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会社売却後も親会社のシステムを使えるか―移行サービス契約と事業継続(AI作成)

第1 株式を取得しても業務環境がそろうとは限らない

対象会社が売主グループのシステム,経理,人事,調達等を利用している場合,会社を売却した日から同じ環境を使い続けられるかが問題になる。
株式譲渡が完了しても,売主や外部ベンダーに継続提供を求める権利まで当然に取得するわけではない。
実行日から業務を止めないためには,必要な機能と利用権限を調べ,移行が完了するまでの対応を決める必要がある。

1 移行サービス契約で暫定的な支援を定める

移行サービス契約は,TSAと呼ばれ,売却後の移行期間中に提供するサービスの内容・対価・期間等を定める契約である。
売主側が対象会社や買主側へ提供する場合のほか,業務の分離状況に応じて逆方向の提供が必要になることもある。
誰が契約当事者となり,実際に誰が提供し,誰が利用するのかを特定することが出発点となる。

2 売主との合意だけで外部の利用権は増えない

売主が継続利用を認めても,外部ベンダーとの契約がグループ外利用や再提供を認めているとは限らない。
ソフトウェア,クラウド,回線,データベース等について,利用主体・利用範囲・再委託・名義変更の条件を確認する。
必要ならベンダーの承諾や新契約を準備し,その取得をTSAやM&A契約の条件とどう結び付けるかを検討する。

第2 サービスを業務単位で具体化する

1 「従来どおり」の中身を一覧にする

「従来どおり支援する」という表現だけでは,担当者が退職したときや障害が起きたときに対応範囲が分からなくなる。
サービスごとに,対象業務,利用者,処理件数等の前提,担当窓口,必要なデータ,提供時間,除外事項を整理する。
デュー・ディリジェンスには,実際のシステム運用や経理・人事の担当者も関与させ,契約一覧だけでは見えない依存関係を確かめることが望ましい。

例えば,請求書発行を継続するなら,システムへのログイン権限だけでなく,顧客マスター,締日処理,承認権限,入金消込,問い合わせ対応まで確認する。
これは業務の切分けの例であり,すべての案件で同じ支援が必要になるわけではない。

2 品質・費用・変更を扱う

処理の締切,障害時の連絡,復旧対応,保守時間など,事業継続に必要な水準を具体化する。
料金については,固定額か実費か,利用増加時の追加費用,外部ベンダー費用,税負担,請求と支払の時期を定める。
売却後に業務量や仕様が変わる場合の変更手続と,追加費用の承認者も確認する。

第3 期間・延長・移行完了の条件を決める

1 サービスごとに終了時期を設ける

会計,給与,販売管理などの移行に要する期間は同じとは限らない。
サービスごとの開始日・終了日と,買主側が準備すべき環境・人員・データを定める。
新システムの稼働,データ照合,試験運用など,終了の判断に必要な作業を工程に落とし込むことが重要である。

2 遅延した場合の延長を当然視しない

移行が間に合わない場合に,売主が無期限に提供を続ける義務を負うとは限らない。
延長の可否,申出期限,延長できる回数・期間,料金,外部契約の継続条件をあらかじめ検討する。
一部のサービスだけ終了させる場合の手続と,関連サービスへの影響も確認する。

第4 データ・秘密保持・責任分担を整える

サービス提供のために顧客情報や従業員情報を取り扱う場合は,アクセス権限,利用目的,委託・再委託,安全管理,事故時の連絡等を個別に確認する。
TSAを締結したというだけで,個人情報や秘密情報の取扱いがすべて適法になるわけではない。
終了時には,必要なデータの引渡しと,保持・返却・削除の範囲,バックアップの扱いを決める。

損害が生じた場合については,対象となる義務,責任の範囲,上限,例外,第三者への対応を定める。
M&A契約の表明保証や補償とTSAの責任条項を並べ,同じ損失の二重回収や,どちらでも扱えない空白が生じないかを確認することが望ましい。

実行日前にTSAを締結することを前提条件にする場合は,「契約書を締結したこと」と「必要なサービスを実行日から提供できること」を分けて確認する。
前提条件の扱いは,M&Aの契約締結後に実行できないとき―前提条件・延期・解除・条件放棄(AI作成)を参照されたい。

第5 参考資料

塩野誠・宮下和昌『事業担当者のための逆引きビジネス法務ハンドブック M&A契約書式編』(東洋経済新報社,2018年)157~158頁は,移行サービス契約を別途締結する設計を扱っている。
大和総研の2026年3月31日付けレポートは,買手とFAの立場から,必要なサービスの把握と条件調整に関する課題を論じている。
これらは実務上の契約設計の参考資料であり,すべてのM&AでTSA締結を義務付ける法令や裁判例ではない。

– 大和総研「M&Aにおける移行サービス契約(TSA)締結に向けた課題と対策」原文
– 東洋経済新報社の書籍紹介