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相続財産管理人の選任申立て―民法897条の2の要件・必要書類・費用と終了(AI作成)

第1 この記事の対象と制度の選び方

民法897条の2の相続財産管理人は,相続財産の散逸を防ぎ,必要な保存・管理をするために家庭裁判所が選任する管理人である。
相続人がいるかどうかだけで決まる制度ではなく,保存の必要性と,同条1項ただし書の除外事由を確認する必要がある。
本記事は,令和8年10月18日に確認した民法,家事事件手続法及び大阪家庭裁判所の令和8年1月5日版手引きに基づき,一般の選任申立てを説明する。

相続人のあることが明らかでない遺産を清算する民法952条の相続財産清算人とは,目的が異なる。
旧資料の「相続財産管理人」には現在の清算人を指すものもあるため,根拠条文を確かめる必要がある。
相続財産清算人とはと,各制度の違いと代位による相続登記も参照されたい。

状況主に検討する制度確認する点
遺産の保存・管理が必要である民法897条の2の相続財産管理人保存の必要性と除外事由
相続人のあることが明らかでない遺産を清算する民法952条の相続財産清算人相続人不存在等の資料と清算目的
相続人本人が行方不明である民法25条の不在者財産管理人所在調査と本人の財産管理の必要性
遺産分割の手続中に財産管理を確保する家事事件手続法200条の財産管理者調停・審判の申立てと保全の必要性

第2 選任の要件と利用できない場合

1 相続の段階と保存の必要性

民法897条の2は,相続開始後,原則として相続の段階にかかわらず,保存に必要な処分を命ずることができる制度である。
共同相続人が単純承認をした後でも,遺産全部の分割前であれば対象となり得る。
大阪家庭裁判所の手引きは,現に管理している相続人の管理が不適当である場合や,管理する者がいない場合などに,管理人選任の必要性があるかを判断すると説明している。

申立てでは,「相続人が協力しない」という事情に加え,対象財産,生じている危険,必要な管理行為,管理を担当できる者がいない事情を具体的に示すことが重要である。
例えば,遺産不動産の維持に継続的な支払が必要なのに,相続人間の対立によって支払ができないという事情と,その裏付け資料を整理することが考えられる。
この整理は申立準備の観点であり,個々の事例について選任を保証するものではない。

2 ただし書の三つの除外事由

次の場合には,民法897条の2第1項による保存処分を命ずることはできない。
① 相続人が1人で,その相続人が単純承認をした場合である。
② 相続人が数人で,遺産全部の分割がされた場合である。
③ 民法952条1項の相続財産清算人が選任されている場合である。

相続人が数人いる場合に,単純承認をしたことだけで直ちに利用できなくなるわけではない。
また,一部の遺産を分割した場合と,遺産全部の分割を終えた場合も区別する必要がある。

3 元後見人の引継ぎに関する説明との関係

元後見人が相続人に財産を引き継げない場合については,大阪家庭裁判所後見センターの資料を扱った相続人が遺産を受け取らないときで説明している。
その記事で紹介する親族間紛争型の判断や手順を,一般の選任申立てすべてに共通する法定要件と考えてはならない。
本記事の一般手続と,元後見人の引継ぎに関する事案別の検討を区別する必要がある。

第3 申立人・申立先・必要書類

1 申立人と申立先

申立てができるのは,利害関係人又は検察官である。
大阪家庭裁判所の手引きは,利害関係人の例として,共同相続人,相続債権者,受遺者,相続人の債権者及び次順位の相続人を挙げている。
申立人自身の利害関係と,選任を必要とする事情を分けて説明するとよい。

申立先は,相続が開始した地を管轄する家庭裁判所である(家事事件手続法190条の2第1項)。
大阪家庭裁判所の手引きは,被相続人の最後の住所地の家庭裁判所と案内している。

2 大阪家庭裁判所の手引きにある資料

主な資料は,申立書,相続関係図,相続人の範囲が明らかになる戸籍類,被相続人の住民票除票又は戸籍附票,利害関係の資料,相続財産目録及びその裏付け資料である。
申立人が法人等である場合には,資格証明書等も必要になる。
戸籍類の範囲は相続関係によって異なり,被相続人の出生から死亡までの戸籍は必ず必要とされ,相続人が兄弟姉妹の場合には父母の出生から死亡までの戸籍も必要とされている。

財産目録には,預貯金や不動産などの積極財産だけでなく,借金等の消極財産も記載する。
不動産登記事項証明書,固定資産評価証明書,通帳の写し,残高証明書等を添え,相続放棄がある場合には受理証明書又は照会回答書等も準備する。
個人番号の記載がない資料を提出し,事案により追加資料が必要になることにも留意する。

手引きは,提出書類が返却されないこと,選任後の管理人に申立書と添付書類の副本一式を直接送付することを案内している。
申立て前に控えと副本を作っておく必要がある。

第4 費用・予納金・管理人の選任

1 申立費用の大阪本庁の例

大阪家庭裁判所の令和8年1月5日版手引きでは,収入印紙800円,郵送料2000円程度とされている。
すべて郵便切手で納付する場合は計1200円で,内訳は110円切手10枚と10円切手10枚である。
熟慮期間中の相続人がいる場合には,相続人1人につき110円切手3枚と10円切手1枚を追加するよう案内されている。

これは大阪家庭裁判所本庁についての資料上の例である。
納付方法・金額は,申立て直前に申立先の家庭裁判所の最新案内で確認する必要がある。

2 予納金と返還

管理費用と管理人報酬を賄う流動資産が少ない場合には,予納金の納付が必要となることがある。
同手引きでは,金額は事案に応じ,申立て後の選任直前に裁判官が決めるとされ,申立時の納付は必要ないとされている。
清算人の別手続で示されている予納金の目安を,この保存型管理人にそのまま当てはめてはならない。

管理人の管理下で費用・報酬の原資となる財産が形成されれば予納金が返還される一方,十分な財産が形成されなければ全部又は一部が返還されないことがある。
同手引きは,大阪本庁では原則として申立人の推薦を受けず,事件に利害関係のない大阪弁護士会所属の弁護士を選任すると案内している。

第5 管理人の職務と管理の終了

1 保存・管理と権限外行為

管理人は家庭裁判所の監督を受け,相続財産を管理して散逸を防止する。
民法897条の2第2項により,同法27条から29条までが準用され,財産目録の作成,権限外行為の許可,報酬等の規定が適用される。
保存・管理の制度である以上,選任だけで遺産分割が成立したり,すべての財産を自由に売却できたりするわけではない。

2 引継ぎ・供託と取消し

家事事件手続法190条の2第2項は,同法146条の2及び147条等を準用している。
管理・処分等により生じた金銭の供託には,準用される規定に基づく公告等の手続があり,相続人への返還債務についての民法494条の弁済供託とは根拠を区別する必要がある。

管理すべき財産がなくなった場合その他管理を継続することが相当でなくなった場合には,準用される取消しの手続を検討する。
申立人の当初の目的が達したという事情だけで,当然に管理人の職務が終わると考えてはならない。
引継先,残余財産,管理の計算,報酬,供託・公告及び取消しの要否を家庭裁判所と整理する必要がある。

相続放棄者の民法940条による保存義務については,同条が引渡先を相続人又は民法952条1項の清算人と定めていることにも注意を要する。
民法897条の2の管理人が選任されたという事実だけで,その保存義務が当然に終了するわけではない。

第6 よくある質問

1 相続人がいる場合にも申し立てられるか

申し立てられる場合がある。
ただし,保存の必要性があり,民法897条の2第1項ただし書の除外事由に当たらないことが必要である。
共同相続人がいるが管理ができていない場合と,相続人1人が単純承認した場合を区別する必要がある。

2 管理人と清算人のどちらを申し立てるか

財産の保存・管理を求めるのか,相続人不存在等を前提に遺産全体を清算するのかによって異なる。
古い書式の名称だけで決めず,根拠条文と申立目的を確認する必要がある。

3 費用を払えば必ず選任されるか

費用の納付だけで選任されるものではない。
申立権,保存の必要性及び利用できない場合に当たらないことなどが審理される。

第7 出典・関連記事

① 民法(https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089)27条~29条,897条の2,940条及び952条。
② 家事事件手続法(https://laws.e-gov.go.jp/law/423AC0000000052)146条の2,147条,190条の2及び200条。
③ 大阪家庭裁判所「相続財産管理人選任申立ての手引き(897条の2用)」(https://www.courts.go.jp/osaka/vc-files/osaka/souzoku_8972_tebikiR80105.pdf)(令和8年1月5日版,PDF実頁1~4。末尾の相続関係図は実頁5)。
④ 旧資料を調べる場合は,相続財産管理人選任申立ての手引を参照されたい。