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平成11年度最高裁民事破棄判決等の実情―74件の破棄判決・5件の破棄決定から学ぶ訴訟実務(AI作成)

第1 この記事の結論と資料の位置付け

平成11年度の最高裁民事破棄判決等は,破棄判決74件,許可抗告の破棄決定5件である。これらから得られる実務上の中心的な学びは,最高裁が単に証拠を評価し直したということではない。原判決等の弱点は,①主張・判断の漏れ,②事実から結論へ進む論理の飛躍,③権利帰属・訴訟追行権の時間軸の切断,④損害項目・既払金・法的効果の分類違いとして現れる。

そこで,平成11年度の破棄事件は,上告理由を探すためだけでなく,第一審から「破棄されにくい記録」を作るための品質監査資料として使うべきである。本記事は,生野考司「最高裁民事破棄判決等の実情―平成11年度―」(判例時報1707号,1708号,1710号,1711号,1713号及び1714号,6回連載,合計109頁)を年度全体の索引とし,代表4事件の裁判所公式全文を照合して作成した。

年次論文は,74件の破棄判決と5件の破棄決定を発見・分類するための二次資料であり,最高裁判決そのものではない。論文の解説には筆者の評価が含まれるため,個別事件で判旨を引用するときは,裁判所公式全文,判例集又は事件記録で確認する必要がある。

第2 平成11年度の件数と「2・52%」の読み方

1 新受・既済・破棄件数

新受事件は,旧法事件26件,新法上告事件227件,新法上告受理申立て事件2770件の合計3023件である。上告と上告受理申立ての並行申立て239件を一件として調整すると,年次論文上の新受件数は2784件となる。

既済事件は,旧法事件438件,新法上告事件1925件,上告受理事件1528件の合計3891件である。並行申立て930件を調整した既済件数は2961件である。

判決で終了した事件は478件である。決定による終局処理は,上告却下26件,上告棄却1766件及び不受理決定1492件の合計3374件である。判決と決定の合計3852件から並行申立て917件を調整した2935件が,年次論文の破棄率の分母である。

破棄判決は74件であり,調整後2935件に対する割合は2・52%である。内訳は破棄差戻し41件,破棄自判34件で,一部差戻し・一部自判の重複が1件ある。旧法事件61件,新法事件13件であり,新法下の破棄事件が初めて現れた過渡年である。職権破棄は12件,論旨に基づく破棄は68件で,重複がある。許可抗告の破棄決定は5件である。

2 依頼事件の「上告成功率」ではない

2・52%は,平成11年度に判決又は決定で終局処理された事件を調整した件数を分母とし,破棄判決だけを分子とした年度集計比率である。事案の内容,上告理由と上告受理申立て理由の区別,旧法・新法の別,並行申立ての調整を無視して,個別事件が破棄される確率と読むことはできない。

また,破棄判決74件と許可抗告の破棄決定5件は,手続も分母も異なる。両者を単純に足して一つの成功率を作るべきではない。

3 破棄差戻しは最終勝訴ではない

原判決の法律判断を訂正した後,確定した事実だけで結論を出せるときは破棄自判が可能である。正しい判断枠組みによる事実認定,抗弁・再抗弁の審理又は損害額の算定が残るときは破棄差戻しとなる。したがって,破棄差戻し判決を得たことだけで最終的な勝訴又は金銭回収を断定してはならない。

第3 原判決等が破棄された横断的な型

1 主張・判断の漏れ

判断遺脱,再抗弁の看過,訴訟要件の職権調査不足は,結論に先立つ審理構造の欠落である。請求原因,抗弁,再抗弁,相手方の認否,対応証拠及び裁判所の判断を一行ずつ対応させれば,何が審理されていないかを可視化できる。「裁判所が職権で拾うはずだ」という期待は,依頼者を守る安全策にならない。

2 事実認定の論理監査

事実認定関係の破棄を,単なる証拠の再評価と理解するのは正確でない。客観的書証との矛盾,反対仮説の検討漏れ,取引通念上不自然な行動の説明不足,法的要件に必要な前提事実の認定漏れなど,証拠から主要事実へ進む推論の鎖に法的に看過できない欠陥があるかが問題となる。

控訴理由書や上告受理申立て理由書では,「この証拠を信用すべきである」と繰り返すだけでなく,①認定された客観的事実,②用いられた経験則,③そこから導かれた主要事実,④検討されなかった反対仮説,⑤結論への影響を順に示す必要がある。

3 当事者・訴訟追行権の時間軸

破産,債権転付,相続,相続財産法人,遺言執行者等が関係する事件では,本案規範より先に,誰に権利が帰属し,誰が訴訟を遂行できるかを確定する。受任時,提訴時,倒産手続開始時,債権譲渡時及び事実審口頭弁論終結時を並べ,権利帰属,当事者適格,訴訟承継及び代理権を別々に確認する。

4 損害・既払金・法的効果の分類

損害額を計算する前に,損害項目と給付目的を分類する必要がある。逸失利益,将来介護費,治療費,保険給付及び既払金は,発生根拠も填補する損害も同一ではない。共同不法行為では,加害者ごとの過失相殺後額と既払金の充当先を分けなければ,二重控除又は過大賠償につながる。

同様に,公法上の建築規制が要求する幅員と民法上の通行権の範囲,契約の当事者間効と第三者対抗要件,権利の成立とその行使主体を一つにまとめてはならない。

第4 裁判所公式全文を確認した代表4事件

判決主題実務上の学び
最一小判平成11年12月20日・平成10年(オ)第583号交通事故被害者の別原因死亡後の逸失利益と将来介護費逸失利益は,事故時に別原因の死亡が近い将来に客観的に予測されたなどの特段の事情がない限り,死亡事実を就労可能期間に反映させない。他方,将来介護費は現実の介護の必要を基礎とするため,死亡後分を認めない。損害項目ごとに性質を分ける。
最三小判平成11年7月13日・平成8年(オ)第539号建築基準法上の接道要件と囲繞地通行権建築に必要な幅員が,直ちに民法上の通行権の範囲になるわけではない。従前の通行,用途,他の経路,必要性及び通行地所有者の損害を検討し,公法規制と私法上の権利を分ける。
最三小判平成11年1月29日・平成9年(オ)第2049号共同不法行為,過失相殺及び一部填補被害者側の過失の扱いを加害者ごとに検討し,その後に保険金等の填補を反映する。各加害者の賠償額と既払金の充当順序を混同しない。
最二小判平成11年1月29日・平成9年(オ)第219号将来債権譲渡の効力将来債権の種類,発生原因及び期間によって対象を識別し,発生可能性を合理的に評価できるかを検討する。現在の事件では,現行民法の将来債権譲渡の規定及び第三者対抗要件を別に確認する。

4件はいずれも【裁判所公式全文確認済み】である。このうち平成10年(オ)第583号は,判例秘書の収録本文(文献番号L05410133)でも照合した。ただし,判例秘書は認証付き商用判例データベースであり,裁判所が公開する一次資料そのものではない。残り3件は今回,判例秘書本文を確認していない。

第5 事件処理のための四つの台帳

1 主張台帳

請求原因,抗弁,再抗弁,認否,証拠及び判断の有無を対応させる。判決書を受領したら,争点ごとに判断済みかを確認し,判断遺脱又は弁論主義違反の候補を抽出する。

2 当事者・権限台帳

各時点の権利帰属,訴訟追行権,代理権,破産管財人・遺言執行者等の職務範囲を記録する。権利が存在することと,その者が現在の訴訟で請求できることを分ける。

3 証拠・推論台帳

主要事実,直接証拠,間接事実,経験則,反対仮説及び反証を並べる。原判決の結論を変更するのではなく,推論のどこに論理則・経験則違反又は審理不尽があるかを特定する。

4 時間・金額台帳

消滅時効,完成猶予・更新,相殺,充当,保険・公的給付,遅延損害金及び事実審口頭弁論終結時を一つの時系列に置く。損害項目,支払名目,支払日及び充当先を対応させ,計算順序を再現できるようにする。

第6 破棄差戻し後に残る争点

上訴書面では,原判決の違法を指摘するだけでなく,その違法を除いた後に何が残るかを記載する。例えば,正しい法的枠組みを採用した後に,追加の事実認定,抗弁・再抗弁の審理,損害額の再計算又は第三者対抗要件の審理が必要かを確認する。

破棄差戻しを求める場合には,差戻審で追加する主張,提出する書証,必要な鑑定又は再計算表まで準備する。逆に,原審確定事実だけで結論を出せるのであれば,破棄自判が可能である理由を明示する。

第7 平成11年当時法と現行法を分ける

平成11年度は,旧民事訴訟法事件61件と新民事訴訟法事件13件が併存した過渡年である。判決日が平成11年であるという理由だけで,現行の手続法が適用された事件と判断してはならない。

また,和議法,旧破産法,旧民法の家督相続,相続・登記,特許法等については,その後の法改正及び後続判例がある。古い判例を現在の事件に使うときは,①判決当時の条文,②現行条文,③施行日と経過措置,④後続判例,⑤旧条文に依存する部分と現在も再利用できる一般的な判断方法を分ける。

例えば,将来債権譲渡については,現行民法が将来債権の譲渡を明文化しているが,譲渡対象の特定及び第三者対抗要件の検討はなお必要である。倒産事件は,現行破産法と経過措置を確認する。現行民事訴訟法及び現行特許法も同様である。

第8 関連記事

①最高裁民事破棄判決から作る原判決監査チェックリスト(AI作成)
②交通死亡事故の損害額(AIリライト)
③交通事故の将来介護費と公的給付―別原因死亡・労災給付・身体障害者手帳の実務整理(AI作成)
④共同不法行為の要件・過失相殺・求償関係(AIリライト)
⑤私道の通行権・2項道路・掘削・駐車・固定資産税

第9 出典・確認範囲・今後の課題

①生野考司「最高裁民事破棄判決等の実情―平成11年度―」判例時報1707号,1708号,1710号,1711号,1713号及び1714号(6回連載,合計109頁)【判例時報論文本文確認済み】
②本文第4掲載の裁判所公式全文PDF4件【裁判所公式全文確認済み】
③平成10年(オ)第583号・判例秘書文献番号L05410133【判例秘書本文確認済み】
④e-Gov法令検索の民法,民事訴訟法,破産法及び特許法【現行条文ページ確認済み】

裁判所ウェブサイトは全裁判例を収録しているわけではない。公式検索で該当しないことは,事件又は判例の不存在を意味しない。判例秘書についても,検索結果が0件であることは,事件の不存在又は年次論文の誤記を証明しない。

本記事は,代表4件以外の70件の破棄判決及び5件の破棄決定について,個別の裁判所公式全文又は判例秘書本文をすべて確認したものではない。個別事件で引用するときは,判決全文,当時法,経過措置及び後続判例を改めて確認する必要がある。

別セッションでの掘り下げを推奨する事項:代表4件以外の70件の破棄判決及び5件の破棄決定について,事件番号ごとの一次資料・判例秘書収録状況,後続判例,差戻審の最終結果及び現行法への読替えを順次確認すること。