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レジデンシャルプロキシとは―家庭用IoT機器が犯罪の踏み台になる仕組みと対策(AI作成)

第1 レジデンシャルプロキシについての結論

家庭の動画視聴端末,ルーター,ネットワークカメラ等が,利用者の知らない間に第三者の通信を中継する「レジデンシャルプロキシ」として悪用されている。
通信先からは一般家庭のIPアドレスによるアクセスに見えるため,不正送金,不正アクセス及びサイバー攻撃の実行者を隠す基盤となり得る。
本記事では,NICT,総務省及び警察庁の令和8年7月の公式資料を中心に,仕組み,国内の観測結果,確認すべき兆候,初動及び事業者の管理を整理する。

1 家庭の回線を第三者へ使わせる仕組み

レジデンシャルプロキシは,一般家庭向けのインターネット回線に接続した機器が,第三者の通信を中継する仕組みである。
通信先のサービスには家庭へ割り当てられたIPアドレスが記録されるため,攻撃者自身の接続元を把握しにくくなる。
企業が海外のデータセンター等からのアクセスを制限していても,国内の一般家庭からの通信に見えることで,不正検知を回避されることがある。

2 利用者が承知している場合と知らない場合がある

利用規約を読んで通信帯域を提供するサービスもあれば,提供元不明のアプリやマルウェアによって,利用者が気付かないまま中継機器にされる場合もある。
無料VPN又は「通信帯域を提供すれば収益が得られる」とうたうサービスについても,誰の通信をどの目的で中継するかを確認する必要がある。
利用者の認識,表示及び同意の有無と,実際に犯罪へ利用されたかは分けて調べる。

第2 国内で確認された規模

1 一日最大約2万7000のIPアドレス

NICTは,令和8年1月以降,一日当たり最大約2万7000のIPアドレスをレジデンシャルプロキシの出口ノードとして観測した。
国内には少なくとも数万台規模のレジデンシャルプロキシが存在すると推定している。
ここでいう数値は観測されたIPアドレス等に基づく推定であり,全ての家庭用IoT機器の台数ではない。

2 不正送金事件との関係

警察庁の分析では,令和6年中のインターネットバンキング不正送金事犯のうち,少なくとも1918件,被害額約28億9000万円でレジデンシャルプロキシが利用されていた。
被害件数全体の約44%,被害額全体の約33%に当たるとされる。
これは,レジデンシャルプロキシ自体が送金を行ったとの意味ではなく,攻撃者が接続元を隠す経路として利用したとの分析である。

第3 どのような機器が悪用されるのか

1 動画視聴端末,ルーター及びカメラ

公式ファクトシートは,「テレビに接続して無料で国内外の動画を視聴できる」などとうたう動画ストリーミング機器,ルーター,ネットワークカメラ及びデジタルフォトフレーム等を挙げている。
安価で提供者又は更新方法が不明な機器,初期パスワードのままの機器,インターネットへ管理画面を公開している機器及びサポート終了後の機器は,特に確認が必要である。

2 無料VPN及び提供元不明のアプリ

パソコン又はスマートフォンへ導入した無料VPN,提供元不明のアプリ及び通信帯域提供サービスによって,端末又は家庭内の機器が中継に使われることがある。
アプリを削除しただけで,ルーターや別のIoT機器に導入されたプログラムまで消えたとは限らない。
同じネットワークに接続している機器,管理アカウント及び外部通信を併せて確認する。

3 DDoSボット等が追加される危険

レジデンシャルプロキシを介して家庭内ネットワークへ接続され,別のマルウェアやDDoSボットを導入されるおそれもある。
将来,機器上で推論する小型AIが侵入後の判断や増殖に使われれば,AIワーム型の攻撃と結び付く可能性がある。
研究段階のAIワームと現在確認されているレジデンシャルプロキシを区別した解説は,AIワームとは―スマート家電を乗っ取る「デジタル粘菌」は実現したのかを参照されたい。

第4 悪用されていないか確認する方法

1 機器とアプリを一覧にする

動画視聴端末,ルーター,中継器,ネットワークカメラ,録画機,スマート家電,デジタルフォトフレーム,複合機及び会議用端末を一覧にする。
型番,購入先,提供者,管理画面,ファームウェア版,サポート期限,クラウド連携,設置場所及び管理者を記録する。
会社又は法律事務所では,組織が承認していない機器が業務ネットワークへ接続されていないかも確認する。

2 通信量と設定の変化を見る

利用していない時間帯の大量通信,常時点滅する通信ランプ,回線速度の低下,機器の異常な発熱,勝手な再起動,管理者設定の変更及び知らない接続先は,調査のきっかけとなる。
これらの兆候だけでレジデンシャルプロキシ化を断定することはできない。
機器の正規機能,クラウド同期,更新通信又は映像送信で説明できるかを,メーカー及び通信事業者の資料と照合する。

3 外部からの到達可能性を確認する

ルーターのポート転送,遠隔管理,UPnP,クラウド中継及び初期パスワードを確認する。
ネットワーク名を分けただけで通信が分離されているとは限らないため,業務資料を保存する機器へ実際に到達できるかを確認する。
保守事業者へ委託している場合は,「設定済み」という回答だけでなく,確認した日,対象機器及び外部から到達できる機能を記録してもらう。

第5 悪用が疑われたときの初動

1 通信を止めることと電源を切ることを分ける

被害拡大を止めるため,対象機器を業務ネットワーク及びインターネットから隔離する。
ただし,冷凍設備,防犯,医療,防災その他の設備では,通信又は電源の遮断自体が安全上の問題を生じさせる場合がある。
設備管理者及び保守事業者と,安全を保ったまま隔離する方法を確認する。

2 初期化や更新の前に記録を残す

事業用機器では,初期化,再起動又はファームウェア更新により,設定,メモリ及びログが失われることがある。
発見日時,型番,シリアル番号,ファームウェア版,画面,管理設定,接続先,ルーターの割当記録,通信ログ,クラウドアカウント及び直前の操作を保全する。
緊急の封じ込めを先行した場合は,実施時刻,担当者,理由及び失われた可能性のある記録を残す。

法律事務所の具体的な初動は,法律事務所のサイバー事故初動チェックリスト―発覚後10分・当日中・後日に行うことを参照されたい。

3 連絡先を整理する

機器メーカー,販売店,保守事業者,通信事業者及びセキュリティ専門家へ連絡する。
不正送金,不正アクセス又は犯罪の踏み台利用が疑われる場合は,警察への相談も検討する。
個人データの漏えい等が発生し,又は発生したおそれがある事業者は,個人情報保護法上の報告及び本人通知の要否を別に判断する。

第6 平時の対策

1 不審な機器及びアプリを導入しない

提供者,更新方法,サポート期間及び利用規約を確認できない動画視聴端末,無料VPN及びアプリを安易に導入しない。
「無料」「地域制限を回避できる」「通信帯域を貸せば収益になる」という説明だけで選ばず,第三者通信の中継,情報収集及び外部からの管理の有無を確認する。

2 更新とサポート期限を管理する

OS及びファームウェアを最新の状態に保ち,サポート終了製品は,ネットワークから外す,後継製品へ移行する,又は外部から到達できない構成に変更する。
更新を外部へ委託していても,適用前後の版,作業日,対象機器及び動作確認を事業者側で確認する。

法律事務所のVPN機器,ルーター,NAS,防犯カメラ,録画機及び複合機の管理は,法律事務所のVPNは安全か―機器の更新,内部のアクセス制御及び保守契約の確認事項で詳しく扱っている。

3 JC-STAR及びNOTICEを利用する

IPAのJC-STARは,IoT製品についてセキュリティ要件への適合状況を可視化する制度である。
製品購入時に適合ラベルと対象製品一覧を確認できるが,ラベルがあることだけで,将来の脆弱性や運用上の誤りまで防げるわけではない。

NOTICEは,IoT機器の脆弱な設定やサポート終了に関する情報を提供している。
初期又は共通パスワード,ファームウェア更新,管理画面の公開範囲及びサポート終了日を確認する際の公的な入口として利用できる。

第7 法的責任の考え方

1 機器の利用者

利用者が知らない間に機器を踏み台にされたからといって,第三者が行った犯罪について直ちに刑事責任を負うわけではない。
他方,事業者が個人データ又は業務情報を扱う場合は,安全管理措置,契約上の管理義務及び事故発生後の調査・報告を別に検討する必要がある。
初期パスワードの放置又はサポート終了後の使用は,損害賠償上の過失又は責任分担を判断する事情となり得るが,それだけで結論は決まらない。

2 メーカー,販売者及びサービス提供者

機器の設計,更新機能,既知の脆弱性への対応,警告表示,サポート終了の通知及びクラウド側の管理を分けて確認する。
機器の欠陥により生命,身体又は他の財産へ損害が生じた場合は,製造物責任法の適用が問題となり得る。
純粋なソフトウェア又はサービスの管理が原因の場合は,契約責任又は不法行為責任等を検討する。

一般的な製造物責任の判断と事故時の証拠保全は,企業の製造物責任―BtoB・OEMの責任主体,警告表示と事故初動を参照されたい。

3 直接判例の確認状況

国家サイバー統括室のハンドブックは,IoT機器の事故について,機器の欠陥,サービス提供者又は利用者側の原因を分けて責任を検討する考え方を示している。
同ハンドブックは刊行時点でQ38に関する裁判例を「特になし」としているが,現在の裁判例が存在しないことを網羅的に証明するものではない。
裁判所の公開判例及び上記公的資料を確認した範囲では,レジデンシャルプロキシ又は家庭用IoT機器の踏み台利用を直接扱う裁判例を確認できなかった。
ただし,公開検索の範囲に基づく記載であり,裁判例の不存在を網羅的に証明するものではない。

第8 よくある質問

1 レジデンシャルプロキシを使うこと自体が違法ですか

企業の正当な市場調査,接続試験又はプライバシー保護等に使われる場合もあり,名称だけで違法とは決まらない。
利用者への説明や同意がない場合,不正アクセスや詐欺等に使われた場合,又は他人の機器へマルウェアを導入した場合は,具体的行為に応じた法的問題が生じる。

2 無料VPNを削除すれば安全ですか

端末上のアプリが原因であれば削除が対策の一部となるが,同じネットワークのルーターやIoT機器まで確認する必要がある。
認証情報,遠隔管理設定,残存するプログラム及び外部通信を確認せず,削除だけで解決したと判断しない。

3 家庭用ルーターを初期化すべきですか

家庭利用ではメーカーの公式手順に従うことが基本となる。
事業用回線又は被害調査が必要な場合は,設定とログを保存し,隔離,初期化及び更新の順序を保守事業者又は専門家と決める。

第9 出典と確認範囲

①NICT「家庭用IoT機器を悪用するレジデンシャルプロキシの現状をまとめたファクトシートを公表」(令和8年7月21日)。
https://www.nict.go.jp/press/2026/07/21-1.html

②NICT・総務省・警察庁「家庭用IoT機器を悪用するレジデンシャルプロキシの現状」。
https://www.nicter.jp/report/20260721_residential_proxy_overview.pdf

③警察庁「家庭用IoT機器を悪用したサイバー攻撃への官民一体となった対策の推進について」。
https://www.npa.go.jp/bureau/cyber/koho/news/residentialproxy.html

④総務省「家庭用IoT機器を悪用したサイバー攻撃への官民一体となった対策の推進について」。
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01cyber01_02000001_00293.html

⑤NOTICE「家庭用ルーターのセキュリティ対策」。
https://notice.go.jp/risk/router

⑥NOTICE「サポートが終了したIoT機器について」。
https://notice.go.jp/end_of_support

⑦IPA「セキュリティ要件適合評価及びラベリング制度(JC-STAR)」。
https://www.ipa.go.jp/security/jc-star/

⑧国家サイバー統括室「サイバーセキュリティ関係法令Q&Aハンドブック」Q37・Q38。
https://security-portal.cyber.go.jp/guidance/law-handbook/v2-07.html

⑨端末設備等規則34条の10。
https://laws.e-gov.go.jp/law/360M50001000031

⑩個人情報保護委員会「漏えい等が発生した場合の対応」。
https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/leakAction/

①から④までは同じ官民対策の基礎となった観測・分析であり,独立した四つの調査結果として重複計上していない。
観測されたIPアドレス数と実機の台数は一致するとは限らず,個別の家庭又は機器が犯罪に利用されたことは,機器・回線ごとの記録で確認する必要がある。