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自由診療・栄養療法・サプリメントの医療費控除―治療,予防,医師の指示及びセルフメディケーション税制(AI作成)

第1 この記事の対象と結論

自由診療の費用は,公的医療保険が適用されないという理由だけで医療費控除から除外されるものではない。
他方,医療機関で支払い,医師から勧められ,又は領収書に「治療用」と記載されていても,栄養補助食品,健康食品又はサプリメントの購入費が当然に医療費控除の対象となるわけではない。

通常の医療費控除では,支出ごとに,①医師又は歯科医師による診療・治療の対価か,②治療・療養に必要な医薬品の購入費か,③診療等を受けるため直接必要な費用か,④予防・健康増進又は日常生活のための支出かを区別する必要がある。
本記事は令和8年10月16日時点の法令,国税庁の公表資料,公表裁決及び裁判例に基づき,この確認順序を整理するものである。

第2 通常の医療費控除は支出の目的と法的な性質で判断する

1 所得税法と施行令の枠組み

所得税法73条は,居住者が自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の医療費を支払った場合の所得控除を定めている。
所得税法施行令207条は,医師又は歯科医師による診療・治療,治療・療養に必要な医薬品の購入等の対価のうち,病状等に応じて一般的に支出される水準を著しく超えない部分を対象としている。

控除額を計算するときは,その年に実際に支払った対象医療費から,保険金,給付金又は損害賠償金等で補填される部分を差し引く。
未払額は支払った年の対象であり,領収書の合計額と控除額は同じではない。

2 自由診療であることだけでは決まらない

医療費控除の要件は,健康保険が適用されたかどうかではなく,支出の内容が法令上の診療・治療等の対価に当たるか,病状等に応じた通常必要な水準かという点にある。
国税庁「医療費控除の対象となる歯の治療費の具体例」も,自由診療による歯科治療について,一般的な水準を著しく超える特殊なものを除き,対象になり得ると説明している。

医療機関への一括支払に,診察料,検査料,施術料,医薬品代,食品・サプリメント代又は会費等が含まれる場合は,明細を分ける必要がある。
診察料が対象になり得ることと,併せて販売された全商品が対象になることは別問題である。

第3 治療と予防・健康増進を区別する

1 治療又は療養に必要な医薬品

国税庁「医療費控除の対象となる医療費」は,治療又は療養に必要な医薬品の購入費を対象とする一方,ビタミン剤等であっても,疾病の予防又は健康増進のために用いられるものの購入費は対象外としている。
したがって,同じ医薬品でも,具体的な疾病の治療に用いたのか,健康維持又は予防のために用いたのかを確認する必要がある。

2 健康診断,検診及び予防接種

人間ドック,健康診断その他の検診費用は,疾病の治療を目的としないため,原則として通常の医療費控除の対象にならない。
ただし,国税庁のQ&Aは,健康診断等によって重大な疾病が発見され,かつ,引き続きその疾病の治療を行った場合には,治療に先立つ診察と同様に扱い,その費用も対象になるとしている。

予防接種の費用は,通常は疾病の予防のための支出であり,通常の医療費控除の対象ではない。
もっとも,一定の予防接種を受けた事実は,後述するセルフメディケーション税制の「一定の取組」に当たり得るが,そのことは予防接種費用自体が同税制による控除対象になるという意味ではない。

第4 栄養療法・サプリメントは診療費と商品代を分けて確認する

1 医薬品と食品は同じではない

所得税基本通達73-5は,施行令207条2号の医薬品を,医薬品医療機器等法2条1項の医薬品とし,医薬品であっても予防又は健康増進のために用いられるものは医療費に当たらないとしている。
サプリメント,健康食品,栄養補助食品又は特別用途食品という表示だけから医療費控除の可否は決まらないが,食品であって医薬品ではない商品を,「治療用」という説明だけで医薬品の購入費として扱うことはできない。

医師が行う診察,検査,医学的評価又は治療計画の作成に対する費用と,患者が購入する食品・サプリメントの代金は,契約上も領収書上も分けて確認する必要がある。
医療機関が販売者であること,医師が摂取量を指示したこと,又は商品が診療方針の一部と説明されたことだけで,商品代の法的性質は変わらない。

2 医師の処方又は指示は十分条件ではない

福島地裁平成11年7月27日判決・平成9年(行ウ)第3号は,医師の食餌箋に基づき購入した健康茶,加工食品,薬草茶等について,医薬品に該当せず,社会通念上,診療・治療又は治療・療養に必要な医薬品の購入の対価とは認められないとした。
所得税と制度趣旨・要件を同じくする住民税の医療費控除が争われた事案であり,医師の指示という事実だけで食品代が対象になるものではないことを示している。

国税不服審判所平成14年11月26日裁決も,医師の処方による自然医食品等であっても,医薬品に該当しない以上,治療又は療養に必要な医薬品とはいえないとした。
同審判所平成17年3月15日裁決も,健康食品等のほか,献立書,衣料品,無資格者による施術,通常の老眼鏡及び治療との直接性を欠く旅行費用等を,客観的な支出内容に即して区別している。

東京地裁平成27年5月12日判決及び東京高裁平成27年11月26日判決は,不妊治療のため医師の指導に基づき購入したサプリメントについても,医薬品に当たらず,診療・治療の対価又は治療・療養に必要な医薬品の購入費には当たらないとした。
医師の指導,領収書の「治療用」という記載,又は過去年分で申告が還付処理された事実だけでは,後の年分の適法性が確定するものではない。

3 支出ごとの確認表

確認対象主に確認する資料判断上の意味
診察・検査・治療計画診療明細,診療録,検査結果医師による診療又は治療の対価か
医薬品商品名,承認区分,用途,領収書医薬品か,治療・療養のために用いたか
食品・サプリメント商品表示,成分,販売者,契約・領収書商品代を診療費又は医薬品代と混同していないか
健康診断・検診受診目的,結果,治療開始日重大な疾病の発見と引き続く治療があるか
補填金保険金・給付金・賠償金の支払明細どの医療費を補填する金額か

第5 セルフメディケーション税制は通常の医療費控除とは別に選択する

1 対象商品と一定の取組

国税庁「特定一般用医薬品等購入費を支払ったとき」によれば,セルフメディケーション税制の対象は,法令上の一定の取組を行った納税者が支払った特定一般用医薬品等の購入費である。
対象商品は領収書の表示と厚生労働省の対象品目一覧で確認し,サプリメント又は健康食品を同税制の対象医薬品と取り違えない。

一定の取組には,保険者又は市区町村が実施する健康診査,勤務先の定期健康診断,特定健康診査,一定の予防接種及び市区町村のがん検診等が含まれる。
申告する本人がその年中に一定の取組を行う必要があるが,取組自体の費用はセルフメディケーション税制による控除額に含まれない。

2 通常の医療費控除との選択

セルフメディケーション税制による控除額は,補填分を除く対象医薬品の購入費から1万2000円を差し引いた金額であり,上限は8万8000円である。
通常の医療費控除とは選択適用であり,同一年分について両方を併用することはできず,申告後に更正の請求又は修正申告で選択を変更することもできない。

したがって,申告前に,通常の医療費控除の対象額と,セルフメディケーション税制の対象購入費を別々に集計し,所得金額,補填金及び各控除の上限を含めて比較する必要がある。
「予防のための支出だからセルフメディケーション税制に入る」という包括的な制度ではない。

第6 弁護士・税理士が確認し,保存する資料

1 医療機関又は販売者に確認する事項

支出の内容に争いが生じたときは,商品名や一般的な効能の説明だけでなく,①診断名と治療目的,②診察・検査・商品代の内訳,③医薬品か食品か,④医師の指示内容と指示日,⑤予防・健康増進との区別,⑥販売者と代金の支払先を確認する。
自由診療の説明書,料金表及び申込画面に複数の役務・商品が含まれる場合は,契約時の版も保存する必要がある。

2 申告と紛争に備えて保存する資料

診療明細,領収書,処方箋又は指示書,商品パッケージ・添付文書,医薬品の承認区分,健康診断結果,治療開始を示す診療録,補填金の支払明細及び支払日を保存する。
医療費控除の明細書を提出した場合も,税務署等から提示又は提出を求められることがあるため,対象となる領収書等は原則として確定申告期限等から5年間保存する。

控除対象か不明な費用は,診察料と商品代を分けずに一括計上するのではなく,支出単位で根拠と未確認事項を記録する。
金額が大きい場合又は独自の治療法・商品が問題となる場合は,申告前に税務署への照会又は税理士への相談を検討する。

第7 税務,医学的根拠,薬事承認,保険適用及び広告は別の問題である

医療費控除の対象になるか,その療法に医学的な有効性があるか,医薬品として承認されているか,公的医療保険が適用されるか,広告表示が適法かは,それぞれ根拠制度と判断資料が異なる。
税務上対象外であることから治療の違法性が直ちに導かれるものではなく,反対に,広告で「医師監修」「治療用」又は「最新エビデンス」と表示されていても,税務上の要件を満たすとは限らない。

検査サービスの科学的根拠,医療広告及び契約前説明を評価する手順は,血液でがんを調べる民間検査の広告をどう読むかで整理している。
税務調査,審査請求又は租税訴訟へ移行した場合の弁護士と税理士の役割分担は,税務調査・審査請求・租税訴訟における弁護士と税理士の連携を参照されたい。

第8 出典と確認範囲

法令は所得税法73条及び所得税法施行令207条,行政資料は国税庁タックスアンサーNo.1122,No.1128,No.1129,No.1131からNo.1133まで並びに国税庁「医療費を支払ったとき」を確認した。
裁判例は,福島地裁平成11年7月27日判決の裁判所公開全文,東京地裁平成27年5月12日判決及び東京高裁平成27年11月26日判決の国税庁税務訴訟資料を確認し,公表裁決は国税不服審判所平成14年11月26日裁決及び同平成17年3月15日裁決を確認した。

医療費控除は申告年分の法令と個別の支出内容に即して判断される。
商品区分,対象品目一覧,セルフメディケーション税制の適用期限その他の制度内容は改正され得るため,実際の申告ではその年分の国税庁及び厚生労働省の資料を改めて確認する必要がある。