その他

宅建業に関するメモ書き

目次
1 宅建業者の報酬
2 宅建業者の査定書
2の2 宅建業者の重要事項説明書に関するメモ書き
2の3 契約不適合責任に関するメモ書き
2の4 売主の説明義務に関するメモ書き
2の5 職業的専門家の説明義務に関するメモ書き
3 賃貸マンションに関するメモ書き
3の2 分譲マンションに関するメモ書き
3の3 宅建業者による勧誘に関する規制等
3の4 地区計画,建築協定及び紳士協定
3の5 開発行為に関するメモ書き
3の6 市街地再開発事業及び土地区画整理事業に関するメモ書き
4の1 固定資産税に関するメモ書き
4の2 固定資産評価証明書の閲覧
5 家賃保証
6 住宅セーフティネット制度
7 引越しに関するメモ書き
7の2 オフィスに関するメモ書き
7の3 公衆浴場に関するメモ書き
8 立退料に関するメモ書き
8の2 抵当権に基づく妨害排除請求
8の3 競売不動産価格維持のための保全処分
9 住宅ローンに関するメモ書き
10 表題登記及び所有権保存登記に関するメモ書き
11 旧住所登記と新住所登記
12 安心R住宅制度
12の2 S造,RC造,SRC造及び木造
13 サブリース
13の2 スルガ銀行・シェアハウス事件の被害者救済スキーム
14 廃棄物処理法に関するメモ書き
14の2 家電リサイクル等に関するメモ書き
15 農地法に関するメモ書き
15の2 市街化調整区域に関するメモ書き
16 私力の行使及び刃物携帯の禁止
17 耐震基準等に関するメモ書き
18 排水管に関するメモ書き
18の2 下水道に関するメモ書き
19 空き家に関するメモ書き
20 関連記事その他

1 宅建業者の報酬
(1) 賃貸借の仲介(媒介又は代理)で不動産会社が賃借人から受け取ることができる報酬額は原則として賃料の0.5月分(税抜)だけであって,特に賃借人の承諾がある場合に限り,1月分(税抜)となります(不動産ジャパンHPの「4.仲介・管理を依頼する会社を選ぶ」参照)。
(2) 契約時に「0.5ヵ月分しか支払わない」と伝えた場合,仲介会社が値引きに応じるケースがほとんどらしいです(TERASS HPの「「仲介手数料は原則0.5ヵ月分」判決 家を借りるときの“法律と業界知識”」参照)。
(3) 大阪府HPに「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額(建設省告示)」が載っています。
(4)  無免許者が宅地建物取引業を営むために宅地建物取引業者からその名義を借り,当該名義を借りてされた取引による利益を両者で分配する旨の合意は,公序良俗に反し,無効です(最高裁令和3年6月29日判決)。


2 宅建業者の査定書
(1) 宅建業者の査定書の根拠として,宅建業法34条の2第1項2号及び同条2項に言及されることがあります。
(2) 媒介契約について定める宅建業法34条の2第2項は,「宅地建物取引業者は、前項第二号の価額又は評価額(山中注:当該宅地又は建物を売買すべき価額又はその評価額)について意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければならない。」と定めています。
(3) 国土交通省HPの「宅地建物取引業法 法令改正・解釈について」に載ってある「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」には「4 媒介価額に関する意見の根拠の明示義務について」の「(1) 意見の根拠について」として以下の記載があります。
    意見の根拠としては、価格査定マニュアル(財団法人不動産流通近代化センターが作成した価格査定マニュアル又はこれに準じた価格査定マニュアル)や、同種の取引事例等他に合理的な説明がつくものであることとする。
    なお、その他次の点にも留意することとする。
① 依頼者に示すべき根拠は、宅地建物取引業者の意見を説明するものであるので、必ずしも依頼者の納得を得ることは要さないが、合理的なものでなければならないこと。
② 根拠の明示は、口頭でも書面を用いてもよいが、書面を用いるときは、不動産の鑑定評価に関する法律に基づく鑑定評価書でないことを明記するとともに、みだりに他の目的に利用することのないよう依頼者に要請すること。
③ 根拠の明示は、法律上の義務であるので、そのために行った価額の査定等に要した費用は、依頼者に請求できないものであること。
(4) 東京地裁平成21年3月24日判決は「不動産取引の媒介業者は媒介価格よりも若干高い額の売出価格を設定する義務を負担しているとはいえない。」と判示しています(三井住友トラスト不動産HPの「宅地建物の売却の媒介における「媒介価額」とは何か」参照)。


2の2 宅建業者の重要事項説明に関するメモ書き
(1) 四日市の弁護士による企業法務HPに「重要事項説明書について」が載っています。
(2) 国土交通省HPに「「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を策定しました」(令和3年10月8日付)が載っています。
(3)ア みずほ中央法律事務所HPの「【売買契約に関する責任の種類(瑕疵担保・債務不履行・不法行為)】」には「調査や説明義務違反による責任は,売主だけでなく仲介業者も負うことがありあす。」と書いてあります。
イ 東京地裁平成28年3月11日判決(判例秘書に掲載)は以下の判示をしています。
不動産仲介業者は,直接の委託関係はなくても,これら業者の介入に信頼して取引をなすに至った第三者一般に対しても,信義誠実を旨とし,格別に注意する等の業務上の一般的注意義務があると解されるところ,仲介者が負うべき義務は,宅地建物取引業法第35条に定める事項はもちろん,信義則上,買主が売買契約を締結するかどうかを決定づけるような重大な事項について調査し,知り得た事実について説明すべきであるが,宅地建物取引業者は,高度の専門知識や鑑定能力を有するものとは限らないことからすると,売買契約当時,その目的物に瑕疵が存在することを疑わせるような特段の事情がない限りは,瑕疵の存否について積極的に調査するまでの義務はないと解するべきである。

2の3 契約不適合責任に関するメモ書き
(1)ア 数量不適合,権利不適合及び抵当権等が存在した場合における売主の担保責任は,権利行使可能認識時から5年で消滅時効にかかります(月刊不動産HPの「Vol.20 売主の担保責任」参照)。
イ  国土交通省HPに「「物件状況等報告書」記入上のご注意【土地建物・土地用】」が載っています。
(2)ア 契約不適合責任免除の特約が有効と判断されるかどうかのポイントは以下のとおりみたいです(不動産DOJO「売主に重過失があれば契約不適合責任免責を無効にできるか? 」参照)。
① 売主により事前調査がされているか。
② 調査することが容易であったか
③ 売主は買主に対して真摯な対応をしているか
イ 東京地裁平成16年10月28日判決(判例秘書に掲載)は,隣人と共有共用の配水管及び浄化槽が地中に埋設されていた土地の売買において,瑕疵担保責任を限定する特約を排除して売主の瑕疵担保責任が肯定された事例です。
ウ みずほ中央法律事務所HPに「【瑕疵担保責任免除特約の有効性】」が載っています。
(3) 売買契約の当事者間において目的物がどのような品質・性能を有することが予定されていたかについては,売買契約締結当時の取引観念をしんしゃくして判断されます(最高裁平成22年6月1日判決)。

2の4 売主の説明義務に関するメモ書き
(1) 石川県宅建業協会HP「売主・媒介業者から見た不動産売買における契約不適合責任等の留意点と予防策」が載っています。
(2) 東京地裁平成28年3月11日判決は(判例秘書に掲載)は以下の判示をしています。
不動産売買における売主は,その売買の当時,購入希望者に重大な不利益をもたらすおそれがあり,その契約締結の可否の判断に影響を及ぼすことが予想される事項を認識していた場合には,売主は,売買契約に付随する信義則上の義務として,購入希望者に対して当該事項について説明すべき義務があるというべきである。


2の5 職業的専門家の説明義務に関するメモ書き
・ 最高裁令和2年3月6日判決の裁判官草野耕一の意見には以下の記載があります(改行を追加しています。)。
 職業的専門家は社会にとって有用な存在であり,その有用性は社会の複雑化と社会生活を営む上で必要とされる情報の高度化が進むほど高まるものである。そうである以上,専門的知見を依頼者以外の者に対して提供することを怠ったことを理由として職業的専門家が法的責任を負うことは特段の事情がない限り否定されてしかるべきである。
   なぜなら,職業的専門家が同人からの知見の提供を求めている者に遭遇した場合において,たとえその者が依頼者でなくとも当該職業的専門家は知見の提供をしなければならないという義務が肯定されるとすれば,知見を求める人々の側においてはわざわざ報酬を支払って依頼者となろうとする必要性が消失し,その結果として,職業的専門家の側においては安定した生活基盤の形成が困難となってしまうからである。
   のみならず,職業的専門家が依頼者に提供する役務の質を向上させるためには職業的専門家と依頼者の間において高度な信頼関係が形成されることが必要であるところ,それを達成するためには職業的専門家は依頼事項に関して依頼者の同意を得ずに依頼者以外の者に対して助言することはないという行動原理が尊重されなければならず,この点からも職業的専門家が依頼者以外の者に対して知見の提供を怠ったことを理由として法的責任を負うことは否定されてしかるべきである。

3 賃貸マンションに関するメモ書き
(1)ア 賃貸マンションの経営側の視点については,土地活用のいろはHP「土地活用でアパート経営をするべき人と失敗しない為の全知識」が参考になります。土地活用について,4つのタイプと17種類の活用方法に関する表が非常にまとまっています。
イ データとしては,株式会社LIFULL(ライフル)HP「不動産投資」(例えば,全国の不動産投資物件を掲載している「収益物件を検索する」,賃貸用住宅の空室率を掲載している「見える賃貸住宅」)が参考になります。
(2) 健美家HP「ワンルームに住む平均年齢91歳夫婦の滞納事件。強制執行はできるか?できないか。」には,「夫婦は娘の遺影だけを抱え、着の身着のままで部屋を後にした。残念ながら滞納額も残置物の処分費用も、家主負担しかない。」と書いてあります。
(3)  適法な転貸借関係が存在する場合,賃貸人が賃料の不払を理由として賃貸借契約を解除するには,特段の事情のない限り,転借人に通知等をして賃料の代払の機会を与えなければならないものではありません(最高裁平成6年7月18日判決)。
(4)ア 家屋賃貸借契約において、一箇月分の賃料の遅滞を理由に催告なしで契約を解除することができる旨を定めた特約条項は、賃料の遅滞を理由に当該契約を解除するにあたり、催告をしなくても不合理とは認められない事情が存する場合には、催告なしで解除権を行使することが許される旨を定めた約定として有効となります(最高裁昭和43年11月21日判決)。
イ 賃貸住宅に係る賃料債務等の保証委託及び連帯保証に関する契約書中の、賃料等の不払があるときに連帯保証人が無催告にて賃貸借契約を解除することができる旨を定める条項の消費者契約法10条に規定する消費者契約の条項に当たります(最高裁令和4年12月12日判決)。
(5) 令和3年6月15日,賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律に基づく賃貸住宅管理業の登録制度が開始しました。


3の2 分譲マンションに関するメモ書き
(1)  東弁リブラ2017年12月号「マンション管理の諸問題」は,以下のテーマを扱っています。
① マンション管理の現代的課題と弁護士の関与
② マンション第三者管理について
③ マンションの被災と復興のための制度
(2) 国立国会図書館HPレファレンス平成29年6月号に「マンション老朽化への対応に向けた課題」が載っています。
(3) オウチーノニュース「年代別のマンショントレンド ― 設備、仕様の変化をプロが解説」が載っています。
(4)ア 管理人は超~つらいよHP「マンション管理人とは?何者なんでしょうか?」が載っています。
イ 現代ビジネスHP「いま日本中で急増している「マンション管理人失踪」という異常事態」(平成29年7月10日付)が載っています。
(5)  マンション建替事業の施行者がマンションの建替え等の円滑化に関する法律76条3項に基づく補償金の供託義務を負う場合において、上記補償金の支払請求権に対する差押えの競合が生じたときは、上記施行者は同項及び民事執行法156条2項を根拠法条とする混合供託をしなければなりません(最高裁令和4年10月6日判決)。

3の3 宅建業者による勧誘に関する規制等
(1)   平成23年10月1日,宅建業者が,契約の締結の勧誘をするに際し,以下の行為をすることが禁止されるようになりました(国土交通省HPの「国土交通省から消費者の皆さんへのお知らせ・注意喚起(マンションの悪質勧誘・訪問、アンケート調査等)」参照)。
① 勧誘に先立って宅地建物取引業者の商号又は名称,勧誘を行う者の氏名、勧誘をする目的である旨を告げずに,勧誘を行う行為(宅建業法施行規則16条の12第1号のハ)
② 相手方が契約を締結しない旨の意思(勧誘を引き続き受けることを希望しない旨の意思を含む。)を表示したにもかかわらず、勧誘を継続する行為(宅建業法施行規則16条の12第1号の二)
③ 迷惑を覚えさせるような時間の電話又は訪問する行為(宅建業法施行規則16条の12第1号のホ)
(2) 消費者トラブルネット!HP「威迫(脅迫)で勧誘する宅建業者に対する行政処分申出書の記載例」が載っています。
(3) 宅地建物取引業者に対する知事の免許の付与ないし更新が宅地建物取引業法所定の免許基準に適合しない場合であっても,知事の右行為は,右業者の不正な行為により損害を被った取引関係者に対する関係において直ちに国家賠償法1条1項にいう違法な行為に当たるものではありません(最高裁平成元年11月24日判決)。


3の4 地区計画,建築協定及び紳士協定
(1)ア 都市計画は都市全体の計画を定めるものであるのに対し,地区計画は地区レベルの計画を定めるものです。
イ 地区計画は以下の二つからなります(国土交通省HPの「地区のルールを決める話」参照)。
① 地区計画の方針
・ 地区の目標,将来像を示すものです。
② 地区整備計画
・ 生活道路の配置,建築物の建て方のルール等を具体的に定めるものです。
ウ 届出に係る行為が地区計画に適合していない場合,設計の変更その他の必要な措置をとることを勧告されますし,適合していない事項が建築基準法68条の2に基づき条例化されている部分である場合,建築確認の審査が通りませんし(横浜市HPの「地区計画の区域内における行為の届出制度」参照)。
エ 地区計画に適合していない場合,開発行為(建築物の建築等を目的とする土地の区画形質の変更)に対する開発許可もおりません(都市計画法33条1項5号イ)。
(2)ア 建築協定(建築基準法69条ないし77条)は,住民が自主的に建築物に関する協定内容を定め,それに賛成する者全員が合意して締結するものです。
イ 建築協定書を市町村に提出し,市町村長が認可すれば,建築協定を締結した土地が売却等され,別の人が権利を取得たい場合でも,建築協定の内容が引き継がれることになります(横浜市HPの「建築協定とは」参照)。
(3) 紳士協定は,あくまでも住民同士の申し合わせ事項に過ぎないため,内容について遵守すべき拘束力はなく,強制力はありません(イクラ不動産HPの「地区計画・建築協定・紳士協定の違いについてわかりやすくまとめた」参照)。

3の5 開発行為に関するメモ書き
(1) 「土地の区画形質の変更」は,宅地造成だけでなく,道路の新設などを伴う土地区画の変更,農地から宅地への変更などを含む広い概念です(みずほ不動産販売HPの「土地の区画形質の変更」参照)。
(2) 対象の土地が農地である場合,農地転用と開発行為のいずれもが許可見込みとなることを関連部署に確認した上で,同時に申請して同時に許可を受けなければなりません(農地転用手続代行HPの「農地転用許可と開発行為許可の関係と費用」参照)。
(3) 開発行為はあくまでも「土地の区画形質の変更」であって,建物については考慮しないところ,開発許可を取得してから開発工事を完了した後に建築確認を申請することになります(わかった不動産HPの「開発許可を取得するときには、建築確認を受けなくてもよいか?」参照)。

3の6 市街地再開発事業及び土地区画整理事業に関するメモ書き
1 ①都市再開発法に基づく市街地再開発事業は,細分化された土地を共同利用し,地区を高層ビルや高層マンションに建て替える事業であるのに対し,②土地区画整理法に基づく土地区画整理事業は,バラバラになっている土地を整理して,きれいな区画をした市街地を平面的に作り直すという事業です。
2 市街地再開発事業には,土地の買収をしない権利変換方式による第1種市街地再開発事業,及び買収方式による第2種市街地再開発事業があります。
3 地価の高い都市の中心市街地には狭小な敷地に様々な権利者が存在しており,土地の持分を減らす土地区画整理事業を押し進めるのは困難でしたから,昭和36年に防災建築街区造成法及び市街地改造法が制定され,昭和44年にこれらを一つにまとめて都市再開発法が制定されました(イクラ不動産HPの「市街地再開発事業とはなにかわかりやすくまとめた」参照)。
4 令和6年2月15日時点で,公益社団法人街づくり区画整理協会は以下の図書を出版しています(同協会HPの「出版図書」参照)。
① 土地区画整理必携(令和5年度版)
② 土地区画整理事業実務標準(改訂版)-第6版-
③ 土地区画整理法逐条解釈(第10版)
④ 土地区画整理事業調査設計費積算資料(改訂版補正6刷)
⑤ 土地区画整理事業実務問答集(第4版)
⑥ 土地区画整理事業移転補償実務マニュアル(第9版)
⑦ 区画整理土地評価基準(案)(改訂版)
⑧ 土地区画整理事業・市街地再開発事業一体的施行実務ガイドマニュアル

4の1 固定資産税に関するメモ書き
(1) 総論
・ 固定資産税がかかる固定資産としては以下のものがあります(総務省HPの「固定資産税」参照)。
① 土地
・ 田,畑,住宅地,池沼(ちしょう),鉱泉地(例えば,温泉),牧場,原野等の土地です。
② 家屋
・ 住宅,お店,工場(発電所及び変電所を含む),倉庫等の建物のことです。
③ 償却資産
・ 土地及び家屋以外の事業の用に供することができる資産のことであって,例えば,会社等が所有する構築物(例えば,広告塔及びフェンス),飛行機,船,車両,運搬具(例えば,鉄道及びトロッコ),備品(例えば,パソコン及び工具)があります。
(2) 固定資産税の計算
ア 固定資産評価額は固定資産評価基準により算出されますところ,土地及び建物については3年ごとに評価替えが行われ,償却資産については毎年評価替えが行われます。
イ(ア) 固定資産評価にもとづき,賦課期日(毎年1月1日)の資産価格を決定し,これが課税標準額となります。
(イ) 200㎡以下の住宅用地の場合,課税標準額が固定資産評価の6分の1となり,200㎡を超える住宅用地の場合,超えた部分の課税標準額が固定資産評価の3分の1となります。
ウ(ア) 固定資産課税標準額に1.4%の税率をかけたものが固定資産税額となります。
(イ) 令和4年6月31日までの間に新築された住宅が一般住宅又は長期優良住宅に該当する場合,固定資産税の税率が半分になります。
(3) パソコン等にかかる固定資産税
・ パソコン等の課税標準額の合計が150万円以上となった場合,1.4%の固定資産税が毎年,発生することになります(創業融資に強い新宿税理士事務所HP「パソコン(PC)を買っただけで固定資産税がかかる!新宿の税理士が解説」参照)。
(4) その他
・  真実は不動産の所有者でない者が,登記簿上その所有者として登記されているために,右不動産に対する固定資産税を課せられ,これを納付した場合には,右所有名義人は,真の所有者に対し,不当利得として,右納付税額に相当する金員の返還を請求することができます(最高裁昭和47年1月25日判決)。
・ 固定資産課税台帳に登録された基準年度に係る賦課期日における土地の価格が同期日における当該土地の客観的な交換価値を上回る場合には,上記価格の決定は違法となります(最高裁平成15年6月26日判決)。
・ 家屋の評価の誤りに基づきある年度の固定資産税及び都市計画税の税額が過大に決定されたことによる損害賠償請求権に係る民法724条後段所定の除斥期間は,当該年度の固定資産税等に係る賦課決定がされ所有者に納税通知書が交付された時から進行します(最高裁令和2年3月24日判決)。

4の2 固定資産評価証明書の閲覧
(1) 平成15年4月1日以降,借地人及び借家人は,地方税法382条の3・地方税法施行令52条の15に基づき,本人確認資料のほか,賃貸借関係を証明できる書類(例えば,賃貸借契約書及び賃料の領収書等の原本)を持参すれば,固定資産評価証明書を取得できますし,固定資産課税台帳を閲覧できます(東京都主税局HPの「証明・閲覧」,大阪市HPの「法人の請求や代理人が請求される場合」参照)。
(2)   平成13年当時の固定資産税における情報開示については,「地方税における資産課税のあり方に関する調査研究中間報告書」(平成13年10月作成)が詳しいです。

5 家賃保証
(1) いわゆる家賃保証には,入居者向けのものとして①入居者の滞納保証があり,賃貸物件オーナー向けのものとして②サブリース及び③空室保証があります(一般社団法人全国賃貸経営補償機構(全賃機構)HPの「家賃保証とサブリース,空室保証の違いは?」参照)。
(2) 平成29年10月25日,家賃債務保証の業務の適正化を図るために,国土交通省の告示による家賃債務保証業者の登録制度が開始しました(国土交通省HPの「家賃債務保証業者登録制度」参照)。
(3) ライフルホームズプレスHP「家賃債務保証業者登録制度が2017年10月スタート。その登録基準やルールは?」が載っています。


6 住宅セーフティネット制度
・ 平成29年4月に公布された住宅セーフティネット法(正式名称は「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律 」です。)の改正法が同年10月25日に施行され,高齢者,低額所得者,子育て世帯等の住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅の登録制度など,民間賃貸住宅や空き家を活用した「新たな住宅セーフティネット制度」が本格的に始まりました(国土交通省HPの「住宅セーフティネット制度について」参照)。

7 引越しに関するメモ書き
(1) 引越ライフHP「初めての引越しでも迷わない|引越し完了までの手順を9ステップで解説!」が載っています。
(2) おいくらHP「おいくら買取価格相場」が載っています。
(3) 白物家電ブログ「値引きのコツ」一覧が載っています。
(4) 一人暮らしでピザ,弁当,寿司,カレー等の出前を取る場合,出前館楽天デリバリー等が便利です。


7の2 オフィスに関するメモ書き
(1) IBOSHOに「オフィスにおいての適度な一人当たり面積とは?業種による違いも紹介」が載っています。
(2) 法律事務所開業・移転NAVI「坪数で見る」によれば,法律事務所レイアウトイメージとして,ネット面積10坪で弁護士1名・事務員1名・面談室1室であり,ネット面積15坪で弁護士2名・事務員2名・面談室1室であり,ネット面積25坪で弁護士3名・事務員2名・面談室2室であり,ネット面積27坪で弁護士4名・事務員2名・面談室3室となっています。
(3) 全国住宅産業協会HP「賃貸住宅における「共益費」のあり方に関する研究 報告書」が載っていますところ,同報告書によると「共益費(※)として収受している項目」,つまり,共益費の使い道で多いものは以下のとおりです(suumoの「賃貸の管理費・共益費って何に使われてるの?消費税はかかる?」参照)。
・共用電気料 78%
・共用灯保守・交換料 69%
・共用水道料 64%
・ゴミ置場清掃費 57%
・定期清掃費 56%
(4) ビルオーナーが賃料以外に請求できる費用としては,水道光熱費,清掃費,ゴミの処理費,設備使用料(例えば,付帯看板及び駐車場の使用料),消火器点検費及び空調設備の時間外使用費があります(タイズホームHP「『ビルオーナーが賃料以外に請求できる費用について』」参照)。
(5) 大家の味方HPに不動産投資・空室対策・リフォーム・火災保険・法人保険・バイク駐車場・トランクルーム・節税・家族信託・相続対策のことが書いてあります。


7の3 公衆浴場に関するメモ書き
(1)ア 公衆浴場法2条2項後段の,「公衆浴場の設置場所が配置の適正を欠くと認められる場合には、都道府県知事は公衆浴場の経営を許可しないことができる」旨の規定は,憲法22条に違反しません(最高裁平成元年3月7日判決。なお,先例として,最高裁大法廷昭和30年1月26日判決,最高裁昭和32年6月25日判決,最高裁昭和35年2月11日判決,最高裁昭和37年1月19日判決,最高裁昭和41年6月16日判決,最高裁昭和47年5月19日判決参照)。
イ 刑事事件に関する最高裁平成元年1月20日判決も公衆浴場法2条2項は憲法22条1項に違反しないと判示しています。
(2) 衆議院議員初鹿明博君提出入れ墨がある人の公衆浴場での入浴に関する質問に対する答弁書(平成29年2月21日付)は以下のとおりです。
     御質問は、入れ墨がある者(以下「対象者」という。)が入れ墨があることのみをもって、公衆浴場法(昭和二十三年法律第百三十九号)第四条に規定する伝染性の疾病にかかっている者と認められる者(以下「り患者」という。)に該当するか否か、又は入れ墨があることのみをもって、対象者による公衆浴場における入浴が同法第五条第一項に規定する浴槽内を著しく不潔にし、その他公衆衛生に害を及ぼすおそれのある行為に該当するか否かというものであると考えるところ、入れ墨があることのみをもって、対象者がり患者に該当し、又は当該入浴が当該行為に該当すると解することは困難である。

8 立退料に関するメモ書き
(1) 賃貸管理を増やすHP「オーナーの7つのリスク 立ち退き料編」によれば,賃貸人の7つのリスクは,①空室,②値下がり,③未回収損の発生,④運営費の増加,⑤天災地変への遭遇,⑥事件に巻き込まれる,⑦高額の立退料(家賃の10か月分ぐらい。)となっています。
(2) 立退料の内訳は,住居用の場合と事業用の場合とで異なります(いえらぶCLOUD「老朽化した建物の修繕だけど、立退料を支払う必要はあるの?」(2019年5月22日付))。
(3) ベリーベスト法律事務所の法律情報サイトであるリーガルモール「不動産の立退きにあたって押さえておくべき8つの知識」が載っています。


8の2 抵当権に基づく妨害排除請求
(1) 第三者が抵当不動産を不法占有することにより、競売手続の進行が害され適正な価額よりも売却価額が下落するおそれがあるなど、抵当不動産の交換価値の実現が妨げられ抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるときは、抵当権者は、抵当不動産の所有者に対して有する右状態を是正し抵当不動産を適切に維持又は保存するよう求める請求権を保全するため、所有者の不法占有者に対する妨害排除請求権を代位行使することができます(最高裁大法廷平成11年11月24日判決)。
(2) 抵当不動産の所有者から占有権原の設定を受けてこれを占有する者であっても,抵当権設定登記後に占有権原の設定を受けたものであり,その設定に抵当権の実行としての競売手続を妨害する目的が認められ,その占有により抵当不動産の交換価値の実現が妨げられて抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるときは,抵当権者は,当該占有者に対し,抵当権に基づく妨害排除請求として,上記状態の排除を求めることができます(最高裁平成17年3月10日判決)。
(3) 弁護士法人白濱法律事務所HP「抵当権に基づく妨害排除請求」には「売却のための保全処分(民事執行法第188条、同法第55条1項)を利用すれば、判決によらず簡易な手続で済む上、執行官保管の命令を受ければ抵当権者で抵当不動産を管理する必要はありません。」と書いてあります。

8の3 競売不動産価格維持のための保全処分
・ 不動産が差し押えられても,執行債務者は所有者としてそれを使用・収益することができる(民事執行法46条2項参照)ものの,債権者が差押えにより把握した交換価値は基本的に維持されなければなりませんから。競売不動産価格維持のための保全処分としては以下のものがあります(関西大学法学部名誉教授・栗田隆HP「2006年度民事執行・保全法講義」参照)。
(競売開始決定前)
① 担保不動産競売の開始決定前の保全処分(民事執行法187条)
(競売開始決定後)
② 売却のための保全処分(民事執行法55条及び55条の2)
③ 買受の申出をした差押債権者のための保全処分(民事執行法68条の2)
(最高価買受申出人の選定後)
④ 最高価買受申出人等のための保全処分(民事執行法77条)

9 住宅ローンに関するメモ書き
(1) ナビナビHPに「住宅ローンの特典を9行の金融機関で比較!あなたにぴったりのサービスが見つかる」が載っています(取り上げられている金融機関は,auじぶん銀行,新生銀行,ARUHI(アルヒ),住信SBIネット銀行,ソニー銀行,イオン銀行,三菱UFJ銀行,みずほ銀行及び三井住友信託銀行です。)。
(2) 出産時1年間の金利優遇があるのは三菱UFJ銀行及び三井住友信託銀行だけです。

10 表題登記及び所有権保存登記に関するメモ書き
(1) 住宅用家屋として登録免許税の軽減措置を受けるために必要となる住宅用家屋証明書は,建物表題登記を行った後に市町村の役所で入手できますところ,発行にかかる手数料は1300円です(いえーる住宅研究所HPの「所有権保存登記とは|費用・必要書類、自分で申請する方法も徹底解説」参照)。
(2) 土地家屋調査士事務所ランドテックHPに「建物の表示に関する登記の所有権証明書(具体例)」が載っています。
(3)ア 自分で登記.comに「不動産登記費用の相場について教えてください。」が載っています。
イ 土地家屋調査士の費用は,①調査業務,②測量業務,③申請手続及び④書類作成業務からなります(土地家屋調査士法3条1項のほか,土地家屋調査士法人えん公式ブログの「建物表題登記の費用はどれくらいかかるの?専門家への依頼でお得に」参照)。
(4) 工事請負業者(ハウスメーカー),売主業者によっては,代金の支払いを受けなければ,表題登記に必要な工事完了引渡証明書を出さないという業者もあり,その場合には,金融機関が,建物登記が完了するまでの間(2週間程度)抵当権設定登記を申請できない状態のリスクを負うことになります(土地家屋調査士法人えん公式ブログの「新築一戸建の建物表題登記の申請できるタイミングについてまとめ」参照)。

11 旧住所登記と新住所登記
(1) 現在住んでいる物件の住所で登記する場合を「旧住所登記」,購入する物件の住所で登記する場合を「新住所登記」といいますところ,
    旧住所登記の場合,メリットは「残金決済までの手続が比較的楽」であり,デメリットは①後で住所変更登記が必要になること,②住宅用家屋証明書の必要書類が多くなること,及び③銀行への住民票の提出が再度必要になることであり,
    新住所登記の場合,メリットは「残金決済後の手続が比較的楽」であり,デメリットは①嘘をつくことになること,②役所からの書類が届かない可能性があること,及び③時間の余裕がないです(マイホーム登記情報館HPの「旧住所!?新住所!?マイホーム購入の際の登記の住所について徹底解説!」参照)。
(2) あべんちのマイホームブログの「新築⇒引き渡し前の住所変更【タイミングと注意点】」には,建物表題登記を住所変更前の「旧住所」で行っていい理由として以下の記載があるほか,役所からの確認書類を受領できるようにするため,氏名及び住所を表記した簡易的なポストを必ず設置しておきましょうと書いてあります。
     建物表題登記には所有者の住所や氏名も記載されます。
     旧住所で登記した場合でも引渡時の所有権保存登記で「新旧の移動がわかる住民票」を添付して登記することで書き換えられる仕組みだからです。
(3) ゆめ部長の真っ直ぐ不動産仲介HP「新住所登記・旧住所登記をわかりやすく解説!」には以下の記載があります。
    新築一戸建てを購入した場合、表題部は「旧住所」で登記を行い、権利部(甲区・乙区)は「新住所」で行うことが多いです。理由は、日程がカツカツになること・表題部は売却時に住所変更が必要ないことの2つです。新住所登記をしても、表題部には昔住んでいた住所が残ってしまうため、もし「○○社宅」という名称を残したくない場合は不動産屋さんに相談してみてください。
(4) 住宅ローン控除のため耐震補強工事を行う場合,入居開始までに改修工事を実施し耐震基準適合証明書を取得する必要があるりますところ,新住所登記をしてしまうとこの制度の対象外となりますから,住宅ローン控除は受けられなくなります(不動産売買の説明書HPの「新住所登記と旧住所登記のメリット・デメリットをプロがわかりやすく解説!」参照)。

12 安心R住宅制度
・ 平成29年12月1日,既存住宅の流通促進に向けて,「不安」「汚い」「わからない」といった従来のいわゆる「中古住宅」のマイナスイメージを払拭し,「住みたい」「買いたい」既存住宅を選択できる環境の整備を図るため,国土交通省の告示による「安心R住宅」制度(特定既存住宅情報提供事業者団体登録制度)が開始しました(国土交通省HPの「安心R住宅」参照)。

12の2 S造,RC造,SRC造及び木造
(1) RENOSYマガジンの「RC造、S造、SRC造、木造とは? 構造別のメリット・デメリットや選び方」には以下の記載があります。
建物の構造は、大きく分けると、S造(鉄骨造)、RC造(鉄筋コンクリート造)、SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)、木造の4種類があります。それぞれ「えす(ぞう)」「あーるしー(ぞう)」「えすあーるしー(ぞう)」「もくぞう」とよびます。
簡単にそれぞれの特徴を以下に説明します。
・ S造:軽くて柔らかい。大空間に向いている。
・ RC造:重くて硬い。耐火性、耐久性、遮音性に優れている。
・ SRC造:SとRC両方の特徴を持つ。建設コストは髙い
・ 木造:小さい建物に向いている。小規模であればS造、RC造と比べて建設コストは安い
(2) 公益社団法人日本建築士会連合会HP「知ってほしい建築を支える専門工事業 第3回 鉄筋工事業」に「RCとは Reinforced Concreteの略で、直訳すると「補強された
コンクリート」です。」と書いてあります。

13 サブリース
(1)ア サブリースについては,独立行政法人国民生活センターHP「不動産サブリース問題の現状」(建築提携型サブリース及び購入勧誘型サブリースがあります。),不動産投資ユニバーシティHP「収益物件のサブリースは全く意味がない」が参考になります。
イ ドットHPの「古賀茂明「業者から紹介料を取り、アパート融資で顧客をカモる悪徳銀行」」によれば,賃貸アパート向けの融資で,一部の大手地銀が顧客を建築業者に紹介する見返りに手数料(アパート建築請負金額の0.5%~3%)を受け取っているそうです。
(2) 物件を管理会社に委託する場合の管理委託契約の形態としては,①一般管理契約(「管理受託契約」ともいいます。)及び②一括借上管理契約(=サブリース契約)があります(リプロスHPの「Q&A」,国民生活センターHPの「不動産サブリースのしくみ-管理・原契約を中心に-」参照)。
(3) 日弁連は,平成30年2月15日,サブリースを前提とするアパート等の建設勧誘の際の規制強化を求める意見書を取りまとめました。
(4) 国土交通省HPの「『サブリース住宅原賃貸借標準契約書』について」に,サブリース住宅原賃貸借標準契約書が載っています。
(5) 金融庁HPに「アパート等のサブリースに関連する注意喚起について」(平成30年10月26日付)が載っています。
(6)ア 令和2年12月15日以降,サブリースに関しては,賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律に基づく規制がなされています。
イ 国土交通省HPに「賃貸住宅管理業法ポータルサイト」が載っています。

13の2 スルガ銀行・シェアハウス事件の被害者救済スキーム
(1)ア NBL 1178号(2020年9月15日付)に「スルガ銀行・シェアハウス事件の被害者救済スキーム 全面解決への経緯報告<レポート>」(筆者はさくら共同法律事務所河合弘之弁護士スルガ銀行・スマートデイズ被害弁護団団長)です。)が載っていますところ,これによれば,令和2年3月25日,スルガ銀行・スマートデイズ被害弁護団はスルガ銀行との間で,以下の和解をしたそうです。
① スルガ銀行から融資を受けてシェアハウスを購入した者は当該不動産を手放す。
② スルガ銀行は全ての貸付債権を消滅させる。
イ NBL 1178号・61頁には,債務免除益課税を回避したスキームとして以下の記載があります。
スルガ銀行第二次弁護団は国税庁と多数回交渉した。その結果出た結論は、
① スルガ銀行は異常に高額な不動産を購入させるという不法行為を被害者に対してした。その損害額は融資額と当該シェアハウスの時価である。(山中注:「時価」ではなく,「時価の差額」と思います。)
② その損害賠償債務と借入金残債務を相殺する。
③ その結果残る債務(当該シェアハウス時価と同額)と当該シェアハウスを代物弁済とする。
というスキームであった。
上記スキームの①と②は「損害賠償については課税しない」という課税実務上の原則を利用したものである。③の代物弁済は等価交換だから免除益は発生しない。
国税庁は本件事件において被害者は気の毒なので課税はできない、しかし、従来の課税の実務や法令解釈は変えるわけにはいかない、ということで苦肉の策を講じてくれたのだ。
ウ 所得税法9条1項17号は,「損害賠償金(これらに類するものを含む。)で、心身に加えられた損害又は突発的な事故により資産に加えられた損害に基因して取得するものその他の政令で定めるもの」を非課税所得としています。
(2)ア 現代ビジネスHPに「スルガ銀行「かぼちゃの馬車」事件、借金帳消しは甘すぎやしないか」(2020年4月5日付)が載っています。
イ 証券取引法42条の2第1項3号が,平成3年法律第96号による同法の改正前に締結された損失保証や特別の利益の提供を内容とする契約に基づいてその履行を請求する場合を含め,顧客等に対する損失補てんや利益追加のための財産上の利益の提供を禁止していることは,憲法29条に違反しません(最高裁平成15年4月18日判決)。

14 廃棄物処理法に関するメモ書き
(1) 総論

・ 廃棄物処理法は,正式名称を廃棄物の処理及び清掃に関する法律といい,廃棄物の排出を抑制しつつ,発生した廃棄物をリサイクル等の適正な処理を行うことで,人々の生活環境を守ることを目的に作られました(e-reverse.com「廃棄物処理法とは|概要・罰則についてわかりやすく解説」参照)。
(2) 自分の土地への産業廃棄物の投棄は禁止されていること
・ 株式会社山本清掃HPの「自分の土地に産業廃棄物は捨てていいのか?」には以下の記載があります(改行を追加しています。)。
平成9年まで、設置許可が必要な処理場は管理型で1,000㎡以上、安定型で3,000㎡以上と定められていました。
処理基準を満たす必要はあったものの、1,000㎡未満なら設置許可がない土地でも埋め立てすることは合法でした。
ところが行政の目が行き届かず、不法投棄する行為が増加したため、以下の法律によって現在は規制されています。
・法第15条:産業廃棄物の最終処分場を設置する場合、設置前に都道府県知事の許可を受けなければいけない
・法第16条:何人も、正当な理由なく廃棄物を捨ててはいけない
上記の法律によって、自分の土地でも許可が必要となり、たとえ小さな埋立地でも投棄することは違反です。また、埋めずに放置するだけの場合でも「廃棄した」と判断され、不法投棄となるため要注意です。

(3) 地中埋設物としての産業廃棄物
ア MIZUNO HPの「【話題の埋立廃棄物】意外と多い!購入した土地から“廃棄物交じり土“が出てくる」には以下の記載があります。
「土地を掘り返したら廃棄物が出てきた」と聞けば、過去に不法投棄があったのか?と考えてしまいますね。確かに、不法投棄の現場を掘り起こすという可能性もなくはないでしょう。しかし、もっと高確率で遭遇するのは法整備前には合法だった“埋立現場”です。
どういうことかと言いますと、廃棄物を埋め立てる最終処分場を設置する場合には、どんなに小さくてでも設置許可を必要とします。しかしこれは、平成9年に廃棄物処理法が改正されてからのルールです。意外と最近のことです。

実は改正前は、安定型処分場で3000㎡以上、管理型処分場で1000㎡以上が設置許可の対象でした。裏を返せば、これ以下の規模だったら、許可が要らないため、勝手に埋立が出来てしまったのです。
イ 素人さんの為の不動産学校ブログ「地中に産廃が埋設されている土地の売買(No. 2543)」には以下の記載があります。
 昭和の時代は、当たり前に、田んぼにゴミやガラなどを埋めて土をかぶせてあるような土地が多く・・・。
 今回は、農地ですが・・・、昭和40年代~60年代ぐらいに埋め立てがされた雑種地などは、半分以上の確率で、コンクリートガラや、アスファルト、瓦、木材、外壁材、石など、何らか埋まっている土地です。
ウ 地中埋設物の調査方法としては,地歴調査,地中レーダー調査及びボーリング調査があります(スマイティHPの「地中埋設物がある土地の売却でトラブルに?調査方法や撤去費用について解説」参照)。
(3) 廃棄物処理法に関する判例
ア 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令2条4号にいう「不要物」とは,自ら利用し又は他人に有償で譲渡することができないために事業者にとって不要となった物をいい,これに該当するか否かは,その物の性状,排出の状況,通常の取扱い形態,取引価値の有無及び事業者の意思等を総合的に勘案して決することとなっています(最高裁平成11年3月10日決定)。
イ  工場から排出された産業廃棄物を,同工場敷地内に掘られた穴に投入して埋め立てることを前提に,その穴のわきに野積みした行為は,廃棄物の処理及び清掃に関する法律16条違反の罪に当たります(最高裁平成18年2月20日決定)。
ウ  一般廃棄物収集運搬行の許可を受けた業者が,一般廃棄物たるし尿を含む汚泥と産業廃棄物たる汚泥を混合させた廃棄物を,一般廃棄物と装って市のし尿処理施設の受入口から投入した行為は,その混合物全量について,廃棄物の処理及び清掃に関する法律16条違反の罪に当たります(最高裁平成18年2月28日決定)。
エ 最高裁平成26年7月29日判決は,産業廃棄物の最終処分場の周辺住民が産業廃棄物処分業及び特別管理産業廃棄物処分業の許可処分の無効確認訴訟並びに上記各処分業の許可更新処分の取消訴訟の原告適格を有するとされた事例です。
(4) 残置物の処理等に関するモデル契約条項
・ 国土交通省HPの「残置物の処理等に関するモデル契約条項」には以下の記載があります。
 近時、高齢者の単身世帯が増加している中、民間賃貸住宅等においては、相続人の有無や所在が明らかでない単身者が死亡した際の賃貸借契約の解除や居室内に残された動産(残置物)の処理への不安感から、高齢者の入居の申込みを賃貸人が拒否することがあります。
 このような不安感を払拭し、単身の高齢者の居住の安定確保を図る観点から、単身の高齢者が死亡した際に契約関係及び残置物を円滑に処理できるように、今般、国土交通省及び法務省において、賃借人と受任者との間で締結する賃貸借契約の解除及び残置物の処理を内容とした死後事務委任契約等に係る「残置物の処理等に関するモデル契約条項」を策定しました。
 モデル契約条項は、その使用が法令で義務づけられているものではありませんが、モデル契約条項を利用することにより、合理的な死後事務委任契約等が締結され、ひいては、単身の高齢者の居住の安定確保が図られることを期待し、広く普及に努めています。
(5) その他
・ 大阪市HPに「品目別収集区分一覧表(50音順)」が載っています。

14の2 家電リサイクル等に関するメモ書き
(1) 平成25年4月1日に小型家電リサイクル法が施行され,一部の家電量販店などでもパソコンの回収を行うようになりました(パソコン3R推進協会HP「小型家電リサイクル法によるパソコンの回収」参照)。
(2) リネットジャパンHPに「パソコンのデータ消去について」及び「携帯電話・スマートフォンのデータ消去について」が載っていますところ,同社の「おまかせ安心データ消去サービス」を利用すれば,1台3300円でデータを消去してくれるみたいです。
(3) 株式会社オーミヤHP「RoHS指令(ローズ指令)とは?誰でも分かるRoHS【2022年最新版】」には以下の記載があります。
RoHSとは「Restriction of the use of certain Hazardous Substances in electrical and electronic equipment」の略称。
日本語で直訳すると、Restriction of the use of certain = 「使用制限」。Hazardous Substances = 「有害な物質」。In elextrical and electronic equipment = 「電気・電子機器の中の」となり、「電気・電子機器における特定有害物質の使用制限」のこととなります。
翻訳からもわかる通り、日本で考えられたものではないため、日本と同等に適切な処分、リサイクルが進んでいれば、そこまで厳しい制限が必要かという物質の制限も多く見られます。


15 農地法に関するメモ書き
(1) 農地転用許可制度の合憲性
・ 農地法4条1項は,農地を農地以外のものにするには,原則として都道府県知事等の許可を受けなければならないとし,農地法5条1項は,農地以外のものにするため農地について権利を設定し,移転するには,原則として都道府県知事等の許可を受けなければならないとしていますところ,これらの定めは憲法29条に違反しません(最高裁平成14年4月5日判決)。
(2) 農地の売買
ア 知事の許可を得ることを条件として農地の売買契約をしたとしても、いわゆる停止条件を付したものということはできません(最高裁昭和42年10月27日判決(判例秘書に掲載)。なお,先例として,最高裁昭和36年5月26日判決)。
イ 農地法の趣旨は,耕作者の地位の安定や農業生産の増大を図るという点にあり,これに違反することが直ちに公序良俗に反するとまではいえない上,農地法が適用されるのは農地であり,農地であるか否かはその土地の現況によって判断されるところ,農地の売買契約締結後に当該土地が非農地化した場合,農地法所定の許可なくして所有権移転の効力が生ずる可能性があります(最高裁令和4年4月18日判決。なお,先例として,最高裁昭和42年10月27日判決(判例秘書に掲載),最高裁昭和44年10月31日判決(判例秘書に掲載)及び最高裁昭和52年2月17日判決)。
(3) 地目変更
・ Earthcom「農地転用と地目変更の違いは?それぞれの内容と関係性、方法も詳しく!」には以下の記載があります。
    地目を変更するためには、地目を変更してから1ヶ月以内に地目変更登記をする必要があります。
    地目変更登記は、農地転用許可を経て、必要書類を添付して法務局で地目変更の手続きを行います。
    農地転用許可が済んでいなければ地目変更登記はできません。
(4) その他
・ 農林水産省HPに「農地制度」,及び「スマート農業の展開について」(2021年9月の農林水産省の文書)が載っています。
・ アンモニア製品は窒素質肥料となったり,工業用に用いられたりしています(日本肥料アンモニア協会HPの「アンモニアのご紹介」参照)。
・ JA静岡経済連HPの「田んぼのしくみ」には「田んぼの下の土壌は、『作土層(さくどそう)』『鋤床層(すきどこそう)』に分けられます。『作土層』は稲を植えるために耕された土で、その下の『鋤床層』は土をつき固めて作られた、水を通しにくい層で水を貯める働きをします。」と書いてあります。

15の2 市街化調整区域に関するメモ書き
(1) 分家住宅というのは,原則として建築物の建築が禁じられている市街化調整区域において,線引きの日前から引き続き現在に至るまで生活の本拠を構えている本家から世帯が分かれて,分家としての世帯が新たに必要とする住宅のことをいいますところ,「世帯構成員の住宅」ともいいます(福岡市HPの「分家住宅とは何か。(都市計画法第34条第12号)」参照)。
(2) 不動産SHOPナカジツHPの「市街化調整区域で建築許可がほしい!おさえておきたいポイントとは」には「市街化調整区域に既にある中古の住宅、つまり既存宅地を購入し、建て替え、リノベーションを行う際にも注意が必要です。既に建物が建っているからといって、建て替えを行う場合に許可を受けなければならないのです。」と書いてあります。

16 私力の行使及び刃物携帯の禁止
(1) 私力の行使
ア 私力の行使は,原則として法の禁止するところであるものの,法律に定める手続によったのでは,権利に対する違法な侵害に対抗して現状を維持することが不可能又は著しく困難であると認められる緊急やむを得ない特別の事情が存する場合においてのみ,その必要の限度を超えない範囲内で,例外的に許されるに過ぎません(最高裁昭和40年12月7日判決)。
イ ヤフーニュースに「横浜地裁に放置駐車してレッカー移動された車が話題 私有地だとどうなる?」が載っています。
(2) 刃物携帯の禁止
ア 銃刀法22条本文は「何人も、業務その他正当な理由による場合を除いては、内閣府令で定めるところにより計つた刃体の長さが六センチメートルをこえる刃物を携帯してはならない。」と定めています。
イ 鹿児島県警察HP「正当な理由なく刃物を携帯するのはやめましょう」には「正当な理由なく刃物を携帯するのはやめましょう」として以下の記載があります。
     銃砲刀剣類所持等取締法では,刃体の長さが6センチメートルをこえる刃物について「何人も,業務その他正当な理由による場合を除いては,これを携帯してはならない」と定めています。
     ただし,刃体の長さが8センチメートル以下のはさみ又は折りたたみ式のナイフ等で,刃体の先端部が著しく鋭くなく,かつ,刃が鋭利でないもの等は除かれます。
【業務その他正当な理由による場合】
     業務~調理人が仕事へ行くため包丁を持って行く場合など
正当な理由~社会通念上,その刃物を携帯することが当然に認められる場合であり,購入して自宅に持ち帰る場合など
イ(ア) 「正当な理由がなくて刃物、鉄棒その他人の生命を害し、又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具を隠して携帯していた者」は拘留又は科料に処せられます(軽犯罪法1条2号)。
(イ) 軽犯罪法1条2号にいう「正当な理由」があるとは,同号所定の器具を隠して携帯することが,職務上又は日常生活上の必要性から,社会通念上,相当と認められる場合をいい,これに該当するか否かは,当該器具の用途や形状・性能,隠匿携帯した者の職業や日常生活との関係,隠匿携帯の日時・場所,態様及び周囲の状況等の客観的要素と,隠匿携帯の動機,目的,認識等の主観的要素とを総合的に勘案して判断すべきである(最高裁平成21年3月26日判決)。


17 耐震基準等に関するメモ書き
(1) 昭和46年の建築基準法改正により,排煙設備,非常用の照明装置及び非常用の進入口等の設置が義務化され,昭和56年の建築基準法改正により新耐震基準が導入されました(住宅サポート建築研究所HP「建築基準法の変遷」参照)。
(2) 非常用侵入口は,火事などの災害時に,外部から消防隊が進入するための開口部やバルコニー(足場)などの総称であって,建築基準法施行令126条の6で定められています(確認申請ナビ「『非常用進入口』とは|建築基準法における設置基準・免除方法を解説」参照)。
(3) 最高裁平成25年3月26日判決は,一級建築士により構造計算書に偽装が行われていた建築物の計画についての建築主事による建築確認が国家賠償法1条1項の適用上違法となるとはいえないとされた事例です。
(4) 民法717条1項に基づく土地の工作物の設置又は保存の瑕疵とは,当該工作物が通常有すべき安全性を欠いていることをいいます(最高裁平成25年7月12日判決)。


18 排水管に関するメモ書き
(1) モノタロウHPに「6-6 配管工事トラブルクレーム:給排水衛生設備編」が載っています。
(2) 水道修理のせーフリーHP「汚水桝とは何?仕組み・構造や排水桝との違い・掃除方法を紹介!」が載っています。
(3) HLS水道サービスHP「排水管・下水管のつまりと溢れの原因と修理」が載っています。

18の2 下水道に関するメモ書き
(1) 合流式下水道は,汚水と雨水を一本の管渠で集水するため,汚水排除と雨水排除を早く経済的に実施できるため,古くから下水道整備を進めてきた大都市を中心に採用されてきたのであって,大阪市の場合,市域の97%が合流式下水道で整備されています(大阪市HPの「大阪市公共下水道事業 (合流式下水道改善事業)」参照)。
(2)ア 厨房から出る排水に含まれる油やゴミ(野菜くずや残飯など)を直接下水道に流してしまうと,自然環境への悪影響が考えられ,それを防止するために作られたのがグリス(油脂)トラップ(せき止め)です(アイエスジーHPの「グリストラップ(グリーストラップ)とは?」参照)。
イ 埼玉県川口市HPに「下水道に食用油やラードなどを流し続けると管が詰まります」が載っています。

19 空き家に関するメモ書き
(1) 空家等対策特別措置法は平成27年2月26日に施行されました(国土交通省HPの「空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報」参照)。
(2) 京都市では,令和8年1月から非居住住宅利活用促進税を導入することを検討しています(京都市情報館HPの「非居住住宅利活用促進税の導入に向けた取組について」参照)。

20 関連記事その他
(1)ア 国土交通省HPの「都市計画制度の概要」に,都市計画法制,土地利用計画制度等に関する資料が載っています。
イ 宅建業法に関する国土交通省の考え方は,国土交通省HPの「宅地建物取引業法 法令改正・解釈について」に載っています。
(2) 山梨県北杜市HP「太陽光発電システムを設置した住宅火災における消火活動の留意点について」が載っています。
(3) 二弁フロンティア2021年4月号「建築紛争処理の実務」が載っています。
(4)  建物の借主が該建物を含む貸主所有の不動産に賦課された固定資産税等の公租公課の支払を負担するといった事実があるとしても,右負担が建物の使用収益に対する対価の意味をもつものと認めるに足りる特段の事情のないかぎり,当該貸借関係は使用貸借となります(最高裁昭和41年10月27日判決)。
(5)  最高裁令和5年10月16日決定は,個人として免許を受けないで宅地建物取引業を営んだという訴因と、法人の代表者として法人の業務に関し免許を受けないで宅地建物取引業を営んだという訴因との間に公訴事実の同一性が認められた事例です。
(6) 以下の記事も参照してください。
・ 家賃相場・土地価格相場等の情報
・ 借地権に関するメモ書き
・ 私道に関するメモ書き

会社法等に関する最高裁判例

目次
第1 会社法等に関する最高裁判例(裁判所HPに掲載されているもの)
◯株券の発行関係
◯共有株式関係
◯株式の買取請求関係
◯株式有利関係
◯株式の譲渡関係
◯株主権関係
◯株主総会関係
◯営業譲渡関係
◯取締役会関係
◯取締役の責任関係
◯役員報酬関係
◯役員退職慰労金関係
◯監査役関係
◯会計帳簿等の閲覧謄写
◯会社の解散関係
◯所得税法関係
◯法人税関係
◯相続税法関係
◯金融商品取引法関係
◯民事訴訟法関係
◯刑事事件関係
第2 会社法に関する書籍のメモ書き
第3 会社法に関する論文のメモ書き

第4 株主総会に関するメモ書き
第5 取締役に関するメモ書き
第6 
関連記事その他

第1 会社法等に関する最高裁判例(裁判所HPに掲載されているもの)
◯株券の発行関係
・ 株券の発行前にした株券発行会社の株式の譲渡は、譲渡当事者間においては,当該株式に係る株券の交付がないことをもってその効力が否定されることはありません(最高裁令和6年4月19日判決)。
・ 株券発行会社の株式の譲受人は、譲渡人に対する株券交付請求権を保全する必要があるときは、民法423条1項本文により、譲渡人の株券発行会社に対する株券発行請求権を代位行使することができます(最高裁令和6年4月19日判決)。
◯共有株式関係
・ 株式を相続により準共有するに至った共同相続人は,商法203条2項にいう「株主ノ権利ヲ行使スベキ者」の指定及びその旨の会社に対する通知を欠く場合には,特段の事情がない限り,株主総会決議不存在確認の訴えにつき原告適格を有しません(最高裁平成2年12月4日判決)。
・ 株式を相続により準共有するに至った共同相続人は,商法203条2項にいう「株主ノ権利ヲ行使スベキ者」の指定及びその旨の会社に対する通知を欠く場合には,特段の事情がない限り,合併無効の訴えにつき原告適格を有しません(最高裁平成3年2月19日判決)。
・  有限会社の持分が数人の共有に属する場合,有限会社法22条,商法203条2項にいう社員の権利を行使すべき者は,その共有持分の価格に従い過半数をもって定めます(最高裁平成9年1月28日判決のほか,令和5年4月1日以降の民法252条第1項)。
・ 共同相続された株式は,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはありません(最高裁平成26年2月25日判決。なお,先例として,最高裁昭和45年1月22日判決参照)。
・ 共有に属する株式について会社法106条本文の規定に基づく指定及び通知を欠いたまま当該株式についての権利が行使された場合において,当該権利の行使が民法の共有に関する規定に従ったものでないときは,株式会社が同条ただし書の同意をしても,当該権利の行使は,適法となるものではありません(最高裁平成27年2月19日判決)。

◯株式の買取請求関係
(「公正な価格」関係)
・  会社法782条1項所定の吸収合併等によりシナジー(組織再編による相乗効果)その他の企業価値の増加が生じない場合に,同項所定の消滅株式会社等の反対株主がした株式買取請求に係る「公正な価格」は,原則として,当該株式買取請求がされた日における,吸収合併契約等を承認する旨の株主総会の決議がされることがなければその株式が有したであろう価格をいいます(最高裁平成23年4月19日決定及び最高裁平成23年4月26日決定)。
・ 株式移転完全子会社の反対株主がした株式買取請求に係る「公正な価格」は,原則として,株式移転により組織再編による相乗効果その他の企業価値の増加が生じない場合には,当該株式買取請求がされた日における,株式移転を承認する旨の株主総会決議がされることがなければその株式が有したであろう価格をいうが,それ以外の場合には,株式移転計画において定められていた株式移転設立完全親会社の株式等の割当てに関する比率が公正なものであったならば当該株式買取請求がされた日においてその株式が有していると認められる価格をいいます(最高裁平成24年2月29日決定)。
・  非上場会社において会社法785条1項に基づく株式買取請求がされ,裁判所が収益還元法を用いて株式の買取価格を決定する場合に,非流動性ディスカウント(当該会社の株式には市場性がないことを理由とする減価)を行うことはできません(最高裁平成27年3月26日決定)。
・ 公開買付けに応募しなかった株主の保有する株式も買付価格と同額で取得する旨が明示されているなど,一般に公正と認められる手続により経営統合の手段たる公開買付けが行われ,その後に買付価格と同額で株式売渡請求がされた場合には,株主が公開買付けに応じるか否かを適切に判断することができる以上,特段の事情がない限り,特別支配株主による株式売渡請求に係る株式の売買価格を買付価格と同額とするのが相当であり,それは非上場株式である場合にも等しく当てはまります(最高裁令和2年3月12日決定によって支持された東京高裁平成31年2月27日決定(判例時報2492号115頁))。
・  最高裁令和5年5月24日決定は,会社法144条2項に基づく譲渡制限株式の売買価格の決定の手続において裁判所が上記売買価格を定める場合に、DCF法によって算定された上記譲渡制限株式の評価額から非流動性ディスカウントを行うことができるとされた事例です。


(その他関係)
・  社債等振替法128条1項所定の振替株式についての会社法172条1項に基づく価格の決定の申立てを受けた会社が,裁判所における株式価格決定申立て事件の審理において,申立人が株主であることを争った場合には,その審理終結までの間に社債等振替法154条3項所定の通知がされることを要します(最高裁平成22年12月7日決定)。
・ 会社法116条1項に基づく株式買取請求をした株主が同請求に係る株式を失った場合は,当該株主は同法117条2項に基づく価格の決定の申立ての適格を欠くに至り,同申立ては不適法になります(最高裁平成24年3月28日決定)。
・ 最高裁平成28年7月1日決定は, 株式会社の株式の相当数を保有する株主が当該株式会社の株式等の公開買付けを行い,その後に当該株式会社の株式を全部取得条項付種類株式とし,当該株式会社が同株式の全部を取得する取引において,上記公開買付けが一般に公正と認められる手続により行われた場合における会社法172条1項にいう「取得の価格」について判断した事例です。
・ 会社法179条の4第1項1号の通知又は同号及び社債,株式等の振替に関する法律161条2項の公告がされた後に会社法179条の2第1項2号に規定する売渡株式を譲り受けた者は,同法179条の8第1項の売買価格の決定の申立てをすることができません(最高裁平成29年8月30日決定)。
・  会社法182条の4第1項に基づき株式の買取請求をした者は,同法182条の5第5項に基づく支払を受けた場合であっても,上記株式の価格につき会社との協議が調い又はその決定に係る裁判が確定するまでは,同法318条4項にいう「債権者」に当たります(最高裁令和3年7月5日判決)。

◯株式の譲渡関係
・ いわゆる一人会社の株主がした株式譲渡は,定款所定の取締役会の承認がなくても,会社に対する関係においても有効です(最高裁平成5年3月30日判決)。
・  定款に株式の譲渡につき取締役会の承認を要する旨の定めのある会社の株式について,会社に対して株式の譲渡を承認すべきこと及びこれを承認しないときは他に譲渡の相手方を指定すべきことを請求した株主は,取締役会から指定された者が株主に対して当該株式を売り渡すべき旨を請求するまで,その請求を撤回することができます(最高裁平成15年2月27日決定)。
・ 最高裁平成21年2月17日判決は, 株式会社の従業員がいわゆる持株会から譲り受けた株式を個人的理由により売却する必要が生じたときは持株会が額面額でこれを買い戻す旨の当該従業員と持株会との間の合意が有効とされた事例です。


◯株式発行関係
・  株式会社を代表する権限のある取締役によって行われた新株の発行は,それが著しく不公正な方法によってされたものであり,かつ,右会社の取締役がその新株を引き受けて現に保有し,右会社が小規模で閉鎖的な会社であるなど原判示の事情がある場合でも,有効です(最高裁平成6年7月14日判決)。
・  非上場会社が株主以外の者に新株を発行するに際し,客観的資料に基づく一応合理的な算定方法によって発行価額が決定されていたといえる場合には,その発行価額は,特別の事情のない限り,商法280条ノ2第2項(会社法199条3項に相当する条文)にいう「特ニ有利ナル発行価額」に当たりません(最高裁平成27年2月19日判決)。

◯株主権関係
・ 株式は,株主たる資格において会社に対して有する法律上の地位を意味し,株主は,株主たる地位に基づいて,剰余金の配当を受ける権利(会社法105条1項1号),残余財産の分配を受ける権利(同項2号)などのいわゆる自益権と,株主総会における議決権(同項3号)などのいわゆる共益権とを有します(最高裁平成26年2月25日判決。なお,先例として最高裁大法廷昭和45年7月15日判決参照)

◯株主総会関係
・ 会社の支配ないし経営の参加の問題は,究極的には株主の手に委ねられています(最高裁昭和42年3月14日判決)。
・ 株式会社において,株主である取締役は,当該取締役の解任に関する株主総会の決議について特別の利害関係を有する者に当たりません(最高裁昭和53年4月14日判決。なお,先例として,最高裁昭和42年3月14日判決)ところ,昭和56年の商法改正により,特別利害関係人となる株主であっても株主総会において議決権行使できることとなり,当該議決権行使によって著しく不当な決議がなされたことが決議取消事由となるにすぎないこととなりました(旧商法247条3号)。
・ 株主は,他の株主に対する招集手続のかしを理由として株主総会決議取消の訴を提起することができます(最高裁昭和42年9月28日判決)。
・ 議決権を行使する株主の代理人の資格を当該会社の株主に制限する旨の定款の規定は,有効です(最高裁昭和43年11月1日判決)。
・ 定款により株主総会における議決権行使の代理資格を株主に制限している株式会社において,株主名簿上の株主でない甲に乙名義株式の議決権行使を許容した仮処分がされても,右仮処分は,甲に乙以外の株主の議決権を代理行使する資格を与えるものではありません(最高裁昭和45年1月22日判決)。
・  取締役会の決議を経ることなく,代表取締役以外の取締役によって招集された株主総会は法律上の意義における株主総会とはいえず,そこで決議がなされたとしても,株主総会の決議があったものと解することはできません(最高裁昭和45年8月20日判決)。
・ 株主総会招集の手続が、その招集につき決定の権限を有する取締役会の有効な決議に基づかないでなされたものであるのみならず、その招集の通知が、すべての株主に対して法定の招集期間に二日足りない会日より一二日前になされたものであるときは、右株主総会招集の手続には、右総会の決議の取消請求を裁量棄却することの許されない重大なかしがあります(最高裁昭和46年3月18日判決)。
・ 株式会社が定款で株主総会における議決権行使の代理人の資格を株主に限定している場合においても,株主である地方公共団体,株式会社が,その職制上上司の命令に服する義務を負い,議決権の代理行使にあたつて法人の代表者の意図に反することができないようになつている職員又は従業員に議決権を代理行使させることは,右定款の規定に反しません(最高裁昭和51年12月24日判決)。
・ 株主総会決議取消の訴において,商法248条1項所定の期間経過後に新たな取消事由を追加主張することは,許されません(最高裁昭和51年12月24日判決)。
・  2700株の株主に対する株主総会の招集通知に法定の招集期間より6日足りない瑕疵がある場合であつても,右株主に対しては代表取締役があらかじめ総会の議題を話しており,右株主も総会が右株主の住居と同一建物内で開催されることを熟知しながら意識的に出席を拒否したものであり,かつ,他の7300株の株主全員が出席して全会一致で解散の決議をしたなどといった事情のもとにおいては,決議取消請求を棄却するのが相当です(最高裁昭和55年6月16日判決)。
・  取締役に選任する旨の株主総会の決議が不存在である場合に,その者を構成員の一員とする取締役会で選任された代表取締役が,その取締役会の招集決定に基づき招集した株主総会において取締役を選任する旨の決議がされたときは,右決議は,いわゆる全員出席総会においてされたなど特段の事情がない限り,不存在です(最高裁平成2年4月17日判決)。
・  取締役等を選任する甲株主総会決議の不存在確認請求に、同決議が存在しないことを理由とする後任取締役等の選任に係る乙株主総会決議の不存在確認請求が併合されている場合には,後の決議がいわゆる全員出席総会において行われたなどの特段の事情のない限り,先の決議についても存否の確認の利益が認められます(最高裁平成11年3月25日判決)。
・ 特定の株主による経営支配権の取得に伴い,株式会社の企業価値がき損され,株主の共同の利益が害されることになるか否かについては,株主総会における株主自身の判断の正当性を失わせるような重大な瑕疵が存在しない限り,当該判断が尊重されるべきです(ブルドックソース事件に関する最高裁平成19年8月7日決定)。
・  株式会社の取締役又は監査役の解任又は選任を内容とする株主総会決議不存在確認の訴えの係属中に当該株式会社が破産手続開始の決定を受けても,上記訴訟についての訴えの利益は当然には消滅しません(最高裁平成21年4月17日判決)。
・  ある議案を否決する株主総会等の決議の取消しを請求する訴えは不適法です(最高裁平成28年3月4日判決)。
・  取締役会設置会社である非公開会社における,取締役会の決議によるほか株主総会の決議によっても代表取締役を定めることができる旨の定款の定めは有効です(最高裁平成29年2月21日決定)。
・ 最高裁令和5年10月26日決定は, 吸収合併消滅株式会社の株主が吸収合併をするための株主総会に先立って上記会社に対して委任状を送付したことが会社法785条2項1号イにいう吸収合併等に反対する旨の通知に当たるとされた事例です。


◯営業譲渡関係
・  商法245条1項1号にいう「営業ノ全部又ハ重要ナル一部ノ譲渡」とは,一定の営業の目的のため組織化され,有機的一体として機能する財産の全部又は重要なる一部を譲渡し,これによって,譲渡会社がその財産によって営んでいた営業的活動の全部又は重要な一部を譲受人に受け継がせ,譲渡会社がその譲渡の限度に応じ法律上当然に競業避止業務を負う結果を伴うものをいいます(最高裁大法廷昭和40年9月22日判決)。
・ 商法245条1項1号の営業譲渡契約が譲渡会社の株主総会の特別決議を経ていないことにより無効である場合には,譲受人もまた右の無効を主張することができます(最高裁昭和61年9月11日判決)。
・ 営業の重要な一部を譲渡する旨の株主総会決議がされたが,右営業の譲渡の要領を株主総会の招集通知に記載しなかった違法がある場合には,右違法が重大でないとはいえず,商法251条により右決議の取消請求を棄却することはできません(最高裁平成7年3月9日判決)。

◯取締役会関係
・ 代表取締役が,取締役会の決議を経てすることを要する対外的な個々的取引行為を,右決議を経ないでした場合でも,右取引行為は,内部的意思決定を欠くに止まるから,原則として有効であって,ただ,相手方が右決議を経ていないことを知りまたは知り得べかりしときに限り無効です(最高裁昭和40年9月22日判決)。
・ 代表取締役の解任に関する取締役会の決議については,その代表取締役は,特別利害関係人にあたります(最高裁昭和44年3月28日判決)。
・  会社と取締役間に商法265条(現在の会社法365条1項・356条1項2号)所定の取引がなされる場合でも,右取締役が会社の全株式を所有し,会社の営業が実質上右取締役の個人経営のものにすぎないときは,右取引によって両者の間に実質的に利害相反する関係を生ずるものでなく,右取引については,同条所定の取締役会の承認を必要としません(最高裁昭和45年8月20日判決)。
・  株式会社の代表取締役が取締役会の決議を経ないで重要な業務執行に該当する取引をした場合,当該会社以外の者が取締役会の決議を経ていないことを理由にその無効を主張することは,当該会社の取締役会が上記無効を主張する旨の決議をしているなどの特段の事情がない限り,許されません(最高裁平成21年4月17日判決)。
・ 取締役会が商法280条ノ21第1項に基づく株主総会決議による委任を受けて新株予約権の行使条件を定めた場合において,新株予約権の発行後に上記行使条件を変更することができる旨の明示の委任がないときは,当該新株予約権の発行後に上記行使条件を変更する取締役会決議は,上記行使条件の細目的な変更をするにとどまるものであるときを除き,無効です(最高裁平成24年4月24日判決)。

◯取締役の責任関係
・ 商法266条1項5号にいう「法令」には,取締役を名あて人とし,取締役の受任者としての義務を一般的に定める商法254条3項(民法644条),商法254条ノ3の規定及び取締役がその職務遂行に際して遵守すべき義務を個別的に定める規定のほか,会社を名あて人とし,会社がその業務を行うに際して遵守すべきすべての規定が含まれます(最高裁平成12年7月7日判決)。
・ 有限会社の破産宣告当時に取締役の地位にあった者は,破産宣告によっては取締役の地位を当然には失わず,社員総会の招集等の会社組織に係る行為等については,取締役としての権限を行使し得ると解されるから,火災保険約款所定の「取締役」に該当する(最高裁平成16年6月10日判決)。
・ いわゆる仕手筋として知られるAが,大量に取得したB社の株式を暴力団の関連会社に売却するなどとB社の取締役であるYらを脅迫した場合において,売却を取りやめてもらうためAの要求に応じて約300億円という巨額の金員を融資金の名目で交付することを提案し又はこれに同意したYらの忠実義務,善管注意義務違反が問われた行為について,Aの言動に対して警察に届け出るなどの適切な対応をすることが期待できないような状況にあったということはできないという事情の下では,やむを得なかったものとしてその過失を否定することはできません(最高裁平成18年4月10日判決)。
・ 最高裁平成20年1月28日判決は,銀行が,積極的な融資の対象であったが大幅な債務超過となって破たんに直面した企業に対し,同企業を数か月延命させる目的で追加融資を実行した場合において,追加融資を決定した取締役らに忠実義務,善管注意義務違反があるとされた事例です。
・  株主代表訴訟の対象となる商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)267条1項にいう「取締役ノ責任」には,同法266条1項各号所定の責任など同法が取締役の地位に基づいて取締役に負わせている責任のほか,取締役が会社との取引によって負担することになった債務についての責任も含まれます(最高裁平成21年3月10日判決)。
・ 最高裁平成21年7月9日判決は,株式会社の従業員らが営業成績を上げる目的で架空の売上げを計上したため有価証券報告書に不実の記載がされ,株主が損害を被ったことにつき,会社の代表者に従業員らによる架空売上げの計上を防止するためのリスク管理体制構築義務違反の過失がないとされた事例です。
・ 最高裁平成21年11月27日判決は,A銀行が,県から要請を受け,県において再建資金の融資を計画していたB社に対し,上記融資が実行されるまでのつなぎ融資をした後に,B社に追加融資をしてもその回収を容易に見込めない一方で,これをしなければB社が破綻,倒産する可能性が高く,上記つなぎ融資まで回収不能となるおそれがある状況の下で,B社に対して追加融資をした場合において,その追加融資の一部につき,これを決定したA銀行の取締役らに善管注意義務違反があるとされた事例です。
・ アパマンショップホールディングス株主代表訴訟事件に関する最高裁平成22年7月15日判決は,A社が事業再編計画の一環としてB社の株式を任意の合意に基づき買い取る場合において,A社の取締役に上記株式の買取価格の決定について善管注意義務違反はないとされた事例でありますところ,弁護士の意見も聴取したことが取締役の善管注意義務違反を否定する事情の一つとなりました。


◯役員報酬関係
・  取締役の報酬額には使用人兼務取締役の使用人分給与は含まれない旨を明示して取締役全員の報酬総額を改訂する株主総会決議がされた場合において,少なくとも使用人として受ける給与の体系が明確に確立されており,かつ,使用人として受ける給与がそれにより支給されている限り,右株主総会決議は,商法269条(現在の会社法361条)に違反せず,また,同条の脱法行為に当たりません(最高裁昭和60年3月26日判決)。
・ 株主総会の決議を経ずに支払われた役員報酬について事後に株主総会の決議を経た場合には,当該決議の内容等に照らして商法269条及び商法279条1項の規定の趣旨目的を没却するような特段の事情があると認められない限り,当該役員報酬の支払は株主総会の決議に基づく適法有効なものになります(最高裁平成17年2月15日判決)。


◯役員退職慰労金関係
・  株式会社の役員であった者に対する退職慰労金について,株主総会の決議により,その金額などの決定をすべて無条件に取締役会に一任することは許されないというべきであるが,これと異なり,株主総会の決議において,明示的もしくは黙示的に,その支給に関する基準を示し,具体的な金額,支払期日,支払方法などは右基準によつて定めるべきものとして,その決定を取締役会に任せることは差しつかえなく,かような決議をもって無効と解すべきではありません(最高裁昭和44年10月28日判決。なお,先例として,最高裁昭和39年12月11日判決参照)。
・  役員退職慰労金贈呈の株主総会決議取消しの訴えの係属中,右決議と同一の内容を持ち,右決議の取消判決が確定した場合にはさかのぼって効力を生ずるものとされている決議が有効に成立し,それが確定したときは,特別の事情がない限り,右決議取消しの訴えの利益は,失われます(最高裁平成4年10月29日判決)。
・ 最高裁平成19年11月16日判決は, 会社の執行役員を退任した者が会社に対し退職慰労金の支払を請求することができないとされた事例です。
・  最高裁平成21年12月18日判決は,株式会社が株主総会の決議等を経ることなく退任取締役に支給された退職慰労金相当額の金員につき不当利得返還請求をすることが信義則に反せず権利の濫用に当たらないとした原審の判断に違法があるとされた事例です。
・  株主総会の決議を経て,役員に対する退職慰労金の算定基準等を定める会社の内規に従い支給されることとなった会社法361条1項にいう取締役の報酬等に当たる退職慰労年金について,退任取締役相互間の公平を図るため集団的,画一的な処理が制度上要請されているという理由のみから,上記内規の廃止の効力を既に退任した取締役に及ぼし,その同意なく未支給の退職慰労年金債権を失わせることはできません(最高裁平成22年3月16日判決)。
・ 最高裁令和6年7月8日判決は,退任取締役の退職慰労金について株主総会決議による委任を受けた取締役会がした,内規の定める基準額から大幅に減額した額を支給する旨の決議に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとはいえないとされた事例です。

◯監査役関係
・  監査の範囲が会計に関するものに限定されている監査役は,計算書類及びその附属明細書の監査を行うに当たり,会計帳簿が信頼性を欠くものであることが明らかでない場合であっても,当該計算書類等に表示された情報が会計帳簿の内容に合致していることを確認しさえすれば,常にその任務を尽くしたといえるものではありません(最高裁令和3年7月19日判決)。

◯会計帳簿等の閲覧謄写
・ 商法293条ノ6の規定に基づく会計帳簿等の閲覧謄写請求の理由は,具体的に記載されなければならないが,その記載された請求の理由を基礎付ける事実が存在することを立証する必要はありません(最高裁平成16年7月1日判決)。
◯ 子会社の会計帳簿等の閲覧謄写許可申請をした親会社の株主につき,商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)293条の8第2項が不許可事由として規定する同法293条の7第2号に掲げる事由があるというためには,当該株主が子会社と競業をなす者であるなどの客観的事実が認められれば足り,当該株主に会計帳簿等の閲覧謄写によって知り得る情報を自己の競業に利用するなどの主観的意図があることを要しません(最高裁平成21年1月15日判決)。

◯会社の解散関係
・  株式会社が破産宣告とともに同時破産廃止の決定を受けた場合において,なお残余財産があるときは,従前の取締役が当然に清算人となるものではなく,商法417条1項ただし書の場合を除き,同条2項に則り,利害関係人の請求によつて,裁判所が清算人を選任すべきです(最高裁昭和43年3月15日判決)。
・  清算の結了した株式会社の利害関係人は,商法429条の規定に基づき,同条後段所定の保存者に対し,同条前段所定の帳簿及び重要な資料の閲覧又は謄写の請求をすることはできません(最高裁平成16年10月4日判決)。
・ 株式会社の解散の訴えに係る請求を認容する確定判決の効力を受ける第三者は,上記確定判決に係る訴訟について独立当事者参加の申出をすることによって,上記確定判決に対する再審の訴えの原告適格を有することになります(最高裁平成26年7月10日決定)。



◯所得税法関係
・ 取引相場のない株式の譲渡に係る所得税法59条1項所定の「その時における価額」につき,当該株式の譲受人が財産評価基本通達においてその株主が取得した株式は配当還元価額によって評価するものとされている株主に該当することを理由として,配当還元価額によって評価した額であるとした原審の判断には,同項の解釈適用を誤った違法があります(最高裁令和2年3月24日判決)。

◯法人税関係
・ 最高裁平成18年1月24日判決は,親会社が子会社に新株の有利発行をさせて親会社の保有する子会社株式に表章された資産価値を上記発行を受けた関連会社に移転させたことが親会社の益金の額の計算において法人税法22条2項にいう取引に当たるとされた事例です。
・ 最高裁平成28年2月29日判決は,法人税法132条の2にいう「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」の意義及びその該当性の判断方法について判示した事例です。

◯相続税法関係
・ 最高裁平成23年2月18日判決は,香港に赴任しつつ国内にも相応の日数滞在していた者が,国外財産の贈与を受けた時において,相続税法(平成15年法律第8号による改正前のもの)1条の2第1号所定の贈与税の課税要件である国内(同法の施行地)における住所を有していたとはいえないとされた事例です。

◯証券取引法及び金融商品取引法関係
1 有価証券報告書関係
・ 金融商品取引法21条の2第3項にいう「虚偽記載等に係る記載すべき重要な事項」とは,虚偽記載等のある有価証券報告書等の提出者等を発行者とする有価証券に対する取引所市場の評価の誤りを明らかにするに足りる基本的事実をいいます(最高裁平成24年3月13日判決)。
・ 最高裁平成24年12月21日判決は, 株式会社が,臨時報告書及び有価証券報告書の虚偽記載等の事実の公表をするとともに,同日,再生手続開始の申立てをした場合において,金融商品取引法21条の2第2項の規定により損害の額を算定するに当たり,同条4項又は5項の規定による減額を否定した原審の判断に違法があるとされた事例です。
・ 最高裁令和2年12月22日判決は,有価証券届出書の財務計算に関する書類に係る部分に虚偽記載等がある場合に当該有価証券の募集に係る発行者等と元引受契約を締結した金融商品取引業者等が金融商品取引法21条1項4号の損害賠償責任につき同条2項3号による免責を受けるための要件を判示した事例です。
2 適合性原則及びこれに関連する説明義務関係
・ 証券会社の担当者が,顧客の意向と実情に反して,明らかに過大な危険を伴う取引を積極的に勧誘するなど,適合性の原則から著しく逸脱した証券取引の勧誘をしてこれを行わせたときは,当該行為は不法行為法上も違法となります(最高裁平成17年7月14日判決)。
・ 最高裁平成21年7月16日判決は, 特定の種類の商品先物取引について差玉向かいを行っている商品取引員が,専門的な知識を有しない委託者との間で締結した商品先物取引委託契約上,委託者に対して負う説明義務及び通知義務について判示した事例です。
・ 最高裁平成25年3月7日判決及び最高裁平成25年3月26日判決は,銀行と顧客との間で固定金利と変動金利を交換してその差額を決済するという金利スワップ取引に係る契約を締結した際に銀行に説明義務違反があったとはいえないとされた事例です。
・ 最高裁平成28年3月15日判決は, 顧客が証券会社の販売する仕組債を運用対象金融資産とする信託契約を含む一連の取引を行った際に証券会社に説明義務違反があったとはいえないとされた事例です。
3 その他
・  証券取引法施行令(平成18年政令第377号による改正前のもの)7条5項4号,発行者以外の者による株券等の公開買付けの開示に関する内閣府令(平成18年内閣府令第86号による改正前のもの)3条の2の4第1項及び第2項所定の「株券等」には,特定買付け等(同施行令7条5項にいうもの)の対象とならない株券等は含まれません(最高裁平成22年10月22日判決)。

◯民事訴訟法関係
・  取締役会の意思決定が違法であるとして取締役に対し提起された株主代表訴訟において,株式会社は,特段の事情がない限り,取締役を補助するため訴訟に参加することが許されます(最高裁平成13年1月30日決定)。
・  甲が提起した株主代表訴訟において,控訴審の第1回口頭弁論期日後に乙がした商法268条2項による参加の申出が,甲の第1審における不適切な訴訟追行を是正するためであって,遅きに失したとまではいえないこと,乙の参加の申出を許したとしても相当期間にわたる審理を要するものではないことなどといった事情の下においては,乙の参加は本件訴訟を不当に遅延させるものとはいえません(最高裁平成14年1月22日判決)。

◯刑事事件関係
1 証券取引法及び金融商品取引法違反関係
・  最高裁平成20年7月18日判決は,旧株式会社日本長期信用銀行の平成10年3月期に係る有価証券報告書の提出及び配当に関する決算処理につき,これまで「公正ナル会計慣行」として行われていた税法基準の考え方によったことが違法とはいえないとして,同銀行の頭取らに対する虚偽記載有価証券報告書提出罪及び違法配当罪の成立が否定された事例です。
・  最高裁平成21年12月7日判決は,旧株式会社日本債券信用銀行の平成10年3月期の決算処理における支援先等に対する貸出金の査定に関して,これまで「公正ナル会計慣行」として行われていた税法基準の考え方によることも許容されるとして,資産査定通達等によって補充される平成9年7月31日改正後の決算経理基準を唯一の基準とした原判決が破棄された事例です。
・ 最高裁平成22年5月31日決定は, 虚偽記載半期報告書提出罪及び虚偽記載有価証券報告書提出罪について,当該会社と会計監査契約を締結していた監査法人に所属する公認会計士に会社代表取締役らとの各共同正犯の成立を認めた原判断が是認された事例です。
・  証券取引法(平成18年法律第65号による改正前のもの)167条2項にいう「公開買付け等を行うことについての決定」をしたというためには,同項にいう「業務執行を決定する機関」において,公開買付け等の実現を意図して,公開買付け等又はそれに向けた作業等を会社の業務として行う旨の決定がされれば足り,公開買付け等の実現可能性があることが具体的に認められることは要しません(最高裁平成23年6月6日決定)。
・ 金融商品取引法166条1項1号にいう「役員,代理人,使用人その他の従業者」とは,上場会社等の役員,代理人,使用人のほか,現実に当該上場会社等の業務に従事している者を意味し,当該上場会社等との委任,雇用契約等に基づいて職務に従事する義務の有無や形式上の地位・呼称のいかんを問いません(最高裁平成27年4月8日決定)。
2 特別背任罪関係
・  甲社の絵画等購入担当者である乙らが,丙の依頼を受けて,甲社をして丙が支配する丁社から多数の絵画等を著しく不当な高額で購入させ,甲社に損害を生じさせた場合において,その取引の中心となった甲と丙の間に,それぞれが支配する会社の経営がひっ迫した状況にある中,互いに無担保で数十億円単位の融資をし合い,各支配に係る会社を維持していた関係があり,丙がそのような関係を利用して前記絵画等の取引を成立させたとみることができるなど判示の事情の下では,丙は,乙らの特別背任行為について共同加功をしたということができます(最高裁平成17年10月7日決定)。
・  銀行がした融資に係る頭取らの特別背任行為につき,当該融資の申込みをしたにとどまらず,融資の前提となるスキーム(判文参照)を頭取らに提案してこれに沿った行動を取り,同融資の担保となる物件の担保価値を大幅に水増しした不動産鑑定書を作らせるなどして,同融資の実現に積極的に加担した融資先会社の実質的経営者は,上記特別背任行為に共同加功をしたということができます(最高裁平成20年5月19日決定)。
3 公正証書原本不実記載罪関係
・ 定款に株式譲渡制限の定めのある非上場会社の一人株主が,その全株式を同社の債務の担保のため譲渡担保に供した後に,同社の役員の解任及び選任等の株式会社変更登記申請を債権者の関与なく行い,同社の商業登記簿の原本にその旨記載させた行為は,上記譲渡担保の契約当事者の合理的な意思解釈として,株主共益権を債権者に帰属させる旨の合意があったものと認められるといった事情の下では,公正証書原本不実記載罪に当たります(最高裁平成17年11月15日判決)。
・  甲社の増資の際,新株の引受人である乙社が,甲社から丙社,丙社から乙社へと順次融資により移動した甲社の資金により新株の払込みをし,上記融資により甲社が取得した丙社に対する債権が丙社との合意などから甲社の実質的な資産と評価することができないなど判示の事情の下においては,上記払込みは無効であり,甲社の商業登記簿の原本である電磁的記録に上記増資の記録をさせた行為は,電磁的公正証書原本不実記録罪に当たります(最高裁平成17年12月13日決定)。
4 その他関係
・ 被告人は,その権限がないのに,A株式会社臨時株主総会議事録及び同社取締役会議事録をそれぞれ議長取締役と表示して作成し,さらに,株式会社変更登記申請書をA株式会社代表取締役と表示して作成しており,このような場合,各文書の作成名義人は,A株式会社臨時株主総会,同社取締役会,あるいは同社と解するのが相当です(最高裁平成16年10月18日決定)。


第2 会社法に関する書籍のメモ書き
1 ビジネス法務相談室HP「【ひな形あり】株主総会の開催時期と招集方法」が載っています。
2 別冊商事法務では毎年,以下の書籍が出ています。
・ 事業報告記載事項の分析
・ 招集通知・議案の記載事例
・ 株主総会想定問答集
・ バーチャル株主総会の実施事例
・ コードに対応したコーポレート・ガバナンス報告書の記載事例の分析
・ 株主総会日程
・ 株主総会白書
・ 機関投資家の議決権行使方針及び結果の分析
・ 東証一部上場会社の役員報酬設計


第3 会社法に関する論文のメモ書き
・ 54期の丹下将克,60期の内林尚久及び66期の伊藤圭子は,判例タイムズ1506号(2023年5月号)に「株式会社の役員の解任の訴えをめぐる諸問題」を寄稿しています。
・ 56期の西山渉,57期の足立拓人及び68期の本村理絵は,判例タイムズ1496号(2022年7月号)に「取締役の不当解任を理由とする損害賠償請求の訴えをめぐる諸問題」を寄稿しています。


第4 株主総会に関するメモ書き
・ 経済産業省HPの「株主総会運営に係るQ&A」には以下のQ&Aが載っています。
Q6.新型コロナウイルス感染症については、令和5年5月8日から、感染症法上の位置づけが新型インフルエンザ等感染症から5類感染症に変更される予定とのことですが、Q1~Q5で示された考え方はなおも妥当しますか。(令和5年3月30日追加)」への回答が載っています。
(A)
 Q1~Q5は、新型コロナウイルス感染症が拡大し、関係者の健康や安全の確保を特に重視した対応が求められるという特殊な状況下で、株主総会が開催される場合に想定される事項についての一般的な考え方を整理したものです。
 新型コロナウイルス感染症拡大防止を理由としてQ1~Q5で掲げられた各措置をとることが直ちに否定されるものではありませんが、かかる措置をとることが許容されるか否かは、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが変更される予定であるように、新型コロナウイルスの感染状況や対策の在り方等が昨今変化していることを踏まえながら、関係者の健康や安全の確保及び株主の権利にも十分に留意しつつ、事案ごとに個別的に判断されることになると考えます。


第5 取締役に関するメモ書き
1 裁判例

(1) 東京地裁令和2年3月24日判決は以下の判示をしています(リンク先9頁)。
法人税法施行令70条2号は,役員退職給与適正額の算定に当たって「退職の事情」を考慮すべきことを明文で定めており,本件のような辞任(会社法330条,民法651条1項)の場合と株主総会による決議を要する解任(会社法339条5 1項)の場合とでは,退職の事情が異なると認められる上,一般に,解任手続が採られた場合に,役員退職給与が支給されないか又は役員退職給与の額が支給規程の定めにより算出された額よりも減額されることがあることは,当裁判所に顕著である。
(2)ア 東京地裁令和4年3月23日判決(判例体系に掲載)は「殊に、被告は弁護士の資格を有しており、これを前提に原告の取締役に就任した(原告代表者、被告本人)のであるから、被告の原告の取締役としての上記善管注意義務については高度のものが求められていたものというべきである。」と判示していますところ,控訴審としての東京高裁令和4年9月15日判決(判例体系に掲載)は控訴を棄却しました。
イ ビジネス法務の部屋ブログに「弁護士資格を有する取締役であるがゆえに高度な善管注意義務あり、との裁判例」が載っています。
2 その他
(1)ア 経済産業省HPの「「社外取締役の在り方に関する実務指針」を策定しました」「社外取締役の在り方に関する実務指針(社外取締役ガイドライン)」が載っています。
イ 日本取引所グループHPの「社外取締役向けリーフレット「社外取締役のことはじめ」の公表について」「社外取締役向けリーフレット「社外取締役のことはじめ」」が載っています。
(2) 国税不服審判所HPに「役員報酬」「役員賞与」「役員退職給与」等が載っています。
(3) 使用人から執行役員への就任に伴い退職手当等として支給される一時金のうちの一定のものは退職所得に該当します(所得税基本通達30-2の2参照)。


第6 関連記事その他
1 旧商法時代,破産者は株式会社の取締役たる地位を相容れないと考えられていた(最高裁昭和42年3月9日判決)ものの,平成18年5月1日施行の会社法では,復権前の破産者であっても株式会社の取締役になることができます。
2(1) 平成19年9月30日,証券取引法は金融商品取引法に題名が変わりました。
(2) 最高裁平成25年3月7日判決は, 銀行と顧客との間で固定金利と変動金利を交換してその差額を決済するという金利スワップ取引に係る契約を締結した際に銀行に説明義務違反があったとはいえないとされた事例です。
(3)  医療法人の社員が一般法人法37条2項の類推適用により裁判所の許可を得て社員総会を招集することはできません(最高裁令和6年3月27日決定)。
3(1) 東京地裁HPに「訴訟事件について-会社訴訟チェックリスト」が載っています。
(2) 日弁連HPに「社外取締役ガイドライン2023年改訂版」が載っています。
4(1) 経済産業省HPに「公正な買収の在り方に関する研究会」(令和4年11月18日初会合),及び「公正なM&Aに関するルール形成について」が載っています。
(2) 弁護士法人ベンチャーサポート法律事務所HP「有限会社を休眠会社として放置するメリット・デメリット|みなし解散制度も合わせて解説」が載っています。
(3) 金融庁HPに「インサイダー取引規制に関するQ&A」が載っています。
5(1) 日本公認会計士協会HPに「監査委員会報告第73号「訴訟事件等に係わるリスク管理体制の評価及び弁護士への確認に関する実務指針」の改正について」(平成30年2月19日付)が載っています。
(2) 太陽監査法人HPに「~残高確認の実務~」が載っています。
6 以下の記事も参照してください。
・ 個人事業主の税金,労働保険及び社会保険に関するメモ書き
・ 労働基準法に関するメモ書き
・ 監査役設置会社と取締役との間の訴えにおける会社代表者
・ 上告審から見た書記官事務の留意事項

自動車運送事業の運行管理者等に関するメモ書き

目次
第1 総論
第2 運行管理者試験及び運行管理者指導講習
第3 運行管理者(旅客)
1 運行管理者の選任及び解任
2 運行管理者の選任要件
3 運行管理者の必要人数
4 タクシーの運行管理者の業務
第4 運行管理者(貨物)
1 運行管理者の選任及び解任
2 運行管理者の選任要件
3 運行管理者の必要人数
4 トラックの運行管理者の業務
第5 点呼
1 旅客自動車運送事業の場合
2 貨物自動車運送事業の場合
第6 IT点呼及び遠隔点呼
1 IT点呼
2 遠隔点呼
第7 運行管理者の補助者
第7の2 運行管理制度の強化
第8 運行管理者制度の根拠となる法令及び通達
第9 安全運転管理者制度
第10 タクシーの配車に関するメモ書き
第11 関連記事その他

第1 総論
1 運行管理者とは,道路運送法及び貨物自動車運送事業法に基づき,事業者に代わって事業用自動車の運行の安全を確保するための業務を行なう者をいいます(道路運送法23条及び貨物自動車運送事業法18条)。
2 運行管理者は,①自動車運送の安全運行の確保及び交通事故の防止を図ったり,②事業者と運転者のパイプ役となったり,③絶えず運行管理業務の改善を図ったりします(運行管理者ハンドブック2016・2頁及び3頁参照)。
3 一つの営業所において複数の運行管理者を選任する場合,統括運行管理者を選任する必要があります。

第2 運行管理者試験及び運行管理者指導講習
1 運行管理者試験
(1) 公益財団法人運行管理者試験センターが実施している運行管理者試験(毎年2回実施)には貨物と旅客の2種類がありますところ,出題分野は以下のとおりです。
① 貨物自動運送事業法関係(貨物試験の場合)又は道路運送法関係(旅客試験の場合)
② 道路運送事業法関係
③ 道路交通法関係
④ 労働基準法関係
⑤ その他運行管理者の業務に関し,必要な実務上の知識及び能力
(2) 資格のキャリカレHP「運行管理者試験の合格率や難易度、勉強方法を詳しく解説」が載っています。
2 運行管理者指導講習
・ 自動車事故対策機構(NASVA)では,国土交通大臣の認定を受けて基礎講習,一般講習及び特別講習を開催しておりますところ,運送事業者において選任されている運行管理者は,定期的に一般公衆又は基礎講習を受講することが法令により義務付けられています(自動車事故対策機構HP「運行管理者指導講習の概要」参照)。

第3 運行管理者(旅客)
1 運行管理者の選任及び解任
(1) 一般旅客自動車運送事業者は,事業用自動車の運行の安全の確保に関する業務を行わせるため,営業所ごとに,運行管理者資格者証の交付を受けている者のうちから,運行管理者を選任しなければなりません(道路運送法23条1項,旅客自動車運送事業運輸規則47条の9)。
(2) 運行管理者を選任又は解任した場合,届出事由が発生した日から15日以内に管轄する運輸支局に届け出る必要があります(道路交通法23条3項参照)。
2 運行管理者の選任要件
(1) 運行管理者の選任要件は以下のとおりです(道路運送法23条の2第1項参照)。
① 運行管理者試験に合格した者
② 5年以上の実務経験があり,かつ,その間に一般講習を5回以上修了している者(うち1回は基礎講習を修了していること。)
(2) 平成28年12月1日以降に一般貸切旅客自動車運送事業者(例えば,貸切バスの会社)の運行管理者をするためには運行管理者試験に合格している必要があります(旅客自動車運送事業運輸規則48条の5で定められていないため。)。
3 運行管理者の必要人数
(1) 営業所にある乗合バスが39台以下の場合,又は営業所にあるタクシーが39台以下の場合,運行管理者は1人だけでいいです。
(2) 貸切バスの場合,平成29年12月1日以降については運行管理者は2名以上が必要となります。
4 タクシーの運行管理者の業務
(1) 旅客の運送管理者の職務は道路運送法23条の5及び旅客自動車運送事業運輸規則48条に記載されていますところ,タクシーの運行管理者の業務としては以下のものがあります(タクシー転職応援ナビ「タクシーの運行管理者の仕事内容とは?運行管理者になるための適性や資格取得について解説します」参照)。
① 乗務するドライバーの点呼
② ドライバーの健康状態の把握
③ 勤務シフトの管理
④ 電話対応及び配車手配
⑤ 営業の管理
⑥ 事故対応・クレーム対応
⑦ 接客や安全運転についての指導
⑧ 忘れ物の管理
⑨ 車両の整備、メーターの検査
⑩ 休憩室などの整備、保守管理
(2) 近畿運輸局HP「運行管理者の仕事(バス編)」及び「運行管理者の仕事(タクシー編)」が載っています。

第4 運行管理者(貨物)
1 運行管理者の選任及び解任
(1) 一般旅客自動車運送事業者は,事業用自動車の運行の安全の確保に関する業務を行わせるため,営業所ごとに,運行管理者資格者証の交付を受けている者のうちから,運行管理者を選任しなければなりません(貨物自動車運送事業法18条1項,貨物自動車運送事業輸送安全規則18条)。
(2) 運行管理者を選任又は解任した場合,届出事由が発生した日から7日以内に管轄する運輸支局に届け出る必要があります(貨物自動車運送事業法18条2項参照)。
2 運行管理者の選任要件
・ 運行管理者の選任要件は以下のとおりです(貨物自動車運送事業法19条1項参照)。
① 運行管理者試験に合格した者
② 5年以上の実務経験があり,かつ,その間に一般講習を5回以上修了している者(うち1回は基礎講習を修了していること。)
3 運行管理者の必要人数
・ トラックが29両までの場合,運行管理者は1人だけでです。
4 トラックの運行管理者の業務
・ 貨物の運送管理者の職務は貨物自動車運送事業法22条及び貨物自動車運送事業輸送安全規則20条に記載されていますところ,例えば,以下の業務があります(運送業支援センターHP「トラック運送会社の運行管理者の日常の業務」参照)。
① 乗務員台帳及び乗務員証等の作成
② 運転者の指導監督
③ 事業用自動車の運転者の乗務割の作成
④ 点呼
⑤ 乗務記録(運転日報)の管理
⑥ 事故の記録
⑦ 安全運行の指示
⑧ 休憩・睡眠施設の保守管理


第5 点呼
1 旅客自動車運送事業の場合
(1) 旅客自動車運送事業運輸規則24条(点呼等)1項及び2項は以下のとおりです(1項は乗務前点呼であり,2項は乗務後点呼です。)。
① 旅客自動車運送事業者は、乗務しようとする運転者に対して対面(運行上やむを得ない場合は電話その他の方法。次項において同じ。)により点呼を行い、次の各号に掲げる事項について報告を求め、及び確認を行い、並びに事業用自動車の運行の安全を確保するために必要な指示を与えなければならない。ただし、輸送の安全及び旅客の利便の確保に関する取組が優良であると認められる営業所において、旅客自動車運送事業者が点呼を行う場合にあつては、当該旅客自動車運送事業者は、対面による点呼と同等の効果を有するものとして国土交通大臣が定めた機器による点呼を行うことができる。
一 道路運送車両法(昭和二十六年法律第百八十五号)第四十七条の二第一項及び第二項の規定による点検の実施又はその確認
二 酒気帯びの有無
三 疾病、疲労、睡眠不足その他の理由により安全な運転をすることができないおそれの有無
② 旅客自動車運送事業者は、事業用自動車の乗務を終了した運転者に対して対面により点呼を行い、当該乗務に係る事業用自動車、道路及び運行の状況について報告を求め、並びに酒気帯びの有無について確認を行わなければならない。この場合において、当該運転者が他の運転者と交替した場合にあつては、当該運転者が交替した運転者に対して行つた第五十条第一項第八号の規定による通告についても報告を求めなければならない。ただし、輸送の安全及び旅客の利便の確保に関する取組が優良であると認められる営業所において、旅客自動車運送事業者が点呼を行う場合にあつては、当該旅客自動車運送事業者は、対面による点呼と同等の効果を有するものとして国土交通大臣が定めた機器による点呼を行うことができる。
(2) 旅客自動車運送事業運輸規則の解釈及び運用についてには以下の記載があります(リンク先の13頁及び14頁)。
① 「運行上やむを得ない場合」とは、遠隔地で乗務が開始又は終了するため、乗務前点呼又は乗務後点呼が乗務員が所属する営業所において対面で実施できない場合等をいい、車庫と当該車庫を所管する営業所が離れている場合、早朝・深夜等において点呼執行者が営業所に出勤していない場合等は「運行上やむを得ない場合」には該当しない。
(中略)

また、点呼は営業所において行うことが原則であるが、営業所と車庫が離れている場合等、必要に応じて運行管理者等を車庫へ派遣して点呼を行う等、対面点呼を確実に実施するよう指導すること。
② 「その他の方法」とは、 携帯電話、業務無線等により運転者と直接対話できるものでなければならず、電子メール、FAX等一方的な連絡方法は該当しない。
また、電話その他の方法による点呼を運転中に行ってはならない。
2 貨物自動車運送事業の場合
(1) 貨物自動車運送事業輸送安全規則7条(点呼等)1項及び2項は以下のとおりです(1項は乗務前点呼であり,2項は乗務後点呼です。)。
① 貨物自動車運送事業者は、事業用自動車の乗務を開始しようとする運転者に対し、対面(運行上やむを得ない場合は電話その他の方法。次項において同じ。)により点呼を行い、次に掲げる事項について報告を求め、及び確認を行い、並びに事業用自動車の運行の安全を確保するために必要な指示をしなければならない。ただし、輸送の安全の確保に関する取組が優良であると認められる営業所において、貨物自動車運送事業者が点呼を行う場合にあっては、当該貨物自動車運送事業者は、対面による点呼と同等の効果を有するものとして国土交通大臣が定めた機器による点呼を行うことができる。
一 酒気帯びの有無
二 疾病、疲労、睡眠不足その他の理由により安全な運転をすることができないおそれの有無
三 道路運送車両法(昭和二十六年法律第百八十五号)第四十七条の二第一項及び第二項の規定による点検の実施又はその確認
② 貨物自動車運送事業者は、事業用自動車の乗務を終了した運転者に対し、対面により点呼を行い、当該乗務に係る事業用自動車、道路及び運行の状況並びに他の運転者と交替した場合にあっては第十七条第四号の規定による通告について報告を求め、及び酒気帯びの有無について確認を行わなければならない。ただし、輸送の安全の確保に関する取組が優良であると認められる営業所において、貨物自動車運送事業者が点呼を行う場合にあっては、当該貨物自動車運送事業者は、対面による点呼と同等の効果を有するものとして国土交通大臣が定めた機器による点呼を行うことができる。
(2) 貨物自動車運送事業輸送安全規則の解釈及び運用についてには以下の定めがあります(リンク先の6頁)。
「運行上やむを得ない場合」とは、遠隔地で乗務が開始又は終了するため、乗務前点呼又は乗務後点呼を当該運転者が所属する営業所において対面で実施できない場合等をいい、車庫と営業所が離れている場合及び早朝・深夜等において点呼執行者が営業所に出勤していない場合等は「運行上やむを得ない場合」には該当しない。
なお、当該運転者が所属する営業所以外の当該事業者の営業所で乗務を開始又は終了する場合には、より一層の安全を確保する観点から、当該営業所において当該運転者の酒気帯びの有無、疾病、疲労、睡眠不足等の状況を可能な限り対面
で確認するよう指導すること。
また、点呼は営業所において行うことが原則であるが、営業所と車庫が離れている場合等、必要に応じて運行管理者又は補助者(以下「運行管理者等」という。を車庫へ派遣して点呼を行う等、対面点呼を確実に実施するよう指導すること。

第6 IT点呼及び遠隔点呼
1 IT点呼
(1) 総論
ア IT点呼は,旅客自動車運送事業運輸規則24条1項ただし書及び2項ただし書,並びに貨物自動車運送事業輸送安全規則7条1項ただし書及び2項ただし書に基づいて認められています。
イ inDXsの「IT点呼とは」には以下の記載があります。
    IT点呼とは、自動車運送事業者が安全・適切な運行を行うため義務付けられる「点呼」を、IT機器を通して行うことです。通常、点呼は運行管理者と運転者がその場に居合わせ、対面で行わなければなりません(対面点呼)。これに対し、IT点呼はパソコン・ネットワークシステム・アルコール検知器等の機器を通し、疑似的に対面点呼を行うことを指します。現在は、安全性優良事業所(Gマークを取得した営業所)など一定の条件を満たした営業所で、国土交通省より了承されたIT機器を使った点呼が認められています。
(2) バス事業者及びタクシー事業者
ア 平成30年3月30日,バス事業及びタクシー事業について,一定の要件を満たす優良な営業所の営業所-車庫間でIT機器を用いた点呼が可能になりました(国土交通省 HPの「IT機器を用いた点呼の適用範囲を拡大!!~バス・タクシー事業でもIT点呼が実施可能となります~」参照)。
(3) トラック事業者
ア シンク出版HPの「トラックIT点呼、車庫間でも可能に」には以下の記載があります。
    優良なトラック運送事業者に対しては、2007年(平成19年)より「IT点呼」が導入されていますが、このたび国土交通省は関連通達を改正し、平成30年3月30日からGマークを取得した事業者(営業所)では、車庫間におけるIT点呼も認められることになりました。
    これまでと同様、対面点呼を前提とする原則に基づいていますので、片方の車庫では運行管理者か補助者の立ち会いが必要です。
 全日本トラック協会HP「安全性優良事業所(Gマーク事業所)都道府県別一覧表」が載っています。
2 遠隔点呼
(1) 遠隔点呼は,自動車運送事業者(バス,ハイヤー・タクシー,トラック)が,要件を満たす機器及びシステムを用いて,遠隔拠点間で行う点呼をいいます(国土交通省HPの「対面点呼に代わる遠隔点呼が実施できるようになります 令和4年4月1日から申請スタート」参照)。
(2) 遠隔点呼は,IT点呼と異なり,①Gマーク,優良性及び貨物・旅客の業種を問いませんし,②24時間実施OKですし,③グループ企業間の点呼もOKですし,④遠隔点呼は運行管理者が行う点呼のカウントになります(TELCOMの「すべての事業者に、遠隔点呼を」参照)。
(3) テレニシHP「IT点呼キーパー|遠隔点呼とIT点呼の違いをカンタンまとめ」には以下の記載があります。
    遠隔点呼制度が開始されましたが、IT点呼制度を利用している事業者は、「遠隔点呼要綱」ではなく現行のIT点呼制度および旅客IT点呼制度の規定に準じて使用できます。遠隔点呼制度とIT点呼制度は、異なる制度だと理解したほうがいいでしょう。
    弊社テレニシでは、IT点呼・対面点呼・電話点呼・スマホ点呼を1つに統合し、運行管理者の労務改善に役立つ「IT点呼キーパー」をご用意しています。また2022年6月からは遠隔点呼要件にも対応する予定です。

第7 運行管理者の補助者
1 運行管理者の業務を補助させるため,基礎講習を修了した者,又は運行管理者資格者証の交付を受けている者のうちから補助者を選任することができます。
2 平成19年4月1日以降の運行管理者の補助者は,平成19年3月31日以前の運行管理者の代務者に相当するものですが,代務者の場合,基礎講習を修了していなくても,運送会社から信頼されている人であれば誰でもなることができました(トラックの社HPの「試験を受けなくても運行管理者の資格を手に入れる方法があるって本当?」参照)。
3(1) 旅客自動車運送事業に関する運行管理者の補助者につき,旅客自動車運送事業運輸規則の解釈及び運用についてには以下の定めがあります。
① 補助者を選任し、点呼の一部を行わせる場合であっても、当該営業所において選任されている運行管理者が行う点呼は、点呼を行うべき総回数の少なくとも3分の1以上でなければならない(リンク先の15頁)。
② 補助者は、運行管理者の履行補助を行う者であって、代理業務を行える者ではない。ただし、第24条の点呼に関する業務については、その一部を補助者が行うことができるものとする(リンク先の33頁)。
③ 補助者が行う補助業務は、運行管理者の指導及び監督のもと行われるものであり、補助者が行うその業務において、以下に該当するおそれがあることが確認された場合には、直ちに運行管理者に報告を行い、運行の可否の決定等について指示を仰ぎその結果に基づき各運転者に対し指示を行わなければならない。
イ.運転者が酒気を帯びている
ロ.疾病、疲労、睡眠不足その他の理由により安全な運転をすることができない
ハ.無免許運転
ニ.最高速度違反行為(リンク先の33頁)
(2) 貨物自動車運送事業に関する運行管理者の補助者につき,貨物自動車運送事業輸送安全規則の解釈及び運用についてには以下の定めがあります。
① 第18条第3項の規定により補助者を選任し、点呼の一部を行わせる場合であっても、当該営業所において選任されている運行管理者が行う点呼は、点呼を行うべき総回数の少なくとも3分の1以上でなければならない(リンク先の12頁)。
② 補助者は、運行管理者の履行補助を行う者であって、代理業務を行える者ではない。ただし、第7条の点呼に関する業務については、その一部を補助者が行うことができるものとする(リンク先の21頁)。
③ 補助者が行う補助業務は、運行管理者の指導及び監督のもと行われるものであり、補助者が行うその業務において、以下に該当するおそれがあることが確認された場合には、直ちに運行管理者に報告を行い、運行の可否の決定等について指示を仰ぎ、その結果に基づき各運転者に対し指示を行わなければならない。
イ.運転者が酒気を帯びている
ロ.疾病、疲労、睡眠不足その他の理由により安全な運転をすることができない
ハ.無免許運転、大型自動車等無資格運転
ニ.過積載運行
ホ.最高速度違反行為(リンク先の21頁)


第7の2 運行管理制度の強化
1 国土交通省HPの「運行管理制度が強化されます!」には「「運行管理制度の強化」の概要」として以下の記載があります。
 平成26年5月1日より、旅客自動車運送事業者は、トラブル発生時に乗務員に対して輸送の安全のために適切な措置を講ずることが法令上明確化されました。
 また、当該措置を適正かつ確実に行えるよう
[1]旅客自動車運送事業者は、車両運行中、電話等を用いて乗務員に対し必要な指示等を行える連絡体制を構築しなければなりません。(平成26年5月1日施行)
[2]乗合バス、貸切バス事業者は、[1]に加えて、車両運行中少なくとも一人の運行管理者は、事業用自動車の運転業務に従事せずに、乗務員に対し必要な指示等を行える体制を整備しなければなりません。(平成27年5月1日施行)

2 旅客自動車運送事業運輸規則21条の2(運行に関する状況の把握のための体制の整備)は,「旅客自動車運送事業者は、第二十条、前条第七項その他の輸送の安全に関する規定に基づく措置を適切に講ずることができるよう、事業用自動車の運行に関する状況を適切に把握するための体制を整備しなければならない。」と定めています。

第8 運行管理者制度の根拠となる法令及び通達
1 一般旅客自動車運送事業(乗合,貸切及び乗用)の運行管理者の根拠となる法令及び通達は以下のとおりです。
① 道路運送法
② 旅客自動車運送事業運輸規則
③ 旅客自動車運送事業運輸規則の解釈及び運用について(平成14年1月30日制定。令和3年2月25日最終改正)
2 一般旅客自動車運送事業(乗合,貸切及び乗用)の運行管理者の根拠となる法令及び通達は以下のとおりです。
① 貨物自動車運送事業法
② 貨物自動車運送事業輸送安全規則
③ 貨物自動車運送事業輸送安全規則の解釈及び運用について(平成15年3月10日制定。令和3年1月26日最終改正)



第9 安全運転管理者制度
1(1) 安全運転管理者制度は,自動車5台以上又は乗車定員11人以上の自家用バスを使用している事業所等において,事業主や安全運転管理者の責任を明確にし,道路交通法令の遵守や交通事故の防止を図るため,道路交通法74条の3第1項及び第4項で定められた制度です。
(2) 安全運転管理者制度は昭和40年6月1日の道路交通法改正により制度化されたものです。
2 安全運転管理者の業務内容は以下のとおりです(道路交通法74条の3第2項及び第3項,並びに道路交通法施行規則9条の10)(徳島県警察HPの「安全運転管理者制度」参照)。
① 運転者の状況把握
② 運行計画の作成
③ 交代要員の配置
④ 異常気象時等の安全確保の措置
⑤ 安全運転の指示(運転者に対する点呼等)
⑥ 運転前後の酒気帯び確認
⑦ 酒気帯び確認の記録・保存
⑧ 運転日誌の記録
⑨ 運転者に対する指導
3 SmartDrive HPの「アルコール検知器の使用義務化の延期、警察庁の方針が明らかに」には「2022年7月15日に公表した警察庁パブリックコメントの意見募集要領の中で白ナンバー車両の酒気帯び有無の確認において「2022年10月1日から予定されていたアルコール検知器の使用義務化を当面延期する」方針が明らかになりました。」と書いてあります。


第10 タクシーの配車に関するメモ書き
1 WEB CARTOPの「最近のタクシー車内で「無線の声」を聞かなくなった理由とは」(2017年11月23日付)には以下の記載があります。
10数年前より無線のデジタル化が進むと、タクシー無線も取り巻く状況が大きく変わってきた。まずデジタル化とともに各車両にGPSアンテナが装着され、各タクシー会社などの無線センターでは、リアルタイムで稼動しているタクシーの状態をオペレーター個々に配置された液晶モニターでウォッチができるようになった。
2 Mobile Create HP「タクシー配車システム 新視令」には以下の記載があります。
タクシー配車システム「新視令」が業務効率アップを完全サポート
「新視令」は業務用IP無線システム「ボイスパケットトランシーバー」を利用したタクシー配車システムです。 タクシーメーター、ナビゲーションと連動しタクシーを効率的に配車します。 車両の情報を配車センターで集中管理し、集められたデータはリアルタイムに解析可能。 コンピューターが配車に最適な車両を自動で検出。一回あたりの配車時間を短縮できて、効率が大幅アップ。
従来のタクシー無線に替わる画期的な車載モバイルネットワークです。
3 タクシー配車システムにはオンプレミス型とクラウド型があります(JVCKENWOODの「CABmee 新クラウド型タクシー配車システム」参照)。
4 タクシーアプリの「GO」とは,日本交通が運営している「JapanTaxi」とDeNAが運営している「MOV」を統合して生まれたタクシー配車アプリでありますところ,GOは,Mobility Technologiesによって2020年9月にリリースされました(P-CHAN TAXIの「タクシーアプリGOの使い方やクーポン情報、迎車料金や支払い方法を徹底解説!」参照)。

第11 関連記事その他
1 近畿運輸局の場合,自動車交通部旅客第一課がバスを担当し,自動車交通部旅客第二課がタクシーを担当しています。
2(1) 国土交通省HPに「事業用自動車の運転者の健康管理マニュアル」(平成26年4月18日改訂)が載っています。
(2) 北陸信越運輸局HPに「道路運送法等関係法令の基礎知識について~ 地域に根ざした輸送サービスの提供のために ~」が載っています。
(3) 兵庫県トラック協会HP「トラック運送事業の運行・車両・労務管理の手引き-法令実践ガイド-」(令和元年9月の全国貨物自動車運送適正化事業実施機関)が載っています。
3(1) トラサポHPに「日本一詳しく!貨物自動車運送事業の監査と巡回指導、行政処分について行政書士が完全解説3〜行政処分編(2)〜」が載っています。
(2) 名鉄四日市タクシーHP「働き方(乗務員の1日の流れ)」が載っています。
(3) 大和自動車交通株式会社HP「タクシー業界を支える「配車」「運行管理」の仕事内容とは?」が載っています。
4 平成26年12月1日,車両総重量7トン以上又は最大積載量4トン以上の事業用トラック(=緑ナンバーのトラック)についても,運行記録計(タコグラフ)の装着が義務づけられました(全日本トラック協会HPの「運行記録計(タコグラフ)の装着義務付け対象拡大について」参照)。
5 一般旅客自動車運送事業の譲渡及び譲受は,国土交通大臣の認可を受けなければ,その効力を生じない(道路運送法36条1項)ところ,近畿運輸局HPの「法人タクシー関係」譲渡譲受申請書の様式が載っています。
6 以下の記事も参照してください。
・ 自動車運送事業
・ 自動車運転代行業
・ 貨物軽自動車運送事業(軽貨物運送業)
・ タクシー業界に対する規制

宗教法人の解散命令

目次
第1 総論
第2 宗教法人法81条1項所定の解散事由
第3 宗教法人「オウム真理教」に対する解散命令及び破産宣告
1 最高裁平成8年1月30日決定の判示内容
2 オウム真理教に対する解散命令
3 オウム真理教の始まりから破産宣告に至るまでの経緯
第3の2 宗教法人「明覚寺」に対する解散命令
第4 宗教法人の解散命令の効果
第5 宗教法人法81条と同趣旨とされた旧商法58条
1 最高裁平成8年1月30日決定の判示内容
2 旧商法58条の条文
3 会社法824条の条文
4 その他
第5の2 宗教法人に対する報告徴収・質問権
1 宗教法人法78条の2の条文
2 報告徴収・質問権を行使する際の一般的な基準
第6 霊感商法
第7 全国霊感商法対策弁護士連絡会
第8 オウム真理教に対する破防法に基づく解散指定処分の請求,及び団体規制法に基づく観察処分
1 オウム真理教に対する破防法に基づく解散指定処分の請求
2 オウム真理教に対する団体規制法に基づく観察処分
第9 宗教法人法の条文
1条(この法律の目的)
43条(解散の事由)
85条(解釈規定)
第10 関連記事その他

第1 総論
1 宗教法人の解散命令は宗教法人法81条1項に基づく制度です。
2 法令違反等を理由に解散を命じられた宗教法人の事例はオウム真理教及び明覚寺だけですから,その意味での宗教法人の解散命令は2件ということになります(ヤフーニュースの「かつて解散になった宗教法人「法の華」「明覚寺」 ――その背景と統一教会との共通点」参照)。
3 宗教上の行為の自由はもとより最大限に尊重すべきものですが,絶対無制限のものではありません(最高裁平成8年1月30日決定。なお,先例として,最高裁大法廷昭和38年5月15日判決)。

第2 宗教法人法81条1項所定の解散事由
1 宗教法人の解散命令について定める宗教法人法81条1項は以下のとおりです。
    裁判所は、宗教法人について左の各号の一に該当する事由があると認めたときは、所轄庁、利害関係人若しくは検察官の請求により又は職権で、その解散を命ずることができる。
一 法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと。
二 第二条に規定する宗教団体の目的を著しく逸脱した行為をしたこと又は一年以上にわたつてその目的のための行為をしないこと。
三 当該宗教法人が第二条第一号に掲げる宗教団体である場合には、礼拝の施設が滅失し、やむを得ない事由がないのにその滅失後二年以上にわたつてその施設を備えないこと。
四 一年以上にわたつて代表役員及びその代務者を欠いていること。
五 第十四条第一項又は第三十九条第一項の規定による認証に関する認証書を交付した日から一年を経過している場合において、当該宗教法人について第十四条第一項第一号又は第三十九条第一項第三号に掲げる要件を欠いていることが判明したこと。
2 最高裁平成8年1月30日決定によって支持された東京高裁平成7年12月19日決定は下記の判示をしていますし,明覚寺に対する解散命令を出した和歌山地裁平成14年1月24日決定(判例体系に掲載)も同趣旨の判示をしています。
    同法(山中注:宗教法人法)八一条一項一号及び二号前段所定の宗教法人に対する解散命令制度が設けられた理由及びその目的に照らすと、右規定にいう「宗教法人について」の「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」(一号)、「二条に規定する宗教団体の目的を著しく逸脱した行為」(二号前段)とは、宗教法人の代表役員等が法人の名の下において取得・集積した財産及びこれを基礎に築いた人的・物的組織等を利用してした行為であって、社会通念に照らして、当該宗教法人の行為であるといえるうえ、刑法等の実定法規の定める禁止規範又は命令規範に違反するものであって、しかもそれが著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為、又は宗教法人法二条に規定する宗教団体の目的を著しく逸脱したと認められる行為をいうものと解するのが相当である。
3(1) 最高裁平成9年7月11日判決は以下の判示をしています(改行を追加しています。)。
    我が国の不法行為に基づく損害賠償制度は、被害者に生じた現実の損害を金銭的に評価し、加害者にこれを賠償させることにより、被害者が被った不利益を補てんして、不法行為がなかったときの状態に回復させることを目的とするものであり(最高裁昭和六三年(オ)第一七四九号平成五年三月二四日大法廷判決・民集四七巻四号三〇三九頁参照)、加害者に対する制裁や、将来における同様の行為の抑止、すなわち一般予防を目的とするものではない。
    もっとも、加害者に対して損害賠償義務を課することによって、結果的に加害者に対する制裁ないし一般予防の効果を生ずることがあるとしても、それは被害者が被った不利益を回復するために加害者に対し損害賠償義務を負わせたことの反射的、副次的な効果にすぎず、加害者に対する制裁及び一般予防を本来的な目的とする懲罰的損害賠償の制度とは本質的に異なるというべきである。我が国においては・加害者に対して制裁を科し、将来の同様の行為を抑止することは、刑事上又は行政上の制裁にゆだねられているのである。
    そうしてみると、不法行為の当事者間において、被害者が加害者から、実際に生じた損害の賠償に加えて、制裁及び一般予防を目的とする賠償金の支払を受け得るとすることは、右に見た我が国における不法行為に基づく損害賠償制度の基本原則ないし基本理念と相いれないものであると認められる。
(2) 民訴法118条3号の要件を具備しない懲罰的損害賠償としての金員の支払を命じた部分(以下「懲罰的損害賠償部分」といいます。)が含まれる外国裁判所の判決に係る債権について弁済がされた場合,その弁済が上記外国裁判所の強制執行手続においてされたものであっても,これが懲罰的損害賠償部分に係る債権に充当されたものとして上記判決についての執行判決をすることはできません(最高裁令和3年5月25日判決)。
4 民法709条の不法行為を構成する行為は,宗教法人法81条1項1号にいう「法令に違反」する行為に当たります(最高裁令和7年3月3日判決)。


第3 宗教法人「オウム真理教」に対する解散命令及び破産宣告
1 最高裁平成8年1月30日決定の判示内容
・ 大量殺人を目的として計画的,組織的にサリンを生成した宗教法人について,宗教法人法81条1項1号及び2号前段に規定する事由があるとしてされた解散命令は,専ら宗教法人の世俗的側面を対象とし,宗教団体や信者の精神的・宗教的側面に容かいする意図によるものではなく,右宗教法人の行為に対処するには,その法人格を失わせることが必要かつ適切であり,他方,解散命令によって宗教団体やその信者らが行う宗教上の行為に何らかの支障を生ずることが避けられないとしても,その支障は解散命令に伴う間接的で事実上のものにとどまるなどといった事情の下においては,必要でやむを得ない法的規制であり,憲法20条1項に違反しません(オウム真理教に対する解散命令事件に関する最高裁平成8年1月30日決定)。
2 オウム真理教に対する解散命令
・ 平成8年版の犯罪白書の「1 宗教法人解散命令」には以下の記載があります。
    検察官(東京地方検察庁検事正)及び東京都知事は,平成7年6月30日,それぞれ東京地方裁判所に対し,教団に対する宗教法人の解散命令を申し立てた。申立の理由は,教団によるサリンの生成企図という殺人予備行為が,同法81条1項1号(法令に違反して,著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと)及び2号前段(同法2条に規定する宗教団体の,目的を著しく逸脱した行為をしたこと)所定の解散命令事由に該当するとするものである。
    東京地方裁判所は,平成7年10月30日,申立人両名の申立を理由があるものと認め,教団を解散する旨の決定を下した。これに対する教団の東京高等裁判所への抗告が棄却された(7年12月19日)ことにより,同決定は確定し,続く最高裁判所への特別抗告も棄却された(8年1月30日)。これまで,休眠状態の宗教法人に対して,同法81条1項2号後段及び4号を理由として解散を命じた事例はあるが,法令違反・目的逸脱行為を理由に解散を命じたのは,本決定が初めてである。解散命令により,清算人が裁判所によって選任され,教団は清算手続に入った。
3 オウム真理教の始まりから破産宣告に至るまでの経緯
(1) 東京地裁令和2年9月29日判決(判例秘書に掲載)は,オウム真理教の破産宣告に至るまでの経緯について以下のとおり判示しています。
ア 昭和59年2月頃,E(山中注:麻原彰晃こと松本智津夫)を教祖・創始者として,「オウム神仙の会」が活動を開始し,昭和62年7月頃,「オウム真理教」にその名称を変更し,Eの説くオウム真理教の教義を広め,これを実現することを目的として活動を続けた。「オウム真理教」は,平成元年8月25日,東京都知事から宗教法人法に基づく規則の認証を受けて,同月29日,宗教法人「オウム真理教」(代表役員「E」)の設立の登記がされた(以上につき,乙B2の1・2)。
イ オウム真理教の構成員らは,平成6年6月27日,長野県松本市内でサリンを散布し,8名を殺害するとともに,143名にサリン中毒症の傷害を負わせる事件(以下「松本サリン事件」という。)を敢行し,平成7年3月20日,東京都内を走行中の地下鉄電車5本内でサリンを散布し,12名を殺害するとともに,3000名を超える者にサリン中毒症の傷害を負わせる事件(以下「地下鉄サリン事件」といい,松本サリン事件と併せて「両サリン事件」という。)を敢行した(乙B2の1~3,3の1)。オウム真理教の構成員らは,両サリン事件を含め,多数の殺人等の犯罪行為を敢行した(乙3の2)。
ウ 宗教法人「オウム真理教」については,平成7年12月19日,宗教法人法に基づく解散命令が確定し,その清算手続中の平成8年3月28日,破産宣告がされた(乙B4の1)。
(2) オウム真理教に対する解散命令は,東京高裁平成7年12月19日決定がオウム真理教に告知された時点で確定したものとして取り扱われています。


第3の2 宗教法人「明覚寺」に対する解散命令
1 戸渡速志 文化庁文化部宗務課長は,平成13年6月20日の宗教法人審議会(第141回)において以下の答弁をしています。
 宗教法人「明覚寺」の解散命令請求の状況についてでございます。
 この宗教法人「明覚寺」と申しますのは、和歌山県に主たる事務所を持っておりました、単立の宗教法人でございますが、この明覚寺系列の名古屋別院であります満願寺というところを中心といたしまして、全国にわたって霊視商法詐欺事件を行ったということで、これまでに代表役員らを含む11人が詐欺罪で起訴されて、既に8名に有罪判決が出されて確定していると。ただ、現代表役員、それから前代表役員ら中心人物3名は、現在控訴をしておりまして、名古屋高裁で審理中という状況の事案でございます。
 民事の関係につきましては、既に平成11年4月の時点で、明覚寺側は和解金約11億円を支払いまして、被害者等とはすべて和解が成立しているということで、民事上の争いはない状況になってございます。
 この法人につきましては、現代表役員の西川らは、まだ控訴をして争っているわけではございますけれども、平成11年7月の地裁段階の判決におきまして、多数の明覚寺所属の僧侶らによって、組織的・計画的かつ継続的に実行された大規模な詐欺事案と認定されていること、さらに、同判決の中で、宗教法人が宗教活動の名のもとに組織を挙げて行った大規模な詐欺事案として全国的に強い関心を呼び、宗教活動や宗教法人のあり方などを改めて問い直す契機となるなど、社会に与えた影響も大きいといった指摘もなされているということを踏まえまして、文化庁では解散命令を請求する事由に該当するということから、平成11年12月16日に解散命令の請求、申立てを和歌山地方裁判所に行ったわけでございます。
 その後、先方からの意見書の提出等ございまして、現在もまだ和歌山地方裁判所でこの審理が継続しているという状況にあるわけでございますけれども、文化庁といたしましては、既にこの解散命令請求事由に該当するということについては審理を尽くしているので、できるだけ早急に決定をお願いしたいということで、裁判所のほうにお願いをしているところでございますし、この6月中には、最終的な主張をまとめた書面でございます第二準備書面というもの、及びそれに関連する証拠書類等を提出いたしまして、早期の結審と解散命令の決定というものを裁判所に求めていくという方向で進めてまいりたいと思っているところでございます。
2 宗教法人「明覚寺」に対する解散命令の経過は以下のとおりです(平成13年10月18日の宗教法人審議会(第142回)及び平成14年6月18日の宗教法人審議会(第143回)における鬼澤佳弘 文化庁文化部宗務課長の答弁,及び平成15年3月3日の宗教法人審議会(第144回)における秋葉正嗣 文化庁文化部宗務課長の答弁参照)。
平成11年12月16日,文化庁が和歌山地裁に明覚寺の解散命令を請求した。
平成13年9月28日,明覚寺が任意解散の認証申請をした。
平成14年1月24日,和歌山地裁が解散命令を出した。
平成14年1月31日,明覚寺が大阪高裁に対して即時抗告をした。
平成14年9月27日,大阪高裁が即時抗告を棄却した。
平成14年10月4日,明覚寺が最高裁判所にに対して特別抗告をした。
(日付不明)最高裁が特別抗告を棄却した。
3 和歌山地裁平成14年1月24日決定は判例秘書に載っているものの,大阪高裁平成14年9月27日決定は判例秘書に載っていません。


第4 宗教法人の解散命令の効果
1 最高裁平成8年1月30日決定は以下の判示をしています(改行を追加しています。)。
    解散命令によって宗教法人が解散しても、信者は、法人格を有しない宗教団体を存続させ、あるいは、これを新たに結成することが妨げられるわけではなく、また、宗教上の行為を行い、その用に供する施設や物品を新たに調えることが妨げられるわけでもない。
すなわち、解散命令は、信者の宗教上の行為を禁止
したり制限したりする法的効果を一切伴わないのである。
    もっとも、宗教法人の解
散命令が確定したときはその清算手続が行われ(法四九条二項、五一条)、その結果、宗教法人に帰属する財産で礼拝施設その他の宗教上の行為の用に供していたものも処分されることになるから(法五〇条参照)、これらの財産を用いて信者らが行っていた宗教上の行為を継続するのに何らかの支障を生ずることがあり得る。
のように、宗教法人に関する法的規制が、信者の宗教上の行為を法的に制約する効果を伴わないとしても、これに何らかの支障を生じさせることがあるとするならば、憲法の保障する精神的自由の一つとしての信教の自由の重要性に思いを致し、憲法がそのような規制を許容するものであるかどうかを慎重に吟味しなければならない。
2 文化庁HPの「解説 宗教法人制度の概要と宗務行政の現状」には,「団体で宗教活動を行う際に法人格を取得するかどうかも自由です。当然,法人格を持たない団体(任意団体)のままでも,宗教活動を行うことができます。」と書いてあります。


第5 宗教法人法81条と同趣旨とされた旧商法58条
1 最高裁平成8年1月30日決定の判示内容
・ 最高裁平成8年1月30日決定は以下の判示をしています。
    法八一条(山中注:宗教法人法81条)に規定する宗教法人の解散命令の制度も、法令に違反して著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為(同条一項一号)や宗教団体の目的を著しく逸脱した行為(同項二号前段)があった場合、あるいは、宗教法人ないし宗教団体としての実体を欠くに至ったような場合(同項二号後段、三号から五号まで)には、宗教団体に法律上の能力を与えたままにしておくことが不適切あるいは不必要となるところから、司法手続によって宗教法人を強制的に解散し、その法人格を失わしめることが可能となるようにしたものであり、会社の解散命令(商法五八条)(山中注:現在の会社法824条)と同趣旨のものであると解される。
2 旧商法58条の条文
① 裁判所ハ左ノ場合ニ於テ公益ヲ維持スル為会社ノ存立ヲ許スベカラザルモノト認ムルトキハ法務総裁又ハ株主、債権者其ノ他ノ利害関係人ノ請求ニ依リ会社ノ解散ヲ命ズルコトヲ得
 一 会社ノ設立ガ不法ノ目的ヲ以テ為サレタルトキ
 二 会社ガ正当ノ事由ナクシテ其ノ成立後一年内ニ開業ヲ為サズ又ハ一年以上営業ヲ休止シタルトキ
 三 会社ノ業務ヲ執行スル社員又ハ取締役ガ法務総裁ヨリ書面ニ依ル警告ヲ受ケタルニ拘ラズ法令若ハ定款ニ定ムル会社ノ権限ヲ踰越シ若ハ濫用スル行為又ハ刑罰法令ニ違反スル行為ヲ継続又ハ反覆シタルトキ
② 前項ノ請求アリタル場合ニ於テハ裁判所ハ解散ノ命令前ト雖モ法務総裁若ハ株主、債権者其ノ他ノ利害関係人ノ請求ニ依リ又ハ職権ヲ以テ管理人ノ選任其ノ他会社財産ノ保全ニ必要ナル処分ヲ為スコトヲ得
3 会社法824条の条文
① 裁判所は、次に掲げる場合において、公益を確保するため会社の存立を許すことができないと認めるときは、法務大臣又は株主、社員、債権者その他の利害関係人の申立てにより、会社の解散を命ずることができる。
一 会社の設立が不法な目的に基づいてされたとき。
二 会社が正当な理由がないのにその成立の日から一年以内にその事業を開始せず、又は引き続き一年以上その事業を休止したとき。
三 業務執行取締役、執行役又は業務を執行する社員が、法令若しくは定款で定める会社の権限を逸脱し若しくは濫用する行為又は刑罰法令に触れる行為をした場合において、法務大臣から書面による警告を受けたにもかかわらず、なお継続的に又は反覆して当該行為をしたとき。
② 株主、社員、債権者その他の利害関係人が前項の申立てをしたときは、裁判所は、会社の申立てにより、同項の申立てをした者に対し、相当の担保を立てるべきことを命ずることができる。
③ 会社は、前項の規定による申立てをするには、第一項の申立てが悪意によるものであることを疎明しなければならない。
④ 民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第七十五条第五項及び第七項並びに第七十六条から第八十条までの規定は、第二項の規定により第一項の申立てについて立てるべき担保について準用する。
4 その他
(1) 新基本法コンメンタール会社法3(575条~979条)361頁には以下の記載があります。
    以上の事由(山中注:会社法824条1項各号の事由)があり、かつ裁判所がその裁量により公益を確保するため会社の存立を許すことができないと判断した場合に初めて解散命令に至る。ただし、法人格を剥奪する以外の方法により公益が確保できる場合、例えば、業務執行取締役等の解任、損害賠償、刑罰、営業停止、免許の取消し等の代替措置で足りる場合には解散命令は発し得ない。
(2) 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律261条1項各号が定める解散命令事由は,会社法824条1項各号と同趣旨のものになっています(消費者庁HPの「法人の解散命令等に関する規定」参照)。
ウ 消費者庁HPに「会社法上の会社解散命令について」が載っています。


第5の2 宗教法人に対する報告徴収・質問権
1 宗教法人法78条の2(報告及び質問)の条文
① 所轄庁は、宗教法人について次の各号の一に該当する疑いがあると認めるときは、この法律を施行するため必要な限度において、当該宗教法人の業務又は事業の管理運営に関する事項に関し、当該宗教法人に対し報告を求め、又は当該職員に当該宗教法人の代表役員、責任役員その他の関係者に対し質問させることができる。この場合において、当該職員が質問するために当該宗教法人の施設に立ち入るときは、当該宗教法人の代表役員、責任役員その他の関係者の同意を得なければならない。
一 当該宗教法人が行う公益事業以外の事業について第六条第二項の規定に違反する事実があること。
二 第十四条第一項又は第三十九条第一項の規定による認証をした場合において、当該宗教法人について第十四条第一項第一号又は第三十九条第一項第三号に掲げる要件を欠いていること。
三 当該宗教法人について第八十一条第一項第一号から第四号までの一に該当する事由があること。
② 前項の規定により報告を求め、又は当該職員に質問させようとする場合においては、所轄庁は、当該所轄庁が文部科学大臣であるときはあらかじめ宗教法人審議会に諮問してその意見を聞き、当該所轄庁が都道府県知事であるときはあらかじめ文部科学大臣を通じて宗教法人審議会の意見を聞かなければならない。
③ 前項の場合においては、文部科学大臣は、報告を求め、又は当該職員に質問させる事項及び理由を宗教法人審議会に示して、その意見を聞かなければならない。
④ 所轄庁は、第一項の規定により報告を求め、又は当該職員に質問させる場合には、宗教法人の宗教上の特性及び慣習を尊重し、信教の自由を妨げることがないように特に留意しなければならない。
⑤ 第一項の規定により質問する当該職員は、その身分を示す証明書を携帯し、宗教法人の代表役員、責任役員その他の関係者に提示しなければならない。
⑥ 第一項の規定による権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
2 報告徴収・質問権を行使する際の一般的な基準
・ 宗教法人法第78条の2に基づく報告徴収・質問権の行使について(令和4年11月8日付の宗教法人制度の運用等に関する調査研究協力者会議の報告書)には,「第2 報告徴収・質問権を行使する際の一般的な基準 」として以下の記載があります。
〇 所轄庁である文部科学大臣としては、個別の宗教法人について解散命令請求を検討するに当たっては、報告徴収・質問権を行使して把握した事実関係等を踏まえ、その個別事案に応じて、行為の組織性、悪質性、継続性等が認められるか否かを判断していくこととなる。
    報告徴収・質問権を行使するに当たって、所轄庁が宗教法人法に定める解散命令事由に該当するような事態についての「疑い」があると判断するためには、行為の組織性、悪質性、継続性等を把握する上で、その端緒となる事実がなければならない。その判断は、以下のとおり行うことが妥当である。
1 「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと」に該当する疑いがある場合(法第81条第1項第1号関係)
〇 「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと」に該当する「疑い」があるか否かの判断については、以下(1)及び(2)により行うことが妥当である。
(1)「疑い」を判断する根拠
    「疑い」とは様々な水準のものが想定されるが、風評等によらず、客観的な資料、根拠に基づいて判断することが相当である。
    したがって、風評や一方当事者の言い分のみで判断するのではなく
・ 公的機関において当該法人に属する者による法令違反や当該法人の法的責任を認める判断があること
・ 公的機関に対し、当該法人に属する者による法令違反に関する情報が寄せられており、それらに具体的な資料か根拠があると認められるものが含まれていること
・ それらと同様に疑いを認めるだけの客観的な資料、根拠があること のいずれかに該当する場合に「疑い」を判断することが妥当である。
(2)「著しく公共の福祉を害する」という要件との関連性
「著しく公共の福祉を害する」という要件に該当する「疑い」も必要であることから、偶発性の法令違反や、一回性の法令違反により直ちに「疑い」があるとすることは相当ではない。
    そのため、
・ 当該法人に属する者による同様の行為が相当数繰り返されている
・ 当該法人に属する者の行為による被害が重大である
    など、法令違反による広範な被害や重大な影響が生じている「疑い」があると認められることが必要である。
2 「第2条に規定する宗教団体の目的を著しく逸脱した行為をしたこと」に該当する「疑い」がある場合(法第81条第1項第2号前段)
〇 「第2条に規定する宗教団体の目的を著しく逸脱した行為をしたこと」に該当する「疑い」があるか否かの判断については、宗教法人法第78条の2第4項の規定の趣旨に特に留意して、以下(1)及び(2)により行うことが妥当である。
(1)「疑い」を判断する根拠
    この疑いについても、客観的な資料によることとし、一方当事者からの申告のみによるのではなく、客観的な資料、根拠により「疑い」があると判断することが妥当である。
(2)「著しく逸脱した行為」という要件との関連性
「著しく逸脱した行為」という規定になっていることから、目的の範囲を超えた行為があったとしても、その行為により直ちに要件に該当するわけではなく、その程度が問題となる。
    そのため、「著しく逸脱」したものか否かの判断は、
・ 目的の範囲を超えた行為による結果、影響の内容及び程度
・ 目的の範囲を超えた行為を行った動機・理由
・ 同様の目的の範囲外の行為の反復性、継続性の程度 などを総合的に判断することとなる。
    したがって、このような観点で、「著しく逸脱」したものである「疑い」があると認められることが必要である。

第6 霊感商法
1 霊感商法とは,「先祖のたたりで不幸になる」「これを購入すれば不幸から免れる」などと,人の不幸や不安につけ込み,高額な壺や数珠,印鑑などを買わせるほか,高額な祈とう料やお布施名目の金品を要求することをいいます(群馬県HPの「霊感商法・関連商法」参照)。
2 Wikipediaの「霊感商法」には以下の記載があります。
    「この商品を買えば幸運を招く」と謳って商品を売る商法はかねてから「開運商法」などと呼ばれていたが、1980年代に世界基督教統一神霊協会(統一教会/統一協会)の信者らによるこの種の商法が問題となった際に、日本共産党機関誌である『しんぶん赤旗』が「霊感商法」という言葉で報じ、以後この呼称が広く使われるようになった。
3(1) 令和元年6月15日施行の改正消費者契約法4条3項6号は,「当該消費者に対し、霊感その他の合理的に実証することが困難な特別な能力による知見として、そのままでは当該消費者に重大な不利益を与える事態が生ずる旨を示してその不安をあおり、当該消費者契約を締結することにより確実にその重大な不利益を回避することができる旨を告げること。」があった場合を契約取消事由としています。
(2) 消費者庁HPに「消費者契約法の一部を改正する法律(平成30年法律第54号)」が載っています。
4(1) 消費者庁の霊感商法等の悪質商法への対策検討会は,令和4年8月29日に第1回会議を開催しました。
(2) 第3回 霊感商法等の悪質商法への対策検討会(2022年9月15日)「【資料1】第2回検討会における主な指摘事項」には以下の記載があります。
     2018 年改正で入った霊感商法の取消権がこれまで使われた裁判例が見当たらない。霊感商法対策として効果的な法律になっていないということを改善する立法事実かと思う。このためには、狭過ぎる要件を広げ、様々な専門家の方が提起していた無知や脆弱性を殊更に利用するような場合という要件をここに持ち込んでいくことを検討すべき。
5(1) 文化庁HPの「解説 宗教法人制度の概要と宗務行政の現状」には以下の記載があります。
    認証(山中注:宗教団体が宗教法人となるために必要となる所轄庁の認証)のほかに所轄庁に与えられている権限として,認証後1年以内の認証の取消し(宗教法人法第80条),公益事業以外の事業の停止命令(同法第79条),裁判所への解散命令の請求(同法第81条),報告徴収・質問権(同法第78条の2)等があります。これらの権限には厳格な要件があり,宗教法人審議会に諮問をしてその意見を聞く必要があるなど,慎重さが求められています。
     なお,所轄庁の権限は,これらの法定事項に限られています。信教の自由や政教分離といった憲法上の要請があるため,所轄庁には,宗教法人の業務や財務に関する包括的な監督権限はありませんし,宗教上の事項については,いかなる形においても調停や干渉をすることはできません。
(2) 宗教法人に対する報告徴収・質問権は,平成7年の宗教法人法改正により創設されたものです。
6 参議院議員小西洋之君提出消費者契約法の霊感商法等による消費者契約の取消権の解釈(旧統一教会による被害への適用)に関する質問に対する答弁書(令和4年10月14日付)には以下の記載があります。
① お尋ねについては、御指摘の「旧統一教会を巡る献金事案」及び「旧統一教会に限らない宗教活動の献金等」の具体的な範囲が必ずしも明らかではないが、一般論として、宗教団体に対する寄附や献金は贈与等の契約に当たり得るものと考えられ、消費者契約法(平成十二年法律第六十一号)第二条第一項に規定する「消費者」と同条第二項に規定する「事業者」との間で贈与等の契約が締結される場合には同条第三項に規定する「消費者契約」に該当するものと考えられる。
② 御指摘の「旧統一教会を巡る献金事案」の具体的な範囲及び勧誘行為の内容が必ずしも明らかではないため、消費者契約法第四条の規定が適用されるか否かの解釈を示すことは困難であるが、宗教団体に対する寄附や献金に関するトラブルへの対応方法については、令和四年九月三十日に「「旧統一教会」問題関係省庁連絡会議」において策定された「お悩みの解決のヒントとなるQ&A」を法務省のホームページに掲載すること等により周知を図っている。
    引き続き、消費生活相談への対応や消費者教育の取組強化による被害の未然防止・救済等に必要な対策を講じてまいりたい。
③ 御指摘の「宗教活動に伴う献金等に関して、不法行為責任を認めた判例・裁判例」の具体的な範囲が必ずしも明らかではないが、宗教団体に対する寄附や献金に関するトラブルへの対応方法については、令和四年九月三十日に「「旧統一教会」問題関係省庁連絡会議」において策定された「お悩みの解決のヒントとなるQ&A」を法務省のホームページに掲載すること等により周知を図っている。 


第7 全国霊感商法対策弁護士連絡会
1 全国霊感商法対策弁護士連絡会(略称は「全国弁連」)は,かつての世界基督教統一神霊協会(略称は「統一協会」又は「統一教会」),現在の世界平和統一家庭連合(略称は「家庭連合」)による「霊感商法被害の根絶」と「被害者の救済」を目的として昭和62年5月,全国の約300名の弁護士が賛同して結成された会です。
2 全国霊感商法対策弁護士連絡会が発表した,「安倍晋三 元首相 銃撃事件に対する声明」(令和4年7月12日付)には以下の記載があります。
    山上被疑者が、安倍晋三元首相を死に至らしめた今般の卑劣極まりない行為は、いかなる理由があろうとも決して許されないことです。当会は、安倍元首相のご冥福を心からお祈り申し上げます。
(中略)
    安倍元首相が、統一協会やそのダミー組織のひとつである天宙平和連合(UPF)などのイベントにメッセージを発信することを繰り返し、特に昨年9月12日の「神統一韓国のためのTHINK TANK2022希望前進大会」(UPFのWEB集会)でビデオメッセージを主催者に送り、その中で文鮮明教祖(2012年死去)の後継の教祖韓鶴子氏に「敬意を表します」と述べたことは、統一協会のために人生や家庭を崩壊あるいは崩壊の危機に追い込まれた人々にとってたいへんな衝撃でしたし、当会としても厳重な抗議をしてきたところです。
3 刑裁サイ太のゴ3ネタブログ「統一教会に関する判例をたくさん調べてみた」(2022年8月26日付)が載っています。


第8 オウム真理教に対する破防法に基づく解散指定処分の請求,及び団体規制法に基づく観察処分
1 オウム真理教に対する破防法に基づく解散指定処分の請求
(1) 公安審査委員会は,公安調査庁長官が行った,破壊活動防止法11条に基づくオウム真理教に対する解散の指定を求める旨の処分請求(平成8年7月11日付)を平成9年1月31日付で棄却しましたところ,当該決定は平成9年2月4日付の官報特別号外に掲載されています(破壊活動防止法24条3項)。
(2) 日弁連HPに載ってある「オウム真理教に対する破防法棄却決定の検討報告書」(平成11年12月付の日弁連の文書)には「決定が本件請求を棄却したことは、当然であり正当である。本決定に至るまでには相当な圧力が公安審査委員会にあったであろうことは想像に難くないだけに、当然の結論とは言え、圧力に屈することなく棄却決定をなしたことは評価すべきである。」と書いてあります。
(3) Wikipediaに「オウム真理教破壊活動防止法問題」が載っています。
2 オウム真理教に対する団体規制法に基づく観察処分
・ 法務省HPの「公安審査委員会」には以下の記載があります。
     公安調査庁長官から,オウム真理教に対して,無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律第5条の観察処分を求める旨の請求がなされ,平成12年1月28日,当委員会は「被請求団体を,3年間,公安調査庁長官の観察に付する。」旨の決定を行い,同決定については,平成15年1月23日,平成18年1月23日,平成21年1月23日,平成24年1月23日,平成27年1月23日,平成30年1月22日及び令和3年1月6日に,それぞれ3年間,処分の期間を更新する旨の決定を行いました。

第9 宗教法人法の条文
1条(この法律の目的)
① この法律は、宗教団体が、礼拝の施設その他の財産を所有し、これを維持運用し、その他その目的達成のための業務及び事業を運営することに資するため、宗教団体に法律上の能力を与えることを目的とする。
② 憲法で保障された信教の自由は、すべての国政において尊重されなければならない。従つて、この法律のいかなる規定も、個人、集団又は団体が、その保障された自由に基いて、教義をひろめ、儀式行事を行い、その他宗教上の行為を行うことを制限するものと解釈してはならない。
43条(解散の事由)
① 宗教法人は、任意に解散することができる。
② 宗教法人は、前項の場合のほか、次に掲げる事由によつて解散する。
一 規則で定める解散事由の発生
二 合併(合併後存続する宗教法人における当該合併を除く。)
三 破産手続開始の決定
四 第八十条第一項の規定による所轄庁の認証の取消し
五 第八十一条第一項の規定による裁判所の解散命令
六 宗教団体を包括する宗教法人にあつては、その包括する宗教団体の欠亡
③ 宗教法人は、前項第三号に掲げる事由に因つて解散したときは、遅滞なくその旨を所轄庁に届け出なければならない。
85条(解釈規定)
この法律のいかなる規定も、文部科学大臣、都道府県知事及び裁判所に対し、宗教団体における信仰、規律、慣習等宗教上の事項についていかなる形においても調停し、若しくは干渉する権限を与え、又は宗教上の役職員の任免その他の進退を勧告し、誘導し、若しくはこれに干渉する権限を与えるものと解釈してはならない。


第10 関連記事その他
1 霊感商法で問題となった法の華三法行の場合,平成13年3月29日に破産宣告を受けて解散しました。
2 平成8年版の犯罪白書の「1 宗教法人解散命令」には以下の記載があります。
    宗教法人法(昭和26年法律第126号)は,宗教団体が,礼拝の施設その他の財産を所有し,これを維持運用し,その他その目的達成のための業務及び事業を運営することに資するため,宗教団体に法律上の能力を与えることを目的(1条)として昭和26年に制定された。その特色としては,宗教法人制度が信教の自由と政教分離の原則に密接にかかわるものであり,国による関与が最小限にとどめられるべきとの考えから,所轄庁の権限が民法の法人の主務官庁に比べて限られていることが挙げられる。宗教法人に対しては,法人税,地方税などでの優遇措置がある。 
3(1) 愛知県HPの「宗教法人の解散について」に,宗教法人の任意解散認証について概説されています。
(2) 会社解散・清算手続代行サポートHP「宗教法人の解散」が載っています。
4(1) 最高裁平成8年3月8日判決は,信仰上の理由により剣道実技の履修を拒否した市立高等専門学校の学生に対する原級留置処分及び退学処分が裁量権の範囲を超える違法なものであるとされた事例です。
(2) 最高裁平成12年2月29日判決は 宗教上の信念からいかなる場合にも輸血を受けることは拒否するとの固い意思を有している患者に対して医師がほかに救命手段がない事態に至った場合には輸血するとの方針を採っていることを説明しないで手術を施行して輸血をした場合において右医師の不法行為責任が認められた事例です。
5(1) 消費者庁HPに「法人等による寄附の不当な勧誘の防止等
に関する法律・逐条解説」(令和5年2月1日付)が載っています。
(2) ジュリスト2023年6月号に「【特集】霊感商法と被害者救済-新法の提起するもの」が載っています。
6 大阪地裁令和6年2月28日判決(担当裁判官は49期の横田典子53期の田辺暁志及び69期の立仙早矢)は,令和4年12月20日付で大阪府議会がした「旧統一教会等の悪質な活動とは一線を画する決議」と題する決議が、行政事件訴訟法3条2項にいう処分に当たらないとされた事例です。
7 最高裁令和6年7月11日判決は,①宗教法人とその信者との間において締結された不起訴の合意が公序良俗に反し無効であるとされた事例であり,②宗教法人の信者らによる献金の勧誘が不法行為法上違法であるとはいえないとした原審の判断に違法があるとされた事例です。
8 以下の記事も参照してください。
・ 国葬儀
・ 故安倍晋三国葬儀

相殺の抗弁に関するメモ書き

目次
第1 総論
第2 相殺の抗弁に関する判例
1 許される事例
2 許されない事例
第3 訴訟上の相殺の抗弁に関する参考答案
第4 関連記事その他

第1 総論
1 訴訟上の相殺の抗弁とは,被告が口頭弁論において自己の債権を相殺に供することで,原告の主張する債権を消滅させ,原告の請求を理由のないものとする抗弁をいいます。
2 相殺の抗弁についての判断は、それが判決理由中の判断であるにもかかわらず,「相殺をもって対抗した額について」既判力が生じます(民訴法114条2項)。
    そして,このことは,相殺の抗弁が排斥された場合であると,認容された場合であるとを問いません。
3(1) 既判力は本来,判決主文で示された訴訟物たる権利・法律関係の存否の判断についてのみ生じ(民訴法114条1項),判決理由中でなされる前提問題たる権利・法律関係の存否の判断については生じないのが原則です。
    なぜなら,当事者間の紛争解決としてはこれで十分であるし,判決理由中の判断については当事者の手続保障を充足しているとは限らないし,また,このように解することは審理の簡易化・弾力化に資するからです。
(2) しかし,相殺の抗弁は訴求債権とその発生原因において無関係な反対債権を対当額で消滅させる効果を抗弁とするものです。
    そして,その判断に既判力が認められない場合、訴求債権の存否の紛争が反対債権の存否の紛争として蒸し返され,判決による紛争解決の実効性が失われることから,蒸し返しを防止して一挙に紛争を解決するため,相殺の抗弁についての判断には既判力が認められます。

第2 相殺の抗弁に関する判例
1 許される事例
① 一部請求訴訟の残部債権による相殺
・  一個の債権の一部についてのみ判決を求める旨を明示して訴えを提起している場合において,当該債権の残部を自働債権として他の訴訟において相殺の抗弁を主張することは,債権の分割行使をすることが訴訟上の権利の濫用に当たるなど特段の事情の存しない限り,許されます(最高裁平成10年6月30日判決)。
② 反訴請求債権による相殺
・ 本訴及び反訴が係属中に,反訴原告が,反訴請求債権を自働債権とし,本訴請求債権を受働債権として相殺の抗弁を主張することは,異なる意思表示をしない限り,反訴を,反訴請求債権につき本訴において相殺の自働債権として既判力ある判断が示された場合にはその部分を反訴請求としない趣旨の予備的反訴に変更するものとして,許されます(最高裁平成18年4月14日判決)。
③ 時効消滅した本訴請求債権による相殺
・  本訴において訴訟物となっている債権の全部又は一部が時効により消滅したと判断されることを条件として,反訴において,当該債権のうち時効により消滅した部分を自働債権として相殺の抗弁を主張することは許されます(最高裁平成27年12月14日判決)。
④ 抵当不動産の賃借人による相殺
・ 抵当不動産の賃借人は,担保不動産収益執行の開始決定の効力が生じた後においても,抵当権設定登記の前に取得した賃貸人に対する債権を自働債権とし賃料債権を受働債権とする相殺をもって管理人に対抗することができます(最高裁平成21年7月3日判決)。
⑤ 請負契約における相殺
・ 最高裁令和2年9月8日判決は, 請負人である破産者の支払の停止の前に締結された請負契約に基づく注文者の破産者に対する違約金債権の取得が,破産法72条2項2号にいう「前に生じた原因」に基づく場合に当たり,上記違約金債権を自働債権とする相殺が許されるとされた事例です。
・  請負契約に基づく請負代金債権と同契約の目的物の瑕疵修補に代わる損害賠償債権の一方を本訴請求債権とし,他方を反訴請求債権とする本訴及び反訴が係属中に,本訴原告が,反訴において,上記本訴請求債権を自働債権とし,上記反訴請求債権を受働債権とする相殺の抗弁を主張することは許されます(最高裁令和2年9月11日判決)。 
2 許されない事例
 相殺の抗弁後行型
・ 係属中の別訴において訴訟物となっている債権を自働債権として他の訴訟において相殺の抗弁を主張すること(いわゆる相殺の抗弁後行型)は,併合審理されている場合であっても許されません(最高裁平成3年12月17日判決。なお,先例として,最高裁昭和63年3月15日判決参照)。
② 訴訟上の相殺の再抗弁
・  訴訟上の相殺の抗弁に対し訴訟上の相殺を再抗弁として主張することは,許されません(最高裁平成10年4月30日判決)。

第3 訴訟上の相殺の抗弁に関する参考答案
・ 昭和33年度司法試験第2問は「訴訟上の相殺の抗弁」というものでしたが,その参考答案は以下のとおりです。
1 総論
(1)ア 訴訟上の相殺の抗弁とは、被告が口頭弁論において自己の債権を相殺に供することで、原告の主張する債権を消滅させ、原告の請求を理由のないものとする抗弁をいう。

イ 相殺の抗弁についての判断は、それが判決理由中の判断であるにもかかわらず、「相殺をもって対抗した額について」既判力が生じる(114条2項)。
 このことは、相殺の抗弁が排斥された場合であると、認容された場合であるとを問わない。
(2)ア ここで、既判力は本来、判決主文で示された訴訟物たる権利・法律関係の存否の判断についてのみ生じ(114条1項)、判決理由中でなされる前提問題たる権利・法律関係の存否の判断については生じないのが原則である。
 なぜなら、当事者間の紛争解決としてはこれで十分であるし、判決理由中の判断については当事者の手続保障を充足しているとは限らないし、また、このように解することは審理の簡易化・弾力化に資するからである。
イ しかし、相殺の抗弁は訴求債権とその発生原因において無関係な反対債権を対当額で消滅させる効果を抗弁とするものである。
 そして、その判断に既判力が認められない場合、訴求債権の存否の紛争が反対債権の存否の紛争として蒸し返され、判決による紛争解決の実効性が失われることから、蒸し返しを防止して一挙に紛争を解決するため、相殺の抗弁についての判断には既判力が認められる。
2 相殺の抗弁が主張された場合の既判力の範囲について
(1) 相殺の抗弁が主張された場合、いかなる範囲で既判力が生じるであろうか。
 まず、反対債権が存在しないとして相殺の抗弁が排斥された場合、敗訴被告が後に反対債権を主張することを防止するため、反対債権の不存在について既判力が生じる。
(2) では、反対債権が存在するとした上で相殺の抗弁を認容して原告の請求が棄却された場合、いかなる範囲で既判力が生じるか。
 この点、訴求債権及び反対債権が共に存在し、かつ相殺によって消滅したことについて既判力が生じるとする説がある。
 この説は、このように解さないと、①原告による、反対債権が初めから存在していなかったことを理由とする不当利得返還請求、及び②被告による、訴求債権が別の理由で不存在であったことを理由とする不当利得返還請求といった紛争の蒸し返しを防止できないとする。
 しかし、既判力は基準時における権利・法律関係の存否を確定するものであるところ、訴求債権及び反対債権の存在は基準時前の事由であり、既判力による確定の対象となるものではない。
 また、反対債権の不存在についてのみ既判力を認めれば紛争の蒸し返しは防止できる。つまり、①原告の不当利得返還請求は訴求債権の存在を先決問題とするから、前訴の請求棄却判決の既判力で封じられる。また、②被告の不当利得返還請求は反対債権の存在を先決問題とするから、反対債権の不存在についてのみ既判力で確定しておけば封じられる。
 よってこの場合、反対債権の不存在についてのみ既判力が生じると解する。
3 相殺の抗弁の特殊性について
(1)ア 相殺の抗弁についての判断には既判力が認められることから、弁済、免除等の抗弁と比べていくつかの特殊性がある。
 まず、弁済、免除等の抗弁については、訴求債権の存在を仮定した上で抗弁を認めて原告の請求を棄却することが許される。
 なぜなら、かかる抗弁の判断は判決理由中の判断にとどまり、既判力を生じない以上、いかなる理由で勝訴しようと被告の利害に差異はないからである。
イ これに対して相殺の抗弁については、訴求債権の存在を仮定した上で相殺の抗弁を認めて原告の請求を棄却することは許されない。
 なぜなら、相殺の抗弁の判断には前述したとおり既判力が生じ、被告にとっては仮にそれが受け入れられて勝訴したとしても、反対債権の喪失という出捐を伴う点で実質敗訴判決といえるからである。
(2) 次に、被告が弁済、免除等の抗弁により勝訴した場合、申立てどおりの請求棄却判決がなされている以上、上訴の利益は認められない(形式的不服説)。
 これに対して、相殺の抗弁により勝訴した場合、前述したとおり被告にとっては実質敗訴判決であるから、例外的に上訴の利益が認められる。
(3) また、弁済、免除等の抗弁は、前述したことからすれば、前訴で提出することを期待できるから、後訴での主張は既判力により遮断される。
 これに対して相殺の抗弁は、前述したことからすれば、必ずしも前訴で提出することは期待できないから、後訴での主張は既判力により遮断されないと解する(判例に結論同旨・最判昭和40年4月2日)。
(4)ア さらに、相殺の抗弁の判断には既判力が生じるから、他の抗弁とは異なり、①既に別訴で相殺の抗弁として用いている債権を請求する抗弁先行型、及び②既に別訴で請求している債権を相殺の抗弁として用いる抗弁後行型について、二重起訴禁止を定める142条が類推適用されるかが問題となる。
イ(ア) まず抗弁先行型では、相殺の抗弁は予備的抗弁として他の防御方法の後で審理されるという特殊性がある点で審理されるかは不確実であるから、裁判所の判断がなされて114条2項に基づく既判力が生じるかは不確実である。
 よって、142条は類推適用されないと解する。
(イ) これに対して抗弁後行型では、自働債権は前訴では訴訟物である点で審理されることは確実であるから、裁判所の判断がなされてその全額について既判力が生じることは確実である。
 よって、142条が類推適用されると解する(判例同旨・最判平成3年12月17日)。
以上

第4 関連記事その他
1 みずほ中央法律事務所HP「二重起訴の禁止と相殺の抗弁」が載っています。
2(1) 債務名義たる判決の基礎となる口頭弁論の終結前に相殺適状にあったとしても,右弁論終結後になされた相殺の意思表示により債務が消滅した場合,右債務の消滅は請求異議の原因となりえます(最高裁昭和40年4月2日判決)。
(2) 金銭債権の数量的一部請求訴訟で敗訴した原告が残部請求の訴えを提起することは,特段の事情がない限り,信義則に反して許されません(最高裁平成10年6月12日判決)。
(3) 抵当不動産の賃借人は,物上代位による賃料債権の差押え前に賃貸人との間でした,抵当権設定登記の後に取得した賃貸人に対する債権と上記差押え後の期間に対応する賃料債権とを直ちに相殺する旨の合意の効力を抵当権者に対抗できません(最高裁令和5年11月27日判決)。
3 以下の記事も参照してください。
・ 損益相殺

ケーブル及びUSB等に関するメモ書き

目次
1 ディスプレイケーブル関係
2 LANケーブル関係
3 充電ケーブル関係
4 USBケーブル関係
5 コンセント関係
6 関連記事

1 ディスプレイケーブル関係
(1) ディスプレイケーブルの種類
    ディスプレイケーブルとしては以下のものがあります(ELECOM HPの「映像の出力・入力はケーブル選びが重要!ディスプレイケーブルの種類と選び方」参照)。
① DisplayPort
・ デジタル式であり,1本のケーブルで映像・音声・制御信号を伝送できます。
・ パソコンモニターを中心に搭載されています。
・ 端子が小型のミニDisplayPortもあります。
② HDMI
・ デジタル式であり,1本のケーブルで映像と音声を伝送できます。
・ 通常サイズのタイプAのほか,ミニHDMI(タイプC)及びマイクロHDMI(タイプD)があります(ELECOM HPの「Q.【HDMI】HDMIケーブルのタイプA、C、Dとは何のことですか?」参照)。
③ DVI
・ デジタル・アナログ両方の信号に対応しているのがDVI-Iであり,デジタル信号にのみ対応しているのがDVI-Dであり,アナログ信号にのみ対応しているのがDVI-Aでありますところ,単にDVIと書いてある場合,DVI-Dを意味していることが多いです。
・ 映像しか伝送できません。
・ DVI端子は3種類ですが,DVIケーブルは5種類あります(penpenのパソコン入門HP「DVI-I・DVI-D・DVI-Aの違い」参照)。
④ VGA
・ アナログ式のディスプレイケーブルです。
・ D-subには9ピン,15ピン,25ピン,37ピン及び50ピンがありますところ,15ピンのD-subがVGAになります。
・ 映像しか伝送できません。
⑤ MHL
・ microUSBポートを使ってモニターに映像や音声信号を出力できます。
⑥ USB Type-C
・ 上下左右対称のシンメトリーデザインであり,映像及び音声信号を伝送できますし,「USB Power Delivery」という高速給電規格に対応しています。
⑦ Thunderbolt3/4
・ 端子の形状はUSB Type-Cと同じであり,Thunderbolt接続に対応したUSB Type-Cケーブルの上位互換というイメージです。
・ 稲妻マークに数字の3又は4が書いてあります。
(2) その他メモ書き
ア uzurea.net「AVケーブルの種類とその端子(コネクタ)形状一覧。コンポジットからHDMIまで」が載っています。
イ サンワダイレクトHP「Type-C変換アダプタのおすすめ12選|HDMI、VGA、displayport、LANに変換」が載っています。
ウ モニターの電源を切った場合,DisplayPortのときはパソコンとの接続が失われるのに対し,HDMIのときはパソコンとの接続が失われません(けしろぐブログ「HDMIとDisplayPort どっちが良い?→迷ったらHDMIがいいよ」参照)。
エ さっさん部ログ「キャプチャーボードとは?今更人に聞けないキャプチャーボードの役割について解説します」(2021年3月31日付)には以下の記載があります。
キャプチャーボードとは、一言でいうとPS4やNintendo Switchなどのゲームプレイ画面をPCに取り込むために必要なものです。
つまりこれを使うことでゲーム画面を録画したり、YouTubeなどでライブ配信することができます。
▼最近のPCにはHDMI端子が搭載されているものがほとんどですが、それはPC画面をモニターに出力するためのもの(HDMI OUT)で、他の機器からの映像入力(HDMI IN)に対応したものではありません。
オ PC WATCH「「USB Type-C」と「Thunderbolt」って同じもの?よく分かる最新コネクタ解説」には以下の記載があります。
(山中注:2020年に登場した)Thunderbolt 4ケーブルが1本あれば、現行のUSB Type-Cケーブルでできる、あらゆることができてしまう。正確には1つだけ「USB 3.2 Gen 2×2での転送をサポートしている場合とそうでない場合がある」という例外はあるのだが、これが問題になるのはかなりのレアケースだ。


2 LANケーブル関係
(1) イーサプライ本店HP「LANケーブル、正しく選べていますか?」が載っています。
(2) PoEとは「Power over Ethernet」の略であり,電源コンセントやアダプタを必要とせずにネットワークケーブルから電子機器に電力供給ができるシステムのことをいいます(PANDUIT HP「PoEをより快適に|ケーブルの選び方で環境を変えよう」参照)。

3 充電ケーブル関係
(1) 充電ケーブルとしては,以下のものがあります。
① USB Micro-B(USBマイクロB)
② USB Type-C(USBタイプC)
③ Lightning(ライトニング)
(2) 充電ケーブルには「充電専用」と,「充電・データ転送対応」のものがありますところ,パソコンとスマートフォンやタブレット端末を接続してデータの同期や転送を行なう場合,「充電・データ転送対応」の充電ケーブルが必要となります(チエネッタHP「Q. スマートフォンやタブレット端末につなぐ充電ケーブルの選び方がわかりません」参照)。
(3) 充電ケーブルではありませんが,置くだけで充電ができる,ワイヤレス充電の規格としてQi(チー)がありますところ,「Qi」という規格に対応したスマートフォン及びタブレット端末が対象です。

4 USBケーブル関係
(1) USBケーブルの種類
    USBケーブルの形状としては以下のものがあります(ソフトバンクニュースの「【解説】USBケーブルの種類がまるわかり! ケーブルの見分け方や使い方を解説します」,及びTIME&SPACE「『USB』の違いってなに?Lightning、Type-C、USB3.0、micro USBなど各ケーブルと対応機種は…」参照)。
① USB Type-A(2.0)及びUSB Type-A(3.0)
・ パソコン側に接続されることが多いです。
・ 平べったい長方形をしていて,端子を見ると青や白の部分があります。
・ 形状的にはUSB(1.1)(最大転送速度は12Mbps)と同じです。
・ USB2.0の最大転送速度は480Mbpsであり,USB3.0の最大転送速度は5Gbpsです。
② USB Type-B(2.0)
・ プリンターなどパソコンに接続する周辺機器で多いです。
・ 2つの角が削られた六角形をしています。
③ mini USB Type-B
・ デジカメ,ICレコーダーなど比較的小型の機器で多いです。
・ 横の辺が少しくびれているのが特徴です。
④ Micro USB Type-B(2.0)
・ Androidスマートフォンやタブレットなどで多いです。
・ 台形を平たくつぶしたような形の端子が特徴です。
⑤ Micro USB Type-B(3.0)
・ ポータブルHDDや外付けDVDドライブなどで多いです。
・ 中央付近にへこみのある薄い長方形をしているのが特徴です。
⑥ USB Type-C(3.1)及びUSB Type-C(3.2)
・ Androidスマートフォン,ノートPCなどで多いほか,iPad Proで使われています。
・ 端子が楕円(だえん)形をしているのが特徴です。
・ USB3.1の最大転送速度は10Gbpsであり,USB3.2の最大転送速度は20Gbpsです。
⑦ Lightning
・  iPhone や iPad などApple製品で使われていますが,iPad Proの場合,USB Type-Cが使われています。
・ 形状は非常に薄型で,Type-Cのように上下の向きを気にせず挿すことができます。
(2) USB Type-C
ア USB Type-Cのメリットは以下のとおりです(「USB Type-C データ送信も電力供給もこれ1本の日が近づいている次世代コネクタ」参照)。
① 超高速データ転送が可能であること。
② USB Power Deliveryに対応していること。
③ オルタネートモードでUSB以外の信号が利用可能であること。
イ 急速充電にまつわる規格「USB PD(USB Power Delivery)」のケーブルは,両端がともにUSB Type-Cであることが原則です(PC Watchの「イマドキの急速充電機能「USB PD」って知ってる?スマホ/タブレット/ノートPCで即役立つ充電の必須知識」参照)。
ウ PC WATCHの「「USB 3.0」=「USB 3.1 Gen 1」=「USB 3.2 Gen 1」? すぐ分かるUSBの「Gen」表記ルール」には以下の記載があります。
    2008年に登場したUSB 3.0は転送速度5Gbpsの規格だが、2013年にはその2倍、10Gbpsで転送が可能なUSB 3.1が登場した。ここで「USB 3.0は5Gbps、USB 3.1は10Gbps」のまま終わらせておけば、恐らく大きな問題はなかった。
    この時、USB 3.0を「USB 3.1 Gen 1」という表記に変え、新しく登場した10Gbpsの方のUSB 3.1は「USB 3.1 Gen 2」という表記にしてしまった。「USB 3.1 Gen 1は5Gbps、USB 3.1 Gen 2は10Gbps」というわけである。USB 3.1に揃えたかった意図は分からなくはないが、今思えばこれが全ての元凶だ。
 そして4年後の2017年にUSB 3.2が登場した時にも同様の名前の付け直しが実行され、「USB 3.2 Gen 1は5Gbps、USB 3.2 Gen 2は10Gbps、USB 3.2 Gen 2×2は20Gbps」という、その筋の人以外には理解できない複雑怪奇な命名ルールになってしまった。
(中略)
    裏では涙ぐましい努力が繰り広げられているわけだが、朗報と言えるのが、現在の最新規格であるUSB4では、小数点以下の規格は将来的にも登場しないことになっているほか、Gen表記についても(ユーザーが目にするところでは)使われないと決まっていることだ。「USB4.1」や「USB4.1 Gen 1」の出現に怯える必要はもはやないというわけだ。

5 コンセントに関するメモ書き
(1) コンセントは差し込む穴であり,プラグは突起です(オリーブオイルをひとまわしブログ「コンセントとプラグの違いとは?種類や交換方法、費用など徹底解説!」参照)。
(2) ELECOM HPの「電源タップ選び方ガイド」では,14種類の電源タップ(延長コード)が紹介されています。
(3) TIME&SPACE HPに「USB充電機器をまとめて充電! 用途別『USB充電機能付き電源タップ』おすすめ7選」が載っています。

6 関連記事その他
(1) PANDUITの「イーサネットとLANケーブルは同じ?通信規格とその種類」には「「イーサネット対応機器」というのは一般的に、LANケーブルを差せるということです。そのため、イーサネットとLANケーブルはほぼ同義と考えても問題ありません。」と書いてあります。
(2) 以下の記事も参照してください。
・ IT関係のメモ書き

IT関係のメモ書き

目次
第1 ディスプレイ関係
→ 「ケーブル及びUSB等に関するメモ書き」も参照して下さい。
第2 ディスプレイのキャスト関係
1 スマホの画面を無線で出力する方法
2 Googlecast関係
3 Miracast関係
第3 アカウント及びパスワード等
1 アカウント
2 パスワード等
第4 インターネット接続に関するメモ書
1 プロバイダと回線業者
2 モデム,ルーター及びスイッチングハブ
3 ONU及びホームゲートウェイ
4 UNIランプ
5 IPアドレス
6 「インターネットなし、セキュリティー保護あり」と表示されている場合の対処方法
7 WebARENA
8 SIMカード
9 VPN
10 その他
第5 Wi-Fi接続に関するメモ書き
1 フレッツ光でWi-Fiを利用する3つのパターン
2 Wi-Fiの通信規格
3 Wi-Fiの周波数帯
4 新幹線でのWi-Fi利用
5 SSIDに関するメモ書き
6 無線LANの暗号化方式であるWEP及びWPAに関するメモ書き
7 ホームルーター(置くだけWi-Fi)に関するメモ書き
8 Wi-Fi EasyMeshに関するメモ書き
9 Wi-Fiがつながらないときに考えられる原因
10 その他
第6 
テザリングに関するメモ書き
第7 MACアドレスに関するメモ書き
第8 各種サービスの紹介サイト
第9 パソコン等の操作メモ
1 パソコンの画面関係
2 Google Chromeのリモートデスクトップ関係
3 印刷関係
4 PDF関係
5 スキャナ関係
6 その他
第10 メール関係
1 POPとIMAP
2 メールのヘッダとボディ
3 メールのセキュリティ関係
4 Unknown user
5 ビジネスメール実態調査
6 その他
第11 Gmailに関するメモ書き
第12 Thunderbirdに関するメモ書き
1 日々の利用関係
2 Thunderbirdのショートカットキー
3 アカウントの設定関係
4 Thunderbirdのメールの引越関係
5 その他
第13
 ファイルサーバーに関するメモ書き
第14 Webサーバ及びネームサーバに関するメモ書き
第15 固定電話のメタルIP電話への移行に関するメモ書き
第16 ADSLに関するメモ書き
第17 スキャナに関するメモ書き
1 スキャナーのドライバ(ISISとTWAIN)
2 スキャナーのアプリケーション(例えば,ScanSnap Manager)
3 株式会社PFU
4 その他
第18 パソコン等の操作に関する外部サイト
1 Windows関係
2 アプリ関係
3 PDF関係
4 Word関係
5 Twitter関係
第19 二段階認証に関するメモ書き
第20 Zoomに関するメモ書き
第21 Teamsに関するメモ書き
第22 iPadに関するメモ書き
第23 クロームブックに関するメモ書き
第24 エアドロップに関するメモ書き
第25 登記情報提供サービスに関するメモ書き
第26 インターネットバンキングに関するメモ書き
第27 スマートEXに関するメモ書き

第28 マイナンバーカードに関するメモ書き
第29 リーガルテックに関するメモ書き
第30 個人情報保護法に関するメモ書き
第31 著作権に関するメモ書き
1 リンクを貼ること自体により著作権侵害が生じることは原則としてないこと
2 埋め込みコードを利用したYouTube動画の紹介により著作権侵害が生じることは原則としてないこと
3 Twitterの埋め込みにより著作権侵害が生じることは原則としてないこと
4 リツイートにより氏名表示権が侵害される場合があること
第32 Goproに関するメモ書き
第33 画像ファイルに関するメモ書き
第34 セキュリティソフトに関するメモ書き
第35 パソコン関係のその他メモ書き
第36 関連記事その他


第1 ディスプレイ関係
1 パソコン工房HP「外部ディスプレイ接続・設定する方法 (テレワーク 向け)」が載っています。
2 igaki.work「導入するだけで生産性が2倍になる、縦置きマルチディスプレイのすすめ」(2020年2月18日付)が載っています。
3 ブログ名つけてください。ブログ「chromebookでリモートデスクトップをするときに、接続先PCがマルチモニタだと大変な事に!の解決。」が載っています。
4 いろいろブログに「spacedeskの使い方iPadをWindows10でマルチディスプレイ化する方法の解説」が載っています。

第2 ディスプレイのキャスト関係
1 スマホの画面を無線で出力する方法

    スマホの画面を無線で出力する方法としては以下のものがあります。
① Google Cast(グーグルキャスト)
・ 対応機器としては,Chromecast(グーグル)及びChromecast with Google TV(グーグル)があります。
・ Google CastはGoogleの技術ですから,対応機器もGoogleが販売しています。
② Miracast(ミラキャスト)
・ 対応機器としては,Fire TV Stick(アマゾン),Fire TV Stick 4K(アマゾン)及びワイヤレスディスプレイアダプターV2(マイクロソフト)があります。
・ MiracastはWi-Fi技術を定める団体であるWi-Fi Allianceが策定した規格ですから,対応機器もAmazonやマイクロソフトなどさまざまなところから販売されています。
・ Miracast対応テレビやAndroid TVの場合,専用機器は不要です。
2 Googlecast関係
・ iPhone格安通信SIM HP「iPhoneをChromecast(クロームキャスト)にミラーリングする方法・接続設定解説」が載っています。
3 Miracast関係
(1) パソコン工房ネクスマグ「ワイヤレスディスプレイで画面を共有しよう!」にMiracastの設定方法が書いてあります。
(2) アイコンスペースブログ「iPhone/iPadをテレビへ接続(ミラーリング)する方法」には,Amazon Fire TV Stick及びそのソフトウェアであるAirReceiver を使ってテレビに接続する方法が書いてあります。

第3 アカウント及びパスワード等
1 アカウント
(1) とはサーチHP「アカウントとは?初心者にも意味がわかるように解説」には以下の記載があります。
    アカウントとは、個人を識別するために事前登録する「IDとパスワードのセット」のことを指します。 アカウントは、スマホやパソコン本体を使用する時のほか、アプリやWebサービスを利用するための権利として必要になります。 ネット初心者にもわかりやすく日本語に例えると「会員登録」みたいな意味です。
(2) ドクター・ホームネットコラム「Windows 10のMicrosoftアカウントとローカルアカウントの違い」が載っています。
(3) クラスメソッドHP「[Microsoftアカウント]と[職場または学校アカウント]の違い」が載っていますところ,私が裁判所の期日においてteamsを利用する場合,「個人のアカウント」(お客様が作成)となる「Microsoftアカウント」を使っています。
(4) ローカルアカウントは,アカウントを作成したパソコンのみで使用することができるのであって,Windows 95やWindows XPなどの古いOS時代から存在しており,登録時にインターネット接続は必要ありません(ドクター・ホームネットコラム「Windows 10のMicrosoftアカウントとローカルアカウントの違い」参照)。
2 パスワード等
(1)ア NECの「MFA(Multi-Factor Authentication)複数の認証手段により、なりすましを防止。近年は利便性も考慮」には以下の記載があります。
    従来、認証方法として多くの企業、組織でIDとパスワードの組合せによるパスワード認証が多く利用されてきた。パスワード認証は使い方を教えなくても誰でもが使える、多くのアプリケーションで古くから提供されている等の理由から広く普及した。しかし、近年は辞書攻撃やブルートフォース攻撃、そしてソーシャルエンジニアリング等により、このパスワード認証を第三者に突破されて情報が漏えいするケースが増えている。
    そこで、より安全に、確実に認証を行うために広く利用されるようになってきているのが多要素認証である。認証方法の3要素である「記憶」「所持」「生体情報」のうち、複数の要素の組み合わせで実現するケースが一般的である。
イ なにしろパソコンHP「「Microsoftアカウント」のサインインを安全で簡単にする」に,「Microsoft Authenticator」アプリの設定方法が載っています。
(2) ITmedia NEWSの「PINとパスワードは何が違う? 意外と知らない「知識認証」のハナシ」には以下の記載があります。
    パスワードはその内容がそのまま、もしくは暗号化されて、ネットワークを通じてサーバ側に届き、サーバ内で保存されているパスワード情報と合致しているかを判定します。
    一方、PINはネットワークには流れることを想定していません。PCやスマホの場合は、入力した端末内で、その端末内に保存されているPIN情報との照合を行います。ATMでキャッシュカードやクレジットカードを使う場合は、カードに内蔵されたICチップの中にあるPIN情報との照合を、ATM端末を通じて行います。
(3) Japan Azure Identity Support Blog「スマホを替える時は、Microsoft Authenticator の移行を忘れないでください!」が載っています。




第4 インターネット接続に関するメモ書き
1 プロバイダと回線業者
(1) iTSCOM for Business「プロバイダと回線業者の違いを理解しよう!経営者におすすめのプロバイダとは」には「基本はプロバイダと回線業者の2社契約」として以下の記載があります。
インターネット接続するには、通信回線とインターネット接続サービスの契約が必要です。どちらか一方を契約しただけではインターネットに接続できません。基本的にプロバイダと回線業者は別の会社なので、2社と契約し双方から請求書が届きます。
例えば、フレッツ光を利用するにはプロバイダとの契約も必要です。この場合、回線業者であるN社から回線使用料金の請求書が届き、プロバイダからはプロバイダ料金の請求書が届きます。
(2) 光回線は光ファイバーを利用した回線であり,モバイルルーターは屋外へ持ち運びできる回線であり,ケーブル回線はケーブルテレビのインターネット回線であり,ADSLは電話回線を使用したインターネット回線です(@nifty光HP「光回線とは?イラスト付で初心者にもわかりやすく解説!」参照)。
(3)ア 回線業者としては,NTT東日本及び西日本の「フレッツ光」,J:COMの「J:COM NET」,UQコミュニケーションズの「WiMAX」,KDDIの「auひかり」などがあります(ドスパラの「プロバイダーとは?回線事業者との違いは?インターネット接続するために知っておくべき知識をご紹介」参照)。
イ 国内で利用できる代表プロバイダーは以下のとおりみたいです(Slodiの「国内の代表的なプロバイダ一覧」参照)。
@nifty,plala,BIGLOBE,OCN,hi-ho
So-net,DTI,BB.excite,GMOとくとくBB,@TCOM
AsahiNet,WAKWAK
(4)ア 平成27年2月1日に開始した光コラボレーションモデルの場合,プロバイダーとなる光コラボレーション事業者がNTT東日本又は西日本から光回線を借りること,光回線とプロバイダーサービスをセットで提供しています。
イ hi-hoに「光コラボレーションモデルに対応した新サービス「hi-ho ひかり」提供開始について」(平成27年2月17日付)が載っていますし,「光回線とネット回線をまとめられるhi-hoひかりでネットを始めよう!」も載っています。
(5)ア NTTファイナンスの回収代行(決済代行)サービスでは,加盟店の様々なサービス料金をNTTドコモ,NTT東日本及びNTT西日本の通信料金と一緒に回収する,NTTファイナンスのオリジナル決済手段の「電話料金合算サービス」に加え,上記3社の通信サービス等のご利用がない人への請求については,口座振替や請求書等のその他決済手段も提供しております(NTTファイナンス「回収代行(決済代行)サービス」参照)。
イ plala HP「請求先番号のご確認」が載っています。
引続きぷらら月額利用料をNTT東西の利用料金請求に合算して回収させていただく(「NTT回収代行」)ためには「支払申し込み書」(※)の再提出が必要です。
※支払申し込み書(「ぷらら」料金請求先電話番号等登録申し込み書兼登録内容変更依頼書」)とはNTT回収代行をご利用いただくために必要な書類です。
(6) 個人向けOCNお客さまサポートHP「突然インターネットがつながらなくなった インターネット接続で困ったときは」が載っています。

2 モデム,ルーター及びスイッチングハブ
(1) ①モデムとは,パソコンのデジタル信号と電話回線・ケーブルテレビ回線のアナログ信号を相互に変換する機器のことであり,②ルーターとは,パソコンやスマートフォンなど複数のデバイスをインターネットに接続する機器のことであり,③スイッチングハブ(いわゆる「ハブ」です。)は,ルーターを使用してインターネットに接続できるデバイス数をさらに増やすために必要な機器のことです(Broad WiMax通信HP「モデムって何?ルーターやハブとの違いも分かりやすく解説」参照)。
(2) マイナビおすすめナビに「有線LANルーターのおすすめ11選|通信速度安定!選び方やWi-Fi6対応モデルも」が載っています。
(3) 無線LANルーター(Wi-Fiルーター)は,Wi-Fiの電波を飛ばして,スマホやパソコンを無線で接続するためのルーターでありますところ,NTT西日本HPに「BUFFALO社製ルーター(ホームゲートウェイと他社製無線ルーターの接続方法)」が載っています。
(4) WiMAX比較.com「モバイルルーターのおすすめ徹底比較!2022年11月最新ランキング!」が載っています。

3 ONU及びホームゲートウェイ
(1) CLIPの「光回線終端装置(ONU)って何?モデム・ルーターとは違う役割」には以下の記載があります。
ONUとは光回線でインターネットに繋ぐために重要な機器のこと。
「Optical Network Unit」の頭文字で、日本語では「光回線終端装置」といいます。
現在主流の光回線では、データを光ファイバーケーブルを通る光信号でやりとりします。パソコンやスマホなどのデバイスはデジタル信号でデータを管理するため、光回線でデータを送受信するには、光信号とデジタル信号を相互に変換する必要があります。その役割を果たすのが、ONUです。自宅などに引いた光回線とパソコンなどのデバイスとONUをLANケーブルで接続することで、インターネットとパソコンを繋ぐことができるのです。
(2) ヒカリcom「光回線の終端装置(ONU)とは?ルーターとの違いや遅いときの対処法など全まとめ」には以下の記載があります。
基本的にONUは光回線を契約したら開通工事前に郵送で送られてくるか、開通工事当日に業者が持ってきてくれます。 ONUの裏側にはパソコンと接続するためのLANポートがあり、LANケーブルがあれば有線接続でネットが利用可能です。 場合によってはルーター機能が搭載されたONUを提供している光回線もありますが、一般的にはルーターを自分で用意しないとWi-Fi(無線)接続はできないので覚えておきましょう。
(3) ONUには,認証ランプ,UNIランプ,光回線ランプ及び電源ランプがあります(@niftyIT小ネタ帳の「UNIの点滅は故障?光終端装置ONUのランプの状態の意味と異常時の対処法」参照)。
(4)ア ホームゲートウェイは,インターネットに接続するための機器であって,主な役割は,①光信号とデジタル信号の変換,②LAN環境の構築(ルーターの役割も担っているということです。)及び③ひかり電話ルーター機能です(@niftyIT小ネタ帳「ホームゲートウェイとは|ルーターやONUとの違いを解説」参照)。
イ DTIの「ホームゲートウェイとは? ルーターとは違うの? 購入が必要?」には「故障しているかどうかはホームゲートウェイのランプを確認」として以下の記載があります。
まずホームゲートウェイのランプの点灯状態を確認しましょう。認証ランプが消灯している場合、光回線ランプが橙色に点滅している場合、電源ランプが赤く点灯している場合は故障の可能性があります。
(5) NTT西日本HPにフレッツ光の設定ガイドが載っていますところ,NTT西日本のお客様IDは「CAF」で始まるみたいです。
(6) ONU又はホームゲートウェイのPPPランプが消えてから突然,インターネットに接続できない場合,ONU又はホームゲートウェイがインターネットに接続できていない可能性があります(個人向けOCNお客様サポートの「PPPランプが消えている インターネット接続で困ったときは」参照)。


4 UNIランプ
・ PREBELLの「これは故障?UNIってなに?UNIランプが点滅する意味を解説 」には以下の記載があります。
UNIランプは通信事業者の設備と正常に接続できているかを確認する部分です。点灯はもちろん、点滅も正常な動作を示しています。
ちなみに点滅は通信事業者の設備と通信中であることを示しています。
UNIランプが光らない場合は、接続機器と通信事業者の設備は接続できていません。インターネット通信している端末や接続機器間の接続に異常が発生している可能性があります。
5 IPアドレス
(1) IPv4の場合,IPアドレスは,3桁:3桁:3桁:3桁(3桁の数字は0~255の範囲)で表示されています(Quoraの「IPアドレスの桁数は決まっていますか?」参照)。
(2) CMAN HPの「あなたが現在インターネットに接続しているグローバルIPアドレス確認」にアクセスすれば,利用中のIPアドレスを確認できます。
(3) B4iine.net「プロバイダー確認君」にアクセスすれば,プロバイダー名,IPアドレス及びリモートホストが分かりますし,「確認君+」にアクセスすれば,使っているOS及びブラウザ,JavaScriptが有効か,画像の解像度及び直前にいたページ(リファラ)まで分かります。
(4) サンダーバードメールの場合,メール画面→「その他」→「ソースを表示」→「Received: from」の行に含まれる10桁から12桁までのIPアドレスを,cman.jp「ドメイン/IPアドレス サーチ 【whois情報検索】」に入力すれば,接続プロバイダがどれであるかが分かることがあります。
(5) ドメイン名は,IPアドレスに付けた人間向けの名前です。
(6) 案件評判ブログに「ドメイン固有言語(DSL)を理解する!初心者でも分かる分類、特徴、汎用言語との違いなどを簡単に解説!」が載っています。

6 「インターネットなし、セキュリティー保護あり」と表示されている場合の対処方法
(1) 「インターネット接続なし」が表示される主な理由は以下の3点です(NURO HPの「「インターネット接続なし」が表示される3つの理由と対処法を解説」参照)。
① パソコンやスマホの端末の問題
② Wi-Fiルーターやケーブルの問題
③ プロバイダの問題
(2) さる吉のIT日記「「インターネットなし、セキュリティー保護あり」と表示されてネットに接続できない場合の原因と対処法」には「スマートフォンや他のPC含めすべての機器がネットに接続できない場合の対処法」として以下の三つの方法が書いてあります。
① モデム及びWi-Fiルーターの電源を入れ直す。
→ モデムとありますが,ONUのことと思います。
② インターネットの使用料の支払いが滞っていないか?
→ 個人的には,毎月1日又は2日に突然,サービスが停止した場合,②が原因であることが多い気がします。
③ Wi-Fiルーターの初期化を行う

7 WebARENA
(1) WebARENAの「WebARENAの主な特長」には以下の記載があります。
WebARENAは、NTTPCコミュニケーションズが提供するレンタルサーバーとデータセンターのサービスブランドです。
1997年のハウジングサービス開始以降、ホスティングサービス,メールサーバー,VPS,専用サーバー,データセンターサービスを提供してきました。
またドメイン取得サービスやネットワークサービスとも連携し、お客さまのビジネスの効率化、拡大をサポートします。
(2) 名づけてねっとは,NTTグループが平成11年から運営しているドメイン取得サービスです。

8 SIMカード
・ SIMとは,Subscriber Identity Module の頭文字を略したもので,小型のカード型の形から「SIMカード」と呼ばれていますところ,SIMには加入者を特定するための契約者情報が記録されており,これを電話番号と結びつけることで通信/通話ができるようになっています(UQmobileの「SIMカードとは?初めての方向けSIMカードの基本を解説」参照)。
9 VPN
・ 株式会社WWGブログの「【iPhoneでも設定できる】VPNとは?そのメリット・デメリット」には「VPNは、Virtual Private Network(バーチャル プライベート ネットワーク)の略で、直訳すると「仮想専用線」となります。」と書いてあります。

10 その他
(1) Voiceに「ダイヤルアップ接続とは?仕組みや速度を光回線と比較しながら解説|トラムシステム」が載っています。
(2) リファラ(参照元)とは,アクセスログに記録されるデータの一つで,ユーザーがサイトに流入する時に利用したリンク元のページの情報です(ナイルのSEO相談室「リファラとは?ノーリファラとは?リファラスパムに注意すべき理由を解説」参照)。
(3) LINE MOBILEの「スマートフォンのPINコードって何?パスワードとの違いや安全性を解説」には,「基本的に、パスワードはTwitterやAmazonといったSNSやウェブサイト、アプリなどの分野に関連付けられるものです。一方で、PINコードとはスマートフォンやPC、タブレットなどの端末やSIMカードに関連付けられています。」と書いてあります。
(4) ぼくらのハウツーノート「認証アプリを使って本人確認を行う」に,Microsoft Authenticatorを用いた本人確認方法が書いてあります。
(5) 日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)HP「DHCPとは」には,「DHCPとは「Dynamic Host Configuration Protocol」の略で、 IPv4ネットワークにおいて通信用の基本的な設定を自動的に行うためのプロトコルです。RFC2131によって定義されています。」と書いてあります。
(6) AsahiNetの「IPv6とは?IPv4との違いや接続方式の種類、利用時の手続きの流れ」には以下の記載があります。
IPv6(Internet Protocol Version 6)は、インターネットプロトコルの規格を指します。
プロトコルとは、ネットワークを介してコンピューター同士が通信を行う際に、あらかじめ相互で決められた約束事です。
1990年代後半から広く使用されているIPv4の後継であり、世界的にIPv6の普及が加速しているため、インターネットサービスの主流がIPv6になる未来も遠くないと思われます。

第5 Wi-Fi接続に関するメモ書き
1 フレッツ光でWi-Fiを利用する3つのパターン

(1) 自宅のフレッツ光でWi-Fiを利用する3つのパターンです(やさしいネットガイドHP「フレッツ光で自宅にWi-Fi環境を!レンタルする「無線LANカード」ってどんなもの?」参照)。
① レンタルしたホームゲートウェイの無線LAN機能を使う
② レンタルした無線LANカードを設置して使う
③ 自分で購入した無線LANルーターを設置して使う
(2) SC-40NEは,「ひかり電話ルータ」専用の無線LANカードです。
2 Wi-Fiの通信規格
(1) BUFFALOの「5G時代の高速Wi-Fi規格 Wi-Fi6とは」には以下の記載があります。
「Wi-Fi」の規格はIEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers、日本語では米国電気電子学会。読み方はアイ・トリプル・イー)という学会が決めています。「Wi-Fi」の規格は、1997年に標準化された「IEEE 802.11」の後ろにアルファベットを付けて世代を表していました。
一方で、「Wi-Fi」という呼び方は、Wi-Fiを普及させることを目的にした「Wi-Fi Alliance」という業界団体が使用しているブランド名です。
(2) 歴代のWi-FIの通信規格は以下のとおりです。
第6世代のWi-Fi(2019年):IEEE802.11ax
第5世代のWi-Fi(2013年):IEEE802.11ac
第4世代のWi-Fi(2009年):IEEE802.11n
第3世代のWi-Fi(2003年):IEEE802.11g
第2世代のWi-Fi(1999年):IEEE802.11a又はIEEE802.11b
第1世代のWi-Fi(1997年):IEEE802.11
(3) チエネッタHP「Q. IEEE802.「11b / 11g / 11a /11n / 11ac / 11ad / 11ax」って何?」には以下の記載があります。
光回線などの高速通信をご利用の場合は、「11n」以降の規格に対応したWi-FiルーターやWi-Fi子機(パソコンやタブレット端末など)を使用すると、より快適にインターネットを楽しめますよ。
(4) バッファローのWI-U3-866Dは,11ac未搭載パソコンを快適な11ac速度にアップグレードしてくれる,次世代規格11ac対応子機 です。
3 Wi-Fiの周波数帯
・ 無線LAN(Wi-Fi)では,2.4GHz帯と5GHz帯の2つの周波数が利用できますところ,①無線ルーターとの距離が遠い場合,及び②天井や壁がある場合,障害物に強く遠くまで電波が届きやすい特性を持つ2.4GHz帯が有利です(ひまわりネットワークHP「つながりにくいときの対策B-① 電波の種類を選ぶ(離れた場所でつながらない編)」参照)。
4 新幹線でのWi-Fi利用
(1) WiFiの極みHP「新幹線で使えるWiFiを徹底解説!フリーWiFiの使い方や繋がらない原因、口コミや評判を紹介」が載っています。
(2) 東海道新幹線区間のトンネルは13.3%であるのに対し,山陽新幹線区間のトンネルは50.7%です(新しい新幹線路線の今がわかるページ「東海道・山陽新幹線のトンネル一覧」参照)から,山陽新幹線は東海道新幹線ほどWi-fiを利用しやすくはありません。
5 SSIDに関するメモ書き
(1) SSIDは,Service Set IDの略称でありますところ,BUFFALOの「Wi-Fiの安全を守るセキュリティー」には以下の記載があります。
Wi-Fiルーターには、それぞれ個別のSSIDが設定されています。SSIDとはWi-Fiルーターを識別するためのIDです。英数字の文字列で構成され、スマホやパソコンのWi-Fi画面には、電波が届く範囲のWi-FiルーターがSSIDで表示されます。
セキュリティー設定が行われたSSIDに接続するためには、それぞれのSSIDに設定されたKey(パスワード)が必要となります。SSIDとKeyはWi-Fiルーターの本体や同梱のカードなどに記載されています。
(2) ソフトバンクHPに「Wi-Fi接続に必要な「ネットワーク名」(SSID)はどこで確認できますか?」が載っています。
(3)ア SSIDステルスとは,無線LANルーターがみずからのSSID(ネットワーク名)を知らせるために発信するビーコン信号を停止して,SSID一覧(ネットワーク名一覧)から参照できないようにすることを指します(日立ソリューションズ・クリエイトHP「SSIDステルスなら安全? 設定方法とメリット・デメリット」参照)。
イ 発注ラウンジHP「ビーコンとは?身近にある活用例と新たな集客サービスへの活かし方」には「Bluetoothの信号を使って情報を発信する端末やその通信方法を「ビーコン」といいます。スマートフォンが普及してBluetoothの信号を受信できる端末が増えたため、ビーコンが活用される場面が増えてきています。」と書いてあります。
(4) brother HPに「【全製品共通】Windows の無線 LAN のセキュリティ情報 (SSID、 ネットワークキーなど) の確認方法」が載っています。
6 無線LANの暗号化方式であるWEP及びWPAに関するメモ書き
(1)ア CANONのサイバーセキュリティ情報局HP「無線LANの暗号化方式、WPA2のTKIPとAESの違いとは?」には以下の記載があります(WPA2は認証方式の一つであり,AESは暗号化アルゴリズムの一つです。)。
1997年に登場した認証方式である「WEP」は、高い機密性を売り文句に当初は期待を集めた。しかし後に、暗号キーが固定である点などが問題視され、その実装が脆弱であると判断された。
(中略)
現在では、2002年に発表された「WPA」、および2004年の「WPA2」が実質的な標準として普及している。さらに、2018年には過去の暗号化方式との互換性を維持しながらセキュリティを高めた「WPA3」も登場した。
WPA3が登場した背景には、WPA2に指摘された「KRACK」と呼ばれる脆弱性がある。KRACKとはKey Reinstallation AttaCKs(キー再インストール攻撃)の略であり、多くの無線LAN機器に影響があるとして話題となった。
(中略)
TKIP(Temporal Key Integrity Protocol)

通信を繰り返して行う際に、暗号キーを毎回変更できるようにした方式。暗号化アルゴリズムにRC4を用い、設定された暗号パスワードをそのまま使うのではなく、一定の送受信回数ごとに切り替わる一時鍵や、端末に固有で与えられたMACアドレスを暗号キーに加えるのが特徴だ。
(中略)
AES(Advanced Encryption Standard)
無線LAN上に流れるデータを、ある一定の長さに分割し、置換・並べ替えを繰り返す、暗号化アルゴリズムでRC4よりも強固とされる。暗号化方式のひとつ、CCMP(Counter mode with CBC-MAC Protocol)の暗号化アルゴリズムとして用いられる。
(中略)
ここで注意しておくべきポイントとしては、TKIPとは暗号化の方式のことで、AESは暗号化アルゴリズムだということだ。TKIPと同じ暗号化方式としてはCCMPが該当する。TKIPではRC4を、CCMPではAESを暗号化アルゴリズムで用いるため、CCMP(AES)と表記される場合もある。
(中略)
セキュリティ設定で混乱を招くのは、規格(山中注:認証方式と同じ意味と思います。)と暗号化方式がそれぞれの組み合わせで使用できる点が背景にある。つまり、前述の認証方式と暗号化方式のうち、「WPA(TKIP)」、「WPA(AES)」、「WPA2(TKIP)」、「WPA2(AES)」のそれぞれが選択可能になるのだ。
(中略)
現在、ネットワーク機器を設定するのであれば、最新の方式を選択することが推奨される。具体的には、「WPA2(AES)」が最新の方式なので、利用可能な無線LAN機器であれば採用するべきだ。
イ TECH PLAYの「アルゴリズムとは何か?アルゴリズムの意味を理解してもっと楽しく学ぼう!」には以下の記載があります。
一般にアルゴリズムとはコンピュータを使ってプログラムで問題を解決するための手順を表す言葉として使われます。コンピュータは大量の単純な計算を高速に処理できますが、その処理手順を少し変えるだけで処理時間が大幅に短縮できる場合があるのです。これがアルゴリズムに注目が集まる理由です。
(2)ア IT用語辞典e-Wordsの「WPA2パーソナル 【WPA2 Personal】」には以下の記載があります。
WPA2パーソナルは個人宅などの小規模ネットワークでの利用を想定したモードで、利用者は使用開始時にAPにSSIDとパスフレーズを設定し、端末側にも同じSSIDとパスフレーズを入力して接続する。APは認証時にパスフレーズを要求し、正しく答えることができた端末のアクセス要求を受け入れる。この認証方式は「WPA2-PSK」とも呼ばれる。
イ 令和4年11月3日現在,私が使用しているスマホであるSHV43でテザリングをする場合,スマホの画面における「設定」→「ネットワークとインターネット」→「テザリング」→「Wi-Fiテザリング」で出てくるセキュリティは「WPA2-PSK」です。
    また,同日現在,私のスマホでテザリングをした場合,私のパソコンの「設定」→「ネットワークとインターネット」→「プロパティ」を選択して出てくる画面の下部によれば,「セキュリティの種類」は「WPA2-パーソナル」です。
7 ホームルーター(置くだけWi-Fi)に関するメモ書き
(1) ホームルーター(置くだけWiFi)は,コンセントに挿すだけですぐにWi-Fiが使えるようになる据え置き型のインターネットサービスのことであり,面倒な設定や工事をする必要がなく,インターネットに詳しくない方でも簡単にWi-Fi環境が作れるということで非常に人気が高まっています(ネット比較・検証|Wi-Fiの森HPの「ホームルーター(置くだけWiFi)おすすめ4社の速度と料金を徹底比較【2022年11月】」参照)。
(2) UQ WiMAX HP「ホームルーターの仕組みとは?固定回線との違いやメリットとデメリットを解説」が載っています。
8 Wi-Fi EasyMesh
・ Wi-Fi EasyMeshは,広いエリアを複数のWi-Fi機器で簡単にカバーする方式です(BUFFALOの「手軽に家じゅう快適インターネット!「Wi-Fi EasyMesh™」(イージーメッシュ)」参照)。
9 Wi-Fiがつながらないときに考えられる原因
・ BizClipの「Wi-Fiがつながらないときに確認するポイント」によれば,以下のとおりです。
① パソコンのWi-Fi受信がOFFになっている
② 接続先が変更されている
③ SSIDやパスワードが変更されている
④ ルーターや中継機の電源が入っていない
⑤ 中継機の位置が悪い
⑥ Bluetoothデバイスなどによる干渉
⑦ 同時接続可能台数をオーバーしている
⑧ セキュリティ対策ソフトウエアの干渉
10 その他
(1) MOBA LIFEに「【2022年最新】短期レンタルできるポケットWi-Fi人気比較ランキング」が載っています。
(2) ELECOM HPの「移動しても途切れないローミング環境」には以下の記載があります。
ローミング (roaming)とは、インターネット接続サービス(無線LANを含む)やスマートフォン・携帯電話などにおいて、通信事業者間の提携により、利用者が契約しているサービス事業者のサービスエリア外であっても、提携先の事業者のエリア内にあれば同様のサービスを利用できることをいいます。
(3) 常時SSL Lab.「SSLとTLSとは?意外に知らないSSLとTLSの違い(簡単編)」には,「厳密に言うとSSLと『TLS』は別物です。インターネットで安全に通信をするために、情報を暗号化する際に必要なもので『TLS』はSSLの次世代規格です。」と書いてあります。


第6 テザリングに関するメモ書き
1 スマホのテザリングとしては,Wi-Fiテザリング,USBテザリング及びBluetoothテザリングがあります(モバイルWi-fi最安リサーチHP「スマホのテザリングVSモバイルWi-Fi ルーター、こうやって使えばお得!」参照)。
2 au HPに以下の記事が載っています。
・ テザリングオプション
→ サービス申込みページへのリンクが貼ってあります。
・ 【Xperiaシリーズ】テザリングの設定方法を教えてください
・ auフラットプラン20N(2020年6月1日新規受付終了)
・ タブレットデータシェアプラン(2021年3月22日新規受付終了)
3(1) 令和4年10月12日現在,私の手元のAndroidスマホ(シャープのSHV43)でテザリングをする場合,「設定」→「ネットワークとインターネット」→「テザリング」→「Wi-fiテザリング」→「off→on」にすることでテザリングを開始しています(クロームブックを接続して1時間使った場合,いったんWi-fiの接続が切断されました。)。
    また,バッテリーの消費が早いですから,モバイルバッテリーをスマホに繋いで利用しています。
(2) シャープHPの「【SHV43】テザリングを利用したい」には「同時に接続できる機器数は、USBケーブルで接続したパソコン 1台、Wi-Fi対応機器 10台、Bluetooth機器 4台の計15台です。」と書いてあります。
4 テザリングでWi-Fi接続をしようとした際,「ネットワークの要件をチェックしています」という表示が続く場合,以下の手順により手動で設定すれば,Wi-Fi接続できることがあります(PanasonicHPの「Windows10のパソコンとのWi-Fi接続について」参照)。
① パソコンのデスクトップ画面右下の「無線電波」アイコンを右クリックして,「ネットワークと共有センターを開く」を選択→「新しい接続またはネットワークのセットアップ」→「ワイヤレスネットワークに手動で接続します」を選択する。
② 私のスマホの場合,ネットワーク名(SSID)はSHV43_APであり,セキュリティの種類はWPA2-パーソナルであり,暗号化の種類はAESであり,セキュリティキーは独自に設定したものです。
5 私のデスクトップパソコン(Presicion)の場合,iPadのテザリングについては自動接続とはなりませんが,スマホによるテザリングについては自動接続となります。
6 PREBELL HPに「テザリングができない原因7選。よくある問題と対策を紹介」が載っています。


第7 MACアドレスに関するメモ書き
1(1) 私のiPad Proの場合,「設定」→「モバイルデータ通信」→「インターネット共有」という順番でタップすれば,これまでにWi-Fi接続したことがある機器のMACアドレスを表示できます。
(2) UICのツール置き場「MACアドレス検索」があります。
2(1) MACはMedia Access Controlの略称です。
(2) MACアドレスはPC等のデバイスに紐づくのに対し,IPアドレスは場所に紐づいています(SEの道標ブログ「【図解】MACアドレスとIPアドレスの役割の違い~なぜ両方必要か?~」参照)。
3 ライフスタイル・ファクトリーズ「【 Wi-Fiに不正侵入アリ!? 】 MACアドレスから機器を特定するには?」には以下の記載があります。
・ネットワーク上で機器(デバイス)を識別するための個別に割り振られている情報で、原則としてMACアドレスは世界中で一つだけで、そのデバイス固有の不変なものです
・MACアドレス(マック・アドレス、英語: Media Access Control address)、イーサネットアドレス、物理アドレス、ハードウェアアドレス等の別称も
・MACアドレスの先頭6文字はベンダー識別子で OUI(Organizationally Unique Identifier)と呼びます 38:78:62 (先頭のこの部分)
4 広島大学標識メディア教育研究センターHP「MACアドレスの確認方法」が載っています。

第8 各種サービスの紹介サイト
1 NotePMブログに以下の記事が載っています。
・ 【2022年版】リモートアクセスサービス おすすめ14選を徹底比較
・ 【2022年版】クラウドサーバーおすすめ8選を徹底比較!
・ 【2022年版】リモートワークで必須のWi-Fiおすすめ16選を徹底比較!(固定回線・モバイル)
・ 【2022年版】クラウドPBX おすすめ15選を徹底比較(メリット・デメリットを紹介)
・ 【2022年版】電子帳票システム おすすめ12選を徹底比較!
・ 【2022年版】MDMサービス おすすめ14選を徹底比較
2 ビジトラmedia「おすすめテレワークツール14種40選を徹底比較!あなたの会社に最適なツールがわかる」が載っています。


第9 パソコン等の操作メモ
1 パソコンの画面関係

(1) 片方の手でキーボードの[Ctrl]キーを押したまま,もう一方の手でマウスの中央にあるホイール(スクロール)ボタンを前後に回すことで,画面の表示倍率を変えることができます。
(2) Windows10以降の場合,キーボードで「Windowsキー」+「Alt」+「d」を同時に押せば,カレンダー及び時計を表示できます。
(3) スナップ機能は,ウインドウのタイトルバーをデスクトップ画面の右端又は左端までドラッグすると,ウインドウが自動的に右半分又は左半分のサイズになる機能のことです。
(4) [Windows]+[Shift]+[S]を押すと、パソコンの画面を切り取ることができますし,ペイントアプリを使えば,すぐに切り取った画像を保存することができます(初心者のためのOffice口座画面をコピーして貼り付けよう(スクリーンショット)の参照)。
(5) タスクバーを右クリックすれば,タスクマネージャーを表示(プロセス,パフォーマンス,アプリの履歴,スタートアップ,ユーザー,詳細及びサービスがあります。)できます。
(6) Rene.E Laboratory「実は簡単!USBポートをロックする7つの方法」が載っています。

2 印刷関係
(1) 私が使っているプリンターでは,スキャンしたペーパーのサイズにつき1ミリ程度の誤差があるため,印刷の「合わせる」で印刷した場合,末尾又は右側に線が出てきますから,A4サイズだけの場合,「実際のサイズ」で印刷しています。
(2) 複合機の不備で業者を呼ぶ場合,ミスプリントの現物を手元に置いておいた方がいいです。
3 PDF関係
・ Acrobat ReaderでPDFファイルを開く際,「表示」→「表示切替」→「ナビゲーションパネル」→「ページサムネール」を使えば,サムネール表示ができます。
・ 複数のPDFをAcrobat Readerだけで開いた場合,タブ表示になるものの,別のウィンドウで開きたい場合,ファイルの右クリック→「プログラムから開く」においてGoogle ChromeとかFireFoxとかMicrosoft Edgeとかで開けばいいです。
・ Acrobat Readerの画面右側のメニューをずっと非表示にしたい場合,右側を手動で非表示にした後,「編集」→「環境設定」→「文書」→「ツールパネルの現在の状態を記憶」を選択すればいいです。
・ ワード文書につき,「名前を付けて保存」→「ファイルの種類:PDF」で保存した場合,ワード文書のタイトル(ワード文書を開いた上で,「ファイル」→「情報」→「プロパティ」で確認できます。)がPDFのタブやブラウザで表示されてしまいますところ,JBN運用サポートセンターHP「PDFの「タイトル」を変更する タブやブラウザ表示で左上に表示されるタイトルの修正方法」には以下の記載があります。
タイトルの変更方法(Adobe Acrobatを持っていない場合)
Adobe Acrobatを持っていない場合、WordやExcelなど編集データの段階でタイトルを編集してください。
ファイル>情報 を選択すると右側にプロパティ情報が表示されます。
「タイトル」を入力する項目がありますので、編集してください。
・ Windows10から標準装備された「Microsoft Print to PDF」(仮想プリンターです。)を使えば,保存に際してPDFのファイル名を改めて入力することになりますから,ワード文書のタイトルがPDFのタブやブラウザで表示されることはありません。
・ TechRachoに「Windows 10でPDFのサムネイルプレビューを表示させる」が載っています。
・ MaxMouse「Microsoft OfficeからPDFを作るときに作成者の個人名を削除する方法」には以下の記載があります。
Microsoft Word/Excel/PowerPointでは、オプション[基本設定]-[Microsoft Officeのユーザー設定]-[ユーザー名]の内容が、文書保存時に[作成者]として登録されます。[作成者]情報は、PDF形式で保存したときに、プロパティの[作成者]欄にも入ります。
4 その他
・ エクセルの改行はaltキー+Enterキーであるのに対し,サンダーバードメール及びワードプレスブログの改行はshiftキー+Enterキーです。



第10 メール関係
1 POPとIMAP
(1) POPは「ポップ」と読み,IMAPは「アイマップ」と読みますところ,WARE PORTAL「POPとIMAPの違いと選択」には以下の記載があります。
POPとIMAPの一番大きな違いは、POPがユーザーのパソコンへメールをダウンロードするのに対し、IMAPはメールの実態をサーバー上へ残したままパソコンへは(一時的な)キャッシュのみをパソコンで管理するという点です。
ブラウザから利用できるフリーメールアドレスをお持ちの方は多いと思いますが、ブラウザから利用できる「ウェブメール」には、実際ほとんどの環境でIMAPが使用されてもいます。
(2) WADAXの「「[共用] 1つのメールアドレスを複数のパソコンで共有して同じメールを受信したい」には以下の記載があります。
複数のPCで1つのメールアドレスのメッセージを共有するには、お使いのメールソフトで『POPアカウント』を設定し、「サーバーにメッセージのコピーを残す」設定にする必要があります。
この設定にすることで、1つのPCでメールを受信しても、サーバー側にメールが残りますので、他のPCでも受信できるようになります。
※この設定は、メールを受信される複数のPCすべてに設定する必要があります。
(3) カゴヤのサーバー研究室「SMTPサーバーとは?IMAPやPOPとの違い&基本の設定方法」が載っています。
(4) Office Hackに「GmailのIMAPサーバーの設定方法」が載っています。
2 メールのヘッダとボディ
(1) 聖愛中学高等学校HP「メールの構造」には以下の記載があります。
もっとも単純なメールはヘッダとボディの2つの部分からなります。ボディは普段見ているメールの内容そのもの。ヘッダは普段は見えない部分です。送信者や受信者の名前や、送信した日時、どのサーバーを経由してきたか使っているメールソフトは何かなどがわかります。(封筒の表書きや消印にあたるものといいたいところですが、電子メールでエンベロープ(封筒)というとさらにヘッダも一緒に入れてしまう封筒を指しますので正確ではありません)
(2) メールのヘッダを見るためには,①サンダーバードの場合,「該当メールを表示し、「表示」メニューから「ヘッダ」→「すべて」を選択する」という方法となり,Gmailの場合,②Gmailの場合,「該当メールを表示し、メッセージ表示画面の右上にある▼マークをクリックし、「メッセージのソースを表示」を選択する」という方法となります(インターネットみんなの安心安全ガイドHP「1.5 メールヘッダーの見方」参照)。
3 メールのセキュリティ関係
(1) ICTビジネスオンライン「「PPAP」は危険!その理由と代替案について」には「PPAPとは、「メールでパスワード付きのZIPファイルを送り、あとで別メールでパスワードを送る」といったファイル共有方法を指します。「Password(P)付きファイルを送ります。」「Password(P)を送ります」「暗号化(A)」「Protocol(P)」の頭文字をとった言葉です。」と書いてあります。
(2) LANSCOPE HP「マルウェア「Emotet(エモテット)」の特徴と感染対策を解説!」には「Emotet(エモテット)とは、2019年11月末ごろにメディアで取り上げられ一気に知名度を上げたこのマルウェアですが、日本国内向けに大規模なばらまき攻撃があり、被害が増加しています。」と書いてあります。
4 Unknown user
(1) blastmail HPに「BCCメールが届かない際のチェックポイント! 一斉送信の際にはBCCのリスクに注意」が載っています。
(2) 平成28年9月現在,NTTドコモのメールサーバーの仕様で,エラーメッセージは「Unknown user」というメッセージですが, 送信先の携帯が「パソコンからのなりすましメールを受信拒否」や「ドメイン指定拒否」設定を行っている場合も 該当のエラーメッセージが表示されるようです(ウェブアリーナHPの「NTTドコモアドレスに一斉送信すると、「550 Unknown user」で送信ができない。」参照)。
5 ビジネスメール実態調査
・ 一般社団法人日本ビジネスメール協会HP「ビジネスメール実態調査2022」には以下の記載があります。
1日平均は送信「16.27通」、受信「66.87通」
メールでの不安、第1位は「正しく伝わるか」(74.34%)
仕事で不快なメール、第1位は「質問に答えていない」(45.82%)
6 その他
・ Cyber Security.com「「Windowsが正しく読み込まれませんでした」とエラーが出る際の原因と修復方法」が載っています。
・ 配配メールHP「STARTTLSとは?SSL/TSLの仕組みやメリットについて解説」には「STARTTLSとは、インターネットを暗号化する技術である「SSL/TLS」をメールサーバーに取り入れた技術のことを指します。STARTTLSを利用してメールを送受信する際の通信を暗号化することで、なりすましや内容の改ざんなどを防止し、安全性の高いメールでのやり取りができるようになります。」と書いてあります。
・ NifMoの「キャリアメールとは」には以下の記載があります(MNOは移動体通信事業者のことです。)。
キャリアメールとは、スマートフォンで利用できる電子メールサービスのうち、通信キャリアであるMNO各社がそれぞれ自社ドメインで提供する電子メールのサービスのことです。具体的には、NTTドコモの「docomo.ne.jp」、KDDIグループの「ezweb.ne.jp」、ソフトバンクグループの「softbank.ne.jp」などのドメインを指します。


第11 Gmailに関するメモ書き
1 右上の縦の3点リーダー→設定→「Googleアカウントの管理」→「セキュリティ」→「お使いのデバイス」→「紛失したデバイスを探す」をクリックすれば,gmailアカウントで同期しているデバイスの場所を確認できます。
2 Gmailヘルプの「Google ストレージの動作について」には以下の記載があります。
各 Google アカウントには無料で利用できる 15 GB の保存容量があり、これを Gmail、Google ドライブ、Google フォトで利用することができます。
(中略)
割り当て量を超過した状態が 2 年以上継続している場合: 超過しないための対応(空き容量を増やす、追加容量を購入するなど)をとらなかった場合は、Gmail、Google フォト、Google ドライブ(Google ドキュメント、スプレッドシート、スライド、図形描画、フォーム、Jamboard のファイルを含む)からすべてのコンテンツが削除されることがあります。
3(1) NTTコミュニケーションズHP「Google Workspace」には「独自ドメインの Gmail や大容量ストレージ、ビデオ会議などGoogleの統合ワークスペースで、あらゆる企業の働き方改革を推進します。ドメイン・DNS・メール誤送信防止・セキュリティ対策などのオプションなど含めて、導入から運用までNTTコミュニケーションズがサポートします。」と書いてあります。
(2) アンドエンジニアHPの「Gsuiteとは?後継のGoogle Workspaceとの違いは?」には「Google Workspace(グーグル ワークスペース)は、それまで親しまれたクラウド型グループウェア「G Suite」の後継に当たり2020年10月に主に組織向けのサービスとして誕生しました。」と書いてあります。
4 グーグルアカウントの姓名は事後的に変更可能であるのに対し,ユーザー名(~gmail.com)の~部分は変更できません(ノジマHPの「Googleアカウントの作成手順は?名前はニックネームでもいい?」参照)。
第12 サンダーバードに関するメモ書き
1 日々の利用関係

(1) Mail Dealerに「【メール送信取り消し】Gmail・Outlookでの設定方法と間違えた際の対応方法」が載っています。
(2) サンダーバードのアドオンの半分以上は「無制限なアクセスを要求してくる場合」となるみたいです(h.ogi blog (jp)「アドオンインストール時の警告について」参照)
(3) ノート100YEN.comに以下の記載があります。
① Thunderbirdから送信したメールをGmailの送信済みメールフォルダに格納して自動でバックアップをとる方法
② メーラーThunderbirdでメール作成するたびに毎回BCCへ宛先を自動挿入する方法
(4) Thunderbirdでスレッド表示を止めたい場合,メニューバーの「表示」→「並べ替え順序」→「非スレッド」を選択すればいいです。
(5) Shinno&Oscar「「後で送信(Send Later)」Thunderbird(サンダーバード)おすすめのアドオン」が載っています。
(6) 電脳メモHP「サンダーバードメール,メール本文内のURLをクリックしたときのブラウザーを変更する。」が載っています。
2 Thunderbirdのショートカットキー
・ Support mozillaに「Thunderbird のキーボードショートカット」が載っていますところ,例えば,以下のショートカットキーがあります。
Ctrl+C:選択したテキストをコピーする。
Ctrl+N:新しいメッセージを作成する。
Ctlr+O:メッセージを新しいタブで開く。
Ctlr+R:メッセージに返信する。
Ctlr+S:メッセージをファイルに保存する。
Ctlr+X:選択したテキストを切り取る。
Ctlr+V:選択したテキストを貼り付ける。
Ctlr+Shift+R:全員に返信する。
Ctlr+Enter:メールを送信する。
F5:現在のアカウントの新着メッセージを受信する。
Shift+F5:すべてのアカウントの新着メッセージを受信する。
J:迷惑マークを付ける。
Shift+J:迷惑マークを解除する。
3 アカウントの設定関係

(1)ア ツール→アカウント設定→アカウント操作により,「メールアカウントの追加」ができます。
イ 「メールアカウントの追加」では,メアド,パスワードが分かれば,IMAPとPOPのいずれかを選択すればいいです。
(2)ア 初期設定では,Cドライブ→ユーザー→ユーザー名→AppData→Roaming→Thunderbird→Profilesに保存されていますところ,例えば,私の自宅パソコンの場合,C:\Users\yaman\AppData\Roaming\Thunderbird\Profilesに保存されています。
イ AppDataフォルダは,右クリック→プロパティ→「隠しファイル」で開けるようになります。
(3) ヘルプ→他のトラブルシューティング情報により,アプリケーション基本情報を閲覧できます。
(4) Thunderbirdのローカルフォルダは,複数のアカウントで受信したメールや送信済みメールを一括でまとめて保存することのできるフォルダとなっています(Aprico HPの「Thunderbirdのローカルフォルダを削除(非表示)する方法を紹介!」参照)。
(5)ア 「ツール」→「アカウント設定」→「サーバ設定」を見れば,サンダーバードのアカウントがIMAP(Internet Message Access Protocol )とPOP(Post Office Protocol)のどちらを用いているかを確認できます(サポートモジラの「IMAP による同期」参照)ところ,IMAPであればImapMailフォルダに保存され,POPであればMailに保存されます。
イ 「サーバ設定」の「メッセージの保存先」を見れば,メールの保存フォルダを確認できます。
(6) Apricoに「Thunderbirdのアカウントやフォルダの順番を並び替えする方法!」が載っています。
(7) IMAP形式の場合,受信したメールは自分のパソコンには保存されませんから,「メッセージを移動」又は「メッセージをコピー」によりローカルフォルダに移動させて保存する必要があります(カゴヤジャパンサポートセンターHPの「Thunderbird の設定 重要なメールを保存する」参照)。
(8) SimpleStock3.1「【ThunderBird】GmailのIMAPを利用して複数のパソコンのメール環境を同期させる方法」が載っています。
4 サンダーバードのメールの引越関係
(1) サンダーバードのメールの引越方法としては以下の三つがあります。
① プロファイルフォルダーの名称を変更する方法
→ 北森瓦版の「【メモ7】Thunderbirdの設定をそっくりそのまま引き継ぐ」にも同趣旨の説明があります。
② profiles.iniを編集する方法
③ プロファイルマネージャを使用する方法
・ パソコンりかばり堂本舗HP「Thunderbirdのメールデータを丸ごと移行する方法(テレワーク対応)」にも同趣旨の説明がありますところ,フォルダ名で「test」としている部分については,別の任意の名前でもいいと思います。
(2) あんもちブログ「【Thunderbird移行】コピー先にdefault-releaseがある場合の移行手順」には移行元データ(引き継ぎたいメールデータ)が****.defaultというフォルダのみで,移行先のフォルダには****.defaultと****.default-releaseという2つのフォルダがある場合のメール移転方法が書いてあります。
(3) キーボードの Windows Key+R を押し,「ファイル名を指定して実行ダイアログ」を開き,thunderbird.exe -p” と入力し てOK をクリックすれば,プロファイルマネージャが開きます(mozilla supportの「複数のプロファイルを使用する」参照)。
(4) NR-STYLE「Thunderbirdの全データをバックアップと復元する方法」(2016年8月24日付)には以下の記載があります。
Thundebirdにはプロファイルと呼ばれる、設定情報が格納されているフォルダがあります。
デフォルトの状態では、このプロファイルがあるフォルダの中に全てのメール情報が入っていますので、このフォルダを丸ごとコピーして保存することでThinderbirdの全てのデータをバックアップすることができます。
5 その他
・ MSFファイルとは、メールソフト・Mozilla Thunderbirdのインデックスファイルです(Aprico HPの「拡張子「.msf」のファイルとは?開く方法をご紹介!」参照)。
・ Apricoの「Thunderbirdのアドレス帳の使い方をご紹介!」には以下の記載があります。
    新しいウィンドウでアドレス帳が開きます。アドレス帳のサイドバーにはデフォルトで「個人用アドレス帳」と「記録用アドレス帳」が登録されています。「個人用アドレス帳」には、各連絡先を登録して使用することが想定されています。「記録用アドレス帳」には受信したメールに対して返信を行ったメールアドレス・送信したメールアドレスなどが登録されるようになっています。
・ ぷららHPに「Thunderbird 設定の確認」が載っていたので,令和4年11月9日にリンク先のとおりに設定を変えてみましたところ,私のメールアカウントでは,設定どおりではメールの送受信ができなくなったばかりか元の設定に戻してもメールの送受信ができなくなりました。
    そのため,「Profiles」フォルダのバックアップを取り,アカウントをいったん削除した上で(ただし,バックアップを取っているとはいえ,メッセージデータの削除はなし。),再びアカウントを追加し,「Mail」フォルダ内のメールを同じフォルダ内の別のフォルダにコピペで移すことで元に戻しました。
・ みけ×テザHPに「Thunderbirdのアカウント削除でメール内容まで消えたけど簡単に復元できた」が載っています。
・ Thunderbirdで同じメールを何度も受信してしまう場合,「ファイル」→「オフライン」でオフライン接続にした上で,フォルダの修復作業(「受信トレイ」→「プロパティ」→「一般情報」→「フォルダーを修復する」)により不具合が解消することがあります(Apricoの「Thunderbirdで同じメールを何度も受信する問題の対処法!」参照)し,半日ぐらい待っていると勝手に復旧することがあります。

第13 サーバーに関するメモ書き
1(1) ホスティングサービス及びレンタルサーバーは同じ意味でありますところ,一般的に「サーバ」と呼ばれるコンピューターには,①ホームページに関するウェブサーバー,②メールに関するメールサーバー及び③ファイル置き場としてのファイルサーバーがあります(わわわIT用語辞典の「ホスティングサービス」参照)。
(2) DNSサーバとは,ドメイン名とIPアドレスを変換する仕組みを提供するサーバのことで,DNSは「Domain Name System」の略語です(発注ラウンジHPの「DNSサーバとは?設定と確認方法を解説」参照)。
2(1) ファイルサーバーとは,ファイル共有機能に特化したサーバーのことであり,社内データを共有するツールとしては,①オンプレミス型(自社運用型)ファイルサーバー,②クラウド型ファイルサーバー及び③NASがあります。
(2) オンプレミス型の場合,自社にサーバーを設置して管理・運用するのに対し,クラウド型サーバーの場合,クラウドを活用するため自社にサーバーを設置する必要はなく,管理はサービス提供事業者が行います。
(3) サーバーはコンピューターであるのに対し,NASはネットワーク対応HDDであって,サーバーではありません。
(4) NTT東日本のクラウドソリューション(クラソル)の「【プロが解説】ファイルサーバーの基礎知識|NASと何が違う?」が参考になります。
3(1) NTT西日本は令和4年3月7日,中堅・中小企業向けのクラウドストレージサービス「おまかせクラウドストレージ」を提供開始すると発表しました(クラウドWatchの「NTT西日本、社内環境と同等に利用可能な中堅・中小企業向けのクラウドストレージサービス」参照)。
(2)ア NTT西日本HPに「大容量ファイル・データ共有も安心なセキュリティで簡単操作 おまかせクラウドストレージ」が載っています(リンク先の右上に5分でわかるサービス紹介動画あります。)。
イ NTT西日本の「おまかせクラウドストレージ 料金」には「おまかせクラウドストレージのご契約には、NTT 西日本が提供する「フレッツ 光ネクスト」、「フレッツ 光クロス」、「フレッツ 光ライト」、もしくは光コラボレーション事業者が提供する FTTHアクセスサービスいずれかのご契約が必要です。」と書いてあります。

第14 Webサーバ及びネームサーバに関するメモ書き
・ IT用語辞典の「Webサーバ」には,「Webサーバとは、Webシステム上で、利用者側のコンピュータに対しネットワークを通じて情報や機能を提供するコンピュータおよびソフトウェアのこと。そのような機能を果たすサーバコンピュータを指す場合と、コンピュータ上で動作するサーバソフトウェアを指す場合がある。」と書いてあります。
・ IDCFrontier HP「ネームサーバーとは?」には「ネームサーバーとは、インターネット通信時にドメイン名をIPアドレスに変換する名前解決を行うサーバーです。ネームサーバーはDNSサーバーと呼ばれることもあります。つまり、ネームサーバー=DNSサーバーのことなのです。」と書いてあります。
・ インターネット上の住所がドメインであり,インターネット上のお店がWebサイト(例えば,HP及びブログ)であり,インターネット上の土地がWebサーバーというイメージです(mybest「徹底比較 レンタルサーバー」参照)。
・ 思考のミチシルベブログ「ドメイン/サーバーの紐付けとは?・設定方法と紐付けの確認方法」には,ドメインとサーバーの紐づけからWordPressのインストール及びSSL化までの手順が書いてあります。

第15 固定電話のメタルIP電話への移行に関するメモ書き
1 NTT西日本HPに「固定電話(加入電話・INSネット)のIP網移行 2024年以降の固定電話についてのご案内」が載っています。
2 ビジネスネットワークHP「NTT固定電話のIP網移行は2024年1月開始――全国一律の料金体系に」には以下の記載があります。
NTT東日本・西日本(以下、NTT東西)は2017年10月17日、固定電話のIP網への切り替えを2024年1月より開始すると発表した。交換機などが2025年頃に維持限界を迎えるため。1年かけて切替を行い、2025年1月に完了する。全国規模での固定電話のIP化は主要国でも初めてとなる。
3 マイライン(電話会社選択サービス)は,固定電話(加入電話・INSネット)を提供するNTT東日本・西日本の局内設備をIP網へと切り替える2024年1月に提供を終了する予定です(マイライン事業者協議会HP「マイライン終了及び終了後の通話サービスのご案内」参照)。


第16 ADSLに関するメモ書き
1 NTT西日本の「一部エリアにおける「フレッツ・ADSL」の提供終了日変更について」には以下の記載があります。
西日本電信電話株式会社(以下、NTT西日本)は、DSLアクセスサービス「フレッツ・ADSL」(以下、本サービス)について、「フレッツ光」提供エリアにおきましては、2023年1月31日(火)をもって本サービスの提供を終了する旨をお知らせしておりますが、2022年2月1日(火)から2023年1月31日(火)の間に「フレッツ光」が新たにご利用可能となる住所にて本サービスをご利用のお客さまにおきましては、お客さまのサービス移行準備に十分な期間を確保していただくことを目的に、本サービスの提供終了日を2025年1月31日(金)に変更いたします。
2 So-netの「もうすぐADSLのサービスが終了!終了前にやるべきこと、自分に合った通信回線の選び方」が載っています。
ADSLは家庭の電話回線を利用するので、インターネット回線を提供する事業者から受け取ったモデムを電話回線につなぐだけでインターネットを始めることができました。申し込みから利用可能になるまで1~2週間ほどしかかからないうえに、工事が不要で初期費用を安くできることは、大きなメリットでした。
(中略)
ADSLが普及する前は、ISDN回線を使ったダイヤルアップ接続が主なインターネット接続の方法でした。
ISDNでの通信速度は最大64kbps、ADSLでの通信速度は最大12Mbps、実に180倍以上の差が生まれています。ADSLが普及した頃はISDNが比較対象にあったため、快適な通信速度を誇るADSLを採用する傾向にあったと考えられます。

第17 スキャナに関するメモ書き
1 スキャナーのドライバ(ISISとTWAIN)

(1) ISISは米国Pixel Translation社が販売している「PixTool(imaging系アプリケーション開発ツール)」を用いたスキャンアプリケーションで使用するためのドライバであり,TWAINはTechnology Without Any Interested Nameの略で、画像入力を行なうための国際的な標準規格のドライバです(Canon HPの「【ドキュメントスキャナー】ISISとTWAINとは何ですか?」参照)。
(2) Wikipediaの「TWAIN」には以下の記載があります。
TWAIN は主に、画像処理ソフトウェア(グラフィックソフトウェア)と、スキャナやデジタルカメラとの間のアプリケーション・プログラミング・インタフェースとして使われている。TWAINはMicrosoft Windows、Linux、Mac OS Xでサポートされる。
(3) Software Operation PanelはPaperStream IP(TWAIN)というドライバと同時にインストールされます(富士通HPの「Software Operation Panelの起動」参照)。
2 スキャナーのアプリケーション(例えば,ScanSnap Manager for fi Series)
(1) 富士通のfiシリーズのスキャナーのアプリケーションはTWAINというドライバに対応していますところ,アプリケーションの例としては,PaperStream Capture及びScanSnap Manager for fi Seriesがあります。
(2) 何が違うの?2つの違い辞典HPの「アプリケーションとドライバの違い」には以下の記載があります。
– 概要 –
アプリケーションとは、目的を持ってユーザーが利用するソフトウェアの事で、表計算ソフトや文書作成ソフト、描画ソフト等の事をいう。ドライバーとは、プリンタやカメラ等とPCを繋いで認識、通信させる為に必要なソフトウェアの事。アプリケーションとは違い、ドライバ単体では何も作業する事は出来ない。
(3) ScanSnapの「ScanSnapで利用できるソフトウェア」には「ScanSnap Homeは、旧ソフトウェアであるScanSnap Manager、ScanSnap Organizer、CardMinder、およびScanSnap Cloudの機能を統合しています。」と書いてあります。
3 株式会社PFU

・ Wikipediaの「PFU」には以下の記載があります。
株式会社PFU(ピーエフユー、英文社名、PFU Limited)は、石川県かほく市に本社を置く、日本コンピュータ関連メーカー・システムインテグレーター。以前は、富士通の完全子会社であったが、2022年9月1日付でリコー傘下となった。
PFUは世界の業務用イメージスキャナのシェアで50%以上の高いシェアを誇る。特にハードウェアに関しては、PFU以前から富士通のオフコン(Kシリーズ)・パソコン(FACOM 9450シリーズ)・ミニコン(A-30など)開発に大きく関与しており、PFUとなってからは富士通のオープン系サーバDS/90、Sファミリ、PRIMEPOWER)の共同開発などを手掛け、富士通とのオープンサーバビジネス分野において協力関係にあった。
(中略)
主力製品・事業
・ ハードウェア
・ イメージスキャナ – 業務向けのfi/SPシリーズや、一般消費者/SOHO向けのScanSnapシリーズ。1982年に開発を開始、2001年に富士通のスキャナ事業が移管され現在の形になった。

4 その他
(1) 写真をPDF化した場合,元の写真とかなり色合いが変わりますから,裁判所に書証として提出する場合,写真についてはPDF化した上での印刷ではなく,写真そのもののコピーが必要であると思っています。
(2) ADFはAuto Document Feederの略語であり,自動原稿送り装置という意味です。
(3) 富士通HPの「2次元バーコード認識機能 2D Barcode for PaperStream」には以下の記載があります。
「2D Barcode for PaperStream」は、PaperStream IPおよびPaperStream Captureで2次元バーコードの読み込みを行えるようにする機能モジュールです。本モジュールの利用により、より高度な仕分けや、アプリケーション連携が可能になります。
(4) STREAMED HPに「FUJITSU Image Scanner fi シリーズのセットアップ方法」が載っています。
(5) 富士通HPの「世界シェア No.1 イメージスキャナー」に,fiシリーズとSPシリーズの製品が載っています。


第18 パソコン等の操作に関する外部サイト
1 Windows関係
・ パソコンのスペックを確認したい場合,ウィンドウズのメニューから,設定→システム→詳細情報の順にクリックをすればいいです。
 ITスキル習得サイトPCまなぶ「Windows 10/11 超便利ツール!Power Toys 上半分・下半分など色々できる」が載っています。
・ パソコン工房に「Windows 10 スクリーンショットを撮る4つの方法」が載っています。
・ ゆっきーブログに「【解決策3つ】複数画像の印刷で順番どおりに並ばない!【思い通りに並べよう】」が載っています。
・ BIGLOBE HP「CD/DVDドライブが開かなくなった時の正しい対処法」が載っています。
・ ITサポートSORA「WindowsとAndroidスマホを同期する5つのメリット」が載っています。
2 Google Chromeのリモートデスクトップ関係
・ Ctlr+Alt+Deleteで出てくる画面の左下のボタンを押せば,リモートデスクトップ使用中に再起動できます。
3 アプリ関係
・ TheWonderRoadブログ「1/1000秒単位でカウントできちゃう!! VLCメディアプレイヤー」が載っています。
・ borujiayaブログ「Kindle クラウド上のPDFドキュメントを削除するには」が載っています。
4 PDF関係
・ 明日死ぬかのように生きるブログ「「文章の読み上げ準備が完了するまでお待ちください」というPDFファイルの読み上げ機能を解除する方法(Acrobat Reader)」が載っています。
・ wondershare HP「【比較してみた】PDF編集ソフトPDFelement のPro版と標準版の違いとは?」が載っています。
・ 窓の杜HPの「pdf_as 定番のPDF加工ソフト 無料」には以下の記載があります。
    PDFファイルの結合、ページの分割・抽出・削除といった基本的な加工機能に加え、ヘッダー・フッターの設定やしおりを追加できるPDF加工ソフト。ヘッダー・フッターの設定では、任意の文字列やページ番号を左右または中央のいずれかの場所に付加できる。
5 Word関係
・ 株式会社アルタのごった煮ブログ「【Microsoft Word】2つのWordファイル間でどこが変わったのかを調べる方法」が載っています。
・ 弁護士 赤塚洋信 公式サイト「契約書ドラフト(契約書案)の修正方法」が載っています。
 Twitter関係
・ アプリ部に「Twitter検索:特定のユーザー、アカウント内を指定して検索する方法」が載っています。
・ テイクユアタイムブログに「Twitterが勝手に英語とかアラビア語になった時の対処法」が載っています。
・ PC設定のカルマに「Twitter – ショートカットキーの一覧表(まとめ)」が載っていますところ,例えば,以下のショートカットがあります。
gb:「ブックマーク」に移動
gh:「ホーム」に移動
gl:「いいね」に移動
gp:「プロフィール」に移動
b:ブックマーク
j:次のツイートに移動(画面下のツイートに移動)
k:前のツイートに移動(画面上のツイートに移動)
l:いいね
n:新しいツイートの作成
t:リツイート


第19 二段階認証に関するメモ書き
1 dアカウントHPの「2段階認証とは」には以下の記載があります。
2段階認証とは、ID/パスワード入力のほかに、アプリでのログイン可否の選択や、セキュリティコードの入力を追加することで、お客さま以外が不正に情報にアクセスすることを防止する仕組みです。
また、同じブラウザからの接続の場合、2回目以降の2段階認証は省略されるため、普段お使いのブラウザでの操作は面倒にはなりません。2段階認証の設定を強にすることを強くおすすめします。
2 りんかネットブログの「機種変更したとき Authenticator(Google,Microsoft)のデータ移行方法」には以下の記載があります。
スマホの移行ツール(クイックスタート、iCloudなどのバックアップデータ)ではデータは自動で復元されません。ユーザーが必ず手動移行する必要があります。
2段階認証が認証アプリのみ対応サイト(ニンテンドーアカウントなど)は、旧スマホが使えないとデータ移行の復旧が大変です。忘れずに対応を行いましょう。
3 ラボラジアンブログの「Amazon.co.jp の2段階認証で、スマートフォンを紛失した場合に備える」に「Amazonの2段階認証に用意されたもう一つの機能として「コードが要求されない端末」を登録することができます。」と書いてあります。

第20 Zoomに関するメモ書き
1 2022年7月15日よりzoomは無料ラインス契約の場合,参加者2名のミーティングの場合であっても40分制限がかかるようになりました(NECネッツエスアイHP「アカウントなしでも利用可能!Zoomミーティングにゲストで参加する方法」参照)。
2  Zoomには,「ミーティング参加用のURL」があり,それを開くだけで参加できるという仕組みがあります(情報科学屋さんを目指す人のメモブログ「【Zoom】URLを開いても「ミーティングパスワードを入力してください」で入れない原因と対策について」参照)。
3 せとうちHPに「【Zoomを初めて使う方へ】パソコン、スマホ、タブレットでの参加方法を解説します!」(2020年6月12日付)が載っています。
4(1) Zoomでは,一度に1台のコンピューター,1台のタブレット,1台のモバイルでサインインできるのであって,デバイスの種類が違う場合,それぞれが別のミーティングに同時参加することができます(まりもの気まぐれ日記「zoomは1アカウントで複数参加することはできる?」参照)。
(2) 私の経験では,クロームブックでパソコンにリモートログインをしてズームを開始した場合,同時にiPadでズームに参加することはできませんでした。

5 情報科学屋さんを目指す人のメモ「【Zoom】「このホストは既にミーティングに参加中です」でミーティングに入れない原因と対策」には以下の記載があります。
どういうことかというと、このエラー(山中注:「このホストは既にミーティングに参加中です」というエラー)が表示されるのは、ホストが「別の」ミーティングに参加してしまっている場合です。他のミーティングに参加中であるため、現在参加しようとしたミーティングには参加しておらず、ホストを待っている状態です、という意味となります。かなり紛らわしいメッセージです。
状況としては、ミーティングが開始されていないパターンと同様なのですが、ただホストがミーティングを開始していないだけでなく、ホストが別のミーティングに参加中で、まだ戻ってくるのに時間がかかりそうな状態であることを示しています。

第21 Teamsに関するメモ書き
1 SE Design「初心者でも分かる「Microsoft Teams」の基本〜超便利なビジネスコミュニケーションツールの機能と使い方」には以下の記載があります。
Teams(Microsoft Teams)はマイクロソフト社が推奨するMicrosoft365のコミュニケーションツールで、Skype for businessの後継として登場しました(Skype for businessは2021年7月31日に提供終了)。Teamsにはチャット・通話機能の他、ビデオ会議機能、ファイル共有機能、Officeアプリとの連携機能があり、Microsoftアカウントがあれば無料での利用も可能です。
2 NTTのHP「「Microsoft Teams 外線電話セット」3つのメリット」が載っています。

第22 iPadに関するメモ書き
1(1) iPad中古比較.comに「過去に販売された旧シリーズのiPad全スペック比較一覧表(2022/3/9更新)」が載っています。
(2) 2022年10月12日現在,私が使っているiPadは以下のとおりです。
① 2017年6月6日発売のiPad Pro2(10.5インチ)
② 2017年6月6日発売のiPad Pro2(12.9インチ)
③ 2020年3月25日発売のiPad Pro4(11インチ)
・ iPadの「設定」→「一般」→「情報」では,機種名として「iPad Pro(11インチ)(第2世代)」と表示されます。
2 Apple HPの「iPhone や iPad でインターネット共有 (テザリング) を設定する方法」には「「インターネット共有」(テザリング) を利用すれば、Wi-Fi ネットワークにアクセスできない場合に、iPhone や iPad (Wi-Fi + Cellular) のモバイルデータ通信接続を共有できます。」と書いてあります。
3(1) au HPの「+メッセージ(プラスメッセージ)」には「+メッセージは、SMSとeメールのいいとこどり。電話番号で写真もスタンプも送れるau・ドコモ・ソフトバンクのメッセージアプリです。」と書いてあります。
(2) KDDI HPの「携帯3社の新チャットアプリ『+メッセージ(プラスメッセージ)』 の便利ポイントを紹介」には以下の記載があります。
KDDI、NTTドコモ、ソフトバンクの3社は、携帯電話番号だけでメッセージを送受信できるサービス「+メッセージ」をスマートフォン向けに提供開始した。これは、お馴染み「SMS(ショートメッセージサービス)」を進化させた位置づけのアプリだ。
4 iPhone及びiPadについて遠隔ロックをする場合,以下の3つの条件を満たしている必要があります(iMobile HPの「iPhone/iPadの遠隔ロックの設定方法と解除方法のまとめ」参照)。
① インターネットに接続していること。
② 「iPhoneを探す」又は「iPadを探す」がオンになっていること。
③ 位置情報サービスがオンになっていること。
5 WordPressブログの始め方と使い方まとめ!【初心者向け】ブログ「iPadでSMSってどこにある?ipadのみでSMSは使える?使う方法は?」には,「通常のスマホと同じように使えると思って、スマホの代わりに購入したのですが、なんとipadではSMSのアプリが見つからないし、使えない!ということが判明しました」と書いてあります。


第23 クロームブックに関するメモ書き
1 クロームブックの左側のシフトキーはzの左,右側のシフトキーはリターンキーの下にあります(情報科学屋さんを目指す人のメモブログ「ChromebookにShiftキーはないの?Shiftキーはどこにあるの?問題について」参照)。
2 Chromebookヘルプの「画面をロックする、またはロックを解除する」には「画面をロックする」に関して以下の記載があります。
キーボードで、検索 +L キーを押します。またはランチャー +L キーを押します。
右下の時刻を選択します。ロック を選択します。
一定時間が経つと、画面がオフになり節電モードになります。
電源に接続している場合: 8 分後に画面がオフになり、30 分後に Chromebook がスリープ状態になります。
電源に接続していない場合: 6 分後に画面がオフになり、10 分後に Chromebook がスリープ状態になります。
3(1) Google Chromeの「Chrome にログインして同期する」には「重要: Chrome の同期をオンにするのは所有しているデバイスのみにしてください。公共のパソコンを使用する場合は、代わりにゲストモードを使用します。」と書いてあります。
(2) Google Chromeの「Chrome の閲覧履歴を表示、削除する」には「[履歴] には、過去 90 日間に Chrome でアクセスしたページが表示されます。」と書いてあります。
4 外部サイトとして以下のものがあります。
・ TCD「ChromebookでZOOMを使う方法:使えない時の対処法も解説」が載っています。
・ chromebook HPに「Chromebook で Wi-Fi に接続する方法」が載っています。
・ acer HPに「CHROMEBOOK 外部モニター接続時設定(拡張/複製)」が載っています。
・ Chromebookのレビューや使い方「HDMIなしでChromebookをテレビに接続する方法」が載っています。
・ ミカサ商事株式会社HP「Chromebook と Microsoft Office の互換性は?WordやExcelを使う方法を徹底解説!」が載っています。

第24 エアドロップに関するメモ書き
1 マイナビニュースの「「AirDrop」はなぜBluetoothとWi-Fiの両方が必要なの? – いまさら聞けないiPhoneのなぜ」には「BluetoothとWi-Fiのどちらが欠けてもAirDropは動作しません。AirDropの機能を使おうとしたとき、それらの通信機能がオフの場合は、「タップしてWi-FiやBluetoothをオンにしてください」とメッセージが表示されます。」と書いてあります。
2 ヤフー知恵袋には「WiFiとBluetoothの規格の電波を使用しているだけで、WiFiそのものを利用しているわけではないので、WiFiとBluetoothがONになっていればWiFiがつながっている必要は無いです。」と書いてあります。

第25 登記情報提供サービスに関するメモ書き
1 登記情報提供サービスでは,「土地及び建物の一括請求」のほか,「土地からの建物検索指定」(一時利用及び登録利用の不動産登記情報の請求時に、一度の所在地番の入力により、一括して土地の登記情報と当該土地を底地とする建物の請求を行う方法)も可能です。
2 登記情報提供サービスHPにログインした後に使用できる「地番検索サービス」を使えば,住居表示から地番を調べることができます(同HPの「「地番検索サービス」の画像イメージ」参照。地番は青色で記載され,住居表示は赤色で記載されます。)し,「土地からの建物検索指定」を使えば,地番から家屋番号を調べることができます(同HPの「土地からの建物検索指定」参照)。
3 登記情報提供サービスにログインした後,「マイページ」→「当日明細」→クロームブックの「印刷」の「PDFに保存」を利用すれば,当日明細をPDFで残すことができます。


第26 インターネットバンキングに関するメモ書き
1 弁護士法人東町法律事務所HPの「第165回 預金者保護法の概要」には以下の記載があります。
    預金者保護法が補償の対象としているのは,「個人のキャッシュカード」による不正な払戻しであり,盗難通帳やインターネットバンキングによる被害を補償の対象としていません。
    そこで,全国銀行協会は,個人の盗難通帳による被害,インターネットバンキングによる不正な払戻し被害に対して,預金者保護法に準じて,補償を行うという自主ルールを策定しました。内容としては,預金者保護法の盗難カード被害に対する補償と同様に,(i)銀行への被害事実の届出,(ii)銀行への説明,(iii)警察署・検察庁への被害の申述(インターネットバンキング被害については「捜査当局への事情説明」とされています。)をすることを要件とし,また預貯金者に過失が認められる場合には,一部の補償を行わないとするものです。
2 全国銀行協会HPに「法人向けインターネット・バンキングにおける預金等の不正な払戻しに関する補償の考え方について」(2014年7月17日付)が載っています。

第27 スマートEXに関するメモ書き
1 新幹線を交通系ICカードで利用する場合,予約内容を記載した「EXご利用票」が新幹線改札機から出力されますから,必ず受け取って乗車する必要があります(スマートEXの「交通系ICカードでの乗車方法」参照)。
2 スマートEXは,令和4年6月25日より九州新幹線区間(博多~鹿児島中央間)へサービスエリアを延伸し,東海道・山陽・九州新幹線全線(東京~鹿児島中央間)でのサービスを開始しました(スマートEXの「九州新幹線全線へのサービスエリア延伸について」参照)。
3 スマートEXで予約した場合に乗車日に送られてくる「【スマートEX】 本日(◯◯月◯◯日)乗車分の予約について」と題するメールの乗車用ICカードの番号を見れば,乗車時に使用するICカードがどれであるかが分かりますところ,個人的にはgmailにおいて当該メールにスターを付けておくようにしています。


第28 マイナンバーカードに関するメモ書き 
1 そろそろあなたもマイナンバーカードHP「持ち歩いても大丈夫!マイナンバーカードの安全性」が載っています。
2 マネープラスHP「マイナポイント最大2万円分もらうためにすべきこと、必要な3つの手続きと具体的な手順を解説」が載っています。
3 大阪市HPに「証明書のコンビニ交付サービスを実施しています~住民票の写し等はコンビニ交付がお得で便利!~」が載っています。
4  行政機関等が,行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(略称は「マイナンバー法」です。)に基づき,特定個人情報の利用,提供等をする行為は,憲法13条の保障する個人に関する情報をみだりに第三者に開示又は公表されない自由を侵害するものではありません(最高裁令和5年3月9日判決)。


第29 リーガルテックに関するメモ書き
1 リーガルテックとは,法律と技術を組み合わせた言葉のことであり,契約作成・締結・管理,登記・登録,法律相談,知的財産,証拠・不正調査,集団訴訟,法令・判例検索に関する製品やサービスなど,種類が豊富に展開されています(リーガルフォースコラム「リーガルテックとは?サービスの種類、メリットなどを紹介」参照)。
2 若手組織内弁護士研究ノートに以下の記事が載っています。
・ 法務省が16類型の新回答公表「弁護士法72条のAI契約書レビュー問題」― 拙稿「弁護士法第72条とリーガルテックの規制デザイン(上/下)」(ビジネス法務掲載予定)原稿補正のメモ
・ リーガルテックの先行研究と新潮流(過去・現在・未来)

第30 個人情報保護法に関するメモ書き
1 個人情報保護委員会HPの「個人情報保護法の過去・現在・未来」には昭和55年のOECDプライバシー8原則から平成27年の個人情報保護法改正までの経緯が載っています。
2 経済産業省HPに「個人情報保護法 令和2年改正及び令和3年改正案について」(令和3年5月7日付)が載っています。
3 BUSINESS LAWYERS「令和3年個人情報保護法改正とは?改正項目の全体像と施行スケジュールを解説(新旧対照表つき)」に,令和2年改正と令和3年改正による個人情報保護法の条番号の変更をまとめた一覧表が載っています。


第31 著作権に関するメモ書き
1 リンクを貼ること自体により著作権侵害が生じることは原則としてないこと
・ 経済産業省HPの「「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」を改訂しました」(2019年12月19日付)に載ってある「電子商取引及び情報財取引に関する準則」(本文)144頁及び145頁には,「著作権法に基づく責任」に関して以下の記載があります(改行を追加しています。)。
    ユーザーは、リンク元のウェブページ中に記述されたリンク先のウェブページのURLをクリックする等の操作を行うことにより、リンク先のウェブページを閲覧することになるが、この際、リンク先のウェブページのデータは、リンク先のウェブサイトからユーザーのコンピュータへ送信されるのであり、リンク元のウェブサイトに送信されるわけではなく蓄積もされない。
     即ち、リンクを張ること自体により、公衆送信、複製のいずれも行われるわけではないから、複製権侵害、公衆送信権侵害のいずれも問題にならないものと考えられる。
    サーフェスリンク、ディープリンク、イメージリンク、フレームリンク、インラインリンクの個別の態様でのリンクを張る行為自体においては、原則として著作権侵害の問題は生じないと考えるのが合理的である。
2 埋め込みコードを利用したYouTube動画の紹介により著作権侵害が生じることは原則としてないこと
・ AIさくらさんHPの「知らなかったでは済まされない!Web動画掲載で気づかないうちに著作権侵害していませんか?」には以下の記載があります。
    この埋め込みコードを利用して紹介したい動画を掲載すれば、基本的にはすべてのYouTube動画を著作権を害する事なくアップロードできます。理由は「貼り付けたのはURLやHTMLコードであり、著作物である動画自体を掲載したわけではない」という前提ができるためです。YouTubeも、動画をアップロードしたユーザーも、動画を拡散されることにメリットがあると考えられるため、動画共有サイトを経由しての動画掲載は問題無いと言えます。
3 Twitterの埋め込みにより著作権侵害が生じることは原則としてないこと
・ TCDブログの「Twitterの転載、埋め込み、RTは著作権違反になるのか?」には以下の記載があります。
     Twitterのサービスを利用するとTwitter社は自動的にユーザーからコンテンツについての利用許諾を受け(ユーザー→Twitterへの許諾)、更に第三者に対するサブライセンスによって他ユーザーは埋め込みやRTなどTwitterのサービスを介してコンテンツを利用することができる(Twitter→他ユーザーへの許諾)という流れになるため、少なくともTwitterが提供するサービスを介すればコンテンツの利用は問題ありません。
     つまり、Twitterの埋め込みやRTで、他者のツイートを掲載しても著作権侵害には当たらないと考えるのが妥当です。


4 リツイートにより氏名表示権が侵害される場合があること
(1) 最高裁令和2年7月21日判決は,「インターネット上の情報ネットワークにおいてされた他人の著作物である写真の画像の掲載を含む投稿により,上記画像が,著作者名の表示の付された部分が切除された形で上記投稿に係るウェブページの閲覧者の端末に表示された場合に,上記閲覧者が当該表示された画像をクリックすれば,上記著作者名の表示がある元の画像を見ることができるとしても,上記投稿をした者が著作者名を表示したことにはならないとされた事例」です。
(2) GVA Professional Group HP「【弁護士解説】リツイート事件最高裁判決(令和2年7月21日)から学ぶ企業対応」(2020年9月24日付)が載っています。 


第32 Goproに関するメモ書き
(1) ピッキーズHPの「知らないと損?!GoPro(ゴープロ)のGPS編集機能Gaugesを解説!」には「普通に撮るだけでもカッコ良く撮れるGoProですが、実はGPS機能を利用した編集“Gauges“でスピードメーターやスピードトラッカーといった様々な要素を追加することができ、GoPro動画を一層楽しむことができます!」と書いてあります。
(2) 動画データの形式としては,①MP4ファイル(最も一般的な動画形式),②MOVファイル(Appleの標準動画形式),③WMVファイル(Windowsの標準動画形式)及び④WebMファイル(グーグルが開発した動画形式)があります(ATCL HP「「mp4」と「mov」はどちらを選ぶ?覚えておきたい動画形式の基本」参照)。

第33 画像ファイルに関するメモ書き
1 基本的な画像ファイルのフォーマットには以下のものがあります(Web担HP「PNGとJPEG画質の違いは? 拡張子でどう違う? ウェブ画像使い分けの基本」参照)。
① PNG(ピーエヌジー),拡張子は「.png」
② JPEG(ジェーペグ),拡張子は「.jpg」や「.jpeg」
③ GIF(ジフ),拡張子は「.gif」
④ TIFF(ティフ),拡張子は「.tiff」
⑤ BMP(ビットマップ、ビーエムピー),拡張子は「.bmp」
2 OsadaSoftに「画像位置情報取得ツール」が載っています。
3 nortonの「知らない間に自宅の住所が特定される?写真の位置情報を知って情報漏洩に備える」には以下の記載があります。
位置情報が含まれたままの写真が投稿され、そこからの情報漏洩が最も懸念されるのがSNSです。このことを受けてFacebook、Twitter、LINE、インスタグラムなど主要なSNSでは位置情報が含まれたままの写真を投稿しても位置情報だけは自動的に削除されるようになっています。


第34 セキュリティソフトに関するメモ書き
1 Tanweb.net「Windows 10 や 11 は Defender だけで十分なのか?標準搭載のウイルス対策ソフト」には以下の記載があります。
通常、Windows パソコンには複数のセキュリティソフトを入れることはできませんが、Windows Defender だけは例外で、他のセキュリティソフトを入れても「唯一不具合がでることなく入れたままにしておけるセキュリティソフト」です。
2 トレンドマイクロHPの「ランサムウェア」には以下の記載があります。
ランサムウェアとは、感染したコンピュータをロックしたり、ファイルを暗号化したりすることによって使用不能にしたのち、元に戻すことと引き換えに「身代金」を要求するマルウェアです。なお、ランサムウェアという言葉はRansom(身代金)とSoftware(ソフトウェア)を組み合わせた造語です。


第35 パソコン関係のその他メモ書き
1 マイクロソフトの製品は発売後,最低5 年間のメインストリーム サポート及び最低5年間の延長サポート (合計最低 10年間) が提供されますところ,Windows7の延長サポートは2020年1月14日に終了し,Windows8.1の延長サポートは2023年1月10日に終了しましたしWindows10の延長サポートは2025年10月14日に終了する予定です(Microsoft HPの「サポート終了日にご注意下さい」参照)。
2(1) NECフィールディングHPの「Windows 10 にある32bitと64bitとは?bitの意味や確認方法」(2019年5月23日付)には「Windows 10 の32bit版と64bit版の意味」として以下の記載があります。
PCが一度に扱えるデータの大きさは、CPU(中央処理装置)によって決まります。PCの性能の進化に伴い、8→16→32→64と、順次拡張されてきました。新たに販売されているPCは、ほぼすべて64bitのCPUを搭載しています。
32bit処理のPCには32bit版のWindows 10 を、64bit処理のPCには64bit版のWindows 10 を搭載するのが望ましいのですが、32bit版Windowsに対応したアプリやデバイスを使用したい場合、64bit処理のPCに32bit版のWindowsを搭載することがあります。
(2) IT業務で使えるプログラミングテクニックHP「OSやアプリケーションの32bit(x86)、64bit(x64)の意味」には「アプリケーションのx86版とは?」として以下の記載があります。
32bitという意味で理解して良いです。
語源としては、長らく、Intel の 16bit ~ 32bit のCPU の型番が、80286、80386、80486 の様に 80□86 と最後の2けたが86だったので、x86と略して書くようになったんです。
なので、32bitのCPUの命令をx86系というため、アプリケーションも32bit版をx86版と書くことがあるんです。
それに対して64bit の命令を使ったアプリケーションは x64 と略すのでわかりやすいですよね。
(3) 富士通HPの「fi-7460 / fi-7480 ソフトウェア」には「OSが64ビットの場合でも、アプリケーションが32ビットの場合は、PaperStream IP(TWAIN)ドライバをご使用ください。PaperStream Capture、ScanSnap Manager for fi Series、ScandAll PROは、32bitアプリケーションです。」と書いてあります。


第36 関連記事その他
1 DIME HPに「【プレーバック 平成元年】30年前のワープロ事情を蒸し返す」が載っています。
2 eKYCとは,スマホやPCを使用して,オンライン上で本人確認を完結できる仕組みのことであって,「イー・ケーワイシー」と読みます(アスピックHP「eKYCとは?オンライン本人確認の利用場面や仕組み、安全性を紹介」参照)。
3(1) 総務省HPの「テレワークにおけるセキュリティ確保」テレワークセキュリティガイドライン(第5版)(令和3年5月)が載っています。
(2) 月刊大阪弁護士会2022年10月号9頁ないし16頁に「情報セキュリティ~対応編(安全管理措置)」が載っていて,2022年11月号10頁ないし21頁に「情報セキュリティ~対応編(情報ライフサイクルの管理,点検及び改善並びに漏洩等事故が発生した場合の対応)」が載っています。
4(1) 厚生労働省HPに「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」,及び「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第5.1版(令和3年1月)」が載っています。
(2) 二弁フロンティア2022年11月号「ITツールを使いこなす!~IT化を見据えた仕事スタイル~」が載っています。
5 ヨドバシカメラの「訪問サービス」を利用すれば,所定の手数料を支払うことで,パソコンに関する各種設定をしてくれるみたいです。
6 B-CAS(ビーキャス)HP「B-CASカードとは何ですか?」には以下の記載があります。
B-CASカードは、デジタル放送受信機に同梱されているICカードです(台紙に貼り付けた状態で同梱されています)。
BS・110度CS・地上デジタル対応受信機には赤色のBS・CS・地上共用カードが、地上デジタル専用受信機には青色の地上デジタル専用カードが同梱されています。
B-CASカードは、地上デジタル放送、BSデジタル放送、110度CSデジタル放送の番組の著作権保護、有料放送、自動表示メッセージ、データ放送の双方向サービスなどに利用されています。
7 経済産業省HPの「デジタルプラットフォーム」には,特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律(令和2年6月3日法律第38号)(「特定DPF法」と略されることがあります。)の解説が載っています。
8 ①機械学習(マシーンラーニング)は,AIに大量のデータを学習させてデータの特徴や規則性を抽出させる方法であり,②ニューラルネットワークは,機械学習のアルゴリズムのひとつで,人間の脳の神経回路を模した数理モデルであり,③深層学習(ディープラーニング)は,ニューラルネットワークを多層化した学習方法です(EAGLYSの「ニューラルネットワークとは?仕組みや種類、学習手法や活用事例なども解説」参照)。
9 総務省HPに「外部送信規律について」(2023年2月の総務省総合通信基盤局の文書)が載っています。
10 LACの「TeamViewer(チームビューワー)」には「TeamViewerは、簡単で安全に使えるリモートデスクトップソリューションです。サーバやネットワーク機器の準備は不要。接続先のPCやサーバと、接続元の端末にTeamViewerをインストールするだけで、インターネット経由で社内のPCやサーバにリモートアクセスします。」と書いてあります。
11 マーケターハックに「YouTube動画を文字起こし・翻訳・要約してくれる「YouTube Summary with ChatGPT」を使ってみた」が載っています。
12 以下の記事も参照してください。
・ ケーブル及びUSB等に関するメモ書き
・ 裁判所の情報化の流れ
・ 民事裁判手続のIT化
・ 裁判所における主なシステム
・ 令和4年度概算要求書における,民事訴訟手続のIT化に関する最高裁判所の財務省に対する説明内容
・ 個人事業主の税金,労働保険及び社会保険に関するメモ書き

私道に関するメモ書き

目次
1 私道の通行妨害と妨害排除請求
2 建築基準法上の道路に期待されている役割等
3 みなし道路の指定は抗告訴訟の対象となる行政処分に当たること等
4 囲繞地通行権
5 通行地役権
6 固定資産税等が課税されない私道
7 私道が道路交通法上の道路に該当する場合,駐車等が禁止されること
8 建築基準法42条2項道路及びセットバック
9 共有私道に関する法務省のガイドライン等
10 登録自動車の車庫証明及び軽自動車の車庫届出
11 関連記事その他

1 私道の通行妨害と妨害排除請求
(1) 私道とは,個人や団体等の私人が所有している道路をいい,建築基準法上の道路に該当するものとしては,建築基準法42条1項3号の道路(既存私道),建築基準法42条1項5号の道路(位置指定道路),及び建築基準法42条2項の道路(みなし道路)があります。
(2) 建築基準法42条1項5号の規定による位置の指定を受け現実に開設されている道路を通行することについて日常生活上不可欠の利益を有する者は,右道路の通行をその敷地の所有者によって妨害され,又は妨害されるおそれがあるときは,敷地所有者が右通行を受忍することによって通行者の通行利益を上回る著しい損害を被るなどの特段の事情のない限り,敷地所有者に対して右妨害行為の排除及び将来の妨害行為の禁止を求める権利(人格権的権利)を有します(最高裁平成9年12月18日判決)。
ウ 最高裁平成9年12月18日判決は,建築基準法42条2項の規定による位置の指定を受け現実に開設されている道路の場合についても同様に当てはまる話である(最高裁平成12年1月27日判決)。

2 建築基準法上の道路に期待されている役割等
(1) 建築基準法は,43条1項において,建築物の敷地は道路に2m以上接しなければならないものと定めるとともに(接道義務),その道路は,法42条に定めるものでなければならないものとしていますところ,その趣旨は,建物を建築しようとする者に対し,建物の敷地が幅員4m以上の道路に接することを義務づけることによって,当該建物に係る避難,通行又は防火上の安全等を確保し,ひいては,その周辺に存する建物やその居住者の安全等にも寄与することにあると解されています(最高裁平成18年3月23日判決)。
(2) 建築基準法上の道路については,これに接する敷地上の建築物の利用者の避難,防災,衛生,通行の安全等に支障が生じないよう保障する機能を果たすことが期待されているものであり,2項道路についてもこの点は同様であるが,ある道が上記のような機能を果たし得るためには,必ずしもその道の両端が同法上の道路に接続していることを要するものではなく,同法もそのことを2項道路の要件としているものではありません(最高裁平成20年11月25日判決)。

3 みなし道路の指定は抗告訴訟の対象となる行政処分に当たること等
(1)  告示により一定の条件に合致する道を一括して指定する方法でされた建築基準法42条2項所定のいわゆるみなし道路の指定は,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たります(最高裁平成14年1月17日判決)。
(2) イクラ不動産HPに「42条2項道路とはどのような道路なのかわかりやすくまとめた」が載っています。

4 囲繞地通行権
(1)  民法213条の規定する囲繞地通行権は,通行の対象となる土地に特定承継が生じた場合にも消滅しません(最高裁平成2年11月20日判決)。
(2) 同一人の所有に属する数筆の土地の一部が担保権の実行としての競売により袋地となった場合は,民法213条2項の囲繞地通行権が成立します(最高裁平成5年12月17日判決)。
(3)ア 公道に1.45メートル接する甲土地の上に建築基準法が施行されるよりも前から存在した建築物が老朽化したために取り壊されたが,その当時,甲土地に隣接し右公道に接する乙土地は同法の規定が適用される建築物の敷地とされていたなどといった事実関係の下においては,甲土地の所有者のために,乙土地について,同法43条1項本文所定のいわゆる接道要件を満たすべき内容の囲繞地通行権は認められません(最高裁平成11年7月13日判決)。
イ 住宅金融普及協会HP「袋地の通行権と接道義務の関係」には以下の記載があります。
要するに、最高裁は、囲繞地通行権が認められる趣旨と、接道要件を定めた趣旨は、異なるものであって、囲繞地通行権の通路幅を決定する際に建築基準法の接道要件を満たすことを求めることは当然には認められないとしているのです。袋地には、こうしたリスクがあること、万一、これを購入する場合には、隣地所有者との間で囲繞地通行権として2mの幅員を容認してくれるかを確認しておくことが重要です。
(4)ア  民法210条の囲繞地通行権の対象となる通路の幅員を定めるにあたって,建築基準法43条所定の規定基準をその判断資料にすることができます(最高裁昭和49年4月9日判決)。
イ 自動車による通行を前提とする210条通行権の成否及びその具体的内容は,他の土地について自動車による通行を認める必要性,周辺の土地の状況,自動車による通行を前提とする210条通行権が認められることにより他の土地の所有者が被る不利益等の諸事情を総合考慮して判断されます(最高裁平成18年3月16日判決)。

5 通行地役権
(1)ア 通行地役権の承役地が譲渡された場合において,譲渡の時に,右承役地が要役地の所有者によって継続的に通路として使用されていることがその位置,形状,構造等の物理的状況から客観的に明らかであり,かつ,譲受人がそのことを認識していたか又は認識することが可能であったときは,譲受人は,通行地役権が設定されていることを知らなかったとしても,特段の事情がない限り,地役権設定登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有する第三者に当たりません(最高裁平成10年2月13日判決)。
イ 最高裁平成10年2月13日判決には,「(8)Eは、右売買後直ちに、本件係争地を除いた部分に自宅を建築し、本件係争地については、アスファルト舗装をし、その東端と西端に排水溝を設けるなどして、自宅から右公道に出入りするための通路とした」という事実認定があります。
(2)  通行地役権の承役地が担保不動産競売により売却された場合において,最先順位の抵当権の設定時に,既に設定されている通行地役権に係る承役地が要役地の所有者によって継続的に通路として使用されていることがその位置,形状,構造等の物理的状況から客観的に明らかであり,かつ,上記抵当権の抵当権者がそのことを認識していたか又は認識することが可能であったときは,通行地役権者は,特段の事情がない限り,登記がなくとも,買受人に対し,当該通行地役権を主張することができます(最高裁平成25年2月26日判決)。
(3) 土地の一部が,通行権(地役権を含む)の目的となっており,隣地の居住者の日常の通路として使用されているような場合,私道に関する負担があるものとして考え,重要事項説明書の「対象不動産に含まれる私道に関する負担の内容」欄には,「負担面積」として通行に供される部分の土地面積を記入しなければなりません(イクラ不動産HP「「私道に関する負担等に関する事項」とはなにか」参照)。

6 固定資産税等が課税されない私道
(1) 以下の要件を満たす私道については,固定資産税及び都市計画税が課税されません(地方税法348条2項5号のほか,東京都HPの「道路に対する非課税のご案内」参照)。
① 利用上の制約を設けず不特定多数の人の利用に供されていること。
② 客観的に道路として認定できる形態を有すること
③ 一定の条件を満たす,通り抜け私道,行き止まり私道及びコの字型私道
(2) 植木,室外機,自動車,自転車などを置いていたり,一般の通行を禁止する表示物や門扉(もんぴ)・車止めなど通行の障害物を置いていたりした場合,利用上の制約となりますから,固定資産税及び都市計画税が課税されます。

7 私道が道路交通法上の道路に該当する場合,駐車等が禁止されること
(1) 道路交通法は2条1号で「道路」の定義として,道路法に規定する道路等のほか,「一般交通の用に供するその他の場所」を掲げており,たとえ,私有地であっても,不特定の人や車が自由に通行できる状態になっている場所は,同法上の道路です(最高裁昭和44年7月11日判決(判例秘書に掲載))。
(2) 私道が「一般交通の用に供するその他の場所」として道路交通法上の道路に該当する場合,当該私道への駐車は通常,右側の道路上に3.5メートル以上の余地がありませんから,道路交通法45条2項に違反します。
(3) 自動車の保有者は道路上の場所以外の場所を当該自動車の保管場所として確保しなければならない(自動車の保管場所の確保等に関する法律(いわゆる車庫法)のであって,道路交通法上の道路に該当する私道を自動車の保管場所として使用する行為は車庫法11条に違反します。
(4) 過去6ヶ月以内に放置違反金納付命令を3回受けると,車両の使用制限命令(普通自動車の場合,期間は2月)が出ます(警視庁HPの「放置駐車違反に対する責任追及の流れ」参照)。

8 建築基準法42条2項道路及びセットバック
(1) 土地や中古住宅を購入する際に,建築基準法42条2項道路に接地する土地や住宅であった場合,「2項道路に接する」などといった注意書きが書かれていますところ,このような土地を購入し,住宅を建てようとする場合,建築時に建築基準法42条2項道路の中心線から2メートルの範囲をセットバックする必要があります(不動産戦略メディア「リディア」の「【道路の基礎知識】法42条2項道路とセットバックについて」参照)。
(2) 現況道路と,私道負担及びセットバックの関係については,三井住友トラスト不動産HPの「私道について~私道負担(セットバック)と課税並びにその評価について」が参考になります。
(3) セットバックは「道路後退部分」ともいいますところ,道路後退部分は,「災害時の避難経路の確保」,「緊急車両の通行」などに支障をきたすことが予想されるため,常に道路として使える状態にしておく必要がありますから,自分の敷地なのに使用できないことになります(青森市HPの「道を広げて快適なまちに~道路後退ってなんだ?~」参照)。
(4) 道路後退線とは,前面道路の幅員が狭い場合に道路境界線を後退させて幅員を確保した際の境界線をいいます。
(5) 大阪市HPのマップナビおおさか「指定道路図(道路参考図)」を使えば,大阪市内の道路が建築基準法42条のどの道路に該当するかを確認できます。
(6) 東京地裁平成22年3月18日判決(判例秘書に掲載)は,例えば,以下の判示をしています。
① 2項道路は道路交通法2条1項1号の「一般交通の用に供するその他の場所」に該当するから,私道であっても原則として民法210条の「公道」に該当する。
② 2項道路は,建築基準法上の制限が及ぶがゆえに,反射的利益として一般人が通行できるものであるが,その利益の内容として,自動車による通行が認められるか否かは,道路の現況,自動車通行による危険の有無,従来の利用状況(自動車通行が認められていたか否か)等を総合して,当該2項道路を自動車で通行することについて日常生活上不可欠の利益を有しているか否かによって判断すべきである。

9 共有私道に関する法務省のガイドライン等
(1) 法務省HPの「共有私道の保存・管理等に関する事例研究会」に,複数の者が所有する私道の工事において必要な所有者の同意に関する研究報告書 ~所有者不明私道への対応ガイドライン~(平成30年1月)が載っています。
(2) 法務省HPの「共有私道の保存・管理等に関する事例研究会(第2期)」に,「複数の者が所有する私道の工事において必要な所有者の同意に関する研究報告書~所有者不明私道への対応ガイドライン~(第2版)(令和4年6月)」が載っています。
(3)ア 私道負担のパターンとしては,①私道部分が一筆の土地の場合,②私道部分が敷地と一体化している場合及び③私道負担部分が分筆されている場合(私道負担部分が敷地に接する場合と,敷地から離れている場合があります。)があります(オールアバウトHPの「私道負担のこんなパターンを知っていますか?」参照)。
イ 私道に面した土地の場合,私道の所有者とトラブルになったり,道路やインフラ整備の負担が発生したりしますし,私道に接する物件の場合,設備や管理費が自己負担となったり,公道に面する物件よりも土地相場が低くなったり,配管工事等をする時に私道所有者の承諾が必要になったりします(KINPLEの「私道に接する物件トラブル3つ|私道負担部分の税金について知る」参照)。

10 登録自動車の車庫証明及び軽自動車の車庫届出
(1) ①登録自動車の車庫証明は,新規登録(道路運送車両法4条),変更登録(道路運送車両法12条)又は移転登録(道路運送車両法13条)を受けるために事前に取得する必要がある(車庫法4条)のに対し,②軽自動車の車庫届出(平成3年7月1日開始)は,軽自動車の新車又は中古車の購入後,使用前に届出をすれば足ります(車庫法5条)。
(2) ①登録自動車の車庫証明は東京都特別区,すべての市町及び一部の村で必要となるのに対し,②軽自動車の車庫届出は東京都特別区及び大部分の市で必要となります(車庫法附則2項,車庫法施行令附則2項及び別表第二)。
(3) 大阪府警察HPに「1.自動車保管場所の要件及び2.軽自動車の保管場所届出の手続きについて」が載っています。


11 関連記事その他
(1) 民法213条の規定する囲繞地通行権は、通行の対象となる土地に特定承継が生じた場合にも消滅しません(最高裁平成2年11月20日判決)。
(2)ア みずほ中央法律事務所HPに「【いろいろな法律における『道路』の定義|道路関係・建築関係・刑法・税法】」が載っています。
イ イクラ不動産HPに「不動産調査の知識」及び「重要事項説明書」が載っています。
(3) かつての市街地建築物法で指定された附則5項道路(建築線)は建築基準法42条1項5号道路(位置指定道路)とみなされます(不動産実務TIPSの「建築線とは何か。建築線の説明や2項道路との違い。」参照)。
(4)  甲が時効取得した不動産について,その取得時効完成後に乙が当該不動産の譲渡を受けて所有権移転登記を了した場合において,乙が,当該不動産の譲渡を受けた時に,甲が多年にわたり当該不動産を占有している事実を認識しており,甲の登記の欠缺を主張することが信義に反するものと認められる事情が存在するときは,乙は背信的悪意者に当たります(最高裁平成18年1月17日判決)。
(5)ア あなたのまちの司法書士グループHP「連棟建物(長屋、二戸一、三戸一)の切り離しに関するトラブル」には,長屋の切り離し工事について適法な手続を実行しなかった場合のデメリット・リスクとして以下の記載があります。
① 切離しとその後の新築工事内容によっては、新築建物の取壊しを命じられる可能性があります。
② 取壊し請求権(建物収去請求権)は、区分所有者の共同利益に反する行為が継続している限り、消滅時効にかかることはありません(=いつまでも建物にリスクがついて回る)。
③ 切離し工事の結果、他の区分建物に損害が発注した場合には、切離し工事を発注した者も損害賠償請求を受けることがあります。
イ 大阪府八尾市HPに「長屋にまつわる諸問題の解説報告書(令和2年度空き家対策の担い手強化・連携モデル事業)」が載っています。
(6) 以下の記事も参照してください。
・ 家賃相場・土地価格相場等の情報
・ 貨物軽自動車運送事業(軽貨物運送業)

倒産事件に関するメモ書き

目次
1 信販会社による留保所有権の行使
2 大阪地裁の破産事件において0円評価となる自動車
3 破産事件に関する電気代,ガス代,携帯電話代及び水道代の取扱い
4 破産管財人による帳簿類の保管
4の2 「支払の停止」の意義
4の3 否認権に関するメモ書き
5 その他破産事件に関するメモ書き
6 個人再生に関するメモ書き
7 任意整理に関するメモ書き
8 強制執行に関するメモ書き
9 関連記事その他

1 信販会社による留保所有権の行使
・ 信販会社のために破産者の購入した普通自動車に所有権留保がされている場合,信販会社が別除権者として管財人に対して権利を行使することができるかに関する取扱いは以下のとおりと思います。
① 当初から所有者の登録が信販会社とされている場合,管財人に対して権利を行使できることに問題ありません(破産管財手続の運用と書式[第3版]159頁)。
② 販売会社,信販会社及び購入者の三者間において,販売会社に売買代金残額の立替払をした信販会社が,販売会社に留保された自動車の所有権について,売買代金残額相当の立替金債権に加えて手数料債権を担保するため,販売会社から代位によらずに移転を受け,これを留保する旨の合意がされたと解される場合(実務的には,信販会社が購入者の連帯保証人をしていない場合),信販会社は別除権者として管財人に対して権利を行使することはできません(最高裁平成22年6月4日判決)。
③ 自動車の購入者と販売会社との間で当該自動車の所有権が売買代金債権を担保するため販売会社に留保される旨の合意がされ,売買代金債務の保証人が販売会社に対し保証債務の履行として売買代金残額を支払った後,購入者の破産手続が開始した場合(実務的には,信販会社が購入者の連帯保証人をしている場合)において,その開始の時点で当該自動車につき販売会社を所有者とする登録がされているときは,保証人は,上記合意に基づき留保された所有権を別除権として行使することができます(最高裁平成29年12月7日判決)。
→ 保証人は,自動車につき保証人を所有者とする登録なくして,販売会社から法定代位により取得した留保所有権を別除権として行使することができるということです。


2 大阪地裁の破産事件において0円評価となる自動車
(1) 大阪地裁第6民事部(倒産部)の運用として,破産管財手続の運用と書式[第3版]76頁には以下の記載があります。
a 評価額
    白動車は,査定評価額が評価額となる。
    しかし,普通自動車で初年度登録から7年,軽自動車・商用の普通自動車で5年以上を経過しており,新車時の車両本体価格が300万円未満であって,外国製自動車でない場合には,損傷状況や付属品等からみて価値があるとうかがわせる特段の事情がない限り,査定評価を受けることなく0円と評価してよい。
(2)ア 普通自動車の初年度登録がいつであるかについては,車検証記載の「初度登録年月」を見れば分かります(保険の窓口インズウェブHP「車の初度登録年月とは?どこで確認できる?」参照)。
イ 検査対象軽自動車の場合,自動車登録制度(道路運送車両法4条)の適用がないため,新規検査(道路運送車両法59条)の年月である,初度検査年月から5年以上が経過していれば原則として0円評価になります。
    なお,検査対象軽自動車の初度検査年月がいつであるかについては,車検証記載の「初度検査年月」を見れば分かります。(生駒市HPの「【軽自動車税】初度検査年月とは、何ですか?」参照)。
ウ 250CC以下のバイクについては車検証がないのであって,①50CCから125CCまでのバイクについては標識交付証明書が交付され(登録申告済証といった書類で代用されていることがあります。),②125CCから250CCまでのバイクについては軽自動車届出済証が交付されます。
(3)  動産の購入代金を立替払し立替金債務の担保として当該動産の所有権を留保した者は,第三者の土地上に存在しその土地所有権の行使を妨害している当該動産について,その所有権が担保権の性質を有することを理由として撤去義務や不法行為責任を免れることはできません(最高裁平成21年3月10日判決)。


3 破産事件に関する電気代,ガス代,携帯電話代及び水道代の取扱い
(1) 破産法55条1項は「破産者に対して継続的給付の義務を負う双務契約の相手方は、破産手続開始の申立て前の給付に係る破産債権について弁済がないことを理由としては、破産手続開始後は、その義務の履行を拒むことができない。」と定めていますから,破産手続開始決定後につき,破産手続開始決定前に電気代,ガス代,携帯電話代又は水道代を滞納していたことを理由として,電気,ガス,携帯電話又は水道の供給を停止されることはないですそこが知りたい!借金問題HP「自己破産したらガス、電気は止められるの?」参照)。
(2)ア 破産手続開始の申立日及び決定日が属する月の電気代,ガス代,携帯電話代及び上水道代は財団債権となります(破産法55条2項参照)。
イ 下水道代は租税等の請求権となる(地方税法231条の3第3項・附則6条3号)ために破産手続開始決定の1年以上前のものだけが破産債権となり,その後に発生したものは財団債権となります(破産法148条1項1号参照)。
(3)ア 破産手続開始決定開始決定前に発生した電気代,ガス代,携帯電話代及び上水道代は破産法55条2項により財団債権となった部分も含めて免責許可決定により免責されます。
    つまり,破産手続開始決定後の代金を支払えば,電気,ガス及び水道の供給を維持できるということです(弁護士江木大輔のブログ「水道・下水道料金と破産法の規定など」参照)。
イ 下水道代は租税等の請求権となるため,そのすべてが非免責債権です(破産法253条1項1号)。
(4) 破産実務Q&A220問117頁には以下の記載があります。
    債務者が個人の場合は携帯電話やインターネットを継続利用したいと希望するケースが多いと思われます。管財業務には不要ですので利用料を財団債権として破産財団から支弁することはできませんが、契約を継続したままにして破産者に利用料を負担してもらう対応が考えられます。


4 破産管財人による帳簿類の保管
(1) 破産事件における書記官事務の研究-法人管財事件を中心として-308頁には以下の記載があります(ただし,平成29年の債権法改正により民法171条を含む短期消滅時効に関する条文は削除され,消滅時効期間は一律に5年又は10年となっています(民法166条1項)。)。
    商人は,帳簿閉鎖の時から10年間,その商業帳簿及びその営業に関する重要な資料を保存しなければならない(商法19Ⅲ)。
    株式会社及び持分会社は,会計帳簿の閉鎖の時から10年間,その会計帳簿及びその事業に関する重要な資料を保存しなければならない(会社432Ⅱ, 615Ⅱ)。
    一般社団法人及び一般財団法人は,会計帳簿の閉鎖の時から10年間,その会計帳簿及びその事業に関する重要な資料を保存しなければならない(一般法人120Ⅱ,199)。
    清算人は,清算株式会社の清算結了の時から10年間,その帳簿並びに清算に関する重要な資料を保存しなければならない(会社5081)。
    これらの規定によると,破産管財人が破産者から引渡しを受けた商業帳簿類は,破産手続終了後も保存すべきものであり,破産手続終了に伴い,保存義務が破産管財人から破産者に移ると考えられる。
◯ しかし,実務においては,破産者代表者や破産者本人の所在不明,引取り拒否などにより引渡しできない場合がある。このような場合には,会社法508条2項の帳簿資料を保存する者の選任申立てが認められるなどしない限り,破産管財人が破産手続終了前に保管料・処分費用につき裁判所から財団債権の承認を得て,倉庫業者等に寄託することになる。破産財団の費用負担を考慮して,重要でないものは破棄し,保存する帳簿類についても3年間保存した後(民法171を根拠にしていると思われる。)は廃棄して差し支えないものとする運用がある。重要でないものは裁判所の許可の下に廃棄し,重要な帳簿のみ保存期間を1年から3年の範囲で認め,その期間経過後は裁判所の許可を得て廃棄するという運用もある。
(2) 破産事件21のメソッド67頁には以下の記載があります。
    各種法令をみると、書類の保存期間は、商法・会社法は上記のとおり10年ですが、税法上は7年となっているものが多く、労働関係は3年、社会保険関係は2年となっているものが多いです(あくまで目安です。また同じ書類の保存期間が社会保険関係と税法で異なる場合もあります)。実務上破産手続終了後も参照する必要性が生じる可能性が高いのは労働・社会保険関係だと思われますので、3年は今後も保存期間の一つの目安になると思われます。


4の2 「支払の停止」の意義
(1)  破産法162条1項1号イ及び3項にいう「支払の停止」とは,債務者が,支払能力を欠くために一般的かつ継続的に債務の支払をすることができないと考えて,その旨を明示的又は黙示的に外部に表示する行為をいいます(最高裁平成24年10月19日判決。なお,先例として,最高裁昭和60年2月14日判決参照)。
(2)ア 債務者の代理人である弁護士が債権者一般に対して債務整理開始通知を送付した行為は,①上記通知に,(a)上記債務者が自らの債務整理を弁護士に委任した旨並びに(b)当該弁護士が債権者一般に宛てて上記債務者,その家族及び保証人への連絡及び取立て行為の中止を求める旨の各記載がされていたこと,②上記債務者が単なる給与所得者であり広く事業を営む者ではないことなどといった事情の下においては,上記通知に上記債務者が自己破産を予定している旨が明示されていなくても,破産法162条1項1号イ及び3項にいう「支払の停止」に当たります(最高裁平成24年10月19日判決)。
イ 最高裁平成24年10月19日判決の裁判官須藤正彦の補足意見には「一定規模以上の企業の私的整理のような場合の「支払の停止」については,一概に決め難い事情がある。」と書いてあります。
(3) 支払の停止があったかどうかは,①相殺禁止(破産法71条及び72条)及び②破産管財人による否認(破産法160条及び162条)との関係で問題となります。
(4) 支払不能とは,債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態をいいます(破産法2条11号)。

4の3 否認権に関するメモ書き
(1) 動産の売主が買主から動産売買の先取特権の目的物である右動産を売買代金債権の代物弁済として譲り受けても,その弁済額の範囲内においては,右代物弁済は他の債権者を害するものではありませんから,破産法160条1項1号所定の否認の対象とはなりません(最高裁昭和53年5月25日判決(判例秘書に掲載)。なお,先例として,最高裁昭和41年4月14日判決及び最高裁昭和39年6月26日判決参照)。
(2) 債権差押命令の送達を受けた第三債務者が,差押債権につき差押債務者に対して弁済をし,差押債権者に対して更に弁済をした後,差押債務者が破産手続開始の決定を受けた場合,後者の弁済は,破産法162条1項の規定による否認権行使の対象となりません(最高裁平成29年12月19日判決)。
(3) 大阪地裁第6民事部(倒産部)が執筆した「はい6民です お答えします vol.271」には「親族等の協力が得られるなら、当該協力者が直接第三者弁済をするのであれば偏頗弁済の問題にはなりません」とか,「せっかく協力者が資金を提供しても、いったん申立人がこれを受け取って自分で弁済してしまうと、やはり偏頗弁済となってしまいます。」と書いてあります(月刊大阪弁護士会2022年5月号56頁)。
(4) 法律事務所エソラの「破産法では,破産管財人に否認権という権利が認められており、執行行為である差押えも否認権の対象とります(給与の差押えと破産手続き)。大阪地裁の運用はどうなっているのでしょうか?」には以下の記載があります。
    否認権を行使して、債権者から金銭を取戻すには、管財事件に移行させる必要があります。管財事件に移行するには、申立人は予納金を準備しなければなりません。そして、管財事件に移行したとして、必ずしも全額を回収できる保障はありません。
    以上を考慮し、大阪地方裁判所では、差押債権者に支払われた金額が40万円以上の場合、破産手続きへの移行を検討するとされています。

5 その他破産事件に関するメモ書き
(1) 自由財産に対する強制執行は許されないこと
・ 破産手続中,破産債権者は破産債権に基づいて債務者の自由財産に対しても強制執行をすることはできません(最高裁平成18年1月23日判決参照)。
(2) 破産財団の範囲
ア 破産手続開始前に成立した第三者のためにする生命保険契約に基づき破産者である死亡保険金受取人が有する死亡保険金請求権は,破産法34条2項にいう「破産者が破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権」に該当するものとして,上記死亡保険金受取人の破産財団に属します(最高裁平成28年4月28日判決)。
イ 最高裁平成28年4月28日判決の調査官解説には以下の記載があります。
     本判決は,直接的には,第三者のための生命保険契約の保険金請求権について判示したものであるが,いわゆる定額保険に係る保険金請求権については,契約者と保険金受取人とが同一人の場合であるか否かを問わず,その射程が及ぶ可能性が高いと考えられる。
(3) 他の手続の失効
・ 株券が発行されていない株式(振替株式を除く。)に対する強制執行の手続において,当該株式につき売却命令による売却がされた後,配当表記載の債権者の配当額について配当異議の訴えが提起されたために上記配当額に相当する金銭の供託がされた場合において,その供託の事由が消滅して供託金の支払委託がされるまでに債務者が破産手続開始の決定を受けたときは,当該強制執行の手続につき,破産法42条2項本文の適用があります(最高裁平成30年4月18日判決)。
(4) 詐害行為取消権
・ 詐害行為の取消しの効果は相対的であり,取消訴訟の当事者である債権者と受益者との間においてのみ当該法律行為を無効とするに止まり,債務者との関係では当該法律行為は依然として有効に存在するのであって,当該法律行為が詐害行為として取り消された場合であっても,債務者は,受益者に対して,当該法律行為によって目的財産が受益者に移転していることを否定することはできません(最高裁平成13年11月16日判決)。
(5) 交付要求
ア 破産法人の清算中の事業年度の所得に係る法人税について国税徴収法82条の規定により税務署長がした交付要求は,抗告訴訟の対象となる行政処分には当たりません(最高裁昭和59年3月29日判決)。
    そのため,交付要求に係る租税の納税義務自体を争うには,更正,決定,賦課決定などの租税を確定させる処分に対する不服申立てによることとなりますし,納税義務自体ではなく, それが財団債権であるか否かの問題であれば,財団債権でないことの確認を求める訴訟によることとなります(最高裁昭和62年4月21日判決のほか,破産管財手続の運用と書式(第3版)284頁参照)。
イ 交付要求につき,事実上の行為についての審査請求(行政不服審査法47条1号)ということで,国税庁長官を相手方として(行政不服審査法4条4号),国税不服審判所に対する審査請求ができるのかもしれません(月刊大阪弁護士会2022年1月号67頁参照)。
(7) 相殺禁止
ア 以下の相殺は禁止されています。
① 不法行為により生じた債権(例えば,交通事故に基づく損害賠償請求権)を受働債権とする相殺(民法509条)
② 差押禁止債権(例えば,未払の婚姻費用又は養育費の4分の3)を受働債権とする相殺(民法510条)
イ 不法行為の被害者が相殺を主張することは許されます(最高裁昭和42年11月30日判決)。
(2)ア 不法行為の被害者が使用者であり,不法行為の加害者が労働者である場合,賃金の全額払いを定める労働基準法24条1項との関係で,使用者による相殺は許されません(最高裁大法廷昭和36年5月31日判決)。
イ 賃金の過払を原因とする相殺は,過払のあった時期から見て,これと賃金の清算調整の実を失わない程度に合理的に接着した時期においてなされる場合であり,しかも,その金額,方法等においても,労働者の経済生活の安定をおびやかすおそれのない場合に限り許されます(最高裁昭和45年10月30日判決。なお,先例として,最高裁昭和44年12月18日判決参照)。
(8) 破産管財人の善管注意義務
・ 破産管財人が,破産者の締結していた建物賃貸借契約を合意解除するに際し,賃貸人との間で破産宣告後の未払賃料等に破産者が差し入れていた敷金を充当する旨の合意をし,上記賃料等の現実の支払を免れた場合において,当時破産財団には上記賃料等を支払うのに十分な銀行預金が存在しており,これを現実に支払うことに支障がなかったなど判示の事情の下では,破産管財人は,敷金返還請求権の質権者に対し,敷金返還請求権の発生が阻害されたことにより優先弁済を受けることができなくなった金額につき不当利得返還義務を負います(最高裁平成18年12月21日判決)。
(9) その他
・ 私の経験では,法テラスを利用した破産事件の場合,令和2年12月22日時点において,管財事件になった場合の追加の弁護士報酬の支払がなくなっていました。
・ 東京地裁平成28年3月11日判決(判例秘書に掲載)は,原告の被告(不倫女性)に対する不貞慰謝料請求権が破産法253条1項2号所定の非免責債権に該当しないとされた事例です。


6 個人再生に関するメモ書き
(1) 民事再生法25条4号に基づき再生手続開始の申立てが棄却される類型としては,①受任通知後の意図的偏頗弁済,②受任通知後の浪費,③清算価値や履行可能性に直ちに大きな影響のない虚偽報告等,④債務の大半が非免責債権である場合及び⑤破産手続において免責不許可となった直後の個人再生申立てがありますところ,大阪地裁第6民事部の場合,個人再生の申立てが棄却されたとしても牽連破産としない運用をしています(月刊大阪弁護士会2024年3月号86頁ないし88頁の「はい6民です お答えしますvol.280 個人再生の申立てが不当目的・不誠実申立てであるとして棄却されるのはどのような場合ですか。」参照)。
(2) 民事再生法174条2項3号所定の「再生計画の決議が不正の方法によって成立するに至ったとき」には,議決権を行使した再生債権者が詐欺,強迫又は不正な利益の供与等を受けたことにより再生計画案が可決された場合はもとより,再生計画案が信義則に反する行為に基づいて可決された場合も含まれます(最高裁平成20年3月13日決定)。
(3)   いわゆるフルペイアウト方式によるファイナンス・リース契約中の,ユーザーについて民事再生手続開始の申立てがあったことを契約の解除事由とする旨の特約は,無効です(最高裁平成20年12月16日判決)。
(4) 小規模個人再生において,再生債権の届出がされ(民事再生法225条により届出がされたものとみなされる場合を含む。),一般異議申述期間又は特別異議申述期間を経過するまでに異議が述べられなかったとしても,住宅資金特別条項を定めた再生計画案の可決が信義則に反する行為に基づいてされた場合に当たるか否かの判断に当たっては,当該再生債権の存否を含め,当該再生債権の届出等に係る諸般の事情を考慮することができます(最高裁平成29年12月19日決定)。


7 任意整理に関するメモ書き
(1)  債務整理に係る法律事務を受任した弁護士が,当該債務整理について,特定の債権者に対する残元本債務をそのまま放置して当該債務に係る債権の消滅時効の完成を待つ方針を採る場合において,上記方針は,債務整理の最終的な解決が遅延するという不利益があるほか,上記債権者から提訴される可能性を残し,一旦提訴されると法定利率を超える高い利率による遅延損害金も含めた敗訴判決を受ける公算が高いというリスクを伴うものである上,回収した過払金を用いて上記債権者に対する残債務を弁済する方法によって最終的な解決を図ることも現実的な選択肢として十分に考えられたなど判示の事情の下では,上記弁護士は,委任契約に基づく善管注意義務の一環として,委任者に対し,上記方針に伴う上記の不利益やリスクを説明するとともに,上記選択肢があることも説明すべき義務を負います(最高裁平成25年4月16日判決)。
(2)  債権者が会社に金銭を貸し付けるに際し,社債の発行に仮託して,不当に高利を得る目的で当該会社に働きかけて社債を発行させるなど,社債の発行の目的,会社法676条各号に掲げる事項の内容,その決定の経緯等に照らし,当該社債の発行が利息制限法の規制を潜脱することを企図して行われたものと認められるなどの特段の事情がある場合を除き,社債には同法1条の規定は適用されません(最高裁令和3年1月26日判決)。
(3) マンション.naviに「不動産一括査定サイト大手7社を徹底比較!マンション売却に最適なのは?」が載っていますところ,これによれば,不動産一括査定サイトとして,マンションナビ,イエウール,イエイ,HOME4U,すまいValue,SUUMO及びHOME’Sがあります。
    通常売買(不動産の売却代金から住宅ローンをすべて支払える売買)であれば,これらの一括査定サイトを使って売却相場を把握した方がいいと思いますものの,オーバーローン不動産に関する任意売却の場合,売買代金の中から売主がもらえるのは引越代ぐらいですし,売却相場から外れた売却について抵当権者が承諾することはありませんから,一括査定サイトを使う必要性は乏しいと思います。


8 強制執行に関するメモ書き
(1) 配当異議の訴え
ア 配当異議の訴えにおいて,競売申立書における被担保債権の記載が錯誤,誤記等に基づくものであること及び真実の被担保債権の額が立証されたときは,真実の権利関係に即した配当表への変更を求めることができます(最高裁平成15年7月3日判決)。
    なお,関西大学レポジトリに,最高裁平成15年7月3日判決の解説記事として,「配当異議の訴えにおいて競売申立書の被担保債権の記載と異なる真実の権利関係に即した配当表への変更を求めるための要件」が載っています。
イ 破産債権者が破産手続開始後に物上保証人から債権の一部の弁済を受けた場合において,破産手続開始の時における債権の額として確定したものを基礎として計算された配当額が実体法上の残債権額を超過するときは,その超過する部分は当該債権について配当すべきです(最高裁平成29年9月12日決定)。
(2) 財産開示
ア  財産開示手続は,権利実現の実効性を確保する見地から,債権者が債務者の財産に関する情報を取得するための手続であり,債務者(開示義務者)が財産開示期日に裁判所に出頭し,債務者の財産状況を陳述する手続となります(東京地裁HPの「財産開示手続を利用する方へ」参照)。
イ 民事執行法197条1項2号に該当する事由があるとしてされた財産開示手続の実施決定に対する執行抗告においては、請求債権の不存在又は消滅を執行抗告の理由とすることはできません(最高裁令和4年10月6日決定)。
(3) その他
・ idlenessブログ「物上代位権の行使時期」には「実際に被担保債権の弁済期到来前に物上代位権の行使ができるかというと,おそらく否です。」と書いてあります。
・ 不動産執行の申立てにおける付随処分は原則として以下の記載となります(桃風呂ブログの「土地・建物明渡強制執行の流れ」参照)。
① 同時送達の申立て:要
② 執行の立会い:有
③ 執行日時の通知:要
④ 執行調書謄本の関係人への送付:要
⑤ 事件完了時の債務名義正本及び送達証明書の還付:要
・  ハーグ条約実施法134条に基づき子の返還を命ずる終局決定を債務名義としてされた間接強制の方法による子の返還の強制執行の申立ては,当該申立ての後に当該終局決定を債務名義とする子の返還の代替執行により子の返還が完了したという事実関係の下においては,不適法です(最高裁令和4年6月21日決定)。


9 関連記事その他
(1) 株式会社の清算人の員数は,法律上必ずしも2人以上であることを要せず,1人しか選任されなったときは,同人が当然にその会社を代表する権限を有します(最高裁昭和46年10月19日判決)。
(2)  法律上の原因なく代替性のある物を利得した受益者は,利得した物を第三者に売却処分した場合には,損失者に対し,原則として,売却代金相当額の金員の不当利得返還義務を負います(最高裁平成19年3月8日判決)。
(3) 契約切替又は債権譲渡により取引先がクォークローンからプロミスに変わった事例につき,契約切替に応じた人については,プロミスによる債務引受についての受益の意思表示があるものとして,クオークローンとの取引の際に発生した過払金も含めてプロミスに請求できると判断され(最高裁平成23年9月30日判決),契約切替ではなく債権譲渡によりプロミスに債権者が変わったケースについては、平成20年12月15日の債務引受条項の変更までに、債務引受についての受益の意思表示はされていないとして、クオークローンとの取引の際に発生した過払金はプロミスに請求できないと判断されました(最高裁平成24年6月29日判決)ところ,この点については過払い金ナビ「合併・債権譲渡等により債権者が変わった場合の問題点」が参考になります。
(4) 最高裁昭和42年3月9日判決は,「破産者は破産財団の所属財産に関して管理処分権を有しないのにかかわらず、会社の代表取締役となつて会社財産の管理処分の権限を有するに至るということは、到底是認し得ないところというべきである。」と判示していましたが,平成18年5月1日に会社法が施行されてからは,破産者であることは取締役の欠格事由ではなくなりました(会社法331条のほか,弁護士法人クラフトマンHPの「1. 1.1 取締役の資格と欠格事由」参照)。
(5)ア 以下の資料を掲載しています。
・ 差押禁止債権が振り込まれた預貯金口座に係る預貯金債権の差押えについて(令和2年1月31日付の国税庁徴収部長の指示)
→ 大阪高裁令和元年9月26日判決(裁判長は36期の中村也寸志裁判官)を踏まえた取扱いを指示した文書です。
イ 以下の記事も参照してください。
・ 破産管財人の選任及び報酬
・ 司法研修所弁護教官の業務は弁護士業務でないものの,破産管財人として行う業務は弁護士業務であること
・ 大阪弁護士会の負担金会費
→ 大阪弁護士会所属の弁護士が破産管財人報酬を受領した場合,税抜価格の7%を負担金会費として大阪弁護士会に支払う必要があります。

相続事件に関するメモ書き

目次
第1 遺産分割に関するメモ書き
1 特別受益
2 寄与分
3 詐害行為取消権及び無償否認
4 代償分割
5 要素の錯誤
6 非嫡出子の相続分
7 遺産分割の調停及び審判の管轄
8 未支給年金
9 その他
第2 限定承認に関するメモ書き
1 総論
2 限定承認と訴訟承継
3 限定承認と判決
4 限定承認と譲渡所得税
5 その他
第3 相続放棄に関するメモ書き
1 総論
2 相続放棄の期間制限の起算点
3 法定単純承認に当たる例
4 法定単純承認に当たらない例
5 その他
第4 遺言に関するメモ書き
1 遺言の解釈
2 相続させる遺言
3 自筆証書遺言の押印
4 自筆証書遺言の破棄
5 その他自筆証書遺言関係
6 秘密証書遺言
7 その他
第5 相続欠格事由に関するメモ書き
1 自筆証書遺言の訂正
2 遺言書の破棄又は隠匿
第6 相続回復請求に関するメモ書き
第7 預貯金債権の仮払い
1 総論
2 民法909条の2に基づく預貯金債権の仮払い
3 家事事件手続法200条3項に基づく預貯金債権の仮分割の仮処分
第8 共有関係に関するメモ書き
第9 遺産確認の訴えに関するメモ書き
第10 相続税に関するメモ書き
1 敷金の取扱い
2 債務控除
3 相続税のかかる家庭用財産等
4 個人事業主が従業員に支払う退職金に関するメモ書き
5 相続税における配偶者の税額の軽減
6 未分割遺産に関する更正の請求の特則
7 相続税評価額
8 その他
第11 在日韓国人の相続に関するメモ書き
1 総論
2 家族関係証明書の取得
3 電算化除籍謄本
4 相続の準拠法
5 相続放棄
6 その他
第12 デジタルの相続手続きに関するメモ書き
第13 関連記事その他

第1 遺産分割に関するメモ書き
1 特別受益
(1) 10年の期間制限がないこと
・ 相続人間の「遺産分割協議における遺産分割の割合(具体的相続分)」の特別受益については,遺留分算定の場合の特別受益と異なり,相続法改正前と同様,特に10年という期間制限はありません。
    ただし,令和10年4月1日以降については,相続開始の時から10年以内に遺産分割の請求をしない限り特別受益及び寄与分を考慮してもらえなくなります(民法904条の3のほか,愛知県名古屋市の相続弁護士HP「相続開始から10年で特別受益、寄与分の主張ができなくなります」参照)。
(2) 死亡保険金は原則として特別受益にならないこと
ア 被相続人を保険契約者及び被保険者とし,共同相続人の1人又は一部の者を保険金受取人とする養老保険契約に基づき保険金受取人とされた相続人が取得する死亡保険金請求権は,民法903条1項に規定する遺贈又は贈与に係る財産には当たらないが,保険金の額,この額の遺産の総額に対する比率,保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人との関係,各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して,保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には,同条の類推適用により,特別受益に準じて持戻しの対象となります(最高裁平成16年10月29日判決)。
イ 広島高裁令和4年2月25日決定(判例体系に掲載)は,「本件死亡保険金の合計額は2100万円であり、被相続人の相続開始時の遺産の評価額(772万3699円)の約2.7倍、本件遺産分割の対象財産(遺産目録記載の財産)の評価額(459万0665円)の約4.6倍に達しており、その遺産総額に対する割合は非常に大きいといわざるを得ない。」としつつも,結論としては,最高裁平成16年10月29日判決が判示するところの特段の事情はないと判断しました。
(3) 遺留分については特別受益の持戻し免除はないこと
    特別受益に当たる贈与についてされた当該贈与に係る財産の価額を相続財産に算入することを要しない旨の被相続人の意思表示が遺留分減殺請求により減殺された場合,当該贈与に係る財産の価額は,上記意思表示が遺留分を侵害する限度で,遺留分権利者である相続人の相続分に加算され,当該贈与を受けた相続人の相続分から控除されます(最高裁平成24年1月26日判決)。
    つまり,遺留分減殺請求により特別受益に当たる贈与が減殺された場合、持戻し免除の意思表示は、遺留分を侵害する限度で失効するということです(あなたの弁護士HPの「遺留分には持ち戻し免除の制度がない|特別受益の持戻しと遺留分の関係」参照)。
(4) 無償による相続分の譲渡
・  共同相続人間においてされた無償による相続分の譲渡は,譲渡に係る相続分に含まれる積極財産及び消極財産の価額等を考慮して算定した当該相続分に財産的価値があるとはいえない場合を除き,上記譲渡をした者の相続において,民法903条1項に規定する「贈与」に当たります(最高裁平成30年10月19日判決)。


2 寄与分
(1)  家事審判法9条1項乙類9号の2の寄与分を定める処分の審判は,憲法32条,82条に違反しません(最高裁昭和60年7月4日決定)。
(2) 令和10年4月1日以降については,相続開始の時から10年以内に遺産分割の請求をしない限り特別受益及び寄与分を考慮してもらえなくなります(民法904条の3のほか,愛知県名古屋市の相続弁護士HP「相続開始から10年で特別受益、寄与分の主張ができなくなります」参照)。
(3) 遺産相続弁護士ガイドHPの「寄与分と遺留分侵害額請求(旧遺留分減殺請求)の関係」には「遺留分を侵害する寄与分の主張を裁判所が認めてくれることは実際上ほとんどありません。 例外として認められる可能性があるとすれば、例えば、被相続人の財産のほとんどが寄与分を主張する相続人からの贈与による場合等のように、寄与の割合が特別大きい場合のみでしょう。」と書いてあります。
(4) 千葉の弁護士による相続の無料相談HP「Q. 遺産分割調停の中で寄与分を主張するにはどのようにすればよいですか。」には「調停手続きの場合には、特別の申立なく寄与分を主張することが可能です。遺産分割審判の中では、寄与分を定める処分の審判申立が必要です。」と書いてあります。
(5)  遺言により相続分がないものと指定された相続人は、遺留分侵害額請求権を行使したとしても、特別寄与料を負担しません(最高裁令和5年10月26日決定)。


3 詐害行為取消権及び無償否認
(1) 共同相続人の間で成立した遺産分割協議は詐害行為取消権の対象となります(最高裁平成11年6月11日判決)し,国税徴収法39条にいう第三者に利益を与える処分に当たることがあります(最高裁平成21年12月10日判決)。
(2) 東京高裁平成27年11月9日判決(判例秘書に掲載)は,「共同相続人が行う遺産分割協議において、相続人中のある者がその法定相続分又は具体的相続分を超える遺産を取得する合意をする行為を当然に贈与と同様の無償行為と評価することはできず、遺産分割協議は、原則として破産法160条3項の無償行為には当たらない」と判示しています。
4 代償分割
(1) 家庭裁判所は,遺産の分割の審判をする場合において,特別の事情があると認めるときは,遺産の分割の方法として,共同相続人の一人又は数人に他の共同相続人に対する債務を負担させて,現物の分割に代えることができる(家事事件手続法195条(旧家事審判規則109条))ものの,右の特別の事由がある場合であるとして共同相続人の一人又は数人に金銭債務を負担させるためには,当該相続人にその支払能力があることを要します(最高裁平成12年9月7日決定(判例秘書に掲載))。
(2) みずほ中央法律事務所HPに「遺産分割における代償分割の履行確保措置」が載っています。


5 要素の錯誤
・ 特定の土地につきおおよその面積と位置を示して分割した上それぞれを相続人甲,乙,丙に相続させる趣旨の分割方法を定めた遺言が存在したのに,相続人丁が右土地全部を相続する旨の遺産分割協議がされた場合において,相続人の全員が右遺言の存在を知らなかったなどといった事実関係の下においては,甲のした遺産分割協議の意思表示に要素の錯誤がないとはいえません(最高裁平成5年12月16日判決)。


6 非嫡出子の相続分
(1) 非嫡出子とは,法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた子をいいます。
(2)ア 非嫡出子の相続分は半分であるとする民法900条4号ただし書前段(平成25年当時の条文です。)は,遅くとも平成13年7月当時において,憲法14条1項に違反するとされて,最高裁大法廷平成7年7月5日決定(反対意見は5人)が変更されました(最高裁大法廷平成25年9月4日決定(反対意見なし。補足意見3人))。
イ 民法900条4号ただし書前段の規定が遅くとも平成13年7月当時において憲法14条1項に違反していたとする最高裁判所の判断は,上記当時から同判断時までの間に開始された他の相続につき,同号ただし書前段の規定を前提としてされた遺産の分割の審判その他の裁判,遺産の分割の協議その他の合意等により確定的なものとなった法律関係に影響を及ぼすものではありません(最高裁大法廷平成25年9月4日決定)。
ウ 最高裁平成12年1月27日判決(反対意見は1人),最高裁平成15年3月28日判決(反対意見は2人),最高裁平成15年3月31日判決(反対意見は2人),最高裁平成16年10月14日判決(反対意見は2人),最高裁平成21年9月30日決定(反対意見は1人)では,民法900条4号ただし書前段は憲法14条1項に違反しないとされていました。
(3) 平成25年12月11日施行の改正民法900条4号に基づき,平成25年9月5日以後に開始した相続については,非嫡出子の相続分は嫡出子の相続分と同じになりました(法務省HPの「民法の一部が改正されました」参照)。


7 遺産分割の調停及び審判の管轄
(1)ア 遺産分割調停の管轄は,相手方の住所地を管轄する家庭裁判所又は当事者が合意で定めた家庭裁判所となる(家事事件手続法245条1項)のであって,相続開始地に管轄はありません。
イ 相手方として大阪市在住の甲及び東京都特別区在住の乙の2人がいる場合において大阪家裁に遺産分割調停の申立てをした場合,大阪家裁にだけ管轄が発生する結果(家事事件手続法5条),乙が東京家裁への移送を求めて職権の発動を促したとしても(この場合,移送の申立権がありません。),「家事事件の手続が遅滞することを避けるため必要があると認めるときその他相当と認めるとき」でない限り,東京家裁には移送されません(家事事件手続法9条2項1号)。
そして,相続開始地が大阪市であり,相続人のほとんどが大阪市に住んでいて,相続財産がすべて大阪市にある場合,乙又はその手続代理人が電話会議による出席をすること(家事事件手続法258条1項・54条1項)を前提として東京家裁には移送されないかもしれません。
ウ 離婚又は離縁の調停と異なり,遺産分割調停の場合,調停期日への現実の出席は必須ではありません(家事事件手続法268条3項参照)。
(2)ア 遺産分割審判の管轄は,相続開始地(被相続人の最後の住所地)を管轄する家庭裁判所又は当事者が合意で定めた家庭裁判所となります(家事事件手続法66条1項及び191条)。
イ 遺産分割調停の申立てをせずに直接,遺産分割審判の申立てをした場合,原則として,家庭裁判所はこれを遺産分割調停に付しますし(家事事件手続法274条1項の「付調停」です。),遺産分割調停の管轄家庭裁判所に移送します(家事事件手続法274条2項本文)。
(3)ア 相続会議HPの「遺産分割調停をするにはどこの裁判所に行けばいい? 裁判所の「管轄」に注意」には「遺産分割調停と審判で管轄が異なる事案で調停から審判へ移行した場合には、審判の管轄地の家庭裁判所へ移送されるケースもあります。一方、そのまま移送されず調停の裁判所で自庁処理されることもあるように、判断は裁判所に委ねられています。」と書いてあります。
イ 菅野綜合法律事務所HPの「自庁処理~管轄のない裁判所で遺産分割が行われる場合」には「自庁処理を認める例としては、被相続人の最後の住所地は相続財産の所在地や相続人の住所地などから離れているが、調停手続は相続財産の所在地や相続人の住所地で行われ、その家庭裁判所で審判手続を行うような場合があります。」と書いてあります。
(4) 離婚訴訟等の人事訴訟と異なり,遺産分割審判事件を含む別表第二審判事件については調停前置主義が採用されていない(家事事件手続法257条参照)ものの,裁判所は,当事者の意見を聴いて,いつでも,職権で,事件を家事調停に付することができます(家事事件手続法274条1項)。
(5) 荒井法律事務所HP「相続人が多い土地の遺産分割調停の進め方」には「相続人からの同意取得をスムーズに進めるためには、①事前にお手紙で事情を説明し、必要書類の提出を求めつつ②非協力な相続人がいる場合は遺産分割調停等の裁判手続を利用することが重要です。」と書いてあります。
8 未支給年金
・ 年金の支払は死亡した月の分までとなりますところ,日割り計算は行われず,1日に死亡しても1ヶ月分が支給されます。
    そして,被相続人が偶数月の後半に死亡した場合は1ヶ月分,奇数月に死亡した場合は2ヶ月分,偶数月の全般に死亡した場合は3ヶ月分が未支給年金となります(辻・本郷相続センターHPの「未支給年金は相続財産にあたらない?」参照)。
・ 未支給年金について定める国民年金法19条は,相続とは別の立場から一定の遺族に対して未支給の年金給付の支給を認めたものであり,死亡した受給権者が有していた当該年金給付に係る請求権が同条の規定を離れて別途相続の対象となるものではありません(最高裁平成7年11月7日判決)。
・ 国民年金法19条所定の者がいない場合,その他の相続人が同条所定の未支給年金を受ける権利を取得することはありませんし,未支給年金が同条を離れて相続の対象となり,相続財産を構成することはないと解されています(東京地裁平成23年3月2日判決参照)。
・ 未支給年金請求権については,当該死亡した受給権者に係る遺族が当該未支給年金を自己の固有の権利として請求するものであり,当該死亡した受給権者に係る相続税の課税対象とはならないものの,遺族が支給を受けた当該未支給年金は当該遺族の一時所得に該当します(国税庁HPの「未支給の国民年金に係る相続税の課税関係」参照)。
9 その他
・ 遺産分割審判は憲法32条及び82条に違反しませんし,家庭裁判所は,遺産の分割に関する処分の審判の前提となる相続権,相続財産等の権利関係の存否を,審判中で審理判断することができます(最高裁大法廷昭和41年3月2日決定)。
・  扶養権利者を扶養してきた扶養義務者が他の扶養義務者に対して求償する場合における各自の扶養分担額は,協議がととのわないかぎり,家庭裁判所が審判で定めるべきであつて,通常裁判所が判決手続で定めることはできません(最高裁昭和42年2月17日判決)。
・  保険契約において保険契約者が死亡保険金の受取人を被保険者の「相続人」と指定した場合は,特段の事情のない限り,右指定には相続人が保険金を受け取るべき権利の割合を相続分の割合によるとする旨の指定も含まれ,各保険金受取人の有する権利の割合は相続分の割合になります(最高裁平成6年7月18日判決)。
・  相続開始から遺産分割までの間に共同相続に係る不動産から生ずる金銭債権たる賃料債権は,各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得し,その帰属は,後にされた遺産分割の影響を受けません(最高裁平成17年9月8日判決)。
・ 相続が開始して遺産分割未了の間に相続人が死亡した場合において,第2次被相続人が取得した第1次被相続人の遺産についての相続分に応じた共有持分権は,実体上の権利であって第2次被相続人の遺産として遺産分割の対象となり,第2次被相続人から特別受益を受けた者があるときは,その持戻しをして具体的相続分を算定しなければなりません(最高裁平成17年10月11日決定)。
・ 共同相続された委託者指図型投資信託の受益権及び個人向け国債は,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはありません(最高裁平成26年2月25日判決)。
・ 国立国会図書館HPの「調査資料(2024年刊行分)」「第8章 故人の遺したデジタルデータの相続等―インターネットを介したサービスの多様化と利用の広がりを受けて― 」が載っています。


第2 限定承認に関するメモ書き
1 総論

・ 限定承認とは,相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して,相続の承認をすることをいいます。
2 限定承認と訴訟承継
・  訴訟係属中に当事者が死亡し,数人の相続人がある場合に,右相続人らが限定承認をし,民法936条の規定による相続財産管理人が選任されたときは,右訴訟を承継する者は共同相続人であつて,相続財産管理人はその法定代理人として受継の申立をなすべきであつて,相続財産管理人が訴訟を承継するものではありません(最高裁昭和43年12月17日判決)。
3 限定承認と判決
・  被相続人に対する債権につき,債権者と相続人との間の前訴において,相続人の限定承認が認められ,相続財産の限度での支払を命ずる判決が確定しているときは,債権者は相続人に対し,後訴によつて,右判決の基礎となる事実審の口頭弁論終結時以前に存在した限定承認と相容れない事実を主張して右債権につき無留保の判決を求めることはできません(最高裁昭和49年4月26日判決)。
4 限定承認と譲渡所得税
・ 東弁リブラ2021年9月号「他士業に学ぶ─弁護士が見落としがちな実務のポイント─」が載っていますところ,リンク先のPDF4頁には「限定承認があった場合の「みなし譲渡」については,相続開始日の時価で譲渡があったとして被相続人に譲渡所得税が課税されるが,被相続人は翌年1月1日現在には住所がないので,譲渡所得に対する住民税(不動産の長期譲渡所得であれば5%)は課税されない。」と書いてあります。
5 その他
・ 相続人は,民法936条1項の相続財産管理人が選任された場合であつても,相続財産に関する訴訟につき,当事者適格を有し,前記の相続財産管理人は,その法定代理人として訴訟に関与するものであつて,相続財産管理人の資格では当事者適格を有しません(最高裁昭和47年11月9日判決)。
・ 民法921条3号にいう「相続財産」には,消極財産(相続債務)も含まれ,限定承認をした相続人が消極財産を悪意で財産目録中に記載しなかったときにも,同2号により単純承認したものとみなされます(最高裁昭和61年3月20日判決)。
・  不動産の死因贈与の受贈者が贈与者の相続人である場合において,限定承認がされたときは,死因贈与に基づく限定承認者への所有権移転登記が相続債権者による差押登記よりも先にされたとしても,信義則に照らし,限定承認者は相続債権者に対して不動産の所有権取得を対抗することはできません(最高裁平成10年2月13日判決)。


第3 相続放棄に関するメモ書き
1 総論
(1) 相続放棄をするためには,自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所に相続放棄の申述をしなければなりません(民法915条1項及び938条)。
(2) 相続の放棄をした場合,その相続に関しては,初めから相続人とならなかったものとみなされます(民法939条)ものの,その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまでの間,自己の財産におけるのと同一の注意を持って,その財産の管理を継続しなければなりません(民法940条1項)。
(3) 相続放棄は身分行為ですから,詐害行為取消権の対象にはなりません(最高裁昭和49年9月20日判決)。
(4) 弁護士による大阪遺言・相続ネットに「「処分」と単純承認に関する裁判例」が載っています。


2 相続放棄の期間制限の起算点
(1) 相続人において相続開始の原因となる事実及びこれにより自己が法律上相続人となつた事実を知つた時から3か月以内に限定承認又は相続放棄をしなかつたのが,相続財産が全く存在しないと信じたためであり,かつ,このように信ずるについて相当な理由がある場合には,民法915条1項所定の期間は,相続人が相続財産の全部若しくは一部の存在を認識した時又は通常これを認識しうべかりし時から起算されます(最高裁昭和59年4月27日判決)。
(2)  民法916条にいう「その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時」とは,相続の承認又は放棄をしないで死亡した者の相続人が,当該死亡した者からの相続により,当該死亡した者が承認又は放棄をしなかった相続における相続人としての地位を,自己が承継した事実を知った時をいいます(最高裁令和元年8月9日判決)。


3 法定単純承認に当たる例
・  相続人が相続開始後、相続放棄前に相続債権の取立をして、これを収受領得した場合には、民法921条1号にいわゆる相続財産の一部を処分した場合に該当し、相続の単純承認をしたものとみなされます(最高裁昭和37年6月21日判決)。


4 法定単純承認に当たらない例
(1) 死亡保険金の受領
ア 被保険者死亡の場合,保険金受取人の指定のないときは,保険金を被保険者の相続人に支払う旨の保険約款の条項は,被保険者が死亡した場合において被保険者の相続人に保険金を取得させることを定めたものと解すべきであり,右約款に基づき締結された保険契約は,保険金受取人を被保険者の相続人と指定した場合と同様,特段の事情のないかぎり,被保険者死亡の時におけるその相続人たるべき者のための契約となります(最高裁昭和48年6月29日判決)。
    そのため,相続人が固有財産としての死亡保険金を使って,被相続人の相続債務の一部を弁済したことは,相続財産の一部の処分ではないと解されています(福岡高裁宮崎支部平成10年12月22日決定(判例秘書に掲載))。
イ 死亡保険金請求権は,指定された保険金受取人が自己の固有の権利として取得するのであって,保険契約者又は被保険者から承継取得するものではなく,これらの者の相続財産を構成するものではないというべきであり(最高裁昭和40年2月2日参照),また,死亡保険金請求権は,被保険者の死亡時に初めて発生するものであり,保険契約者の払い込んだ保険料と等価の関係に立つものではなく,被保険者の稼働能力に代わる給付でもないのであって,死亡保険金請求権が実質的に保険契約者又は被保険者の財産に属していたものとみることもできません(最高裁平成14年11月5日判決)。
    そのため,相続放棄をしたときでも死亡保険金を受領できます(結論につき,生命保険文化センターHP「A.保険金受取人の固有の財産となるので、相続を放棄しても死亡保険金は受け取ることができます」参照。なお,自由と正義2023年9月号19頁にも同趣旨の記載があります。)。
ウ  保険契約において保険契約者が死亡保険金の受取人を被保険者の「相続人」と指定した場合,特段の事情のない限り,右指定には相続人が保険金を受け取るべき権利の割合を相続分の割合によるとする旨の指定も含まれ,各保険金受取人の有する権利の割合は相続分の割合になります(最高裁平成6年7月18日判決)。
(2) 民法とは異なる支給順位を定める死亡退職金の受領
ア 死亡退職金の支給等を定めた特殊法人の規程に,死亡退職金の支給を受ける者の第一順位は内縁の配偶者を含む配偶者であって,配偶者があるときは子は全く支給を受けないことなど,受給権者の範囲,順位につき民法の規定する相続人の順位決定の原則とは異なる定め方がされている場合,右死亡退職金の受給権は相続財産に属さず,受給権者である遺族固有の権利です(最高裁昭和55年11月27日判決)。
    そのため,相続放棄をしたときでも民法とは異なる支給順位を定める死亡退職金を受領できると思います。
イ 三井住友信託銀行HPに載ってある「企業年金事務説明資料 【よくあるご照会①】受給権者さまがお亡くなりになったとき」5頁は「遺族給付金、未支給給付金は相続財産ではなく、規約に定めるご遺族さま固有の権利とされています。そのため、相続放棄を行っていても、遺族給付金、未支給給付金をお受け取りいただくことができます。」と書いてあります。
(3) 相続財産の処分
ア  相続人が判示の事情のもとに被相続人の死亡を知らないで相続財産を処分しても,民法921条1号による単純承認の効果は生じません(最高裁昭和41年12月22日判決)。
イ 民法921条1号本文による単純承認の効果が生ずるためには、相続人が自己のために相続の開始した事実を知りまたは確実視しながら相続財産を処分したことを要します(最高裁昭和42年4月27日判決)。
5 その他
ア 「悪意で相続財産を相続財産の目録中に記載しなかった時」という法定単純承認事由は,相続放棄には適用されません(大審院昭和15年1月13日判決)。
イ 葬祭費(国民健康保険の場合)又は埋葬料(健康保険の場合),未支給年金(最高裁平成7年11月7日判決)及び遺族年金(大阪家裁昭和59年4月11日審判(判例秘書に掲載))は相続放棄をしても受領することができます。


第4 遺言に関するメモ書き
1 遺言の解釈
(1) 遺言の解釈にあたっては,遺言書の文言を形式的に判断するだけでなく,遺言者の真意を探究すべきものであり,遺言書の特定の条項を解釈するにあたっても,当該条項と遺言書の全記載との関連,遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などを考慮して当該条項の趣旨を確定すべきとされています(最高裁昭和58年3月18日判決)。
(2) 遺言の解釈に当たっては,遺言書に表明されている遺言者の意思を尊重して合理的にその趣旨を解釈すべきであるが,可能な限りこれを有効となるように解釈することが右意思に沿うゆえんであり,そのためには,遺言書の文言を前提にしながらも,遺言者が遺言書作成に至った経緯及びその置かれた状況等を考慮することも許されます(最高裁平成5年1月19日判決)。
(3)  丁の遺言書中の特定の遺産を一部の親族に遺贈等をする旨の条項に続く「遺言者は法的に定められたる相続人を以って相続を与へる。」との条項について,丁は,その妻戊との間に子がなかったため,丁の兄夫婦の子甲を実子として養育する意図で丁戊夫婦の嫡出子として出生の届出をしたこと,丁と甲とは,遺言書が作成されたころを含めて,丁が死亡するまで,実の親子と同様の生活をしていたとみられること,遺言書が作成された当時,甲は,戸籍上,丁の唯一の相続人であったことなどといった事情を考慮することなく,遺言書の記載のみに依拠して,上記の遺贈等の対象とされた特定の遺産を除く丁の遺産を甲に対して遺贈する趣旨ではなく,これを単に法定相続人に相続させる趣旨であるとした原審の判断には,違法があります(最高裁平成17年7月22日判決)。
(4) 複数の包括遺贈のうちの一つがその効力を生ぜず,又は放棄によってその効力を失った場合,遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときを除き,包括受遺者が受けるべきであったものは,他の包括受遺者には帰属せず,相続人に帰属します(最高裁令和5年5月19日決定)。
2 相続させる遺言
(1) 特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言があった場合には,当該遺言において相続による承継を当該相続人の意思表示にかからせたなどの特段の事情のない限り、何らの行為を要せずして,当該遺産は,被相続人の死亡の時に直ちに相続により承継されます(最高裁平成3年4月19日判決)。
(2)ア  特定の不動産を特定の相続人甲に相続させる旨の遺言により、甲が被相続人の死亡とともに当該不動産の所有権を取得した場合には、甲が単独でその旨の所有権移転登記手続をすることができ、遺言執行者は、遺言の執行として右の登記手続をする義務を負いません(最高裁平成7年1月24日判決)。
イ 遺言によって特定の相続人に相続させるものとされた特定の不動産についての賃借権確認請求訴訟の被告適格を有する者は,遺言執行者があるときであっても,遺言書に当該不動産の管理及び相続人への引渡しを遺言執行者の職務とする旨の記載があるなどの特段の事情のない限り,遺言執行者ではなく,右の相続人です(最高裁平成10年2月27日判決)。
(3) 特定の不動産を特定の相続人甲に相続させる趣旨の遺言がされた場合において,他の相続人が相続開始後に当該不動産につき被相続人から自己への所有権移転登記を経由しているときは,遺言執行者は,右所有権移転登記の抹消登記手続のほか,甲への真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記手続を求めることができます(最高裁平成11年12月16日判決)。
(4) 遺産を特定の推定相続人に単独で相続させる旨の遺産分割の方法を指定する「相続させる」旨の遺言は,当該遺言により遺産を相続させるものとされた推定相続人が遺言者の死亡以前に死亡した場合には,当該「相続させる」旨の遺言に係る条項と遺言書の他の記載との関係,遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などから,遺言者が,上記の場合には,当該推定相続人の代襲者その他の者に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情のない限り,その効力を生ずることはありません(最高裁平成23年2月22日判決)。
(5) 平成30年の相続法改正によって,相続させる遺言は「特定財産承継遺言」として明文化されました(民法1014条2項)。


3 自筆証書遺言の押印
(1) 自筆遺言証書における押印は,指印をもつて足ります(最高裁平成元年2月16日判決)。
(2) 遺言者が,自筆証書遺言をするにつき書簡の形式を採ったため,遺言書本文の自署名下には押印をしなかったが,遺言書であることを意識して,これを入れた封筒の封じ目に押印したものであるなどといった事実関係の下においては,右押印により,自筆証書遺言の押印の要件に欠けるところはありません(最高裁平成6年6月24日判決)。
(3)  遺言者が,入院中の日に自筆証書による遺言の全文,同日の日付及び氏名を自書し,退院して9日後(全文等の自書日から27日後)に押印したなど判示の事実関係の下においては,同自筆証書に真実遺言が成立した日と相違する日の日付が記載されているからといって直ちに同自筆証書による遺言が無効となるものではありません(最高裁令和3年1月18日判決)。
4 自筆証書遺言の破棄
・  遺言者が自筆証書である遺言書に故意に斜線を引く行為は,その斜線を引いた後になお元の文字が判読できる場合であっても,その斜線が赤色ボールペンで上記遺言書の文面全体の左上から右下にかけて引かれているといった事実関係の下においては,その行為の一般的な意味に照らして,上記遺言書の全体を不要のものとし,そこに記載された遺言の全ての効力を失わせる意思の表れとみるのが相当であり,民法1024条前段所定の「故意に遺言書を破棄したとき」に該当し,遺言を撤回したものとみなされます(最高裁平成27年11月20日判決)。
5 その他自筆証書遺言関係
・ 自筆証書遺言の無効確認を求める訴訟においては,当該遺言証書の成立要件すなわちそれが民法968条の定める方式に則って作成されたものであることを,遺言が有効であると主張する側において主張・立証する責任があります(最高裁昭和62年10月8日判決)。
6 秘密証書遺言
・  秘密証書によって遺言をするに当たり,遺言者以外の者が,市販の遺言書の書き方の文例を参照し,ワープロを操作して,文例にある遺言者等の氏名を当該遺言の遺言者等の氏名に置き換え,そのほかは文例のまま遺言書の表題及び本文を入力して印字し,遺言者が氏名等を自筆で記載したなど判示の事実関係の下においては,ワープロを操作して遺言書の表題及び本文を入力し印字した者が民法970条1項3号にいう筆者です(最高裁平成14年9月24日判決)。
7 その他
(1)  仮処分命令の本案訴訟において原告敗訴の判決が確定したとしても,その一事をもって,直ちに右過失が存すると断ずることはできない(最高裁昭和43年12月24日判決参照)ところ,仮処分命令の本案において,仮処分申請における原告の主張が採用されず原告敗訴の判決が確定した場合においても,請求の当否が遺言の趣旨の解釈にかかるものであり,原告が右遺言の趣旨を遺産分割方法の指定と解したことが首肯し得るものであった等といった事実関係の下においては,直ちに仮処分申請人に過失があったものとすることはできません(最高裁平成2年1月22日判決)。
(2) 遺言者が遺言を撤回する遺言を更に別の遺言をもって撤回した場合において,遺言書の記載に照らし,遺言者の意思が当初の遺言の復活を希望するものであることが明らかなときは,当初の遺言の効力が復活します(最高裁平成9年11月13日判決)。
(3) 「相続させる」趣旨の遺言による不動産の権利の取得については,登記なくして第三者に対抗することができた(最高裁平成14年6月10日判決)ものの,令和元年7月1日以降については,民法899条の2に基づき,登記が必要となりました。
(4) 遺言執行者は,共同相続人の相続分を指定する旨の遺言を根拠として,平成30年法律第72号の施行日前に開始した相続に係る相続財産である不動産についてされた所有権移転登記の抹消登記手続を求める訴えの原告適格を有するものではありません(最高裁令和5年5月19日判決)。
(5) 行政書士阿久津事務所HPに「遺言書の各種文例」が載っています。


第5 相続欠格事由に関するメモ書き
1 自筆証書遺言の訂正
(1)ア 相続に関する被相続人の遺言書又はこれについてされている訂正が方式を欠き無効である場合に,相続人が右方式を具備させて有効な遺言書又はその訂正としての外形を作出する行為は,民法891条5号にいう遺言書の偽造又は変造にあたるが,それが遺言者の意思を実現させるためにその法形式を整える趣旨でされたにすぎないものであるときは,右相続人は同号所定の相続欠格者に当たらない(最高裁昭和56年4月3日判決)ものの,自筆証書遺言自体は無効です。
イ 最高裁昭和56年4月3日判決の事案は,遺言者が前の公正証書遺言を取り消す旨の自筆証書遺言を作成したものの,これには押印がなかったため,この遺言書の形式を整える意味で,遺産の一部を与えられている相続人の一人が遺言書に押印したというものでした。
(2)  自筆証書遺言における証書の記載自体からみて明らかな誤記の訂正については,民法968条2項所定の方式の違背があっても,その違背は,遺言の効力に影響を及ぼしません(最高裁昭和56年12月18日判決)。
2 遺言書の破棄又は隠匿
・ 相続人が相続に関する被相続人の遺言書を破棄又は隠匿した場合において,相続人の右行為が相続に関して不当な利益を目的とするものでなかったときは,右相続人は,民法891条5号所定の相続欠格者に当たりません(最高裁平成9年1月28日判決)。


第6 相続回復請求に関するメモ書き
1 相手方が表見相続人に該当する場合,5年の短期消滅時効の適用がありますところ,表見相続人の具体例は以下のとおりです(ベリーベスト法律事務所の遺産相続問題トータルサポートHP「相続回復請求権とは? 対象者や時効、遺留分侵害請求との違いを解説」参照)。
① 相続欠格事由に該当して相続権を失った人(民法891条)
② 相続廃除によって相続権を失った人(民法892条,893条)
③ 事実と異なる出生届や認知届が行われ、本当は被相続人の子でないにもかかわらず、子として相続をした人
④ 無効な婚姻に基づき、配偶者として相続をした人
⑤ 無効な養子縁組に基づき、養子として相続をした人
⑥ 自己の持分を超えて相続権を主張する共同相続人(最高裁大法廷昭和53年12月20日判決
→ 表見相続人に該当するのは,占有管理する相続財産について,自己に相続権があるものと信じるべき合理的な事由がある場合に限られます。
2(1)  相続財産である不動産について単独名義で相続の登記を経由した共同相続人の一人甲が,甲の本来の相続持分を超える部分が他の相続人に属することを知っていたか,又は右部分を含めて甲が単独相続をしたと信ずるにつき合理的な事由がないために,他の共同相続人に対して相続回復請求権の消滅時効を援用することができない場合には,甲から右不動産を譲り受けた第三者も右時効を援用することはできません(最高裁平成7年12月5日判決)。
(2) この場合の第三者に対しては,真正な登記名義の回復を原因とする持分権の移転登記手続を請求することになります(原審である高松高裁平成5年12月7日判決(判例秘書に掲載)参照)。


第7 預貯金債権の仮払い
1 総論
(1) 最高裁大法廷平成28年12月19日決定による判例変更の結果,共同相続された普通預金債権,通常貯金債権及び定期貯金債権は,いずれも,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく,遺産分割の対象となりました。
(2) 判例変更前は,葬儀費用等の緊急性の高いものについては,葬儀社から提示された葬儀見積書などを提出することにより,例外的に一部預貯金の払い戻しを認める金融機関もあったものの,判例変更によりそのような取扱いが困難となりました。
    そのため,平成30年の相続法改正により預貯金債権の仮払いが認められるようになりました。
(3) 弁護士法人三宅法律事務所の「【相続法改正】遺産分割前の預貯金債権の仮払いを認める改正」が参考になります。

2 民法909条の2に基づく預貯金債権の仮払い

(1) 被相続人の葬儀費用や入院費の支払いなど,死亡に伴う資金需要に迅速に対応するための仮払い制度であって,家庭裁判所の手続は不要です。
(2) この制度の場合,相続開始時の預貯金額✕3分の1✕法定相続分が払戻しを受けられる額の上限となりますし,一つの金融機関で払戻しを受けられる額の上限は150万円です。


 家事事件手続法200条3項に基づく預貯金債権の仮分割の仮処分
(1) 遺産分割の調停又は審判が係属している場合において,相続財産に関する債務の弁済,相続人の生活費の支弁その他の事情により必要がある場合,家庭裁判所の審査を経て,遺産に属する特定の預貯金の全部又は一部を仮に取得させてもらえます。
(2) この制度の場合,払い戻しを受けられる額に上限はありません。


第8 共有関係に関するメモ書き
1 共同相続人の一部から遺産を構成する特定不動産の共有持分権を譲り受けた第三者が当該共有関係の解消のためにとるべき裁判手続は,遺産分割審判ではなく,共有物分割訴訟です(最高裁昭和50年11月7日判決)。
2 共有者の一人が死亡し,相続人の不存在が確定し,相続債権者や受遺者に対する清算手続が終了したときは,その持分は,民法958条の3に基づく特別縁故者に対する財産分与の対象となり,右財産分与がされないときに,同法255条により他の共有者に帰属します(最高裁平成元年11月24日判決)。
3 民法258条により共有物の分割をする場合において、当該共有物を共有者のうちの特定の者に取得させるのが相当であると認められ、かつ、その価格が適正に評価され、当該共有物を取得する者に支払能力があって、他の共有者にはその持分の価格を取得させることとしても共有者間の実質的公平を害しないと認められる特段の事情があるときは、共有物を共有者のうちの一人の単独所有又は数人の共有とし、これらの者から他の共有者に対して持分の価格を賠償させる方法(いわゆる全面的価格賠償の方法)によることも許されます(最高裁平成8年10月31日判決)。
4  不動産の共有者の1人は,共有不動産について実体上の権利を有しないのに持分移転登記を了している者に対し,その持分移転登記の抹消登記手続を請求することができます(最高裁平成15年7月11日判決)。
5 共同相続人甲が相続財産中の可分債権につき権限なく自己の相続分以外の債権を行使した場合には,他の共同相続人乙は,甲に対し,侵害された自己の相続分につき,不法行為に基づく損害賠償又は不当利得の返還を求めることができます(最高裁平成16年4月20日判決)。
5 荒井法律事務所HPに「【いつから?】2021年民法改正で共有制度はどう変わる?【2023年4月1日から】」が載っています。


第9 遺産確認の訴え
1(1) 遺産確認の訴えは、当該財産が現に共同相続人による遺産分割前の共有関係にあることの確認を求める訴えであり、その原告勝訴の確定判決は、当該財産が遺産分割の対象である財産であることを既判力をもつて確定し、これに続く遺産分割審判の手続及び右審判の確定後において、当該財産の遺産帰属性を争うことを許さないとすることによつて共同相続人間の紛争の解決に資することができます(最高裁平成元年3月28日判決。なお,先例として,最高裁昭和61年3月13日判決参照)。
(2) 遺産確認の訴えは,共同相続人全員が当事者として関与し、その間で合一にのみ確定することを要するいわゆる固有必要的共同訴訟です(最高裁平成元年3月28日判決)。
(3)  共同相続人のうち自己の相続分の全部を譲渡した者は,遺産確認の訴えの当事者適格を有しません(最高裁平成26年2月14日判決)。
2 遺産の範囲に争いがある場合,実務上,①遺産分割審判の申立てを一旦取り下げるなどし,遺産確認訴訟による解決を先行させる,②不起訴合意のうえ審判手続を進める,③一部の遺産分割をするなどの措憧がとられます(家庭裁判所における遺産分割・遺留分の実務57頁参照)。

第10 相続税に関するメモ書き
1 敷金の取扱い
(1) 無利息の預り保証金及び敷金に係る債務控除額は,その元本価額から,通常の利率による返還期までの間に享受する経済的利益の額を控除した額によるのが相当であるとされています(相続実務アカデミーHPの「額面のままではダメ! 預かり保証金・預かり敷金の相続税評価」のほか,国税不服審判所平成19年4月26日裁決)。
(2) 相続税の申告に際し,敷金(差入保証金)について原状回復費用の債務控除は認められないものの,敷金の償却(敷引き)の債務控除は認められています(柳沼隆税理士事務所HPの「第734話 敷金の相続税評価額」参照)。
2 債務控除
(1) 被相続人が雇用していた従業員を相続開始後に解雇し退職金を支払った場合,相続税の課税価格の計算上債務として控除できます(国税庁HPの「被相続人が雇用していた従業員を相続開始後に解雇し退職金を支払った場合の債務控除」参照)。
(2) 原則として保証債務について債務控除は認められません(国税庁HPの「No.4126 相続財産から控除できる債務」参照)。
(3) 相続税の計算上,債務控除の対象にしたことによって債務の性質が変わるものではないのであって,相続人は,保証債務という債務を相続してその履行をするものですから,相続人について所得税法64条2項の規定を適用することができます(国税庁HPの「連帯保証債務に係る債務控除と保証債務の特例」参照)。
3 相続税のかかる家庭用財産等
(1)ア 相続税のかかる家庭用財産等としては以下のものがあります(相続税対策本部HP「相続税の対象になる財産やその評価方法」参照)。
・ 自動車
・ バイク
・ 貴金属
・ ブランド品
・ 投資目的の仏壇や仏具など
・ 美術品(絵画、書画、壺、刀など)
・ 趣味の道具(ゴルフクラブや楽器など)
・ 一般的な家財道具(家具や電化製品など)
イ 所得税法の場合,自己又はその配偶者その他の親族が生活の用に供する家具,じゆう器,衣服(いわゆる生活用動産)の譲渡については,一個又は一組の価額が30万円を超えない限り,譲渡所得は発生しません(所得税法9条1項9号・所得税法施行令25条)。
(2) 相続税申告書において,家庭用財産としての「家財一式」の評価額は10万円程度としている税理士が多いみたいです(みなと相続コンシェルHP「【相続税】みんなは「家財一式」をいくらと書いてる?⇒1番多いのは〇〇万円」参照)。
4 個人事業主が従業員に支払う退職金に関するメモ書き
(1) 被相続人が雇用していた従業員を相続開始後に解雇し退職金を支払った場合の債務控除
ア 国税庁HPの「被相続人が雇用していた従業員を相続開始後に解雇し退職金を支払った場合の債務控除」には以下の記載があります。
    被相続人の死亡によって事業を廃止して被相続人が雇用していた従業員を解雇する場合において、その者に退職金を支払っているときは、その支給された退職金は、被相続人の生前事業を営む期間中の労務の対価であり、被相続人の債務として確実なものであると認められますから、相続税の課税価格の計算に当っては、その金額を控除して差し支えありません。
イ ゼイケンリンクスHPの「【Q&A】従業員である相続人に退職金を支払った場合の債務控除の可否[税理士のための税務事例解説]」には以下の記載があります。
    債務控除の対象になるとする考え方は、上記のとおり、被相続人が事業を営んでいる間の労務の対価であるかどうかがポイントですから、乙が実際に従業員として勤務した事実があれば、相続人(家族従業員)であるか否かは関係しませんし、相続税法第13条の規定をみても、相続人に対する債務を債務控除の対象から除外する規定もありません。
ウ 税理士法人チェスターHPの「被相続人が雇用していた従業員を相続開始後に解雇し退職金を支払った場合の債務控除」には以下の記載があります。
(3) 事業の承継人がいないために廃業したことによる解雇
    事業を承継する人がいなければ、廃業するしかありません。つまり、相続開始することによって従業員の解雇は確定しており、退職金を支払うことはその時点で確実と認められます。そのため、この退職金については、債務控除の対象になります。
(2) 個人事業主の死亡により雇用契約は当然には終了しないこと
ア 国税不服審判所平成元年12月9日裁決の裁決要旨では,事例判断として以下の記載があります。
    被相続人の事業は被相続人の一身に専属する性質のものではなく、相続の対象となり、雇用契約は相続人に承継されるから、被相続人の死亡は雇用契約の終了原因にはならない。
    また、当該従業員らは被相続人死亡後も引き続き勤務し、勤務条件、勤務内容に重大な変更はなく、被相続人の事業は、相続人に承継されており廃止されていないから、雇用契約は終了していない。
イ 国税不服審判所平成11年12月9日裁決には以下の記載があります。
    使用者の死亡が雇用契約の終了原因になるかどうかについては、明文の規定はないが、相続人は、被相続人の一身に専属したものを除き、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継するのであるから(民法第896条)、使用者個人を看護又は教育するための雇用など労務の内容自体が使用者の一身に専属するものである場合や、使用者の変更によって労務の内容に重大な差異が生ずるような場合等人的色彩の特別に濃厚な雇用を除いては、雇用契約上の使用者の地位は相続の対象となり、使用者の死亡によって当然に雇用契約が終了することにはならないと解するのが相当である。
(3) 退職金支払請求権が発生する場合
・ 国税不服審判所平成13年10月17日裁決には以下の記載があります。
    従業員に対する退職金の支払債務及びこれに対応する従業員の退職金支払請求権は、雇用契約の終了、すなわち退職の事実が生じたことにより当然に発生するというものではなく、あらかじめ労働協約、就業規則等でそれを支給すること及びその支給基準が定められているか、あるいは少なくとも明確な支給条件に従った支給慣行がある場合に発生すると解するのが相当である。
5 相続税における配偶者の税額の軽減
・ 国税庁HPの「タックスアンサーNo.4158 配偶者の税額の軽減」には以下の記載があります。
配偶者の税額の軽減とは、被相続人の配偶者が遺産分割や遺贈により実際に取得した正味の遺産額が、次の金額のどちらか多い金額までは配偶者に相続税はかからないという制度です。
(注) この制度の対象となる財産には、隠蔽または仮装されていた財産は含まれません。
(1) 1億6千万円
(2) 配偶者の法定相続分相当額
この配偶者の税額軽減は、配偶者が遺産分割などで実際に取得した財産を基に計算されることになっています。
6 未分割遺産に関する更正の請求の特則
・ 国税不服審判所平成23年12月6日裁決は,未分割遺産に関する更正の請求の特則を定める相続税法32条1号及び55条に関して以下の判示をしています(イ及びロを①及び②に変えています。)。
① 相続税法第55条は、相続固有の問題として、相続税の法定申告期限内に遺産の全部又は一部の分割ができないことがあり得ることにかんがみ、現実に相続により取得する財産が確定していないことを理由に相続税の納付義務を免れるという不都合を防止し、国家の財源を迅速、確実に確保するために、法定申告期限内に申告書を提出する場合に相続人間で遺産が分割されていないときは、その未分割の遺産については、各共同相続人が法定相続分の割合に従って、当該財産を取得したものとしてその課税価格を計算することとしている。
② そして、相続税法第32条第1号は、相続税の申告書提出時に分割されていない財産があるため同法第55条の規定により民法(第904条の2を除く。)の規定による相続分の割合に従って課税価格が計算されていた場合に、その後当該財産の分割が行われ、共同相続人が当該分割により取得した財産に係る課税価格が当該相続分の割合に従って計算された課税価格と異なることとなったことを理由として更正の請求を認めるものであるから、相続税法第32条第1号の事由は、未分割の遺産につき、いったん同法第55条の規定による計算で税額が確定した後、遺産の分割が行われ、その結果、既に確定した相続税額が過大になるという相続税に固有の後発的事由について規定したものであり、同法第32条第1号に規定する事由があるといえるためには、相続税の申告書提出時に未分割の相続財産があり、かつ、当該財産について相続税の申告書の提出後に分割が行われたことを要するというべきである。 
7 相続税評価額
・ 坂本導聰国税庁課税部長は,平成4年4月17日の衆議院土地問題等に関する特別委員会において以下の答弁をしています。
 御指摘の相続税における土地の評価に当たりましては、従来から地価公示価格との均衡を保つように努めてきたところでございますけれども、今回、地価公示価格を基準として評定するという考え方に立ちまして、従来地価公示価格の七割程度を相続税評価額としておりましたものを、平成四年分からは八割程度にまで引き上げるということをいたしました。
 それからもう一つは、評価時点でございますが、相続税の場合は前年の七月一日が評価時点でございましたが、公示価格の評価時点は当年の一月一日でございますので、相続税評価時点につきましてもこの公示価格の時点に合わせて当年の一月一日にするというようなことをしております。
 こういったことによりまして、土地基本法第十六条等の公的土地評価相互の均衡と適正化の要請に沿ってきたものと考えているところでございます。
8 その他

(1)ア 国税庁HPの「相続税の申告のためのチェックシート」によれば,検討項目としては,①相続財産の分割等,②不動産,③事業用財産,④有価証券,⑤現金・預貯金,⑥家庭用財産及び⑦生命保険金・退職手当金等があります。
イ 国税庁HPに資産課税関係の申請、届出等の様式の制定について(平成17年3月22日付の国税庁長官の法令解釈通達)が載っています。
(2) 相続税のチェスターHPの「回収不能な貸付金債権の相続税評価」には,財産評価基本通達204(貸付金債権の評価)及び財産評価基本通達205 (貸付金債権等の元本価額の範囲)の解説が載っています。
(3) 相続税に関して申告期限後3年以内の分割見込書を提出した場合において,3年以内に遺産が分割できない場合には,「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」をその提出期限後3年を経過する日の翌日から2か月以内に相続税の申告書を提出した税務署長に対して提出する必要があります。
(4) 相続税の申告期限(被相続人の死亡を知った日の翌日から10ヶ月後)までに延納(相続税法38条)を申請する場合,税務署長が確実と認める保証人の保証(国税通則法50条6号参照)をもって担保とすることができます(国税庁HPのタックスアンサー「No.4211 相続税の延納」参照)。
(5) 「居住用財産の3000万円特別控除」は相続発生前の本人が生存中に適用できる制度であるのに対し,「居住用財産(空き家)の譲渡所得の特別控除」は相続発生後の空き家に対して適用できる制度です(司法書士・行政書士事務所リーガルエステートHP「家族信託では相続後の空き家3000万円特別控除は使えない?空き家特例と国税庁回答の概要を解説」参照)。
(6) 以下の資料を掲載しています。
・ 大阪国税局の令和4年度資産課税事務実施要領→「第4章 申告審理・行政指導事務」を抜粋したもの


第11 在日韓国人の相続に関するメモ書き
1 総論
・ 韓国では,2008年1月1日に戸籍制度が廃止されて家族関係登録制度に移行しました(弁護士法人iの「韓国国籍の方には戸籍がない~家族関係登録制度について~」参照)。
2 家族関係証明書の取得
(1) 在日韓国人の場合,本人又はその家族の委任状なしに同人の家族関係証明書を取得することは事実上不可能みたいです(ジュリス・インターナショナル・オフィスHP「② 韓国籍の方が亡くなった場合」参照)。
(2) 康行政書士事務所HPの「兄弟の韓国家族関係登録証明書を取るのが難しくなりました。」に以下の記載があります。
    2021年4月1日からこのような例外的な運用(山中注:日本では在日韓国人の相続における必要性を考慮して、領事が特別の配慮をして例外的に兄弟の家族関係登録証明書の請求を認めていたという運用)が認められなくなり、兄弟の家族関係登録証明書の発行請求が認められないという原則を厳格に適用されることになりました。
3 電算化除籍謄本
(1) 2008年1月1日時点の戸籍の内容は,大使館領事部を含めて日本に10箇所ある総領事館が発行する電算化除籍謄本(日本でいうところの改製原戸籍みたいなものと思います。)に記載されています(韓国語戸籍翻訳.comの「韓国語翻訳 電算化除籍謄本/在日韓国人の相続手続・帰化申請用」参照)。
(2) 債権者が債務者の電算化除籍謄本から現在の住所を調べる場合,電算化除籍謄本で氏名,国籍,性別及び生年月日を確認した上で,東京入国在留管理局長に対する弁護士会照会により居住地の記載がある外国人登録原票の写しを取り寄せた上で,住民票の職務上請求をすることになると思います。
4 相続の準拠法
・ 在日韓国人の場合,相続については大韓民国の法律が適用される(法の適用に関する通則法36条)ものの,相続の準拠法として常居所地がある日本の法を遺言で指定していた場合,相続人の存否は日本の民法によって判断されると思います(大韓民国国際私法49条2項1号)。
5 相続放棄
(1) さむらい行政書士法人HPの「在日韓国人が相続放棄をするときのポイント」には「在日韓国人が亡くなった場合、相続に関する手続きには、韓国の民法が適用されることになります。ただし、日本に住んでいた場合は日本の家庭裁判所で手続きができますが、日本における相続放棄の効力が韓国内で認められるかについては争いがあります。」と書いてあります。
(2) たちばな総合法律事務所HPに「被相続人が在日韓国人である場合の相続放棄の手続、および韓国における相続抛棄の注意点」が載っています。
6 その他
(1) 相続登記.netに「在日韓国人の相続登記の必要書類」が載っています。
(2) 平成24年7月9日に外国人登録法が廃止されましたところ,出入国在留管理庁HPに「死亡した外国人に係る外国人登録原票の写しの交付請求について」が載っています。

第12 デジタルの相続手続きに関するメモ書き
1 手塚司法書士事務所HP「自分が死んでしまったら、GmailやEvernoteはどうなる?」には「すべてを紙に書いておくのは安心感のある方法ですが、手書きという時点でだいぶハードルが高いと感じる人も、現代では多い気がします。私もその一人です。そうであれば、Evernoteやグーグルドキュメントで一覧を作成してみてはいかがでしょうか。」と書いてあります。
2(1) ラボラジアンの「【Google】アカウント無効化管理ツールの設定」には「事故や死亡といった予期しない出来事で自分の Google アカウントを使用できなくなった場合に、その Google アカウントをどのように処理するかを設定します。」と書いてあります。
(2)ア Googleアカウントにログインした状態で死亡した場合,Googleお支払いセンターの「お支払い方法を追加」において遺族名義のカードを追加してGoogle Oneの保存容量の購入を続けておけば,Gmailその他のGoogleアカウントのデータを保存できる気がします。
イ 令和5年1月における私の個人的経験では,Googleお支払いセンターの「お支払い方法を追加」において遺族名義のカードを追加することができました。
ウ 無料アカウントの場合,Google Oneの保存容量は15GBです。
3 CLOUD USER~クラウドで事業を変える改革者へ~HP「息子を失ったある家族の出来事 亡くなった家族のApple IDやGoogleアカウントは引き継げるか」には以下の記載があります。
    Microsoftアカウントも相続は非対応になる。日本マイクロソフトによると、相続を含めたユーザー死亡時の問い合わせはほとんど届いていないという。日本だけでなくアジア全体でも同様とのことだ。
    このあたりはアカウントの活用拠点の違いがあるのかもしれない(スマホは端末のロックを生体認証やパスワード以外で突破するのは非常に難しいが、PCは複数の方法が残されていることが多い)。

第13 戸籍謄本等の職務上請求に関するメモ書き
1 みずほ中央法律事務所HPに「【戸籍・住民票の職務上請求書の不正な使用(弁護士の懲戒)】」が載っています。
2 参議院議員尾立源幸君提出戸籍謄抄本等の不正請求事件並びに本人通知制度に関する質問に対する答弁書には以下の記載があります。
 戸籍謄本等の不正請求の防止等のために講じた措置としては、市区町村を管轄する法務局若しくは地方法務局又はその支局(以下「管轄法務局等」という。)において、当該市区町村の戸籍事務担当者に対する研修等の際に、個人情報の保護が必要とされている情勢に鑑み、いわゆる「戸籍公開の原則」を見直し、戸籍の謄本等を請求することができる場合を制限した平成十九年の戸籍法改正の趣旨を踏まえて戸籍謄本等の交付請求を認めるか否かを厳格に審査するよう指導している。また、法務省において、日本行政書士会連合会等の関係団体(以下「関係団体」という。)に対して戸籍法施行規則(昭和二十二年司法省令第九十四号)第十一条の二第四号に定める統一請求書の適正な管理等について適宜要請し、指導内容を行政書士等に周知するよう依頼しているほか、行政書士等が紛失するなどした統一請求書に関する情報を集約した上、管轄法務局等を通じてこの情報を全国の市区町村に提供するなどしている。
 お尋ねの「住民票の写し請求等の厳正な取扱」に関する関係団体に対する働きかけ等については、総務省において、関係団体に対し、制度改正などの機会を捉えて、住民基本台帳の一部の写しの閲覧及び住民票の写し等の交付に関する省令(昭和六十年自治省令第二十八号)第十一条第二号に定める、関係団体が発行した住民票の写し等の交付を申し出る書類等の適正な管理等について、適宜要請している。
 お尋ねの戸籍謄本等の不正請求の「実態調査」やその「防止に向けた必要な措置」、「個人情報保護の原則を守るよう関係士業団体等に働きかける」こと及び「関係省庁と連携した偽造防止策や啓発の強化等について有効な手立てを講じるべき」ことについては、戸籍謄本等の不正請求の実態及びこれによる被害状況について、今後とも、市区町村等の関係機関と連携して情報の収集に努め、必要に応じて、この情報を全国の市区町村に提供するなどの措置を講ずるとともに、個人情報の保護の観点から、引き続き、関係団体に対し、統一請求書等の適正な管理等に更に努めるよう働きかけ、戸籍謄本等の不正請求の防止に取り組んでまいりたい。
 戸籍謄本等の不正請求に係る被害の相談については、市区町村や管轄法務局等において戸籍事務に関する相談として既に対応しているところ、引き続き、このような対応を適切に講じてまいりたい。

第14 関連記事その他

1 名古屋家裁HPの「申立添付書類等一覧表(家事受付センター) 」に,別表第一審判事件(ただし,後見,保佐及び補助は除く。)及び別表第二調停事件の管轄,申立添付書類及び収入印紙が載っています(郵便切手の組み合わせについては,消費税が8%になった平成26年4月時点のもののようです。)。
2(1)  個人の観賞ないしは記念のための品として作成され,対外的な関係で意味のある証明文書として利用されることが予定されていなかった本件家系図は,行政書士法1条の2第1項にいう「事実証明に関する書類」に当たりません(最高裁平成22年12月20日判決)。
(2) 家系図の作成は,戸籍取得のための正当事由には該当しないとされています(家系図作成・先祖調査請負人HP「戸籍の収集」参照)。
(3) 保存された男性の精子を用いて当該男性の死亡後に行われた人工生殖により女性が懐胎し出産した子と当該男性との間に,法律上の親子関係の形成は認められません(最高裁平成18年9月4日判決)。
3 民法上の配偶者は,その婚姻関係が実体を失って形骸化し,かつ,その状態が固定化して近い将来解消される見込みのない場合,すなわち,事実上の離婚状態にある場合には,中小企業退職金共済法14条1項1号にいう配偶者に当たりません(最高裁令和3年3月25日判決)。
4  相続財産についての情報が被相続人に関するものとしてその生前に個人情報保護法2条1項にいう「個人に関する情報」に当たるものであったとしても,そのことから直ちに,当該情報が当該相続財産を取得した相続人又は受遺者に関するものとして上記「個人に関する情報」に当たるということはできません(最高裁平成31年3月18日判決)。
5(1) 法務省HPに「あなたと家族をつなぐ相続登記 ~相続登記・遺産分割を進めましょう~」が載っています。
(2) 令和3年の不動産登記法改正による相続登記の義務化(不動産登記法76条の2)は令和6年4月1日に開始するものの,3年以内に相続登記又は相続人申告登記(不動産登記法76条の3)をすれば足りるのであって,令和9年3月31日までに登記をすれば問題ありません(松谷司法書士事務所HPの「相続登記(不動産の名義変更)」参照)。
6 京都市HPの「固定資産(土地・家屋)課税台帳等閲覧」に, 土地名寄帳,家屋名寄帳,土地(補充)課税台帳,家屋(補充)課税台帳の閲覧手続の説明が載っています。
7(1) 預金者の共同相続人の一人は,共同相続人全員に帰属する預金契約上の地位に基づき,被相続人名義の預金口座の取引経過の開示を求める権利を単独で行使することができます(最高裁平成21年1月22日判決)。
(2)  東京高裁平成23年8月3日判決(判例秘書に掲載)は,銀行が,預金契約解約後に死亡した元預金者の相続人に対し,預金契約の取引経過開示義務を負わないとした事例です。
8 一般社団法人生命保険協会が行っている生命保険契約照会制度は,生命保険契約の有無だけを回答してくれる制度です(生命保険協会HPの「生命保険契約照会制度のご案内」参照)。
9 旬刊商事法務2306号及び2307号に「令和3年民法改正が株式の準共有に与える影響」が載っています。
10 贈与を受けたと主張されている目的物を受贈者に引き渡すことは,特段の事情のない限り,贈与契約の履行として行われたものと解される(最高裁平成21年7月15日判決(判例時報2082号20頁及び21頁))結果,書面によらない贈与契約であっても解除することができなくなります(民法550条ただし書)。
11 事業における売掛金,他人に貸した現金,不動産の賃料による収益及び損害賠償請求権は原則として可分債権となります(相続税のチェスターHP「可分債権とは相続割合に応じて分割できる債権-可分不可分の具体例も紹介」参照)。
12(1) 以下の資料を掲載しています。
・ 相続による納税義務の承継マニュアル(令和3年7月の大阪国税局徴収部徴収課の文書)
(2) 以下の記事も参照してください。
・ 家事事件に関する審判書・判決書記載例集(最高裁判所が作成したもの)
・ 離婚時の財産分与と税金に関するメモ書き
・ 相続財産管理人,不在者財産管理人及び代位による相続登記
・ 公正証書遺言の口授
・ 大阪家裁後見センターだより
・ 訴訟能力,訴状等の受送達者,審判前の保全処分及び特別代理人
 裁判所関係国賠事件
 後見人等不正事例についての実情調査結果(平成23年分以降)
 平成17年以降の,成年後見関係事件の概況(家裁管内別件数)

公正証書遺言の口授

目次
第1 公正証書遺言の作成手順の骨子
第2 法務省民事局編纂の書籍及び日本公証人連合会HPにおける「口授」の説明
1 法務省民事局編纂の書籍における「口授」の説明
2 日本公証人連合会HPにおける「口授」の説明
第3 公正証書遺言の「口授」につき,有効とされた限界事例及び無効とされた事例
1 有効とされた限界事例
2 無効とされた事例
第4 公正証書遺言の「口授」に関する大審院判例
第5 公正証書遺言の「口授」の内容に関する裁判例の傾向
第6 公正証書遺言の「口授」と「口述の筆記」の前後は問わないこと
第7 公正証書遺言の証人
1 総論
2 証人の欠格事由
3 証人の欠格事由者が立ち会った場合の取扱い
第8 公正証書遺言の「口授」への立会
第9 公正証書遺言の方式が民法で定められている理由
第10 病床にある高齢者が公正証書遺言をする場合の典型例
第10の2 公証人が独自に医師の意見書を取得する場合があること等

第11 公証人の証言
1 公証人の証言の信用性
2 公証人の証言拒絶権
3 問題なく作成された公正証書遺言の作成状況を公証人が覚えていないことは特に問題とならないこと
第12 遺言無効確認請求訴訟における公証人の補助参加
第13 危急時遺言(民法976条)の「口授」との関係
第14 遺言書の付言事項の意味と目的
第15 予備的遺言

第16 公正証書遺言の通数
第17 公正証書遺言の作成手数料
第18 公正証書遺言の原本の保存期間及び検索可能性
1 公正証書遺言の保存期間
2 公正証書遺言の検索可能性
第19 公証人の法的義務に関する最高裁判例
第20 遺言無効確認請求訴訟に関するメモ書き
1 公正証書遺言が有効であるという抗弁の記載例
2 必要的共同訴訟かどうか
3 遺言執行者の当事者適格
4 確認の利益
5 遺言無効確認請求事件の平均審理期間と併合事件
第21 公正証書遺言に関して裁判官が作成した判例タイムズ掲載の論文等
第22 形式不備を理由とする遺言無効と死因贈与
1 死因贈与が成立する場合
2 反訴請求の趣旨の記載例
3 死因贈与の執行者の選任
4 死因贈与と税金
5 金融機関に対し,死因贈与契約に基づく預貯金債権の取得は主張できないこと
第23 弁論の更新等の方法
1 民事事件の場合
2 刑事事件の場合
第24 遺言能力に関するメモ書き
第25 関連記事その他

第1 公正証書遺言の作成手順の骨子
1 公正証書遺言を作成する場合,①証人2人以上の立会があり,②遺言者が遺言の趣旨を口授し,③公証人が遺言者の口述を筆記し,これを遺言者及び証人に読み聞かせ,又は閲覧させ,④遺言者及び証人が署名押印をする必要があります(民法969条)。
2 口授(くじゅ)とは,「口頭で伝える」という意味です。

第2 法務省民事局編纂の書籍及び日本公証人連合会HPにおける「口授」の説明
1 法務省民事局編纂の書籍における「口授」の説明
・ 法務省民事局が編纂した公証人法関係解説・先例集(昭和61年6月10日発行)88頁には「遺言者が遺言の趣旨を口授すること。」に関して以下の記載があります。
     この要件を必要とした理由は、遺言者をして他人から何らの制肘を受けることなく、全くの自由意思に基いて遺言の趣旨を発表するのに最適の方法と認めたからに外ならない。したがつて、若し遺言者の意思発表方法に口授に準ずる自由な方法があれば、これによつても差つかえない。例えば、遺言者が疾病その他の事由によつて発声が困難である場合に、予め遺言の趣旨を私署証書としてしたため、これを公証人の面前に提出して遺言の趣旨は提出の書面記載の通りであると陳述した場合の如きがこれである。
2 日本公証人連合会HPにおける「口授」の説明
・ 日本公証人連合会HP「Q4.公正証書遺言は、どのような手順で作成するのですか。」には「5 遺言公正証書の作成当日」に関して以下の記載がありますところ,これによれば,「遺言者本人から、公証人と証人2名の前で、遺言の内容を改めて口頭で告げていただき、公証人は、それが判断能力を有する遺言者の真意であることを確認」することが「口授」ということになります。
     作成当日には、遺言者本人から、公証人と証人2名の前で、遺言の内容を改めて口頭で告げていただき、公証人は、それが判断能力を有する遺言者の真意であることを確認した上、前記4の確定した遺言公正証書の案に基づきあらかじめ準備した遺言公正証書の原本を、遺言者及び証人2名に読み聞かせ、又は閲覧させて、内容に間違いがないことを確認してもらいます(内容に誤りがあれば、その場で修正することもあります。)。
    内容に間違いがない場合には、遺言者及び証人2名が、遺言公正証書の原本に署名し、押印をすることになります(遺言者が署名することができない場合については、Q2の2参照)。
    そして、公証人も、遺言公正証書の原本に署名し、職印を押捺することによって、遺言公正証書は、完成します。
・ 日本公証人連合会が編纂した「新訂 公証人法」につき,公正証書遺言の口授については以下の記載しかありません(同書92頁及び93頁)。
(1) 代理人による嘱託手続
 公正証書の作成の嘱託は代理人によってもすることができる(法31条、32条)。ただし、遺言公正証書の作成については代理嘱託が許されない。公証人は民法969条、同条の2所定の方式に従い遺言者本人の口授等を直接受けて作成しなければならないからである。

第3 公正証書遺言の「口授」につき,有効とされた限界事例及び無効とされた事例
1 有効とされた限界事例
① 最高裁昭和54年7月5日判決の裁判要旨
  「公証人が右筆記を項目ごとに区切つて読み聞かせたのに対し、そのとおりである旨述べ、時にうなずくたけで声に出さない場合にはその都度公証人に注意されて声に出して前記のように応答したのであつて、その間公証人といろいろ問答し、金員を遺贈する者の名を挙げ『◯◯◯(山中注:当事者の名前)を頼むよ』と述べ、数字の部分については公証人に促がされて声に出して述べる等し、最後に公証人が前記筆記を通読したのに対し大きくうなずいて承認の上、疲労のため自署はできなかつたが、公証人に助けられて自ら前記筆記に捺印し、公証人は右筆記を原本として本件公正証書を作成した」事案(原審判決理由からの抜粋です。)につき,公正証書による遺言が口授の要件を欠くとはいえない。
② 東京高裁平成15年12月17日判決(判例秘書に掲載)の裁判要旨
  公証人が,遺言者から公正証書の作成の嘱託を受け,あらかじめ弁護士が遺言者から聴取した遺言内容に従って準備した遺言書文案を遺言者に交付し,これを各項目ごとに読み聞かせ,その内容が遺言者の意思に合致することの確認を得ることにより,遺言者から公正証書遺言の趣旨の口授を受け,遺言者がその遺言内容の正確なことを承認したうえ,署名捺印した場合,公正証書による遺言の方式に違反しない。
→ ②の判決に関する最高裁平成16年6月8日決定(判例秘書に掲載)は,上告棄却・上告不受理として東京高裁平成15年12月17日判決を維持しました。
③ 東京地裁平成17年11月28日判決(担当裁判官は35期の安浪亮介
。判例秘書に掲載)の裁判要旨
  公証人が,公正証書遺言の案に基づき,各条項を逐一読み上げ,その都度,亡Aから確認の返答を得るとともに,あらためて筆記内容を読み聞かせてその署名捺印を得た後,証人の各署名押印を得て,本件公正証書遺言を作成した場合,「口授」及び「筆記」の点に欠けるところがあるとはいえない。
→ ③の判決の事案では,平成14年11月18日に胃癌の手術を受け,胃の全摘のほか,膵臓,肝臓,小腸等を切除し,いったん退院した後,平成15年3月24日に再入院したが,同年5月初旬当時,鎮静のために塩酸モルヒネの投与等を受け続け,傾眠傾向が強く,体力低下のためにトイレへの歩行等も困難であった亡Aは,同月12日午後6時頃に病室に赴いた公証人に対し,ベッドの上で仰向きに寝ている状態で口授し,同月13日午後0時38分に死亡しました。
→ 35期の安浪亮介裁判官は,令和3年7月16日に最高裁判事に就任しました。
2 無効とされた事例
①  最高裁昭和51年1月16日判決の判例要旨
  遺言者が、公正証書によつて遺言をするにあたり、公証人の質問に対し言語をもつて陳述することなく単に肯定又は否定の挙動を示したにすぎないときには、民法969条2号にいう口授があつたものとはいえず、このことは遺言事項が子の認知に関するものであつても異ならない。
→ ①の判決の原審である仙台高裁昭和50年6月11日判決(判例秘書に掲載)には,(a)事案の説明として「甲は、公証人が病室にきた頃、前記認定のように、切迫昏睡の状態にあって判断力はひどく低下しており、その応答-言葉による場合でも、うなずくという動作による場合でも-は信用をおけない状態であった。したがって、公証人の質問に対し、甲はうなずくという肯定の趣旨の反応を示したけれども、質問の趣旨を理解した上でうなずいたのかどうか甚だ疑わしいといわなければならない。もっとも、仮に質問の趣旨を理解した上でうなずいたとしても、うなずいただけで一言もいわなかったのであるから、遺言者の口述がないことに変わりはない。」と書いてありますし,(b)同判決の事案においては,遺言者である甲は署名できず,昭和46年6月15日午後8時半頃に病室で公正証書遺言をし,その翌日の午後3時頃に死亡しました。
② 大阪高裁平成26年11月28日判決(判例秘書に掲載)の判例要旨
  遺言公正証書につき、(a)公証人が、事前には、遺言者の長男から示された遺言の案が遺言者の意思に合致しているのかを直接確認したことはないこと、(b)遺言当日も、公証人が、あらかじめ作成していた遺言公正証書の案を、病室で横になっていた遺言者の顔前にかざすようにして見せながら、項目ごとにその要旨を説明し、それでよいかどうかの確認を求めたのに対し、遺言者は、うなずいたり、「はい」と返事をしたのみで、遺言の内容に関することは一言も発していないこと、(c)遺言の内容が、評価額合計が数億円にも及ぶ多額かつ多数、多様な保有資産を推定相続人全員に分けて相続させることを主な内容とするものであること、(d)これを遺言者の意図どおりに実現するためには、自らの保有資産の種類や数、評価額の概略や相続人らが受けた生前贈与などの遺留分に関わる事情をも把握する必要があること、(e)遺言当時、遺言者は、多発性脳梗塞等の既往症があり、認知症と診断されたこともあり、記憶力や特に計算能力の低下が目立ち始めていたことなどといった事実関係の下では、「口授」があったということはできない。
③ 東京高裁平成27年8月27日判決(判例秘書に掲載)の判例要旨

  民法969条2号所定の「遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること」とは,遺言者自らが、自分の言葉で,公証人に対し,遺言者の財産を誰に対してどのように処分するのかを語ることを意味するのであり,用語,言葉遣いは別として,遺言者が上記の点に関し自ら発した言葉自体により,これを聞いた公証人のみならず,立ち会っている証人もが,いずれもその言葉で遺言者の遺言の趣旨を理解することができるものであることを要するのであって,遺言者が公証人に自分の言葉で遺言者の財産を誰に対してどのように処分するのかを語らずに,公証人の質問に対する肯定的な言辞,挙動をしても,これをもって,遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授したということはできない。
→ ③の判決は,「亡花子は、平成二一年一二月二四日、世田谷公証役場において本件公証人に対し、「春子に全部。」と述べ、冬子から「五人いるのよ、それでいいの?」と尋ねられると、「梅夫にも。」と述べたが、それ以上は遺言内容について何も語らず、平成二二年一月七日、世田谷公証役場において、本件公証人から「これでいいですか。」と尋ねられて、頷いたが、遺言内容について何ら具体的に発言することはなく、亡花子が本件公正証書に記載されている遺言の内容を本件公証人及び証人に語ることはなかった」という事案に関するものです。

第4 公正証書遺言の「口授」に関する大審院判例
1 民法は口授の限度に関して何ら規定していませんから,遺贈物件の細かい詳細につき,全部覚書を出すことによって口授を省略できます(大審院大正8年7月8日判決(判例秘書に掲載))。
2 「口授」の筆記として,公証人が筆生(文字を書き写すことを役目とする人)に機械的に執筆させることは差し支えありません(大審院大正11年7月14日判決(判例秘書に掲載))。
3(1) 大審院昭和6年11月27日判決(判例秘書に掲載)は,公証人が他人から遺言の趣旨を聴取してまず書面を作り,ついで遺言の口授を受け,その趣旨が筆記と同一である場合において,口授があったと認めました。
(2) 大審院昭和9年7月10日判決(判例秘書に掲載)は,公証人があらかじめ遺言書の内容を記した書面の交付を受けて,その書面に基づいて公正証書作成の準備としてその筆記を作成しておき,ついで遺言者に面接し、同人から遺言の趣旨はさきに交付しておいた書面のとおりとの陳述を受けた場合について,口授があったと認めました。
(3) 最高裁昭和51年1月16日判決に関する金融法務事情781号28頁では,大審院昭和6年11月27日判決については遺言の内容が明確であり,口授もあるから,学説も賛成しているのに対し,大審院昭和9年7月10日判決については,多くの学説が反対していると書いてあるものの,最高裁昭和43年12月20日判決は,両方の大審院判例を先例として引用しています。

第5 公正証書遺言の「口授」の内容に関する裁判例の傾向
1(1) 「遺言無効確認請求事件の研究(上)」(筆者は56期の石田明彦裁判官他9名)には,民法969条2号の「口授」に関して以下の記載があります(判例タイムズ1194号(2006年1月15日号)53頁(①の記載),54頁(②の記載)及び55頁(③の記載))。
① 2号は,遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授することを要件としている。この口授の不存在が無効原因として主張された8件の裁判例は,いずれも遺言無能力とともに主張されている。これは,無効を主張する側の相続人は公正証書遺言の作成にはかかわっておらず,作成時の状況が不明であること,遺言能力がない遺言者には口授は困難と考えられることが原因と考えられる。一方,遺言無能力のみが主張され,口授の不存在が主張されなかった裁判例も5件あった。
 8件中7件で口授の存否について判断されているが,口授の不存在は認定されていない。なお,裁判例8については遺言能力を欠くと認められ,口授の存否については判断されなかった。
② 裁判例では,遺言者の意思を確認するために口授を要求した同条2号の趣旨にかんがみて,遺言者の真意が当該遺言に反映されていると認められることを前提に,口授該当性を必ずしも形式のみにとらわれず,比較的緩やかに判断しているように思われる。
③ 公正証書遺言の方式違背について主張された裁判例は少なくないが,方式違背を理由に遺言無効が認められた裁判例は,立会証人が証人適格を欠いていたとする裁判例38のみであった。公正証書遺言が,証書作成を職務として行い,職務上の義務に違反した場合には懲戒に付され(公証人法79条),当事者と利害関係を有しない(同法22条1号)公証人によって作成されることが,この結果につながっているものと考えられる。もっとも,遺言能力を欠くと判断された裁判例(裁判例8,33)においては,口授に該当しないとの趣旨の事実認定がされている。

(2) 「遺言無効確認請求事件の研究(上)」は,平成7年以降大阪地裁民事部が受理した63件の遺言無効確認請求事件(うち1件は遺言有効確認請求事件)を検索し,判決に至った合計40件の裁判例を検討したものであります(判例タイムズ1194号(2006年1月15日号)44頁)ところ,当該論文で検討対象となった裁判例は平成17年までと思います。
2 柳川俊一・昭43最判解説(民)972頁[106]」には「遺言者の口授が要求される理由は遺言者の真意を確保する適切な手段であるという点にあるから,遺言の際の前後の状況や遺言の場所などを考慮に入れた上で遺言者の口述から遺言の骨子を捕捉できれば,その口述をもって口授があったとみてよいと解される。」と書いてあります(「遺言無効確認請求事件を巡る諸問題」(筆者は36期の畠山稔裁判官他6名)判例タイムズ1380号(2012年12月1日号)19頁でも引用されています。)。
3 最高裁昭和54年7月5日判決を原審判決理由と一緒に掲載している判例タイムズ399号140頁には,判例における「口授」の要件の判断傾向として以下の記載があります。
 おおまかな傾向としては、遺言の全趣旨を一言一句ごとに口頭で述べる必要はなく、遺言者みずから若しくは第三者作成の原稿に基づいてある程度概括的な陳述をした場合でも有効であるが、ただ、遺言者が言語をもつて答述することなく単に挙動をもつて肯首したにすぎない場合には、「口授」の要件を欠き無効である、としているといつてよいかと思われる。
4 大阪高裁平成26年11月28日判決の判例評釈である判例タイムズ1411号(2015年6月号)93頁には以下の記載があります。
 これらの裁判例からは,おおむね,①遺言者が筆記書面作成過程に関与していることが証拠上明らかになっていること,②遺言者の判断能力が遺言時に著しく低下していないこと(遺言の内容が,遺言時の遺言者にとって当否の判断が困難なほど複雑なものとなっていないかが検討される。),③遺言者が公証人に対して単に筆記書面の記載内容を肯定する旨を述べるのではなく,自分なりの表現でその骨子を述べたり,筆記書面を修正・補充する具体的指示をしていること,といった事柄が,口授があったとする上で重要な要素であることがうかがわれる。


第6 公正証書遺言の「口授」と「口述の筆記」の前後は問わないこと
1 公証人が,あらかじめ他人から聴取した遺言の内容を筆記し,公正証書用紙に清書したうえ,その内容を遺言者に読み聞かせたところ,遺言者が右遺言の内容と同趣旨を口授し,これを承認して右書面にみずから署名押印したときは,公正証書による遺言の方式に違反しません(最高裁昭和43年12月20日判決。なお,先例として,大審院昭和6年11月27日判決及び大審院昭和9年7月10日判決参照)。
2 最高裁昭和43年12月20日判決の原審である東京高裁昭和42年12月19日判決によれば,当該判決の事案は,
 公証人が妾から聴取した遺言の内容を筆記し,遺言者宅へ赴き,遺言者及び立会証人両名の面前で遺言の内容を読み聞かせたところ,遺言者は「この土地と家は皆の者に分けてやりたかった」という趣旨を述べ,その書面に自ら署名,押印し,「これでよかったね」と述べた,というものでした。

第7 公正証書遺言の証人

1 総論
・ 証人は,遺言者に人違いのないこと,遺言者が正常な精神状態のもとで自己の意思に基づいて遺言の趣旨を口授等すること,公証人による筆記が正確であることを確認する職責があるとともに,他面,その立会により公証人の職権濫用を防止する目的があるといわれています(新版 証書の作成と文例【遺言編】[三訂版]15頁)。
 証人の欠格事由
(1) 以下の人は公正証書遺言の証人になることはできません(民法974条)。
① 未成年者
② 推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族
・ 秘密証書遺言であっても受遺者は証人になることはできません(大審院昭和6年6月10日判決(判例秘書に掲載))。
・ 推定相続人の配偶者も証人になることはできません(最高裁昭和47年5月25日判決)。
③ 公証人の配偶者,四親等内の親族,書紀及び使用人
(2) 視覚障害者は,公正証書遺言に立ち会う証人としての適格を有します(最高裁昭和55年12月4日判決)。
3 証人の欠格事由者が立ち会った場合の取扱い
・ 公正証書遺言の作成に当たり,民法所定の証人が立ち会っている以上,たまたま当該遺言の証人となることができない者が同席していたとしても,この者によって遺言の内容が左右されたり,遺言者が自己の真意に基づいて遺言をすることを妨げられたりするなど特段の事情のない限り,当該公正証書遺言の作成手続を違法と言うことはできず,同遺言が無効となるものではありません(最高裁平成13年3月27日判決)。


第8 公正証書遺言の「口授」への立会
1 遺言者が公正証書遺言をするについて,立会証人の一人は,すでに遺言内容の筆記が終った段階から立ち会ったものであり,その後公証人が右筆記内容を読み聞かせたのに対し,右遺言者はただうなづくのみであった場合,口授への立会があったとはいえません(最高裁昭和52年6月14日判決)。
2 民法969条に従い公正証書による遺言がされる場合において,証人は,遺言者が同条4号所定の署名及び押印をするに際してもこれに立ち会うことを要します(最高裁平成10年3月13日判決)。

第9 公正証書遺言の方式が民法で定められている理由
・ 「遺言能力(遺言能力の理論的検討及びその判断・審理方法)」(筆者は50期の土井文美裁判官)には,注95として以下の記載があります(判例タイムズ1423号(2016年6月号)37頁)。
  上記のような公正証書の方式についての細かな規定が,公証人法ではなく民法969条として民法の中にあえておかれている理由は,立法担当者(梅謙次郎)の説明によると「公証人に故意や過失があった場合に他の者(遺言者や証人など)が規定を知っていれば正すことができる,遺言のような行為は非常に大事な行為なのでそれくらいの注意をしておいたほうがよい」という趣旨であったという。


第10 病床にある高齢者が公正証書遺言をする場合の典型例等
1 「遺言能力(遺言能力の理論的検討及びその判断・審理方法)」(筆者は50期の土井文美裁判官)には以下の記載があります(判例タイムズ1423号(2016年6月号)37頁)。
  病床にある高齢者が遺言する場合の一種の典型例としては,公証人が依頼に来た関係者(遺言者若しくはその近親者等から依頼を受けた弁護士や司法書士であることもある。)から作成したい遺言の内容を聴取し,打合せに従ってあらかじめ案文を作成し,上記依頼に来た関係者を通じ,本人にこれを確認したとの連絡を受けてから,約束した公正証書作成日時に遺言者の来訪を受け,あるいは遺言者の下に赴いて遺言者に対面し(このときが初対面のことも多い。),遺言者に対しあらかじめ作成した証書を見せて内容を説明し,それに基づいて,遺言者から口授を受ける(実際には,遺言者が公証人に「それでいいです」などと言うことですまされることもあるようである。)というのが実情である。
  遺言者の能力に問題がなければ,上記の手順であっても意思確認としての実質的効果に特に違いがあるとはいえないが,遺言能力に疑義がある場合には,口授の順序によって確認の程度にも違いが生じないかという疑問がないわけではない。
2 遺言者が,遺言当時胃癌のため入院中で手術に堪えられないほどに病勢が進んでおり,公証人に対する本件遺言口述のため約15分間も病床に半身を起していた後でもあったから,公証人が遺言者の疲労や病勢の悪化を考慮してその自署を押し止めたため,公証人の言に反対してまで自署することを期待することができなかったような事情があるときは、民法969条4号ただし書にいう「遺言者が署名することができない場合」に当たる(最高裁昭和37年6月8日判決)ところ,このような身体状態でも遺言者には遺言能力があることとなります。
3 大阪高裁平成26年11月28日判決の判例評釈である判例タイムズ1411号(2015年6月号)92頁には以下の記載があります。
  実務上は,公証人が予め筆記書面を作成し,遺言者の口述を聴いた上で筆記書面を読み聞かせ,署名押印を得てそのまま遺言公正証書原本とする例が多く,判例もこれを持って口授があったものとしている(大審院昭和6年11月27日第二民事部判決・民集10巻1125頁,大審院昭和9年7月10日第二民事部判決・民集13巻1341頁,最高裁昭和43年12月20日第二小法廷判決・民集22巻13号3017頁,判タ230号165頁,最高裁昭和54年7月5日第一小法廷判決・判タ399号140頁。その他,危急時遺言[976条]に係る口授についてであるが,最高裁平成11年9月14日第三小法廷判決・判タ1017号111頁,判時1693号68頁)。

第10の2 公証人が独自に医師の意見書を取得する場合があること等
1 判例分析 遺言の有効・無効の判断48頁には以下の記載があります。
  公証人は、成年被後見人の遺言でなくとも、公証人法施行規則13条1項(「公証人は〔中略〕その法律行為をする能力があるかどうかについて疑があるときは、関係人に注意をし、且つ、その者に必要な説明をさせなければならない」)や通達(「本人の事理を弁識する能力に疑義があるときは、遺言の有効性が訴訟や遺産分割審判で争われた場合の証拠の保全のために、診断書等の提出を求めて証書の原本とともに保存し、又は本人の状況等の要領を録取した書面を証書の原本とともに保存するものとする。」(平成12年3月13日法務省民一第634号民事局長通達第1・2(1)))に基づき、精神能力に疑いがある場合には、事前に独自に医師の意見を聞いたり、公正証書作成時に医師に意見害を作成してもらったり、 自ら本人の状況等を録取した書面を作成するなどして遺言書原本と一緒に保管している場合がある。このような診断書は、公証人が、通達に基づき、 まさに遺言能力に関する証拠の保全のために入手したものであるから、その信頼性は高いとされている。
2 日本公証人連合会HPの「Q2.公正証書遺言には、どのようなメリットがありますか。」には,「安全確実な遺言方法」として以下の記載があります。
  公証人は、多年、裁判官、検察官又は弁護士の経験を有する法曹資格者や、多年、法律事務に携わり、法曹資格者に準ずる学識経験を有する者であって、いずれも正確な法律知識と豊富な実務経験を有しています。したがって、複雑な内容であっても、法律的に見てきちんと整理した内容の遺言書を作成しますし、もとより、方式の不備で遺言が無効になるおそれもありません。公正証書遺言は、自筆証書遺言と比べて、安全確実な遺言方法であるといえます。


第11 公証人の証言
1 公証人の証言の信用性
(1) 「遺言無効確認請求事件の研究(上)」(筆者は56期の石田明彦裁判官他9名)には記載があります(判例タイムズ1194号(2006年1月15日号)55頁)。
オ 公正証書の作成状況を認定するに当たっての証拠方法
  収集した裁判例においては,口授等の作成状況を認定するに当たり,いずれも作成に立ち会った者の証言が用いられている。
  裁判例のうち5件(裁判例4,5,30,33,37)は,公証人を証人として採用し,その証言に基づいて作成状況を認定している。
  公証人の証言の信用性について特段の検討をせずに事実を認定している裁判例がほとんどであったが,裁判例37は,遺言書作成時に遺言者が公証人に対して言葉を発することはなかったとの立会証人の証言と比較し,公証人は職務遂行上遺言の方式や遺言能力に留意し,遺言能力を確認するためにも遺言内容を遺言者が自ら話すよう手続を進めたことが認められ,その証言は非常に信用性が高いのに対し,立会証人は法律に対する専門的知識を有しているのではなく,遺言作成の手順については特段の留意を払っていなかったものであり,立会証人の証言は公証人の証言よりも信用性は低いと判断している。
  裁判例のうち3件(裁判例8,15,29)では,公証人を証人として採用しておらず,立会証人の証言により事実を認定している。
  裁判例29は,遺言能力の判断において,立会証人は社団法人家庭問題情報センターに所属する元家庭裁判所調査官であり,公証人から派遣要請を受けた同センターから派遣された者であって,当事者と何らの利害関係も持たないことを指摘し,同立会証人の証言を遺言作成時の事実認定の際の証拠として摘示している。
(2) 「遺言無効確認請求事件の研究(上)」は,平成7年以降大阪地裁民事部が受理した63件の遺言無効確認請求事件(うち1件は遺言有効確認請求事件)を検索し,判決に至った合計40件の裁判例を検討したものであります(判例タイムズ1194号(2006年1月15日号)44頁)ところ,当該論文で検討対象となった裁判例は平成17年までと思います。
2 公証人の証言拒絶権
(1) 公証人又は公証人の職にあった者は,職務上知り得た事実で黙秘すべきものについて尋問を受ける場合,証言を拒むことができます(民事訴訟法197条1項2号)ところ,民訴法197条1項2号所定の「黙秘すべきもの」とは,一般に知られていない事実のうち,弁護士等に事務を行うこと等を依頼した本人が,これを秘匿することについて,単に主観的利益だけではなく,客観的にみて保護に値するような利益を有するものをいいます(最高裁平成16年11月26日決定)。
(2) 東京高裁平成4年6月19日決定(判例秘書に掲載)は以下の判示をしています。
  遺言者が死亡した後に、公正証書遺言によってされた財産の帰属に関する遺言者の意思表示の効力を巡って紛争が生じ、この点に関する事情について、当該公正証書を作成した公証人の証言を得るほかこれに代替し得る適切な証拠方法がない場合、右紛争について実体に即した公正な裁判を実現するために、右紛争の争点に対する判断に必要な限度で遺言者の秘密に属する事実が開示されることになっても止むを得ない。
(3) 公証人法4条は「公証人ハ法律ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外其ノ取扱ヒタル事件ヲ漏泄スルコトヲ得ス但シ嘱託人ノ同意ヲ得タルトキハ此ノ限ニ在ラス」と定めています。
3 問題なく作成された公正証書遺言の作成状況を公証人が覚えていないことは特に問題とならないこと
(1) 東京高裁平成29年6月26日判決(判例秘書に掲載。裁判長は35期の安浪亮介)は,13期の山本和敏公証人が入院中の88歳の女性の依頼に基づいて作成した遺言公正証書(以下の文中の「第2遺言」のことです。)について,以下の判示をしています(改行を追加しています。)。
① 第2遺言作成に当たった山本公証人は,Eの親族の遺言公正証書を作成した記憶はあるものの,Aのことを記憶していないとしている(乙12)が,仮に,Aが山本公証人とのやりとりにおいて,不穏な言動をしたり,ちぐはぐな対応をしたりするなどした場合には,公証人として,遺言公正証書の作成を進めるべきか中断すべきか検討することになるであろうし,そうであれば,かえって記憶に残ると考えられるのであり,山本公証人の記憶に残っていないということは,むしろ第2遺言作成が問題なく行われたことに整合するものと考えられる。
② 被控訴人は,Aが遺言の趣旨を公証人に口授したものとはいえず,第2遺言には民法969条2号の方式違背があることは明らかであると主張する。
 しかし,平成13年12月28日頃の看護経過記録(甲4)からうかがわれるAの言動からすれば,Aは,入院中,他者と不自由なく会話をすることができており,第2遺言作成時においても,言葉を交わすことにより,山本公証人からの遺言書の案についての問い掛けに応対できたものと認められる上,証拠(乙12)及び弁論の全趣旨によれば,第2遺言は,山本公証人が遺言公正証書を作成する際の通常の手順と方法により作成されたものと認められるから,Aにおいて山本公証人とのやりとりを通じて第2遺言の内容を了承する旨述べたことを容易に推認することができる。
 したがって,第2遺言は,Aの口授によるものということができ,被控訴人主張の方式違背があるとはいえない。
(2) なかた法律事務所HP「公正証書遺言の無効[相続問題]」には以下の記載があるものの,公証人が無理に具体的な遺言作成の状況を説明する必要はないと思います。
公正証書遺言といえば、公証人が証人として出てくることが多々あります。
公証人が具体的な遺言作成の状況は覚えていないと証言することが多いのではないでしょうか。
多ければ年間何百件も作成しますからね。
しかし、私の担当した訴訟でも公証人が出てきましたが、十数年前の遺言の具体的な状況を覚えていると証言をしました。
しかし、俄かに信じることができませんよね。証言の信用性をかなり争いました。


第12 遺言無効確認請求訴訟における公証人の補助参加
1 訴訟の結果について利害関係を有する第三者は,当事者の一方を補助するため,その訴訟に参加することができます(民事訴訟法42条)。
 そして,当該訴訟の判決が参加人の私法上又は公法上の法的地位又は法的利益に影響を及ぼすおそれがある場合,法律上の利害関係を有するといえますから,第三者が補助参加できます(最高裁平成13年1月30日決定)。
2(1) 公証人は国家賠償法上の「公務員」に該当します(法務省HPの「公証制度について」参照)から,「口授」の欠缺を理由とする遺言無効確認請求訴訟において請求認容判決が出た場合,公正証書遺言が無効とされて損害を受けた嘱託人及びその相続人としては,公証人の職務義務違反を理由として国家賠償請求訴訟を提起できますところ,仮に当該訴訟において国が敗訴し,かつ,職務義務違反について公証人に故意又は重過失があると判断された場合,公証人は国から求償権を行使されます(国家賠償法1条2項)。
  そのため,遺言無効確認請求訴訟の判決は,公正証書遺言を作成した公証人の私法上の法的地位又は法的利益に影響を及ぼすといえますから,公証人としては,公正証書遺言の関係者を補助するため,遺言無効確認請求訴訟に補助参加できると思います。
(2) 横浜ロード法律事務所HP「補助参加」には「民事訴訟法において、補助参加の申出があった場合、当事者の異議がない限り、裁判所は補助参加を許すか否かの判断をすることがないため(44条1項)、(山中注:補助参加の要件は)実務的にはあまり問題になりません。」と書いてあります。
3(1) 身元保証金は,公証人が将来負担することのあるべき一定の債務を担保するために国に納付する金銭又は国債証券であります(公証人法19条,公証人身元保証金令2条)ところ,新訂 公証人法43頁には「公証人の故意過失によって嘱託人等の関係人に損害を与えた場合には、国がその賠償の責に任じ、公証人に故意又は重過失がある場合には、上記賠償額につき国は公証人に対して求償権を取得するから(国家賠償法1条2項)、国は身元保証金からこの求償権の弁済を受け得るものと解される。」と書いてあります。
(2) 東京23区又は大阪市に公証役場を設ける場合の身元保証金は3万円です(公証人身元保証金令1条)。
4 福岡高裁平成30年3月19日判決は,「明文の規定もない以上,控訴審における独立当事者参加に被参加人の同意を要すると解することはできず,これも採用することはできない。」と判示しています(リンク先のPDF18頁)。

第13 危急時遺言(民法976条)の「口授」との関係
1  いわゆる危急時遺言に当たり,立ち会った証人の一人があらかじめ作成された草案を一項目ずつ読み上げ,遺言者が,その都度うなずきながら「はい」などと返答し,最後に右証人から念を押され了承する旨を述べたなどといった事実関係の下においては,民法976条1項にいう遺言の趣旨の口授があったものということができます(最高裁平成11年9月14日判決)。
2 いわゆる危急時遺言において,筆記者である証人が筆記内容を清書した書面に遺言者の現在しない場所で署名捺印をし,他の証人二名の署名を得たうえ,全証人の立会いのもとに遺言者に読み聞かせ,その後,遺言者の現在しない,遺言執行者に指定された者の法律事務所で右証人二名が捺印をし,もって全証人の署名捺印が完成した場合であっても,その署名捺印が,筆記内容に改変を加えた疑いを挾む余地のない事情のもとに遺言書作成の一連の過程に従って遅滞なくなされたものであるときは,その署名捺印は民法976条の方式に則ったものとして,遺言の効力が認められます(最高裁昭和47年3月17日判決)。
3(1) 家庭裁判所による危急時遺言の確認(民法976条5項)はその遺言の有効性を確定するものではありません(大審院昭和4年6月4日判決(判例秘書に掲載))。
(2) 家庭裁判所が危急時遺言の確認をするに当たっては,当該遺言が遺言者の真意に出たものであるとの心証を得る必要があるところ(民法976条5項),この確認には既判力がなく,他方でこの確認を得なければ当該遺言は効力を生じないことに確定してしまうことからすると,遺言者の真意につき家庭裁判所が得るべき心証の程度については,確信の程度にまで及ぶ必要はなく,当該遺言が一応遺言者の真意に適うと判断される程度のもので足りると解されています(東京高裁令和2年6月26日決定(判例秘書に掲載))。
4 東京高裁令和6年8月29日判決(判例タイムズ2025年4月号)は,いわゆる危急時遺言について,民法976条1項所定の口授,筆記,読み聞かせ等の事実が認められないとして,遺言の無効を確認した事例です。

第14 遺言書の付言事項の意味と目的
1 新版 証書の作成と文例【遺言編】[三訂版]12頁には,付言に関して以下の記載があります。
  法定遺言事項以外にも、遺言者が、遺言の動機、心情、配分を定めた理由、相続人らに対する希望などを遺言書に記載するよう求めることがある。[付言]はその例を示したものである。付言は、本文末尾に記載するのが通常であるが、時に、本文の前書きとして記載することもある。表題は、「付言」のほか、「付言事項」、「付記事項」など多様である。法律上の効果を伴わないものであるが、相続人らに遺言の趣旨を理解してもらい、遺言内容の円滑な実現を図る上で有益なことがある。逆に、本文の内容と抵触したり、その解釈を混乱させるおそれがある記述は避けなければならない。また、生前贈与等について客観的な事実に反する記載をしたり、一部の相続人等に対するいたずらな非難、悪口を記載すると、紛争を誘発、助長させるおそれがあるといわれる。その意味で、付言を記載するか否か、どのような内容を記載するかについても、慎重な配慮が要請される。なお、本文の各条項に織り込んで記載することも当該条項の趣旨を明らかにする点で有用なことがあり得るが、記載の方法が不適当であると、かえって条項の趣旨を不明確にする危険もある。
2 ケース別 特殊な遺言条項 作成と手続のポイント-補充事項・付言事項,祭祀承継等102頁には,「(1) 付言事項の意味と目的」として以下の記載があります。
  遺言事項ではないことを遺言書に書いても、法的効力(強制力)がないだけで、それを書いてはいけないというものではありません。このように法的効力のない記載は「付言事項」と呼ばれています。付言事項は、遺言としての法的効力はありませんが、手紙(メッセージ)としての意味はあり、その記載内容が相続人等に伝わり、それが相続人等の行動に影響を及ぼせば、事実上の効果をもたらすことになります。
  遺言書は、相続紛争の予防を目的に作るものですから、法的効力を期待するのが本来ですが、法的効力のない付言事項が相続人等に一定の効果を及ぼして事実として紛争の予防ができるなら、遺言書に付言事項を書くことは意味があります。
3 改訂 遺言条項例300&ケース別文例集80頁には,「遺言者自身が,遺言書に特別受益の内容や価額を後日判断するための手がかりとなる事実を具体的に記載している場合は,利害関係人間の紛争を事前に予防する事実上の効果を有するから,このような事実があれば,遺言書に具体的に記載しておくとよい」と書いてあり,その条項例として以下の記載があります(同書267頁)。
  遺言者は,長女Aに対し以下のとおり生前に贈与した。遺言者が本遺言において長女Aに遺産を相続させなかったのは,以下のとおり.既に相当額の生前贈与をしたからであり、遺言者は.以上の理由により,長女Aが他の相続人に対し,遺留分減殺請求権を行使しないよう希望する。
① 平成○○年○○月○○日下記記載の土地及び建物(記載略)
② 平成××年××月××日金1000万円
③ (省略)

第15 予備的遺言
1 遺言において,①「遺言者は,その有する△△の財産を,長男に相続させる」という条項(主位的な遺言)とともに,②「遺言者は,長男が遺言者に先立って,又は遺言者と同時に死亡したときは,長男に相続させるとした財産を、長男の子供に相続させる」という条項(予備的な遺言)を記載しておけば,長男が遺言者よりも先に死亡したときに,長男に相続させようとした財産は,長男の子供に相続させることができることになります((日本公証人連合会HP「Q2.予備的な遺言について、説明してください。」参照))。
2 最高裁平成23年2月22日判決は,相続させる遺言に関して以下のとおり判示しましたから,予備的遺言をしておいた方がいいです。
  遺産を特定の推定相続人に単独で相続させる旨の遺産分割の方法を指定する「相続させる」旨の遺言は,当該遺言により遺産を相続させるものとされた推定相続人が遺言者の死亡以前に死亡した場合には,当該「相続させる」旨の遺言に係る条項と遺言書の他の記載との関係,遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などから,遺言者が,上記の場合には,当該推定相続人の代襲者その他の者に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情のない限り,その効力を生ずることはない。


第16 公正証書遺言の通数
1(1) 公正証書遺言には原本,正本及び謄本の3通があり,遺言者,証人及び公証人が署名押印をしている原本は公証役場で保管されるのであって,遺言者に対しては,原本の写しである正本及び謄本が公証役場から交付されます。
(2) 公正証書遺言の正本については遺言執行者に指定された人が保管し,公正証書遺言の謄本については遺言者本人が保管していることが多いみたいです(相続と登記手続の相談室HP「公正証書遺言による相続登記(正本・謄本)」参照)。
2(1) 公正証書遺言の正本及び謄本の場合,署名押印部分については「氏名 ㊞」と印字されているだけですが,正本又は謄本のどちらかがあれば,相続登記をすることができますといわれています。
(2) 金融機関において被相続人の預貯金の解約手続をする場合,公正証書遺言の正本を持参した方が無難です。
3 公正証書遺言で相続登記をする場合,家庭裁判所での検認を経る必要はありません(民法1004条2項)。


第17 公正証書遺言の作成手数料
1 公証人手数料令(平成5年6月25日政令第224号)によれば,主な項目の手数料は以下のとおりです。
① 相続させる遺言及び遺贈
・ 給付に係る法律行為の目的の価額(不動産の場合,固定資産税評価額)に応じて,相続人及び受遺者ごとに発生するものです。
・ 例えば,①200万円を超えて500万円以下の場合は1万1000円であり,②500万円を超えて1000万円以下の場合は1万7000円であり,③1000万円を超えて3000万円以下の場合は2万3000円であり,④3000万円を超えて5000万円以下の場合は2万9000円です(公証人手数料令9条及び別表)。
② 認知(民法781条2項),未成年後見人の指定(民法839条1項),祭祀承継者の指定(民法897条1項ただし書)等
・ 算定不能の場合の法律行為となりますから,目的の価額は500万円とみなされる結果(公証人手数料令16条本文),1万1000円です。
③ 超過枚数加算
・ 公正証書遺言が3枚を超えた場合(4枚以上となった)場合,1枚当たり250円が加算されます(公証人手数料令25条・公証人手数料令第二十五条の横書の証書の様式及び証書の枚数の計算方法を定める省令2項1号)。
④ 正本作成費用
・ 1枚当たり250円かかります(公証人手数料令40条)。
⑤ 謄本作成費用
・ 1枚当たり250円かかります(公証人手数料令40条)。
⑥ 遺言加算
・ 遺言の目的の価額が1億円以下の場合,1万1000円が加算されます。
2(1) 公証人に支払う手数料は非課税取引です(消費税法6条1項・別表第一5項ハ)から,消費税を支払う必要はありません。
(2) 公正証書遺言において,主位的な遺言と予備的な遺言を1通の遺言公正証書に併せて記載する場合,主位的な遺言により手数料を算定し,予備的な遺言については手数料の算定をしないので,予備的な遺言を記載したとしても,公証人に支払う手数料は増えません(日本公証人連合会HP「Q2.予備的な遺言について、説明してください。」参照)。
(3) 公正証書遺言において,遺言執行者を指定したり,付言事項を付けたりしても公証人に支払う手数料は増えません。
(4) 神田公証役場HP「公証人手数料 (手数料はすべて非課税です)」が参考になります。
3 例えば,「遺言者が,①甲に3500万円の不動産を,乙に300万円の不動産を相続させ,②甲を祭祀承継者に指定し,③遺言の枚数が7枚であり,④遺言作成後に公正証書遺言の正本及び謄本を交付してもらった」という事案の場合,①の手数料は2万9000円+1万1000円=4万円であり,②の手数料は1万1000円であり,③の加算手数料が250円✕(7枚ー3枚)=1000円であり,④の手数料は250円✕7枚(正本)=1750円であり,⑤の手数料は250円✕7枚(謄本)=1750円であり,⑥遺言加算が1万1000円ですから,合計で6万6500円となります。


第18 公正証書遺言の原本の保存期間及び検索可能性
1 公正証書遺言の原本の保存期間
(1) 公正証書の原本の保存期間は20年です(公証人法施行規則27条1項1号)。
(2) 公正証書遺言の場合,公証人法施行規則27条3項の「特別の事由」があるということで,いわば半永久的に保存している公証役場もあります(日本公証人連合会HP「Q10.公正証書遺言は、どのくらいの期間、保管されるのですか。」参照)。
2 公正証書遺言の検索可能性
(1) 平成元年以降に作成された公正証書遺言であれば,全国どこの公証役場でも検索できるものの,遺言者の生存中は遺言者本人しか検索できませんし,遺言者の死亡後でも相続人その他の利害関係人しか検索できません(昭和通り公証役場HP「遺言検索」参照)。
(2) 司法書士佐藤藤人事務所HP「公正証書遺言の検索における回答書見本 全国どこの公証役場でも検索可能ですし、費用も一切かかりません。」に,①回答書見本(該当ありの場合),②回答書見本(該当なしの場合)及び③公正証書遺言謄本交付願が載っています。

第19 公証人の法的義務に関する最高裁判例
・ 最高裁平成9年9月4日判決は以下の判示をしています(改行及びナンバリングを追加しています。)。
① 公証人法(以下「法」という。)は、公証人は法令に違反した事項、無効の法律行為及び無能力により取り消すことのできる法律行為について公正証書を作成することはできない(二六条)としており、公証人が公正証書の作成の嘱託を受けた場合における審査の対象は、嘱託手続の適法性にとどまるものではなく、公正証書に記載されるべき法律行為等の内容の適法性についても及ぶものと解せられる。
 しかし、他方、法は、公証人は正当な理由がなければ嘱託を拒むことができない(同法三条)とする反面、公証人に事実調査のための権能を付与する規定も、関係人に公証人の事実調査に協力すべきことを義務付ける規定も置くことなく、公証人法施行規則(昭和二四年法務府令第九号)において、公証人は、法律行為につき証書を作成し、又は認証を与える場合に、その法律行為が有効であるかどうか、当事者が相当の考慮をしたかどうか又はその法律行為をする能力があるかどうかについて疑いがあるときは、関係人に注意をし、かつ、その者に必要な説明をさせなければならない(一三条一項)と規定するにとどめており、このような法の構造にかんがみると、法は、原則的には、公証人に対し、嘱託された法律行為の適法性などを積極的に調査することを要請するものではなく、その職務執行に当たり、具体的疑いが生じた場合にのみ調査義務を課しているものと解するのが相当である。
② したがって、公証人は、公正証書を作成するに当たり、聴取した陳述(書面による陳述の場合はその書面の記載)によって知り得た事実など自ら実際に経験した事実及び当該嘱託と関連する過去の職務執行の過程において実際に経験した事実を資料として審査をすれば足り、その結果、法律行為の法令違反、無効及び無能力による取消し等の事由が存在することについて具体的な疑いが生じた場合に限って嘱託人などの関係人に対して必要な説明を促すなどの調査をすべきものであって、そのような具体的な疑いがない場合についてまで関係人に説明を求めるなどの積極的な調査をすべき義務を負うものではないと解するのが相当である。


第20 遺言無効確認請求訴訟に関するメモ書き
1 公正証書遺言が有効であるという抗弁の記載例
・ 第3版 実務相続関係訴訟 遺産分割の前提問題等に係る民事訴訟実務マニュアル264頁及び265頁の記載例は以下のとおりです。
① 亡Bは,公証人Aに対し,平成○年○月○日,別紙遺言内容のとおり,遺言の趣旨を口頭で伝えた。
② ①の遺言作成に際し,証人としてC及びDが終始立ち会った。
③ 公証人Aは, あらかじめ伝えられていた亡Bの遺言の趣旨を公正証書案としたものと遺言者の述べた遺言内容が同じであることを確認し,公正証書案を亡B,C及びDに読み聞かせた(若しくは閲覧させた,又は,読み聞かせかつ閲覧させた)。
④ 亡B, C及びDは,筆記の正確なことを承認し,各自公正証書案に署名押印した。
⑤ 公証人Aは,民法969条の方式に従ったことを付記して,公正証書案に署名押印した。
2 必要的共同訴訟かどうか
(1) 単に相続分及び遺産分割の方法を指定したにすぎない遺言の無効確認を求める訴は,固有必要的共同訴訟に当たりません(最高裁昭和56年9月11日判決)。
(2) 相続人又は受遣者を被告とする遺言無効確認請求訴訟との関係においては,同遺言の遺言執行者を当事者とする同請求訴訟は,類似必要的共同訴訟であると解されています(第3版 実務相続関係訴訟 遺産分割の前提問題等に係る民事訴訟実務マニュアル284頁)。
3 遺言執行者の当事者適格
(1) 当事者適格の肯定事例
ア 遺言執行者は,遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有します(民法1012条1項)。
イ 遺言執行者は,遺言が無効であると考えた場合,遺言無効確認の訴えを提起できます(大審院昭和2年9月17日決定(判例秘書に掲載))。
ウ 相続人は,被相続人の遺言執行者を被告となし,遺言の無効を主張して,相続財産につき持分を有することの確認を求めることができます(最高裁昭和31年9月18日判決)。
エ 特定の不動産を特定の相続人甲に相続させる趣旨の遺言がされた場合において、他の相続人が相続開始後に当該不動産につき被相続人から自己への所有権移転登記を経由しているときは、遺言執行者は、右所有権移転登記の抹消登記手続のほか、甲への真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記手続を求めることができます(最高裁平成11年12月16日判決)。
(2) 当事者適格の否定事例
ア  相続人が遺言の執行としてされた遺贈による所有権移転登記の抹消登記手続を求める訴については,遺言執行者がある場合でも,受遺者を被告とすべきです(最高裁昭和51年7月19日判決)。
イ  遺言によって特定の相続人に相続させるものとされた特定の不動産についての賃借権確認請求訴訟の被告適格を有する者は,遺言執行者があるときであっても,遺言書に当該不動産の管理及び相続人への引渡しを遺言執行者の職務とする旨の記載があるなどの特段の事情のない限り,遺言執行者ではなく,右の相続人です(最高裁平成10年2月27日判決)。
(3) 遺言執行者の権利義務を定めた民法1012条は,施行日前に開始した相続に関して施行日後に遺言執行者となる場合にも適用されます。
4 確認の利益
(1) 遺言無効確認の訴は,その遺言が有効であるとすればそれから生ずべき現在の特定の法律関係が存在しないことの確認を求めるものと解される場合で,原告がかかる確認を求める法律上の利益を有するときは,適法です(最高裁昭和47年2月15日判決)。
(2) 遺言無効確認訴訟における確認の利益の存否を判断するにあたっては,原則として,原告の相続分が被相続人から受けた生前贈与等によりなくなるか否かを考慮すべきものではありません(最高裁昭和56年9月11日判決)。
(3)  遺言者の生存中に推定相続人が提起した遺贈を内容とする遺言の無効確認の訴えは,遺言者が心神喪失の常況にあって,遺言者による当該遺言の取消し又は変更の可能性が事実上ないとしても,不適法です(最高裁平成11年6月11日判決)。
(4)  民法958条の3第1項の規定による相続財産の分与の審判前に特別縁故者に当たると主張する者が提起した遺言無効確認の訴えは,訴えの利益を欠きます(最高裁平成6年10月13日判決)。
(5) 前の遺言が後の遺言と抵触するときは,その抵触する部分については,後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなされます(民法1023条1項)から,前の遺言について遺言無効確認請求訴訟を提起していた場合,確認の利益がないということで訴えの却下判決となります(東京地裁令和元年11月18日判決(判例秘書に掲載)参照)。
(6)  共同相続人間における遺産確認の訴えは,固有必要的共同訴訟です(最高裁平成元年3月28日判決)。
5 遺言無効確認請求事件の平均審理期間と併合事件
・ 遺言無効確認請求事件の研究(下)(筆者は56期の石田明彦裁判官他9名)には,「イ 平均審理期間と併合事件」として以下の記載があります(判例タイムズ1195号(2006年2月1日号)86頁)。
 遺言無効確認請求事件の審理期間については,個々の事案によってばらつきがあるものの,1年以上2年未満の期間を要した事件が最も多く,次いで6ヶ月以上1年未満の期間を要した事件が多い。よって,比較的短期間で審理を終えることのできる事件であると考えられる。
 もっとも,遺言無効確認請求事件は,それ自体が単独で審理される場合だけでなく,他の関連する事件と併合審理されることも多いところ,併合審理された事件の中には,事案が複雑化し,審理期間が長期間に及んだ例も見られた。遺言無効確認請求事件と併合審理される事件の具体例としては,遺言が無効であることを前提とする当該遺言の目的である財産についての登記請求事件,不当利得返還請求事件,及び仮に遺言が有効であるとした場合の遺留分減殺請求事件等があった。


第21 公正証書遺言に関して裁判官が作成した判例タイムズ掲載の論文等
1 公正証書遺言に関して裁判官が作成した判例タイムズ掲載の論文としては以下のものがあります。
① 「遺言無効確認請求事件の研究(上)」(筆者は56期の石田明彦裁判官他9名)
→ 判例タイムズ1194号(2006年1月15日号)に載っています。
② 「遺言無効確認請求事件の研究(下)」(筆者は56期の石田明彦裁判官他9名)
→ 判例タイムズ1195号(2006年2月 1日号)に載っています。
③ 「遺言無効確認請求事件を巡る諸問題」(筆者は36期の畠山稔裁判官他6名)
→ 判例タイムズ1380号(2012年12月1日号)に載っています。
④ 「遺言能力(遺言能力の理論的検討及びその判断・審理方法)」(筆者は50期の土井文美裁判官)
→ 判例タイムズ1423号(2016年6月号)に載っています。
2 意思能力に関する論文として以下のものがあります。
① 高齢者を当事者とする訴訟委任、調停委任の取扱い
→ 判例タイムズ931号(1997年4月15日号)に載っています。
② 意思能力の欠缺をめぐる裁判例と問題点
→ 判例タイムズ1146号(2004年6月1日号)に載っています。


第22 形式不備を理由とする遺言無効と死因贈与
1 死因贈与が成立する場合

(1) 死因贈与の方式については遺贈に関する規定の準用はない(最高裁昭和32年5月21日判決)ことから,遺言が形式不備を理由として無効であったとしても,遺言作成過程において遺言者が受遺者と相談して遺言を作成したとか,作成した遺言内容を伝えて受遺者に遺言を預けていたといった事情がある場合,死因贈与が成立する可能性があります(自筆証書遺言に関する東京地裁昭和56年8月3日判決(判例秘書に掲載),及び秘密証書遺言に関する東京地裁平成16年9月28日判決(判例秘書に掲載)参照)。
 そのため,遺言無効確認請求訴訟が提起された場合において,遺言者の意思能力に問題はないが口授がないという理由で公正証書遺言が無効になる可能性があるときは,不動産については,公正証書遺言と同一内容の死因贈与契約が存在することを理由として所有権移転登記請求を予備的に反訴しておいた方がいいと思います(東京地裁令和元年11月18日判決(判例秘書に掲載)参照)し,遺言無効確認請求訴訟が認容された後に別訴を提起できると思います(東京地裁平成16年9月28日判決(判例秘書に掲載)参照)。
(2) 控訴審で反訴提起する場合,被控訴人の同意が必要となります(民事訴訟法300条1項)。
2 反訴請求の趣旨の記載例
・ 反訴請求の趣旨を記載する際の参考例として以下のものがあります。
① 東京地裁平成16年9月28日判決(判例秘書に掲載)の主文1項
・ 「被告らは,原告に対し,原告がAと平成10年11月20日に合意した死因贈与契約が有効であり,同契約に基づき原告が別紙財産目録1及び2記載の各建物の所有権,同目録3記載の土地持分権,同目録4記載の各預金債権を取得したことを確認する。」というものでした(Aは平成11年5月7日に死亡しました。)。
② 東京地裁令和3年8月24日判決(判例秘書に掲載)の主文1項
・ 「被告らは,原告らに対し,別紙物件目録記載1から10までの各不動産につき,令和2年5月13日贈与を原因として,原告らの持分を各3分の1とする所有権移転登記手続をせよ。」というものでした(令和2年5月13日というのは贈与者の死亡日です。)。
3 死因贈与の執行者の選任
(1) 広島家裁昭和62年3月28日審判(判例秘書に掲載)は,自筆証書遺言としては無効な遺言書を死因贈与契約を証する書面と認め,死因贈与の執行者を選任しました。
(2) 新版 遺言執行の法律と実務133頁には以下の記載があります。
 死因贈与は、贈与者の死亡を条件(期限) として贈与する契約であるが、死亡により効力を生ずる死後行為の性質から遺贈の規定が準用され(民554)、この規定から死因贈与契約の履行のため遺言執行者選任の申立てができると解釈されています(昭和37年7月3日最高家二第119号最高裁家庭局長回答・家月14・ 8.229、水戸家審昭和53年12月22日家月31.9・50も同旨)
4 死因贈与と税金
(1) 相続税

・ 個人が死因贈与により財産を取得した場合,相続により財産を取得したものとして相続税の課税対象となります(相続税法1条の3)。
(2) 登録免許税
ア 死因贈与により不動産を取得した場合の登録免許税は固定資産評価額の2%です。
イ 相続又は遺贈により不動産を取得した場合の登録免許税は固定資産評価額の0.4%です。
(3) 不動産取得税
ア 死因贈与により不動産を取得した場合,不動産取得税がかかります(仙台高裁平成2年12月25日判決(判例秘書に掲載))。
 なお,不動産取得税は原則として固定資産評価額の4%であるものの,宅地の課税標準は1/2となる特例等があります(三井のリハウスHPの「不動産取得税」参照)。
イ 相続又は遺贈により不動産を取得した場合,不動産取得税はかかりません(地方税法73条の7第1号)。
5 金融機関に対し,死因贈与契約に基づく預貯金債権の取得は主張できないこと

(1) 預貯金債権については譲渡禁止特約があるため,金融機関に対し,死因贈与契約に基づく預貯金債権の取得を主張することはできないと解されています(最高裁昭和48年7月19日判決のほか,東京地裁令和3年8月17日判決(判例秘書に掲載)参照)。
(2) 債務者である金融機関が預貯金債権の遺贈について譲渡禁止特約による無効を主張することができないのは,遺贈が,遺言者の遺言という単独行為によってされる権利の処分であって,契約による債権の移転をもたらすものではないことに由来するものであると解されています(東京地裁令和3年8月17日判決(判例秘書に掲載))。
6 その他
(1) 死因贈与の仮登記については, 「死因贈与契約の受贈者は契約によって一定の不確定期限付の権利を取得するので、贈与者が同意すれば発効後の権利保全のため可能である。」とする考え方が実務において認められています(家事事件の実務と登記・税金373頁)。
(2) 税理士が教える相続税の知識HP「【遺言による贈与(遺贈)と死因贈与はどう違う?メリット・デメリットも解説】」が載っています。

第23 弁論の更新等の方法
1 民事事件の場合

(1) 転勤等により裁判官が交代した場合,当事者は,従前の口頭弁論の結果を陳述しなければならない(民事訴訟法249条2項)ところ,実務上は「従前の口頭弁論のとおり陳述します。」などと述べる程度です(新民事訴訟法における書記官事務の研究(1)138頁)。
(2) 控訴審の場合,当事者は,第一審における口頭弁論の結果を陳述しなければならない(民事訴訟法296条2項)ところ,実務上は「原判決記載のとおり口頭弁論の結果を陳述します。」などと述べる程度です。
2 刑事事件の場合
(1) 検察官又は弁護人が証拠書類の取調べを請求する場合,刑事訴訟法305条1項本文からすれば,これを朗読する必要があるものの,実務上は刑事訴訟規則203条の2に基づき要旨の告知をするだけですし,要旨の告知として立証趣旨を告げるだけであることも珍しくありません。
(2) 転勤等により裁判官が交代した場合,公判手続の更新をしなければならない(刑事訴訟法315条の2)ところ,その中身としては,①検察官による起訴状の要旨の陳述,②被告人及び弁護人の罪状認否,③証拠書類又は証拠物の取調べ,並びに④取り調べた証拠についての訴訟関係人の意見及び弁解の聴取となっています(刑事訴訟規則213条の2)。
 ただし,実務上はかなり簡略化されています(刑事弁護専門サイトの「公判手続の更新」参照)。


第24 遺言能力に関するメモ書き
1(1) 判例分析 遺言の有効・無効の判断48頁及び49頁には以下の記載があります。
要介護認定などの目的のための主治医の意見害や施設入所のための診断書等は、遺言者の遺言能力を推認するために有用であるが、作成目的に合致するように記載される傾向があるため、その信用性については慎重な吟味が必要である。また、要介護認定自体は、精神障害の程度ではなく、介護に必要な「時間」の目安からされるものであるから、そのための診断書も、遺言者の意思能力ではなく、 日常生活動作に関わる部分を中心に診断されたものであることにも注意すべきである。
(2) メディカルリサーチHPに載ってあるMR会報誌6号(2021年4月号)の「これからの意思能力鑑定」につき,遺言能力を肯定する主張をするときの参考になります。
2 「遺言能力鑑定と筆跡鑑定」では,以下の三つの遺言能力鑑定の業者が紹介されています(税経通信2022年6月号103頁)。
① 法務メディカルセンター(東京都中央区日本橋)
② メディカルリサーチ株式会社(東京都千代田区鍛治町)
③ エムアイ・コミュニケーションズ株式会社(大阪市中央区北浜)

第25 関連記事その他
1 公正証書遺言が無効になる主なパターンは,①遺言能力がないこと及び②口授がないことの二つです(弁護士法人ACLOGOS「【相続】公正証書遺言が無効になる2つのパターン」参照)。
 ただし,公正証書遺言の案文を公証人が読み上げ,遺言者が『そのとおりで合っています』と答えるのが実務的な方法であるともいわれています(みずほ中央法律事務所HPの「【公正証書遺言の『口授』該当性の判断の目安と裁判例】」参照)。
2 公証人が保証意思宣明公正証書を作成する場合,保証人になろうとする者は,公証人に対し,主たる債務の内容など法定された事項を述べる(口授する)ことによって,保証意思を宣明する必要があります(民法465条の6第2項1号)。
3 公証役場に対しては,少なくとも毎年1回,公証事務検閲が実施されています(公証人法77条及び公証人法施行規則39条)ところ,裁判所における書記官事務等の査察に対応するものと思います。
4(1) 日本公証人連合会HPの「公証人倫理について」「公証人倫理要綱」(平成19年5月12日定時総会決議)が載っています。
(2) 東弁リブラ2023年1・2月合併号「死後事務委任の基本と実務-増加する需要に応えるために-」が載っています。
5  弁護士法25条1号に違背する行為に基いて作成された公正証書は無効です(最高裁昭和32年12月24日判決)。
6(1) 民事執行手続、倒産手続、家事事件手続等の民事関係手続のデジタル化を図るための規定の整備等を行う改正法(民事関係手続等における情報通信技術の活用等の推進を図るための関係法律の整備に関する法律(令和5年6月14日法律第53号))に基づき,令和7年12月までに公正証書遺言がデジタル化される結果,以下の取扱いが実施されるようになります(法務省HPの「民事関係手続等における情報通信技術の活用等の推進を図るための関係法律の整備に関する法律について」参照)。
◯ 公正証書の作成の嘱託(申請)につき、インターネットを利用して、電子署名を付して行うことが可能になります。
◯ 公証人の面前での手続につき、嘱託人が希望し、かつ、公証人が相当と認めるときは、ウェブ会議を利用して行うことが選択できるようになります。
◯ 公正証書の原本は、原則として、電子データで作成・保存されることとなります。
◯ 公正証書に関する証明書(正本・謄抄本)を電子データで作成・提供することを嘱託人が選択できるようになります。
(2) 令和6年4月10日,デジタル技術を活用した遺言制度の在り方に関する研究会報告書が公表されました(日本司法書士会連合会HPの「デジタル技術を活用した遺言制度の在り方に関する研究会報告書について(会長談話)」参照)。
7(1) ①公証人法44条1項に基づき公正証書原本の閲覧を請求できる利害関係人,及び②公証人法51条1項に基づき公正証書謄本の交付を請求できる利害関係人に該当するかどうかは個別的に判断すべきものです(公証人法第44条第1項及び同法第61条第1項に関する疑義について(昭和36年5月8日付の法務省民事局長の回答)(公証人法関係 解説・先例集(三訂版)先例編(平成18年3月の法務省民事局の文書)809頁及び810頁)参照)。
(2) 利害関係人は,公証人の事務取扱いに対し,法務局又は地方法務局の長に異議申立てができますし(公証人法78条1項),法務大臣に更に異議申立てができます(公証人法78条2項)。
8(1) 以下の資料を掲載しています。
・ 公証人法関係 解説・先例集(改訂版)法令解説編(昭和60年11月の法務省民事局の文書)
・ 公証人法関係 解説・先例集(三訂版)先例編(平成18年3月の法務省民事局の文書)・圧縮板
→ 圧縮していないものとして,1/32/33/3も掲載しています。
・ 相続による納税義務の承継マニュアル(令和3年7月の大阪国税局徴収部徴収課の文書)
(2) 以下の記事も参照してください。
・ 平成18年度以降の,公証人の任命状況
・ 公証人の任命状況(2019年5月1日以降)
→ 公証人への任命直前の,元裁判官,元検事等の経歴を記載したものです。
・ 家事事件に関する審判書
 50歳以上の裁判官の依願退官の情報
 法務・検察幹部名簿(平成24年4月以降)
 法務省作成の検事期別名簿


離婚時の財産分与と税金に関するメモ書き

目次
第1 過大な財産分与が行われた場合の贈与税
1 総論
2 税務当局の説明
3 贈与税の時効
第2 財産分与が土地建物で行われた場合の譲渡所得税
1 譲渡所得一般
2 マイホーム売却で使える特例
3 財産分与が土地建物で行われた場合の特例
4 離婚時の自宅不動産の財産分与と3000万円特別控除の可否
5 譲渡所得税の時効
第3 過大な財産分与を受けた者の第二次納税義務
1 過大な財産分与を受けた者が第二次納税義務を負うケース
2 第二次納税義務制度の趣旨
第4 関連記事その他

第1 過大な財産分与が行われた場合の贈与税
1 総論
(1) 財産分与として不動産等の資産を譲渡した場合,分与者は,これによって,分与義務の消滅という経済的利益を享受することとなります(最高裁昭和50年5月27日判決)から,分与義務の範囲内にある限り贈与をしたことにはなりません。
(2) 離婚に伴う財産分与として金銭の給付をする旨の合意は,民法768条3項の規定の趣旨に反してその額が不相当に過大であり,財産分与に仮託してされた財産処分であると認めるに足りるような特段の事情があるときは,不相当に過大な部分について,その限度において詐害行為として取り消されます(最高裁平成12年3月9日判決)。
2 税務当局の説明
(1) 相続税基本通達9-8(婚姻の取消し又は離婚により財産の取得があった場合)は以下のとおりです(同趣旨の説明として,国税庁HPのタックスアンサーNo.4414「離婚して財産をもらったとき」参照)。
    婚姻の取消し又は離婚による財産の分与によって取得した財産(民法第768条((財産分与))、第771条((協議上の離婚の規定の準用))及び第749条((離婚の規定の準用))参照)については、贈与により取得した財産とはならないのであるから留意する。ただし、その分与に係る財産の額が婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮してもなお過当であると認められる場合における当該過当である部分又は離婚を手段として贈与税若しくは相続税のほ脱を図ると認められる場合における当該離婚により取得した財産の価額は、贈与によって取得した財産となるのであるから留意する。(昭57直資2-177、平17課資2-4改正)
(2)ア 国税不服審判所平成25年7月4日裁決には以下の記載があります。
    清算の対象財産は、婚姻中に夫婦の協力により取得した共同形成財産(取得名義が夫婦の共有となっている財産(共有財産)には限られない。以下「共同形成財産」という。)であるから、夫婦の一方が婚姻前から有する財産や、夫婦の一方が婚姻中に第三者から無償取得(相続・贈与)した財産は、夫婦各人の特有財産(民法第762条《夫婦間における財産の帰属》第1項)として、清算対象財産とはならないのが原則である。もっとも、特有財産であっても、婚姻中の夫婦の協力によってその価値が維持・増加したと認められる部分については、清算的財産分与の対象になると解するのが相当である。
イ 東京地裁平成29年6月27日判決(判例秘書に掲載)は,国税不服審判所平成25年7月4日裁決が取り扱った原処分の一部を取り消していますが,夫婦各人の特有財産については同趣旨の判示をしてます。
3 贈与税の時効
(1) 贈与税の時効の起算点は贈与税の申告書の提出期限であり,贈与税の時効期間は原則として6年であり(相続税法36条1項),偽りその他不正の行為により贈与税を免れたときは7年です(相続税法36条4項)。
(2) 例えば,平成29年中の贈与の場合,贈与税の時効の起算点は平成30年3月15日(木)ですから,贈与税の時効が完成するのは令和6年3月15日又は令和7年3月15日です。


第2 財産分与が土地建物で行われた場合の譲渡所得税
1 譲渡所得一般
(1) 譲渡所得に対する課税は,資産の値上がりによりその資産の所有者に帰属する増加益を所得として,その資産が所有者の支配を離れて他に移転するのを機会にこれを清算して課税する趣旨のものです(最高裁平成17年2月1日判決。なお,先例として,最高裁昭和47年12月26日判決最高裁昭和50年5月27日判決参照)。
(2) 平成21年又は平成22年に購入した不動産の場合,「平成21年及び平成22年に取得した土地等を譲渡したときの1000万円の特別控除」が適用されることがあります。
(3) 生活や実務に役立つ計算サイト「不動産の譲渡所得税額(事業用)」が載っています。


2 マイホーム売却で使える特例
(1)ア マイホーム売却で使える特例は以下の5つです(ホームフォーユーの「マイホーム売却で使える5つの特例とは?損をしないための節税テクを伝授」参照)。
① 居住用財産の譲渡所得の3000万円特別控除(租税特別措置法35条)
② 所有期間10年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例(租税特別措置法31条及び31条の3)
③ 特定の居住用財産の買換え特例(租税特別措置法36条の2及び36条の3)
④ 居住用財産の買換えに係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例(租税特別措置法41条の5)
⑤ 居住用財産に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例(租税特別措置法41条の5の2)
イ ①ないし③は譲渡所得があるときにそれを減らせる特例であり,④及び⑤は譲渡損失があるときに他の税金を減らせる特例です。
(2) 居住用財産とは,居住用の家屋及びその敷地をいいます(租税特別措置法31条の3第2項3号参照)ところ,その詳細については国税庁HPの「措置法第31条の3《居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例》関係」で説明されています。
(3)ア ①及び②の特例については併用できます。
イ ①ないし③の特例は住宅ローン控除と併用することはできません。
ウ ⑤の特例は自己破産事件で利用できることがある特例です。
(4)ア 5つの特例を利用するためには,特例利用に必要な書類を添えて確定申告をする必要があります。
イ 特例利用を前提とした確定申告を期限までにしなかった場合において,①確定申告自体をしていなかった場合,期限後であっても特例利用を前提とした確定申告をすることができるものの,②特例利用を前提としない確定申告をしていた場合,期限後に特例利用を前提とした確定申告をすることはできません(租税特別措置法35条11項等は期限内の確定申告までは要求していませんが,修正申告又は更正の請求による特例利用までは認めていないため。)。
     なお,保証債務を履行するためにした資産の譲渡の特例(所得税法64条2項)の場合,修正申告又は更正の請求による特例利用が認められていますから,このような制限はありません(平成23年12月2日法律第114号による改正以後の取扱いです。)。


3 財産分与が土地建物で行われた場合の取扱い
(1) 財産分与が土地や建物などで行われた場合,分与した人に譲渡所得税の課税が行われますところ,この場合,分与した時の土地や建物などの時価が譲渡所得の収入金額となり,分与を受けた人は、分与を受けた日にその時の時価で土地や建物を取得したことになる(国税庁HPのタックスアンサーNo.3114「離婚して土地建物などを渡したとき」参照)のであって,例えば,最高裁平成元年9月14日判決の事案では,現実に譲渡所得税が課税されました。
(2) 所得税基本通達33-1の4(財産分与による資産の移転)は以下のとおりです。
     民法第768条《財産分与》(同法第749条及び第771条において準用する場合を含む。)の規定による財産の分与として資産の移転があった場合には、その分与をした者は、その分与をした時においてその時の価額により当該資産を譲渡したこととなる。(昭50直資3-11、直所3-19追加、平18課資3-6、課個2-11、課審6-5改正)
(注)
1 財産分与による資産の移転は、財産分与義務の消滅という経済的利益を対価とする譲渡であり、贈与ではないから、法第59条第1項《みなし譲渡課税》の規定は適用されない。
2 財産分与により取得した資産の取得費については、38-6参照
(3) 例えば,2012年に結婚した夫の甲及び妻の乙が2022年に離婚する場合において,2012年に1000万円で購入した甲名義の自宅が1500万円に値上がりしており,それを甲が乙に財産分与により譲渡する場合,500万円の値上がり益が甲の長期譲渡所得(所得税法33条3項2号)となります。


4 離婚時の自宅不動産の財産分与と3000万円特別控除の可否
(1)ア ①居住用財産を譲渡した場合の3000万円特別控除の特例,及び②10年超所有軽減税率の特例の適用条件として,「売主と買主との間に配偶者及び直系血族,同一生計の親族等の特別の関係がないこと」(租税特別措置法施行令20条の3第1項・23条2項)というものがあります(国税庁HPタックスアンサーの「No.3302 マイホームを売ったときの特例」及び「No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例」参照)。
イ 居住用財産の譲渡所得の特別控除等に関する事例集(平成29年版)64頁には「財産分与による譲渡」として以下の記載があります。
事例64 甲(夫)は、離婚に伴い自己が居住していた家屋とその敷地を乙(妻)に分与し、更に乙に対し、長女丙の養育費として毎月l5万円を交付することで合意した。乙はパート収入(月10万円前後) と甲から受ける養育費により丙と暮らしている。
この財産分与による譲渡について、居住用財産を譲渡した場合の特例の適用を受けることができるか。
[回答]
離婚に伴う財産分与による譲渡について、居住用財産を譲渡した場合の特例の適用を受けることができる。
[理由]
離婚に伴う財産分与による資産の譲渡は、離婚後における譲渡であるから措置法令第20条の3第1項第1号に掲げる親族(配偶者)に対する譲渡に該当しない(措令23②、24の2①、26の7③、26の7の2③)。
また、乙は、甲から交付を受ける丙の養育費とパート収入によりその生計を維持しているが、乙は措置法令第20条の3第1項第4号に掲げる者(譲渡者から受ける金銭その他の財産によって生計を維持しているもの)には該当しない(措通31の3-23,35-6,36の2-23,41の5-18,41の5の2-7)。
したがって、離婚に伴う財産分与による譲渡について、居住用財産を譲渡した場合の特例の適用を受けることができる。

居住用財産の譲渡所得の特別控除等に関する事例集(平成29年版)64頁

(2)ア 民法768条は以下のとおりですから,財産分与請求権は本来,離婚が成立した後に発生する権利です。
① 協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。
② 前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から二年を経過したときは、この限りでない。
③ 前項の場合には、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。
イ 法務局HPの「土地又は建物を離婚による財産分与により取得した場合の登記申請書の記載例」の(注6)は「協議離婚の届出前に財産分与の協議が成立した場合には,協議離婚の届出の日が原因日となりますので,離婚の記載のある戸籍全部(個人)事項証明書(戸籍謄抄本)が必要となります。」と書いてあります。
(3)ア 離婚訴訟における和解条項に基づき,自宅不動産を元妻に財産分与したケースに関する国税不服審判所平成6年3月30日裁決における課税庁の主張は,3000万円特別控除の適用があることを前提としたものでした。
イ 令和4年3月現在,タクトコンサルティングの「【Q&A】離婚に伴い自宅を財産分与する場合の税務上の取扱い等-1/2 ~財産分与をする側~」(2019年6月24日付)参照)という記事は,国税庁の見解と異なり納税者に不利なものになっています。
(4) 「居住用財産の3000万円特別控除」は相続発生前の本人が生存中に適用できる制度であるのに対し,「居住用財産(空き家)の譲渡所得の特別控除」は相続発生後の空き家に対して適用できる制度です(司法書士・行政書士事務所リーガルエステートHP「家族信託では相続後の空き家3000万円特別控除は使えない?空き家特例と国税庁回答の概要を解説」参照)。
5 譲渡所得税の時効
(1)ア 譲渡所得税の時効の起算点は譲渡所得税の申告書の提出期限であり,譲渡所得税の時効期間は原則として5年であり(国税通則法70条1項),偽りその他不正の行為により譲渡所得税を免れたときは7年です(70条5項)。
イ 現実の住所地と異なる場所に住民票を置いていた場合,偽りその他不正の行為があるということで,時効は7年になるかもしれません。
(2) 例えば,平成29年中の譲渡の場合,譲渡所得税の時効の起算点は平成30年3月15日(木)ですから,譲渡所得税の時効が完成するのは令和5年3月15日又は令和7年3月15日です。


第3 過大な財産分与を受けた者の第二次納税義務
1 過大な財産分与を受けた者が第二次納税義務を負うケース
(1) 過大な財産分与をした者が譲渡所得税等の税金を滞納した場合,国税徴収法39条の「無償又は著しく低い額の対価による譲渡」に該当する結果,過大な財産分与を受けた者が第二次納税義務を負うことがあります。
(2) 国税庁HPの「第39条関係 無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務(著しく低い額の対価の判定)」には以下の記載があります(①及び②は(1)及び(2)に置き換えました。)。
     法第39条の「著しく低い額の対価」によるものであるかどうかは、当該財産の種類、数量の多寡、時価と対価の差額の大小等を総合的に勘案して、社会通念上、通常の取引に比べ著しく低い額の対価であるかどうかによって判定し(平成2.2.15広島地判、平成13.11.9福岡高判参照)、次のことに留意する。
① 一般に時価が明確な財産(上場株式、社債等)については、対価が時価より低廉な場合には、その差額が比較的僅少であっても、「著しく低い額」と判定すべき場合があること。
② 値幅のある財産(不動産等)については、対価が時価のおおむね2分の1に満たない場合は、特段の事情のない限り、「著しく低い額」と判定すること。ただし、おおむね2分の1とは、2分の1前後のある程度幅をもった概念をいい、2分の1をある程度上回っても、諸般の事情に照らし、「著しく低い額」と判定すべき場合があること。
2 第二次納税義務制度の趣旨
・ 東京地裁平成29年6月27日判決(判例秘書に掲載)は以下の判示をしています。
     国税徴収法39条に定める第二次納税義務の制度は,本来の納税義務者の財産に対して滞納処分を執行してもなお徴収すべき額に不足すると認められる場合に,租税徴収の確保を図るため,本来の納税義務者と同一の納税上の責任を負わせても公平を失しないような特別の関係にある第三者に対し補充的に納税義務を負担させるものであり(昭和50年8月27日最高裁判決参照),この趣旨に鑑みると,滞納者の財産につき行われた譲渡の対価の額が同条にいう著しく低い額と認められるか否かは,当該取引の内容や性質等に照らして,社会通念上,その対価の額が通常の取引に比べて著しく低いものであるかどうかによって判断すべきものと解される。


第4 関連記事その他
1(1)  離婚に伴う慰謝料として夫婦の一方が負担すべき損害賠償債務は,離婚の成立時に遅滞に陥いります(最高裁令和4年1月28日判決)。
(2) 財産分与及び離婚慰謝料については,仮執行宣言を付けられないとされています(クロスレファレンス民事実務講義(第3版)177頁)。
(3)  離婚訴訟において,財産分与を命じた判決に対して控訴の申立てがされた場合,財産分与に関する裁判については,いわゆる不利益変更禁止の原則の適用はありません(最高裁平成2年7月20日判決)。
2 共稼ぎの夫婦が取得した夫名義の不動産につき,その半分を離婚時に譲渡した場合,譲渡所得が発生する財産分与ではなく,課税関係が発生しない共有財産の分割となることがあります(国税不服審判所平成6年3月30日裁決)。
3  財産分与の分与者が破産した場合において,その相手方は,破産管財人に対し,取戻権の行使として,財産分与金の支払を目的とする債権の履行を請求することはできません(最高裁平成2年9月27日判決)。
4(1) 離婚によつて生ずることあるべき財産分与請求権は,一個の私権たる性格を有するものではあるものの,協議又は審判等によつて具体的内容が形成されるまでは,その範囲及び内容が不確定・不明確ですから,かかる財産分与請求権を保全するために債権者代位権を行使することはできません(最高裁昭和55年7月11日判決)。
(2) 権利者が行使する前の財産分与請求権は,行使上の一身専属権(民法423条1項ただし書参照)に当たり,権利の性質上差押えの対象となりませんから,破産財団に属せず,破産管財人に管理処分権はないと解されています(東京高裁平成27年7月7日決定(判例時報2310号21頁))。
5 離婚に伴う慰謝料として配偶者の一方が負担すべき損害賠償債務の額を超えた金額を支払う旨の合意は,右損害賠償債務の額を超えた部分について,詐害行為取消権行使の対象となります(最高裁平成12年3月9日判決)。
6 譲渡所得に対する課税は,資産の値上がりによりその資産の所有者に帰属する増加益を所得として,その資産が所有者の支配を離れて他に移転するのを機会に,これを清算して課税する趣旨のものです(最高裁令和2年3月24日判決。なお,先例として,最高裁昭和43年10月31日判決及び最高裁昭和47年12月26日判決参照)。
7(1) 大阪高裁令和元年8月21日決定(判例秘書掲載)は,婚姻期間44年に対して別居期間が35年に及ぶ事案において,年金分割の按分割合は0.5であると判断しました。
(2) 行政書士にれの木事務所HP「年金分割の按分割合に関する裁判例を集約して解説します」が載っています。
8(1) 以下の資料を掲載しています。
・ 税務相談事務に係る基本的な対応について(平成20年9月24日付の大阪国税局の事務運営指針)
(2) 以下の記事も参照してください。
・ 家事事件に関する審判書・判決書記載例集(最高裁判所が作成したもの

名誉毀損又はプライバシー侵害が違法となる場合

目次
第1 公共的事項に関する表現の自由及び事前抑制の許容範囲

1 公共的事項に関する表現の自由
2 事前抑制の許容範囲
第2 表現の自由の制限に関する一般論,及び思想の自由市場への登場の重要性
第3 名誉毀損の取扱い
1 社会的評価の低下の有無の判断基準
2 事実を摘示しての名誉毀損(事実摘示型名誉権侵害)の取扱い
3 特定の事実を基礎とする意見ないし論評の表明による名誉毀損(意見論評型名誉権侵害)の取扱い等
4 噂,伝聞形式の表現による名誉毀損の取扱い
5 名誉毀損の成否に際して表現媒体の違いは関係がないと思われること
6 名誉毀損行為が公務員に関する事実である場合の取扱い等
7 その他
第4 プライバシー侵害の取扱い
1 プライバシー侵害が不法行為となる場合
2 少年法61条が禁止している推知報道に当たるかどうかの判断基準
3 プライバシー侵害を理由とする差止請求
4 民事訴訟における主張立証活動とプライバシー侵害
第5 表現の自由に関する東京弁護士会の会長声明等
第6 法人の名誉権侵害と無形損害
第7 人種差別撤廃条約に関する日本国政府の留保
第8 肖像の無断使用と不法行為

第9 関連記事その他


第1 公共的事項に関する表現の自由及び事前抑制の許容範囲
1 公共的事項に関する表現の自由
・ 最高裁大法廷昭和49年11月6日判決(猿払事件上告審判決)は以下の判示をしています。
     憲法二一条の保障する表現の自由は、民主主義国家の政治的基盤をなし、国民の基本的人権のうちでもとりわけ重要なものであり、法律によつてもみだりに制限することができないものである。そして、およそ政治的行為は、行動としての面をもつほかに、政治的意見の表明としての面をも有するものであるから、その限りにおいて、憲法二一条による保障を受けるものであることも、明らかである。国公法一〇二条一項及び規則によつて公務員に禁止されている政治的行為も多かれ少なかれ政治的意見の表明を内包する行為であるから、もしそのような行為が国民一般に対して禁止されるのであれば、憲法違反の問題が生ずることはいうまでもない。
2 事前抑制の許容範囲
・ 最高裁大法廷昭和61年6月11日判決(北方ジャーナル事件上告審判決)は以下の判示をしています。
① 主権が国民に属する民主制国家は、その構成員である国民がおよそ一切の主義主張等を表明するとともにこれらの情報を相互に受領することができ、その中から自由な意思をもつて自己が正当と信ずるものを採用することにより多数意見が形成され、かかる過程を通じて国政が決定されることをその存立の基礎としているのであるから、表現の自由、とりわけ、公共的事項に関する表現の自由は、特に重要な憲法上の権利として尊重されなければならないものであり、憲法二一条一項の規定は、その核心においてかかる趣旨を含むものと解される。
② 表現行為に対する事前抑制は、新聞、雑誌その他の出版物や放送等の表現物がその自由市場に出る前に抑止してその内容を読者ないし聴視者の側に到達させる途を閉ざし又はその到達を遅らせてその意義を失わせ、公の批判の機会を減少させるものであり、また、事前抑制たることの性質上、予測に基づくものとならざるをえないこと等から事後制裁の場合よりも広汎にわたり易く、濫用の虞があるうえ、実際上の抑止的効果が事後制裁の場合より大きいと考えられるのであつて、表現行為に対する事前抑制は、表現の自由を保障し検閲を禁止する憲法二一条の趣旨に照らし、厳格かつ明確な要件のもとにおいてのみ許容されうるものといわなければならない。


第2 表現の自由の制限に関する一般論,及び思想の自由市場への登場の重要性
・ 最高裁平成5年3月16日判決(教科書検定に関する国家賠償請求事件)は以下の判示をしています。
① 不合格とされた図書は、右のような特別な取扱いを受けることができず、教科書としての発行の道が閉ざされることになるが、右制約は、普通教育の場において使用義務が課せられている教科書という特殊な形態に限定されるのであって、不合格図書をそのまま一般図書として発行し、教師、児童、生徒を含む国民一般にこれを発表すること、すなわち思想の自由市場に登場させることは、何ら妨げられるところはない
② 憲法二一条一項にいう表現の自由といえども無制限に保障されるものではなく、公共の福祉による合理的で必要やむを得ない限度の制限を受けることがあり、その制限が右のような限度のものとして容認されるかどうかは、制限が必要とされる程度と、制限される自由の内容及び性質、これに加えられる具体的制限の態様及び程度等を較量して決せられるべきものである。
③ 所論引用の最高裁昭和五六年(オ)第六〇九号同六一年六月一一日大法廷判決・民集四〇巻四号八七二頁は、発表前の雑誌の印刷、製本、販売、頒布等を禁止する仮処分、すなわち思想の自由市場への登場を禁止する事前抑制そのものに関する事案において、右抑制は厳格かつ明確な要件の下においてのみ許容され得る旨を判示したものであるが、本件は思想の自由市場への登場自体を禁ずるものではないから、右判例の妥当する事案ではない。


第3 名誉毀損の取扱い
1 社会的評価の低下の有無の判断基準
(1) 新聞記事がたとえ精読すれば別個の意味に解されないことはないとしても,いやしくも一般読者の普通の注意と読み方を基準として解釈した意味内容に従う場合,その記事が事実に反し名誉を毀損するものと認められる以上,これをもつて名誉毀損の記事と目すべきことは当然であるとされています(最高裁昭和31年7月20日判決)。
(2) テレビジョン放送をされた報道番組の内容が人の社会的評価を低下させるか否かについては,一般の視聴者の普通の注意と視聴の仕方とを基準として判断されます(最高裁平成15年10月16日判決)。
2 事実を摘示しての名誉毀損(事実摘示型名誉権侵害)の取扱い

(1) 事実を摘示しての名誉毀損にあっては,その行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあった場合に,摘示された事実がその重要な部分について真実であることの証明があったときには,右行為には違法性がなく,仮に右事実が真実であることの証明がないときにも,行為者において右事実を真実と信ずるについて相当の理由があれば、その故意又は過失は否定されます(最高裁平成9年9月9日判決お,先例として,最高裁昭和41年6月23日判決及び最高裁昭和58年10月20日判決参照)。
(2)  他人の名誉を毀損する事実を摘示した者は、その重要な部分について真実性を立証することによつて、免責を受けることができます(最高裁昭和58年10月20日判決)。
(3) 裁判所は,名誉毀損に該当する事実の真実性につき,事実審の口頭弁論終結時において客観的な判断をすべきであり,その際に名誉毀損行為の時点では存在しなかった証拠を考慮することも許されます(最高裁平成14年1月29日判決)。
(4) 「インターネット削除請求・発信者情報開示請求の実務と書式」78頁及び79頁には,検索結果(起訴猶予・略式請求)の削除請求に関して以下の記載があります。
     最終的に起訴猶予・略式手続となった事件では,事件から15年以上経過していても,前掲最三小決(山中注:最高裁平成29年1月31日決定のこと。)以降,裁判所は検索結果の削除決定を発令しなくなりました。判断内容はほぼ最三小決と同じで,「今なお公共の利害に関する事項である」としている印象です。


3 特定の事実を基礎とする意見ないし論評の表明による名誉毀損(意見論評型名誉権侵害)の取扱い等
(1) 特定の事実を基礎とする意見ないし論評の表明による名誉毀損について,その行為が公共の利害に関する事実に係り,その目的が専ら公益を図ることにあって,表明に係る内容が人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものでない場合に,行為者において右意見等の前提としている事実の重要な部分を真実と信ずるにつき相当の理由があるときは,その故意又は過失は否定されます(最高裁平成9年9月9日判決)。
(2) 新聞記事中の名誉毀損の成否が問題となっている部分において表現に推論の形式が採られている場合であっても,当該記事についての一般の読者の普通の注意と読み方とを基準に,当該部分の前後の文脈や記事の公表当時に右読者が有していた知識ないし経験等も考慮すると,証拠等をもってその存否を決することが可能な他人に関する特定の事項を右推論の結果として主張するものと理解されるときには,同部分は,事実を摘示するものとなります最高裁平成10年1月30日判決)。
(3)  名誉毀損の成否が問題となっている法的な見解の表明は,判決等により裁判所が判断を示すことができる事項に係るものであっても,事実を摘示するものとはいえず,意見ないし論評の表明に当たります(最高裁平成16年7月15日判決)。


4 噂,伝聞形式の表現による名誉毀損の取扱い
・  「人の噂であるから真偽は別として」という表現を用いて公務員の名誉を毀損する事実を摘示した場合において,刑法230条の2所定の事実の証明の対象となるのは,風評そのものの存在ではなく,その風評の内容たる事実が真実であることです(最高裁昭和43年1月18日決定)。


5 名誉毀損の成否に際して表現媒体の違いは関係がないと思われること
(1) 新聞記事による名誉毀損にあっては、他人の社会的評価を低下させる内容の記事を掲載した新聞が発行され、当該記事の対象とされた者がその記事内容に従って評価を受ける危険性が生ずることによって、不法行為が成立するのであって、当該新聞の編集方針、その主な読者の構成及びこれらに基づく当該新聞の性質についての社会の一般的な評価は、右不法行為責任の成否を左右するものではありません(最高裁平成9年5月27日判決)。
(2) インターネットの個人利用者による表現行為の場合においても,他の表現手段を利用した場合と同様に,行為者が摘示した事実を真実であると誤信したことについて,確実な資料,根拠に照らして相当の理由があると認められるときに限り,名誉毀損罪は成立しないものと解するのが相当であって,より緩やかな要件で同罪の成立を否定すべきではありません(最高裁平成22年3月15日決定)。
(3) インターネット上のウェブサイトに掲載された記事が,それ自体として一般の閲覧者がおよそ信用性を有しないと認識し,評価するようなものではありません(最高裁平成24年3月23日判決)。


6 名誉毀損行為が公務員に関する事実である場合の取扱い等
(1) 名誉毀損行為が公務員に関する事実に係る場合,真実であることの証明がある限り,名誉毀損罪が成立することはありません(刑法230条の2第3項)。
(2) 憲法15条1項は「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。」と定め,憲法16条は「何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。」と定めています。
(3) 46期の岡口基一裁判官に対する令和3年6月16日付の訴追状8頁には以下の記載があります。
     これらを不特定多数の者が閲覧可能な状態にし,もって裁判を受ける権利を保障された私人である訴訟当事者による民事訴訟提起行為を一方的に不当とする認識ないし評価を示すとともに,当該訴訟当事者本人の社会的評価を不当におとしめたものである。


7 その他
(1) 判例タイムズ1470号(2020年5月1日付)に「 名誉権に基づく出版差止め ―北方ジャーナル事件以降の裁判例の整理」(筆者は51期の廣瀬孝 札幌地裁5民部総括)が載っていて,そこでは,私人に対する表現行為における判断基準,出版後の差止めにおける判断基準,対象者の同定可能性,販売を終了した出版物及び回収請求の可否について論じています。
(2) 自己の正当な利益を擁護するため,やむをえず他人の名誉を損なう言動を行った場合は,それが当該他人による攻撃的な言動との対比で,方法及び内容において適当と認められる限度を超えない限り,違法性が阻却されます(最高裁昭和38年4月16日判決参照)ところ,最高裁昭和38年4月16日判決の事例では,甲学界誌において掲載の承諾を得ている外国人学者の講演内容を,乙学界誌が,本人の承諾を得ずに原判示のような不明朗な手段で,通訳から講演訳文原稿を入手した上,甲誌に先がけて掲載発表する等原判決認定のような経緯があるときは,甲誌編集者らが乙誌を非難するのに「盗載」「犯罪的不徳行為」等の言辞を用いたとしても,乙誌の名誉信用を害するものとはいえないとされました。
(3)ア ウェブ連載版『最新判例にみるインターネット上の名誉毀損の理論と実務』第10回には以下の記載があります。
     最高裁が平成23年判決(山中注:最高裁平成23年4月28日判決のこと。)で地方新聞社をなぜ免責したかというと、そもそも地方新聞社自身で取材するのが期待できない状況があることを前提に、通信社が地方新聞社のかわりに取材をしたと言ってよいような密接な関係があった、そこで通信社が十分な取材をしていれば免責してあげよう。これが最高裁のいう「一体性」の背景にある利益衡量かなと思います。もしこの理解が正しければ、個々のインターネットユーザーに高度な取材を期待できず、少なくとも新聞社自身が一般のインターネットユーザーによる拡散やコメントを期待してSNSによるコメント機能を設けているような状況であれば、新聞社がインターネットユーザーのかわりに取材をしたといってよいような密接な関係があったと言えるのではないか、そしてそのような場合には、平成23年判決の法理を類推してインターネットユーザーを免責する余地があるのではないか。こういうことを考えています。
イ 「ウェブ連載版『最新判例にみるインターネット上の名誉毀損の理論と実務』第44回」に以下の記載があります。
     一般には、対抗言論が可能な状況が存在する場合において、それだけで一律に名誉毀損を否定するといったドラスティックな見解は採用されていない。但し、よりマイルドに、対象者に事後的な対抗言論を通じて名誉回復を行う機会があることを、社会的評価の低下の有無や違法性阻却の可否、損害等で考慮するべきではないかという問題意識自体は存在するところである(本書323頁)。
(4) 東弁リブラ2021年7・8月合併号「SNS等のネット中傷問題-プロバイダ責任制限法の改正経緯とポイント-」が載っています。


第4 プライバシー侵害の取扱い
1 プライバシー侵害が不法行為となる場合 
(1) 個人のプライバシーに属する事実をみだりに公表されない利益は,法的保護の対象となります(最高裁平成29年1月31日決定。なお,先例として,最高裁昭和56年4月14日判決最高裁平成6年2月8日判決最高裁平成14年9月24日判決最高裁平成15年3月14日判決及び最高裁平成15年9月12日判決参照)。
(2) プライバシー侵害については,その事実を公表されない法的利益とこれを公表する理由とを比較衡量し,前者が後者に優越する場合に不法行為が成立します(最高裁令和2年10月9日判決。なお,先例として,最高裁平成6年2月8日判決及び最高裁平成15年3月14日判決)。
(3) 最高裁大法廷令和3年6月23日決定の裁判官宮崎裕子,同宇賀克也の反対意見(リンク先のPDF17頁以下)には以下の記載があります(リンク先のPDF30頁)。
     何をプライバシー侵害と感ずるかについては,個人差があり,例えば,自分が難病にかかったことを公表する人も少なくないが,他方,それを他人に知られたくないと思う人も少なからず存在すると考えられる。後者の人にとって,難病にり患していることを他人に知られない利益はプライバシー権として憲法上保障されるべきであって,そのような事実を他人に知られないことを望まない人がある程度存在するからといって,それを他人に知られることを望まない人の利益をプライバシー権として保障することを否定することにはならない。


2 少年法61条が禁止している推知報道に当たるかどうかの判断基準
・ 少年法61条が禁止しているいわゆる推知報道に当たるか否かは,その記事等により,不特定多数の一般人がその者を当該事件の本人であると推知することができるかどうかを基準にして判断されます(最高裁平成15年3月14日判決)。
3 プライバシー侵害を理由とする差止請求
・ プライバシー侵害又は名誉感情侵害がある場合において,侵害行為が明らかに予想され,その侵害行為によって被害者が重大な損失を受けるおそれがあり,かつ,その回復を事後に図るのが不可能ないし著しく困難になると認められるときは,差止請求まで認められます(最高裁平成14年9月24日判決参照)。
4 民事訴訟における主張立証活動とプライバシー侵害
・ 横浜地裁令和2年12月11日判決(判例体系に掲載)は,弁護士に対する大量懲戒請求事案に関し,損害賠償請求をした弁護士が裁判所に懲戒請求者のリストを提出した行為について不法行為は成立しないと判断しました(IT・システム判例メモ「懲戒請求者リストの訴訟上の提出と不法行為 横浜地判令2.12.11(令和2ワ2097)」参照)ところ,以下の判示をしています。
     民事訴訟における主張立証活動は、それ自体は事実の公表を目的とする行為ではないものの、訴訟記録が閲覧可能な状態に置かれることなどにより、第三者がその事実を知り得る状態に至り、結果的に公表と同様の効果をもたらすことがあるため、プライバシーの侵害の成否が問題となり得る。このような場面では、その事実を公表されない法的利益と当該主張立証活動に係る法的利益とを比較衡量し、前者が後者に優越する場合に不法行為が成立するものと解されるが(なお、前者が後者に優越する場合であっても、違法性阻却事由があるときには、不法行為が成立しないことは、言うまでもない。)、その判断に際しては、当事者が主張立証活動を尽くし、裁判所がこれを踏まえて事実認定及び法的判断を行うことにより私的紛争の適正な解決を実現するという民事訴訟の性格上、当事者の主張立証活動の自由を保障する必要性が高いことを踏まえることが重要である。


第5 表現の自由に関する東京弁護士会の会長声明等
1 「表現の不自由展・その後」展示中止を受け、表現の自由に対する攻撃に抗議し、表現の自由の価値を確認する会長声明(2019年8月29日付の東京弁護士会の会長声明)には以下の記載があります。
① 本年8月1日から10月14日までの予定で愛知県で開催されている国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」が、開始からわずか2日後の8月3日に中止された。
 この企画展は、従軍慰安婦を象徴する「平和の少女像」や昭和天皇の写真を含む肖像群が燃える映像作品など、過去に展示を拒否されたり公開中止になったりした作品を展示したものであった。
 これらの作品は、観る人によって、好悪さまざまな感情を抱くものであろう。人それぞれの受け止め方があることは当然のことながら、異論反論その他主張したいことがあれば、合法的な表現行為によって対抗するのが法治国家であり民主主義社会である。
② 憲法21条で保障される表現の自由は、自己の人格を形成・発展させる自己実現の価値を有するとともに、国民が政治的意思決定に関与する自己統治の価値をも有する、極めて重要な基本的人権である。政治的表現が芸術という形をとって行われることも多く、芸術を含む多種多様な表現活動の自由が保障されることは、民主主義社会にとって必要不可欠である。 
 我々は、思想信条のいかんを問わず、表現の自由が保障される社会を守っていくことが重要であるという価値観を共有したい。
2 令和2年11月27日にZoomウェビナーで開催された,第31回近畿弁護士連合会人権擁護大会シンポジウム(第1分科会)のテーマは,「あいちトリエンナーレから考える表現の自由の現在(いま)」でした(大阪弁護士会HPの「第31回近畿弁護士会連合会人権擁護大会シンポジウム第1分科会「あいちトリエンナーレから考える表現の自由の現在(いま)」を開催します」参照)。


第6 法人の名誉権侵害と無形損害
1 法人の名誉権が侵害され,無形の損害が生じた場合でも,右損害の金銭評価が可能であるかぎり,民法710条の適用があります(最高裁昭和39年1月28日判決)。
2(1) 京都朝鮮学校へのヘイトスピーチ事件に関する京都地裁平成25年10月7日判決(控訴審判決は大阪高裁平成26年7月8日判決です。)は,原告が設置運営する朝鮮学校に対し,隣接する公園を違法に校庭として占拠していたことへの抗議という名目で3回にわたり威圧的な態様で侮蔑的な発言を多く伴う示威活動を行い,その映像をインターネットを通じて公開した被告らの行為は,判示の事実関係の下では,原告の教育事業を妨害し,原告の名誉を毀損する不法行為に該当し,かつ,人種差別撤廃条約上の「人種差別」に該当するとして被告らに対する損害賠償請求を一部認容し,また,一部の被告が上記学校の移転先周辺において今後同様の示威活動を行うことの差止め請求を認容した事例に関するものです。
(2) 同判決には以下の判示があります(改行を追加しています。)。
 法人は,生身の人間ではなく,精神的・肉体的な苦痛を感じないため,苦痛に対する慰藉料の必要性は想定し難いが,学校法人としての教育業務を妨害されれば,そこには組織の混乱,平常業務の滞留,組織の平穏を保つため,あるいは混乱を鎮めるための時間と労力の発生といった形で,必ずや悪影響が生じる(前記第1の7に認定の事実は,学校法人に悪影響が発生した事実を認定したものである。)。
 混乱の対応のため費やすことになった時間と労力は,積極的な財産支出や逸失利益という形での損害認定こそ困難であるものの,被告らによる業務妨害さえなければ何ら必要がなかった(あるいは他の有用な活動に振り向けることができた)時間と労力なのであって,原告の学校法人としての業務について生じた悪影響であることは疑いがない。
 このような悪影響をも損害として観念しなければ,民法709条以下の不法行為法の理念(損害の公平な分担)を損なうことが明らかである。このような悪影響は,無形損害という形で金銭に見積もるべき損害というべきである。
 すなわち,本件活動による業務妨害により,本件学校における教育業務に及ぼされた悪影響全般は,無形損害として,金銭賠償の対象となる。 


第7 人種差別撤廃条約に関する日本国政府の留保
・ 外務省HPの人種差別撤廃条約Q&Aには以下の記載があります。
Q6 日本はこの条約の締結に当たって第4条(a)及び(b)に留保を付してますが、その理由はなぜですか。
A6 第4条(a)及び(b)は、「人種的優越又は憎悪に基づくあらゆる思想の流布」、「人種差別の扇動」等につき、処罰立法措置をとることを義務づけるものです。
これらは、様々な場面における様々な態様の行為を含む非常に広い概念ですので、そのすべてを刑罰法規をもって規制することについては、憲法の保障する集会、結社、表現の自由等を不当に制約することにならないか、文明評論、政治評論等の正当な言論を不当に萎縮させることにならないか、また、これらの概念を刑罰法規の構成要件として用いることについては、刑罰の対象となる行為とそうでないものとの境界がはっきりせず、罪刑法定主義に反することにならないかなどについて極めて慎重に検討する必要があります。我が国では、現行法上、名誉毀損や侮辱等具体的な法益侵害又はその侵害の危険性のある行為は、処罰の対象になっていますが、この条約第4条の定める処罰立法義務を不足なく履行することは以上の諸点等に照らし、憲法上の問題を生じるおそれがあります。このため、我が国としては憲法と抵触しない限度において、第4条の義務を履行する旨留保を付することにしたものです。
なお、この規定に関しては、1996年6月現在、日本のほか、米国及びスイスが留保を付しており、英国、フランス等が解釈宣言を行っています。


第8 肖像の無断使用と不法行為
1 人はみだりに自己の容ぼう,姿態を撮影されないということについて法律上保護されるべき人格的利益を有し,ある者の容ぼう,姿態をその承諾なく撮影することが不法行為法上違法となるかどうかは,被撮影者の社会的地位,撮影された被撮影者の活動内容,撮影の場所,撮影の目的,撮影の態様,撮影の必要性等を総合考慮して,被撮影者の上記人格的利益の侵害が社会生活上受忍すべき限度を超えるものといえるかどうかを判断して決せられます(最高裁平成17年11月10日判決)。
2 人の氏名,肖像等を無断で使用する行為は,①氏名,肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用し,②商品等の差別化を図る目的で氏名,肖像等を商品等に付し,③氏名,肖像等を商品等の広告として使用するなど,専ら氏名,肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合に,当該顧客吸引力を排他的に利用する権利(いわゆるパブリシティ権)を侵害するものとして,不法行為法上違法となります(最高裁平成24年2月2日判決)。


第9 関連記事その他
1  大阪市ヘイトスピーチへの対処に関する条例(平成28年大阪市条例第1号)2条,5条~10条は,憲法21条1項に違反しません(最高裁令和4年2月15日判決)。
2 最高裁令和4年6月24日判決は, ある者のプライバシーに属する事実を摘示するツイートがされた場合にその者がツイッターの運営者に対して上記ツイートの削除を求めることができるとされた事例です。


3 月刊ペン事件に関する最高裁昭和56年4月16日判決は,一般論として以下の判示をしています。
① 私人の私生活上の行状であつても、そのたずさわる社会的活動の性質及びこれを通じて社会に及ぼす影響力の程度などのいかんによつては、その社会的活動に対する批判ないし評価の一資料として、刑法二三〇条の二第一項にいう「公共ノ利害ニ関スル事実」にあたる場合がある。
② 刑法二三〇条の二第一項にいう「公共ノ利害ニ関スル事実」にあたるか否かは、摘示された事実自体の内容・性質に照らして客観的に判断されるべきであり、これを摘示する際の表現方法や事実調査の程度などは、同条にいわゆる公益目的の有無の認定等に関して考慮されるべきことがらであつて、摘示された事実が「公共ノ利害ニ関スル事実」にあたるか否かの判断を左右するものではない。
4 新聞社は,新聞広告を掲載する場合において,その内容の真実性について疑念を抱くべき特別の事情があって読者に不測の損害を及ぼすおそれがあることを予見し,又は予見し得たときは,右広告内容の真実性について調査確認をする注意義務があります(最高裁平成元年9月19日判決)。
5(1) 衆議院HPに「知る権利・アクセス権とプライバシー権に関する基礎的資料―情報公開法制・個人情報保護法制を含む―基本的人権の保障に関する調査小委員会(平成 15 年 5 月 15 日の参考資料」が載っています。
(2) 京都産業大学HPの「憲法学習用基本判決集(須賀博志)」には,憲法判例の第一審判決及び控訴審判決も載っています。
6(1) 総務省HPにインターネットトラブル事例集(2024年版)が載っています。
(2) 法務省HPの「あかれんが75号」には「法務局・地方法務局では,インターネット上で人権侵害の被害に遭われた方からの相談を受けて,プロバイダ等への人権侵害情報の削除依頼の方法について助言を行っています。また,このような助言によってもご自身で削除を依頼することが難しい場合や自ら削除を依頼してもプロバイダ等に応じてもらえなかった場合などには,法務局・地方法務局が調査を行い,違法性を判断した上で,プロバイダ等に対する削除要請も行っています。」と書いてあります。
7(1) 四畳半襖の下張事件に関する最高裁昭和55年11月28日判決の裁判要旨は「文書のわいせつ性の判断にあたつては、当該文書の性に関する露骨で詳細な描写叙述の程度とその手法、右描写叙述の文書全体に占める比重、文書に表現された思想等と右描写叙述との関連性、文書の構成や展開、さらには芸術性・思想性等による性的刺激の緩和の程度、これらの観点から該文書を全体としてみたときに、主として、読者の好色的興味にうつたえるものと認められるか否かなどの諸点を検討することが必要であり、これらの事情を総合し、その時代の社会通念に照らして、それが「徒らに性欲を興奮又は刺激せしめ、かつ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するもの」といえるか否かを決すべきである。」というものです。
(2) 刑法175条1項にいう「わいせつ」の概念は不明確であるとはいえません(最高裁令和5年9月26日決定)。
8 令和2年総務省令第82号(プロバイダに対して開示を請求することのできる発信者情報に発信者の電話番号を追加するもの)の施行前に特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者は,上記施行後に発信者の電話番号の開示を請求できます(最高裁令和5年1月30日判決)。
9 14期の塩崎勤裁判官は,判例タイムズ1055号(2001年5月15日号)に「名誉毀損による損害額の算定について」を寄稿しています。
10(1) 以下の資料を掲載しています。
・ 「刑法等の一部を改正する法律」の施行について(令和4年6月29日付の法務省刑事局長の依命通達)
(2) 以下の記事も参照してください。
・ 弁護士の懲戒事由
・ 弁護士法56条1項の「品位を失うべき非行」の具体例
・ 弁護士の懲戒請求権が何人にも認められていることの意義

ポツダム宣言の発表から降伏文書調印までの経緯

目次
第1 7月26日のポツダム宣言の発表及びその後の放送
1 ポツダム会談
2 7月26日のポツダム宣言の発表
3 ポツダム宣言の放送
4 日本軍に関するポツダム宣言の条項
第2 日本側の当初の反応からソ連対日参戦まで
1 7月27日のポツダム宣言の公表
2 7月28日の黙殺発言
3 8月6日の広島市への原子爆弾投下
4 8月8日のソ連の対日宣戦布告
5 8月9日のソ連の対日参戦
第3 1回目のポツダム宣言受諾通告及びバーンズ回答
1 1回目のポツダム宣言受諾通告
2 8月11日のバーンズ回答
第4 バーンズ回答後,玉音放送までの経緯
1 2回目のポツダム宣言受諾通告
2 8月15日の玉音放送
第5 ポツダム宣言受諾から降伏文書調印までの陸海軍内部の経緯
1 8月14日の大本営の指示内容
2 大本営による停戦命令
3 降伏文書及び一般命令第一号
第6 明治憲法に基づく勅令等とヒトラーの総統命令等の比較
1 明治憲法に基づく勅令等の位置付け
2 ヒトラーの総統命令等の位置付け
第7 1928年8月署名の不戦条約の,「人民ノ名ニ於テ」問題
1 不戦条約の本文
2 帝国政府宣言書
3 日本政府が不戦条約を批准するまでの経緯
第8 関連記事その他

第1 7月26日のポツダム宣言の発表及びその後の放送
1 ポツダム会談
(1) 昭和20年7月17日から8月2日にかけて,ソ連の占領地域となったドイツ・ポツダムに米英ソの3カ国の首脳が集まり,第二次世界大戦の戦後処理を決定するため,ポツダム会談が実施されました。
(2) ツェツィーリエンホーフ宮殿は,1917年,当時の皇太子であったヴィルヘルム・フォン・プロイセンのために建設された宮殿であり,1990年,宮殿の建物及び庭園は「ポツダムとベルリンの宮殿群と公園群」の1つとしてユネスコの世界遺産(文化遺産)に登録された。


2 7月26日のポツダム宣言の発表
(1) 7月26日午後9時20分(ベルリン時間)にポツダム宣言が発表されました。
(2) 蒋介石主席はポツダム会談に参加していませんでしたし,1945年7月のイギリス総選挙の敗北によりチャーチル首相が一時帰国していたため,トルーマン大統領が3人分の署名をポツダム宣言に行いました。


3 ポツダム宣言の放送
(1) 7月27日午前5時(東京時間),戦時情報局(OWI)の西海岸の短波送信機から英語の放送が始まり,重要な部分は午前5時5分から日本語で放送されました。
(2) 同日午前7時,日本語の全文の放送がサンフランシスコ放送で開始されました。
(3) 日本側では外務省,同盟通信社,陸軍,海軍の各受信施設が第一報を受信しました。


4 日本軍に関するポツダム宣言の条項
・ 日本軍に関するポツダム宣言の条項は以下のとおりでした。
六、吾等ハ無責任ナル軍国主義カ世界ヨリ駆逐セラルルニ至ル迄ハ平和、安全及正義ノ新秩序カ生シ得サルコトヲ主張スルモノナルヲ以テ日本国国民ヲ欺瞞シ之ヲシテ世界征服ノ挙ニ出ツルノ過誤ヲ犯サシメタル者ノ権力及勢力ハ永久ニ除去セラレサルヘカラス
九、日本国軍隊ハ完全ニ武装ヲ解除セラレタル後各自ノ家庭ニ復帰シ平和的且生産的ノ生活ヲ営ムノ機会ヲ得シメラルヘシ
十、吾等ハ日本人ヲ民族トシテ奴隷化セントシ又ハ国民トシテ滅亡セシメントスルノ意図ヲ有スルモノニ非サルモ吾等ノ俘虜ヲ虐待セル者ヲ含ム一切ノ戦争犯罪人ニ対シテハ厳重ナル処罰加ヘラルヘシ日本国政府ハ日本国国民ノ間ニ於ケル民主主義的傾向ノ復活強化ニ対スル一切ノ障礙ヲ除去スヘシ言論、宗教及思想ノ自由並ニ基本的人権ノ尊重ハ確立セラルヘシ
十三 吾等ハ日本國政府ガ直ニ全日本國軍隊ノ無條件降伏ヲ宣言シ且右行動ニ於ケル同政府ノ誠意ニ付適當且充分ナル保障ヲ提供センコトヲ同政府ニ對シ要求ス

第2 日本側の当初の反応からソ連対日参戦まで
1 7月27日のポツダム宣言の公表
(1) 7月27日,日本政府はポツダム宣言の存在を論評なしに公表しました。
(2) 7月28日の新聞報道では,読売新聞で「笑止、対日降伏条件」、毎日新聞で「笑止! 米英蔣共同宣言、自惚れを撃破せん、聖戦飽くまで完遂」「白昼夢 錯覚を露呈」などという新聞社による論評が加えられていた。


2 7月28日の黙殺発言
(1) 7月28日,鈴木貫太郎首相は,記者会見において,「共同声明はカイロ会談の焼直しと思う、政府としては重大な価値あるものとは認めず「黙殺」し断固戦争完遂に邁進する」と述べ,7月29日の朝日新聞で「政府は黙殺」などと報道されました。
(2) 「黙殺」につき,同盟通信社では「ignore」と英語に翻訳され,またロイターとAP通信では「Reject(拒否)」と訳され報道された。


3 8月6日の広島市への原子爆弾投下
・ 8月6日午前8時15分,広島市に原子爆弾が投下されました。



4 8月8日のソ連の対日宣戦布告
(1)ア 日本政府は,昭和20年6月18日の最高戦争指導会議構成員会議において和平仲介を対ソ交渉に加えることを決定し,同月22日の御前会議において改めてこのことを確認し,7月10日の最高戦争指導会議構成員会議において近衛文麿 元首相を特使として派遣することを決定しました。
イ ソ連政府からは目的が不明なため特使派遣の受入れの可否を即答できないと回答されたものの,ソ連がポツダム宣言に加わっていないこともあり,日本政府としては,ポツダム宣言発表後もソ連による仲介の可能性に希望を残していました。


(2)ア 昭和16年4月13日にモスクワで調印され,同月25日に発効した日ソ中立条約は,昭和20年4月5日に不延長を通告されたものの,昭和21年4月25日までは有効でした(同条約3条)。
    そのため,トルーマン大統領は,スターリンに対し,ソ連の対日参戦は国際法に違反しないことを説明するため,昭和20年7月31日,以下の内容の書簡を送りました(OFFICE OF THE HISTORIANの「President Truman to Generalissimo Stalin[Babelsberg,] July 31, 1945.」からの貼り付けです。)。
Dear Generalissimo Stalin: Paragraph 5 of the Declaration signed at Moscow, October 30, 1943 by the United States, the Soviet Union, the United Kingdom and China, provides:

“5. That for the purpose of maintaining international peace and security pending the reestablishment of law and order and the inauguration of a system of general security, they will consult with one another and as occasion requires with other members of the United Nations with a view to joint action on behalf of the community of nations.”

Article 106 of the proposed Charter of the United Nations provides:

“Pending the coming into force of such special agreements referred to in Article 43 as in the opinion of the Security Council enable it to [Page 1334]begin the exercise of its responsibilities under Article 42, the parties to the Four-Nation Declaration, signed at Moscow, October 30, 1943, and France, shall, in accordance with the provisions of paragraph 5 of that Declaration, consult with one another and as occasion requires with other Members of the United Nations with a view to such joint action on behalf of the Organization as may be necessary for the purpose of maintaining international peace and security.”

Article 103 of the Charter provides:

“In the event of a conflict between the obligations of the Members of the United Nations under the present Charter and their obligations under any other international agreement, their obligations under the present Charter shall prevail.”

Though the Charter has not been formally ratified, at San Francisco it was agreed to by the Representatives of the Union of Soviet Socialist Republics and the Soviet government will be one of the permanent members of the Security Council.

It seems to me that under the terms of the Moscow Declaration and the provisions of the Charter, above referred to, it would be proper for the Soviet Union to indicate its willingness to consult and cooperate with other great powers now at war with Japan with a view to joint action on behalf of the community of nations to maintain peace and security.

Sincerely yours,

イ 北方領土問題HP「3.千島列島のロシア領有(北方領土問題の歴史・経緯)」には,昭和20年7月31日のトルーマン書簡に関して以下の記載があります。
「1943年10月31日のモスコー宣言では、法と秩序が回復し一般的安全保障制度が創設せられるまで、平和と安全を維持するために、(米英ソ3国は)相互に協議をとげ、国際社会のために共同行動をとることになっている。また、いまだ批准されていないが国際連合憲章草案の第106条でも、憲章の効力を生ずるまでは四大国がモスコー宣言に基づいて行動することになっているし、また第103条では国際連合憲章による義務と他の国際協定の義務が矛盾する場合は、憲章に基づく義務が優先する。ソ連は平和と安全を維持する目的で、国際社会に代わって共同行動をとる為に、日本と戦争中の他の大国と協力せんとするものであるというべきである。」(萩原徹/著「大戦の解剖」1950年、読売新聞社 P261-P267)
ウ(ア) 1943年10月30日に米英ソ中によって採択されたモスクワ宣言第5項は以下のような内容です(私が個人的に第5項を日本語に訳しただけです。)。
法と秩序の再構築及び集団的安全保障体制の発足までの間,4国宣言の当事国は,国際の平和及び安全の維持のために,必要な共同行動を国際社会に代わってとるために相互に及び必要に応じて他の連合国と協議する。
(イ) 1945年6月24日にサン・フランシスコ市において調印され,同年10月24日に発効した国際連合憲章の関係条文は以下のとおりです。
第103条
国際連合加盟国のこの憲章に基く義務と他のいずれかの国際協定に基く義務とが抵触するときは、この憲章に基く義務が優先する。
第106条
第43条に掲げる特別協定でそれによって安全保障理事会が第42条に基く責任の遂行を開始することができると認めるものが効力を生ずるまでの間、1943年10月30日にモスコーで署名された4国宣言の当事国及びフランスは、この宣言の第5項の規定に従って、国際の平和及び安全の維持のために必要な共同行動をこの機構に代ってとるために相互に及び必要に応じて他の国際連合加盟国と協議しなければならない。


(3) 8月8日午後11時,特使派遣に対する回答を得られると期待して面会に赴いた佐藤尚武駐ソ大使に対し,ソ連のモロトフ外務大臣が交付したソ連の宣戦布告文は以下のとおりであって(太平洋戦争とは何だったのかHP「ソ連-対日宣戦布告文」参照),1945年2月11日署名のヤルタ協定には言及されていませんでした。
 ヒットラードイツの敗北ならびに降伏の後、日本は依然として戦争の継続を主張する唯一の大国となった。日本武装兵力の無条件降伏を要求した今年7月26日の三国すなわちアメリカ合衆国、英国ならびに支那の要求は、日本の拒否するところとなった。
 従って、極東戦争に対する調停に関するソビエト連邦に宛てられた日本政府の提案は、一切の基礎を失った。調停に関する日本の降伏拒否を考慮し、連合国はソビエト政府に対して日本の侵略に対する戦争に参加し、戦争終結の時期を短縮し、犠牲の数を少なくし、全面的平和をできる限り速やかに克復することを促進するよう提案した。ソビエト政府は連合国に対する自国の義務に従い、連合国の提案を受諾し、本年7月26日の連合各国の宣言に参加した。
 ソビエト政府においては自国の政府の右進路が平和を促進し、各国民を今後新たな犠牲と苦難とから救い、日本国民をしてドイツが無条件降伏を拒否した後被った危険と破壊を避けしめ得る唯一の方途と思惟する。
 以上に鑑み、ソビエト政府は明日すなわち8月9日よりソビエト連邦が日本と戦争状態に入る旨宣言する。


(4) 駐ソ大使が送ったソ連の対日宣戦布告文に関する公電はソ連当局によって電報局で封鎖されたため,日本の外務省には届きませんでしたから,午前4時頃のソ連の国営タス通信(1992年以降はロシアのイタルタス通信)の報道等により,日本政府はソ連の対日参戦を知りました(産経新聞HPの「対日宣戦布告時、ソ連が公電遮断 英極秘文書」参照)。


5 8月9日のソ連の対日参戦
(1) 8月9日未明,極東ソ連軍が満州への侵攻作戦を開始しました。


(2) Wikipediaの「ソ連対日参戦」には「関東州を含めた在満洲日本人居留民は155万~160万人、その約14%にあたる27万人が開拓民であり、うち7万8500人が死亡した。これは日本人死亡者17万6千人の45%にあたる」と書いてあります。


第3 1回目のポツダム宣言受諾通告及びバーンズ回答
1 1回目のポツダム宣言受諾通告
(1)ア 8月9日未明のソ連対日参戦を受けて開催された最高戦争指導会議構成員会議及び閣議では,ポツダム宣言受諾の可否について結論が出ませんでした。


 イ 翌日午前2時20分頃終了の御前会議(1回目の聖断)及び同日午前4時頃終了の閣議に基づき,日本は,連合国に対し,以下のとおり通告しました(「ポツダム受諾に関する8月10日付日本国政府申入」参照)。
帝国政府ニ於テハ常ニ世界平和ノ促進ヲ冀求シ給ヒ今次戦争ノ継続ニ依リ齎ラサルヘキ惨禍ヨリ人類ヲ免カレシメンカ為速ナル戦闘ノ終結ヲ祈念シ給フ
天皇陛下ノ大御心ニ従ヒ数週間前当時中立関係ニ在リタル「ソヴィエト」聯邦政府ニ対シ敵国トノ平和恢復ノ為斡旋ヲ依頼セルカ不幸ニシテ右帝国政府ノ平和招来ニ対スル努力ハ結実ヲ見ス茲ニ於テ帝国政府ハ
天皇陛下ノ一般的平和克服ニ対スル御祈念ニ基キ戦争ノ惨禍ヲ出来得ル限リ速ニ終止セシメンコトヲ欲シ左ノ通リ決定セリ
帝国政府ハ一九四五年七月二十六日「ポツダム」ニ於テ米、英、支三国政府首脳者ニ依リ発表セラレ爾後「ソ」聯政府ノ参加ヲ見タル共同宣言ニ挙ケラレタル条件ヲ右宣言ハ 天皇ノ国家統治ノ大権ヲ変更スルノ要求ヲ包含シ居ラサルコトノ了解ノ下ニ受諾ス
帝国政府ハ右了解ニシテ誤リナキヲ信シ本件ニ関スル明確ナル意向カ速ニ表示セラレンコトヲ切望ス


(2) 外務省が用意した受諾電文案では,不戦条約批准に際して発表した昭和4年6月27日付の帝国政府宣言書(不戦条約1条の「人民の名において」という文言は日本国に限り適用はないという了解を宣言したもの)のように,国体護持についての了解を一方的に言い放つ(天皇ノ国家統治ノ大権ヲ変更スルノ要求ヲ包含シ居ラサルコトノ了解ノ下ニ受諾ス)という内容でした。
    しかし,結果として,1回目の受諾通告は,国体護持についての明確な保証を連合国側に求める内容となりました(「国体護持と「八月革命」─戦後日本の「平和主義」の生成─」3頁参照)。


2 8月11日のバーンズ回答
(1)ア 8月11日,米国国務長官のジェームズ・フランシス・バーンズの名前で,連合国は以下のとおり回答しました(いわゆるバーンズ回答です。)。
① 降伏のときより、天皇および日本国の政府の国家統治の権限は、降伏条項の実施のため、その必要と認める措置をとる連合国軍最高司令官の制限の下に置かれるものとする。
② 天皇は、日本国政府、および日本帝国大本営に対し「ポツダム宣言」の諸条項を実施するために必要な降伏条項署名の権限を与え、かつ、これを保障することを要請せられ、また、天皇は一切の日本国陸・海・空軍官憲、および、いずれかの地域にあるを問わず、右官憲の指揮の下にある一切の軍隊に対し、戦闘行為を終止し、武器を引き渡し、また、降伏条項実施のため最高司令官の要求するであろう命令を発することを要請される。
③ 日本国政府は、降伏後、直ちに俘虜、および、抑留者を連合国の船舶に速やかに乗船させ、安全なる地域に輸送すべきである。
④ 日本国政府の最終形態は、「ポツダム宣言」に従い、日本国民の自由に表明する意思によって決定されるべきである。
⑤ 連合国軍隊は、「ポツダム宣言」に掲げられた諸目的が完遂されるまで日本国内に駐留するものとする。
イ ①の原文は「the authority of the Emperor and the Japanese Government to rule the state shall be subject to the Supreme Commander of the Allied Powers who will take such steps as he deems proper to effectuate the surrender terms.」です。
(2) 「国体護持と「八月革命」─戦後日本の「平和主義」の生成─」3頁には以下の記載があります。
第1項では、「天皇の権力が最高司令官に従属するものであることを明確に述べることによって、間接的に天皇の地位を認めたもの」であり、第4項は、天皇制の存続の可否に言及することなく、単に、天皇制問題を日本国民の意思に委ねるというポツダム宣言第12項(「日本国国民の自由に表明せる意思に従い平和的傾向を有し且責任ある政府が樹立せらるるに於ては連合国の占領軍は直ちに日本国より撤収せらるべし」)を引用したものであり、「すでに約束した以上の約束は何ひとつなかった」


第4 バーンズ回答後,玉音放送までの経緯
1 2回目のポツダム宣言受諾通告
(1)ア バーンズ回答第1項の「天皇及び日本国政府の国家統治の権限は本降伏条項を実施するため適当と認める措置を執る連合国最高司令官(SCAP)の制限の下に置かれるものとする。」という記載に紛糾して8月12日の閣議で結論が出ませんでした。


イ バーンズ回答第1項に関しては,8月13日の最高戦争指導会議構成員会議及び閣議でも結論が出ませんでした。


ウ 8月14日正午終了の御前会議(2回目の聖断)によりポツダム宣言受諾が決定しました。


エ 8月14日午後の閣議及び午後11時発布のポツダム宣言受諾の詔書(「大東亜戦争終結ノ詔書」ともいいますが,いわゆる「終戦の詔書」です。)に基づき,2回目となるポツダム宣言受諾通告を行いました。


ウ バーンズ回答第4項の「日本国政府の最終形態は、「ポツダム宣言」に従い、日本国民の自由に表明する意思によって決定されるべきである。」については,フランスへの依存が強かった国際連盟管理地域であったザール地方につき,1935年1月13日実施の住民投票(投票率98%,そのうちの90.73%がドイツ帰属を希望)に基づき,同年3月1日にドイツに復帰したという前例があったこともあって,決定的な問題とはなりませんでした(「国体護持と「八月革命」─戦後日本の「平和主義」の生成─」8頁参照)。


エ 8月14日付のポツダム宣言受諾通告は8月15日午前4時頃にアメリカ政府に到着したため,14日の晩から15日の朝にかけて,熊谷空襲(埼玉県熊谷市),伊勢崎空襲(群馬県伊勢崎市),小田原空襲(神奈川県小田原市)及び土崎空襲(秋田県秋田市土崎港)がありました。


(2) ポツダム宣言受諾通告(米英蘇支四国ニ対スル八月十四日附帝国政府通告)は以下のとおりです(国立公文書館HPの「[ポツダム宣言受諾に関し瑞西、瑞典を介し連合国側に申し入れ関係]」参照)。
「ポツダム」宣言ノ条項受諾ニ関スル八月十日附帝国政府ノ申入並ニ八月十一日附「バーンズ」米国国務長官発米英蘇支四国政府ノ回答ニ関聯シ帝国政府ハ右四国政府ニ対シ左ノ通通報スルノ光栄ヲ有ス
一 天皇陛下ニ於カセラレテハ「ポツダム」宣言ノ条項受諾ニ関スル詔書ヲ発布セラレタリ
二 天皇陛下ニ於カセラレテハ其ノ政府及大本営ニ対シ「ポツダム」宣言ノ諸規定ヲ実施スル為必要トセラルヘキ条項ニ署名スルノ権限ヲ与ヘ且之ヲ保障セラルルノ用意アリ又 陛下ニ於カセラレテハ一切ノ日本国陸、海、空軍官憲及右官憲ノ指揮下ニ在ル一切ノ軍隊ニ対シ戦闘行為ヲ終止シ武器ヲ引渡シ前記条項実施ノ為聯合国最高司令官ノ要求スルコトアルヘキ命令ヲ発スルコトヲ命セラルルノ用意アリ


(3)ア 昭和20年8月15日午前4時42分発信の加瀬スイス公使の電文は以下のとおりです(国立公文書館HPの[米国務長官メッセージ]参照)。
第八八四号
十五日午前三時半外務次官ハ本使ニ対シ米国国務長官ハ在米瑞西公使ニ対シ十四日附帝国政府通告ハ「ポツダム」宣言並ニ十一日附四国回答ニ対スル完全ナル受諾ト認メ米国大統領ノ命ニ依リ別電第八八五号ノ「メッセージ」ヲ帝国政府ニ伝達方依頼セル旨ヲ伝ヘ直ニ帝国政府ニ電報方ヲ求メタリ(了)
イ 昭和20年8月15日午前4時30分発信の在瑞西加瀬公使の電文は以下のとおりです(国立公文書館HPの[停戦実施方に関する米国政府通告文]参照)。
貴方は左の措置をとられたし
一 日本国軍隊の軍事行動の速急なる停止を指令し連合国最高司令官に右停戦実施の日時を通報すること
二 日本国軍隊及び司令官(複数)の配置に関する情報を有し且連合国最高司令官及び其の同行する軍隊が正式降服受理の為連合国最高司令官の指示する地点に到著し得る様連合国最高司令官の指示する打合を為すべき充分の権限を与えられたる使者(複数)を直に連合国最高司令官の許に派遣すること
三 降伏の受理及びこれが実施の為ダグラス・マッカーサー」元帥が連合国最高司令官に任命せられたる処同元帥は正式降服の時、場所及び其の他詳細事項に関し日本国政府に通報すべし


2 8月15日の玉音放送
(1)ア 8月14日付のポツダム宣言受諾の詔書(いわゆる「終戦の詔書」)は,同日午後11時25分頃から翌日午前1時頃にかけて録音作業等が行われ,8月15日正午にラジオ放送されました(いわゆる「玉音放送」です。)。
イ 8月14日深夜から翌日朝にかけて,一部の陸軍省勤務の将校と近衛師団参謀が中心となって起こしたクーデター未遂事件(いわゆる「宮城事件」です。)が発生しました。
(2)ア 終戦の詔書には,阿南惟幾(あなみこれちか)陸軍大臣の要求により「国体ヲ護持シ得」たと記載されました現代語訳では,国体は「天皇を中心とする秩序」となっています。)ところ,「国体護持と「八月革命」─戦後日本の「平和主義」の生成─」10頁には以下の記載があります。
    少なくとも陸軍は一連の「降伏交渉」を経て国体護持が可能となったとは考えていなかったが、それを納得させ、武装解除と復員に導くためには、国民や政府ではなく天皇自身が国体を護持しえたという確信を有していることを詔書に示す必要があった。
イ 大審院昭和4年5月31日判決は,治安維持法(大正14年4月21日法律第46号)1条の「国体」に関して,「我帝國ハ萬世一系ノ天皇君臨シ統一治權ヲ總攬シ給フコトヲ以テ其ノ國體卜爲シ治安維持法二所謂國體ノ意義亦此ノ如ク解スヘキモノトス」と判示したみたいです。
ウ 阿南惟幾陸軍大臣は8月15日午前5時半頃に自刃しました。


(3) 8月15日午前11時30分から午後1時30分にかけて,玉音放送拝聴による中断をはさみつつ,天皇臨席の下,枢密院本会議において,内閣総理大臣及び外務大臣からの報告が実施されました(国立公文書館アジア歴史資料センターHP「「ポツダム」宣言受諾ニ関スル内閣総理大臣及外務大臣報告」参照)。



第5 ポツダム宣言受諾から降伏文書調印までの陸海軍内部の経緯
1 8月14日の大本営の指示内容
(1) 御前会議以前に出されたものと推定される,8月14日付の大陸命(大本営による陸軍部隊への最高命令です。)第1380号には,対ソ戦への大本営の対処方針,日本本土周辺の外地各軍の任務分担が示されていたものの,終戦や停戦を暗示する文言はありませんでした。


(2) 午後6時,阿南惟幾陸軍大臣と梅津美治郎参謀総長の連名で,陸機密電第六八号「帝国ノ戦争終結二関スル件」が発電され,「御聖断二従ヒ政府及大本営ハ逐次具体的処理ヲ進メラルベキモ停戦二関スル大命ノ発セラルル迄ハ依然従来ノ任務ヲ続行スベキモノトス」などと記載されていました(「日本の敗戦と大本営命令」(リンク先のPDF)8頁及び9頁)。
(3) 「南京1945年 8~9月― 支那派遣軍から総連絡班へ ― 」には以下の記載があります(リンク先のPDF1頁)。
    「終戦」当時、日本は陸軍だけで総計547万人の兵力を各地に配しており、ここでとりあげる支那派遣軍のみでも105万6000人に上っていた。これは、長城線以南の中国本土において、ほぼ完全な武器装備ともに、後述するように、敗れたという意識を持たずに存在していた将兵の総数であった。
(4) 「日本の敗戦と大本営命令」には以下の記載があります(リンク先のPDF8頁)。
    停戦・降伏近しと思われる弱気な命令を大本営が出せば、出先軍司令部・部隊の中での賛否論争に時間を与え、継戦を主張する一部の強硬部隊が大本営の統制に服さなく恐れがあったからである。停戦は、天皇・大本営の統制力を維持した上で、予告なしに有無を言わさぬ方法でなされなければならなかった。


2 大本営による停戦命令
(1) 8月15日付の大陸命第1381号は,「各車ハ別二命令スル迄各々現任務ヲ続行スヘシ但シ積極進攻作戦ヲ中止スヘシ」というものでしたし,同日付の大海令第47号は「何分ノ令アル迄対米英蘇支積極進攻作戦ハ之ヲ見合ハスベシ」というものでした。


(2)ア 8月16日付の大陸命第1382号及び大海令第48号は,自衛のための戦闘行為を除き,即時戦闘行動の停止を命じるものでした。


イ 札幌に司令部を置き,北海道,南樺太及び千島列島を作戦地域としていた第5方面軍は,8月16日,樺太の第88師団に対し,自衛戦闘の実施と南樺太死守を命じました。


(3) 8月17日付の大海令第49号及び8月18日付の大陸命第1385号は,大本営が別に指定する時期をもって全面的な停戦に移行することを予告するものでした。


(4)ア 8月19日付の大陸命第1386号は,第一総軍,第二総軍及び航空総軍(作戦担当地域は北海道を除く日本本土)につき8月22日午前0時以降,一切の武力行使を停止するというものでした。
イ 千島列島東端にある占守島の戦いについては,8月21日午後9時に停戦が成立しました。


(5)ア 8月22日付の大陸命第1388号は,北海道及び外地の陸軍につき,8月25日午前0時以降,支那派遣軍における局地的自衛の措置を除き,一切の武力行使を停止するというものでした。


イ 8月22日付の大海令第54号は,外地部隊の艦隊司令長官に対し,速やかな全面的停戦を指示するものでした。
ウ 樺太の戦いについては,8月23日頃までに日本軍の主要部隊との停戦が成立し,同月25日の大泊占領をもって終わりました。


エ 支那派遣軍の場合,中国国民党の政府軍及び中国共産党軍が相克状態にあり,それぞれが日本軍の軍事物資を接収に来たり,抗争を繰り返したりしているという事情がありました(「南京1945年 8~9月― 支那派遣軍から総連絡班へ ― 」(リンク先のPDF10頁)参照)。
(6) 8月22日付の大陸指第2552号は外地の陸軍各軍司令官に対して現地停戦交渉の相手を特定し,同日付の大海令第53号は,日本本土とその近海を作戦区域とする各部隊の自主的な武装解除を命じるものでした。
(7) ポツダム宣言13項は,「吾等ハ日本國政府ガ直ニ全日本國軍隊ノ無條件降伏ヲ宣言シ且右行動ニ於ケル同政府ノ誠意ニ付適當且充分ナル保障ヲ提供センコトヲ同政府ニ對シ要求ス」と定めていました。
    しかし,結果として,ポツダム宣言により指示された無条件降伏命令は9月2日の降伏文書調印まで出されませんでした北方領土問題HP「大陸命第千三百八十一号~第千三百九十二号」参照)。
(8) ドイツの場合,4月30日午後3時頃にヒトラーが自殺し,5月2日にベルリンの戦いが終了し,5月8日午後11時頃に降伏文書が調印され,5月13日にソ連軍がすべての進撃を停止し,5月15日にスロベニアのドイツ軍が降伏してすべての戦闘が終了し,5月23日にフレンスブルク政府の閣僚が逮捕されてドイツの中央政府が消滅しました。
3 降伏文書及び一般命令第一号
(1) 9月2日,東京湾上のアメリカ戦艦ミズーリの甲板上において降伏文書が調印されました。
(2) 降伏文書には「天皇及日本国政府ノ国家統治ノ権限ハ本降伏条項ヲ実施スル為適当ト認ムル措置ヲ執ル聯合国最高司令官ノ制限ノ下ニ置カルルモノトス」と記載されました。


(3)ア 日本の大本営は,降伏文書調印後,9月2日付の一般命令第一号により,以下のとおり各地域の日本軍の降伏先司令官を定めました。
① 日本本土、沖縄、北緯38度線以南の朝鮮、フィリピン:アメリカ合衆国太平洋陸軍部隊最高司令官
② 日本国委任統治諸島、小笠原その他太平洋の諸島:アメリカ合衆国太平洋艦隊最高司令官
③ 満州、北緯38度線以北の朝鮮、千島列島:ソビエト連邦極東軍最高司令官
④ 中国、台湾、北緯16度以北のフランス領インドシナ:蔣介石
⑤ ボルネオ、英領ニューギニア、ビスマルク諸島、ソロモン諸島:オーストラリア陸軍最高司令官
⑥ 上記以外の地域:東南アジア軍司令部最高司令官
イ 支那派遣軍の降伏先は蒋介石が率いる中国国民政府だけであって,中国共産党は除外されていました。
(4) ソ連軍は,8月29日に択捉島を占領し,9月1日から同月4日にかけて国後島及び色丹島を占領し,同月3日から5日にかけて歯舞群島を占領しました(Wikipediaの「ソ連対日参戦」参照)。
(5) 最高裁大法廷昭和35年4月18日決定(昭和24年から昭和25年に実施されたレッドパージに関する裁判例です。)は,以下の判示をしています。
    平和条約発効前においては、わが国の国家機関及び国民は、連合国最高司令官の発する一切の命令指示に誠実且つ迅速に服従する義務を有し(昭和二〇年九月二日降伏文書五項、同日連合国最高司令官指令一号一二項)、わが国の法令は右指示に牴触する限りにおいてその適用を排除されるものであることは、当法廷の判例とするところである(昭和二六年(ク)一一四号、同二七年四月二日大法廷決定、民集六巻四号三八七頁参照)。



第6 1928年8月署名の不戦条約の「人民ノ名ニ於テ」問題
1 不戦条約の本文
(1) 1928年8月27日署名の不戦条約は,ケロッグ・ブリアン条約ともいわれます(アメリカの国務長官フランク・ケロッグとフランスの外務大臣アリスティード・ブリアンの名前にちなんだ名称です。)ところ,その本文は以下のとおりでした。
第一條
締約國ハ國際紛爭解決ノ爲戰爭ニ訴フルコトヲ非トシ且其ノ相互關係ニ於テ國家ノ政策ノ手段トシテノ戰爭ヲ抛棄スルコトヲ其ノ各自ノ人民ノ名ニ於テ嚴肅ニ宣言ス
第二條
締約國ハ相互間ニ起ルコトアルベキ一切ノ紛爭又ハ紛議ハ其ノ性質又ハ起因ノ如何ヲ問ハズ平和的手段ニ依ルノ外之ガ處理又ハ解決ヲ求メザルコトヲ約ス
第三條
本條約ハ前文ニ揭ゲラルル締約國ニ依リ其ノ各自ノ憲法上ノ要件ニ從ヒ批准セラルベク且各國ノ批准書ガ總テ「ワシントン」ニ於テ寄託セラレタル後直ニ締約國間ニ實施セラルベシ
2 帝国政府宣言書
・ 昭和4年6月27日付の帝国政府宣言書は「帝國政府ハ千九百二十八年八月二十七日巴里ニ於テ署名セラレタル戰爭抛棄ニ關スル條約第一條中ノ「其ノ各自ノ人民ノ名ニ於テ」ナル字句ハ帝國憲法ノ條章ヨリ觀テ日本國ニ限リ適用ナキモノト了解スルコトヲ宣言ス」というものでした。
3 日本政府が不戦条約を批准するまでの経緯
(1) アメリカ政府提案の不戦条約案1条の「人民ノ名ニ於テ」という文言につき,日本政府は,アメリカ政府に対し,主権在民は帝国憲法上の解釈として容認し難いと伝えたものの,日本以外に反対した国がありませんでしたし,何らかの文言修正に一度でも応じると他にも修正要求が出て収拾困難になる可能性があったため,アメリカ政府は文言修正に応じませんでした。
 その後,アメリカ政府は,日本政府に対し,妥協案として,「日本国天皇は「人民のために」署名するという解釈を採用してもいい」という趣旨のアメリカ国務長官覚書(1928年7月16日交付。1929年6月28日好評)を交付したことから,1928年8月27日に不戦条約はパリで署名されました。
(2) 日本国内での批准に際し,「人民ノ名ニ於テ」という文言には主権在民の観念が示されているため,天皇主権を定める明治憲法に違反するという反対論が根強くあり,枢密院の審議でも紛糾しました。
 その一方で,「人民ノ名ニ於テ」という文言は日本国に適用されないという留保付き批准を行って他の締約国が留保を承認しなかった場合,日本は不戦条約に加入できなくなるばかりか,不戦条約自体が成立しなくなる可能性もあった(3条の「各國ノ批准書ガ總テ「ワシントン」ニ於テ寄託セラレタル」参照)ところ,そのような事態となった場合,軍縮問題や中国問題とかで日本の立場が非常に不利になることが予想されました。
 そのため,「了解」(ただし,一方的了解です。)という文言を含む点で留保のような重要な意味を含む宣言ではないことについてアメリカ政府の了承を得た上で,1929年6月26日,宣言付批准とすることで不戦条約の批准が枢密院に於いて承認されました(ただし,枢密院としては,留保付批准という認識でした。)。
 そして,1929年6月27日,同日付の帝国政府宣言書とともに,不戦条約について同日付の批准書を作成し,同年7月24日,アメリカ政府のもとに批准書が寄託されました。
(3) 「不戦条約中「人民ノ名ニ於テ」の問題」が非常に参考になります。


第7 明治憲法に基づく勅令等とヒトラーの総統命令等の比較
1 明治憲法に基づく勅令等の位置付け
(1)ア ①明治憲法8条1項に基づく緊急勅令の場合,法律と同等の効力を有していたものの,明治憲法8条2項に基づき次の会期において帝国議会の承諾を受ける必要がありましたし,②明治憲法9条に基づく勅令の場合,憲法上,法律事項とされていない事項を対象とするに過ぎませんでしたし,法律を変更することはできませんでした。
 また,天皇の立法大権の行使には帝国議会の協賛が必要でした(明治憲法37条)。
 そして,このような解釈は条文上明らかですから,天皇主権説でも否定はできなかったと思います。
イ 天皇の条約大権の行使に際しては,枢密院(明治憲法56条)の審議及び意見上奏が予定されていました(枢密院官制6条)。


(2) 天皇機関説に立った場合,天皇が外交大権(明治憲法13条)を行使するためには国務大臣の輔弼(ほひつ)が必要となり(明治憲法55条1項),天皇が国務に関する詔勅を出すためには国務大臣の副署が必要となった(明治憲法55条2項)のに対し,昭和10年の国体明徴声明に基づき天皇主権説に立った場合,これらが常に必要というわけではありませんでした。


(3) 昭和20年6月,4日間の会期で第87回帝国議会が開かれ,義勇兵役法その他の戦時立法が制定されました。
2 ヒトラーの総統命令等の位置付け
(1)ア 1919年8月14日施行のヴァイマル憲法は,1933年1月30日のヒトラー内閣成立及び同年3月5日のドイツ国会総選挙を経て同月23日に制定された全権委任法によって死文化され,1945年のドイツ敗戦に伴って廃止されました。
イ 全権委任法に基づき,ヒトラー内閣は,立法府の代わりに法律を制定でき(1条),大統領の権限等に関する事項を除いて憲法違反の法律を制定できましたし(2条),大統領の代わりに法律を公布できましたし(3条),立法府の同意なしに条約を締結できるようになりました(4条)。
ウ 1934年8月1日制定の「ドイツ国及び国民の国家元首に関する法律」に基づき,同月2日のヒンデンブルク大統領の死去に伴い,ヒトラー首相は大統領職を兼ねるようになり,それは1945年4月30日の自殺まで続きました。
(2)ア Wikipediaの「総統命令」によれば,ヒトラーによって制定される総統命令の場合,法的根拠並びに関係大臣の同意及び副署は不要でしたし,総統命令により法律の改廃すら行われていました。
イ 1939年8月23日署名の独ソ不可侵条約は,1941年6月22日のバルバロッサ作戦の発動(独ソ戦の開始)により失効しました。
ウ 1941年6月6日付の「政治将校の取扱いに関する指針」(いわゆるコミッサール指令です。)では,戦時国際法を無視して,ソ連赤軍の捕虜のうち,政治将校(コミッサール)については原則としてその場で処刑することが命ぜられました。
(3) 1942年4月26日に戦前のドイツにおける最後の国会が開会し,同日に閉会しましたところ,その日の国会決議に関して,ヒトラー全記録549頁には以下の記載があります。
 ヒトラー、国会演説で「全権委任、自己神格化、反ボリシェヴィズム」を強調。国会「非常時大権」を承認する。ヒトラーは行政・司法・立法・軍事のすべてにおいて独裁的絶対権を掌握し、自らが法である「最高司法権保有者」となる。身分保障に関する一切の規定は「戦争終結まで効力を停止する」と国会で決議。午後四時二四分に最後の国会閉会。


第8 関連記事その他
1(1) 最高戦争指導会議は,小磯内閣発足後の昭和19年8月4日に大本営政府連絡会議を改称して設置された会議です。
(2) 最高戦争指導会議構成員会議は,ドイツ降伏後の昭和20年5月11日以降に首相,外相,陸相,海相,参謀総長及び軍令部総長の6人だけが参加して開催されるようになったものです。
(3) 御前会議は,昭和19年8月19日以降,「御前に於ける最高戦争指導会議」という名称で開催されました。
2 ポツダム宣言はカイロ宣言を引き継いだものですが,ポツダム会談に招かれなかった蒋介石主席の意見として反映された部分は,ポツダム宣言1項の順番を米英中から米中英に変えたことだけでした。
 ただし,ポツダム宣言の表題は米英中三国宣言となっていますし,同宣言2項の順番は米英中のままとなりました(「「大日本帝国」崩壊 東アシアの1945年」142頁及び143頁)。

3 奈良県立図書情報館HPに「「日本の皆様」B29米軍投下ビラ」(昭和20年8月13日の文書)が載っています。
4(1) 「国体護持と「八月革命」─戦後日本の「平和主義」の生成─」9頁には,「我報ノ「ポツダム」宣言受諾申出ニ対スル先方回答ニ関スル件」(発信者は岡本スウェーデン公使であり,8月13日午前2時10分到着)に関して以下の記載があります。
 岡本電(13日午前に到着)は、現地新聞に掲載されたバーンズ回答の発出経緯に関するロンドン、ワシントン特電を伝え、天皇制の廃止や無条件降伏を主張するソ連など連合国内部の反対論を、「天皇の地位を認めざれば日本軍隊を有効に統御するものなく、連合国は之が始末になお犠牲を要求せらるべし」として米国政府が押し切ったものであり、それは「米側の外交的勝利」であり、実質的には日本側条件を是認するものであると指摘していた。
(2) 国際法外交雑誌86巻4号(1987年10月)に「帝国政府のポツダム宣言受諾をめぐるスイスの仲介(1945年8月)」が載っています。
5 「敗戦時における公文書焼却の再検討― 機密文書と兵事関係文書 ― 」には「国内でわずかに残存する焼却指示文書を手がかりに、敗戦時の焼却は内務省系統と軍系統の二系統が存在し、焼却対象となったのは内務省系統では法令に基づいた機密文書であり、軍系統では動員関係文書が中心であった」と書いてあります。


6 外務省外交史料館HPに「戦後70年企画 「降伏文書」「指令第一号」原本特別展示 降伏と占領開始を告げる二つの文書」が載っています。
7 アーバンライフメトロHPの「東京の「お盆」は7月って本当? なぜ1か月早いのか、専門家に聞いてみた」には「8月15日を中心に行われるお盆。しかし東京や関東圏の一部では7月15日を中心に行われています。その背景には地方の抱える宿命がありました。」と書いてあります。
8 以下の記事も参照してください。
・ 昭和20年8月15日,長崎控訴院が福岡に移転して福岡控訴院となり,高松控訴院が設置されたこと等
・ 裁判官及び検察官の定年が定められた経緯(日本国憲法の制定経緯を含む。)
 日本国憲法外で法的効力を有していたポツダム命令
 在外財産補償問題
・ 日本の戦後処理に関する記事の一覧
・ 旧ドイツ東部領土からのドイツ人追放,及びドイツ・ポーランド間の国境確定

在日韓国・朝鮮人及び台湾住民の国籍及び在留資格

目次
第1 総論
1 戦前の取扱い
2 外国人登録令に基づく取扱い
3 対日平和条約において国籍に関する条文が定められなかった理由
第2 昭和27年4月19日付の法務府民事局長通達,及び同月28日以降の在留資格
1 昭和27年4月19日付の法務府民事局長通達
2 昭和27年4月28日以降の在留資格
第3 在日韓国・朝鮮人の国籍喪失
第4 在日韓国・朝鮮人の植民地時代の戸籍(身分登録)
第5 台湾住民の国籍喪失
第6 協定永住者及び特別永住者

1 日韓法的地位協定及び入管特別法に基づく協定永住者
2 25年後までに協議することを定めた日韓法的地位協定2条
3 入管特例法に基づく特別永住者
第7 国籍欄が「朝鮮」の人の位置づけ
1  国籍欄に「朝鮮」と記載されていても、実際には韓国籍を有している可能性があること
2 在日コリアンの在外国民登録
3 日韓基本条約3条及び海外旅行時の取扱い
4 戦前生まれの場合,「朝鮮」籍でも韓国の戸籍に名前が載っていること
5 債権者から見た場合の取扱い
第8 在日韓国人及び台湾住民の軍人軍属に対する補償問題
1 総論
2 外交交渉による解決が予定されていたこと
3 在日韓国人の軍人軍属に対する補償問題の決着内容
4 台湾住民の軍人軍属に対する補償問題の決着内容
5 その他
第9 関連記事その他

第1 総論
1 戦前の取扱い
(1) 戦前の取扱いとして,元来の日本人は戸籍法の適用を受け,内地戸籍に登載されていました。
    これに対して元来の朝鮮人は朝鮮戸籍令の適用を受け,朝鮮戸籍に登載されていましたし,元来の台湾人は台湾の戸籍(正式名称は「本島人戸籍」です。)に登載されていました。
(2) 朝鮮人又は台湾人との婚姻又は養子縁組によって朝鮮人又は台湾人の家に入った日本人は,共通法(大正7年4月16日法律第39号)3条1項の「一ノ地域ノ法令ニ依リ其ノ地域ノ家ニ入ル者ハ、他ノ地域ノ家ヲ去ル」という規定に従って,朝鮮戸籍又は台湾の戸籍に登載され,他方で内地戸籍から除籍されました(朝鮮人につき最高裁大法廷昭和36年4月5日判決,台湾人につき最高裁大法廷昭和37年12月5日判決)。
(3) 戦前は,内地(北緯50度以南の樺太を含む。),朝鮮,台湾及び関東州とで適用される法令が異なりました(共通法1条参照)。
2 外国人登録令に基づく取扱い
(1) 日本国憲法施行の前日に公布され,明治憲法下の最後の勅令となった外国人登録令(昭和22年5月2日勅令第207号)11条では,「台湾人のうち内務大臣の定める者及び朝鮮人は、この勅令の適用については、当分の間、これを外国人とみなす」とされました。
(2) 内田藤雄法務省入国管理局長は,昭和30年12月8日の衆議院法務委員会において以下の答弁をしています(ナンバリング及び改行を追加しています。)。
① 国籍の問題(山中注:長崎県大村市にあった入国者収容所に収容されている朝鮮人の国籍の問題)につきましては、われわれはまだ向う(山中注:韓国側)のはっきりした承諾を得ておるというわけにはいきませんが、大体片ずいておる問題だという前提で接しております。
  と申しますのは、韓国の独立がいつ行われたかというようなことにつきましては、過去の日韓会談についても争いがあったのでございますが、われわれが終戦後いわゆる朝鮮人を外国人として取り扱って参りました実情に対しまして、韓国側から、その間それが不当だというような言い分は一ぺんも聞かされたことはなかったわけでございます。
   むしろ逆に、韓国側は、朝鮮人は外国人である、特に占領時代の当初におきまして、占領国民と同様の待遇を与えるべきだということからでもあったと思いますが、ことさらに向う側で外国人であるということを非常に強く主張して参ったいきさつがございます。
   それで、御承知のように、いわゆる第三国人などというような言葉も当時できたわけなのでございますが、日韓会談におきましても、従来これらの韓国人の国籍そのものが争われたというようなことはございません。
② また、現に、大村に収容されておりますこれらの者につきましてかねてとかくのことを言って参っておりますそのこと自体が、韓国はこれらの人間の韓国籍を認めておる証拠であるとわれわれは考えております。
   ただ、問題は、前の日韓会談でもそうでございますが、韓国籍の人間ではあるが、特殊の扱いを受ける人間であるというのが向うの主張の内容ではないかと想像いたしております。
   われわれといたしましては、今さら国籍問題が不明であるという立場は、日本政府としてはとる必要もないし、またとりたくないと思っております。
3 対日平和条約において国籍に関する条文が定められなかった理由
(1) ①明治8年5月7日調印の樺太・千島交換条約第5款,②明治28年4月7日調印の日清講和条約(別名は「下関条約」です。)第5条及び③明治38年9月5日調印の日露講和条約(別名は「ポーツマス条約」です。)第10条では,領土変更の対象となる地域の住民に国籍選択権が定められていました。
   しかし,サンフランシスコ平和条約の場合,①日本が権利,権原及び請求権を放棄する台湾,澎湖諸島,南樺太及び千島列島の帰属先が未定でした(特に台湾及び澎湖諸島が中華民国又は中華人民共和国のいずれに帰属するか)し,②「中国」代表としてどちらの政府が参加するかに関する合意が成立しませんでしたから,国籍に関する条文が定められませんでした。
(2) 最高裁昭和40年6月4日判決は以下の判示をしているものの,「放棄された領土と住民の国籍」で説明されている国籍の選択に関する先例とはかなり異なる気がします。
   領土の割譲、併合、復帰等国際法上のいわゆる領土変更に伴なう国籍の変動にあたつては、当該領土に属すべきものは、旧国籍を離脱するにとどまらず、その変動が主権の移転によるものであるから、当事国ないし相手国の国内法の規定の如何を問わず、旧国籍の離脱と同時に新国籍を取得するものといわなければならない。

第2 昭和27年4月19日付の法務府民事局長通達,及び同月28日以降の在留資格
 昭和27年4月19日付の法務府民事局長通達
・ 平和条約の発効に伴う朝鮮人、台湾人等に関する国籍及び戸籍事務の処理について(昭和27年4月19日付の法務府民事局長通達)の本文(リンク先の4頁ないし6頁)は以下のとおりです。

 近く平和条約(以下単に条約という。)の発効に伴い、国籍及び戸籍事務に関しては、左記によつて処理されることとなるので、これを御了知の上、その取扱に遺憾のないよう貴管下各支局及び市区町村に周知方取り計らわれたい。

                  記

第一 朝鮮及び台湾関係
(一) 朝鮮及び台湾は、条約の発効の日から日本国の領土から分離することとなるので、これに伴い、朝鮮人及び台湾人は、内地に在住している者を含めてすべて日本の国籍を喪失する。
(二) もと朝鮮人又は台湾人であつた者でも、条約の発効前に内地人との婚姻、縁組等の身分行為により内地の戸籍に入籍すべき事由の生じたものは、内地人であつて、条約発効後も何らの手続を要することなく、引き続き日本の国籍を保有する。
(三) もと内地人であつた者でも、条約の発効前に朝鮮人又は台湾人との婚姻、養子縁組等の身分行為により内地の戸籍から除籍せらるべき事由の生じたものは、朝鮮人又は台湾人であつて、条約発効とともに日本の国籍を喪失する。
  なお、右の者については、その者が除かれた戸籍又は除籍に国籍喪失の記載をする必要はない。
(四) 条約発効後は、縁組、婚姻、離縁、離婚等の身分行為によつて直ちに内地人が内地戸籍から朝鮮若しくは台湾の戸籍に入り、又は朝鮮人及び台湾人が右の届出によつて直ちに同地の戸籍から内地戸籍に入ることができた従前の取扱は認められないこととなる。
(五) 条約発効後に、朝鮮人及び台湾入が日本の国籍を取得するには、一般の外国人と同様、もつぱら国籍法の規定による帰化の手続によることを要する。
 なお、右帰化の場合、朝鮮人及び台湾人((三)において述べた元内地人を除く。)は、国籍法第五条第二号の「日本人であつた者」及び第六条第四号の「日本国籍を失つた者」に該当しない。

第二 樺太及び千島関係
 樺太及び千島も、条約発効とともに日本国の領土から分離されることとなるが、これらの地域に本籍を有する者は条約の発効によつて日本の国籍を喪失しないことは勿論である。
 ただこれらの者は、条約発効後は同地域が日本国の領土外となる結果本籍を有しない者となるので、戸籍法による就籍の手続をする必要がある。

第三 北緯二十九度以南の南西諸島、小笠原諸島、硫黄列島及び南鳥島関係
 標記の諸島の地域に本籍を有する者は、条約の発効後も日本国籍を喪失するのでないことはもとより、同地域に引き続き本籍を有することができる。
 右諸島のうち、沖縄その他北緯二十九度以南の南西諸島に本籍を有する者の戸籍事務は、条約発効後も従前通り福岡法務局の支局である沖縄奄美大島関係戸籍事務所で取り扱われ、また、小笠原諸島、硫黄列島及び南鳥島に本籍を有する者の戸籍事務については、条約発効の日から東京法務局の出先所として小笠原関係戸籍事務所が設置され、同事務所において取り扱われることとなる(本月十四日附民事甲第四一六号本官通達参照。)。
2 昭和27年4月28日以降の在留資格
(1)ア ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く外務省関係諸命令の措置に関する法律(昭和27年4月28日法律第126号)2条6項は「日本国との平和条約の規定に基き同条約の最初の効力発生の日において日本の国籍を離脱する者で、昭和二十年九月二日以前からこの法律施行の日まで引き続き本邦に在留するもの(昭和二十年九月三日からこの法律施行の日までに本邦で出生したその子を含む。)」について在留資格を認めていました(法的地位としては,「法律126号」とか「法126-2-6(法律第126号2条6項該当者) 」といわれます。)。
 つまり,昭和20年9月2日以前から日本に居住していた在日一世は,別の法律ができるまでの間,在留資格を有することなく日本に在留できるとするものでしたが,①昭和27年4月28日までの間に一度でも日本を出国して再入国した人,②昭和20年9月3日以降の入国者及び③昭和20年9月3日以降に生まれた在日二世はその対象外でした。
イ ①及び②のうち,外国人登録証明書を所持していない戦後入国者(例えば,朝鮮半島から日本への密航者)は在留資格を取得できない限り合法的に日本に在留することはできませんでした。
ウ 在日二世(法律126号の子)の在留資格は「特定在留(4-1-16-2)」(期間は3年でしたが,更新可能)であり,在日三世(法律126号の孫)の在留資格は「特別在留(4-1-16-3)」(期間は3年以下でしたが,更新可能)でした。
エ 以上については,在日コリアン青年連合HPの「戦後在日コリアン法的地位一覧」が非常に参考になります。
(2) 参議院議員兼岩傳一君提出在日朝鮮人の強制送還に関する質問に対する答弁書(昭和28年3月13日付)には「在日朝鮮人は、すべて平和条約発効と同時に外国人となつたのであるから、出入国管理令及び外国人登録法の適用を除外することを考えていない。」と書いてあります。
(3)ア 昭和27年4月28日までの間に一度でも日本を出国して再入国した人は,昭和40年6月22日付の法務大臣声明に基づき,昭和41年1月17日の日韓法的地位協定の発効後については,法務大臣において特別に在留を許可するとともに、更に申請があった場合にはその在留状況等を勘案して、可能な限り入国管理法令による永住を許可する方針がとられることになりました。
イ ②昭和20年9月3日以降の入国者は,昭和40年6月22日付の法務大臣声明に基づき,昭和41年1月17日の日韓法的地位協定の発効後については,情状により,①の人に準ずる措置が講ぜられることになりました。
ウ ③昭和20年9月3日以降に生まれた在日二世は,日韓法的地位協定に基づき,協定永住者となりました。

第3 在日韓国・朝鮮人の国籍喪失
1 日本の国内法上朝鮮人としての法的地位を持った人は,戸籍法の適用を受けておらず,昭和27年4月28日のサンフランシスコ平和条約の発効により日本国籍を失いました(最高裁大法廷昭和36年4月5日判決及び最高裁昭和40年6月4日判決)。
2 朝鮮人の国籍喪失に関する最高裁判決の判示内容は,平和条約の発効に伴う朝鮮人、台湾人等に関する国籍及び戸籍事務の処理(昭和27年4月19日付の法務府民事局長通達)を追認したものでした。
3 内地人女子の嫡出でない子であって昭和23年6月に朝鮮人男子により認知されたものは,平和条約の発効とともに日本国籍を失いました(最高裁平成10年3月12日判決)。

第4 在日韓国・朝鮮人の植民地時代の戸籍(身分登録)
1 第2版「在日」の家族法Q&A(平成18年1月31日付)53頁には「(1) 植民地時代の戸籍(身分登録)」として,以下の記載があります。
 朝鮮半島全体を意味する当時の韓国における身分登録制度として、李氏朝鮮時代に戸口調査制度が実施されており、1896年には「戸口調査規則」が施行されていた。近代的な戸籍法としての「民籍法」は、1909年に施行され、家を表示し、個人の身分の内容と親族関係を公示、証明していたとされている。この民籍法は、韓国が日本に併合された後、朝鮮戸籍令(大正11.12.18朝鮮総督府命令154)が、施行されるまで存続した。
 朝鮮戸籍令は1923年7月1日施行され、朝鮮人は、いわゆる朝鮮戸籍に登録されることとなった。朝鮮人は、内地に住んでいる者も含めて、内地人との間の婚姻、養子縁組、認知等の身分行為で内地戸籍に入籍するとされたが、この朝鮮戸籍から内地戸籍へ転籍、就籍することは認められていなかった(共通法3条2項)。そして、内地人との身分行為による朝鮮戸籍から内地戸籍への入籍等の戸籍の変動に関しては(共通法3条1項)、その手続を、朝鮮戸籍令32条と大正3年戸籍法(大正3 . 3 .31法律26)の42条ノ2 (大正10・4 ・8法律48)でそれぞれ規定した46)。
 また、当時内地に住んでいた朝鮮人が、身分行為等によって朝鮮戸籍の記載事項に変更が生じた場合には、日本の市町村から当事者の朝鮮の本籍地に戸籍変更届出書が送付されていた。
 特記すべきことは、朝鮮民事令(明治45.3.18制令7・第3次改正昭和14.11. 10制令19)により朝鮮人に日本の旧民法上の「氏」(746条)の規定を適用することとし、朝鮮人の姓制度を、日本式の氏制度に変更する創氏制度「創氏改名」を1940年2月11日より、施行したことである。
2 最高裁大法廷昭和36年4月5日判決には「日本と朝鮮の併合の前に、韓国には民籍法があり、韓国の国籍をもつた人は、民籍に登載されていた。併合の後に、民籍法に代つて朝鮮戸籍令が施行され、民籍に登載されていた人は、朝鮮戸籍に登載されることになつた。」と書いてあります。

第5 台湾住民の国籍喪失
1 日本の国内法上台湾人としての法的地位を持った人は,戸籍法の適用を受けておらず,昭和27年8月5日の日華平和条約の発効により日本国籍を失ったのであって,日中共同声明によってもこの解釈に変更が生じることはありません(最高裁大法廷昭和37年12月5日判決最高裁昭和38年4月5日判決及び最高裁昭和58年11月25日判決)。
2 台湾人の国籍喪失に関する最高裁判決の判示内容は,台湾人の国籍喪失は昭和27年8月5日の日華平和条約の発効によるとするものでしたから,平和条約の発効に伴う朝鮮人、台湾人等に関する国籍及び戸籍事務の処理(昭和27年4月19日付の法務府民事局長通達)とは異なる判断をしました。
3 日華平和条約10条は,「この条約の適用上、中華民国の国民には、台湾及び澎湖諸島のすべての住民及び以前にそこの住民であつた者並びにそれらの子孫で、台湾及び澎湖諸島において中華民国が現に施行し、又は今後施行する法令によつて中国の国籍を有するものを含むものとみなす。」と定めています。
4  中国浙江省鎮海県に籍貫(本籍)を有していた中国人は,日華平和条約10条によって中国の国籍を失うものではありません(最高裁昭和34年12月22日判決)。

第6 協定永住者及び特別永住者
1 日韓法的地位協定及び入管特別法に基づく協定永住者
(1)ア 日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待遇に関する日本国と大韓民国との間の協定の実施に伴う出入国管理特別法(昭和40年12月17日法律第146号)(昭和41年1月17日施行。略称は「入管特別法」又は「日韓特別法」でした。)に基づく協定永住制度はおおよそ,昭和46年1月16日までに永住許可の申請をした以下の人に適用されるものでした。
甲:昭和20年8月15日以前から永住許可申請までの間,引き続き日本に居住していた在日韓国人(出生場所は問わない。)
乙:昭和20年8月16日から昭和46年1月16日までの出生時から永住許可申請までの間,引き続き日本に居住していた,甲の実子である在日韓国人(出生場所は日本に限る。)
丙:昭和46年1月17日(日韓法的地位協定の発効日の5年後)以降の出生時から永住許可申請までの間,引き続き日本に居住していた,甲又は乙の実子である在日韓国人(出生場所は日本に限る。)
イ 兵役又は徴用により日本国から離れた時から復員計画に従って帰還するまでの間については,日本国に引き続き居住していたものとして取り扱われます(日韓法的地位協定の合意議事録(a)参照)。
ウ 日韓条約と国内法の解説(昭和41年3月発行の「時の法令」別冊)77頁には「この協定(山中注:日韓法的地位協定)の対象となるためには、国籍、出生時期、続柄、居住歴が客観的要件として必要とされており、また、同条は、永住を希望する旨の意思表示(申請)を一定の期限内に行うべきことを要求している。」と書いてあります。
(2)ア 昭和40年6月22日付の法務大臣声明は以下のとおりです。
 日韓協定の調印に当たり,戦後入国者の取扱いに関し,次のとおり声明する。
 終戦以前から日本国に在留していた大韓民国国民であつても,終戦後平和条約発効までの期間に一時韓国に帰国したことのあるものは,「日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待遇に関する協定」第一条の対象とはならないが,これらの人々については,現在まですでに相当長期にわたり本邦に生活の根拠を築いている事情をも考慮し,協定発効後はわが国におけるその在留を安定させるため好意的な取扱いをすることとし,本大臣において特別に在留を許可するとともに,更に申請があつた場合にはその在留状況等を勘案して,可能な限り入国管理法令による永住を許可する方針をとることとした。
 右に伴い前段に該当しない大韓民国国民である戦後入国者についても,平和条約発効日以前から本邦に在留していたことが確証される場合には,情状によりこれに準ずる措置を講ずることといたしたい。
イ 昭和40年6月22日付の法務大臣声明は,済州島四・三事件(1948年4月3日に南朝鮮の済州島で発生した島民の蜂起事件及びその後の島民虐殺事件),麗水・順天事件(1948年10月19日に発生した軍隊反乱及びその後の民間人殺害事件),朝鮮戦争(1950年6月25日に開始した韓国と北朝鮮の戦争)等から逃避するために来日した在日韓国人を念頭に置いたものです。
(3) 田中常雄法務省入国管理局長は,昭和59年3月2日の衆議院法務委員会において以下の答弁をしています(ナンバリング及び改行を追加しています。)。
① 協定永住者の取り扱いの件、日本人に準ずるように取り扱うべきではないかという点でございますけれども、日韓間の法的地位協定によって定められた協定永住者と申しましても、我が国に戸籍やそれから住民登録をしてない、外国人であるということは間違いない事実でございまして、やはり外国人である以上、すべての外国人と同じように取り扱わねばならないわけでございます。
 法も日本国籍を有しない者は外国人として取り扱うというふうに規定しまして、その在留経緯のいかんということは問わないことにしております。
② 在日韓国人の法的地位に関する日韓間の協定の第五条には、すべての外国人に等しく適用される法律は協定永住者に対しても適用するということが明記され、このことは日韓両国政府間で了解され合っている事項となっていることをここで申し添えたいと思います。
(4)ア 日韓特別法は外国人登録の国籍欄が「韓国」となっている在日韓国人だけを対象としたものであって,日韓法的地位協定及び入管特別法に基づく在留資格は「協定永住」となっていました。
イ 外国人登録の国籍欄が「朝鮮」となっている人の在留資格は「4-1-14」(当時の入管法4条1項14号(本邦で永住しようとする者))等になっていました。
2 25年後までに協議することを定めた日韓法的地位協定2条
(1) 日韓法的地位協定では,在日三世(例えば,昭和46年1月17日以降に生まれた,甲(協定一世)の孫)以降は協定永住制度の対象外でしたから,韓国政府の要請があれば,25年後までに在日三世以降の日本国における居住について協議することになっていました(日韓法的地位協定2条)。
(2) 日韓条約と国内法の解説(昭和41年3月発行の「時の法令」別冊)81頁には,「七 協定永住者の子孫の取扱いに関する協議」に関して以下の記載があります。
 そのような者(山中注:協定永住の対象外となる者)が最初に出現するのは、仮に協定に効力発生後満五年を経過する日の翌日である昭和四六年一月一七日に出生した者(丙に該当)が子(ここでいう協議の対象となる。)を生むのが、その者が二〇歳の成年に達した昭和六六年であるとすると、それは、協定の発効から数えて二五年後ということになる。この約二五年後に日本国で出生する者は、現在の在日韓国人から数えると三世、四世であり、韓国語を解せず韓国の風俗習慣とも隔絶して、全く日本の社会に溶けこんでしまっていることも十分に予測されるところである。
 したがって、これらの者の日本国での居住問題は、第一条で永住を認めることとしたのとは別の見地から考慮を加える必要が生ずるかも知れない。反面、永住を認められている者と日本社会との関係がどうしてもしっくりゆかず、一つの社会問題となっている可能性も絶無ではない。結局、そのような将来に属する問題について、現時点で一律に決定を下してしまうよりも、その間における協定の実施状況、協定永住者の日本国の社会における地位、両国間の関係等種々の要素を考慮して決定すべき問題であり、日本国政府としては、先に述べたように、このような者が最初に出生するところと予測される協定発効二五年までは、韓国政府が要請する場合には、協議を行うこととすることに同意したのである。
 入管特別法に基づく特別永住者
(1)ア 日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法(平成3年5月10日法律第71号)(平成3年11月1日施行。略称は「入管特例法」です。)に基づく特別永住制度は,平和条約国籍離脱者及びその子孫を対象としたものです。
イ 特別永住者制度は,協定永住者としての在日韓国人のほか,日本の降伏文書が調印された昭和20年9月2日以前から永住許可申請までの間,引き続き日本に居住している朝鮮籍及び台湾籍の人にも等しく適用されるものですし,孫以降の世代にも適用されるものです。
ウ 日韓法的地位協定に基づく協議の結果に関する覚書(平成3年1月10日に日韓の外務大臣が署名した文書)に基づき,日本政府は,在日韓国人三世以下の子孫に対し,簡素化した手続で覊束(きそく)的に永住を認める措置をとることとなっていました。
(2) 特別永住者であっても,あらかじめ再入国許可を受けることなく日本から出国(いわゆる単純出国)したり,再入国許可の有効期限が消滅した後も日本国に入国しなかったりした場合,特別永住者資格を喪失します。
(3) 平成21年の入管法改正に基づき,平成24年7月9日,外国人登録証明書が廃止されて,特別永住者証明書が交付されるようになったほか,みなし再入国許可制度が導入されたり,再入国の有効期限の上限が6年となったりしました(出入国在留管理庁HP「特別永住者制度が変わります!」参照)。


第7 国籍欄が「朝鮮」の人の位置づけ
1 国籍欄に「朝鮮」と記載されていても、実際には韓国籍を有している可能性があること
(1) 衆議院議員秋葉賢也君提出特別永住者の扱いに関する質問に対する答弁書(平成22年3月2日付)には以下の記載があります。
    外国人登録では、国籍欄において、「韓国」の記載を国籍の表示として用いているが、「朝鮮」の記載は、「韓国」が国籍として認められなかった時代からの歴史的経緯等により、朝鮮半島出身者を示すものとして用いており、外国人登録の手続の際に韓国籍を証する書類の提出等がなく、市町村の窓口において国籍が確認できなかった者であって朝鮮半島出身者であることが明らかなものについては、国籍欄に「朝鮮」と記載することとしている。すなわち、「朝鮮」の記載は何らの国籍を表示するものとして用いているものではなく、国籍欄に「朝鮮」と記載されていても、実際には韓国籍を有している可能性がある。
(2) 平成27年12月の在留外国人統計から国籍欄の「韓国」と「朝鮮」を区別した人数が発表されていますところ,同月時点の「韓国」籍の総数は45万7772人(うち,永住者は6万6326人,特別永住者は31万1463人)であり,「朝鮮」籍の総数は3万3939人(うち,永住者は477人,特別永住者は3万3281人)でした。
2 在日コリアンの在外国民登録
(1)ア 1948年8月15日に成立した韓国政府は,国籍法(1948年12月20日法律第16号)2条1項1号で「出生したとき、父が大韓民国の国民であった者」は大韓民国の国民とすると規定しました(第2版「在日」の家族法Q&A(平成18年1月31日付)49頁参照)。
イ 統一日報HPの「在日の従北との闘争史~民団結成から韓国戦争勃発まで~⑪」には以下の記載があります。
    韓国政府は1949年8月1日に「在外国民登録令」を公布した。在日同胞は外国人登録に国籍が「朝鮮」になっていたため、民団としては「大韓民国」への変更は当然な課題だった。
    「民団」は「在外国民登録令」公布の1年前から全国の地方本部で「在外国民登録」事業の準備をすすめた。それで、「民団」は、1949年11月に「国民登録委員会」を設置して、実施準備に態勢を整えた。
    1950年2月11日に大統領令で「在外国民登録実施令」が施行されて、「民団」も本格的に事業を始めた。
    「民団」は、「国民登録を怠る者は国民としての資格を喪失する。無国籍人になることを望む以外の者は登録しよう」と宣伝活動を展開した。
(2) 在日コリアン支援ネットの「在日韓国人・朝鮮籍の皆様の「国籍に関連する手続き」(朝鮮籍→韓国籍へのいわゆる「国籍変更」を含む)について」には以下の記載があります。
    ご自身が「大韓民国国民」であると認識されていらっしゃる在日コリアンの方については、韓国の在外国民登録法(재외국민등록법)に基づく在外国民登録の対象者ということになります。
    この場合、日本の住民登録上の国籍欄が現在朝鮮と記載されている在日コリアンの方であっても、所定の手続きにより在外国民登録は可能です。
(3) 韓国の在外国民登録をしていたとしても,日本の役所で「韓国」籍への変更手続きをしていない場合,「韓国」籍を保有しているのに住民票の国籍欄は「朝鮮」籍となっていることになります。
3 日韓基本条約3条及び海外旅行時の取扱い

(1) 日韓基本条約3条
ア 日韓基本条約3条は「大韓民国政府は、国際連合総会決議第百九十五号(III)に明らかに示されているとおりの朝鮮にある唯一の合法的な政府であることが確認される。」と定めています。
イ 参議院議員熊谷裕人君提出日韓基本条約第三条の解釈に関する質問に対する答弁書(令和元年11月8日付)には以下の記載があります。
お尋ねについては、平成二十八年九月十四日の衆議院外務委員会において、大菅岳史外務省大臣官房審議官(当時)が「日韓基本関係条約におきましては、北朝鮮については何ら触れておりません。言いかえますと、一切を北朝鮮につきましては白紙のまま残しているということ」と述べているとおりである。
(2) 海外旅行時の取扱い
・ Korea World Timesの「朝鮮籍と韓国籍の違い 日本では北朝鮮の国籍は存在しない?」には以下の記載があります。
    たとえば、前述のように国籍を証明する方法として各国が発行する旅券(パスポート)がある。「朝鮮民主主義人民共和国旅券」の場合は「在日本朝鮮人総聯合会」(朝鮮総連)が窓口となって発行している。
    本来この旅券さえあればどこの国に行っても国籍を証明できるはずが、日本政府は未承認国である朝鮮民主主義人民共和国旅券を「有効な旅券」として扱っていないためそれも不可となる。
    実際に北朝鮮の海外公民であったとしても、日本国内においては無国籍者という扱いになり、彼らは自身の国籍を証明する手段がないのだ。
(中略)
    朝鮮籍保有者が海外に渡航する場合は、前述の朝鮮総連発行の朝鮮民主主義人民共和国旅券か、法務省が発行する「再入国許可書」を旅券(パスポート)代わりにすることが必要となる。
    これに加えて、外国籍者はその国籍にかかわらず、日本に再入国するための手続きとして事前に法務大臣から再入国許可を受けることが必要である。
4 戦前生まれの場合,「朝鮮」籍でも韓国の戸籍に名前が載っていること
・ 康行政書士事務所HPの「朝鮮籍の人には、韓国の戸籍・家族関係登録事項証明書は出ない?」には以下の記載があります。
    なぜ、朝鮮籍なのに韓国の戸籍に名前が載っていたり家族関係登録事項別証明書が出るのでしょうか?
    これは、日本植民地時代の日本の戸籍が、そのまま韓国の戸籍として使われていたからです。戦前から日本に住んでいる朝鮮籍の人は、日本で生まれたとき日本の役所に出生届けを出しますので、それが戸籍に反映されました。その日本の戸籍が韓国独立後も戸籍謄本としてそのまま使われていたのです。
    ですので、戸籍に載っている情報も、その当時のままということになります。実際に2008年以降に出来た婚姻関係証明書や家族関係証明書にも、実際は結婚していて子もいるのに、その事実が反映されていませんでした。
    日本の外国人登録上の国籍としては「朝鮮」となっていますが、このように韓国の家族事項の証明書は出ますので、韓国は、この人を自国民として認めていることになります。
5 債権者から見た場合の取扱い
・ 債権者から見た場合,戦後生まれの在日コリアンにつて韓国の除籍謄本又は家族関係証明書が存在するのであれば,韓国の在外国民登録及び戸籍整理又は就籍の手続をしているわけですから,朝鮮籍の人についても在日韓国人と全く同じ取扱いになると思います。  


第8 在日韓国人及び台湾住民の軍人軍属に対する補償問題
1 総論
(1) 軍人軍属等の公務上の負傷若しくは疾病又は死亡につき,軍人軍属等であった者及びこれらの者の遺族に対しては,戦傷病者戦没者遺族等援護法(昭和27年4月30日法律第127号)(略称は「援護法」です。)に基づき障害年金等が支給されているものの,日本国籍を失った人,及び戸籍法の適用を受けない人は支給対象外となっています(援護法11条2号及び3号,並びに附則2項)。
(2) 援護法附則2項の趣旨は,援護法制定当時,それまで日本の国内法上で朝鮮人及び台湾人としての法的地位を有していた人の国籍の帰属が分明でなかったことなどから,これらの人々に援護法の適用がないことを明らかにすることにありました(最高裁平成13年4月5日判決)。
2 外交交渉による解決が予定されていたこと
(1) 在日韓国人の場合
・ それまで日本の国内法上で朝鮮人としての法的地位を有していた軍人軍属が援護法の適用から除外されたのは,これらの人々の請求権の処理は平和条約により日本国政府と朝鮮の施政当局との特別取極の主題とされたことから,上記軍人軍属に対する補償問題もまた両政府間の外交交渉によって解決されることが予定されたことに基づくものです(最高裁平成13年4月5日判決)。
(2) 台湾住民の場合
ア 台湾住民である軍人軍属が援護法及び恩給法の適用から除外されたのは、台湾住民の請求権の処理は日本国との平和条約及び日華平和条約により日本国政府と中華民国政府との特別取極の主題とされたことから、台湾住民である軍人軍属に対する補償問題もまた両国政府の外交交渉によって解決されることが予定されたことに基づきます(最高裁平成4年4月28日判決)。
イ 日華平和条約3条の条文は以下のとおりです。
日本国及びその国民の財産で台湾及び澎湖諸島にあるもの並びに日本国及びその国民の請求権(債権を含む。)で台湾及び澎湖諸島における中華民国の当局及びその住民に対するものの処理並びに日本国におけるこれらの当局及び住民の財産並びに日本国及びその国民に対するこれらの当局及び住民の請求権(債権を含む。)の処理は、日本国政府と中華民国政府との間の特別取極の主題とする。国民及び住民という語は、この条約で用いるときはいつでも、法人を含む。
 在日韓国人の軍人軍属に対する補償問題の決着内容
(1) 日韓請求権協定の締結後,日本国政府は,同協定2条2項(a)に該当する在日韓国人の軍人軍属の補償請求については,これらの人々が援護法の適用から除外されている以上,法律上の根拠を有する実体的権利ではないから,同項にいう「財産,権利及び利益」には当たらず,同条3項により大韓民国政府の外交保護権は放棄されており,同協定により解決済みであるとの立場をとり,他方で,大韓民国政府は,在日韓国人戦傷者の補償請求権は日韓請求権協定の解決対象には含まれておらず,同協定2条2項(a)にいう「財産,権利及び利益」に該当するものと解釈しており,同項(a)に該当する在日韓国人の軍人軍属については,大韓民国の国内法による補償の対象から除外しました。
  そのため,これらの在日韓国人の軍人軍属は,その公務上の負傷又は疾病等につき日本国からも大韓民国からも何らの補償もされないまま推移しました。
  その結果として,日本人の軍人軍属と在日韓国人の軍人軍属との間に公務上の負傷又は疾病等に対する補償につき差別状態が生じていたことは否めないものの,このような差別状態は憲法14条1項に違反しません(最高裁平成13年4月5日判決)。
(2) 平和条約国籍離脱者等である戦没者遺族等に対する弔慰金等の支給に関する法律(平成12年6月7日法律第114号)に基づき,我が国は,人道的精神に基づき,在日韓国人ら平和条約国籍離脱者等である戦没者等遺族及び重度戦傷病者遺族に対し,死亡した者1人につき弔慰金260万円を支給し,また,平和条約国籍離脱者等である重度戦傷病者に対し,1人につき見舞金200万円及び重度戦傷病者老後生活設計支援特別給付金200万円を支給しました。
4 台湾住民の軍人軍属に対する補償問題の決着内容
(1) 日華平和条約に基づく特別取極については,その成立をみることなく右条約締結後20年近くを推移するうち,昭和47年9月29日,日本国政府と中華人民共和国政府の共同声明(略称は「日中共同声明」です。)が発せられ,日本国政府は中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認した結果,右特別取極についての協議が行われることは事実上不可能な状態になりました。
 しかし,我が国が台湾住民である軍人軍属に対していかなる措置を講ずべきかは,立法政策に属する問題です(最高裁平成4年4月28日判決)。
(2) 日中共同声明により,中国国家の国名は「中華民国」から「中華人民共和国」に変更されました(光華寮訴訟に関する最高裁平成19年3月27日判決)。
(3) 台湾住民である戦没者の遺族等に対する弔慰金等に関する法律(昭和62年9月29日法律第105号)及び特定弔慰金等の支給の実施に関する法律(昭和63年5月6日法律第31号)に基づき,我が国は,人道的精神に基づき,台湾住民である戦没者の遺族等に対し,戦没者等又は戦傷病者一人につき200万円の弔慰金又は見舞金を支給しました。
5 その他
(1) 衆議院議員山本孝史君提出外国籍旧日本軍人・軍属への補償に関する質問に対する答弁書(平成11年9月10日付)には「お尋ねの大韓民国在住の旧日本軍軍人、軍属への補償に関しては、検討の対象としていない。」と書いてあります。
(2) 衆議院議員横山利秋君提出台湾人元日本兵士の補償問題に関する質問に対する答弁書(昭和53年3月7日付)には「本問題(山中注:台湾人元日本兵士の補償問題)の処理に関係する行政庁は、恩給関係は総理府、援護年金関係及び未払給与関係は厚生省、軍事郵便貯金関係は郵政省、対外事務関係は外務省、財務関係は大蔵省であるが、本問題の特性にかんがみ、これらの府及び各省の連絡会議を開き整合性のある処理を図るよう努めているところである。」と書いてあります。

第9 関連記事その他
1 国立国会図書館リサーチ・ナビ「弔慰金等支給業務の記録◎目次」が載っています。
2 昭和50年当時テレビ放送のニュース番組において在日韓国人の氏名をそのあらかじめ表明した意思に反して日本語読みによって呼称した行為は,在日韓国人の氏名を日本語読みによって呼称する慣用的な方法が是認されていた社会的な状況の下では,違法とはいえません(最高裁昭和63年2月16日判決)。
3 二弁フロンティア2023年4月号に「外国人事件の実務・入門編」が載っています。
4 以下の記事も参照してください。
・ 日韓請求権協定
・ 司法修習生の国籍条項に関する経緯
・ 日本の戦後賠償の金額等
・ 在外財産補償問題
・ 在日韓国・朝鮮人の相続人調査
 相続財産管理人,不在者財産管理人及び代位による相続登記
・ 日本の戦後処理に関する記事の一覧
・ 日本の領海