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中小M&Aの売却代金と役員退職金―支払義務,後払い,税務と手取り額の確認(AI作成)

第1 「総額」で合意する前に支払の内訳を決める

1 株式代金と退職金を別々に確認する

中小企業のオーナーが株式を売却して退任する取引では,株式代金,役員退職金,役員借入金の返済等を合計して条件が提示されることがある。
しかし,受取人が同じでも,支払義務者,支払原資,必要な決議,税務及び支払時期は同じではない。

まず,株式代金は株主と買主の売買の対価,役員退職金は会社と役員との関係に基づく支払として区別する。
役員借入金の返済では,会社が役員に実際に負う債務とその残高を確認する。
事業譲渡では通常,事業の対価の受取人は譲渡会社となるため,株主個人への株式代金と混同しない。

2 額面・支払確実性・税務を同じ資料で検討する

本記事は,株式を売却して退任する個人オーナーと,その会社・買主を主な対象とする。
中小M&Aガイドライン第3版,各種契約書等サンプル(令和7年12月15日時点版)のうち株式譲渡契約書サンプル,会社法及び国税庁資料を用い,支払条件と税務確認の接点を説明する。

「売却総額」だけで判断せず,支払義務者ごとの額面,税・手数料,実際の入金時期,後払いの条件及び保証解除を確認する。
税務上の区分は名称だけで定まらず,株式の価値,退職の実態,勤務期間及び支給額の相当性を裏付ける資料が必要である。

第2 会社の支払義務と必要な決議

1 買主との約束と会社の決議は別である

株式会社の取締役の報酬等について,会社法361条1項は,定款に定めがないときは株主総会の決議により額等を定めるとする。
退職慰労金を設ける際は,定款,退職慰労金規程,必要な決議,具体額又は算定方法,決定を委任する範囲及び支払条件を確認する。
指名委員会等設置会社等では,機関設計に応じた手続も確認する。

買主が「買収後に会社から支払わせる」と約束したことだけで,必要な会社の決議や支払の手続が済んだと扱わない。
会社自身の支払義務と,買主が決議・支払を実現する契約上の義務を分けて設計する。
支払が実現しない場合の請求先と救済も確認する。

2 契約書例の「速やかに」を具体化する

中小企業庁の上記株式譲渡契約書サンプルの第11条(サンプル集の通し頁20頁)は,買主が対象会社をして,実行後速やかに退職慰労金の承認決議を行わせ,指定口座へ支払わせる例を示す。
会社による必要な源泉徴収も規定している。

実際の取引では,決議日,支払日,金額,送金先,振込手数料,源泉徴収,支払原資及び支払を確認する書面を明確にする。
「速やかに」という文言だけに依存せず,株式の移転や役員辞任との先後関係を確認する。
決議・支払を実行の条件へ組み込むかも,会社手続,税務及び資金調達の事情を踏まえて検討する。

第3 後払い・分割払い・価格調整の危険

1 支配権を渡した後の回収を考える

株式を移転して経営権を渡した後の支払では,売主が会社の資金や資料を管理できなくなる。
買主の資力,会社の運転資金,返済予定及び支払に必要な手続を実行前に確認する。
対象会社のDDとは別に,買主自身の代金支払能力も確認する。

中小M&Aガイドライン第3版53頁~54頁は,譲渡対価のクロージング後の分割払いや役員退職慰労金のクロージング後払い等のリスクを扱う。
売主側では,支払期限,不払時の対応,担保・保証・預託等の利用可能性及び費用を検討する。
ただし,契約条項を置くだけで相手方に支払資力が生まれるわけではない。

2 アーンアウトと補償による控除

将来の業績に応じて追加対価を支払うアーンアウトでは,対象期間,計算指標,会計方針,買主による事業運営の裁量,資料へのアクセス及び異議の処理を定める。
後払いの確定代金と,将来条件により額が変わる対価を一つの欄へまとめない。

表明保証違反の補償を代金や退職金から控除できる条項がある場合には,控除の対象債権,請求者と支払義務者,通知,争いのある請求の処理及び責任上限を確認する。
株主の売買代金と会社の退職金は支払関係が異なるため,当然に同じ相殺ができるという前提を置かない。

第4 法人側の退職給与の税務

1 損金算入の時期

国税庁「役員の退職金の損金算入時期」は,適正な額の退職金について,原則として株主総会の決議等により具体額が確定した日の属する事業年度に損金算入すると説明する。
他方,実際に支払った事業年度に損金経理した場合には,その年度の損金とすることも認められる。

具体額が確定する前の年度に,取締役会で内定した額を未払金に計上しても,その時点の損金とはならない。
契約締結日,退任日,決議日,具体額の確定日,会社の決算日及び支払日を並べて,会社側の税務を確認する。

2 退職の実態と金額の相当性

会社を売却した後も,顧問や相談役等として関与を続ける場合は,肩書だけで退職を判断しない。
勤務の実態,代表権,意思決定への関与,給与及び職務内容を確認する。
国税庁の分掌変更に関する説明は,地位・職務が激変し,実質的に退職したのと同様の事情がある場合の取扱いであり,単に報酬を減額すれば必ず退職金になるという制度ではない。

相当な支給額の検討では,職務に従事した期間,退職の事情,同業種・同規模の法人の支給状況等が問題になる。
買主と売主が合意した総額を退職金に振り分けることだけで,会社側の損金算入が保証されるわけではない。
税理士と,計算の根拠及び比較資料を確認する。

法人税法34条2項は,政令で定める「不相当に高額な部分」を損金に算入しないと定める。
法人税法施行令70条1項2号は,上記の事情等に照らして相当と認められる額を超える部分を対象とする。
決議があることと,支給額の全額が税務上認められることは別である。

さらに,分掌変更等による退職給与では,法人税基本通達9-2-32の注記が,原則として未払金等に計上した額を対象に含めないとしている。
通常の退職により具体額を確定した場合の損金算入時期と混同しない。

第5 受給者の退職所得と株式譲渡所得

1 退職所得の2分の1計算には例外がある

国税庁の退職所得の説明では,一般に収入金額から退職所得控除額を引いた残額の2分の1を退職所得とする。
ただし,役員等勤続年数が5年以下である者がその役員等勤続年数に対応して受ける特定役員退職手当等には,この2分の1計算が適用されない。
使用人期間と役員期間がある場合は,それぞれの期間と支給の対象を確認する。

同じ年の他の退職手当等や過去の退職金・年金一時金によっても,控除額の計算が変わり得る。
会社側の損金算入の結論と,受給者側の退職所得の計算を一つの判断にしない。
また,短期退職手当等にも2分の1計算について別の取扱いがあるため,役員等の期間とそれ以外の期間,それぞれに対応する支給額を区分して確認する。

2 源泉徴収と実際の手取り

支払者へ提出する退職所得の受給に関する申告書,源泉徴収税額及び住民税の扱いを支払前に確認する。
国税庁の令和8年4月1日現在の説明では,申告書を提出していない場合,支払額の20.42%が所得税・復興特別所得税として源泉徴収され,本人の確定申告で精算する。
これは最終的な実効税率を示すものではない。

実行予定年が変わる場合は,その年の法令・税額表を確認する。
手取り額の試算は,支払額だけでなく,勤務期間,控除,他の退職手当,源泉徴収及び申告の必要性を反映させる。

3 株式の売却代金には別の計算がある

個人の非上場株式等の譲渡所得等は,一般株式等の申告分離課税として検討する。
国税庁は,譲渡価額から取得費・委託手数料等の必要経費を控除して譲渡所得等を計算することを説明する。
売却代金の全額を利益とみなしたり,退職所得控除を株式代金にも適用したりしない。

株式の取得経緯,取得費の資料,仲介・FAや弁護士への支払の内容,価格調整及び後払いの条件を税理士へ渡す。
個々の専門家費用がどの所得の必要経費等となるかは,業務内容と取引の実態を確認して判断する。

第6 契約・税務・資金の確認を一枚にまとめる

1 確認表の項目

支払ごとに,受取人,義務者,法的根拠,額面,算定方法,決議,支払日,資金源,源泉徴収,その他の税,手数料,手取り及び不払時の対応を整理する。
株式価値を評価する際には,退職金支払による会社の現預金・純資産への影響と価格調整を整合させる。
同じ金額を二重に差し引いていないかも確かめる。

仲介・FA手数料の算定基礎に退職金や役員借入金の返済を含むかは,支援契約の定義に従って別に確認する。
企業価値,株式価値,税務上の時価及び手数料算定基礎を,同じ「取引額」として処理しない。

2 弁護士と税理士へ同じ資料を渡す

弁護士は支払義務,会社手続,実行条件及び回収可能性を検討し,税理士は法人と個人の税務,計上時期,源泉徴収及び手取り額を確認する。
契約書の変更,退任後の職務又は支払日が変わった場合は,双方に最新版を渡して再検討する。

保存する資料は,定款・規程,株主総会等の議事録,勤務期間・職務内容の資料,金額の算定根拠,株式取得費の資料,契約書と改訂履歴,資金計画,源泉徴収資料及び送金記録である。

第7 出典と関連記事

中小M&Aガイドライン第3版50頁~55頁
各種契約書等サンプル(令和7年12月15日時点版)のうち株式譲渡契約書サンプル第11条(通し頁20頁)
会社法361条等
法人税法34条2項
法人税法施行令70条1項2号
所得税法30条2項
法人税基本通達9-2-28・9-2-32
国税庁・役員の退職金の損金算入時期
国税庁・使用人が役員へ昇格したとき又は役員が分掌変更したときの退職金
国税庁・退職金を受け取ったとき
国税庁・特定役員退職手当等
国税庁・株式等を譲渡したときの課税

国税庁の上記資料は令和8年4月1日現在の法令等による説明である。
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