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成年後見の市町村長申立てはなぜ遅い?相談から審判までの期間と急ぐ場合の対応(AI作成)

第1 結論――「申立て前」と「申立て後」の期間を分けて考える

市町村長申立てに要する期間を考えるときは,市区町村が相談を受けてから家庭裁判所へ申し立てるまでの準備期間と,家庭裁判所が申立てを受理してから審判に至るまでの審理期間を分ける必要がある。
前者について全国一律の標準期間は公表されておらず,戸籍による親族調査,親族への意向確認,診断書の取得及び庁内の担当者不足などにより長期化し得る。
後者については,最高裁判所の令和7年統計で成年後見関係事件の71.1%が2か月以内,93.8%が4か月以内に終局している。ただし,この数字は市区町村への相談開始からの総期間ではない。
虐待や財産流出のおそれがある緊急事案では,親族調査を申立て後も並行して行う,養護者である親族への意向調査を省略する,審判前の保全処分を併せて検討する,といった対応が公式資料で示されている。

第2 市町村長申立てとは

1 親族等による申立てを期待できない場合の制度である

法定後見は,本人,配偶者又は四親等内の親族等が家庭裁判所へ申し立てるのが基本である。
しかし,身寄りがない,親族がいても申立てを期待できない,虐待をしている親族に申立てを委ねられないなど,本人の権利を守るために市町村の関与が必要な場合がある。
このため,老人福祉法32条,知的障害者福祉法28条及び精神保健福祉法51条の11の2は,各対象者について市町村長による審判請求を認めている。

2 市区町村長申立ては成年後見事件の約4分の1を占める

厚生労働省が最高裁判所の統計を基に整理した資料によれば,令和7年に市区町村長が申し立てた事件は1万139件であり,申立人別総数の23.7%を占めた。
都道府県別の割合は11.4%から45.0%まで開きがあり,制度の入口としての市区町村の役割と運用状況には地域差がある。

第3 市町村長申立てはなぜ遅くなるのか

1 親族調査と人員不足が主要な課題である

厚生労働省の令和4年度調査研究の中間報告では,高齢者部門の回答1,068市町村が挙げた課題として,2親等内親族の存在を調べる戸籍調査に時間を要するとの回答が83.3%,親族からの返答に時間を要するとの回答が65.1%,業務量に比べ担当職員が不足して申立てまでに時間がかかるとの回答が58.2%であった。
本人の生活状況や財産状況の把握,診断書及び本人情報シートの準備,申立ての必要性と類型の検討も必要であるため,必要書類だけを機械的に集めれば直ちに申立てに進めるわけではない。

2 長期間待たされることが常態化しているとの公的指摘もある

第二期成年後見制度利用促進基本計画は,一部の市町村で申立てまで長期間待たされることが常態化し,本人が申立手続を行うのが難しいのに無理に本人申立てをせざるを得ない例があるとの指摘を記載している。
同計画は,市町村長申立ての事務を迅速に処理できる体制の整備と,都道府県による研修・助言を求めている。
したがって,申立てが遅い場合に,個別担当者の対応だけを問題にするのではなく,親族調査の進捗,診断書等の未了事項,庁内決裁及び候補者調整のどこで止まっているかを具体的に確認する必要がある。

第4 相談から審判までの流れと期間

1 相談・情報収集・支援方針の検討

市区町村は,地域包括支援センター,障害者相談支援事業所,医療機関,施設,社会福祉協議会等から相談又は情報提供を受け,本人の判断能力,生活上の課題,財産被害の危険及び他の支援手段の有無を整理する。
この段階は家庭裁判所への申立て前であり,最高裁判所の審理期間統計には含まれない。

2 親族調査・診断書・申立書類の作成

市町村長申立ての標準的な流れでは,戸籍による親族調査,親族の申立意思の確認,後見登記の確認,本人情報シート及び診断書の準備,申立内容と候補者の検討,申立書類の作成を経る。
本人の住所地と実際の居所が異なる場合,費用負担や担当市町村の調整が必要になることもある。
相談者は,担当部署名,受付日,未了資料,次の判断予定日及び緊急性を裏付ける事情を時系列で整理して伝えると,どの段階にあるかを確認しやすい。

3 家庭裁判所への申立て後

法務省は,個別事案により異なるものの,多くの場合は申立てから法定後見開始まで4か月以内と案内している。
最高裁判所の令和7年統計では,後見開始,保佐開始,補助開始及び任意後見監督人選任を合わせた終局事件4万2,674件のうち,2か月以内に終局したものが71.1%,4か月以内が93.8%であった。
鑑定,候補者の適格性調査,本人の陳述聴取等が必要な事件では,それより長くかかることがある。

第5 急ぐ場合に検討すること

1 緊急事案では親族調査を申立て後と並行できる

厚生労働省の公式資料は,虐待等の緊急事案で,2親等内の親族が遠隔地に住むなど戸籍情報の取得が遅れる場合,現に把握できる情報で速やかに申し立て,戸籍調査を並行して行うこともあり得るとしている。
また,2親等内の親族である養護者への意向調査は,虐待等の緊急事案では省略できるとしている。
親族が反対しているという一事だけで市町村長申立てができなくなるわけではなく,本人の権利保護と緊急性を中心に判断される。

2 審判前の保全処分を検討する

審判を待つ間に預金の払戻し,不動産の処分又は虐待者による財産侵害のおそれがある場合は,財産の管理者の選任,後見命令又は職務執行停止等の審判前の保全処分が問題になる。
保全処分には,本案の審判が認められる蓋然性と保全の必要性が必要であり,本案申立書,診断書,ケース記録,通帳の動き,請求書,契約書,関係者の連絡記録等を速やかに整える必要がある。
要件と申立方法は「後見等開始の審判前の保全処分――財産の管理者,後見命令及び職務執行停止」で整理している。
https://yamanaka-bengoshi.jp/2026/09/19/kouken-shinpanmae-hozen-shobun/

3 本人申立てへ安易に切り替えない

市町村長申立ての準備が遅いからといって,本人が手続を理解し,自ら申立意思を形成できるかを確認せずに本人申立てへ切り替えるべきではない。
本人申立ての手続行為能力,説明状況報告書及び市町村長申立てへの切替えは「本人による後見等開始の申立て」で詳しく扱っている。
https://yamanaka-bengoshi.jp/2026/09/19/honnin-moushitate-kouken-kaishi/

第6 費用と相談先

申立費用や後見人等の報酬を本人が負担できない場合は,成年後見制度利用支援事業の対象になることがある。
助成対象,金額,申請時期及び親族後見人を対象にするかは自治体ごとに異なるため,市町村長申立ての担当部署と費用助成の担当部署を分けて確認する。
自治体助成の比較は「成年後見制度利用支援事業とは―後見人報酬・申立費用の自治体助成を比較する」で扱っている。
https://yamanaka-bengoshi.jp/2026/08/28/seinenkoken-riyoshien-jigyo-jichitai-hikaku/

第7 令和8年改正との関係

令和8年法律第45号による成年後見制度の見直し部分は,令和8年10月26日時点で未施行である。
施行後は後見と保佐が廃止され,補助へ一元化されるが,市町村長が必要な権利擁護支援につなぐ入口としての役割が小さくなるわけではない。
今後は,本人が抱える具体的な法的課題に応じて,代理権,同意権・取消権又は特定補助のどれが必要かを申立て前に一層具体化する必要がある。
施行日,自治体の標準的な申立事務,家庭裁判所の新書式及び旧事件の移行運用は,公表後に確認し直す必要がある。

第8 出典・参考資料

老人福祉法32条:https://laws.e-gov.go.jp/law/338AC0000000133
知的障害者福祉法28条:https://laws.e-gov.go.jp/law/335AC0000000037
精神保健及び精神障害者福祉に関する法律51条の11の2:https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0100000123
最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況―令和7年1月~12月―」:https://www.courts.go.jp/assets/20260316koukengaikyou-r7.pdf
法務省「成年後見制度・成年後見登記制度Q&A」Q23:https://www.moj.go.jp/MINJI/a04.html
厚生労働省「成年後見制度における市町村長申立の適切な実施及び成年後見制度利用支援事業の推進に関する調査研究事業」中間報告:https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/001060298.pdf
厚生労働省「市町村長申立ての適切な実施と成年後見制度利用支援事業の推進について」:https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/001112982.pdf
厚生労働省「市町村長申立ての適切な実施と成年後見制度利用支援事業の推進」(令和8年7月21日資料3-1):https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/001725067.pdf