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韓国の検察庁は2026年10月2日に廃止される-公訴庁・重大犯罪捜査庁への分割(AI作成)

第1 検察庁廃止の意味とこの記事の基準日

韓国では,2026年10月2日に検察庁が廃止され,起訴を担当する公訴庁と重大犯罪の捜査を担当する重大犯罪捜査庁が発足する。
もっとも,廃止されるのは「検察庁」という組織であって,検事という官職や公訴を提起・維持する機能までなくなるわけではない。

本記事は,韓国の公訴庁法,重大犯罪捜査庁の組織及び運営に関する法律並びに改正刑事訴訟法を中心に,制度改編の内容と施行直前の準備状況を整理するものである。
調査の基準日は2026年9月27日であり,同日現在,これらの主要部分は公布済みであるが,まだ施行されていない。
外国法の条文名及び制度名は,本記事による日本語表記である。

第2 検察庁の機能は二つの官庁へ分けられる

1 公訴庁は起訴と公判を担当する

公訴庁法2条及び3条は,検事の事務を担当する公訴庁,広域公訴庁及び地方公訴庁を置き,それぞれ大法院,高等法院並びに地方法院・家庭法院に対応させる。
現行の検察庁を単に別名へ変更するのではなく,公訴を担う機関として裁判所に対応した組織を新設する仕組みである。

同法4条による検事の主な職務は,①公訴提起の可否の決定及び公訴維持,②令状請求,③犯罪捜査に関する司法警察職員との協議・支援,④裁判所に対する法令の適正な適用の請求,⑤裁判の執行の指揮・監督,⑥国を当事者又は参加人とする訴訟及び行政訴訟への対応である。
ここには,現行刑事訴訟法196条が認める検事自身の犯罪捜査は含まれていない。

2 重大犯罪捜査庁は重大犯罪の捜査を担当する

重大犯罪捜査庁は行政安全部の外局として設けられ,重大犯罪等の捜査を担当する。
同庁法17条は,庁長及び7級以上の捜査官を司法警察官,8級以下の捜査官を司法警察吏として位置付けるため,捜査をする主体は検事ではなく捜査官である。

政府が2026年8月4日に示した組織案では,本庁と6地方庁を置き,総定員を2874人としている。
捜査部門は,腐敗,経済,防衛事業,麻薬,国家保護,サイバー犯罪及び法歪曲罪という7類型を専門的に扱う構成である。

3 捜査と起訴の担当関係

制度改編後の基本構造は,次のとおりである。
重大犯罪捜査庁がすべての刑事事件を捜査するわけではなく,一般事件は警察,法律で定められた重大犯罪等は重大犯罪捜査庁,高位公職者犯罪の一部は高位公職者犯罪捜査処が担当する。

機関主な役割所属検事の直接捜査
公訴庁起訴の可否の決定,公訴維持,令状請求,補充捜査・再捜査の要求等法務部行わない
重大犯罪捜査庁法律で定める重大犯罪等の直接捜査,検事の要求を受けた補充捜査行政安全部検事ではなく捜査官が担当
警察一般の刑事事件の捜査行政安全部の外局である警察庁等検事ではなく司法警察職員が担当
高位公職者犯罪捜査処法律で定める高位公職者犯罪の捜査等独立した捜査機関同処の検事が法律上の権限を担当

第3 刑事手続は2026年10月2日にどう変わるか

1 検事の直接捜査権はなくなる

2026年8月4日公布の改正刑事訴訟法は,検事の捜査を定める196条を削除する。
検事が被疑者を取り調べて証拠を収集する従来の直接捜査は,2026年10月2日以後の制度では予定されていない。

もっとも,検事が捜査結果を受け取って機械的に起訴するだけになるわけではない。
同法195条2項は,検事が人権擁護のため,令状請求,補充捜査要求,及び再捜査要求等の職務を行うと定めている。

2 告訴・告発の提出先は司法警察官になる

改正刑事訴訟法237条は,告訴又は告発を書面又は口頭で司法警察官に行うものとする。
現行法では検事又は司法警察官のいずれにも提出できるため,公訴庁発足後は入口の扱いが変わる。

同法238条は,司法警察官が告訴又は告発を受理した日から3か月以内に捜査を終え,送致の可否を決定するものとする。
これは期限内の起訴や有罪判決を保証する規定ではなく,司法警察官による捜査と送致判断の期限を定める規定である。

3 検事には補充捜査要求と事実関係確認が残る

検事は,送致事件の起訴判断又は公訴維持に必要な場合,司法警察官へ補充捜査を要求できる。
不送致事件についても,法律が定める要件の下で再捜査を要求でき,適正な捜査を期待しにくいときは上級捜査機関又は別の捜査機関を指定できる仕組みが設けられている。

新設される刑事訴訟法245条の13は,検事が起訴判断,再捜査要求の判断又は公訴維持に必要なとき,被疑者,事件関係人,専門家又は司法警察官から意見を聴き,意見書等の提出を受ける方法で事実関係を確認できるとする。
ただし,この手続で得た供述又は資料は公判で証拠として使用できず,従来の直接捜査とは区別されている。

第4 なぜ検察庁を廃止するのか

1 制度上の目的は捜査と起訴の分離である

韓国政府が制度改編の中心に据えたのは,一つの組織が重大事件の捜査と起訴をともに担う構造を改め,両機能を別の官庁へ分けることである。
政府の説明では,権限の集中を緩和し,捜査機関と起訴機関が互いの判断を確認する構造を作ることが検察改革の目的とされている。

この改編は,2025年10月1日公布の政府組織法改正により組織の大枠が決まり,2026年3月24日の公訴庁法及び重大犯罪捜査庁法,2026年8月4日の刑事訴訟法改正によって具体化された。
したがって,「検察庁廃止」という一つの法律だけで完成した制度ではなく,組織法と手続法が段階的に整備されたものである。

2 検察改革は以前から段階的に進められてきた

韓国では,検察が捜査開始,強制捜査の令状請求,起訴及び公判維持を広く担ってきたことから,政治的中立性や権限集中をめぐる議論が長く続いてきた。
2020年の刑事訴訟法等の改正では警察と検察の関係が見直され,2021年には高位公職者犯罪捜査処が発足したが,検察にはなお一定の直接捜査権が残っていた。

今回の改編は,検事の直接捜査に関する刑事訴訟法196条を削除し,組織自体も分ける点で,従来の権限縮小より踏み込んだものである。
ただし,政府資料が述べる制度目的と,政党・報道機関・研究者が述べる政治的評価は同じものではないため,本記事では特定の政治的動機を確定した事実として扱わない。

3 機関分離には反対方向の懸念もある

制度改編に対しては,捜査機関と起訴機関の間で事件記録が往復し,処理が遅れる可能性や,証拠の散逸,責任の所在の不明確化を懸念する見解がある。
他方で,同じ組織が捜査と起訴を一貫して担う場合,捜査開始時の判断を起訴段階で十分に見直せないという批判もある。

結局,制度の評価は,組織を二つに分けたことだけでは決まらない。
補充捜査要求が適切に機能するか,事件記録と証拠が迅速に移転されるか,捜査の適法性を審査する仕組みが働くか,そして公訴庁が捜査機関から独立して起訴判断をできるかが,施行後の検証点となる。

第5 検察官と令状請求の仕組みは残る

1 憲法が令状請求に検事を組み込んでいる

韓国憲法12条3項及び16条は,逮捕・拘束・押収・捜索について,検事の申請により裁判官が発付する令状を要求している。
そのため,法律によって検察庁を廃止しても,検事を刑事手続から全面的に排除することはできず,公訴庁法4条も令状請求を検事の職務として残している。

この点は,日本で検察庁という組織を論じる場合との違いを理解する上でも重要である。
韓国の改編は「検察官の廃止」ではなく,憲法上の検事を公訴庁に置きつつ,捜査主体から起訴・令状請求主体へ役割を絞るものである。

2 組織名の変更と憲法上の用語は一致しない

韓国憲法89条16号は,検察総長の任命を国務会議の審議事項としている。
公訴庁という新しい組織名を採用しても,憲法に残る検事及び検察総長という用語との関係を法律上調整する必要がある。

このため,制度の実質を判断するときは,庁名だけでなく,誰が令状を請求し,誰が捜査し,誰が起訴を決定するかを分けて読む必要がある。
名称が変わることと,権限の所在が変わることは,関連するが同じ問題ではない。

第6 施行直前の準備状況

重大犯罪捜査庁については,本庁と6地方庁の庁舎,職員,情報システムの準備が進められている。
行政安全部は2026年9月21日,本庁・ソウル庁及び地方庁舎の現場点検を行い,10月2日の開庁時に捜査業務の空白が生じないよう必要な執務空間と設備を整えると発表した。

職員の特例任用について,同日の行政安全部発表では,第1次希望申請2376人のうち撤回後の最終申請者が1761人,第2次希望申請者が201人であった。
これらは任用希望の申請人数であり,実際の任用者数とは一致しないため,人員移行が完了したことを示す数値として読むことはできない。

政府は,開庁当初,警察の刑事司法情報システムを重大犯罪捜査庁向けに改修して用い,事件管理の必須機能を先に稼働させ,残る機能を年末までに段階的に整備する方針を示している。
したがって,2026年10月2日は制度の完成日というより,新しい組織が実際の事件処理を始める転換点である。

第7 日本の検察制度と比較するときの注意

日本では,検察官が自ら犯罪を捜査でき,司法警察職員を指揮して補充捜査をさせることもできるため,韓国の新制度とは捜査と起訴の配置が異なる。
韓国の公訴庁を日本の検察庁の単なる名称変更と捉えると,検事の直接捜査権が削除された点を見落とすことになる。

他方で,両国とも検察官が起訴及び公判に関与するため,「捜査と起訴の分離」という言葉だけから全ての接点が断たれると理解するのも正確ではない。
韓国では,公訴庁の検事が令状請求,補充捜査要求,再捜査要求及び限定された事実関係確認を行い,捜査結果を起訴判断へつなぐ。

日本と韓国の裁判官任用,上告審及び国民参加制度を含む全体像については,日本と韓国の司法制度の徹底比較――法曹一元化,上告審の負担及び国民の刑事裁判参加(AI作成)で整理している。
本記事は,そのうち刑事司法の捜査・起訴機関の改編に対象を絞ったものである。

第8 出典・参考資料

1 韓国の法令

①韓国国家法令情報センター「大韓民国憲法」12条3項,16条及び89条16号。
②韓国国家法令情報センター「政府組織法」法律第21065号(2025年10月1日公布。検察庁廃止関係部分は2026年10月2日施行)。
③韓国国家法令情報センター「公訴庁法」法律第21490号(2026年3月24日公布,2026年10月2日施行)2条~4条,附則。
④韓国国家法令情報センター「重大犯罪捜査庁の組織及び運営に関する法律」法律第21491号(2026年3月24日公布,2026年10月2日施行)3条,4条,12条,17条,43条及び44条。
⑤韓国国家法令情報センター「刑事訴訟法」法律第21857号(2026年8月4日公布。記事で扱う改正は2026年10月2日施行)195条,196条,197条の2,237条,238条,245条の11~245条の13。

2 韓国政府の説明・準備資料

①韓国政策ブリーフィング「重大犯罪捜査庁開庁の進行状況に関するブリーフィング」(行政安全部,2026年8月4日)。
②韓国行政安全部「重大犯罪捜査庁開庁準備の現場点検」(2026年9月21日登録)。
③韓国行政安全部「重大犯罪捜査庁,第2次特例任用希望申請201人を受付」(2026年9月21日登録)。

3 日本語の調査資料

国立国会図書館調査及び立法考査局「李在明新政権の発足に伴う政府組織の再編」外国の立法306-1号(2026年1月)24頁~25頁。