第1 LinKageCourtsの位置付け
LinKageCourtsは,刑事事件及び少年事件について,裁判所への電子申立て,裁判所からの通知・送達,証拠等のデータ提出,訴訟記録の閲覧・謄写その他の手続をオンラインで行うための裁判所の利用者向けシステムである。
日弁連会員向け資料によれば,弁護士の利用者登録は令和9年3月上旬から開始される予定である。
刑事手続デジタル化の主要規定が施行されても,利用者登録,弁護士資格の確認及び個別事件の対象判定が完了しなければ,直ちにすべての機能を利用できるわけではない。
法令上の施行日,対象事件の拡大時期,システムの利用者登録及び個別事件へのアクセス権限を分けて確認する必要がある。
第2 LinKageCourtsで予定されている手続
LinKageCourtsでは,刑事・少年事件に関する次の手続が予定されている。
① 裁判所への申立書その他の書類の電子提出。
② 証拠その他の資料のデータ提出。
③ 裁判所からの通知,送達及び文書の受領。
④ 許可された訴訟記録のオンライン閲覧・謄写。
⑤ 証明書の交付申請その他の事件関係手続。
これらは同じシステム上の機能であっても,個別の法的根拠,利用開始時期及び対象事件は同一とは限らない。
例えば,記録が電子化されていることと,その記録を特定の利用者がオンラインで閲覧できることは別の問題である。
第3 二つの利用者登録方法
弁護士がLinKageCourtsを利用するための登録方法には,GビズIDを連携する方法と,LinKageIDを直接取得する方法が予定されている。
| 項目 | GビズIDを利用する方法 | LinKageIDを利用する方法 |
|---|---|---|
| 登録の入口 | GビズIDプライムを取得し,LinKageCourtsと連携する | LinKageCourtsへ直接利用者登録する |
| 登録開始予定 | 令和9年3月上旬 | 令和9年3月上旬 |
| 事務職員による代理操作 | GビズIDメンバーを利用して可能となる予定 | 予定されていない |
| 弁護士資格の確認 | GビズIDとは別に必要 | 登録時に必要 |
| 事前準備 | GビズIDプライムは事前取得できる | LinKageCourtsの登録開始後に手続する |
GビズIDを取得しただけでは,弁護士資格の確認が完了したことにはならない。
また,令和8年10月15日現在,GビズIDのサービス一覧にLinKageCourtsが表示されていなくても,利用者登録開始前であることと矛盾しない。
第4 GビズIDを利用する場合
1 GビズIDプライムを事前に取得する
GビズIDは,複数の行政サービスへ共通してログインするための認証基盤である。
LinKageCourtsでは,GビズIDプライムを取得した弁護士が,サービスとの連携を行う方法が予定されている。
マイナンバーカードを利用するオンライン申請と,書面を用いる申請では,発行までに要する期間が異なる。
令和9年3月の登録開始直前に準備するのではなく,GビズID公式サイトの最新案内により必要資料と発行状況を確認することが望ましい。
2 事務職員へ権限を付与する
GビズIDを利用する方法では,弁護士がGビズIDメンバーのアカウントを事務職員へ割り当て,LinKageCourtsの操作権限を付与する方法が予定されている。
日弁連資料では,弁護士一人について事務職員数の一律の上限は示されていない。
もっとも,事務職員が操作できることと,弁護士が内容を確認せず送信してよいことは同じではない。
事件へのアクセス権限,作成担当と最終確認担当,送信前確認,送信結果の保存及び退職・異動時の権限削除を事務所内で定める必要がある。
第5 LinKageIDを利用する場合
LinKageIDは,GビズIDを経由せずにLinKageCourtsへ直接登録するためのIDである。
GビズIDを取得していない弁護士も利用できる予定であるが,事務職員による代理操作には対応しないとされている。
登録完了までに要する時間は,申請内容と資格確認の状況によって異なり得る。
事件の期限が迫ってから登録を始めるのではなく,登録開始後の公式案内により早めに手続する必要がある。
GビズID方式とLinKageID方式のどちらを選ぶかは,弁護士本人だけで操作するか,事務職員による補助を必要とするか,事務所のアカウント管理方針及び既存のGビズID利用状況を踏まえて決めることになる。
第6 mints・TreeeS及び検察庁システムとの違い
1 mints・TreeeSとの違い
mints及びTreeeSは,主として民事裁判手続のデジタル化に関係するシステムである。
これに対し,LinKageCourtsは刑事事件及び少年事件を対象とする。
GビズIDを認証に利用する点が共通していても,事件情報,利用者権限,提出先及び対象手続が共通になるわけではない。
「mintsを利用しているから刑事事件でも同じ画面・事件番号を使える」と考えてはならない。
2 検察庁システムとの違い
検察庁は,弁護人選任届の提出及び証拠開示等のため,Microsoft SharePointを用いた別のシステムを準備している。
裁判所のLinKageCourtsと検察庁のシステムでは,利用者登録,事件への招待,提出先及び取り扱う記録が異なる。
検察庁から弁護人が開示証拠を受領することと,裁判所が保管する訴訟記録を閲覧することも,法的根拠と保管主体が異なる。
同じ事件で両方のシステムを利用する場合でも,操作記録と受領記録を別々に残す必要がある。
3 警察システムとの違い
警察では,弁護人選任届,告訴・告発その他の書類を取り扱う告訴告発等システムが予定されている。
令和8年10月15日現在,弁護士向けの具体的な登録方法や操作仕様は十分に公表されていない。
警察へ提出する弁護人選任届については,紙による提出方法が残るとされている。
裁判所又は検察庁のアカウントを警察でも使えると推測せず,今後の正式な案内を確認する必要がある。
第7 法律事務所で準備する事項
LinKageCourtsの利用開始前に,少なくとも次の事項を整理する必要がある。
① GビズID方式とLinKageID方式の選択。
② 弁護士本人と事務職員の役割分担。
③ 事件ごとのアクセス権限と担当解除の手順。
④ 送信前の二人確認又は弁護士本人による最終確認。
⑤ 提出ファイル,送信日時,受付結果及びエラー表示の保存。
⑥ 多要素認証に使用する端末の管理。
⑦ 退職者,異動者及び休職者の権限停止。
⑧ システム障害時の連絡先と代替提出方法。
オンライン送信は,送信ボタンを押したことだけで提出完了を証明できるとは限らない。
受付結果,事件番号,提出先,提出ファイル及び送信時刻を対応させ,期限管理記録として保存する必要がある。
第8 よくある質問
1 LinKageCourtsはいつから登録できますか
日弁連会員向け資料では,弁護士の利用者登録は令和9年3月上旬から開始される予定である。
具体的な開始日と登録画面は,裁判所及び日弁連の最新案内で確認する必要がある。
2 GビズIDは必須ですか
必須ではなく,LinKageIDを直接取得する方法も予定されている。
ただし,事務職員による代理操作を予定する場合は,GビズIDを利用する方法を検討する必要がある。
3 GビズIDを持っていれば直ちに利用できますか
GビズIDの取得とは別に,LinKageCourtsとの連携と弁護士資格の確認が必要である。
個別事件が対象事件であることと,当該事件へのアクセス権限も別に確認する。
4 mintsと同じシステムですか
同じシステムではない。
mints・TreeeSは主として民事分野,LinKageCourtsは刑事・少年分野を対象とし,事件情報や利用権限も別に管理される。
第9 関連記事
制度全体と施行時期は,刑事手続のデジタル化とは―令和7年法律第39号の施行日,電子令状,オンライン証拠開示及びLinKage(AI作成)を参照されたい。
mints,RoootS及びTreeeSの関係は,最高裁判所が開発しているmints,RoootS及びTreeeS(AIリライト)で説明している。
第10 出典
日弁連会員ページ「刑事手続のデジタル化」: https://member.nichibenren.or.jp/nichibenrenjoho/juyokadai/keiji_digital.html
日弁連会員向け資料「刑事手続のデジタル化に用いる三つのシステム」: https://member.nichibenren.or.jp/nichibenrenjoho/juyokadai/keiji_digital/documentFile/260903_keiji_digital02.pdf
日弁連会員向け資料「アカウント登録方法の比較」: https://member.nichibenren.or.jp/nichibenrenjoho/juyokadai/keiji_digital/documentFile/260903_keiji_digital03.pdf
最高裁判所「次期裁判統計データ処理システムの事件管理システムとの連携インターフェース改修等に関する公募資料」: https://www.courts.go.jp/assets/R080907_koubo.pdf
GビズID公式サイト: https://gbiz-id.go.jp/top/
GビズIDプライムの申請マニュアル: https://gbiz-id.go.jp/top/manual/pdf/QuickManual_Prime_sole-proprietor.pdf