電子出願】令和8年司法試験出願要領」PDF1頁,35頁及び37頁~45頁(表紙並びに資料上34頁及び36頁~44頁)
③法務省「令和8年司法試験 受験案内」
④法務省「令和8年司法試験に関するQ&A」Q35,Q41~Q46,Q49~Q58,Q61~Q83,Q86~Q88,Q92,Q94及びQ101~Q106
⑤法務省「司法試験及び司法試験予備試験のデジタル化について」
⑥司法試験委員会「司法試験等CBTシステム体験版操作マニュアル<短答式試験>」PDF3頁~5頁(資料上2頁~4頁)
⑦司法試験委員会「司法試験等CBTシステム体験版操作マニュアル<論文式試験>」PDF3頁,8頁~10頁,16頁~17頁,21頁及び27頁(資料上2頁,7頁~9頁,15頁~16頁,20頁及び26頁)
⑧司法試験委員会「司法試験受験特別措置実施概要」PDF1頁~3頁,6頁及び9頁(資料上1頁~3頁,6頁及び別紙資料上2頁)
2 電子申請サービスのFAQ
①デジタル庁「『司法試験』『司法試験予備試験』の申請で『手続き内容を送信できませんでした』『システムエラーのため,手続き内容を送信できませんでした。時間をおいてやり直してください。』と表示され手続きができません。なぜでしょうか。」(令和8年3月11日公開)