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民事訴訟で「唯一の証拠方法」を調べないことが許される場合―重要証拠不採用、再尋問、所在不明と終結時の対応(AI作成)

第1 結論―「唯一」「重要」「既に調べた」を分ける

民事訴訟では,申し出た証拠をすべて取り調べなければならないわけではない。
民事訴訟法181条1項は,必要でないと認める証拠について,取調べを要しないと定める。
しかし,特定の主張に関する唯一の証拠方法を,特段の事情なく取り調べないことは,判例上,許されない。
また,形式的に唯一ではない証拠であっても,重要な供述の食い違いを検証するために必要な尋問を省略したことが,審理不尽となる場合がある。

一方,唯一の証人でも取調べに不定期間の障害がある場合や,第一審で同一の立証事項について既に尋問した者を控訴審で再度申し出た場合は,別の検討が必要である。
本記事は,令和8年10月3日現在の条文と最高裁判決6件の原文を基に,これらの違いと,代理人が申出・終結時・上訴時に具体化すべき事項を説明する。

第2 唯一性は,何を証明する証拠かに即して判断する

1 事件全体の証拠の数だけでは判断できない

最高裁昭和53年3月23日第一小法廷判決は,土地について相手方会社が完全な所有権を有するのではなく,共有持分を有するにすぎないとの主張を立証するための,当事者本人尋問の申出を扱った。
最高裁は,その主張に関する唯一の証拠方法である以上,特段の事情がない限り取り調べる必要があるとした。
原審は採否を明示しないまま弁論を終結しており,最高裁は判決への影響が明らかな違法を認め,関係部分を破棄差戻しとした。

この判決から実務上導かれるのは,事件に書証や別の証人が存在するかという数の確認だけでは足りないということである。
「契約成立」「所有権の範囲」「説明の有無」など,具体的な立証命題ごとに,既存証拠が何を示し,申し出た尋問がどの不足を埋めるかを説明する必要がある。
本人尋問であることだけを理由に,唯一の証拠方法に関する問題から除外することもできない。

2 「他に主張立証はない」と,申出の撤回は区別する

昭和53年判決では,弁論終結時に双方が「他に主張立証はない。」と述べていた。
最高裁は,この発言をもって,既に申し出ていた唯一の証拠方法を取り調べなくてよい特段の事情とすることはできないとした。
したがって,この事案では,追加の主張立証がない旨の発言から,未処理の尋問申出が当然に撤回されたと扱うことはできなかった。

もっとも,同判決は,責問権の放棄可能性又は民訴法90条による異議権の喪失を一般的に判示したものではない。
発言の解釈,証拠申出の維持・撤回,手続違反に対する異議権の喪失を,それぞれ分けて検討する必要がある。

第3 所在不明など,取調べに不定期間の障害がある場合

1 唯一の証拠方法でも例外はある

最高裁昭和30年9月9日第二小法廷判決では,唯一の証人を尋問するため2回呼出状を発送したが,いずれも転居先不明で送達できなかった。
2回目には郵便集配手が再度調査したことなども認定されている。
最高裁は,旧民訴法260条の不定期間の障害に該当し,唯一の証拠方法であっても同条の適用は妨げられないとして,尋問をせず弁論を終結した措置を適法とした。

最高裁昭和37年4月27日第二小法廷判決も,転貸承諾についての唯一の証人を扱う。
第一審では,送達後の不出頭と,次の呼出状の転居先不明があった。
控訴審は,尋問のため一旦終結した弁論を再開し,証人作成の証明書に記載された新住所へ発送したが,再び転居先不明となり,郵便集配手も数度調査していた。
最高裁は,これらを総合して不定期間の障害を認めた。

現行民訴法181条2項は,証拠調べについて不定期間の障害があるとき,証拠調べをしないことができると定める。
上記2判決は旧法の判決であるが,唯一であることと,実施の障害がないことは別問題であるとの説明に用いることができる。
旧法の条番号を,現行条番号として記載してはならない。

2 呼出しと所在調査の経過を具体化する

これらの判決から,1回不出頭だっただけで,常に尋問を省略してよいとはいえない。
呼出状の送達の成否,不出頭の理由,住所情報の更新,所在調査の経過,実施できる見込みを区別して記録することが有用である。
申出側は,現在の住所・連絡先を確認し,裁判所に伝えた情報と,追加の所在確認が可能かを明らかにする。
これは判決の事実関係から導く実務上の提案であり,上記判決が全国一律の調査回数や待機期間を定めたという意味ではない。

第4 第一審で既に尋問した者の再尋問

最高裁昭和38年9月17日第三小法廷判決では,第一審で当事者本人とその配偶者について,同一の立証事項の証拠調べが既に実施されていた。
その口頭弁論の結果は控訴審でも陳述されており,最高裁は,控訴審での両名の証拠申出は唯一の証拠方法ではないとして,再度取り調べなかったことの違法を否定した。

したがって,同じ人しか事情を知らないことと,その人を控訴審でも必ず再尋問しなければならないことは,同じではない。
再尋問を求めるなら,第一審で未確認の事項,新たな書証との矛盾,前回の質問では解明できなかった点など,再度取り調べる必要を具体化すべきである。
この記載は実務上の提案であり,再尋問の採用を保証するものではない。
本記事では,同判決の証拠手続の判断部分を参照しており,当時の幼児引渡しに関する実体判断を現在の家族法一般の基準として用いるものではない。

第5 唯一ではない重要証拠の不採用が違法となる場合

1 証拠の採否には裁量がある

最高裁昭和56年11月13日第二小法廷判決は,唯一の証拠方法でない限り,証拠を取り調べるかどうかは事実審裁判所の裁量に委ねられると述べ,当該証人が唯一ではないことから違法を否定した。
ただし,同判決の公表原文からは,証人が知る事実や他の証拠の詳細まで明らかにならない。
そのため,具体的な代替証拠の存在や強さを補って説明することはできない。

2 平成20年判決は,供述の食い違いを調べる必要性を問題にした

最高裁平成20年11月7日第二小法廷判決は,痴漢の申告が虚偽であるとして損害賠償を求めた民事事件である。
Aは現場の目撃者ではなく,申告者との電話を通して当事者の発言を聞いた者であった。
目撃者が見付からず,Aの捜査段階の供述内容は申告者の供述と看過できない食い違いがあり,原告の供述に沿うものであった。
Aの供述調書を含む捜査記録の大部分は誤って廃棄されていたが,Aから事情を聴取した検察官の証言と陳述書は存在した。

原審はAを尋問せず,送話口の位置や電車の騒音で発言が聞こえなかった可能性などを挙げ,申告者の供述の信用性を肯定した。
最高裁は,客観的・中立的な立場で,目撃証人に準ずる唯一の人物であるAを尋問せずに認定したことについて,審理不尽の違法を認め,関係部分を破棄差戻しとした。

この判決は,他の証拠が存在しないという形式的な唯一性だけで説明することはできない。
重要なのは,実際に電話で何を,どのような状態で聞いたかを,本人への質問で確認せずに,可能性の推測によって供述の食い違いを処理した点である。
代理人は,証人の中立性だけでなく,その証人への質問が,判決の信用性判断のどの前提を検証するかを示す必要がある。

第6 事案を比較するときの確認表

判決証拠と審理の状態判断・実務上の確認点
昭和53年3月23日特定の主張について唯一の本人尋問。採否を明示せず終結。特段の事情なく不取調べは違法。追加立証なしとの発言と,既存申出の撤回を区別する。
昭和30年9月9日・昭和37年4月27日唯一の証人だが,呼出し・調査を重ねても所在不明。不定期間の障害による不取調べを許容。所在確認と実施見込みを記録する。
昭和38年9月17日第一審で同一立証事項について尋問済み。その結果を控訴審でも陳述。再申出は唯一ではない。再尋問固有の必要性を示す。
昭和56年11月13日申出証人は唯一の証拠方法ではない。当該不採用に違法なし。公表原文にない代替証拠の詳細を推測しない。
平成20年11月7日他の証拠はあるが,重要な供述の食い違いを確認できるAを尋問していない。事案の事情の下で審理不尽。推測で処理された信用性判断の前提を特定する。

第7 証拠申出・終結時・上訴での対応

1 証拠説明では立証命題と既存証拠の不足を対応させる

証人又は本人の氏名だけでなく,①証明する具体的事実,②その事実が請求原因・抗弁等のどこに関係するか,③認識した経緯,④既存証拠で代替できない点,⑤予定質問と所要時間を示す。
既に尋問した者なら,前回の調書・質問事項のどこでは不足するかも示す。
唯一性を主張する場合でも,不定期間の障害の有無について,現在把握している事情を別に説明する。

2 終結時は,未処理の申出を維持するか明示する

例えば,「追加の主張立証はないが,○月○日付け証拠申出書の本人尋問申出は維持する。これは○○の事実を証明する申出であり,まだ採否が示されていないため,採否の確認と実施を求める」と述べる方法が考えられる。
不採用が明示された場合は,対象の証拠,必要性を説明した内容,裁判所から示された理由,残る立証上の不足を整理する。
重要な経過については記録を求め,期日後に調書も確認する。
この例は実務上の提案であり,同じ発言をすれば必ず尋問が実施される,又は責問権に関するすべての問題を回避できるというものではない。

3 上訴では,不取調べと結論への影響を結び付ける

上訴理由では,申出の所在・維持,立証命題,他の証拠による代替可能性,未解明の事項,判決がその事項をどう判断したかを順に示す。
控訴審では必要な追加主張・証拠申出を具体的に行い,最高裁判所への上告と上告受理申立ては,民訴法312条・318条の要件に即して区別する。
証拠評価への不満だけでなく,唯一の証拠方法に関する基準,重要な検証を省略した審理,判決への影響を説明する必要がある。
詳しくは,釈明義務違反・証人尋問の不採用と上訴を参照されたい。

第8 責問権との関係・出典の範囲

民訴法90条では,具体的な手続違反に加えて,知り又は知ることができた時点,異議を述べた時点,放棄できる違反かが問題となる。
上記判決から,尋問不採用に関するすべての違反が放棄できない,又は終結への不同意がなければすべて上訴で争えない,と一般化することはできない。
求釈明・訴訟指揮への異議・責問権と期日の記録も参照されたい。

本記事の6判決は,裁判所の事件情報と判決原文を確認したものである。
昭和30年判決は原文PDFの文字抽出に難があったため,画像表示で判決全文を確認した。
本記事の6判決について,判例秘書での追加の全文照合は行っていない。
各判決の判断と,そこから導く実務上の提案を区別して記載しており,証拠不採用に関する全事案を網羅したものではない。

① e-Gov法令検索・民事訴訟法90条,181条等。令和8年10月3日確認。
② 最高裁昭和30年9月9日第二小法廷判決・昭和28年(オ)第407号・民集9巻10号1242頁。
③ 最高裁昭和37年4月27日第二小法廷判決・昭和36年(オ)第1175号・集民60号471頁。
④ 最高裁昭和38年9月17日第三小法廷判決・昭和36年(オ)第835号・民集17巻8号968頁。
⑤ 最高裁昭和53年3月23日第一小法廷判決・昭和52年(オ)第591号・集民123号283頁。
⑥ 最高裁昭和56年11月13日第二小法廷判決・昭和56年(オ)第715号・集民134号227頁。
⑦ 最高裁平成20年11月7日第二小法廷判決・平成19年(受)第1878号・集民229号151頁。

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