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頚椎(頸椎)の可動域制限と後遺障害8級2号-器質的原因・測定方法・むち打ちとの違い(AI作成)

第1 頚椎の可動域制限で8級2号を検討する順序

1 角度と原因を分けて確認する

自賠責保険の後遺障害等級8級2号は「脊柱に運動障害を残すもの」であり,頚椎の可動域が狭いという事実だけで認定されるものではない。
労災保険の障害等級認定基準に準じて判断するという自賠責の支払基準を前提にすると,①認定基準が定める器質的原因があるか,②主要運動が数値基準を満たすかという順序で検討する必要がある。

この二つを混同すると,後遺障害診断書の角度が2分の1以下であることだけを理由に8級2号になると考えたり,反対に「むち打ち」と診断されたことだけで8級2号の可能性を除外したりすることになる。
重要なのは傷病名ではなく,事故による器質的損傷又は固定術等と,適切に測定された可動域との対応である。

2 本稿の対象

本稿は,交通事故後に頚部の動きが制限された人が,自賠責の8級2号の要件と測定方法を確認するための記事である。
頚椎圧迫骨折等,頚椎固定術,明らかな軟部組織の器質的変化及び上位頚椎の著しい異常可動性を対象とし,脊柱の変形障害,荷重機能障害及び頚髄損傷の等級は扱わない。

個別事件では,事故との因果関係,既存変性,画像所見及び症状の経過を資料ごとに検討する必要がある。
したがって,以下の角度に該当することは検討の入口であり,個別事件の等級を確定するものではない。

第2 後遺障害8級2号の原因要件

1 法令上の位置付け

自動車損害賠償保障法施行令別表第二第8級2号は,後遺障害を「脊柱に運動障害を残すもの」と定めている。
もっとも,施行令は,どのような原因又は角度なら運動障害に当たるかを列挙していない。

自賠責保険・共済支払基準は,後遺障害の等級認定を原則として労災保険の障害等級認定基準に準じて行うとしている。
そこで,頚椎の運動障害については,厚生労働省の障害等級認定基準に記載された原因類型と可動域の評価方法が具体的な検討基準となる。

2 主要運動が2分の1以下となる場合の原因類型

(1) 頚椎圧迫骨折等

第一の類型は,頚椎圧迫骨折等がエックス線写真等により確認でき,そのために頚部の主要運動が参考可動域角度の2分の1以下に制限された場合である。
画像に骨折が写っていることだけではなく,その骨折と残存する運動制限との対応が問題となる。

(2) 頚椎固定術

第二の類型は,頚椎固定術が行われ,そのために主要運動が2分の1以下となった場合である。
手術名だけで判断せず,固定された椎間,術後画像及び症状固定時の可動域を照合することになる。

(3) 明らかな軟部組織の器質的変化

第三の類型は,項背部軟部組織に明らかな器質的変化が認められ,そのために主要運動が2分の1以下となった場合である。
「明らかな器質的変化」は疼痛の訴え又は非特異的な所見と同義ではなく,どの組織のどの変化が運動制限を生じさせるかを画像その他の医学資料に即して検討する必要がある。

(4) 上位頚椎の著しい異常可動性

頭蓋と上位頚椎の間に著しい異常可動性が生じた場合は,通常の主要運動の2分の1基準とは別の8級2号の類型である。
この類型では,異常可動性を示す画像及び測定結果そのものが中心資料となる。

第3 頚椎の可動域を計算する方法

1 屈曲と伸展

(1) 参考可動域角度

頚部の屈曲はあごを胸部へ近付ける運動,伸展は頭部を後方へ倒す運動であり,両者は同じ面における主要運動である。
関節可動域表示ならびに測定法改訂について(2022年4月改訂)による参考可動域角度は,屈曲60度,伸展50度である。

(2) 2分の1の計算

同じ面における運動は各方向の角度を合計するため,屈曲と伸展の参考角度の合計は110度である。
その2分の1は55度であるから,例えば他動値が屈曲30度,伸展25度であれば,合計55度となり数値条件を満たす。

2 左右回旋

(1) 参考可動域角度

回旋は顔を左右へ向ける主要運動であり,参考可動域角度は右回旋60度,左回旋60度である。
左右の合計は120度となる。

(2) 2分の1の計算

回旋の参考角度の合計120度の2分の1は60度である。
例えば右回旋30度,左回旋30度であれば合計60度となり,回旋について数値条件を満たす。

3 いずれか一方の主要運動で判定する

頚椎については,屈曲・伸展の合計又は左右回旋の合計のいずれか一方が参考角度の2分の1以下であれば,主要運動についての数値条件を満たす。
屈曲・伸展と回旋の双方が2分の1以下でなければならないわけではない。

ただし,ここで満たすのは可動域の数値条件である。
第2で説明した器質的原因等がなければ,角度だけで8級2号とはならない。

4 側屈による補充評価

側屈は耳を肩へ近付ける運動であり,頚椎では参考運動に位置付けられる。
左右各50度,合計100度が参考可動域角度であるため,その2分の1は50度となる。

主要運動の数値が2分の1をわずかに上回る場合でも,その超過が頚椎では10度以内であり,かつ側屈が2分の1以下であるときは,主要運動が2分の1以下に制限されたものとして扱われる余地がある。
境界値では,主要運動だけでなく側屈の他動値も同じ条件で記録しておく意味がある。

5 健側比較ではない

四肢の関節では,原則として負傷していない側の関節可動域との比較が問題となるが,頚椎には左右一対の健側関節がない。
頚椎の運動障害は,認定基準が示す参考可動域角度と測定値を比較して評価する。

参考可動域角度は,医学上すべての人に当てはまる絶対的な正常値ではない。
年齢,性別及び個人差があることと,等級認定上の比較基準として参考可動域角度を用いることは区別する必要がある。

第4 他動値と測定方法

1 原則は他動値である

関節可動域は,測定者が身体を動かして測る他動運動と,本人が自ら動かす自動運動に分かれる。
日本整形外科学会と日本リハビリテーション医学会の測定法では,関節可動域は原則として他動運動による値を表記し,自動運動による値を用いる場合はその旨を明記するとされている。

疼痛又は不安により自動値が小さくても,他動値が大きいことがある。
後遺障害診断書の角度欄では,数値だけでなく,他動値か自動値か,疼痛その他の事情により測定を制限したかを確認することが重要である。

2 測定肢位と基本軸

(1) 屈曲・伸展と側屈

屈曲・伸展は腰掛け座位で測定し,基本軸を肩峰を通る床への垂直線,移動軸を外耳孔と頭頂を結ぶ線とする。
側屈も腰掛け座位で測定し,基本軸を第7頚椎棘突起と第1仙椎棘突起を結ぶ線,移動軸を頭頂と第7頚椎棘突起を結ぶ線とする。

(2) 回旋

回旋は腰掛け座位で測定し,基本軸を両側の肩峰を結ぶ線への垂直線,移動軸を鼻梁と後頭結節を結ぶ線とする。
測定値は通常5度単位で記録されるため,1度単位の見かけ上精密な数値を前提に閾値を論じることは適切でない。

3 数値の再現性を確認する

同じ人でも,測定日,測定者,姿勢,代償運動,疼痛の強さ及び他動・自動の別により数値が変わり得る。
後遺障害診断書の数値が診療録又はリハビリ記録と大きく異なる場合は,どの条件の違いによるかを確認する必要がある。

境界値付近では,単に再測定を繰り返して小さい数値を探すのではなく,正式な測定肢位と軸で,原因となる傷病の状態を踏まえて記録することが重要である。
測定不能又は測定に危険がある場合は,無理に動かさず,その医学的理由を診療記録に残すべきである。

第5 むち打ち症との違い

1 可動域低下は器質的原因そのものではない

むち打ち症では,頚部痛,筋緊張又は防御的な動作によって首を動かせる範囲が狭くなることがある。
医学上のWAD分類でも,可動域低下は筋骨格系所見を伴う類型に現れ得る一方,骨折又は脱臼は別の類型に区別されている。

この分類は日本の後遺障害等級を定めるものではないが,可動域低下という所見と骨折・脱臼等の構造的損傷とを同一視できないことを理解する手掛かりとなる。
事故後の診断名が頚椎捻挫又はむち打ち症であるだけでは,8級2号の器質的原因が証明されたことにはならない。

2 疼痛だけによる制限は神経症状として評価される

厚生労働省の認定基準は,脊柱圧迫骨折等,脊柱固定術又は明らかな軟部組織の器質的変化がなく,疼痛のために運動障害が残る場合を,脊柱の運動障害ではなく局部の神経症状として扱う。
自賠責の等級表では,局部の神経症状として12級13号又は14級9号が問題となる。

厚生労働省が公開する労災の審査事例には,頚部の屈曲・伸展と回旋がいずれも参考角度の2分の1以下であったものの,骨傷,固定術又は明らかな軟部組織の器質的変化が認められず,脊柱の運動障害を否定した例がある。
これは自賠責の個別事件を拘束する裁判例ではないが,数値条件だけでは足りないことを示す公表された適用例である。

3 「むち打ち」という名称だけで除外もしない

交通事故の受傷機転が一般にむち打ちと呼ばれるものであっても,画像で骨折又は脱臼が判明したり,固定術が行われたりすることはあり得る。
したがって,軽い頚椎捻挫だけを前提とする場合と,客観的な器質的損傷を伴う場合とを分けて検討する必要がある。

症状固定時期を含むむち打ち症の経過は,むち打ち症(頚椎捻挫)の症状固定時期で説明している。
本稿では,むち打ち一般ではなく,8級2号の原因要件と可動域測定の関係に範囲を絞っている。

第6 認定資料の確認順序

1 まず既にある資料を対応させる

最初に確認する資料は,事故直後から症状固定までの画像,画像診断報告書,手術記録,診療録,リハビリ記録及び後遺障害診断書である。
新しい検査を無条件に増やす前に,器質的原因を示す資料,その原因と運動制限を結び付ける経過,症状固定時の他動可動域という三つの要素が既存資料のどこに記録されているかを整理する。

自賠責の後遺障害は,事故による傷害との相当因果関係があり,将来においても回復が困難と見込まれ,医学的に認められる状態であることを前提とする。
事故前画像又は既往歴がある場合は,事故後の新しい所見と既存変性を区別する資料にもなる。

2 後遺障害診断書を点検する

(1) 原因に関する記載

傷病名,画像所見,手術内容及び残存症状が互いに対応しているかを確認する。
例えば,固定術を原因とするなら,固定高位と画像が明らかであり,その結果としてどの主要運動が制限されたかを読めることが重要である。

(2) 可動域に関する記載

屈曲,伸展,左右回旋及び必要に応じて左右側屈の角度を確認し,同じ面の方向を合計する。
その上で,他動・自動の別,測定不能欄の理由及び診療録中の過去の数値との整合を点検する。

交通事故の後遺障害診断書では,診断書の入手時期,記載事項及び提出前の確認点を扱っている。
本稿の計算は,診断書に記載された測定値を8級2号の基準へ当てはめる場面に限定したものである。

3 追加調査へ進む条件と停止点

画像所見の意味又は事故との因果関係が争点として残る場合は,まず画像データと読影報告書を入手し,受傷直後と症状固定時を時系列で比較する。
その確認で結論を左右する具体的な疑問が残り,追加検査又は専門家の意見によって解消できると見込まれる場合に,次の手段を検討することになる。

これに対し,既存資料から器質的原因がなく疼痛による制限であることが明らかな場合は,8級2号に必要な資料を際限なく探すのではなく,神経症状の等級を検討する方が争点に即している。
また,測定値が参考角度の2分の1を明らかに超え,補充評価にも該当しない場合は,8級2号の数値条件を前提とする追加調査の必要性を再検討すべきである。

第7 非該当の理由を確認する方法

1 原因と数値のどちらが否定されたか

8級2号に該当しないという結果を検討するときは,①器質的原因等が否定されたのか,②測定値が数値条件を満たさないのか,③事故との因果関係又は症状の残存性が否定されたのかを分けて読む。
争点を分けなければ,原因資料の不足に対して角度だけを追加したり,測定方法の問題に対して画像だけを追加したりすることになる。

認定理由に対応する既存資料が見落とされていないかを先に確認し,結論を変え得る新しい資料又は医学的説明があるかを判断する。
同じ資料と同じ説明を繰り返すだけであれば,追加手続の負担に見合うかを慎重に検討する必要がある。

2 異議申立て等を検討する場合

自賠責の等級認定に対しては,保険会社への異議申立て,自賠責保険・共済紛争処理機構への申請又は訴訟を検討できる場合があるが,制度ごとに審査対象と効力が異なる。
具体的な手続の違いは,交通事故の後遺障害が非該当となった場合の異議申立てで説明している。

本稿との関係では,手続名を選ぶ前に,8級2号のどの要件についてどの資料が不足したのかを特定することが先である。
期限又は時効の問題は請求経路と事故日等により異なるため,個別事件では手続を先送りせず確認する必要がある。

第8 出典・参考資料

1 法令及び支払基準

e-Gov法令検索・自動車損害賠償保障法施行令別表第二第8級2号,第12級13号及び第14級9号(令和8年9月3日現在の表示)
②国土交通省・金融庁告示「自賠責保険・共済支払基準」3頁~4頁

2 行政上の認定基準及び公表事例

①厚生労働省「せき柱及びその他の体幹骨,上肢並びに下肢の障害に関する障害等級認定基準について」(平成16年6月4日基発第0604003号)第2の1(3)及び別添第1
②厚生労働省「障害等級第12級の原処分を取り消し第9級とした審査事例」1頁~2頁
③国土交通省「自賠責保険・共済ポータル よくあるご質問」Q2及びQ5

3 医学資料

①日本リハビリテーション医学会及び日本整形外科学会「関節可動域表示ならびに測定法改訂について(2022年4月改訂)」『The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine』58巻10号1188頁~1200頁,特に1191頁~1192頁及び1196頁~1197頁
②Spitzer WO, Skovron ML, Salmi LR, et al., “Scientific monograph of the Quebec Task Force on Whiplash-Associated Disorders,” Spine, 1995;20(8 Suppl):1S-73S, PMID 7604354
③Sowden KM, Cooke LJ, Kersey P, Taimela S, Collie A, “Whiplash: diagnosis, treatment, and associated injuries,” Current Reviews in Musculoskeletal Medicine, 2009;2:65-68, PMC2684148

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