第1 設置義務・社外性・独立性を別々に確認する
社外取締役の選任では,①会社法上,社外取締役を置く必要がある会社か,②候補者が会社法の社外性の要件を満たすか,③取引所の独立役員としての独立性を満たすかを分けて確認する。
外部の専門家であることや,非常勤であることだけで,これらの要件を全て満たすものではない。
本記事は,令和8年10月17日に確認した会社法2条15号,327条の2,331条,400条及び日本取引所グループの独立役員制度の案内に基づき,選任前の確認順序を説明する。
ガバナンス・コード全般は,コーポレートガバナンス・コードとはで扱う。
第2 社外取締役を置く必要がある会社
1 監査役会設置会社の設置義務
会社法327条の2は,監査役会設置会社のうち,公開会社であり,かつ大会社であって,発行する株式について有価証券報告書の提出義務を負う会社に,社外取締役の設置を義務付ける。
上場会社であるかという呼び方だけでなく,条文の条件を順に確認する必要がある。
会社法の「公開会社」は,株式の全部又は一部について譲渡承認を要する定款の定めがない会社をいい,上場会社と同じ意味ではない。
「大会社」は,最終事業年度の貸借対照表の資本金5億円以上又は負債200億円以上等の定義による(会社法2条5号・6号)。
2 委員会を置く会社の構成要件
監査等委員会設置会社では,監査等委員である取締役は3人以上で,過半数が社外取締役でなければならない(会社法331条6項)。
指名委員会等設置会社では,指名・監査・報酬の各委員会を3人以上で組織し,各委員会の過半数を社外取締役とする(400条1項・3項)。
| 機関設計 | 会社法上の主な確認 | 数え方の注意 |
|---|---|---|
| 監査役会設置会社 | 327条の2の条件を満たす場合に設置義務 | 公開・大会社・有報提出義務を確認 |
| 監査等委員会設置会社 | 監査等委員である取締役3人以上,その過半数が社外 | 取締役全体の過半数とは異なる |
| 指名委員会等設置会社 | 各委員会3人以上,各委員会の過半数が社外 | 各委員会について個別に確認 |
327条の2の対象でない会社に,会社法上その条文による一律の設置義務があると説明してはならない。
ただし,他の機関設計上の条件,定款,上場規則等の確認は残る。
第3 候補者の社外性を確認する
会社法2条15号は,次のような関係について要件を置き,その全てに該当することを求める。
役職名だけでなく,対象会社と子会社・親会社等との関係及び就任時点の経歴を確認する。
1 対象会社・子会社の業務執行歴
現在,対象会社・子会社の業務執行取締役等でなく,就任前10年間にも該当していないことが基本となる。
直前10年間に非業務執行の取締役・会計参与・監査役であった場合には,その就任前にさかのぼる業務執行歴の条件も確認する。
現在退職しているという事情だけでは足りない。
2 親会社等・兄弟会社との関係
自然人である親会社等そのもの,又は親会社等の取締役・執行役・支配人その他の使用人でないことなどが求められる。
親会社等の子会社等である別の会社についても,業務執行取締役等に該当しないかを確認する。
グループ外からの選任という説明と,法律上の関係者の範囲を照合する必要がある。
3 配偶者・二親等内の親族
対象会社の取締役・執行役・支配人その他の重要な使用人又は自然人である親会社等の,配偶者・二親等内の親族でないことが要件となる。
この会社法上の親族要件と,取引所の独立性判断における関係者の確認を混同しない。
候補者への質問票は,各号の対象者・期間が分かるように作成することが望ましい。
第4 独立役員・独立社外取締役との違い
取引所の独立役員制度では,一般株主と利益相反が生じるおそれのない社外取締役又は社外監査役を独立役員として扱う。
会社法上の社外性を満たしたことだけで,独立性の確認まで終わるわけではない。
主要な取引関係,専門家報酬,経営陣との関係など,取引所の基準・届出上の確認も必要となる。
「独立役員」には社外監査役も含まれる一方,「独立社外取締役」は取締役である。
また,会社法上必要な構成人数と,ガバナンス・コード上の原則を満たす人数は,同じ問題ではない。
コード上の具体的な人数・比率・市場区分への対応は,適用される版と会社の状況を確認する。
コードの改訂対応は,2026年改訂コーポレートガバナンス・コードで説明する。
コードの一般原則の説明を,会社法の社外性の定義に置き換えてはならない。
第5 選任時と就任後の確認資料
選任時には,定款,登記事項,最終事業年度の貸借対照表,有価証券報告書提出義務の資料,候補者の経歴・兼職,グループ関係及び親族関係を確認する。
上場会社では,独立性の質問票と届出書類も別に用意し,どの判断にどの資料を使ったかを記録するとよい。
就任後に役職・取引関係等が変われば,社外性・独立性を再点検する必要がある。
確認済みの履歴書を保存するだけでなく,変更時の報告経路を決めておくことが,構成要件や開示の誤りを防ぐ上で有用である。
これらは要件を確認するための実務上の提案であり,一つの様式を使うことだけで適法性が保証されるものではない。
第6 出典と関連記事
①e-Gov法令検索「会社法」。2条5号・6号・15号,327条の2,331条6項,400条。
https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086
②日本取引所グループ「独立役員」。
https://www.jpx.co.jp/equities/listing/ind-executive/index.html
③法務省「会社法の一部を改正する法律について」。令和元年改正の社外取締役に関する説明。
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00001
④平成26年と令和元年の改正の関係は,会社法の改正経緯で説明する。