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司法修習生採用選考の健康診断・健康状態判定(AIリライト)

第1 現在は健康診断書を一律に提出しない

1 第79期の健康状態判定

第74期司法修習生の採用選考から,申込者全員が医療機関で健康診断を受け,所定の健康診断票を提出する方式は廃止されている。

令和7年度司法修習生採用選考要項が列挙する第79期の提出書類にも,医療機関の健康診断書は含まれていない。

ただし,健康診断書の一律提出がなくなったことと,健康状態が採用選考の審査対象でなくなったことは同じではない。

第79期では,選考申込みの内容により,修習に耐えられる健康状態かどうかを判定する「健康状態判定」が行われた。

2 令和8年度の申込み

最高裁判所は,令和8年度司法修習生採用選考の申込方法及び申込期間等を令和8年9月中旬頃に掲載する予定であるとしている。

令和8年度の詳細な申込資料が公表されるまでは,第79期の選考要項が全文を確認できる直近の資料である。

もっとも,提出書類,質問項目及び申込方法は年度によって変更されるため,実際の申込みには必ず当該年度の最高裁判所の資料を用いる必要がある。

第2 申込時に申告する健康情報

1 第78期の公開申込書

全文が一般公開されている直近の紙の申込書である第78期司法修習生採用選考申込書は,「不採用事由等の有無」のうち健康状態に関して次の事項を尋ねていた。

① 申込日現在の病気又はけがの有無

② 現在は治療を終了しているが,過去に入院したこと又は半年以上の通院治療を受けたことがある既往歴の有無

③ 病名,現在の症状,治療期間及び治療内容

④ 通院の有無及び通院頻度

⑤ 処方薬の名称及び量

複数の病名がある場合は,2つ目以降を備考欄に記載する書式であった。

2 病名だけでなく修習への影響を記載すること

第78期申込書の公式記載例は,気管支ぜんそくの治療を継続している例について,発作の時期及び程度,通院による改善,吸入薬による対応並びに日常生活への影響を具体的に記載している。

この記載例からは,現在の病気がある場合,病名だけでなく,症状,治療状況及び修習生活への具体的な影響を質問に沿って説明することが想定されていると分かる。

もっとも,記載例は申込書の書き方を示すものであり,個別の病気について採否の結論を示す資料ではない。

3 第79期の申込フォーム

第79期から,採用選考の申込みはオンラインの申込フォームへ移行した。

申込フォームは招待メールを受信した申込者がサインインして利用する仕組みであるため,健康状態に関する全入力項目は一般公開資料だけでは確認できない。

そのため,第78期以前の申込書を見て回答範囲を自己判断するのではなく,第79期以降は当該年度の申込フォーム,入力要領及び採用選考申込手続の手引きを確認する必要がある。

第3 健康状態判定の基準と手続

1 不採用事由

令和7年8月27日付の司法修習生採用選考審査基準は,「心身の故障により修習をすることが困難である者」を不採用事由としている。

同基準は,特定の病名,通院,服薬又は既往歴を不採用事由として列挙していない。

したがって,病気,けが,通院,服薬又は既往歴があることと,心身の故障により修習をすることが困難であることは区別して読む必要がある。

2 面接及び追加調査

第79期の採用選考要項によれば,最高裁判所は,選考申込みの内容により審査及び健康状態判定を行う。

審査又は健康状態判定の結果,必要があると認めた場合には面接を実施する。

また,最高裁判所は,選考申込みの内容について調査を行い,必要に応じて書類の提出等を求める場合がある。

ただし,公表された選考要項は,追加提出を求める書類の種類又は判断の詳細を示していない。

3 虚偽申告及び申込後の変更

第79期の採用選考要項は,選考申込みに当たって虚偽の申告をした場合等には,採用内定後に内定が取り消され,不採用となることがあるとしている。

申込者は,病気,治療,通院又は服薬について質問された場合,自己判断で省略せず,質問文に対応して正確に回答する必要がある。

第79期では,申込期間経過後に申込フォームの入力内容に変更が生じた場合,採用選考申込手続の手引きに従って変更を届け出る取扱いであった。

第4 健康診断票の提出が廃止された経緯

1 第73期までの健康診断票

第73期までは,申込者が医療機関で健康診断を受け,所定の健康診断票を最高裁判所へ提出していた。

第73期の健康診断受検要領によれば,検査項目には,身長,体重,BMI,尿蛋白,尿糖,血圧,聴力,胸部エックス線及び診察所見等が含まれていた。

一定の所見がある場合には再検査,精密検査又は治療結果の報告が求められ,受検費用及び再検査等の費用は申込者の負担とされていた。

21世紀の司法修習を見つける会編『司法試験に受かったら 司法修習って何だろう?』(現代人文社,平成28年)10頁~12頁も,第70期当時,合格発表後に医療機関を予約し,所定の健康診断書を準備する必要があったことを説明している。

2 第74期の変更

第74期から,通常の採用選考申込みに際して医療機関の健康診断票を提出する方式が廃止された。

情報公開・個人情報保護審査委員会令和3年度(最情)答申第37号によれば,最高裁判所は,健康診断票の提出を求めないこととした理由を最終決裁権者へ口頭で説明し,その理由を書いた文書は作成しなかった。

同答申は,第74期の申込書に現在の病気等を記載する欄があり,健康状態を判定するために健康診断票が必ず必要とはいえないことを指摘している。

したがって,公開資料から,健康診断票を廃止した詳細な政策目的又は検討経過を断定することはできない。

3 第75期以降の名称

第74期でも,申込書等の記載により,修習に耐えられる健康状態かどうかを判定していた。

第75期以降,採用選考要項ではこの審査を「健康状態判定」と呼んでおり,第79期でも同じ名称が用いられている。

第5 情報公開文書から分かる範囲

情報公開・個人情報保護審査委員会平成31年度(最情)答申第6号によれば,第71期司法修習生採用選考では,最高裁判所自身による健康診断は実施されていなかった。

一方,修習に耐えられる健康状態ではないことを理由とする不採用者又は虚偽申告を理由とする内定取消者に関する文書の存否は,個人の識別及び権利利益への影響を理由として明らかにされなかった。

したがって,同答申から,健康状態を理由とする不採用又は内定取消しの事例がなかったと断定することはできない。

また,公表資料に個別事例がないことを理由として,特定の症状,治療又は服薬について採否を予測することもできない。

第6 労働者の雇入時健康診断との違い

1 司法修習生の採用の根拠

裁判所の公式説明によれば,司法修習生は国家公務員ではないが,これに準じた身分として取り扱われ,修習専念義務及び秘密保持義務を負う。

司法修習生の採用は,裁判所法66条に基づき,司法試験合格者等の中から最高裁判所が命ずる制度である。

2 雇入時健康診断の目的

労働安全衛生規則43条は,事業者が常時使用する労働者を雇い入れるときに健康診断を行うことを定めている。

ただし,同条は,最高裁判所による司法修習生採用選考の根拠ではない。

新潟労働局の説明によれば,労働安全衛生規則43条の雇入時健康診断は,雇入れ後の適正配置及び健康管理のためのものであり,採用選考時に健康診断を義務付けたり,応募者の採否を決めたりするものではない。

したがって,旧制度における司法修習生の健康診断票を,労働安全衛生規則43条の雇入時健康診断と同じ制度として説明することはできない。

3 一般の採用選考との比較

厚生労働省「採用選考時に配慮すべき事項」は,一般の採用選考について,合理的かつ客観的な必要性が認められない健康診断及び健康診断書の提出は,就職差別につながるおそれがあるとしている。

もっとも,この説明は一般の募集及び採用を念頭に置くものであり,最高裁判所による司法修習生採用選考へ直接適用されるとする公的資料は確認できない。

両者を比較するときは,一般企業による労働者の採用と,裁判所法に基づく司法修習生の採用とを区別する必要がある。

第7 申込者が確認すべき事項

① 申込みをする年度の最高裁判所の採用選考ページ,採用選考要項,申込手続の手引き,入力要領及び申込フォームを確認すること。

② 過去の申込書又はブログ記事だけを見て,提出書類又は回答範囲を決めないこと。

③ 医療機関の健康診断書を通常の提出書類として自発的に添付するのではなく,当該年度の案内又は最高裁判所からの個別の指示に従うこと。

④ 現在の病気等,既往歴,治療,通院又は服薬について質問された場合は,質問文に対応して正確に回答すること。

⑤ 申込み後に申告事項が変わった場合は,当該年度の変更届出方法を確認すること。

⑥ 記載の要否又は提出書類が不明な場合は,最高裁判所事務総局人事局任用課試験係へ確認すること。

第8 関連記事

① 司法修習生の採用選考に関する公式文書

② 司法修習生の採用選考に必要な書類の掲載時期

第9 出典・参考資料

1 法令

① e-Gov法令検索「裁判所法」66条

② e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」43条

2 最高裁判所の採用選考資料

① 最高裁判所「司法修習生採用選考審査基準」(令和7年8月27日)

② 最高裁判所「令和7年度司法修習生採用選考要項」(令和7年9月4日)

③ 最高裁判所「司法修習生採用選考申込書(第78期)」

④ 最高裁判所「司法修習生採用選考申込書(第78期)記載例」

⑤ 最高裁判所「令和8年度司法修習生採用選考のお知らせ」

3 情報公開・制度沿革資料

① 情報公開・個人情報保護審査委員会平成31年度(最情)答申第6号(平成31年4月19日)

② 情報公開・個人情報保護審査委員会令和3年度(最情)答申第37号(令和3年11月22日)

③ 最高裁判所「第73期司法修習生採用選考申込書の記載例及び健康診断受検要領」

4 文献及びウェブ資料

① 21世紀の司法修習を見つける会編『司法試験に受かったら 司法修習って何だろう?』(現代人文社,平成28年)10頁~12頁

② 裁判所「司法修習生」

③ 厚生労働省「採用選考時に配慮すべき事項」

④ 新潟労働局「採用選考時の健康診断について」