第1 この記事の対象と結論
本記事は,令和元年司法試験の租税法第1問を対象に,低額譲渡の収益・費用の両側と,賃貸建物の災害損失を整理するものである。
法務省の公式資料を実読して独自に抽出した評価項目であり,法務省の公式採点基準,配点又は得点予測を示すものではない。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 令和元年司法試験・租税法第1問(設問1~4) |
| 公式問題文 | 法務省の問題PDF6~7頁 |
| 答案の基準時 | 令和元年の試験実施時。事実上の取引は平成29年3月,損害は平成30年3月 |
| 出題の趣旨 | 実読済み:PDF24頁「租税法・第1問」~26頁第2問直前 |
| 採点実感 | 実読済み:PDF8~9頁の第1問(第2問直前まで) |
| 中心事項 | 低額譲渡・過大退職給与・不動産所得の資産損失・雑損控除 |
| 評価項目 | 全26項目,重み5は11項目,重み合計107 |
| 主要判例 | 南西通商事件・最高裁平成7年12月19日第三小法廷判決(原文全2頁確認) |
| 模範答案 | 2357字(改行・見出しを含むPython len。上限2500字) |
| 後発法 | 試験後の改正・判例を当時の答案根拠へ取り込まない |
| 確認日 | 令和8年10月19日(日本時間) |
採用した結論は,A社の益金額が4000万円,損金算入額が原価3000万円,差額1000万円は過大退職給与として損金不算入,乙の雑損控除額が7万円である。
評価表は第4,答案本文は第5の枠内,根拠と確認範囲は第7に示す。
第2 評価項目の示し方と重み付けの基準
1 評価項目の示し方
評価項目は答案を読んで充足を判断できる命題に分け,必須,高評価,負例を重みとは別に示している。
「記載なし」は本問に関する記載を読んだ上で,当該命題の明示がないことを意味する。
給与と寄附金の重複適用という負例は,公開番号9の給与性の裏返しなので,同番号にまとめた。
内部の27評価単位と公開26項目はこの統合により異なり,公開表の数と重み合計に従って表示する。
2 5段階の重み付けの基準
| 重み | 判断基準 |
|---|---|
| 5 | 採点実感が評価の分かれ目とした事項,又は答案の骨格そのもの |
| 4 | 出題の趣旨が検討を求め,採点実感も取り上げた事項(高く評価した・多数の答案の不足を指摘した) |
| 3 | どちらか一方が明示する中核の理由付け |
| 2 | 一方が軽い表現で触れる補強,又は典型的な誤り |
| 1 | 一方が控えめに触れるだけの事項 |
段階ごとの件数は割り当てていない。
項目数や重み合計から,公式得点,合格可能性又は科目の難易度を推計するものではない。
第3 本問の概要
1 問題文と事実関係
A社の代表取締役甲の長男乙は,大学卒業後3年間,同社で経理事務に従事し,月給30万円を受けていた。
甲と別生計の乙は自主退職し,規程に基づく退職金を受領したほか,取締役会決議を経て時価4000万円の別荘を帳簿価額3000万円で取得した。
乙は別荘を丙に月10万円で貸し,翌年の暴風雪で建物に40万円の損失が生じた。
被災直前の建物時価・簿価はいずれも800万円で,保険契約と災害関連支出はなく,総所得金額等は330万円である。
問題の正確な文言と参照政令は,公式問題PDFの6~7頁を参照されたい。
2 設問が求めること
| 設問 | 立場・対象 | 指定・除外 | 到達点 |
|---|---|---|---|
| 1 | A社・益金 | 関連条文と趣旨を説明 | 益金となる金額と理由 |
| 2 | A社・損金 | 原価と利益供与を分離 | 損金算入額と制限の理由 |
| 3 | 乙・平成30年所得税 | 総所得等330万円,関連支出なし | 必要経費と雑損控除の関係,控除額 |
| 4 | 一般的制度比較 | 関係条文を示して簡潔に | 損失の一般規定の有無と理由 |
いずれも制度・事例の中立的説明を求める問題である。
乙の取得時所得,源泉徴収,贈与税,消費税,会社法上の責任及び具体的な争訟手続は答案の対象外としている。
第4 評価項目と重み
1 設問1
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 【必須】法人税法22条2項が有償・無償の資産譲渡の収益を益金とすることを示す。 | 5 | PDF24頁・租税法・第1問・設問1:法人税法第22条第2項 | PDF8頁・租税法・第1問・設問1:無償による資産の譲渡 |
| 2 | 【必須】無償譲渡でも収益を認識する理由を,通常の対価で取引した法人との税負担の公平から説明する。 | 5 | PDF24頁・租税法・第1問・設問1:その趣旨ないしは理由 | PDF8頁・租税法・第1問・設問1:誰との対比における公平か |
| 3 | 【必須】低額譲渡が22条2項の有償による資産譲渡に当たると分類する。 | 3 | PDF24頁・租税法・第1問・設問1:いずれに該当するか | 記載なし(本問関連範囲を実読) |
| 4 | 【高評価】低額譲渡で現実の対価だけを収益とすると無償譲渡との公平を欠くことを論理的に説明する。 | 5 | PDF24頁・租税法・第1問・設問1:資産の時価まで益金に算入される旨とその理由 | PDF8頁・租税法・第1問・設問1:理由を趣旨との関係から論理的に |
| 5 | 【必須】時価4000万円を益金額として示し,純利益1000万円と区別する。 | 4 | PDF25頁・租税法・第1問・設問1:益金となる金額 | PDF8頁・租税法・第1問・設問1:資産の時価まで益金の額に |
| 6 | 【負例】22条4項の公正処理基準自体を,低額譲渡の時価益金算入の根拠にしない。 | 2 | 記載なし(本問関連範囲を実読) | PDF8頁・租税法・第1問・設問1:会計処理基準 |
| 26 | 【高評価】低額譲渡の収益認識につき南西通商事件最高裁判決との関係を短く示す。 | 3 | PDF25頁・租税法・第1問・設問1:最判平成7年12月19日民集49巻10号3121頁 | PDF9頁・租税法・第1問・設問1:重要判例である南西通商事件 |
2 設問2
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 7 | 【必須】22条3項1号の原価,2号の費用,3号の損失を収益との対応関係で区別し,費用収益対応を説明する。 | 5 | PDF25頁・租税法・第1問・設問2:費用収益対応の原則 | PDF8頁・租税法・第1問・設問2:収益と間接的・期間的に対応する |
| 8 | 【必須】帳簿価額3000万円を譲渡収益に直接・個別に対応する原価として1号で損金算入し,損失としない。 | 5 | PDF25頁・租税法・第1問・設問2:直接的・個別的に対応する費用 | PDF8頁・租税法・第1問・設問2:第1号に規定する |
| 9 | 【必須】時価と対価の差額1000万円の経済的利益を退職給与と認定し,22条3項2号の費用に位置付ける。 給与に寄附金規定を重複適用しない。 | 4 | PDF25頁・租税法・第1問・設問2:経済的利益は退職金であること | PDF8頁・租税法・第1問・設問2:退職給与として資産を低額譲渡/PDF9頁:給与と寄附金の重複適用を否定 |
| 10 | 【必須】退職給与にも別段の定めである36条が適用され,過大部分だけが損金不算入となることを示す。 | 4 | PDF25頁・租税法・第1問・設問2:退職金を含む給与 | PDF8頁・租税法・第1問・設問2:法人税法第36条等 |
| 11 | 【必須】36条の趣旨を,関係者への過大給与による法人所得の不当な減少の防止として説明する。 | 4 | PDF25頁・租税法・第1問・設問2:その規定の趣旨について説明 | PDF8頁・租税法・第1問・設問2:条文の趣旨について正しく |
| 12 | 【必須】乙が役員甲の親族に当たり,別生計でも令72条1号の特殊関係使用人となることを示す。 | 3 | PDF25頁・租税法・第1問・設問2:法人税法施行令第72条第1号 | 記載なし(本問関連範囲を実読) |
| 13 | 【必須】令72条の2の勤続期間,退職事情,同種同規模法人の支給状況等の過大性判断基準を示す。 | 3 | PDF25頁・租税法・第1問・設問2:第72条の2 | 記載なし(本問関連範囲を実読) |
| 14 | 【必須】3年の経理事務,月30万円,自主退職,規程退職金の別支給,生活支援目的を評価して過大性を論じる。 | 4 | PDF25頁・租税法・第1問・設問2:本問の事案への当てはめ | PDF8頁・租税法・第1問・設問2:事実関係に即しつつ |
| 15 | 【必須】損金不算入額が利益供与部分の1000万円であり,3000万円又は4000万円ではないと示す。 | 5 | PDF25頁・租税法・第1問・設問2:経済的利益1000万円 | PDF8頁・租税法・第1問・設問2:1000万円であると正しく |
3 設問3
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 16 | 【必須】所得税法26条1項を示し,本件賃貸から生じる所得を不動産所得とする。 | 3 | PDF25頁・租税法・第1問・設問3:所得税法第26条第1項 | 記載なし(本問関連範囲を実読) |
| 17 | 【必須】51条1項の事業と4項の業務を区別し,社会通念上の規模等の基準と一棟賃貸の事実から業務用資産とする。 | 5 | PDF25頁・租税法・第1問・設問3:判断基準を示し | PDF9頁・租税法・第1問・設問3:更に少なかった |
| 18 | 【必須】51条4項の括弧書きにより,必要経費算入の判定に雑損控除の適用可否を先行して検討する。 | 5 | PDF25頁・租税法・第1問・設問3:第72条第1項(雑損控除)に規定するものを除く | PDF9頁・租税法・第1問・設問3:必要経費の算入と雑損控除のいずれが適用されるか |
| 19 | 【必須】別荘という名称だけで判断せず,乙の賃貸収益目的を評価して令178条2号・62条の除外に当たらないとする。 | 5 | PDF25頁・租税法・第1問・設問3:雑損控除の適用要件とその関連法令 | PDF9頁・租税法・第1問・設問3:生活に通常必要でない資産 |
| 20 | 【必須】令206条3項を示し,被災直前の価額・取得費相当額800万円と5%の損失から40万円を算定する。 | 4 | PDF25頁・租税法・第1問・設問3:雑損控除金額の算定方法 | PDF9頁・租税法・第1問・設問3:正しい条文を解答した答案 |
| 21 | 【必須】補填なし・災害関連支出なしを前提に72条1項1号を適用し,40万円-330万円×10%=7万円を示す。 | 5 | PDF25頁・租税法・第1問・設問3:雑損控除の具体的な金額 | PDF9頁・租税法・第1問・設問3:正しい金額を解答した答案 |
| 22 | 【必須】雑損控除を適用するため51条4項の必要経費算入はないと結論付け,重複控除をしない。 | 4 | PDF25頁・租税法・第1問・設問3:資産損失の必要経費算入の規定の適用はない | PDF9頁・租税法・第1問・設問3:二つの側面から解答 |
4 設問4
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 23 | 【必須】法人税法22条3項3号には一般的な損失損金算入規定があるが所得税法37条1項にはないと比較する。 | 5 | PDF26頁・租税法・第1問・設問4:所得税法第37条第1項には損失が必要経費であるとの規定はなく | PDF9頁・租税法・第1問・設問4:条文及び差異 |
| 24 | 【必須】所得税法51条1項・2項が必要経費となる資産損失等を限定的に規定することを指摘する。 | 3 | PDF26頁・租税法・第1問・設問4:同法第51条第1項及び第2項 | 記載なし(本問関連範囲を実読) |
| 25 | 【必須】自然人は所得稼得活動と消費活動の双方を行うが法人には消費活動がないことを差異の理由として説明する。 | 4 | PDF26頁・租税法・第1問・設問4:自然人は所得稼得活動のほかに消費活動も行っている | PDF9頁・租税法・第1問・設問4:差異が生じる理由 |
5 重みの分布
重み1=0件,2=1件,3=6件,4=8件,5=11件,合計26項目,重み合計107である。
重み5は,番号1,番号2,番号4,番号7,番号8,番号15,番号17,番号18,番号19,番号21,番号23である。
無償譲渡と低額譲渡の収益認識の理由,原価・費用の区別,過大給与の対象額,業務用資産と雑損控除の接続,所有目的の評価,控除額及び損失の一般規定の比較が,答案の骨格を構成する。
第5 模範解答
1 答案の前提と表記
試験時点の法状態と,問題文で指定された取引・損害時点を前提とする。
南西通商事件の最高裁判決は低額譲渡の益金認識について参照し,本件の使用人への退職給与は法人税法36条により別途判断する。
判例の事案の役員給与規制を本問へ直接移すものではない。
以下の枠内だけが模範答案で,前提と解説は字数に含めない。
2 答案
1 設問1
(1) 法人税法22条2項は,有償・無償の資産譲渡による収益を益金に算入する。
無償譲渡も収益の発生原因としたのは,通常の対価で取引した法人との税負担の公平を図るため,反対給付がなくても譲渡時の適正な価額に相当する収益を認識する趣旨である。
(2) 低額譲渡は同項の「有償による資産の譲渡」に当たる。
この場合に現実の対価だけを収益とすると,時価まで収益を認識する無償譲渡との公平を欠く。
したがって,同項の趣旨から,対価と時価との差額も収益に含まれる(最高裁平成7年12月19日判決同旨)。
本件では乙が借入金で代金3000万円を支払っており,有償譲渡である。
地価高騰後の時価は4000万円なので,差額1000万円を含む4000万円を,当該事業年度の益金に算入する。
簿価と代金が同額でも,時価による収益認識は妨げられない。
2 設問2
(1) 法人税法22条3項は,別段の定めがある場合を除き,収益に直接的・個別的に対応する原価を1号,間接的・期間的に対応する販売費,一般管理費その他の費用を2号として損金に算入する。
原価・費用は当該年度の収益の獲得に貢献するので,費用収益対応の原則により損金算入される。
収益との対応関係のない3号の損失とは区別される。
本件不動産の帳簿価額3000万円は,その譲渡による収益に直接・個別に対応する原価である。
低額譲渡による3号の損失ではなく,これを制限する別段の定めもないため,1号により損金に算入する。
(2) 時価と対価の差額1000万円は乙に供与された経済的利益である。
甲の生活支援の動機から無償供与とも考えられるが,A社は取締役会決議を経て,使用人乙の退職日に,その退職に際して利益を供与した。
従前の勤務と退職を原因とする追加退職給与と認められ,規程退職金の別支給も給与性を妨げない。
退職給与は従前の勤務に報いる費用として収益獲得に貢献し,2号に該当するが,36条という別段の定めを検討する。
36条は,役員と特殊の関係にある使用人に対する給与のうち,不相当に高額な部分を損金不算入とする。
関係者への過大な給与支給による法人所得の不当な減少を防ぎ,税負担の公平を図る趣旨である。
給与には経済的利益も含まれる。
乙は代表取締役甲の長男であり,施行令72条1号の役員の親族に該当する。
生計を別にしていることは同号の適用を妨げない。
過大性は,令72条の2により,勤続期間,退職事情,同種同規模法人の退職給与の支給状況等に照らして判断する。
乙は入社後3年間経理事務を担当し,月給は30万円で,自ら退職を希望した。
規程に基づく退職金は別に支給されている。
甲は乙の将来の生活を心配して利益を与えたのであり,追加利益は月給約33か月分に上る。
同種同規模法人の具体的支給額は不明だが,短い勤続期間,経理担当という職務,自主退職及び規程退職金の別支給に照らし,この巨額の追加支給を相当とする事情はない。
生活支援目的も併せれば,追加の1000万円全額が不相当に高額である。
よって1000万円は損金不算入となり,本件譲渡に関する損金算入額は原価3000万円である。
この利益は勤務との対価関係を認める退職給与であり,過大だからといって,無償の利益供与を対象とする37条の寄附金と重ねて扱うことはできない。
3 設問3
(1) 不動産の貸付けによる所得は所得税法26条1項の不動産所得である。
資産損失につき,51条1項は事業用固定資産等,同条4項は不動産所得等を生ずべき業務用資産を対象とする。
事業該当性は,規模,収益状況,人的・物的設備等から,社会通念上事業といえるかで判断する。
乙は継続して賃貸するものの,戸建て一棟を月10万円で貸すにとどまり,他にみるべき財産もなく,相応の人的・物的設備を備えて広く貸付けを営む事情もない。
社会通念上の事業的規模には至らず,本件建物は業務用資産である。
(2) 51条4項は所得金額を限度に損失の必要経費算入を認めるが,72条1項の雑損控除対象の損失を除く。
そこで,必要経費となるかを決めるため,まず雑損控除の適用を検討する。
暴風雪は2条1項27号,令9条の災害である。
乙所有の建物は事業用資産ではなく,70条3項の被災事業用資産による除外もない。
本件はリゾート地の別荘である。
しかし,乙は賃貸収入を得る目的で所有して丙に貸しており,自己や生計一親族の趣味・保養目的で所有するものではない。
A社の福利厚生施設であったことではなく,被災時の乙の所有目的によって判定すべきである。
令178条2号の生活に通常必要でない資産には該当せず,62条1項による除外もない。
したがって72条1項の雑損控除を適用し,51条4項の必要経費には算入しない。
控除しきれない残額を必要経費に回すこともできない。
(3) 令206条3項により,被災直前の価額及び取得費相当額はいずれも800万円で,いずれを基礎としても,損失額は800万円×5%=40万円となる。
保険金による補填はなく,災害関連支出もない。
72条1項1号により,40万円から総所得金額等330万円の10分の1の33万円を引いた7万円を,同年分の総所得金額等から控除する。
4 設問4
法人税法22条3項3号は,別段の定めを除き,資本等取引以外の取引に係る損失を一般的に損金とする。
これに対し,所得税法37条1項は収入を得るための費用等を必要経費とし,損失一般の必要経費算入を規定せず,51条1項・2項等が,対象となる資産損失等を限定して必要経費算入を認めている。
法人には消費活動がないのに対し,自然人は所得稼得活動と消費活動の双方を行うため,生活上の損失との区別を要することによる。
以上
3 出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説
(1) 答案と評価項目の対応
| 番号 | 答案の対応箇所と適用条件 |
|---|---|
| 1 | 設問1(1)~(2):法人税法22条2項が有償・無償の資産譲渡の収益を益金とすることを示す。 |
| 2 | 設問1(1)~(2):無償譲渡でも収益を認識する理由を,通常の対価で取引した法人との税負担の公平から説明する。 |
| 4 | 設問1(1)~(2):低額譲渡で現実の対価だけを収益とすると無償譲渡との公平を欠くことを論理的に説明する。 |
| 5 | 設問1(1)~(2):時価4000万円を益金額として示し,純利益1000万円と区別する。 |
| 7 | 設問2(1)~(2):22条3項1号の原価,2号の費用,3号の損失を収益との対応関係で区別し,費用収益対応を説明する。 |
| 8 | 設問2(1)~(2):帳簿価額3000万円を譲渡収益に直接・個別に対応する原価として1号で損金算入し,損失としない。 |
| 9 | 設問2(1)~(2):時価と対価の差額1000万円の経済的利益を退職給与と認定し,22条3項2号の費用に位置付ける。 給与に寄附金規定を重複適用しない。 |
| 10 | 設問2(1)~(2):退職給与にも別段の定めである36条が適用され,過大部分だけが損金不算入となることを示す。 |
| 11 | 設問2(1)~(2):36条の趣旨を,関係者への過大給与による法人所得の不当な減少の防止として説明する。 |
| 14 | 設問2(1)~(2):3年の経理事務,月30万円,自主退職,規程退職金の別支給,生活支援目的を評価して過大性を論じる。 |
| 15 | 設問2(1)~(2):損金不算入額が利益供与部分の1000万円であり,3000万円又は4000万円ではないと示す。 |
| 17 | 設問3(1)~(3):51条1項の事業と4項の業務を区別し,社会通念上の規模等の基準と一棟賃貸の事実から業務用資産とする。 |
| 18 | 設問3(1)~(3):51条4項の括弧書きにより,必要経費算入の判定に雑損控除の適用可否を先行して検討する。 |
| 19 | 設問3(1)~(3):別荘という名称だけで判断せず,乙の賃貸収益目的を評価して令178条2号・62条の除外に当たらないとする。 |
| 20 | 設問3(1)~(3):令206条3項を示し,被災直前の価額・取得費相当額800万円と5%の損失から40万円を算定する。 |
| 21 | 設問3(1)~(3):補填なし・災害関連支出なしを前提に72条1項1号を適用し,40万円-330万円×10%=7万円を示す。 |
| 22 | 設問3(1)~(3):雑損控除を適用するため51条4項の必要経費算入はないと結論付け,重複控除をしない。 |
| 23 | 設問4:法人税法22条3項3号には一般的な損失損金算入規定があるが所得税法37条1項にはないと比較する。 |
| 25 | 設問4:自然人は所得稼得活動と消費活動の双方を行うが法人には消費活動がないことを差異の理由として説明する。 |
重み3以下の番号3・6・12・13・16・24・26は,それぞれ低額譲渡の分類,誤った公正処理基準への依拠の回避,特殊関係・過大性の基準,不動産所得の根拠,限定規定,判例との関係として答案又は以下の解説に対応する。
(2) 低額譲渡と過大退職給与
益金の時価認識と,損金の性質決定は別の判断である。
受取額が3000万円でも益金は4000万円となり,簿価3000万円は収益に直接対応する原価である。
差額1000万円は給与という対価性のある費用であり,36条の過大性の問題になる。
寄附金の限度額規制を重ねて「いずれにせよ全額不算入」とする説明は,制度の違いを失う。
また,22条4項の公正処理基準だけを時価認識の根拠にすることは,採点実感が誤りとして挙げている。
(3) 必要経費と雑損控除
雑損控除の計算へ直行せず,まず不動産所得,事業か業務か,51条4項の括弧書きを順に確認する。
別荘という物の名称と,乙が所有する目的は異なる。
乙は賃貸収入のため所有しているので,趣味・保養目的の資産と同じには扱えない。
災害関連支出がない本件では,5万円の足切りを使う計算ではなく,総所得金額等の10%を引く。
雑損控除7万円に加えて,40万円又は残額33万円を必要経費にすることもできない。
(4) 答案の弱点と扱わなかった事項
過大性は勤続期間だけで機械的に決まるものではなく,問題文の給与額,職務,規程退職金の別支給,退職事情及び利益供与の動機を合わせて判断している。
同種同規模法人の具体的な退職金資料は問題文にない。
法人税法36条の趣旨の表現と,個別事実の評価は本記事の説明である。
試験後の法改正の網羅,乙の取得原価・源泉徴収及び訴訟上の救済は,設問の射程から扱わない。
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第7 出典及び確認状態
1 公式資料
① 令和元年司法試験論文式試験問題・選択科目(法務省,PDF6~7頁)
② 令和元年司法試験論文式試験出題の趣旨(法務省,PDF24頁の租税法第1問から26頁第2問直前)
③ 令和元年司法試験の採点実感・選択科目(法務省,PDF8~9頁第1問(第2問直前まで))
2 法令
① 法人税法の試験時点版(22条,36条,37条)
② 所得税法の試験時点版(26条,37条,51条,62条,70条,72条)
③ 問題に掲げられた所得税法施行令9条,178条,206条3項,法人税法施行令72条,72条の2
3 裁判例
南西通商事件・最高裁平成7年12月19日第三小法廷判決の原文(民集49巻10号3121頁,PDF全2頁)を確認した。
原文では低額譲渡を有償譲渡とし,無償譲渡との公平から時価との差額を収益に含める論理を確認できる。
4 確認状態
問題文と本問に関する両公式資料は実読済みである。
判決原文と試験時点の法令本文による確認,公式資料の記載,本記事の事実評価とを区別している。
平成29年3月31日当日のe-Gov法令データは取得できず,翌4月1日版と試験時点版の関連条文を照合した。
これらの版の一致だけで,当日版と経過措置の確認を代替したとは扱わない。
下級審原文とその部分の判示は未確認であり,本答案は確認できた最高裁の低額譲渡規範と,使用人給与の本問条文に基づいている。