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取締役会の書面決議のひな形―会社法370条の提案書・同意書・監査役確認書・議事録(AI作成)

第1 取締役会の書面決議でそろえる書類

1 会社法370条による決議省略

取締役会の書面決議は,実際に会議を開催せず,会社法370条と定款に基づいて,提案を可決する取締役会決議があったものとみなす手続である。
「みなし決議」とも呼ばれる。
以下では,令和8年10月24日時点の会社法及び会社法施行規則に基づき,一般的な取締役会設置会社で用いる書式例と確認順序を説明する。

法定の固定様式はなく,提案書と同意書を一体にすることも,別々に作ることもできる。
ただし,書類を一体化しても,必要な同意,監査役の異議の有無の確認及び議事録の作成が省略されるわけではない。

書類・記録用意する内容一体化・別紙化の考え方
提案書提案者,議案,決議内容,回答先,添付資料取締役の同意欄を末尾に置いてよい。
取締役の同意記録議決に加わることができる取締役全員の書面又は電磁的記録による同意1通への連署,名義人ごとの同意書,電子メール等を選べる。
監査役の異議不存在を確認する記録法律上の監査役設置会社では,各監査役が異議を述べていないこと独立した確認書は実務上の選択肢であり,必須の法定様式ではない。
取締役会議事録会社法施行規則101条4項1号の4事項同意書の回収で終わらせず,みなし決議に対応する議事録を作る。

2 株主総会の書面決議と分ける

株主総会の決議省略は会社法319条による別の手続である。
株主全員の同意を得ても,それだけで会社法370条の取締役の同意に代えることはできない。
同じ人物が取締役と株主の双方を兼ねていても,どの資格で,どの提案に同意するのかを区別する。

株主総会側の提案書・同意書・議事録は,株主総会の書面決議のひな形―会社法319条の提案書・同意書・議事録と登記に掲載している。

第2 ひな形を使う前の成立要件の確認

1 定款に決議省略の定めがあるか

会社法370条による取締役会の決議省略には,その旨の定款の定めが必要である。
株主総会の会社法319条と異なり,定款の確認を飛ばして全員の同意だけを集めない。
現行定款の条文と条番号を確認し,提案書に引用する。

定款の定めがなければ,書面に全員が署名したことだけをもって会社法370条の決議が成立したとは扱えない。
適切な取締役会の開催又は定款変更を含め,採用できる手続を検討する。

2 議決に加わることができる取締役全員の同意

同意が必要なのは,提案事項について議決に加わることができる取締役の全員である。
通常の取締役会の多数決と違い,過半数の賛成では足りない。
口頭や電話での賛成だけでも足りず,書面又は電磁的記録により同意を得る。

特別の利害関係を有する取締役は議決に加わることができない(会社法369条2項)。
対象議案ごとに議決参加資格を判断し,除外した者と理由を記録する。
単に不在である,返信がない,反対しそうであるといった事情で同意対象から外すことはできない。
複数議案では,議案ごとに対象者が異なる場合にも注意する。

3 監査役の異議の有無と機関設計

会社法上の監査役設置会社では,監査役が提案に異議を述べた場合,会社法370条によるみなし決議は成立しない。
監査役が複数いるときは,各人について確認する。
監査役会の多数決や1名だけの回答で,他の監査役の異議の有無まで確認したことにはならない。

監査役には,取締役と同じ確定した提案及び必要な添付資料を示して確認する。
独立した確認書,提案書末尾の確認欄,電子メール等を用いることができる。
無回答を当然に「異議なし」と扱う運用は避け,確認の経過を残す。

ここでいう監査役設置会社は会社法2条9号の定義による。
監査範囲を会計に関するものに限定する定款の定めがある会社は同号の定義から除かれるため,監査役という役職名の有無だけで会社法370条の要件を決めない。
監査等委員会設置会社など,異なる機関設計の会社でも,取締役の議決参加資格と適用条文を確認して書式を調整する。

第3 提案書・取締役同意書のひな形

1 提案書兼同意書の例

次は,議決に加わることができる取締役が,1通の提案書を用いてそれぞれ同意する例である。
会社法370条の提案者は取締役であり,代表取締役に限られない。
提案者自身も議決に加わることができる場合は,その者の同意も明確に記録する。

取締役会書面決議提案書兼同意書

令和○年○月○日

株式会社○○ 取締役各位

提案者 取締役○○○○

会社法370条及び当社定款第○条に基づき,次の事項を提案します。ご同意いただける場合は,同意欄にご記入の上,令和○年○月○日までに,当社の指定窓口○○へご提出ください。

第1号議案 ○○の件

決議内容 [可決する内容を具体的に記載する。契約の承認であれば,相手方,契約・取引の内容,主要条件,締結・実行の時期及び委任する範囲を特定する。]

添付資料 [資料名,作成日又は版,別紙の一覧を記載する。]

同意欄

私は,上記提案及び上記添付資料を確認し,上記提案に同意します。

同意日 令和○年○月○日

取締役氏名 ○○○○ [署名又は記名押印]

複数名が連署するときは,同意日と氏名の欄を人数分設ける。
監査役の確認欄を同じ書類に置く場合も,取締役の同意欄とは分ける。
紙面をまとめることと,異なる資格の意思表示を混同することは別である。

回答期限は回収管理のための期限であり,期限が来たことや無回答によって同意があったものとはならない。
署名・押印欄は本人と意思を確認するための例であり,会社法370条が書面の同意に一律の押印を要求するという意味ではない。

2 名義人ごとに作る同意書の例

同意書

株式会社○○ 御中

私は,取締役○○○○による令和○年○月○日付け「取締役会の目的である事項についての提案書」に記載された第○号議案及び添付資料[資料名・版]を確認し,当該提案に同意します。

令和○年○月○日

取締役氏名 ○○○○ [署名又は記名押印]

別紙方式では,表題と日付だけでなく議案と添付資料も対応させる。
同じ日に複数の提案を送った場合や,提案内容を修正した場合に,どの提案への同意かが分からなくならないようにする。

3 電子メールによる同意の例

件名:取締役会決議省略の提案への同意(令和○年○月○日付け・第○号議案)

株式会社○○ 担当○○様

私は,取締役○○○○から提案された令和○年○月○日付け第○号議案及び添付資料[資料名・版]を確認し,当該提案に同意します。

取締役○○○○

送受信者,日時,本文及び対象となる添付資料を再現できる元の電子データを保存する。
単なる既読表示や受領の返信を同意に代えない。
後から添付ファイルだけを更新した場合,旧版への同意を当然に新版へ流用することもできない。

第4 監査役の異議不存在確認書のひな形

1 監査役ごとに作成する例

次の書式は,第2の3で説明した監査役の異議不存在を記録するための一般例である。
監査役の積極的な「賛成決議」を求める書式とは区別する。

監査役の異議不存在確認書

株式会社○○ 御中

私は,取締役○○○○による令和○年○月○日付け「取締役会書面決議提案書兼同意書」に記載された第○号議案及び添付資料[資料名・版]を確認しました。

上記提案について,会社法370条に定める異議を述べません。

令和○年○月○日

監査役氏名 ○○○○ [署名又は記名押印]

確認書は各監査役の名義ごとに別ファイルとすると,回収状況や本人の意思を確認しやすい。
1通に各人の確認日・氏名欄を設けたり,提案書末尾に監査役ごとの確認欄を置いたりすることもできる。

2 確認書があっても実際の異議を無視しない

この名称の確認書を作ること自体は法定の成立要件ではない。
異議が述べられたのに確認書だけをそろえて成立した扱いにすることはできない。
提案内容の修正が必要になった場合は,修正後の提案について取締役の同意と監査役の異議の有無を改めて確認する。

第5 取締役会議事録のひな形

1 法定の4事項

会社法施行規則101条4項1号は,会社法370条によりみなし決議が成立した場合の議事録に,①決議があったものとみなされた事項の内容,②提案をした取締役の氏名,③決議があったものとみなされた日,④議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名を記載するものとしている。

開催していない会議について,開催場所,出席者数,議長の開会宣言又は採決の経過を事実として書き加えない。
定款,議決参加資格,同意の回収及び監査役の異議の有無は,成立の根拠を説明する補足記録として残す。

2 みなし決議の議事録の例

取締役会議事録

1 取締役会の決議があったものとみなされた事項の内容

第○号議案 ○○の件

[可決された決議内容を具体的に記載する。提案と対応する添付資料名・版を記載する。]

2 上記事項の提案をした取締役の氏名

取締役○○○○

3 取締役会の決議があったものとみなされた日

令和○年○月○日

4 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名

取締役○○○○

上記提案について,議決に加わることができる取締役全員が書面又は電磁的記録により同意したため,会社法370条及び当社定款第○条に基づき,取締役会の決議があったものとみなされた。[監査役設置会社では,監査役が当該提案について異議を述べていないことも記載する。]

本議事録作成日 令和○年○月○日

株式会社○○

議事録作成取締役 ○○○○

実際の決議内容と成立の経過を確認してから,角括弧内の説明を処理する。
議事録作成日とみなし決議日が異なる場合は,それぞれ実際の日付を記載する。

3 署名・押印と登記の添付書面

会社法369条3項の,開催された取締役会に出席した取締役及び監査役の署名又は記名押印と,会社法370条によるみなし決議の議事録の取扱いを混同しない。
定款・社内規程及び利用目的に応じ,議事録作成者の記名押印等によって作成責任を明確にすることもある。

代表取締役の選定その他の登記事項を含む場合は,議事録だけでなく,同意を証する書面,印鑑証明書,就任承諾書等の要否を,具体的な登記事項と現行の登記実務に即して別途確認する。
この記事の一般書式だけで登記添付書面がすべて足りるとは扱わない。

第6 日付・到達記録・契約書案の版を対応させる

1 提案日,同意日,みなし決議日を分ける

原則として,議決に加わることができる取締役全員の同意が会社に到達してそろった時点を確認し,監査役設置会社では異議の有無も確認して,みなし決議の成立を管理する。
提案書に印刷した予定日や,各人が同意書を作成した日だけから決議日を決めない。

日付・時点確認する記録
提案日提案者,確定した議案及び添付資料を示した記録。
各取締役の同意日各人がどの議案・版に同意したか。
会社への到達日時同意書の受領記録,返信メール等の受信記録。
監査役の異議の有無を確認した時点各監査役への提示資料と回答等。
みなし決議日必要な同意がそろい,成立要件を充たした日。
議事録作成日議事録を実際に作成した日。

この表は管理の例であり,全項目をすべての書類に記載しなければならないという意味ではない。
同意に条件や将来の効力発生時期を付ける場合は,その意思表示の有効性と全員の同意内容の整合性を個別に確認する。

2 承認対象の契約書案と別紙を固定する

契約の承認では,提案書,同意書,監査役確認書及び議事録が,同じ契約書案と別紙を指していることが重要である。
資料名・版・日付・別紙一覧をそろえ,必要に応じファイルの識別情報も記録する。

軽微な修正を代表取締役等へ委任するときは,委任できる範囲を議案に具体的に書く。
相手方,対象事業,価格,価格調整方法,効力発生日等の重要な条件の変更が,抽象的な「一切を一任する」の文言だけで処理できるとは限らない。

事業譲渡の議案に記載する事項と委任の範囲は,事業譲渡で必要となる社内手続―株主総会・取締役会の承認,省略の条件及び株主通知で説明している。

3 同じ日に株主総会の書面決議も行う場合

取締役会の書面決議と株主総会の書面決議は,同じ日でも,それぞれの要件を満たして成立させる。
取締役会決議を踏まえて株主へ提案する構成では,取締役会側の成立を確認してから,確定した株主総会議案を提案し,必要な株主の同意を回収する。

完全子会社で株主が親会社1社の場合でも,子会社の取締役としての同意,親会社の株主としての同意及び親会社自身の内部決裁は区別する。
親会社の正式な商号,株主であること,同意者の権限及び必要な内部手続を資料で確認する。

株主承認を契約締結前に済ませる日程と,契約締結後・効力発生前に取得する日程では,契約条件と書類に残す事項が異なる。
具体的な比較は,事業譲渡の契約締結・株主総会承認・効力発生の日程を参照されたい。

第7 保存とよくある質問

1 同意書と議事録は何年間保存するか

会社法371条1項は,みなし決議日を含む取締役会の日から10年間,議事録又は会社法370条の意思表示を記載・記録した書面若しくは電磁的記録を本店に備え置くことを求めている。
提案書,添付資料,取締役の同意,監査役の確認及び議事録を対応させ,後から経過を確認できる状態で保存する。

電子メールによる同意では,印刷物だけで管理を終えず,送受信情報と本文・添付資料を再現できる元の電子データを保つ。
関係者の退任や担当者の交代後も会社が取り出せる保存先を定める。

2 監査役確認書は必ず別ファイルにするか

法律上,この表題の独立した確認書が一律に要求されているわけではない。
各監査役の異議の有無と対象議案を確認できるなら,個別ファイル,共同の確認書,提案書末尾の確認欄等から会社の運用に合う方法を選べる。

3 提案内容を変えたら同意を取り直すか

確定した同じ提案について必要な全員の同意をそろえる必要がある。
変更の内容,既存の承認・委任の範囲及び各同意の対象を確認し,旧版への同意だけで変更後の提案も可決された扱いにしない。
実質的に新しい提案となる場合は,改めて必要な同意等を得る。

4 報告事項も会社法370条で省略できるか

取締役会への報告の省略は会社法372条の問題であり,決議の省略とは要件が異なる。
同条1項による報告省略は,同条2項により会社法363条2項の業務執行状況の報告には適用されない。
議案と報告事項を分けて確認する。

第8 出典

1 会社法

会社法2条7号・9号,319条,369条,370条,371条,372条及び389条を参照した。
成立要件,議決参加資格,保存及び報告省略の説明の根拠である。

会社法(e-Gov法令検索)

https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086

2 会社法施行規則

会社法施行規則101条2項・4項1号を参照した。
取締役会議事録の作成方法と,みなし決議の場合の記載事項の根拠である。
株主総会の議事録については同規則72条4項1号による。

会社法施行規則(e-Gov法令検索)

https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000010012

3 書式例の位置付け

この記事の書式は,上記の公開法令に基づく一般的な記載例である。
定款,機関設計,議案,登記の有無及び契約上の約束に応じて調整する。
署名欄・回答期限・資料の版管理等の運用上の記載と,法定の成立要件・議事録記載事項は区別している。