第1 この記事の対象と結論
本記事は,令和2年司法試験環境法第1問について,法務省の出題の趣旨及び採点実感を踏まえ,調査・届出から行政措置,民事救済までを整理するものである。
評価項目は独自に抽出した31項目,重み合計は111である。
重みは学習上の整理であり,法務省の公式採点基準・配点又は得点予測ではない。
| 確認事項 | 内容 |
|---|---|
| 対象問題 | 法務省・令和2年司法試験選択科目問題の実頁28~30 |
| 法令の基準時 | 令和2年8月12日。土対法・水濁法は令和2年4月1日施行版を確認した。 |
| 問題文 | 実読済み。第1問及び配付資料。 |
| 出題の趣旨 | 実読済み。実頁36の第1問見出し以降から37頁末まで。 |
| 採点実感 | 実読済み。実頁36~38の総論・第1問及び40頁末の共通注記。第2問本文は使用しない。 |
| 主な検討事項 | 廃止時調査,900㎡の形質変更届出,調査命令と区域指定,計画提出・実施,人格権差止め,損害賠償。 |
| 集計 | 31項目,重み5は6項目,重み合計111。 |
| 答案の分量 | 2500字以内。本文・見出し・句読点・空白を含め,改行の有無による字数は第5に示す。 |
| 裁判例 | 特定の判決を確認済み先例として引用しない。人格権等の法的構成は公式資料の要求と独自の法的検討による。 |
| 試験後の改正 | 本答案の当時法へ後発改正を遡及適用しない。 |
| 確認日 | 令和8年10月18日 |
A社は,廃止時の調査報告義務について免除確認の可能性があっても,未確認のままでは当然に免除されない。
掘削には別途4条の届出を要し,知事の措置は,汚染の検証から区域指定・計画・実施へ進む。
住民の民事請求では,具体的危険だけでなく,求める浄化の内容,抽象的差止めの可否及び賠償対象の損害を吟味する。
第4に評価表,第5に答案と解説を置く。
第2 評価項目の示し方と重み付けの基準
1 評価項目の示し方
一つの項目に一つの判定対象を置き,必須・高評価・負例・許容分岐を重みとは別に示す。
資料の頁はPDFの実頁である。
「記載なし」は当該問題の関連範囲を実読した結果であり,資料未取得又は閲覧禁止を意味しない。
公開番号1~31と内部の追跡IDは別に管理する。
本表では負例を別の無加重表へ分離せず,同じ5段階の中で数える。
番号10は免除確認済みの場合を補足する枝,番号31は公園利用制限を仮定する枝であり,その事実が全答案で存在すると扱うものではない。
2 5段階の重み付けの基準
| 重み | 基準 |
|---|---|
| 5 | 採点実感が評価の分かれ目とした事項,又は答案の骨格そのもの。 |
| 4 | 出題の趣旨が検討を求め,採点実感も取り上げた(高く評価した・多数の答案の不足を指摘した)事項。 |
| 3 | どちらか一方が明示する中核の理由付け。 |
| 2 | 一方が軽い表現で触れる補強の事項,又は典型的な誤りとして指摘された事項。 |
| 1 | 一方が控えめに触れるだけの事項。 |
重み5の高評価事項を全答案の必須事項へ読み替えない。
採点実感が示す優秀・良好・一応の水準の差と,出題の趣旨の中核要求を区別する。
第3 本問の概要
1 問題文と事実関係
A社は有害物質を使用する甲工場を廃止したが,土壌調査等をしないまま跡地を保持し,数年後,乙工場建設のため約1500平方メートルを深さ数メートル掘削した。
搬出土壌は,同一事業所内の別の広場に保管され,隣接する児童公園の井戸・池への地下水汚染が新聞で報道された。
井戸は防災計画上の災害時用水とされ,池では近隣の子どもが水遊びをしていた。
公的な汚染確認,防災用水の飲用指定及び健康被害の発生を,問題文にない確定事実として補ってはならない。
2 設問が求めること
| 設問 | 立場・対象 | 指定・仮定・除外 | 到達点 |
|---|---|---|---|
| 1⑴ | A社の廃止時の措置 | 土対法及び配付資料を参照する。 | 調査・報告義務と免除確認の可能性。 |
| 1⑵ | A社の掘削時の措置 | 未報告・未確認の現実の状態を保つ。 | 4条の届出と適用除外の成否。 |
| 2 | B県知事からA社への措置 | C市に土対法の権限委任はない。 | 汚染の検証,調査命令,指定,計画及び実施。 |
| 3 | DらからA社への直接請求 | 健康被害・公園利用制限は当然の与件ではない。 | 人格権差止めの内容・要件と損害賠償。 |
第4 評価項目と重み
1 設問1⑴
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | トリクロロエチレン使用施設を有害物質使用特定施設と位置付ける(必須) | 3 | PDF実頁36・環境法第1問:「トリクロロエチレンは法の特定有害物質」 | 記載なし(関連範囲実読済み) |
| 2 | 客観性確保のため指定調査機関に調査させると示す(必須) | 4 | PDF実頁36・環境法第1問:「専門調査機関による調査」 | PDF実頁36・環境法第1問:「調査の客観性確保」 |
| 3 | 廃止時に土地所有者等Aの土壌調査及び知事への結果報告義務を示す(必須) | 5 | PDF実頁37・環境法第1問:「知事に報告すべきであった」 | PDF実頁36・環境法第1問:「調査・報告の義務」 |
| 4 | 設置者兼所有者Aが知事の通知を待つ必要があると誤解しない(負例) | 2 | 記載なし(関連範囲実読済み) | PDF実頁36・環境法第1問:「土地所有者等以外の者が施設を設置」 |
| 5 | 健康リスクの低い利用方法でも知事の確認を受けて初めて調査報告が免除されると示す(必須) | 4 | PDF実頁37・環境法第1問:「知事からその旨の確認を受ける」 | PDF実頁36・環境法第1問:「同項ただし書適用」 |
| 6 | 事業場敷地としての利用・立入制限を規則16条3項1号に当てはめる(必須) | 4 | PDF実頁37・環境法第1問:「一定の要件を満たしている場合」 | PDF実頁36・環境法第1問:「第16条第3項第1号該当の可能性」 |
2 設問1⑵
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 7 | 3条の手続違反とは別に4条1項の事前届出義務を認める(必須) | 4 | PDF実頁37・環境法第1問:「こととは別に法第4条第1項」 | PDF実頁36・環境法第1問:「同法第3条の手続の履行の有無を問わず」 |
| 8 | 規則22条ただし書の900㎡を1500㎡の掘削に適用する(必須) | 4 | PDF実頁37・環境法第1問:「規模要件に該当する」 | PDF実頁36・環境法第1問:「規模要件について特例」 |
| 9 | 深い掘削・変更区域外搬出から規則25条1号の適用除外を否定する(必須) | 3 | 記載なし(関連範囲実読済み) | PDF実頁36・環境法第1問:「第25条第1号の適用除外には該当しない」 |
| 10 | 免除確認済みの別枝では3条7項以下によることを区別する(許容分岐) | 3 | PDF実頁37・環境法第1問:「法第3条第7項以下」 | 記載なし(関連範囲実読済み) |
| 11 | 要措置区域等の指定がない搬出に16条以下を適用しない(負例) | 2 | PDF実頁37・環境法第1問:「指定を受けた汚染土地であることを前提」 | PDF実頁36・環境法第1問:「同法第16条の汚染土壌の搬出」 |
3 設問2
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 12 | 施設跡地でない広場も5条1項の調査命令対象となり得ると示す(必須) | 4 | PDF実頁37・環境法第1問:「A社に本件広場につき」 | PDF実頁36・環境法第1問:「有害物質使用施設跡地でなくとも」 |
| 13 | 5条の健康被害要件を令3条の厳格な要件まで具体化する(必須) | 5 | PDF実頁37・環境法第1問:「かなり細かく厳格に定められている」 | PDF実頁37・環境法第1問:「同法第5条の適用要件を参考資料をも踏まえて」 |
| 14 | 令3条1号ロでは現実の地下水汚染の確認を要すると示す(必須) | 5 | PDF実頁37・環境法第1問:「井戸水の水質検査の結果」 | PDF実頁36・環境法第1問:「地下水汚染の事実が確認できる」 |
| 15 | 防災計画上の災害時飲用指定等を地下水利用要件へ当てはめる(必須) | 3 | PDF実頁37・環境法第1問:「災害時に人の飲用に供するもの」 | 記載なし(関連範囲実読済み) |
| 16 | 新聞報道を公的機関で検証済みの汚染事実と同一視しない(必須) | 4 | PDF実頁37・環境法第1問:「単に汚染のおそれについて報道された」 | PDF実頁37・環境法第1問:「公的機関による検証を経た汚染の事実関係」 |
| 17 | 広場の汚染土壌と井戸の地下水汚濁との原因関係を確認する(必須) | 3 | PDF実頁37・環境法第1問:「水質汚濁の原因がA社の空き地にある」 | 記載なし(関連範囲実読済み) |
| 18 | 調査結果を踏まえ6条の要措置区域指定へ進める(必須) | 5 | PDF実頁37・環境法第1問:「要措置区域に指定した上で」 | PDF実頁37・環境法第1問:「同法第6条による要措置区域指定」 |
| 19 | 7条による措置・期限を示した汚染除去等計画の作成提出指示を示す(必須) | 5 | PDF実頁37・環境法第1問:「汚染除去計画を作成することを指示」 | PDF実頁37・環境法第1問:「汚染除去等計画の策定」 |
| 20 | 提出計画の技術的基準適合性の審査と変更命令を示す(必須) | 3 | PDF実頁37・環境法第1問:「その適合・変更を審査・命令」 | 記載なし(関連範囲実読済み) |
| 21 | 計画に従う措置の不履行には実施命令を行い得ると示す(必須) | 4 | PDF実頁37・環境法第1問:「履行がない場合には履行を命じる」 | PDF実頁37・環境法第1問:「その実施措置実行の義務付け」 |
| 22 | 54条の対象・必要限度を踏まえ報告徴収・立入検査に触れる(高評価) | 2 | PDF実頁37・環境法第1問:「報告の徴収やその土地への立入検査」 | 記載なし(関連範囲実読済み) |
| 23 | 4条違反に対する66条の罰則適用のための告発に触れる(高評価) | 2 | PDF実頁37・環境法第1問:「罰則適用のための告発」 | 記載なし(関連範囲実読済み) |
| 24 | 水濁法14条の3の地下水浄化措置命令を別制度として検討する(高評価) | 2 | PDF実頁37・環境法第1問:「水質汚濁防止法第14条の3」 | 記載なし(関連範囲実読済み) |
4 設問3
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 25 | 住民の直接差止めの根拠として人格権等を示す(必須) | 4 | PDF実頁37・環境法第1問:「人格権等侵害の未然防止」 | PDF実頁37・環境法第1問:「差止請求権の根拠」 |
| 26 | 差止めの具体的要件を汚染経路・健康危険等に即して吟味する(必須) | 4 | PDF実頁37・環境法第1問:「健康を害するおそれがある」 | PDF実頁37・環境法第1問:「具体的要件の検討」 |
| 27 | 既存の地下水汚染の浄化と将来の汚染防止のための措置を区別して求める(必須) | 4 | PDF実頁37・環境法第1問:「汚染浄化及び将来の汚染防止」 | PDF実頁37・環境法第1問:「差止めの請求内容が何か」 |
| 28 | 抽象的・包括的差止請求の可否を請求特定・実効的救済の観点から論じる(高評価) | 5 | PDF実頁37・環境法第1問:「包括的差止請求の可否」 | PDF実頁37・環境法第1問:「抽象的差止請求の可否にまで論述」 |
| 29 | 損害賠償は賠償対象となる具体的損害を検討し,理由ある肯否を示す(高評価) | 4 | PDF実頁37・環境法第1問:「損害の賠償をA社に対して求める可能性」 | PDF実頁37・環境法第1問:「いかなる損害が賠償の対象」 |
| 30 | 現に健康被害が発生したという与件を補わない(負例) | 3 | PDF実頁37・環境法第1問:「健康被害が現に生じていることとはされていない」 | PDF実頁37・環境法第1問:「損害発生の有無が判然としていない」 |
| 31 | 公園利用制限を仮定する枝では利便喪失の損害を検討する(許容分岐) | 2 | PDF実頁37・環境法第1問:「利便の喪失に係る損害」 | 記載なし(関連範囲実読済み) |
5 重みの分布
重み1は0項目,2は6項目,3は7項目,4は12項目,5は6項目である。
N=0+6+7+12+6=31,W=1×0+2×6+3×7+4×12+5×6=111となる。
重み5は,番号3の廃止時調査報告,13の政令要件,14の現実の地下水汚染確認,18の区域指定,19の計画提出指示,28の抽象的差止請求である。
番号28は優秀答案の深度に関わる高評価事項であり,重み5というだけで全答案の最低条件へ格上げしない。
第5 模範解答
1 答案の前提と表記
次の答案は,令和2年8月12日時点を基準とし,全2245字,改行を除くと2186字である。
字数は見出し,句読点,空白を含むPythonの文字数で計測した。
飲用指定や汚染の公的確認がない部分は条件付きで扱い,損害賠償の肯否を一律に確定しない。
2 答案
1 設問1⑴
甲工場は,特定施設において特定有害物質であるトリクロロエチレンを使用していたから,有害物質使用特定施設に係る工場である。
設置者兼土地所有者A社は,その使用廃止に伴い,指定調査機関に土壌汚染状況調査をさせ,原則として廃止日から120日以内にB県知事へ結果を報告すべきであった(土対法3条1項本文,規則1条1項1号)。
自らが設置者なので,別人である土地所有者等への知事の通知を待つ必要はない。
ただし,予定される利用方法からみて人の健康被害のおそれがない旨の知事の確認を受ければ,調査報告義務は免除される(3条1項ただし書)。
本件では,関係者以外は立ち入らず,公道で分断されない事業場敷地の一部として引き続き利用されるため,規則16条3項1号に該当する可能性がある。
A社はその旨を申請して確認を受けるべきであり,単に将来の事業用地として保有するだけで当然に免除されない。
2 設問1⑵
甲跡地は,3条1項の報告もただし書の確認もない廃止施設に係る敷地なので,届出対象規模は3000平方メートルではなく900平方メートルである(規則22条ただし書)。
1500平方メートルの掘削につき,A社は着手30日前までに形質変更の場所・着手予定日等を知事に届け出るべきであった(4条1項)。
深さ数メートルの掘削であり,変更区域から離れた広場への搬出もあるから,規則25条1号の適用除外には当たらない。
同一事業所内への運搬でも変更区域外への搬出とはなり得る。
廃止時の3条違反と別に4条の義務を負い,知事は汚染のおそれの基準に該当すれば調査報告を命じ得る(4条3項)。
確認済みの土地なら3条7・8項の経路によるが,本件は未確認である。
3 設問2
広場は施設跡地でなくても,5条1項の調査報告命令の対象となり得る。
ただし新聞報道は公的検証を経た汚染の事実とは限らないので,知事は井戸水の水質検査等により地下水汚染と広場の土壌との原因関係を確認する必要がある。
令3条1号イでは,土壌の溶出量基準不適合が明らかで,地下水基準超過が現に生じ,又は生ずることが確実であることを要する。
令3条1号ロでは,土壌の溶出量基準不適合のおそれに加え,現に地下水基準を超える汚濁が生じていることを要する。
さらに,地下水の流動等に照らして汚染が拡大するおそれのある区域に,規則30条各号の飲用取水口等がなければならない。
本件井戸が地域防災計画で災害時の飲用に供されるものとされていれば同条3号に該当する。
「用水」だけで飲用を確定せず,計画内容を確認すべきである。
池での水遊びだけを同条の飲用利用と同視してはならない。
以上の要件を満たし,既に技術基準に適合する措置が講じられている等の除外もなければ,A社に広場の土壌の調査及び報告を命じ得る。
報告により汚染基準不適合と健康被害のおそれの要件が認められれば,知事は6条により要措置区域に指定・公示する。
そして,必要な汚染除去等の措置と期限等を示し,A社に汚染除去等計画の作成・提出を指示する(7条1項)。
未提出なら提出命令,実施措置が技術的基準に適合しなければ提出後30日以内の変更命令,計画に従う実施がなければ実施命令を行い得る(同条2・4・8項)。
A社は所有者兼原因者である。
加えて,対象土地等につき54条の要件を満たす報告徴収・立入検査,4条違反に対する66条の罰則適用のための告発も考えられる。
他方,搬出時に要措置区域等の指定がなく,16条以下を当然に適用することはできない。
水質汚濁防止法14条の3による地下水浄化措置命令も検討される。
特定事業場における有害物質を含む水の地下浸透と,これによる現実の健康被害又はそのおそれが確認されれば,必要な限度で相当期限を定めて命令でき,浸透時の設置者にも同条2項により命令し得る。
広場の事業場該当性,土壌から溶出した有害物質を含む水の浸透及び健康被害要件を確かめる必要がある。
C市への権限委任はなく,土対法上の権限主体はB県知事である。
4 設問3
Dらは,土対法から直接請求権を得るのではなく,生命・身体・健康に係る人格権を根拠に,侵害の排除・予防としてA社に汚染浄化や将来の汚染防止を求め得る。
発がん性物質が池に到達し子どもが反復して接触するなら,濃度,摂取経路及び接触頻度等に照らし,健康侵害の具体的危険を吟味する。
報道による抽象的不安だけでは足りず,行政規制に該当しないことだけで民事救済も否定されない。
子の人格権は子に帰属し,親は法定代理人として行使する。
もっとも,Dらが適切な浄化工法を把握できなければ,汚染を環境基準以下にする等の抽象的差止請求が問題となる。
実効的な人格権救済の必要がある一方,被告の履行内容及び強制執行の対象が不明確となるため,請求の特定・執行可能性との調整を要する。
可能な限り対象物質,汚染源,達成すべき状態を特定し,具体的措置を求めるべきである。
民法709条による損害賠償も検討し得るが,現に健康被害が生じたとはされていない。
仮に池の汚染により公園利用が禁止・制限され,Dらに法的保護に値する利便の喪失等の損害が生じた場合には,A社の故意過失,侵害の違法性,因果関係を検討して賠償を求める余地がある。
実損害が認められなければ賠償を否定すべきであり,不安だけから当然に損害を認めない。
以上
3 出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説
(1) 答案と評価項目の対応
重み5・4と条件付き項目は,次の表で個別に確認できる。
低い重みの項目も,答案又は以下の解説に対応する。
| 番号 | 答案又は解説の対応箇所 | 位置付け |
|---|---|---|
| 2 | 指定調査機関に土壌汚染状況調査 | 必須 |
| 3 | B県知事へ結果を報告 | 必須 |
| 5 | 知事の確認を受ければ | 必須 |
| 6 | 規則16条3項1号 | 必須 |
| 7 | 廃止時の3条違反と別に4条の義務 | 必須 |
| 8 | 900平方メートル | 必須 |
| 10 | 確認済みの土地なら3条7・8項 | 許容分岐 |
| 12 | 広場は施設跡地でなくても | 必須 |
| 13 | 令3条1号ロ | 必須 |
| 14 | 現に地下水基準を超える汚濁が生じている | 必須 |
| 16 | 新聞報道は公的検証を経た汚染の事実とは限らない | 必須 |
| 18 | 6条により要措置区域に指定 | 必須 |
| 19 | 計画の作成・提出を指示 | 必須 |
| 21 | 実施命令を行い得る | 必須 |
| 25 | 人格権を根拠に | 必須 |
| 26 | 濃度,摂取経路及び接触頻度 | 必須 |
| 27 | 侵害の排除・予防として | 必須 |
| 28 | 抽象的差止請求が問題となる | 高評価 |
| 29 | 民法709条による損害賠償 | 高評価 |
| 31 | 利便の喪失等の損害 | 許容分岐 |
番号1~6は廃止時調査と免除,7~11は形質変更,12~24は知事の措置,25~31は住民の請求に対応する。
重み3以下のうち,番号4は通知待ちの誤り,9は軽易な行為の除外,11は未指定土地への搬出規制,15は飲用要件,17は原因関係,20は計画変更,22~24は補強権限,30は健康損害未発生,31は条件付きの利便喪失を扱う。
(2) 調査の契機を区別する
施設廃止による3条の義務と,土地の形質変更による4条の義務は別の契機である。
未履行だから4条の届出も不要になるのではなく,未報告・未確認の廃止施設敷地には900平方メートルの特例が働く。
免除確認を現に受けた土地なら3条7項以下の経路となるため,確認を受けられる可能性と現に受けた状態を区別する。
(3) 調査から実効的措置へ進む
採点実感は,5条だけで論述が終わり,6条の指定と7条の計画・実施へ進まない答案を指摘する。
一方,新聞報道を公的に検証済みの汚染と同視することもできない。
飲用指定,地下水の水質及び広場との原因関係を確認し,法定要件を満たすときに次の措置へ進む構造を示すことが重要である。
土対法54条の報告徴収・立入検査と,水濁法14条の3の浄化措置は根拠・対象・効果が異なり,一方の権限から他方の効果を作り出さない。
(4) 差止めの内容と損害を区別する
将来の流出防止だけでなく,既に汚染された地下水の浄化も救済の対象となる。
住民が浄化方法を具体化するのが困難な場合には,達成状態を示す抽象的差止めの必要性と,請求の特定及び執行可能性を対置する。
公園の利用制限による利便喪失は公式趣旨が例示する仮定的な損害候補であり,実際に利用制限があったと補ってはならない。
採点実感は損害賠償の結論の肯否を問わず,何が損害かを吟味することを求めている。
(5) 答案の弱点と扱わなかった事項
本答案は,特定の浄化工法を一律に選択せず,具体的な汚染確認と必要な措置を区別している。
危険濃度や曝露量が示されていないため,民事差止めの認容を断定するものではない。
廃棄物処理法上の廃棄物該当性や行政訴訟は,設問が求めた直接の対象から外し,独立の検討を展開していない。
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第7 出典及び確認状態
1 公式資料
法務省・令和2年司法試験選択科目問題のPDF実頁28~30を確認した。
法務省・令和2年司法試験出題趣旨のPDF実頁36の環境法第1問から37頁末までを確認した。
法務省・令和2年司法試験採点実感(選択科目)のPDF実頁36~38の環境法総論・第1問と,40頁の共通末尾を確認した。
2 法令
土壌汚染対策法・令和2年4月1日施行版の本則3~7条等を確認した。
水質汚濁防止法・令和2年4月1日施行版の14条の3を確認した。
政省令の適用は,問題に添付された令3条,規則1・16・22・25・28~30条及び水濁令2条の抜粋を基礎とする。
3 裁判例
特定の判決を原文確認済みの先例として引用していない。
人格権差止めの根拠・要件・抽象的請求の論点は,公式資料の要求と,これを踏まえた法的検討を区別して示している。
4 確認状態
問題,出題の趣旨及び採点実感は,上記の対象範囲を実読・照合済みである。
公式資料からの評価単位の分け方,重み及び模範解答は記事独自の分析である。
飲用指定の有無,汚染の公的確認,濃度,曝露量及び公園利用制限の有無は問題文だけでは確定しないため,条件付きで扱った。
後発の法改正や後年度の解説記事を,試験当時の答案を変更する根拠として用いていない。