第1 この記事の対象と結論
本記事は,令和元年司法試験倒産法第1問について,法務省の出題の趣旨及び採点実感から評価項目を抽出し,模範解答を示すものである。
租税の第三者納付,請負人の破産における履行選択・解除,廃材撤去費及び保証人の弁済を,権利の発生原因と手続開始時に分けて検討する。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 令和元年司法試験・倒産法第1問 |
| 評価項目 | 20項目(重み5:7項目) |
| 重み合計 | 83。本記事独自の整理であり,公式の配点ではない。 |
| 答案の字数 | 2347字(見出しを含み空白・改行を除く)。2500字以内。 |
| 基準時 | 令和元年5月15日の試験実施時。当時の法令・判例を基準とする。 |
| 資料の状態 | 出題の趣旨・採点実感の本問関連範囲を実読・照合した。確認日は令和8年10月19日。 |
以下の答案は,Bによる原租税債権への代位を否定し,撤去費についても財団性を否定する構成を採る。
これらは公式資料が許容する選択肢の一つであり,反対の構成を結論だけで誤りとするものではない。
第2 評価項目の示し方と重み付けの基準
1 評価項目の示し方
各行は,答案の記述から充足の有無を確かめられる判定対象として整理した。
「必須」「高評価」「許容分岐」は評価の性質を示し,重みの大小とは別である。
許容分岐や条件付き項目は,その構成を選ぶ答案に限って適用し,すべてを一つの答案へ累積させない。
出題の趣旨欄と採点実感欄の頁はPDF実頁である。
「記載なし」は本問の関連範囲を実読した結果を示し,「間接」は直接の記載からの推論を示す。
一般的な答案作法は別枠の説明とし,独立の配点項目を追加していない。
撤去費について抽象的な結論だけを述べる負例は,番号13の具体的な解釈・当てはめの要請へ統合した。
2 5段階の重み付けの基準
重み5は,採点実感が評価の分かれ目とした事項又は答案の骨格そのものである。
重み4は,出題の趣旨が検討を求め,採点実感も取り上げた事項(高く評価した・多数の答案の不足を指摘した)である。
重み3は,どちらか一方が明示する中核の理由付け,重み2は一方が軽い表現で触れる補強又は典型的な誤り,重み1は一方が控えめに触れるだけの事項である。
5段階へ件数を割り当てず,原資料の検討要求と評価の仕方に応じて付した。
番号2・7・9・11・16・19・20を重み5としたのは,原債権と求償権の区別,契約の適用・処理,損害の捉え方及び参加・査定が各問の骨格となるからである。
第3 本問の概要
1 問題文と事実関係
建設会社Aは資金繰りが悪化し,平成30年3月31日納期限の租税300万円等を支払えないと認識した。
BはAの依頼で同月20日に租税を代位弁済し,Aは26日に破産を申し立て,29日に手続開始決定を受け,Xが管財人となった。
設問2では,代金2000万円,内金1200万円,完成時残金800万円という住宅建築請負が,開始時に6割まで進んでいた。
解除後にCはDと残工事1000万円及び廃材撤去100万円の別契約を結び,合計1100万円を支払った。
設問3では,Eの貸金6750万円につき,連帯保証人Fが開始前に300万円,開始後に200万円を弁済し,500万円を届け出たところ,Eが異議を述べた。
問題文の正確な条件は,法務省の問題PDF実頁2で確認できる。
2 設問が求めること
| 設問 | 立場・対象 | 指定・仮定 | 到達点 |
|---|---|---|---|
| 1 | Bの権利とXの主張 | 租税の納期限は開始後 | 請求根拠と破産手続上の分類・行使方法 |
| 2(1) | Xの契約処理 | Aによる完成可能・財団の利益 | 履行選択と工事完成・残金回収 |
| 2(2) | 解除後のCの権利 | 完成費と撤去費は別契約。各設問は独立 | 各費用の権利発生根拠と破産債権・財団債権の分類 |
| 3 | Fの届出に対する裁判所の判断 | 開始前後の弁済を分ける | 査定決定で認める額を明示 |
第4 評価項目と重み
1 設問1
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 【必須】原租税債権について開始時と納期限を比較し148条1項3号を当てはめる。 | 4 | 21頁・設問1(租税債権が財団債権に当たることを条文…) | 1頁・設問1(破産法第148条第1項第3号に当ては…) |
| 2 | 【必須】求償権と代位取得する原債権を別の権利として検討する。 | 5 | 21頁・設問1(求償権の行使が破産手続による制約を受…) | 1頁・設問1(租税債権の権利行使の可否については,…) |
| 3 | 【高評価】平成23年判決の原債権の担保的機能を説明する。 | 4 | 21頁・設問1(一種の担保として機能させることを趣旨…) | 1頁・設問1(平成23年11月22日民集65巻8号…) |
| 4 | 【高評価】求償権の手続上の制約が原債権へ当然に及ばない理由を説明する。 | 4 | 21頁・設問1(原債権の行使自体が制約されていない以…) | 1頁・設問1(平成23年11月22日民集65巻8号…) |
| 5 | 【必須】租税の公共的性格を踏まえて代位又は財団性の自説を理由付ける。 | 4 | 21頁・設問1(租税債権の公共的性格に照らしてもなお…) | 1頁・設問1(租税債権の特徴を摘示して論じていたが…) |
| 6 | 【高評価】採用説に対する反対の考え方を踏まえて検討する。 | 3 | 記載なし | 2頁・設問1(反対説についての反論を交えつつ論じる…) |
2 設問2(1)
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 7 | 【必須】請負人破産にも53条を適用するかを理由付きで検討する。 | 5 | 21頁・設問2(1)(破産法第53条の適用について,上記判…) | 2頁・設問2(1)(同条が請負契約に適用されるのか否かと…) |
| 8 | 【高評価】昭和62年判決の完成不能の例外と本件での適用範囲を示す。 | 4 | 21頁・設問2(1)(完成することのできない性質のものであ…) | 2頁・設問2(1)(昭和62年11月26日民集41巻8号…) |
| 9 | 【必須】双方未履行の本件で履行を選択し完成と残代金800万円請求へ進む。 | 5 | 21頁・設問2(1)(残代金の支払を求めることができるか)…) | 2頁・設問2(1)(間接。契約処理又は時点別検討の一般的指摘) |
3 設問2(2)
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 10 | 【必須】解除により生じた損害の賠償請求を54条1項の破産債権として位置付ける。 | 4 | 22頁・設問2(2)(破産法第54条第1項を指摘しつつ,C…) | 2頁・設問2(2)(同法第54条第1項を指摘し,Cの上記…) |
| 11 | 【必須】完成費1000万円の損害性を未払800万円の負担免除を考慮して検討する。 | 5 | 22頁・設問2(2)(800万円を支払っていない段階で解除…) | 2頁・設問2(2)(間接。契約処理又は時点別検討の一般的指摘) |
| 12 | 【必須】別契約の撤去100万円を完成費と分けて権利の発生根拠を検討する。 | 4 | 22頁・設問2(2)(建築廃材の撤去であることが示されてい…) | 2頁・設問2(2)(100万円を支払うことを内容とする契…) |
| 13 | 【必須】撤去費の財団性は必要な148条各号の解釈と具体的な当てはめで示す。 | 4 | 22頁・設問2(2)(各号の解釈をした上で当てはめを行うな…) | 2頁・設問2(2)(各号の解釈論を述べた上で当てはめを行…) |
| 14 | 【高評価】管財人の職務・管理義務を根拠とする場合はなぜその職務かを説明する。適用条件:管財人の職務・撤去義務を根拠とする場合。 | 3 | 記載なし | 2頁・設問2(2)(職務であるとして財団債権性を論じてい…) |
| 15 | 【許容分岐】財団性を否定する場合も具体的な解釈・事実により理由を示す。適用条件:撤去費の財団性を否定する場合。 | 2 | 22頁・設問2(2)(否定する考え方もあり得るところである…) | 記載なし |
4 設問3
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 16 | 【必須】104条1項の手続開始時現存額主義の意義・趣旨を示す。 | 5 | 22頁・設問3(手続開始時現存額主義を明らかにしてい…) | 2頁・設問3(破産法第104条第1項の内容や趣旨に…) |
| 17 | 【必須】開始前300万円の弁済に対応するFの求償権の行使を認める。 | 4 | 22頁・設問3(300万円については,その行使を認め…) | 3頁・設問3(間接。契約処理又は時点別検討の一般的指摘) |
| 18 | 【必須】開始前弁済によりEの開始時権利行使額を6450万円とする。 | 4 | 22頁・設問3(6450万円分についてしか権利行使が…) | 3頁・設問3(間接。契約処理又は時点別検討の一般的指摘) |
| 19 | 【必須】開始後200万円について全額消滅がないため104条4項の参加制限を適用する。 | 5 | 22頁・設問3(破産法第104条第4項)。設問におい…) | 3頁・設問3(同条第4項の内容等について言及し,こ…) |
| 20 | 【必須】査定決定としてFの破産債権額を300万円と明示する。 | 5 | 22頁・設問3(破産債権査定決定(同条第3項)の内容…) | 3頁・設問3(破産債権査定決定における判断内容を明…) |
5 重みの分布
全20項目の内訳は,重み1が0項目,2が1項目,3が2項目,4が10項目,5が7項目であり,合計は83である。
重みの合計は採用する構成ごとの答案の満点を意味しない。
第5 模範解答
1 答案の前提と表記
以下は試験当時の法令を前提にした答案であり,条番号のみを示す箇所は破産法を指す。
租税代位の可否及び撤去費の構成には複数の考え方があり,答案はその一つを理由付きで採用する。
撤去費については,通常の請負上Aが処理すべき残置物をCが処理するための追加負担と評価する。
これは問題文に処理義務が明記されているという意味ではなく,本答案の契約解釈上の前提である。
Dとの契約と支払があったことから,実際の撤去や特定の所有権帰属まで確定したとは扱わない。
2 答案
第1 設問1
1 B社はA社の委託を受けて租税300万円を納付したから,事務処理費用の償還として同額の求償権を有する(当時の民法650条1項,656条)。
開始前の委託・納付に基づく財産上の請求権であり,破産債権となる(破産法97条1号。
以下,条番号のみは同法)。
2 もっとも,原租税債権は,3月29日の開始時には3月31日の納期限が未到来であり,未納なら148条1項3号の財団債権となる。
B社は,求償権とは別に,弁済代位で原租税債権を取得し(当時の民法501条),財団債権として手続外の随時弁済を求めることが考えられる(151条)。
最高裁平成23年11月22日判決は,給与債権の代位につき,原債権は求償権を確保する一種の担保として機能するとする。
求償権を実体上行使できる限り,その行使が倒産手続上制約されるだけで,制約されていない原債権の行使まで同様に制限されない。
他の債権者も,原債権が元来財団債権であった以上,代位によって不当に不利益を受けない。
この考え方によれば,B社も300万円の求償権を確保する範囲で,元の租税債権を財団債権として行使できるとも思える。
しかし,Xは,租税債権の公共的性格から代位による取得自体が許されないと反論できる。
租税の優先的取扱いは公的徴収の確保を目的とし,納付によりその目的は達成される。
その後の私人の費用償還まで同じ優先保護を与える必要はない。
国税通則法41条2項の代位も抵当権についての特別な規定であり,原租税債権の当然の移転を根拠付けない。
給与債権とは性質を異にするため,上記判決の結論を直ちに及ぼすべきではない。
よって本件ではXの反論を採り,原租税債権への代位を否定する。
B社は,300万円の求償権を普通破産債権として届け出て配当を受ける。
第2 設問2
1 (1)請負人破産の場合にも53条1項が適用されるか。
同項は,双方の給付の牽連関係を踏まえ,管財人の選択で契約を一体的に処理し,財団の利益と相手方の保護を調整する規定である。
請負も双方の債務が対価関係に立つ契約であり,明文の除外もない。
民法642条は注文者破産の規定であり,請負人破産への一般規定の適用を排除しない。
判例も,破産者以外には仕事を完成できず,管財人が履行を選ぶ余地のない場合を除き,適用を認める(最高裁昭和62年11月26日判決)。
本件は出来高6割程度で,A社の完成義務もCの残代金800万円支払義務も残る。
内金1200万円を支払っていても契約全体の履行は完了しない。
しかもXはA社による完成が可能で財団にも有利と判断しており,判例の例外に当たらない。
したがってXは,必要な許可を得て履行を選択し,工事を完成してCに残代金800万円を請求すべきである。
対応するCの完成請求権は財団債権となる(148条1項7号)。
Cに残代金全額を求めながら完成義務を配当で済ませることは,対価関係に反するからである。
2 (2)Xによる解除後,Cは損害賠償請求権を破産債権として行使できる(54条1項)。
残工事費1000万円は,A社が履行していれば不要だった追加支出である。
ただしCは解除により残代金800万円を支払わずに済む。
既施工部分を利用して住宅を完成させる本件で,免れた支出を控除せず1000万円全額を損害とすると過大な回復になる。
したがって完成費の増加損害は200万円である。
撤去費100万円は別契約に基づく支出であり,完成費とは分けて検討する。
A社は工事に伴う廃材を処理して住宅を完成すべき義務を負うとの契約解釈を採る。
その不履行を補う合理的な撤去費は解除に伴う追加損害となり,54条1項の破産債権として請求できる。
他方,148条1項4号又は5号の財団債権にならないか。
4号には管財人が財団のためにした行為に基づく請求であることを要する。
Xが解除したというだけで解除損害全てを同号に入れれば,それを破産債権とする54条1項が空文化する。
解除とは別に,財団の管理・処分に伴う債務等として位置付ける根拠が必要である。
本件廃材がA社の施工に由来することだけでは,財団が財産として保持・管理すべき物であり,Xが独立の撤去債務を負うとは直ちにいえない。
Xの撤去依頼等の事情もないから,4号の該当性は否定する。
5号も,開始後の事務管理又は不当利得により財団に対する請求権が生じたことを要する。
Cが住宅完成のためD社と契約して支払った事実だけでは,財団の事務が管理され,又は財団が法律上の原因なく利益を得たとは認められない。
現実の撤去も明示されず,支払をもって財団の撤去費節約と同一視できない。
よって本答案の事実評価では財団性を否定し,Cは合計300万円を破産債権として行使する。
第3 設問3
1 104条1項は,全部義務者の一人が破産した場合,債権者が開始時の全額で参加できるとする。
保証等により確保した全額回収の機会を,一部弁済だけで失わせない趣旨である。
もっとも,Fの3月27日の300万円弁済は開始前であり,E銀行の開始時債権額は6450万円となる。
Fの同額の求償権も開始時に現実化しているから,Fは300万円について参加できる。
2 4月2日の200万円弁済は開始後である。
E銀行の実体上の残額は6250万円になるが,債権全額は消滅しておらず,なお6450万円で参加できる(同条2項)。
Fには民法上求償や弁済代位が認められても,E銀行がこのように参加する間は,104条3項・4項が開始後の弁済に対応する求償権又は代位権による重複参加を制限する。
よってFは当該200万円について参加できない。
3 以上より,Fの届出500万円のうち,破産債権額を300万円と定め,残り200万円を認めない査定決定をする(125条1項・3項)。
3 出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説
(1) 答案と評価項目の対応
| 番号 | 重み | 評価項目 | 答案の該当箇所・留保 |
|---|---|---|---|
| 1 | 4 | 原租税債権について開始時と納期限を比較し148条1項3号を当てはめる | 第1。納期限と開始日を比較して原債権の財団性を確定する。 |
| 2 | 5 | 求償権と代位取得する原債権を別の権利として検討する | 第1。委託費用の求償と原債権代位を別に起こし,別々の手続取扱いを検討する。 |
| 3 | 4 | 平成23年判決の原債権の担保的機能を説明する | 第1。給与判決の結論だけでなく,原債権の担保的機能を規範として示す。 |
| 4 | 4 | 求償権の手続上の制約が原債権へ当然に及ばない理由を説明する | 第1。実体上の求償権行使と倒産手続上の制約を分け,他債権者の不利益の有無まで理由付ける。 |
| 5 | 4 | 租税の公共的性格を踏まえて代位又は財団性の自説を理由付ける | 第1。納付前後で公的徴収目的と私人の求償保護を区別し,公共性が代位否定へつながる理由を示す。 |
| 6 | 3 | 採用説に対する反対の考え方を踏まえて検討する | 第1。原租税債権の元来の優先性というB社の反論を示してから,給与との性質差及び公的目的達成をもって退ける。 |
| 7 | 5 | 請負人破産にも53条を適用するかを理由付きで検討する | 第2の1。対価関係,管財人選択による一体処理,相手方保護,除外規定がないことを適用理由とする。 |
| 8 | 4 | 昭和62年判決の完成不能の例外と本件での適用範囲を示す | 第2の1。属人的仕事の完成不能例外を示し,完成可能・財団有利という指定事実を例外不該当へ接続する。 |
| 9 | 5 | 双方未履行の本件で履行を選択し完成と残代金800万円請求へ進む | 第2の1。6割の出来高・内金・未払残金を契約全体の双方未履行へ当てはめ,選択→完成→800万円請求→Cの財団性まで閉じる。 |
| 10 | 4 | 解除により生じた損害の賠償請求を54条1項の破産債権として位置付ける | 第2の2。解除後の支出を損害として構成した上で54条1項の行使方法を示す。 |
| 11 | 5 | 完成費1000万円の損害性を未払800万円の負担免除を考慮して検討する | 第2の2。A社が履行した場合との反実仮想で追加1000万円と免除800万円を対比し,過大回復を避ける控除理由と200万円を示す。 |
| 12 | 4 | 別契約の撤去100万円を完成費と分けて権利の発生根拠を検討する | 第2の2。別契約支出を分け,A社の廃材処理を含む履行義務という契約解釈を明示して100万円を損害へ接続する。 |
| 13 | 4 | 撤去費の財団性は必要な148条各号の解釈と具体的な当てはめで示す | 第2の2。4号を無制限に適用すると54条が空文化するため独立の財団管理債務等を求め,5号も開始後の事務・利益の発生と支払を区別する。 |
| 14 | 3 | 管財人の職務・管理義務を根拠とする場合はなぜその職務かを説明する | 職務を積極的根拠とする構成は不採用。財団のための行為・利益を認める条件を区別する。 |
| 15 | 2 | 財団性を否定する場合も具体的な解釈・事実により理由を示す | 財団性を否定する本答案に適用し,4号・5号の具体的要件を検討する。 |
| 16 | 5 | 104条1項の手続開始時現存額主義の意義・趣旨を示す | 第3。保証により確保した全額回収機会を守る制度趣旨と開始時現存額という基準を示す。 |
| 17 | 4 | 開始前300万円の弁済に対応するFの求償権の行使を認める | 第3。開始前弁済による求償の現実化を理由に300万円の参加を認める。 |
| 18 | 4 | 開始前弁済によりEの開始時権利行使額を6450万円とする | 第3。開始前の300万円を6750万円から控除した開始時6450万円を確定する。 |
| 19 | 5 | 開始後200万円について全額消滅がないため104条4項の参加制限を適用する | 第3。開始後の実体残額6250万円と参加額6450万円を区別し,104条2項によるEの保護と3・4項によるFの重複参加制限を結び付ける。 |
| 20 | 5 | 査定決定としてFの破産債権額を300万円と明示する | 第3。届出500万円のうち査定額300万円,認めない部分200万円を主文相当の内容として明示する。 |
(2) 租税代位と給与債権代位の違い
番号1~6では,求償権が破産債権であることと,代位取得した原債権を財団債権として行使できるかを区別する必要がある。
平成23年11月22日判決は給与債権の事件であり,原債権の担保的機能を理由に,求償権の手続上の制約が原債権へ当然に及ぶとはしなかった。
租税の代位を否定する議論に触れるのは,同判決における田原睦夫裁判官の補足意見である。
多数意見が租税代位を直接否定した判決であると説明してはならない。
出題の趣旨は,租税の公共的性格を踏まえて取得・行使を認める立場も,取得を否定する立場も許容し,自説の理由を求めている。
(3) 請負への一般規定の適用と撤去費の構成
番号7~9では,53条という条番号を挙げるだけでなく,請負に同条が適用されるかという問題意識を示すことが重要である。
昭和62年11月26日判決は旧破産法59条についての判決であり,現行53条の解釈を考える際にその適用理由と例外を参照する。
番号10~15では,残代金の支払免除を無視して残工事費全額を損害としないこと,撤去費を別の性質の支出として検討することが要点となる。
撤去が財団の所有物に関する管財人の義務であり,その代行による利益が財団へ帰属すると理由付けられるなら,事務管理・不当利得等による148条1項5号の構成を採る余地がある。
管財人の行為を基礎に同項4号を用いる考え方もあり得るが,単に「職務である」と述べるだけでは根拠の説明にならない。
本答案は,問題文が示す支出と財団に生じた利益とを同一視せず,財団性を否定する立場を採った。
肯定説を採る答案でも,支出時点,費用負担の原因,撤去義務及び財団利益という媒介を具体的に説明すればよい。
(4) 現存額主義から査定決定まで
番号16~20は,手続開始時の額を確定し,EとFの権利行使を分けた上で査定へ進む連続した処理である。
開始前の300万円を差し引いたEの額は6450万円となり,開始後の一部弁済200万円があっても全額が消滅していないため,Eはその額で参加する。
Fの開始前の求償権300万円と開始後の弁済に対応する権利200万円を同じ扱いにせず,最後にFの査定額300万円を示す。
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第7 出典及び確認状態
1 公式資料
法務省令和元年司法試験論文式試験・選択科目問題のPDF実頁2(倒産法第1問)。
法務省令和元年司法試験論文式試験問題出題趣旨のPDF実頁20末尾~22(倒産法第1問)。
法務省令和元年司法試験の採点実感・選択科目のPDF実頁1~3の第1問部分及び同6~7の科目全体の末尾記載。
2 法令
破産法・試験当時の履歴版の53条・54条・97条・104条・125条・148条等。
民法・平成31年1月13日施行版の公式データの499条~502条・650条・656条等。
国税通則法・平成31年4月1日施行版の公式データの41条。
民法の弁済による代位等は当時の規定を用い,試験後に施行された改正後の条文へ置き換えていない。
3 裁判例
最高裁第三小法廷平成23年11月22日判決・民集65巻8号3165頁。多数意見及び田原裁判官補足意見を区別して原文を確認した。
最高裁第一小法廷昭和62年11月26日判決・民集41巻8号1585頁。旧破産法の請負契約に関する判示を原文で確認した。
4 確認状態
両公式資料について本問の関連範囲を実読し,法令履歴版及び上記判決原文と区別して照合した。
他の問題の公式解説は,本記事の法的内容の根拠に用いていない。
租税代位及び撤去費については公式資料自体が複数の構成を許容するため,個別の結論は本記事の解釈・事実評価として示した。
残置物の帰属,実際の撤去及び財団利益について問題文に明示のない事項は,肯定説を採用するために必要な前提と区別した。
試験後の新判例を本問当時の要求へ遡って加えてはいない。