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YouTuber・配信者の著作権・広告収益に相続税はかかるか―財産評価基本通達148と営業権(AI作成)

第1 結論―チャンネルを一つの財産として評価しない

1 権利・収益・アカウントを分ける

YouTuber,動画配信者又はインフルエンサーが死亡した場合,「YouTubeチャンネルを相続できるか」だけを検討しても,民事,税務及びプラットフォーム上の手続を整理できない。
少なくとも,①動画等の著作権,②死亡時までに発生した未払収益,③死亡後に著作権又は事業から生ずる収益,④Google・YouTube・ブランドアカウント及びAdSenseの管理権限,⑤法人が事業主体である場合の株式に分ける必要がある。

国税庁は,著作権を含む金銭に見積もることができる経済的価値のある財産が相続税の課税対象になると説明している。
しかし,アカウント名や登録者数そのものを直ちに一つの相続財産として評価するのではなく,死亡時に誰がどの権利を有し,どの将来収益がその権利に帰属するかを確定する必要がある。

2 最初に作る五つの一覧

実務では,次の五つを別々の一覧にすると整理しやすい。
①動画,台本,写真,楽曲,サムネイル,ロゴ等の権利一覧
②AdSense,メンバーシップ,Super Chat,スポンサー料,物販代金等の未払額一覧
③Googleアカウント,ブランドアカウント,YouTube Studio及びAdSenseの権限一覧
④制作費,外注費,出演料,音源利用料,返金その他の債務一覧
⑤個人事業か法人事業か,法人の場合は株主,役員,契約名義及び知的財産の帰属を示す一覧

第2 動画の著作権と著作者人格権

1 アップロードした人が全権利者とは限らない

動画には,映像,台本,写真,音楽,イラスト,ロゴ,出演者の実演その他の複数の素材が含まれ得る。
チャンネルの開設者又は動画の投稿者が,これらすべての著作権者であるとは限らない。

撮影・編集された動画は,映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され,物に固定されていれば,映画の著作物に当たり得る(著作権法2条3項)。
映画の著作物の著作者は,制作,監督,演出,撮影,美術等を担当してその全体的形成に創作的に寄与した者であり(同法16条),撮影や編集を外注した場合は,外注先の撮影者・編集者が著作者となることがある。
もっとも,著作者が映画製作者(映画の著作物の製作に発意と責任を有する者。同法2条1項10号)に対し製作への参加を約束しているときは,その映画の著作物の著作権は映画製作者に帰属する(同法29条1項)。
この場合も著作者人格権は著作者に残るので(同法59条),外注契約の内容から,著作権が投稿者側と外注先のどちらにあるかを確認する。
相続税の課税対象となる著作権の範囲は,この帰属によって決まる。

雇用又は法人名義の制作,外注,著作権譲渡,利用許諾,共同制作及び第三者素材の利用がある場合は,契約書,発注書,請求書,制作データ及び公開時の表示から権利の帰属と利用範囲を確認する。
相続の対象を決める前提として,被相続人が有していた権利だけを特定する必要がある。

2 著作権は承継できるが著作者人格権は承継しない

著作権法61条は著作権の譲渡を予定しており,民法896条による包括承継の対象にもなり得る。
これに対し,著作者人格権は著作者の一身に専属し,譲渡することができないため,相続されない(著作権法59条)。

もっとも,著作者の死後も,著作者が生存していれば著作者人格権の侵害となるべき行為を原則としてしてはならない(著作権法60条)。
相続人が著作権を取得したからといって,故人の氏名表示を変え,内容を自由に改変し,又は第三者の権利を無視して再公開できるわけではない。

3 共同相続後の管理を決める

複数の共同相続人が著作権を承継した場合,著作権法65条は,共有著作権の持分の譲渡,質権設定及び権利行使について他の共有者との調整を要求している。
遺産分割が終わるまでの公開継続,削除,編集,ライセンス付与及び収益受領について,誰がどの範囲で行うかを記録しておくべきである。

第3 Google・YouTube・AdSenseの手続

1 法的な承継とログイン権限は同じではない

相続人が著作権又は未払収益を承継することと,被相続人のGoogleアカウントへ本人としてログインできることは別の問題である。
Googleの死亡者アカウント手続は,アカウントの閉鎖,資金請求又は一定のデータ取得を申請する経路を設けているが,パスワードその他のログイン情報は提供しないとしている。

死亡後に認証情報を用いてパスワード変更,動画削除又は支払先変更をすると,利用規約,アクセス権限,共同相続人との関係及び証拠保全が問題となり得る。
まず公式手続,既存の正当な管理権限及び保存すべき記録を確認する必要がある。

2 ブランドアカウントとチャンネル権限を区別する

ブランドアカウントの公式資料によれば,ブランドアカウントには複数の所有者又は管理者を設定でき,主所有者の変更には原則として7日以上所有者であること等の条件がある。
YouTubeのチャンネル権限は,パスワードを共有せずに役割を付与する仕組みであるが,動画の著作権,ブランドアカウントの所有者及び金銭債権の帰属を一括して移転する制度ではない。

主所有者の個人アカウントを閉鎖する前に,既存所有者,管理者,チャンネル権限,回復用メールアドレス,二要素認証及び他サービスへの影響を確認する。
生前対策では,事業継続に必要な人へ適切な権限を付与し,一人の個人アカウントに管理を集中させないことが重要である。

3 未払AdSense収益の受領手続

Google AdSenseの公式資料は,正当な相続人が死亡者の発生済み未払収益の支払先変更を求める手続を案内している。
これは発生済み収益を受領するための手続であり,動画の著作権,チャンネルの管理権限又は死亡後の事業全体を当然に承継させる手続ではない。

第4 未払収益と死亡後の収益を分ける

1 死亡時までに発生した未払収益

死亡時までの視聴,広告表示,メンバーシップ,Super Chat,スポンサー業務又は物販によって既に発生した収益は,支払日が死亡後でも,まず未収金又は金銭債権として把握する。
管理画面の推定額と確定額が異なる場合は,対象期間,確定条件,控除,為替及び実際の入金額を保存し,死亡時の債権額を確認する。

準確定申告に含める所得と相続財産として計上する未収金の関係は,所得の発生時期及び権利確定の状況によって検討する必要がある。
弁護士が遺産目録を作るときは税理士へ管理画面,支払明細,入金口座及び契約資料を引き継ぐべきである。

2 死亡後に生じる収益

死亡後も過去動画から広告収益等が生じることがあるが,その全額が死亡時に確定した未収金であるとは限らない。
著作権の利用対価として生じる部分,新たなチャンネル運営によって生じる事業収益,スポンサー契約に基づく報酬及び法人に帰属する収益を分ける必要がある。

プラットフォーム又は契約が支払を「収益」又は「ロイヤルティ」と呼んでいても,その用語だけで日本の相続税評価上の著作権収入に当たるとは決まらない。
実際の契約,収益発生条件,死亡後の作業,権利帰属及び継続可能性から分類する必要がある。

第5 著作権の相続税評価―財産評価基本通達148

1 著作権は相続税の課税対象となり得る

国税庁タックスアンサーNo.4105は,特許権及び著作権を含む,金銭に見積もることができる経済的価値のあるすべてのものを相続税の対象となる財産として挙げている。
したがって,動画等の著作権に死亡時の経済的価値があれば,アカウント手続が未了であることだけを理由に相続財産から除外することはできない。

他方,著作物が存在するだけで常に高額な評価額が生じるわけではない。
死亡時の収益実績,将来の収益期間,権利帰属,第三者素材の制約,公開継続の可能性及び収益化条件を資料に基づいて検討する必要がある。

2 通達148の算式

財産評価基本通達148は,著作権を著作者ごとに一括し,原則として次の算式で評価すると定めている。
年平均印税収入の額×0.5×評価倍率

年平均印税収入の額は,課税時期の属する年の前年以前3年間の印税収入の年平均額である。
評価倍率は,将来も各年の印税収入がその年平均額であるものとして,著作物に精通している者の意見等を基に推算した印税収入期間に応ずる,基準年利率による複利年金現価率である。

3 固定倍率を使い回さない

評価倍率は,死亡時点,将来の印税収入期間及びその時点の基準年利率によって決まる。
過去の解説で例示された「4.999」等の倍率を,別の死亡日又は別のチャンネルへそのまま用いることはできない。

さらに,通達148が対象とするのは著作権の価額であり,YouTubeから支払われる金額をすべて自動的に「印税収入」と扱うとの国税庁資料は確認できない。
広告,メンバーシップ,スポンサー料,物販及びライセンス料を区分し,どの収益を算式の基礎に含めるかを個別に判断する必要がある。

第6 営業権の評価と個人の才能への依存

1 個人事業の営業権

収益が著作物の利用だけでなく,屋号,取引関係,運営体制,外注網,継続的なスポンサー関係又は組織的な集客力から生じる場合は,営業権の評価も検討対象となる。
財産評価基本通達165・166は,超過利益金額を基礎に営業権を評価し,原則10年の持続年数に応ずる複利年金現価率を用いるとしている。

算式の基礎となる超過利益金額は,平均利益金額×0.5から標準企業者報酬額及び総資産価額×0.05を控除して計算する。
平均利益金額は原則として前年以前3年間の所得を基にし,非経常損益,支払利子及び事業専従者給与等について通達所定の調整をする。

2 死亡とともに消滅する営業権は評価しない

通達165の注は,医師,弁護士等のように,その者の技術,手腕又は才能等を主とする事業に係る営業権で,事業者の死亡とともに消滅するものは評価しないとしている。
配信者本人の容姿,話術,知名度又は出演を主とし,死亡後に事業として引き継げない場合は,この注との関係を検討する必要がある。

もっとも,過去動画の著作権又は発生済み未払収益まで当然に無価値になるわけではない。
本人依存の営業権が消滅することと,個別の著作権又は金銭債権が残ることを分けて評価する必要がある。

第7 法人運営と非上場株式

1 権利者と契約名義を確認する

チャンネルを法人で運営している場合,動画の著作権,スポンサー契約,AdSenseの支払先,制作機材及び従業員・外注先との契約が法人に帰属していることがある。
この場合,個人株主の死亡によって相続する中心財産は法人の株式であり,法人所有の著作権又は未収金を個人の遺産として重ねて計上するものではない。

名義だけで判断せず,設立前後の制作物,職務著作,著作権譲渡,役員個人から法人への利用許諾及び入金口座を確認する。
個人所有の権利を法人が無償又は有償で利用している場合は,株式評価と個人所有権の評価の双方へどの収益が反映されるかを点検する必要がある。

2 二重計上を防ぐ

同じ将来収益を,①未収金,②著作権,③営業権及び④非上場株式の価額へ重ねて反映させてはならない。
各評価項目について,対象となる権利,基礎とした収益,対象期間及び他の評価項目との調整を一枚の表にして残すべきである。

第8 弁護士・税理士が集める資料

1 初動で保存する資料

死亡直後には,アカウントを操作する前に,権限のある方法で次の資料を保存する。
①チャンネルURL,ハンドル,動画一覧及び公開状態
②ブランドアカウントの所有者・管理者及びYouTube Studioの権限
③AdSenseの推定収益,確定収益,支払履歴及び支払先
④スポンサー,制作会社,音源,画像,出演者,物販及び所属事務所との契約
⑤確定申告書,青色申告決算書又は収支内訳書,総勘定元帳,請求書及び入金口座
⑥動画,台本,サムネイル,音源,編集データ及び制作工程を示す記録
⑦法人の株主名簿,決算書,契約名義及び知的財産台帳

画面を保存するときは,取得日時,URL,対象期間,取得者及び操作手順を記録する。
推定収益の表示だけで確定債権額を断定せず,後日の支払明細及び入金と照合する。

2 共同作業の分担

弁護士は,権利帰属,相続人,遺産分割,遺言執行者の権限,契約及びアカウント操作の適法性を整理する。
税理士は,未収金,準確定申告,相続税評価,著作権と営業権の区分,法人株式及び二重計上の有無を確認する。

どちらか一方だけで進めると,アカウントの管理ができても相続税評価が漏れ,又は評価はできても権利者でない者がチャンネルを操作する危険がある。
権利一覧,収益一覧及び操作記録を共通資料として連携する必要がある。

第9 裁判例・資料の確認状況

1 直接の公表裁判例を前提にしない

令和8年10月8日に判例秘書で「YouTube AND 相続」,「YouTube AND 相続税」,「動画 AND 相続税 AND 著作権」及び「著作権 AND 相続税」等を検索した範囲では,YouTubeチャンネルの著作権,広告収益又は営業権の相続税評価を直接判断した日本の公表裁判例を確認できなかった。
これは検索範囲内の結果であり,裁判例が存在しないこと又は税務上の取扱いが確定していることを意味しない。

したがって,個別事件では,国税庁の現行通達,死亡時の契約及び収益資料を基礎にし,必要に応じて税務署への事前照会又は専門家意見を検討する。
二次資料の計算例又はプラットフォーム上の用語だけで結論を固定すべきではない。

第10 出典・参考資料

1 法令・国税庁資料

e-Gov法令検索「民法」
e-Gov法令検索「著作権法」
国税庁タックスアンサーNo.4105「相続税がかかる財産」
国税庁「財産評価基本通達148」
国税庁「財産評価基本通達165・166」

2 Google・YouTube公式資料

Google「亡くなったユーザーのアカウントに関するリクエスト」
YouTube「ブランドアカウントの所有者と管理者を変更する」
YouTube「チャンネル権限」
Google AdSense「正当な相続人が未払収益を受け取る方法」

3 二次資料

幻冬舎ゴールドオンライン「有名ユーチューバー死去…その時『相続税』はどうなる?」
同記事は問題の所在と計算例を知るための二次資料として参照し,現行の評価倍率及び個別チャンネルへの当てはめは,前記の国税庁資料で改めて確認した。