第1 この記事の対象と結論
本記事は,平成28年司法試験民事系第3問(民事訴訟法)を対象に,法務省の出題趣旨と採点実感を踏まえた模範解答,評価項目,解説を整理するものである。
公式資料から抽出・整理した評価項目は55項目,重み5は20項目,重みの単純合計は210である。
項目の分け方,文言及び重みは本記事独自の分析であり,法務省の公式採点基準・配点・公式答案ではない。
| 確認事項 | 内容 |
|---|---|
| 対象問題 | 平成28年司法試験・民事系第3問。設問1〜3の配点割合は3:3:4。 |
| 問題文 | 法務省の民事系科目問題のPDF10〜14頁(印刷頁2〜6)。 |
| 答案の前提 | 平成28年の試験当時の法令・判例による。法令の版は第7で示す。 |
| 公式資料の状態 | 問題,出題趣旨,採点実感はいずれも対象範囲を読んだ。出題趣旨はPDF10〜12頁の第3問部分,採点実感はPDF20〜29頁。 |
| 主要事項 | 固有必要的共同訴訟,確認の利益と反訴,既判力の主観的・客観的・時的範囲,訴訟告知と参加的効力。 |
| 項目数と重み | 55項目,重み5は20項目,重みの合計は210。条件付きの代替構成・注意項目・学習上の指摘を含むため,全項目の充足を要求するものではない。 |
| 主要判例 | 最高裁平成6年5月31日判決(平成3年(オ)第1724号,民集48巻4号1065頁),最高裁平成20年7月17日判決(平成18年(受)第1818号,民集62巻7号1994頁),最高裁昭和28年12月24日判決(昭和26年(オ)第19号,民集7巻13号1644頁)。 |
| 答案の分量 | 3910字(改行を含む)。改行を除くと3816字。見出し・空白・句読点を含めても5000字以内。 |
| 試験後の改正・判例 | 後発の法令・判例の網羅的な調査は本記事の対象にしていない。 |
| 関連記事 | 第6に同じ科目の他年度の記事等を示す。 |
| 確認日 | 令和8年10月31日。 |
答案では,設問1は賛成者を原告・反対者を被告とする全員関与を認め,新加入者は参加又は別訴・併合等により補充する。
設問2は,訴訟外にも広がる会長地位の紛争を理由に確認の利益を認め,防御方法との関連と審理の重複から反訴を許容する。
設問3は,任意的訴訟担当の構成から対立するZへの拡張を否定し,時点差と訴訟告知の不行使も検討して,後訴での再審理を認める。
第4に全評価項目,第5に答案と項目別の対応表・解説,第7に資料の版と確認範囲を置いている。
第2 評価項目の示し方と重み付けの基準
1 評価項目の示し方
一項目につき一つの判定対象を基本に,答案のどの判断・理由・事実評価を見るのかが分かる形へ言い換えた。
二つの資料が同じ事項を取り上げている場合には,一つの項目に両方の根拠を付けている。
「間接」は,出題趣旨が検討の対象を示し,その具体的な理由や誤りの型を採点実感が詳しく説明している場合である。
「記載なし」は,本問の関連範囲を読んだ上で,その具体的な指摘を当該資料には確認できなかったという意味である。
未公表の意味には使わない。
〔注意〕は誤りの回避を評価する項目であり,重みとは別の区分である。
適用条件を付した項目は,その構成や媒体を選んだ場合に検討するものであり,互いに異なる結論を一つの答案へ累積させる趣旨ではない。
2 5段階の重み付けの基準
重み5は,設問が求める中心的判断又はその不可欠な前提である。
重み4は,中心的判断を支える重要な理由・事例適用,又は重要な誤りの回避である。
重み3は,基本的処理の精度や選択した構成の理由を担う事項である。
重み2は,補足的な手続・表記・配分又は任意構成の説明である。
重み1は,答案内容の中核とは別の形式又は学習上の補助事項である。
両資料に登場するかだけで重みを決めず,本問で果たす役割から判断した。
重みは公式の点数ではなく,重み合計から合格可能性や科目間の難易度を推定することもできない。
第3 本問の概要
1 問題文と事実関係
権利能力のない甲街振興会Xでは,不動産の取得後,元会長Zの名義で登記がされ,Xの事務所として使用されてきた。
ところが,Zの子Cの借入れのため,Yへの抵当権設定登記がされていたことが判明する。
副会長BらはZを解任しBを会長に選任したが,Zは不動産の個人所有と会長の地位を主張する。
設問1は,X自体が訴える方法とは別に,構成員が総有権確認を求める場合を扱う。
設問2では必要な授権を得たXがY・Zを共同被告として訴え,Zが地位等の確認を反訴で求める。
設問3は,前訴でXの請求が認容・確定した後,YがZに債務不履行責任を追及する場合に,抵当権設定時の所有関係を改めて審理できるかを問う。
2 設問が求めること
| 設問 | 立場・対象 | 指定・仮定・除外 | 到達点 |
|---|---|---|---|
| 1 | P1がL1へ,構成員名義の総有権確認について報告。 | 登記請求は除外。Xの社団該当性は前提。新加入者は同調・非同調を分ける。 | 全員原告の理由,反対者への対応,新加入後の処理。 |
| 2 | P2がL2へ,ZのXに対する反訴を検討。 | 解任無効ならB選任も無効という指定前提を守る。反訴におけるBの代表資格,登記請求の原告適格は検討しない。 | 両確認請求の利益を肯定する具体的理由と,146条1項の要件。 |
| 3 | P3がJへ,後訴Y対Zでの再審理可否を報告。 | 設定時にZが非所有者なら抵当権は有効に成立せず債務不履行責任を負う。登記請求部分の判決効は除外。 | 下線①の効力拡張,②の時点差,③の別根拠・前訴の措置を経て,再審理可否を示す。 |
第4 評価項目と重み
1 設問1
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 対外的な総有権確認を訴訟物とし,固有必要的共同訴訟となる理由を説明する。 | 5 | PDF10頁 設問1第1段落 | PDF21頁 課題1 |
| 2 | 合一確定の必要と,全員の訴訟共同の必要を区別する。 | 5 | 間接(PDF10頁 設問1第1段落) | PDF21頁 課題1 |
| 3 | 管理処分権を基準とする根拠を,敗訴と権利処分との類似性から説明する。 | 5 | 間接(PDF10頁 設問1第1段落) | PDF21頁 課題1 |
| 4 | 総有財産の管理処分の仕組みを示し,持分がないという一言だけで説明を終えない。 | 4 | 間接(PDF10頁 設問1第1段落) | PDF21頁 課題1 |
| 5 | 訴訟政策を論拠にする場合は,対外的帰属確認と一回的解決の必要を事例に即して説明する。(適用条件:訴訟政策を援用する場合) | 3 | 記載なし | PDF21頁 課題1 |
| 6 | 反対構成員を被告に加え,賛成構成員を原告として全員が当事者となる方法を示す。 | 5 | PDF10頁 設問1第2段落 | PDF21頁〜22 課題2 |
| 7 | 反対者被告化の理由として,賛成者の訴権保護と反対者の手続保障の双方を示す。 | 4 | 間接(PDF10頁 設問1第2段落) | PDF21頁〜22 課題2 |
| 8 | 管理処分権による説明と反対者被告化の緊張を認識し,多数の反対者・3分の2授権との関係を理由付ける。 | 4 | 間接(PDF10頁 設問1第2段落) | PDF22頁 課題2 |
| 9 | 新規加入によって全員関与を欠けば,係属中の訴えの適法性が問題となることを示す。 | 5 | PDF10頁 設問1第2段落 | PDF22頁 課題3 |
| 10 | 新たに事業を始めた加入者を,従前構成員の承継人と当然には扱わない。 | 4 | 間接(PDF10頁 設問1第2段落) | PDF22頁 課題3 |
| 11 | 同調する新加入者について共同訴訟参加(52条1項)を示す。 | 4 | 間接(PDF10頁 設問1第2段落) | PDF22頁 課題3 |
| 12 | 非同調者の自発的参加を期待せず,B側が採れる訴え提起・併合上申等の方法を示す。 | 5 | PDF10頁 設問1第2段落 | PDF22頁 課題3 |
| 13 | 主観的追加的併合を選ぶ場合は,判例の否定と本件で例外を認める理由を示す。(適用条件:主観的追加的併合を選ぶ場合) | 3 | 記載なし | PDF22頁 課題3 |
| 14 | 訴訟担当・追加的選定による代替構成は,全員関与の問題を解決する仕組みまで説明する。(適用条件:当該代替構成を選ぶ場合) | 2 | 記載なし | PDF22頁 課題3 |
| 15 | 訴訟告知だけで新加入者への既判力又は当事者参加を認めない。〔注意〕 | 3 | 記載なし | PDF22頁 課題3 |
| 16 | 前提であるXの権利能力なき社団該当性に不要な紙幅を費やさない。〔注意〕 | 2 | 記載なし | PDF22頁 その他 |
2 設問2
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 17 | 純粋な訴訟代理権は当該手続の終局判決で処理すれば足りるという昭和28年判例の問題意識を示す。 | 5 | PDF10頁 設問2 | PDF23頁 課題1 |
| 18 | 訴訟代理権と本件代表権は,訴訟行為の効果帰属・訴訟要件に関わる点で共通すると示す。 | 4 | PDF10頁 設問2 | PDF23頁 課題1 |
| 19 | 会長地位の紛争は,今後の事業活動・財産管理等の訴訟外の紛争へ広がることを具体的に示す。 | 5 | PDF10頁〜11 設問2 | PDF23頁〜24 課題1 |
| 20 | 本件の代表者対立の実情を踏まえて,地位確認・決議無効確認の利益を肯定する理由を組み立てる。 | 4 | PDF10頁〜11 設問2 | PDF23頁〜24 課題1 |
| 21 | 反訴による審理コストや中間確認を独立の根拠とする場合は,別訴不適法でも反訴適法となる論理を明確にする。(適用条件:審理コスト・中間確認を独立根拠にする場合) | 2 | 記載なし | PDF24頁 課題1 |
| 22 | 一般的な確認の利益の三要素を列挙するだけで,引用判例との対比を済ませない。〔注意〕 | 3 | 記載なし | PDF24頁 課題1 |
| 23 | 代表権欠缺による却下判決に既判力が生じないと一律に説明しない。〔注意〕 | 4 | 記載なし | PDF24頁 課題1 |
| 24 | 解任決議無効確認を否定する構成を採る場合は,社団では法定の特別訴訟でないこと等を理由付ける。(適用条件:決議無効確認の利益を否定する場合) | 2 | 記載なし | PDF24頁 課題1 |
| 25 | 反訴の関連性を146条1項により,本訴請求又は防御方法との具体的関係から検討する。 | 5 | PDF11頁 設問2 | PDF24頁〜25 課題2 |
| 26 | 代表資格の争いは通常の本案抗弁と異なることも踏まえ,防御方法に含める理由又は登記請求との関係を示す。 | 4 | 間接(PDF11頁 設問2) | PDF24頁〜25 課題2 |
| 27 | 著しい訴訟遅滞の有無を,本訴と反訴の審理の実質的重複から判断する。 | 4 | PDF11頁 設問2 | PDF25頁 課題2 |
| 28 | 審理開始直後である等の指定のない事実を,遅滞否定の理由として補わない。〔注意〕 | 2 | 記載なし | PDF25頁 課題2 |
3 設問3・下線①
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 29 | 通常共同被告Y・Z相互に,前訴から直接当然の既判力は生じないことを示す。 | 5 | PDF11頁 設問3 | PDF26頁 下線① |
| 30 | 社団の当事者適格の法的性質と構成員への効力拡張について,自説と条文上の根拠を示す。 | 5 | PDF11頁 設問3 | PDF25頁〜26 下線① |
| 31 | ZがXに対立する共同被告である特殊性を自説と整合的に評価し,平成6年判例の援用可否を示す。 | 5 | PDF11頁 設問3 | PDF25頁〜26 下線① |
| 32 | X対Yの判決部分のZへの拡張と,別のX対Zの訴訟を区別する。 | 4 | PDF11頁 設問3 | PDF26頁 下線① |
| 33 | 手続保障があるという一言だけで,効力拡張の法的根拠を置き換えない。〔注意〕 | 3 | 記載なし | PDF26頁 下線① |
4 設問3・下線②
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 34 | 前訴の口頭弁論終結時の総有と,後訴の抵当権設定時のZ所有を時点別に整理する。 | 5 | PDF11頁 設問3 | PDF26頁〜27 下線② |
| 35 | 基準時前の所有は基準時の総有と抽象的に両立し得るため,既判力だけでは再審理を遮断できないと説明する。 | 5 | PDF11頁 設問3 | PDF26頁〜27 下線② |
| 36 | 前訴理由中の取得経緯等には既判力が及ばないことを,主文との区別から示す。 | 4 | 間接(PDF11頁 設問3) | PDF26頁 下線② |
| 37 | 既判力による遮断の限界と,Zが整合的な移転経路を実際に主張する困難を区別する。 | 3 | 記載なし | PDF27頁 下線② |
| 38 | 基準時前の法律関係だから当然に遮断されるという説明をしない。〔注意〕 | 4 | 記載なし | PDF27頁 下線② |
5 設問3・下線③と結論
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 39 | 既判力による解決とは別に,信義則等による再審理制限の可否を検討する。 | 5 | PDF11頁〜12 設問3 | PDF27頁 下線③ |
| 40 | Yが前訴でZへ訴訟告知をする手段を指摘する。 | 5 | PDF11頁〜12 設問3 | PDF27頁 下線③ |
| 41 | Y敗訴時にZが損害賠償義務を負う関係から,参加利益・参加的効力を基礎付ける。 | 4 | 間接(PDF11頁〜12 設問3) | PDF27頁 下線③ |
| 42 | 参加的効力が敗訴の根拠となる必要な理由中判断にも及ぶことを示す。 | 5 | 間接(PDF11頁〜12 設問3) | PDF27頁 下線③ |
| 43 | YからZへの告知・ZによるY側参加という効力方向を守り,YがZ側に補助参加するだけで解決したとしない。〔注意〕 | 4 | 記載なし | PDF27頁 下線③ |
| 44 | 前訴で採れた手段を踏まえ,告知をしなかったことと信義則の適用可否を論理的に結び付ける。 | 5 | PDF11頁〜12 設問3 | PDF27頁〜28 下線③ |
| 45 | 再審理制限を肯定する構成では,共同被告への告知を省いた事情や当然の補助参加等の根拠を具体的に示す。(適用条件:再審理制限を肯定する場合) | 3 | PDF11頁〜12 設問3 | PDF27頁 下線③ |
| 46 | 同時審判や別訴併合を選ぶ場合は,対象訴訟・効力・負担を明確にし,手段名だけを挙げない。(適用条件:同時審判・別訴併合を代替手段に選ぶ場合) | 2 | 記載なし | PDF27頁 下線③ |
| 47 | 下線①②③を検討した上で,後訴で再審理できるかを明示する。 | 5 | PDF11頁〜12 設問3 | PDF25頁・28 全体 |
6 答案全体及び学習上の指摘
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 48 | 基本概念・原理を正確に理解して用いる。 | 4 | PDF10頁冒頭 | PDF20頁 1 |
| 49 | 登場人物が示す検討事項を把握し,その問いに正面から答える。 | 5 | PDF10頁冒頭 | PDF20頁 1〜3(1) |
| 50 | 抽象論に終始せず,事例の事実から具体的で掘り下げた理由を示す。 | 4 | 間接(PDF10頁冒頭) | PDF20頁 1 |
| 51 | 各論点の順序・相互関係を整理し,結論に必要な論述を端的に示す。 | 3 | PDF10頁冒頭 | PDF20頁 2〜3(1) |
| 52 | 条文を必要な箇所で正確な項・号まで示す。 | 2 | 記載なし | PDF20頁 3(1) |
| 53 | 設問3まで必要な検討を残せるよう,分量と時間配分の偏りを避ける。 | 2 | 間接(PDF10頁冒頭) | PDF28頁 その他 |
| 54 | 答案を判読できる文字の大きさ・筆記具・書き方で記す。(適用条件:手書き答案の場合) | 1 | 記載なし | PDF28頁 その他 |
| 55 | 応用論点の暗記に偏らず,基本事項を具体的事案へ論理的に展開する学習を行う。(適用条件:学習方法の評価(答案本文の採点外)) | 1 | 記載なし | PDF28頁〜29 4 |
7 重みの分布
重み1は2項目,重み2は8項目,重み3は8項目,重み4は17項目,重み5は20項目で,総数は55項目,重みの単純合計は210である。
手書きの判読性及び学習方法に関する項目は,電子答案の実質的な採点とは区別している。
重み5は,設問1では訴訟共同の根拠,反対者の配置,加入後の適法性と非同調者の取込み,設問2では引用判例の理解,紛争の広がり,反訴の関連性,設問3では効力拡張の構成,時点差,訴訟告知・参加的効力と最終結論を中心としている。
該当する番号は,1,2,3,6,9,12,17,19,25,29,30,31,34,35,39,40,42,44,47,49である。
第5 模範解答
1 答案の前提と表記
以下は,問題文のP1・P2・P3の報告事項を,設問ごとに整理して論述した答案である。
民事訴訟法の条文は法律名を省略することがあり,判例の結論と本答案が採用する理論構成は区別している。
設問3は任意的訴訟担当を採用するが,法定訴訟担当等による別構成を一律に誤りとするものではない。
答案は,見出し・空白・句読点・改行を含めて3910字で,5000字以内である。
試験後の法令・判例を遡って用いず,問題の指定前提と除外事項に従っている。
2 答案
1 設問1
(1) 構成員全員が原告となる理由
総有財産は団体的規律に従って構成員全員が共同して管理処分する。
持分がないことだけで全員共同の必要を導くのではなく,権利全体を処分する権能の帰属を基礎に考える。
総有権確認訴訟も,敗訴すれば構成員全員が権利を失ったのと事実上同様の結果となるから,一部構成員による保存行為として当然に提起できるものではない。
合一確定の必要だけなら類似必要的共同訴訟でも足り,訴訟共同までは導かれない。
しかし,処分権の所在及び全員の手続保障から,全員が訴訟追行権を共同して行使し,合一に確定することを要する固有必要的共同訴訟となる。
したがって,X自体を当事者としない構成では,原則として全員が原告となる必要がある。
(2) 反対構成員
しかし,反対者のために一切訴えられないと,総有権を主張する者の裁判を受ける機会を奪う。
全員が当事者として関与して合一確定が実現されれば,反対者の手続保障も確保できる。
そこで,Bら賛成構成員を原告とし,Yに加えZら提訴に同調しない構成員を被告として,全構成員の総有権確認を求めることができる。
これは一部構成員だけへの権利帰属を求める訴えとは異なる。
反対者の被告化は全員による管理処分への同意と同じではなく,規約の3分の2の授権さえ得られない場合にも認めてよいかが問題となる。
しかし,対外的な帰属紛争を全員について一回的に解決する必要があり,反対者が多いだけで賛成者の訴権を失わせるべきではない。
ここでは実体的な管理処分への同意とは別に,全員の関与を確保した訴訟政策を重視して例外を認める。
(3) 新規加入者
訴訟中に加入した者も総有関係の主体となり,係属中にその者を欠いたままでは全員関与を欠いて訴えの適法性が問題となる。
この者がBらに同調するなら,合一確定を要する第三者として共同訴訟参加(民訴法52条1項)をさせる。
同調しなければ,原告になることを強制できないため,その者を被告側に取り込む必要がある。
新加入は既存当事者の地位をそのまま譲り受ける場合とは異なり,訴訟引受け(51条後段,50条1項)の対象となる権利の承継人に当然該当するとはいえない。
そこで,新加入者を被告とする総有権確認の別訴を提起し,裁判所に弁論併合(152条1項)を上申して全員関与の形に補充する。
併合は裁判所の判断による。
この方法とは別に,係属訴訟への主観的追加的併合を認める考え方もある。
判例は一般にこれを否定するが,本件では加入によって新たに生じた必要的共同訴訟の欠缺補充であり,既存の審理を利用しながら新加入者の手続保障を確保できることから,例外的に認める理由がある。
2 設問2
(1) 会長地位確認
本訴でBの代表権の有無を判断できる以上,手続上の問題だけの確認には独立の訴えの利益がないという反論が予想される。
昭和28年判例の訴訟代理権は,当該訴訟を追行する権限という手続的事項である。
これに対し,Zが確認を求める会長の地位は,Xを裁判外でも代表し,その業務・財産管理に関与する継続的な実体法上の地位である。
ZとXとの間には,解任及びB選任をめぐって現在の具体的な争いがある。
両者とも,実際に訴訟行為をする者の行為の効果を当事者に帰属させられるかという訴訟要件に関わる点は共通する。
それでも,Xは今後も事業を続け,不動産の管理,契約締結等を誰が行うかという争いが残る。
本訴の代表資格を終局判決で処理できることを前提としても,その一訴訟の帰すうを超える地位紛争を解決する必要がある。
代表権欠缺による却下判決は当該訴訟要件の不存在について既判力を生ずると解されるので,単に代表権判断には既判力がないことを理由に利益を肯定することはできない。
よって,会長の地位を主文で確定することは紛争の抜本的解決に有効適切であり,即時確定の利益がある。
(2) 解任決議無効確認
過去の法律行為は通常,現在の法律関係を確認すれば足りる。
しかし,本件決議はZの現在の会長地位を否定する根本原因であり,その有効性はXの継続的な運営を左右する。
しかも問題の前提上,解任無効なら定員1名の会長が在任するのでB選任も無効となる。
決議の効力をXとの間で確定すれば,この一連の地位紛争を直接解決できる。
単なる手続事項の確認と異なり,有効適切な紛争解決方法であるとして訴えの利益を基礎付けられる。
(3) 反訴の要件
Zは本訴被告,Xは本訴原告であり,口頭弁論終結前に本訴係属裁判所へ反訴を提起する。
反訴請求は不動産の総有権という本訴請求と直接同一ではないが,Bに代表権がないから本訴を却下すべきであるとの防御方法を基礎付ける。
訴訟要件の争いは通常の本案上の抗弁とは異なるが,146条1項の関連性要件は共通争点を一緒に審理して矛盾と重複を避ける趣旨である。
解任決議の効力と会長地位という同じ法律関係・発生原因が,代表資格欠缺による却下の申立てと反訴請求を基礎付けるので,防御方法との関連を認めるべきである。
同じ通常訴訟手続による審理ができ,他の裁判所の専属管轄に属する事情もない(146条1項1号)。
代表資格について本訴でも必要な審理であるから,著しい訴訟遅滞(同項2号)を生じさせるものでもなく,反訴は許される。
解任事由の有無及び反訴でのBの代表資格は指定に従い検討しない。
3 設問3
(1) 構成員Zへの既判力
YとZは前訴の共同被告であり,通常の共同訴訟ではその相互間に当然に既判力は生じない。
総有権の実体上の主体は構成員であるが,Xは団体的な財産管理と規約に従った授権を基礎としてその権利を訴訟上追行する任意的訴訟担当であると構成する。
この立場では115条1項2号が構成員への判決効拡張の根拠となり,平成6年判例の説明もこの構造によって理解できる。
規約に従った授権は,個々の構成員全員の賛成まで要求するものではない。
しかし,Zは第1訴訟の提起前から自分の所有権を主張してXと対立し,前訴でも共同被告としてXの相手方であった。
XがこのZの利益をも代表して訴訟を担当したとはいい難い。
総会の授権があっても,XがZを相手方としながら,同じ権利についてZのためにも訴訟を担当するという構造は採れない。
そこで,引用判例を本件のZへそのまま当てはめることはできず,XとYとの判決効がZへ拡張されることは否定すべきである。
XとZとの確定判決も,YとZとの間の所有関係を直接確定するものではない。
(2) 時的・客観的範囲
仮に構成員Zへの効力拡張を肯定しても,前訴で確定したのは口頭弁論終結時の総有権の存在である。
後訴の債務不履行責任を左右するのは抵当権設定時のZの所有権であり,両時点は異なる。
ある時点の総有権の存在と,それ以前のZの所有は論理上必ずしも両立不能でない。
具体的な中間の権利移転を事実認定するのではなく,前訴主文の確定内容の限界を指摘するものである。
前訴理由中でAからの取得経緯を判断していても,114条1項は主文に包含するものに限って既判力を認めるから,その判断自体に既判力はない。
登記請求の判決効を除外するという条件の下では,設定時の所有関係は既判力だけで再審理を遮断できない。
本件でZが基準時の総有と両立する移転経路を具体的に主張することは,Aからの当初取得をめぐる与件からは容易でないが,これは攻撃防御上の困難であり,再審理を法的に禁止することとは区別する。
(3) 既判力以外の拘束と前訴での措置
Yからは,設定時の所有関係こそ前訴でも実質的な中心争点であり,Zは十分に争ったのに,Yが前訴で総有,後訴でZ所有という判断を受けて二重に敗訴することは不公平で,信義則(2条)上再争を許すべきでないと主張できる。
他方,Zは紛争の当初から個人所有を主張しており,敗訴したことだけで矛盾した訴訟行為をしたとはいえない。
共同被告相互の権利義務は前訴で審判されていないので,一般的な争点効を認めるのと同じように理由中判断を拘束的に扱うことは慎重でなければならない。
Yには,前訴で将来の損害賠償請求を見据え,Zに訴訟告知(53条1項)をしてY側への補助参加(42条)の機会を与える方法があった。
普通共同訴訟は相互に独立するから,Zが別の共同被告でも,X対Yの訴訟との関係では第三者として参加する余地がある。
Y敗訴によりZに責任が及ぶ関係は参加利益の基礎となる。
適法な告知を受けたZが参加しなくても,46条の適用上,参加できた時に参加したものとみなされる(53条4項)。
参加的効力(46条)は,敗訴の根拠となった必要な理由中判断にも及ぶため,設定時の所有関係について後訴で反対の主張をすることを制限できた。
ただし,同条各号の除外事由は留保される。
Zが共同被告として既に審理に関与していた以上,Yが別途告知しなかったことは理解でき,当然の補助参加の考え方等から再争を制限する見解もあり得る。
しかし,独立したX対Yの訴訟への参加機会と,X対Zの当事者として争ったことを当然に同視することはできない。
告知という明確な方法を採らなかったYのために,Zに当然に同じ拘束を課すのは相当でない。
Zの主張変更等の特段の事情もない本件では,二重敗訴の不利益のみで信義則による遮断を認めず,後訴で設定時の所有関係を再審理できると解する。
以上
3 出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説
(1) 答案と評価項目の対応
答案1は第4の設問1の項目,答案2は設問2の項目,答案3は設問3の下線①〜③と結論の項目に対応する。
各設問の中では,判断対象,根拠,事例への適用,結論の順に進めている。
主な対応は,全員関与の根拠が番号1・2・3,反対者被告化とその理由が番号6・7・8,代表者紛争の広がりが番号17・18・19・20,時点差が番号34・35・36,YからZへの告知と参加的効力が番号40・41・42・44である。
第4の重み5・4の項目及び条件付きの項目について,模範解答との対応を次の表に示す。
| 番号 | 重み | 評価項目 | 答案の該当箇所・留保 |
|---|---|---|---|
| 1 | 5 | 対外的な総有権確認を訴訟物とし,固有必要的共同訴訟となる理由を説明する。 | 答案1(1) |
| 2 | 5 | 合一確定の必要と,全員の訴訟共同の必要を区別する。 | 答案1(1) |
| 3 | 5 | 管理処分権を基準とする根拠を,敗訴と権利処分との類似性から説明する。 | 答案1(1) |
| 4 | 4 | 総有財産の管理処分の仕組みを示し,持分がないという一言だけで説明を終えない。 | 答案1(1) |
| 5 | 3 | 訴訟政策を論拠にする場合は,対外的帰属確認と一回的解決の必要を事例に即して説明する。(適用条件:訴訟政策を援用する場合) | 答案1(2)。対外的帰属の一回的解決に言及。 |
| 6 | 5 | 反対構成員を被告に加え,賛成構成員を原告として全員が当事者となる方法を示す。 | 答案1(2) |
| 7 | 4 | 反対者被告化の理由として,賛成者の訴権保護と反対者の手続保障の双方を示す。 | 答案1(2) |
| 8 | 4 | 管理処分権による説明と反対者被告化の緊張を認識し,多数の反対者・3分の2授権との関係を理由付ける。 | 答案1(2)。管理処分への同意と被告化の緊張,規約の3分の2を明示。 |
| 9 | 5 | 新規加入によって全員関与を欠けば,係属中の訴えの適法性が問題となることを示す。 | 答案1(3) |
| 10 | 4 | 新たに事業を始めた加入者を,従前構成員の承継人と当然には扱わない。 | 答案1(3) |
| 11 | 4 | 同調する新加入者について共同訴訟参加(52条1項)を示す。 | 答案1(3)。52条1項。 |
| 12 | 5 | 非同調者の自発的参加を期待せず,B側が採れる訴え提起・併合上申等の方法を示す。 | 答案1(3)。別訴と併合の上申。 |
| 13 | 3 | 主観的追加的併合を選ぶ場合は,判例の否定と本件で例外を認める理由を示す。(適用条件:主観的追加的併合を選ぶ場合) | 答案1(3)。判例の原則否定と例外の理由を併記。 |
| 14 | 2 | 訴訟担当・追加的選定による代替構成は,全員関与の問題を解決する仕組みまで説明する。(適用条件:当該代替構成を選ぶ場合) | 非採用。訴訟担当・追加的選定の代替構成によらず,参加又は別訴併合による。 |
| 17 | 5 | 純粋な訴訟代理権は当該手続の終局判決で処理すれば足りるという昭和28年判例の問題意識を示す。 | 答案2(1) |
| 18 | 4 | 訴訟代理権と本件代表権は,訴訟行為の効果帰属・訴訟要件に関わる点で共通すると示す。 | 答案2(1)。訴訟行為の効果帰属という共通点を明示。 |
| 19 | 5 | 会長地位の紛争は,今後の事業活動・財産管理等の訴訟外の紛争へ広がることを具体的に示す。 | 答案2(1)。事業・管理・契約の紛争の広がり。 |
| 20 | 4 | 本件の代表者対立の実情を踏まえて,地位確認・決議無効確認の利益を肯定する理由を組み立てる。 | 答案2(1)・(2)。現在の地位と解任決議の双方を扱う。 |
| 21 | 2 | 反訴による審理コストや中間確認を独立の根拠とする場合は,別訴不適法でも反訴適法となる論理を明確にする。(適用条件:審理コスト・中間確認を独立根拠にする場合) | 非採用。反訴固有の審理コスト論を独立の確認利益の根拠にはしない。 |
| 23 | 4 | 代表権欠缺による却下判決に既判力が生じないと一律に説明しない。〔注意〕 | 答案2(1)。却下判決の訴訟要件に関する効力を留保して区別。 |
| 24 | 2 | 解任決議無効確認を否定する構成を採る場合は,社団では法定の特別訴訟でないこと等を理由付ける。(適用条件:決議無効確認の利益を否定する場合) | 非採用。答案2(2)は決議無効確認の利益を肯定する。 |
| 25 | 5 | 反訴の関連性を146条1項により,本訴請求又は防御方法との具体的関係から検討する。 | 答案2(3)。防御方法との関連から肯定。 |
| 26 | 4 | 代表資格の争いは通常の本案抗弁と異なることも踏まえ,防御方法に含める理由又は登記請求との関係を示す。 | 答案2(3)。本案抗弁との差を踏まえ,共通争点の一括審理から肯定。登記請求との関連は別構成として解説する。 |
| 27 | 4 | 著しい訴訟遅滞の有無を,本訴と反訴の審理の実質的重複から判断する。 | 答案2(3)。代表資格に必要な審理の重複から遅滞を否定。 |
| 29 | 5 | 通常共同被告Y・Z相互に,前訴から直接当然の既判力は生じないことを示す。 | 答案3(1) |
| 30 | 5 | 社団の当事者適格の法的性質と構成員への効力拡張について,自説と条文上の根拠を示す。 | 答案3(1)。任意的訴訟担当と115条1項2号。これは答案が採用した構成。 |
| 31 | 5 | ZがXに対立する共同被告である特殊性を自説と整合的に評価し,平成6年判例の援用可否を示す。 | 答案3(1)。Xと対立するZへの拡張を否定。肯定構成も許容される。 |
| 32 | 4 | X対Yの判決部分のZへの拡張と,別のX対Zの訴訟を区別する。 | 答案3(1)。X対YとX対Zを区別。 |
| 34 | 5 | 前訴の口頭弁論終結時の総有と,後訴の抵当権設定時のZ所有を時点別に整理する。 | 答案3(2) |
| 35 | 5 | 基準時前の所有は基準時の総有と抽象的に両立し得るため,既判力だけでは再審理を遮断できないと説明する。 | 答案3(2)。両時点の抽象的な両立可能性から遮断を否定。 |
| 36 | 4 | 前訴理由中の取得経緯等には既判力が及ばないことを,主文との区別から示す。 | 答案3(2)。主文と理由を区別。 |
| 38 | 4 | 基準時前の法律関係だから当然に遮断されるという説明をしない。〔注意〕 | 答案3(2)。基準時前というだけでは遮断しない。 |
| 39 | 5 | 既判力による解決とは別に,信義則等による再審理制限の可否を検討する。 | 答案3(3) |
| 40 | 5 | Yが前訴でZへ訴訟告知をする手段を指摘する。 | 答案3(3)。YからZへの訴訟告知。 |
| 41 | 4 | Y敗訴時にZが損害賠償義務を負う関係から,参加利益・参加的効力を基礎付ける。 | 答案3(3)。Y敗訴時のZの責任から参加利益を説明。 |
| 42 | 5 | 参加的効力が敗訴の根拠となる必要な理由中判断にも及ぶことを示す。 | 答案3(3)。必要な理由中判断への参加的効力と46条の例外を説明。 |
| 43 | 4 | YからZへの告知・ZによるY側参加という効力方向を守り,YがZ側に補助参加するだけで解決したとしない。〔注意〕 | 答案3(3)。告知者Y,被告知者Zの方向を維持。 |
| 44 | 5 | 前訴で採れた手段を踏まえ,告知をしなかったことと信義則の適用可否を論理的に結び付ける。 | 答案3(3)。告知の不行使を考慮し信義則による遮断を否定。 |
| 45 | 3 | 再審理制限を肯定する構成では,共同被告への告知を省いた事情や当然の補助参加等の根拠を具体的に示す。(適用条件:再審理制限を肯定する場合) | 非採用。肯定方向の見解は答案3(3)と本節の解説で比較するが,採用結論は再審理可能。 |
| 46 | 2 | 同時審判や別訴併合を選ぶ場合は,対象訴訟・効力・負担を明確にし,手段名だけを挙げない。(適用条件:同時審判・別訴併合を代替手段に選ぶ場合) | 非採用。訴訟告知を主たる措置とし,同時審判・別訴併合を代替解決の根拠にしない。 |
| 47 | 5 | 下線①②③を検討した上で,後訴で再審理できるかを明示する。 | 答案3(3)末尾。 |
| 48 | 4 | 基本概念・原理を正確に理解して用いる。 | 答案全体。定義と効果を各設問で区別。 |
| 49 | 5 | 登場人物が示す検討事項を把握し,その問いに正面から答える。 | 答案1〜3。各報告事項へ順に応答。 |
| 50 | 4 | 抽象論に終始せず,事例の事実から具体的で掘り下げた理由を示す。 | 答案各所。反対者,新加入者,代表者対立,共同被告と時点差を評価。 |
| 54 | 1 | 答案を判読できる文字の大きさ・筆記具・書き方で記す。(適用条件:手書き答案の場合) | 対象外。掲載するのは電子的な答案であり,手書きの判読性は評価していない。 |
| 55 | 1 | 応用論点の暗記に偏らず,基本事項を具体的事案へ論理的に展開する学習を行う。(適用条件:学習方法の評価(答案本文の採点外)) | 答案本文の採点対象外。解説で基礎から応用へのつながりを示す学習上の指摘。 |
条件付きでない重み3以下については,番号15・16が答案1,番号22・28が答案2,番号33・37が答案3,番号51・52・53が答案全体の構成・表記に対応する。
独立の評価対象を設けるための反復ではなく,関連する同じ論述をまとめて参照している。
(2) 設問1
出題趣旨は,対外的な総有権確認が固有必要的共同訴訟となる理由,反対者がいる場合,係属後の新加入者という順で検討を求めている。
採点実感は,合一確定が必要というだけでは訴訟共同まで必要な理由にならず,管理処分権を基準にする根拠まで説明すべきだとしている。
答案1(1)は敗訴と権利処分の類似から説明し,持分がないという一言に依存しない形にした(番号1・2・3・4)。
反対者の被告化では,賛成者の訴権と反対者の手続保障の双方が必要である。
さらに採点実感は,管理処分権を重視しながら反対者を被告に回すことの緊張や,規約の3分の2の賛成も得られない場合を取り上げている。
答案は,対外的な一回的解決と全員の関与を確保する訴訟政策を明示し,その緊張へ応答している(番号6・7・8)。
新加入者については,同調者の52条1項による参加と,非同調者に対する別訴・併合上申を分けた。
別訴併合と主観的追加的併合を同じ手続とせず,後者は判例(最高裁昭和62年7月17日判決(昭和59年(オ)第1382号,民集41巻5号1402頁))の原則否定を踏まえた例外の検討として置いている。
追加的選定等の別構成は採用していない(番号9・10・11・12・13・14)。
(3) 設問2
引用された昭和28年判例と本問は,どちらも訴訟行為の効果帰属及び訴訟要件に関わるという共通点がある。
その共通点を認めた上で,会長の地位は今後の契約や財産管理にも関わるという実体的な紛争の広がりを示すことが,出題趣旨の求める比較である。
答案2(1)は,終局判決で本訴の代表資格を処理できるという反論に応答しつつ,その一訴訟を超える解決の必要を説明した(番号17・18・19・20)。
採点実感は,代表権欠缺による却下判決にも訴訟要件の不存在について既判力を認める一般的理解を指摘している。
したがって,代表権判断には既判力がないという一律の説明で確認の利益を肯定することは避ける必要がある(番号23)。
決議無効確認の利益を否定する構成も採点実感上排除されていないが,本答案は,現在の会長地位を否定する根本原因を確定する意義から肯定している(番号20・24)。
反訴の関連性については,訴訟要件の争いが通常の本案抗弁と異なる点を認識した上で,同じ解任決議・会長地位が本訴防御と反訴の双方を基礎付けると説明した。
別構成として,本訴のBへの登記移転請求との関連から論じることも公式資料が示している。
遅滞の有無は審理の実質的重複から判断し,審理開始直後といった事実は補っていない(番号25・26・27・28)。
(4) 設問3
下線①は,通常共同被告相互の直接の既判力と,X対Yの判決がXの構成員Zへ拡張されることを分ける問題である。
採点実感は,法定訴訟担当・任意的訴訟担当・固有適格等の立場と条文上の根拠を先に示し,それに整合する形で本件のZの地位を評価することを求めている。
答案3(1)は任意的訴訟担当と115条1項2号を採り,Xに個人所有を主張して対立するZへの担当を否定した。
これは本答案の採用構成であって,平成6年判例自体が本件の結論や任意的訴訟担当説の採用を明示したという趣旨ではない(番号29・30・31・32・33)。
下線②では,前訴基準時の総有と,抵当権設定時のZ所有を別の時点の問題として整理する。
基準時の所有関係が確定しても,それ以前の所有者まで当然に確定するわけではない。
当初の取得経緯や中間の移転可能性が前訴理由中で判断されていても,そのこと自体に既判力があるとはいえない。
答案は,抽象的な両立可能性と,本件で整合する移転経路を主張する実際の困難を区別している(番号34・35・36・37・38)。
下線③では,YがZに訴訟告知をしてY側への参加機会を与える方向が重要である。
YがZを補助するだけでは,参加的効力を誰が誰に主張するかが逆転する。
答案は,Y敗訴時のZの責任を参加利益の根拠とし,必要な理由中判断への効力と46条の除外事由まで示した(番号39・40・41・42・43)。
告知が可能だったことから信義則による遮断を否定する答案と,共同被告として審理に関与した事情等から制限を認める答案の双方を,採点実感は評価の対象にしている。
本答案は,告知という明確な方法を使わなかったことと,Zが紛争の当初から個人所有を主張していたことを重視し,再審理可能との結論を採った(番号44・45・47)。
(5) 答案の弱点と扱わなかった事項
任意的訴訟担当の構成では,規約上の多数決による授権と利益対立者への効力拡張をどう整理するかに議論の余地がある。
答案は両者を区別して否定結論を採っているが,肯定説のすべてを検討したものではない。
新加入者に関する訴訟担当・選定当事者の代替構成,反訴固有の確認利益の構成,再審理制限を肯定する当然の補助参加理論等の展開は,対応表の留保欄のとおりである。
設問が除外した登記請求部分の判決効,解任事由の実体的評価,抵当権の有効性に関する別の実体法構成,損害額計算は展開していない。
条件付きの項目は,採用した構成に応じて検討するものであり,全項目を一つの答案で満たすことを求めるものではない。
第6 関連記事
1 同じ年度の司法試験の記事
本記事では,同じ年度の司法試験の記事へのリンクを置かず,次の項で関連記事を案内する。
同年度の公式問題は,法務省・平成28年司法試験問題から参照できる。
2 同じ科目の別の年度の記事
① 令和7年度司法試験民事系第3問の模範解答と評価項目
② 平成29年司法試験民事系第3問の模範解答と評価項目
3 本問の論点に関連する記事と資料索引
① 平成30年司法試験民事系第3問(民事訴訟法)の模範解答と評価項目:反訴
② 令和5年度司法試験民事系第3問の模範解答と評価項目:参加的効力
③ 法務省HPの司法試験・予備試験の資料の所在
これらは関連論点や他年度の問題へ進むための案内であり,後年の法令・判例を平成28年の答案の根拠へ混ぜるものではない。
第7 出典及び確認状態
1 公式資料
① 法務省・平成28年司法試験論文式試験問題(民事系科目):全14頁中,PDF10〜14頁(印刷頁2〜6)の第3問を読んだ。
下線①②③は画像でも確認した。
② 法務省・平成28年司法試験論文式試験問題出題趣旨:全37頁中,PDF10頁の第3問見出しからPDF12頁の次科目見出し直前までを読んだ。
③ 法務省・平成28年司法試験の採点実感等に関する意見(民事系科目):全29頁中,第3問のPDF20〜29頁を,冒頭の狙い・採点方針から設問別の評価,末尾の学習上の意見まで読んだ。
評価項目の根拠欄は,上記二資料の該当頁・節を示したものである。
法務省の資料を出典として編集・加工しており,その整理・重み・答案・解説は本記事の作成者によるものである。
法務省が本記事の評価表や答案を作成・承認したという表示ではない。
2 法令
e-Gov法令検索・民事訴訟法の公式提供データで,2条,29条,39条,40条,42条,46条,49〜53条,114条,115条,146条,152条を確認した。
確認した版は平成24年10月1日施行版(平成24年法律第30号による改正)である。
改正履歴上,次の施行日は平成29年6月2日であるから,平成28年の試験当時の条文はこの版である。
これらの条の番号及び文言は,49条を除き,令和8年6月24日施行の現行版でも同じである。
49条は時効に関する文言が改められているが,答案は同条を引いていない。
3 裁判例
① 最高裁平成6年5月31日第三小法廷判決(平成3年(オ)第1724号,民集48巻4号1065頁):総有権確認の原告適格,代表者への授権及び確定判決の効力が構成員全員に及ぶとの判示を判決全文で確認した。
② 最高裁平成20年7月17日第一小法廷判決(平成18年(受)第1818号,民集62巻7号1994頁):訴えの提起に同調しない構成員を被告に加え,構成員全員が当事者となる形式の入会権確認の訴えを許した判示を判決全文で確認した。
③ 最高裁昭和28年12月24日第一小法廷判決(昭和26年(オ)第19号,民集7巻13号1644頁):訴訟代理権の有無は当該訴訟で審判すべきであり,別訴で確認を求めることは確認の利益を欠くとの判示を判決全文で確認した。
④ 最高裁昭和62年7月17日第三小法廷判決(昭和59年(オ)第1382号,民集41巻5号1402頁):訴えの主観的追加的併合を否定し,別訴の提起と弁論の併合によるべきであるとした判示を判決全文で確認した。
4 確認状態
問題・出題趣旨・採点実感の対象範囲を読み,項目の出典,条件分岐,答案との対応を確認した。
公式の記載,そこからの整理・推論,本答案の採用説,別の許容構成を区別している。
これらは確認日現在の資料と分析の範囲であり,法務省の公式答案又は公式得点を示すものではない。