メインコンテンツへスキップ
       

SSBJ開示にSHK制度の排出量を使えるか―スコープ1・2と期間調整の確認事項(AI作成)

第1 SHKの報告値を使う場合にも確認が必要である

温対法の温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度は,SHK制度と呼ばれる。
同制度のデータをSSBJの気候関連開示に利用する場合の取扱いとして,SSBJは2026年6月11日にサステナビリティ開示実務対応基準第1号を公表した。

利用に当たっては,どの測定方法を選ぶのか,どの会社・拠点とスコープに適用するのか,報告期間が一致するかを確認する必要がある。
この記事は,2026年11月3日時点の同基準と金融庁の告示等に基づき,データをつなぐ際の注意点を整理する。

第2 実務対応基準が扱う場合と扱わない場合

同基準第2項の対象は,SHK制度の対象企業が,「気候基準」第49項ただし書きの取扱いを選び,企業の全部又は一部についてSHK制度の方法による排出量を用いる場合である。
スコープ1とスコープ2のいずれか,又は両方への適用が想定されている。

他方,SHK制度の数値を出発点として調整計算を行い,GHGプロトコルに従う測定値を作成する場合には,この実務対応基準は適用しないとされている(第3項)。
「SHKのデータを使った」という事実だけで,同じ開示方法になるわけではない。

実務上は,会社・拠点及びスコープごとに,SHKの方法を選ぶのか,GHGプロトコルに従う測定を行うのかを先に記録することが有用である。
これは,数値と測定方法の説明を取り違えないための本記事の提案である。

第3 スコープ1・2の数値の対応

1 スコープ1

実務対応基準第7項は,SHK制度に基づく直接排出を,スコープ1に含めて開示する取扱いを定めている。
この方法を選ぶ場合,期間調整を除く追加調整は行わない。

2 スコープ2のマーケット基準

SHK制度に基づく間接排出は,スコープ2のマーケット基準による排出量に含めて開示する取扱いである。
ここでも,期間調整を除く追加調整は行わない。

3 スコープ2のロケーション基準

ロケーション基準については,SHK制度に基づく間接排出に係る活動量に,環境大臣及び経済産業大臣が公表する平均的な排出係数を乗じる方法で算定する。
したがって,手元のマーケット基準に対応する数値を,そのままロケーション基準の欄にも記載して済ませる取扱いではない。

基準の結論の背景BC24以下は,両方を開示する理由と算定方法を説明している。
実際の作業では,電力等の使用量,利用した係数,係数の版及び算定結果を対応させて保存することが有用である。
この保存項目は,本記事の作業管理上の提案である。

第4 基礎排出量と調整後排出量を混同しない

同基準は,基礎排出量における直接排出・間接排出を定義したうえで,第7項の対応を定めている。
クレジット等を反映した調整後排出量の合計を,そのままスコープ1・2の数値として置くことは避けなければならない。

結論の背景BC18以下は,基礎排出量と調整後排出量の違いを説明している。
社内で「温対法の排出量」という名前だけで複数の数値が流通している場合には,どの数値なのかを元の報告資料まで戻って確認する必要がある。

第5 報告期間が違う場合の期間調整

SHK制度の算定期間とサステナビリティ関連財務開示の報告期間が異なる場合は,期間調整を行う(第9項)。
国への報告に用いた数字が既にあることと,有価証券報告書の対象期間に対応した数字があることは,別に確認する必要がある。

例えば,決算期とSHKの算定期間がずれる会社では,期間の始期・終期を並べ,必要な月別資料を確保してから調整する,という工程が考えられる。
これは本記事の運用例であり,特定の調整計算式を基準が全ての会社に一律指定しているという意味ではない。

第6 適用時期と比較情報

実務対応基準は,2027年3月31日以後終了する年次報告期間に係る気候関連開示から適用する。
それより前の年次報告期間への早期適用も認められており,選択した場合にはその旨を開示する(第11項)。

最初に適用する年度の比較情報については,第12項・第13項が,法令に基づく開示と任意開示の取扱いを定めている。
前年度にSHK制度の排出量を用いた開示があるか,比較情報を開示するか,実務上不可能な場合の条件に該当するかを確認する。

金融庁は2026年9月15日,この実務対応基準を指定する告示改正を公表した。
基準自体の適用時期と,自社が法令によりSSBJ基準の開示を始める時期は,それぞれ確認する必要がある。

第7 開示部門へ渡す資料のそろえ方

以下は,環境担当と開示担当の間で数値を受け渡すための本記事の運用提案である。
まず,会社・拠点ごとの対象一覧と測定方法の選択を残す。
次に,元のSHK報告資料,基礎排出量の内訳,活動量,係数及び期間調整の資料をそろえる。

そのうえで,スコープ1,スコープ2のマーケット基準,スコープ2のロケーション基準の各数値と,開示原稿の記載を対応させる。
一部に異なる方法を使う場合には,どこにどの方法を用いたかを説明できるようにする。
SHK制度の対象外の拠点や海外拠点まで同じ方法で処理できると,安易に拡張しない。

基準に付された設例は,理解を助けるための開示イメージである。
設例の会社や数値を,実在企業の開示事実として紹介しない。

第8 よくある質問

1 この基準でスコープ3の集計も済むか

本記事で扱う第7項の対応関係は,スコープ1・2についてのものである。
これを根拠として,スコープ3の測定や開示の要否まで一括して処理することはできない。

2 SHK制度の報告書を添付するだけでよいか

実務対応基準を利用する場合も,適用範囲,期間調整,開示方法及び他のSSBJ基準の要求事項を確認する必要がある。
SHK制度の報告書の存在だけで,気候関連開示が完成したとは判断しない。

第9 関連記事と出典

SSBJの全体像は,SSBJ基準の記事を参照されたい。

主要な根拠は,SSBJのサステナビリティ開示実務対応基準第1号第2・3・7~13項,結論の背景BC18~BC38及び設例である。
金融庁の指定については,2026年9月15日公表資料,告示改正及びパブリックコメント回答を参照した。