メインコンテンツへスキップ
       

日本版DBSの犯罪事実確認記録をどう扱うか―本人通知・訂正、保護者への説明、内部共有と保存・廃棄(AI作成)

第1 施行前に決めておく情報管理の基本

日本版DBSを含むこども性暴力防止法は,令和8年12月25日に施行予定である。
本記事は,同年10月3日現在公表されている法令,9月改訂ガイドライン及び9月29日更新のQ&Aに基づき,施行後の情報管理を準備するための説明である。
犯罪事実確認が必要な事業者・業務の範囲や現職者の確認時期は別に確認する必要があり,すべての企業がすべての従業員の前科を調べられる制度ではない。

こどもの安全確保と従事者の情報保護を両立させるには,誰が確認結果を見るか,誰に何を説明するか,いつ消去するかを先に決める必要がある。
「本人が同意した」「顧問弁護士へ相談する」「保護者が求めた」という事情だけで,犯罪事実確認記録を外部へ提供できるわけではない。
弁護士の役割と被害申告時の聴き取りは,こども性暴力防止法の施行と弁護士の役割も参照されたい。

第2 最初に情報の種類を分ける

1 犯罪事実確認記録等

犯罪事実確認記録等には,犯罪事実確認書そのものだけでなく,そこに記載された情報を転記した記録も含まれる。
特定性犯罪事実の「有・無」だけを人事台帳に記載したものや,確認結果を直接うかがわせる記録にも,同じ制限が及ぶ。
該当する性犯罪歴が「ない」という結果も保護対象であり,確認書を捨ててチェック欄だけ残せばよいという扱いはできない。
対象期間内の特定性犯罪についての制度であって,不起訴,示談,あらゆる犯罪歴を一括して照会する制度ではない。

2 本人から別に取得する情報と被害申告の記録

特定性犯罪事実該当者であると分かった後,事業者が本人との面談等により別に取得する,過去の性犯罪の詳しい事情等は,ガイドライン上「特定性犯罪事実関連情報」と整理される。
この情報には確認記録等の目的外利用・第三者提供禁止規定が直接適用されないが,要配慮個人情報として個人情報保護法上の取得・提供等のルールを確認し,確認記録等に準じた厳格な管理を行う必要がある。
確認書の転記を「面談記録」と呼び替えて,この区別を利用することはできない。

こどもの被害申告,聴取記録,医療情報等についても,取得経緯,内容,利用目的及び法的根拠をそれぞれ確認する。
これらがすべて同じ種類の情報になるわけではないが,被害を受けた事実や医療情報など,要配慮個人情報に該当する内容が含まれ得る。
確認結果の管理規程だけで,こどもの聴き取りや支援に必要な情報管理を済ませないことが重要である。

第3 本人への事前通知と訂正・開示の違い

1 該当する結果は事業者への交付前に通知される

特定性犯罪事実該当者に該当する結果である場合,こども家庭庁は,事業者へ確認書を交付する前に本人へ記載内容を通知する。
通知内容が事実でないと思う本人は,通知を受けた日から2週間以内に訂正請求をすることができる。
事業者への交付は,この期間を経過するまで行われず,期間内に訂正請求があれば,その決定の通知まで行われない(法35条5項,37条)。
本人への連絡方法を確実にし,事前通知が来た場合の相談先と期限を説明しておくことが実務上有用である。

採用応募を取りやめる場合等の交付手続の中止についても,Q&Aで手続が説明されている。
本人が中止を求めただけで事業者の申請が当然に無効になるわけではないため,事業者側の申請取下げまで確認する必要がある。

2 事業者から本人への開示は別の問題である

事前通知は,こども家庭庁から本人への法定手続である。
これに対し,Q&A応用編8-13は,事業者が保有する犯罪事実確認記録等を本人へ開示することも第三者提供に当たり,法12条により認められないと説明している。
「自分の情報だから事業者が写しを渡せる」と考えて,事前通知・訂正制度と混同してはならない。
退職した本人の求めを待たずに消去義務を履行することも,開示への対応とは別に管理する。

第4 内部共有と外部提供を分ける

1 同一事業者内でも必要な担当者に限る

同一事業者内で,人事担当者が配置転換等の防止措置を行うために確認結果を共有することは,必要な範囲で行うことができる。
ただし,全職員への一斉連絡や,別の目的の人事評価への流用まで許されるものではない。
取扱者を必要最小限にし,閲覧者,判断する責任者及び措置を実行する担当者を区別する。

グループ会社,別法人の運営者,派遣元等は,単に業務上の関係があるだけでは同一事業者にならない。
認定基準にある対象業務の従事者の人数と,確認記録を扱う担当者の人数も別であり,「必ず2人の情報管理担当者が必要」という制度ではない。

2 目的外利用・第三者提供の例外は法定されている

法12条は,犯罪事実確認記録等を児童対象性暴力等の防止以外の目的に利用し,又は第三者へ提供することを原則として禁止する。
例外は,①法9条2項・10条2項に基づく教育委員会等の必要な提供,②訴訟その他の裁判所の手続又は犯罪捜査,③情報公開・個人情報保護審査会の調査,④法16条1項に基づく報告・質問・立入検査等の場合に限られる。認定事業者等については法27条2項による準用も確認する。
本人同意,委託先への提供や弁護士会照会について,個人情報保護法上の一般的な例外だけを持ち込むことはできない。

弁護士に行政手続を委託できることと,犯罪事実確認書を閲覧させられることは別である(Q&A応用編10-3)。
外部相談では,確認書等を渡す必要があるか,第三者提供に当たるか,法12条各号の根拠があるかを先に点検する。
情報管理業務を外部に丸ごと委託したり,共有ストレージへ誰でも閲覧できる状態で保存したりしない。

第5 保護者や派遣元には何を説明できるか

1 保護者への説明

保護者から特定の職員に性犯罪歴があるか尋ねられても,犯罪事実確認記録等を提供することはできない。
「該当者はいない」「該当者は何人いる」と人数や有無にまとめても,自由に外部提供できる情報にはならない(Q&A応用編6-30)。
個々の職員が確認の対象かどうかについても,ガイドラインは原則として回答を控えるとしている。

一方で,情報保護を理由に,現に起きた被害への対応まで説明しないのは適切ではない。
確認結果の開示とは分けて,こどもの安全を確保する措置,支援の窓口,調査の進め方,次の連絡時期等について,具体的な説明の可否を検討する。
例えば,「確認結果そのものは個別にお伝えできません。現在の安全確保の対応と相談窓口についてご説明します」とし,実施していない措置を約束しない。

2 派遣元への連絡

対象業務に従事する派遣労働者の犯罪事実確認は,派遣先が行う。
派遣元へ確認記録等を渡せるわけではなく,防止措置を講じる必要があることを伝え,対象業務に従事させないよう派遣契約の変更等を検討する(Q&A基礎編7-8)。
性犯罪歴の存在を直接伝えることと,必要な業務上の対応を伝えることを区別する。
派遣元が本人から独自に事情を聞く場合にも,個人情報保護法等のルールを確認し,派遣先からの禁止された情報提供を迂回する手段にしない。

第6 保存場所,廃棄・消去期限と証拠の扱い

1 保存場所と取扱記録

確認書等の保管は,こども性暴力防止法関連システム上で行うことが原則とされている。
やむを得ずシステム外で記録を扱う場合にも,転記,印刷,メール添付,端末内の複製等を含めて所在と権限を把握する。
情報管理規程,管理責任者,必要最小限の取扱者,施錠・アクセス制御,持出しや不正閲覧の防止,教育及び漏えい対応を整える。
こども家庭庁の情報管理規程等のひな形を利用する際も,保存の有無や実際の担当者に合うものを選ぶ。

2 5年保存が一律の義務ではない

法38条により,通常の廃棄・消去期限は,確認書に記載された確認日から5年を経過した日の属する年度の末日から30日が経過する日までである。
それより前に,①本人が離職した場合は離職の日,②任命・雇用しなかった場合は申請書記載の従事予定日,③事業者が法定の対象事業者のいずれにも該当しなくなった場合はその日から,それぞれ30日が経過する日までに廃棄・消去する。
②では,確認書の交付が従事予定日より遅いときは,交付の日が起算日となる。

同一事業者内で対象業務から別の業務へ異動したことは,直ちに「離職」には当たらない(Q&A応用編8-12)。
人事担当者から管理責任者への連絡,システム上の離職・申請取下げ等の操作,システム外の記録の廃棄・消去及び完了確認を一つの手順にする。
「システムが消すはず」として,手元の写しや転記を放置してはならない。消去義務違反には罰則もある。

3 労務紛争の証拠保存とは区別する

法定の消去期限がある確認記録等を,単に将来の裁判で使うかもしれないという理由で保存し続けない。
ガイドラインは,本人から別に取得した特定性犯罪事実関連情報について,労務紛争への対応等に必要な範囲で保存・利用できる場合を説明しているが,これは確認書の転記を残す許可ではない。

面談では,防止措置の検討や労務紛争対応等の利用目的を具体的に示し,本人の任意の同意を確認する。
同意しないことだけを理由に不利益を与えたり,執拗に同意を求めたりしない。
どの情報をどの経緯で取得したか,利用範囲,保存期間及び必要性がなくなった後の廃棄を,確認記録等と区別して管理する。

第7 漏えい等が起きた場合の初動

誤送信,紛失,不正閲覧等が起きた場合は,拡大防止,対象情報と範囲の特定,原因調査及び報告・本人通知の要否確認を進める。
こども家庭庁への重大事態の報告は,知った後直ちに行う速報と,原則として知った日から30日以内の確報に分かれ,不正目的の行為による場合等の確報は60日以内となる。
速報の目安は概ね3~5日以内であり,調査が終わるまで待ったり,5日間は待ってよいと考えたりしない(Q&A基礎編8-8)。

特定性犯罪事実がある確認記録等及び特定性犯罪事実関連情報の漏えい等には,本人通知が必要となる。
該当する事実がない確認記録等については,同法上の本人通知義務はないが,個人情報保護法上の報告・通知義務が生じる場合がある(同8-9)。
通知困難時の代替措置や,関係法令上の別の報告も確認し,公表時に新たな情報漏えいを生じさせない。
Q&A応用編8-24は,こども家庭庁から所轄庁へ必要に応じて情報共有する場合もあると説明しており,事業者が自由に確認記録等を提供できるという意味ではない。

第8 準備の確認項目と参照資料

1 実務で確認する項目

①対象事業者・対象業務・対象者を確定し,確認の時期と本人への説明を整える。
②確認記録等,独自の面談情報,こどもの申告・医療情報を分け,取得・利用・提供の根拠を確認する。
③管理責任者,閲覧権限及び防止措置に必要な内部共有の範囲を決める。
④保護者,派遣元,外部専門家への説明・相談では,提供する情報と法的根拠を先に点検する。
⑤人事異動・退職・不採用と廃棄・消去の期限管理を連動させ,システム外の複製まで完了確認する。
⑥漏えい時の連絡先,速報・確報,本人通知及び代替措置の担当者を決める。

システムのCSV出力,印刷,自動消去等については,Q&Aに設計中の説明も含まれる。
法定の義務・期限と予定されるシステム仕様を分け,実際の運用開始前に正式マニュアルと最新の公式資料を再確認する必要がある。
本記事の具体的な運用上の提案は,以下の法令・行政資料から導いた実務上の整理であり,日本版DBSの施行後の裁判例を確認したというものではない。

2 参照資料

①e-Gov法令検索・こども性暴力防止法。令和8年12月25日施行予定の条文を確認。法12条,27条2項,35条5項,37条,38条及び46条等。
②こども家庭庁・制度の公式案内。施行日及び公表資料の更新状況を確認。
③こども性暴力防止法施行ガイドライン。令和8年9月改訂。情報の利用・提供につき本文273~275頁,廃棄・消去につき286~287頁,関連情報につき288~290頁等。
④こども性暴力防止法Q&A。令和8年9月29日更新。基礎編6-13,7-8,8-1~10,応用編6-30,7-4,8-1,8-10,8-12~14,8-19,8-24及び10-3等。
⑤犯罪事実確認等義務対象事業者に対する監督指針。令和8年10月1日。義務対象事業者に関する指針であり,認定事業者等の指針とは区別する。

関連記事:平成16年度旧司法試験論文式試験の模範答案―全12問と出題趣旨を踏まえた解説。
憲法第1問の問題文・出題趣旨・模範答案と,出題当時の法令及び現行法の違いをまとめている。