第1 結論及び本記事の対象
Claude Code又はCodexを使ったときにパソコンが固まりやすくなる主な理由は,AIモデルの計算そのものよりも,手元のパソコンで同時に動くエージェント本体,検索,ファイル処理,ビルド,テスト,ブラウザ,Office,WSL,Docker及びMCPサーバー等の負荷が積み重なることにある。
メモリを増やすと,空きメモリ不足とページングによる停止は起こりにくくなるが,アプリ固有の不具合,CPU又はSSDの飽和,ドライバー障害及び通信待ちは解消しない。
令和8年9月15日現在,メモリ容量別のフリーズ発生率を同一条件で比較した信頼できる公開統計は確認できないため,本記事では「8GBなら1日に何回」等の数値を示さず,容量ごとの余裕と原因の切分け方を説明する。
第2 「フリーズ」を四つに分ける
1 Windows全体が重くなる場合
マウスポインター,タスクバー及び他のアプリまで遅くなり,SSDの使用率が高い状態が続く場合は,物理メモリ不足に伴うページング又はCPU・ストレージの飽和が有力な候補となる。
この場合はClaude Code又はCodexだけを見るのではなく,ブラウザ,Word,Excel,PDF処理,ウイルス対策ソフト,WSL及びDockerを含むパソコン全体の使用量が確認対象となる。
2 Claude Code又はCodexだけが応答しない場合
他のアプリが通常どおり動くのに,ターミナル又はCodexのウィンドウだけが数秒以上操作できない場合は,画面描画,長い会話履歴,アプリ内部の処理又は個別の不具合を分けて考える。
OpenAIの公開Issueには,Windowsの他のアプリが反応している状態でCodexの画面だけが停止したという報告があるが,これは利用者による個別報告であり,すべての環境に共通する原因又は発生率を示すものではない。
3 応答又はツールの完了を待っている場合
画面操作はできるが回答が進まない場合は,AIサービスとの通信,ウェブ取得,MCP接続,外部コマンド又は長時間のビルドを待っている可能性がある。
この状態はメモリ不足とは限らないため,タスクマネージャーの数値が平常であれば,実行中の処理,ネットワーク及びサービス側の障害情報を確認することになる。
4 画面全体が停止し再起動を要する場合
画面が停止し,音声が途切れ,又はブルースクリーンや突然の再起動が生じる場合は,メモリ不足のほか,GPUドライバー,熱,電源,SSD又はハードウェア障害も検討対象となる。
特定のアプリを終了するだけで回復する停止と,Windows自体を再起動しなければ回復しない停止を同じ現象として記録すると,原因を誤りやすい。
第3 ローカルのパソコンに負荷が生じる仕組み
1 AIモデルと作業環境は別であること
通常の公式サービスでは回答生成の中心となるAIモデルは事業者側で動くが,エージェントが使用する作業環境まで常にクラウドにあるとは限らない。
OpenAIの公式資料によれば,CodexのLocal環境とWorktree環境は利用者のパソコン上で動き,Cloud環境は遠隔のクラウド環境で動くため,選択した環境によってローカル負荷が異なる。
2 検索,編集,ビルド及びテスト
Codex CLIはローカルの開発ツールを実行でき,Claude Codeもシェルコマンド,スクリプト及び各種ツールを実行する。
大量ファイルの検索,PDFや画像の変換,依存関係の導入,コンパイル,テスト及び開発サーバーの起動は,エージェント本体とは別のプロセスとしてメモリ,CPU及びディスクを使用するため,「AIアプリの使用量」だけでは総負荷を把握できない。
3 並列セッション及びサブエージェント
Claude Codeは複数のセッション,サブエージェント及びworktreeを用いた並列作業を案内しており,Codexにも同時に開くエージェント数を管理する設定がある。
並列化すると待ち時間を短縮できる一方,各作業が検索,ビルド又はブラウザ操作を同時に始めれば,メモリだけでなくCPUとSSDの使用量も重なるため,まず同時実行数を減らした比較が有用となる。
4 MCP,WSL及びDocker
Claude Codeのローカルstdio型MCPサーバーは手元のパソコンのプロセスとして動き,WSL 2はWindows上の仮想マシンとしてメモリとスワップを使用する。
Docker,データベース,ファイル監視及び開発サーバーも常駐し得るため,ターミナルを閉じた後に関連プロセスが残っていないかも確認対象となる。
第4 メモリ不足で操作が止まる仕組み
1 物理メモリとコミット済みメモリ
物理メモリは実装されたRAMであり,コミット済みメモリはWindowsが各プロセスに使用を約束した仮想メモリである。
Microsoftの資料によれば,コミット上限は物理メモリとすべてのページファイルの合計であり,使用量がこの上限に近づくと,新たなメモリ確保の失敗,アプリの異常終了又はシステムの不調につながり得る。
2 ページングとSSDの待ち時間
空きRAMが少なくなると,Windowsは使用頻度の低いデータをページファイル等へ退避し,必要になったときにストレージから読み戻す。
Microsoftは,ハードページフォールトが多く,その読取り先のディスクが処理し切れない場合,システム全体の遅延が生じ得ると説明しているため,メモリ使用率とSSD使用率が同時に高いかを見ることが重要となる。
3 容量差は比例ではなく閾値として表れること
同じ作業量が搭載RAMの範囲に十分収まる間は,16GBと32GBでフリーズ頻度に目立つ差が出ないことがある。
他方,ブラウザ,Office,WSL,Docker及び複数エージェントを加えた使用量が物理メモリの余裕を失う境界を超えると,ページングが急増し,少しの容量差が体感上の大きな差になるため,RAM容量と発生回数が単純な比例関係になるわけではない。
第5 メモリ8GB・16GB・32GB・64GBの違い
1 Claude Codeの公式要件が示す範囲
Anthropicの公式資料は,Claude Codeのハードウェア要件を4GB以上のRAM及びx64又はARM64プロセッサとしている。
これはClaude Code自体のシステム要件であり,Windows,ブラウザ,Office,WSL,Docker及び並列作業まで含めた快適動作の保証ではなく,OpenAIの公式資料ではCodexについて同様のRAM最低値又は容量別の推奨値を確認できなかった。
2 8GBの場合
8GBでは,Windowsと通常の常駐ソフトが使用した後の余裕が小さく,ブラウザの多数のタブ,Office,WSL又はビルドを併用するとページングが起こりやすい。
単一セッションで小さな作業を行い,不要なアプリを閉じる運用は可能であるが,四つの容量帯の中ではメモリ圧迫による停止の相対的な危険が最も高いと考えられる。
3 16GBの場合
16GBは,単一セッションを中心とする通常の文書処理又は小中規模の開発では8GBより余裕があるが,複数エージェント,WSL,Docker,ブラウザ及びOfficeを同時に使うと境界へ達し得る。
フリーズが起きた時点で利用可能メモリが10%未満になり,コミット率とSSD使用率も高い状態が反復するなら,32GBへの増設で改善する可能性がある。
4 32GB及び64GBの場合
32GBは,クラウド型AIエージェントとブラウザ,Office及び複数資料を併用する業務用パソコンの現実的な基準となり,16GBよりメモリ圧迫の境界へ達しにくい。
64GB以上は,多数の並列作業,大規模ビルド,複数の仮想環境又はローカルAIも同時に動かす場合に余裕を増やすが,32GBの環境でも報告されているアプリ固有の停止を防ぐ保証にはならない。
第6 フリーズ発生時に記録する項目
1 発生時刻と停止範囲
再起動する前に,可能であれば,発生時刻,実行中の依頼,開いていたタスク数,停止したアプリ,他のアプリを操作できたか及び自然回復したかを記録する。
同じ依頼で再現するのか,長時間使用後だけに起きるのか,アプリ更新の直後から始まったのかを分けると,容量不足と個別不具合を比較しやすい。
2 タスクマネージャーで見る数値
タスクマネージャーでは,①メモリの使用量と利用可能量,②コミット済みの使用量と上限,③CPU使用率,④SSDのアクティブ時間,⑤Claude Code,Codex,ChatGPT,Vmmem,ブラウザ及びビルド関連プロセスの使用量を確認する。
Microsoftの一般的な性能診断資料は,利用可能メモリについて「10%超又は4GB以上」を健全,「10%未満」を警告,「1%未満又は500MB未満」を重大の目安とし,コミット済みメモリの80%から100%を重大の範囲としているが,短時間の上昇だけで原因を確定してはならない。
3 Windowsの記録
アプリだけが停止した場合は信頼性モニター及びイベントビューアーのApplication Hang又は障害モジュールを確認し,Windows全体が再起動した場合はBugCheck,Kernel-Power及びダンプの有無を確認する。
ログに表示された時刻を作業記録と対応させれば,メモリ圧迫,アプリ停止,ドライバー又は電源断を同じ「フリーズ」として扱う誤りを減らせる。
第7 再発を減らす対策
1 最初に同時実行数を減らすこと
まずClaude Code又はCodexを一つのセッションだけにし,ブラウザの不要なタブ,Office,Docker,開発サーバー及びファイル監視を閉じて,同じ作業を再度観察する。
改善する場合は一つずつ戻し,どの追加要素で利用可能メモリ,コミット率,CPU又はSSD使用率が急変するかを確認する方法が,原因を分離しやすい。
2 不要なMCP及び残存プロセスを止めること
使用していないローカルMCPサーバー,終了しないビルド,watchモード及び古い開発サーバーが残っている場合は,必要な作業を保存した上で停止することが考えられる。
本記事では,プロセスを一括終了する前に,そのプロセスが編集中ファイル,データベース又は同期処理を保持していないかを確認し,強制終了を常用しないことを基本とする。
3 ページファイルと空き容量を確認すること
ページファイルを無効化又は極端に固定するとコミット上限が小さくなるため,特別な管理理由がなければWindowsのシステム管理設定を基本とし,ページファイルを置くドライブに十分な空き容量を確保することが考えられる。
ただし,ページファイルはRAMより遅いストレージを使う仕組みであり,RAM不足を無制限に補うものではない。
4 WSL及びクラウド環境を使い分けること
Microsoftの資料では,WSL 2のメモリ上限の既定値はWindows搭載メモリの50%,スワップの既定値は搭載メモリの25%を1GB単位で切り上げた量である。
Vmmemが大きい場合はWSL内の実行中処理を確認し,必要に応じてWSL設定の上限とメモリ回収を見直すことになるが,単に小さな上限を設定するとLinux側の処理が失敗し得るため,変更前後を記録して比較するとよい。
Codexでは重い処理をCloud環境へ移す選択肢もあるが,ローカルのブラウザ,Office及び同期ソフトの負荷は別に残る。
第8 メモリ増設が有効かを判断する方法
1 増設が有効と考えられる場合
同種の停止が複数回起き,その直前に利用可能メモリが継続して少なく,コミット率とSSD使用率が高く,並列数又は他アプリを減らすと改善する場合は,メモリ増設が有効である可能性が高い。
購入前には,現在のパソコンが増設可能か,空きスロット,最大容量,対応規格及び保証条件が確認対象となる。
2 増設だけでは解決しにくい場合
利用可能メモリに余裕があり,CPU及びSSDも高くないのにCodex又はClaude Codeだけが止まる場合は,アプリの更新,既知の不具合,長いセッション,画面描画,MCP接続又は破損したローカル状態を調べる方が先となる。
突然の再起動,ブルースクリーン,表示の乱れ又は高温を伴う場合は,ドライバー,冷却,電源及びハードウェアが診断対象となり,RAM容量だけを原因と決めない。
第9 関連記事
1 パソコンを新たに選ぶ場合
OS,Office,ローカルAI及びGPUを含めた購入判断は,AIエージェントを使うならWindowsとMacのどちらがよいか-用途別のパソコン選び(AI作成)で説明している。
本記事はOS選択を繰り返さず,既に使用しているパソコンで停止原因を特定する方法を対象とする。
2 Codexの長時間・並列利用を見直す場合
プロンプトキャッシュ,タスク設計,プラグイン及び使用量の記録は,弁護士がCodexを長時間・並列利用する際の使用量管理-プロンプトキャッシュ,プラグイン,heartbeat及び監査ログ(AI作成)で説明している。
本記事ではトークン使用量ではなく,手元のパソコンのメモリ,CPU,SSD及び停止範囲を扱う。
第10 出典・参考資料
1 事業者及びOS提供者の公式資料
① OpenAI「Codex environments」及び「Codex CLI」
② OpenAI「Configuration sample」
③ Anthropic「Advanced setup」,「Run agents in parallel」及び「Connect Claude Code to tools via MCP」
④ Microsoft「Troubleshoot performance problems in Windows」,「How to determine the appropriate page file size for 64-bit versions of Windows」及び「Advanced settings configuration in WSL」
2 公開Issue
① OpenAI Codex GitHub Issue「Windows Desktopでメモリが8.8GBまで増加したとの報告」
② OpenAI Codex GitHub Issue「WindowsでCodexの画面だけが一時停止したとの報告」
③ Anthropic Claude Code GitHub Issue「Claude Code v2.1.87のメモリ増加に関する報告」
これらは公開リポジトリに寄せられた利用者の個別報告であり,ベンダーが一般的な発生率又は全環境共通の原因を認定した資料ではない。