その他

金融庁の業務停止処分により中央青山監査法人は解散したこと

目次
1 中央青山監査法人に関する従前の経緯等
2 中央青山監査法人はカネボウ粉飾事件に関して業務停止処分を受けたこと等
3 公認会計士・監査法人に対する懲戒処分等の考え方(処分基準)
4 中央青山監査法人の業務停止と弁護士法人の業務停止の違い
5 関連記事その他

1 中央青山監査法人に関する従前の経緯等
(1) 中央青山監査法人は,平成12年4月1日,中央監査法人及び青山監査法人が合併して成立しました。
(2)ア 合併前の中央監査法人は,以下のような,粉飾決算をしていた破たん会社の監査を担当していました。
① 山一證券株式会社
・ 平成9年11月24日,自主廃業の記者会見をしました。
・ 平成10年3月4日,元社長2人が証券取引法違反及び粉飾決算の疑いで,元財務本部長が証券取引法違反の疑いで東京地検に逮捕されました。
・ 平成11年6月2日,東京地裁で破産宣告を受けました。
② 株式会社ヤオハン・ジャパン
・   平成9年12月18日,会社更生法に基づき更生手続開始の申立てをしました。
・ 平成10年11月9日,元社長ら3人が粉飾決算の疑いで静岡県警察に逮捕されました。
・ 平成12年3月2日,更生計画認可決定が出て,株式会社ヤオハンに商号変更しました。
・ 平成14年3月1日,マックスバリュ東海に商号変更しました。
③ 株式会社足利銀行
・ 平成15年3月期決算に関して,金融庁の立ち入り検査が同年9月2日から11月11日まで実施されました。
・   平成15年11月29日に一時国有化(預金保険法102条1項3号に基づく特別危機管理)され,会社更生法に基づき更生手続開始の申立てをしました。
・ 刑事事件としての立件は見送られましたから,逮捕された人は出ませんでした。
・ 平成20年7月1日,足利ホールディングスの傘下に入り,特別危機管理体制から解放されました。
イ 金融庁は,中央青山監査法人に対し,平成17年1月25日,足利銀行の会計監査に関して戒告処分を出しました。

2 中央青山監査法人はカネボウ粉飾事件に関して業務停止処分を受けたこと等
(1) カネボウは平成14年度決算で約1900億円の債務超過を9億2600万円の資産超過に粉飾した有価証券報告書を提出しました。
(2) 平成16年10月28日,カネボウは旧経営陣による粉飾決算の疑いが浮上したことを公表しました。
   ただし,平成13年度及び平成14年度に売上高の水増しや経費の過小計上といった操作で,両年度合計で連結当期損失を100億円~300億円隠したという程度のものでした(外部HPの「カネボウ粉飾決算問題」参照)。
(3) 平成17年4月13日,カネボウ旧経営陣の粉飾決算問題で,不適正な会計処理による粉飾の総額が約2000億円に上っていたことが,同社と監査法人の内部経理調査で明らかになった(外部HPの「カネボウ粉飾決算問題」参照)。
(4) 平成17年6月13日,カネボウは上場廃止となりました。
(5) 平成17年7月30日,東京地検特捜部は,カネボウ元社長ら3人を証券取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)で逮捕しました。
(6)ア 平成17年9月13日,東京地検特捜部は,カネボウ粉飾事件に関与したことを理由に,中央青山監査法人の4人の会計士を証券取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いで逮捕しました。
   逮捕された4人は14年間から29年間にわたってカネボウの監査を担当しており,カネボウが行った最大829億円の粉飾決算が発覚するのを防ぐため,旧経営陣に助言した疑いを持たれていました。
イ 同日,東京地検特捜部は,逮捕した4人の公認会計士の自宅,中央青山監査法人の理事長の自宅など10数か所を家宅捜索しました(外部ブログの「公認会計士さん逮捕」参照)。
ウ カネボウが行っていた粉飾決算は,連結外し(子会社の損失隠し),棚卸資産の過大計上(売上原価の圧縮),繰延税金資産の計上(回収可能性の悪用),押し込み販売(連結外しの利用),各種費用の過少計上といったものでした(外部HPの「粉飾決算の全体像~カネボウを事例とした研究~」参照)。
(7)ア 平成18年5月10日(水),金融庁は,中央青山監査法人に対し,以下の懲戒処分を出しました(金融庁HPの「監査法人及び公認会計士の懲戒処分について」参照)。
① 業務の一部停止は2か月(平成18年7月1日から平成18年8月31日まで)でした。
② 停止する業務は,証券取引法監査及び会社法(商法特例法)監査でした。
   ただし,7月末日までに有価証券報告書を提出しなければならない会社の監査は7月末までできましたし,8月末日までに有価証券報告書を提出しなければならない会社の監査は8月末までできるなどとされていました。
③ 証券取引法違反で逮捕された4人の公認会計士のうち,東京地検に起訴された3人については登録抹消とし,東京地検に起訴されなかった1人については業務停止1年としました。
イ 日本公認会計士協会HPに「中央青山監査法人に対する行政処分について」(平成18年5月11日付)が載っています。
(8) 平成18年8月9日,東京地裁は,1人の会計士について懲役1年6月,執行猶予3年の有罪判決を出し,残り2人の会計士について懲役1年,執行猶予3年の有罪判決を出しました。
(9) 平成18年9月1日,中央青山監査法人は,業務停止期間が終了したことを受けてイメージ刷新を図るため,みすず監査法人に名称変更しました。
   ただし,平成18年4月時点で830社余りいた上場企業の顧客は,この時点で600社程度にまで落ち込んでいました。
(10) 平成18年12月18日,証券取引等監視委員会は,中央青山監査法人が平成17年3月期の決算に関して適正意見を出していた日興コーディアルグループについて,傘下の投資会社の決算上の数字の扱いについて不適切な処理を行い,約180億円の利益を水増ししていたと指摘し,この決算に基づき,日興コーディアルグループが500億円の社債を発行していたことから,内閣総理大臣及び金融庁長官に対し,5億円の追徴金を課すよう勧告しました(証券取引等監視委員会HP「株式会社日興コーディアルグループに係る発行登録追補書類の虚偽記載に係る課徴金納付命令の勧告について」(平成18年12月18日付)参照)。
(11) 平成19年2月20日,みすず監査法人の理事長は,記者会見において監査業務から撤退し,他の大手3法人(新日本監査法人,あずさ監査法人及びトーマツ監査法人)等に監査業務を移管し,社員・職員の移籍を行う方針を発表しました。
(12) 平成19年7月31日,みすず監査法人は監査法人としての業務を終了して解散しました。

3 公認会計士・監査法人に対する懲戒処分等の考え方(処分基準)
(1) 平成26年3月14日以後に適用されている,公認会計士・監査法人に対する懲戒処分等の考え方(処分基準)は,金融庁HPの「「公認会計士・監査法人に対する懲戒処分等の考え方(処分基準)について」(案)に対するパブリックコメントの結果等について」別紙3として掲載されています。
(2) 基本となる処分の量定
ア 社員の故意による虚偽証明・不当証明の場合
   「課徴金(監査報酬の1.5 倍)+契約の新規の締結に関する業務の停止1年+業務改善命令」 又は 「業務停止3 月」となっています。
イ 社員の相当の注意を怠ったことによる虚偽証明・不当証明の場合
   「課徴金(監査報酬の1 倍)+契約の新規の締結に関する業務の停止6 月 +業務改善命令」 又は 「業務停止1 月」となっています。


4 中央青山監査法人の業務停止と弁護士法人の業務停止の違い
(1) 中央青山監査法人の業務停止の場合,①業務停止開始は約52日後であったため顧客に事情説明できましたし,②監査業務以外の業務は禁止されなかったため業務停止期間中も事務所を使用できましたし,③業務停止期間中に有価証券報告書を提出する会社等の監査業務は引き続き担当できました。
(2) 弁護士法人の業務停止の場合,①業務停止の予告期間は一切ないため顧客に全く事情説明ができませんし,②全面的に弁護士業務を禁止されるため業務停止期間中はほとんど事務所を使用できませんし,③業務停止期間中に顧客が対応しなければならない業務も一切担当できません。
   ③につき,例えば,弁護士法人の業務停止期間中に,控訴状又は上告状を提出する必要があったり,上告理由書を提出する必要があったり,再生計画案を提出する必要があったり,和解契約に基づく分割金を送金したりする必要があったりしたとしても,弁護士法人は依頼者のための業務を一切することはできません。

5 関連記事その他
(1)ア 新宿会計士の政治経済評論HP「中央青山監査法人の想い出と「とどめの一撃」」が載っています。
イ 粉飾決算(不正会計)アナリストHP「中央青山監査法人・破綻・解散(かって日本に中央青山監査法人という 日本を代表する監査法人があった)」が載っています。
(2)ア カネボウの名称等の変遷は以下のとおりです。
・ 鐘淵工業(昭和19年2月の新設合併)→鐘淵紡績(昭和21年5月~)→鐘紡(昭和46年12月~)→カネボウ(平成13年1月~)→海岸ベルマネジメント(平成19年6月30日の解散決議~)→平成20年11月11日,トリニティ・インベストメントに清算目的で吸収合併されて消滅
イ 大阪市都島区の大阪拘置所の東隣にあった鐘紡大阪工場は昭和57年に滋賀県長浜市に移転し,その跡地(約15.6ヘクタール)にはベル・パークシティが建設されました(産創館HP「いつまで続く? 大規模工場からマンションへの土地利用転換」参照)。
(3)ア 以下の資料を掲載しています。
・ 粉飾決算事件の調査と捜査(全部真っ黒)→検察月報661号(平成24年4月)からの抜粋
イ 以下の記事も参照してください。
・ 弁護士法人アディーレ法律事務所に対する懲戒処分等
・ 弁護士以外の士業の懲戒制度

公文書管理法の概要

0 公文書管理法(平成21年7月1日法律第66号)1条
この法律は、国及び独立行政法人等の諸活動や歴史的事実の記録である公文書等が、健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として、主権者である国民が主体的に利用し得るものであることにかんがみ、国民主権の理念にのっとり、公文書等の管理に関する基本的事項を定めること等により、行政文書等の適正な管理、歴史公文書等の適切な保存及び利用等を図り、もって行政が適正かつ効率的に運営されるようにするとともに、国及び独立行政法人等の有するその諸活動を現在及び将来の国民に説明する責務が全うされるようにすることを目的とする。

1 公文書管理法の概要は以下のとおりです。
(1) 行政文書の管理
ア 行政機関の長又は職員が行うべき事項
① 作成:経緯も含めた意思決定に至る過程及び事務事業の実績が把握できる文書の作成(公文書管理法4条)
② 整理:行政文書の分類,名称付与,保存期間が満了する日等の設定,行政文書ファイル化,保存期間が満了した時の措置(移管又は廃棄)の設定(レコードスケジュール)(公文書管理法5条及び7条)
③ 保存:保存期間が満了する日まで,適切に保存(公文書管理法6条)
④ 移管又は廃棄:保存期間満了後,レコードスケジュールに従って移管又は廃棄する。廃棄する場合,内閣総理大臣の同意が必要となる(公文書管理法8条)。
イ 行政機関の長は,行政文書の管理状況について,毎年度,内閣総理大臣に報告する(公文書管理法9条)。
ウ 行政機関の長は,公文書管理委員会の調査審議,内閣総理大臣の同意を得て行政文書管理規則を策定する(公文書管理法10条)。
エ 公文書管理に問題がある場合,内閣総理大臣は報告・資料提出要求,実地調査,勧告等ができる(公文書管理法9条及び31条)。
(2) 法人文書の管理
独立行政法人等の文書について,行政機関に準じて適正に管理する(公文書管理法11条ないし13条参照)。
(3) 国立公文書館等における特定歴史公文書等の保存・利用等

ア 特定歴史公文書は原則,永久保存(廃棄には公文書管理委員会の審議、内閣総理大臣の同意が必要)(公文書管理法15条1項)
イ 個人情報の漏えい防止などの適切な保存,目録の公表(公文書管理法15条2項ないし4項及び16条)
ウ 国民は,情報公開法類似の利用請求が可能(公文書管理法16条)。国立公文書館等には,利用促進の努力義務がある(公文書管理法23条)。
エ 保存及び利用状況を毎年度内閣総理大臣に報告する(公文書管理法26条)。
(4) 公文書管理委員会
内閣総理大臣任命により内閣府に設置され,各行政機関の行政文書管理規則,勧告等について調査審議する(公文書管理法28条ないし30条)。

2(1) 公文書管理法では,公文書等は,現用段階の行政文書及び法人文書のほか,非現用となって国立公文書館等に移管された後の特定歴史公文書等を包摂した概念となっています。
(2) 公文書等には,立法機関の文書及び司法機関の文書が含まれていませんから,国の機関におけるすべての公文書を含んだものにはなっていません。
3 公文書管理法は,行政文書が作成又は取得され,それが整理され,保存され,保存期間が満了した時に移管又は廃棄されるという,現用文書の管理全般について定めています。
そして,行政機関情報公開法及び独立行政法人情報公開法が定めている情報開示請求制度,情報提供制度は現用文書の利用の一部と見ることができます。
そのため,公文書管理法は一般法であり,情報公開法は公文書管理法が定めている現用文書である行政文書及び法人文書の利用の一形態を定める特別法としての位置づけとなります(国立公文書館HPの「日本における公文書管理法の制定と今後の課題」参照)。

4(1) 内閣府HPの「公文書管理法の概要」が参考になります。
(2) 公文書管理制度の全体像が,国立公文書館の概要(その2)4頁「公文書管理の全体像」に載っています。
(3) 内閣府HPの「公文書等の管理等の状況」において,平成23年度以降の公文書管理法の運用状況が公表されています。

5 保存期間が満了した行政文書ファイル等は,宮内庁にあっては宮内庁書陵部図書課宮内公文書館に,外務省にあっては外務省大臣官房総務課外交史料館に,その他の行政機関にあっては国立公文書館に移管されます。

6 日弁連は,「公文書管理法案の修正と情報公開法の改正を求める意見書」(平成21年4月24日付の意見書)において,「国会や裁判所の公文書についても、行政文書と同様の管理ができるよう、国会や裁判所の公文書管理法を、この法律の制定後1年以内に別途制定することを義務付けるべきである。」などと主張しました。
しかし,現在でも,国会及び裁判所は公文書管理法の適用対象になっていません。

7 公文書管理法付則13条2項は,「国会及び裁判所の文書の管理の在り方については、この法律の趣旨、国会及び裁判所の地位及び権能等を踏まえ、検討が行われるものとする。」と定めています。