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弁護過誤の時効―弁護士への損害賠償請求はいつまでできるか(AI作成)

第1 最初に二つの期限を分ける

1 元の相手方への請求と弁護士への請求

弁護過誤の時効を考えるときは,元の事件の相手方に対する請求の期限と,弁護士に対する損害賠償請求の期限を分ける必要がある。
元の事件の期限を過ぎたという説明だけでは,弁護士への請求期限も確定しない。
本記事は令和8年10月16日に確認した民法等に基づき,主に金銭的損害について弁護士の責任を検討する際の確認事項を整理する。

区別する問題確認する内容
元の事件の相手方への請求元の権利の種類,時効・出訴期間等の根拠,起算点及び必要な手続
弁護士への損害賠償請求責任の根拠,損害の発生,権利を行使できる時期と認識,完成猶予・更新等

控訴などの不服申立期間も,損害賠償請求権の消滅時効と同じ制度ではない。
弁護士への責任追及を考える場合も,元の事件に残る手続と期限の確認を後回しにしないことが重要である。

2 契約日や解任日から一律には計算できない

「依頼から何年」「解任から何年」という一つの日付だけで,全ての弁護過誤の時効を計算することはできない。
何を根拠として請求し,どの損害がいつ発生し,いつ権利を行使でき,何をいつ知ったかを確認する。
契約日や解任日は重要な資料になるが,常に時効の起算点になるとは限らない。

第2 現行民法の原則的な期間

1 債務不履行に基づく請求

現行民法166条1項は,債権について,権利を行使できることを知った時から5年間行使しないとき,又は権利を行使できる時から10年間行使しないときに,時効によって消滅すると定める。
弁護士との契約上の義務違反による金銭的損害の賠償を請求する場合も,まずこの規律と適用される経過措置を確認する。

二つの期間は起算点が異なる。
「過誤を知ってから必ず10年間ある」「契約から5年経過したので必ず請求できない」とは判断できない。
請求できる損害の発生と,権利行使が可能になった時期を具体的に検討する必要がある。

2 不法行為に基づく請求

現行民法724条は,不法行為による損害賠償請求権について,被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないとき,又は不法行為の時から20年間行使しないときに,時効によって消滅すると定める。
契約上の責任と不法行為責任では,短期の期間と起算点の規定が異なるため,それぞれを確認する必要がある。

法的構成現行法の原則的な期間と起算点
債務不履行等の債権権利行使できることを知った時から5年/権利行使できる時から10年(166条1項)
不法行為損害及び加害者を知った時から3年/不法行為の時から20年(724条)

上の表は,金銭的損害を念頭に置いた現行法の原則の整理であり,旧法が適用される場合や例外を全て示すものではない。
民法167条及び724条の2には生命・身体の侵害に関する特則があるが,元の事件が医療事故・交通事故であったことだけから,弁護士への金銭的損害の請求にも当然に同じ特則が適用されると扱ってはならない。
誰のどの行為による,どの利益の侵害を請求しているのかを区別する。

3 時効の援用と責任の成立は別に確認する

民法145条は,当事者等の援用がなければ裁判所は時効によって裁判することができないと定める。
ただし,これを理由に期限の確認を省いてよいわけではない。
援用の有無,完成猶予・更新等とともに,そもそも義務違反,損害及び因果関係を説明できるかを検討する必要がある。

第3 令和2年4月1日前の契約・出来事がある場合

1 契約上の請求は債権発生の原因も確認する

平成29年法律第44号による債権法改正は,一部を除き令和2年4月1日に施行された。
同改正法附則10条4項は,施行日前に債権が生じた場合の時効期間について従前の例によるとし,施行日以後に債権が生じても,その原因となる法律行為が施行日前にされた場合を含めている。

したがって,過誤や損害に気付いた日が令和2年4月1日以後であることだけで,現行の5年・10年の規律を機械的に適用することはできない。
受任契約の時期,受任内容の追加・変更,債権の発生原因と時期を確認し,適用法を判断する。
同日をまたぐ案件では,契約書の表紙の日付だけでなく,実際の依頼・受任の経緯も資料にする。

2 不法行為は別の経過措置を確認する

不法行為の時効には,同改正法附則35条の経過措置がある。
旧法の20年の期間が施行時に既に経過していたか,生命・身体の侵害に関する旧法の短期時効が既に完成していたかなど,条項ごとの条件を確認する必要がある。
契約上の請求に関する附則10条4項だけで,不法行為の適用法まで決めることはできない。

古い事案では,時効の期間・起算点に加えて,旧法の20年の期間の取扱い等に関する判例の検討が必要になる場合がある。
本記事の現行法の表から,その事案が請求可能か,既に請求できないかを即断しないことが重要である。

第4 交渉や相談をしていれば時効は止まるか

1 催告と繰り返しの請求

民法150条は,催告があった時から6か月を経過するまでの間,時効の完成を猶予する。
その猶予中に再度催告をしても,さらに完成猶予の効力が生じるものではない。
内容証明郵便などで請求した事実を残しても,それだけで期限を何度でも延ばせるわけではない。

誰に,どの権利について,何を求める通知をし,いつ到達したかを確認する。
完成猶予中に必要な対応を検討し,発送したという事実だけで対応が完了したと扱わない。

2 協議を行う旨の合意と債務の承認

民法151条は,権利について協議を行う旨の書面等による合意がある場合の完成猶予を定める。
単に連絡を取り合っていることと,同条の要件を満たす合意があることは異なる。
合意の日,定めた協議期間,協議続行を拒絶する通知の有無等を確認し,催告との関係にも注意する必要がある。

同法152条は,権利の承認による時効の更新を定める。
謝罪,事実経過の説明,返金の提案又は保険会社への連絡があった場合も,その具体的な文言と対象となる権利を確認する。
「謝っていたから時効は問題ない」と一律に判断せず,承認に当たるかを個別に検討する。

3 弁護士会の相談・懲戒・紛議調停

弁護士会の市民窓口で相談したことや懲戒請求をしたことだけで,民事上の損害賠償請求の期限も確保できたと考えてはならない。
紛議調停についても,具体的な手続に適用される規定とその効果を確認する。
裁判上の請求等に関する民法147条の規律と,弁護士会への相談や申立てを混同しないことが必要である。

話合いを続けるかどうかとは別に,残る期間と権利保全の方法を確認する。
各手続の目的と準備資料は,弁護士との紛議調停を参照されたい。

第5 いつ何を知ったかを整理する

1 時系列に残す日付と資料

起算点の判断には,結果を知った日と,その結果に至る弁護士の対応を知った日などの整理が必要になる。
ただし,以下の日付のいずれかが当然に起算点となるという意味ではない。
どの資料により何を認識できたかを示すための確認項目である。

整理する日付資料の例
依頼・受任・依頼内容の変更委任契約書,受任通知,メール,費用の説明
元の事件の期限と実際の対応判決・決定,送達関係書類,受付控え,提出書面
損害の発生・支払・回収判決,和解書,送金記録,計算書
問題となる対応を知った経緯弁護士の報告,記録の受領,別の弁護士への相談記録
請求・協議・承認等通知と配達記録,合意書,相手の回答,申立書

2 記録の収集と期限への対応を並行する

資料が全部そろうまで相談を待つと,期限の検討が遅れることがある。
分かっている日付,手元の資料,不足する資料及び連絡の状況を示し,いつまでに何をする必要があるかを先に確認することが有用である。
元の事件の処理と弁護士への責任追及のどちらについて相談しているかも明確にする。

記録の整理は,弁護士の事件記録の返還・保管・廃棄,別の弁護士への依頼の区別は,セカンドオピニオンと弁護士の追加依頼で説明している。
期限の確認に加え,請求先,義務違反,損害,因果関係及び必要な証拠を検討することが必要である。

第6 出典

民法145条,147条,150条~152条,166条~167条,724条・724条の2。
平成29年法律第44号による改正の附則10条・35条も参照する。
https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089

法務省「民法(債権関係)の改正に関する説明資料―主な改正事項」。
消滅時効に関する見直しの部分を参照する。
https://www.moj.go.jp/content/001259612.pdf

法務省「民法の一部を改正する法律(債権法改正)について」。
改正法の施行時期及び経過措置の案内。
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_001070000.html