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令和4年司法試験知的財産法第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した40項目と5段階の重み付け(AI作成)

令和4年司法試験知的財産法第2問について,模範解答と40項目の評価表を示す。
評価項目と1~5の重みは公式資料に基づく本記事の独自分析であり,法務省の採点基準・配点ではない。

第1 この記事の対象と結論

本問は,共同著作物の部分利用,二次的著作物の利用,共有者の合意拒否,漫画教室の教材利用及び模写主体を問う。
各設問は独立しており,著作者人格権は検討対象から除かれる。

評価項目は40項目,重みの合計は164,重み5は13項目である。
Bへの差止めは侵害のおそれがないため否定し,Cへの差止め・廃棄と過失を要する賠償は区別する。
本答案はYの人物イラスト利用への権利行使を否定し,Dの配信差止めへの抗弁を認め,Fの教材の引用を限定的に認める一方,生徒の模写はFに帰責しない立場を採る。
Yの部分利用への行使,引用及び模写主体は,理由付けが必要な分岐であり,この結論が公式の唯一解であることを意味しない。

第2 評価項目の示し方と重み付けの基準

1 評価項目の示し方

一項目に一つの判定対象を置き,出題の趣旨又は採点実感の関連頁を対応させた。
表の番号は記事全体で連続し,内部の追跡IDとは区別する。
正しい支分権の指定の裏返しとなる誤りは同じ行で示し,重複加算しない。
「記載なし」は本問関連範囲を実読した結果,「間接」は資料が述べる分類から具体化した推論である。

番号7はYの行使を肯定する構成に,番号39はFを模写主体と肯定する構成に適用される。
条件付き分岐を全答案への累積要求にせず,採用した構成の理由を評価する。
一般的な答案作法及び公式に独立の記載がない法令補足は,40項目の集計に混ぜていない。

2 5段階の重み付けの基準

本記事の重み4は,出題の趣旨が検討を求め,採点実感も評価又は具体的な誤りの指摘を通じて取り上げた事項である。
「高く評価した」と「取り上げた」は区別する。
重み5も全てを無条件の必須事項とする趣旨ではない。

重み基準
5評価の分かれ目又は答案の骨格そのもの。
4出題の趣旨が検討を求め,採点実感も評価又は具体的誤りの指摘で取り上げる事項。
3一方の資料が明示する中核の理由付け。
2一方の資料が触れる補強又は典型的な誤り。
1一方の資料が控えめに触れる事項。

第3 本問の概要

XとYは甲を主人公とする漫画αを共同制作し,物語・ネームを協議で決め,Xが人物,Yが背景を担当し,相互に修正した。
Bは甲の模型βを作って学園祭に展示し,玩具製造業者Cへ譲渡した。
Cはαを知らずβを独創作品と思い,フィギュアを制作・販売した。

Dは漫画のアニメ化についてXの承諾を得たが,YはXとの関係悪化を理由に拒否した。
Eが繰り返し交渉し高額な使用料を提示してもYは承諾せず,Dは映画を制作して配信しようとしている。

Fは有料の漫画教室で,コマ絵十数枚のコピー・スライド上映・4倍の拡大コピーの配布を行い,生徒に模写させて指導・評価した。
問われるのは,F自身の教材行為と,生徒の模写をFへ帰責できるかという別の問題である。

第4 評価項目と重み

1 設問1(共通)

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
1漫画αにつき共同創作と寄与の分離利用不能を示して共同著作物性を判断する。5PDF32頁・設問1(共通)(共同著作物)PDF27頁・知的財産法設問1(共通)(共同著作物の要件に丁)
2ストーリー・ネームの協議及び相互修正を共同著作物の要件へ具体的に当てはめる。4PDF32頁・設問1(共通)(甲のイラストを含む漫画α)PDF27頁・知的財産法設問1(共通)(丁寧な当てはめ)
3甲が抽象的キャラクターだから著作物性がないと結論しない(対象は視覚的イラストである)。2記載なしPDF27頁・知的財産法設問1(共通)(視覚的なイラスト)
4模型βを甲のイラストの二次的著作物として2条1項11号に位置付ける。5PDF32頁・設問1(共通)(二次的著作物)PDF24頁・知的財産法設問1(共通)(二次的著作物)
5甲の特徴の再現と独自の衣装・ポーズを,原作表現の維持と新たな創作性として評価する。3PDF32頁・設問1(共通)(間接:二次的著作物)記載なし
6漫画全体の共同性からYの権利行使を直結せず,Xが制作した甲のイラストの部分利用へ権利が及ぶかを理由付きで検討する。5PDF32頁・設問1(共通)(Yの権利行使が認められるか)PDF27頁・知的財産法設問1(共通)(Yの著作権)
7Yの行使を肯定する構成を採る場合,117条による各人の単独行使を示す。(条件付き)4PDF32頁・設問1(共通)(それぞれ単独で権利行使)PDF27頁・知的財産法設問1(共通)(単独行使の可否)
8設問が除外した著作者人格権の成否を論じない。2記載なしPDF27頁・知的財産法設問1(共通)(著作者人格権について論じる必要がない)

2 設問1⑴

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
9模型βの制作を27条の変形権の侵害として論ずる。4PDF32頁・設問1⑴(変形権)PDF24頁・知的財産法設問1⑴(変形権)
10模型βのCへの譲渡を28条・26条の2第1項に基づく譲渡権の侵害として論ずる。4PDF32頁・設問1⑴(模型βの譲渡)PDF24頁・知的財産法設問1⑴(譲渡権)
11Bが模型を譲渡済みで侵害のおそれがないことを差止め否定へ接続する。5PDF32頁・設問1⑴(差止請求は問題とならず)PDF27頁・知的財産法設問1⑴(差止請求が否定される)
12Bへの請求を民法709条に基づく損害賠償として要件・侵害行為へ接続する。4PDF32頁・設問1⑴(民法第7)PDF24頁・知的財産法設問1⑴(損害賠償請求)
13Bによる展示の検討では原作品所有者の45条の適用も確認する。3記載なしPDF27頁・知的財産法設問1⑴(同法第45条)

3 設問1⑵

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
14Cのフィギュア制作を28条・21条による複製権侵害へ接続する。4PDF32頁・設問1⑵(フィギュアの制作行為)PDF27頁・知的財産法設問1⑵(フィギュアの制作行為)
15Cのフィギュア販売を28条・26条の2第1項による譲渡権侵害へ接続する。4PDF32頁・設問1⑵(フィギュアの販売行為)PDF27頁・知的財産法設問1⑵(フィギュアの販売行為)
16Cがαを知らずβに依拠した事実から,αの甲イラストへの間接的依拠の可否を論証する。5PDF32頁・設問1⑵(Cが漫画α)PDF24頁・知的財産法設問1⑵(依拠したといえるか)
17Cへの差止め・在庫廃棄等を112条により具体化する。4PDF32頁・設問1⑵(差止・廃棄等請求)PDF24頁・知的財産法設問1⑵(差止等請求)
18Cへの損害賠償を民法709条の不法行為の要件へ接続する。4PDF32頁・設問1⑵(民法第709条)PDF24頁・知的財産法設問1⑵(民法第709条)
19Cのオリジナル作品との誤信を踏まえ,玩具製造業者の確認義務と過失の有無を具体的に検討する。5PDF32頁・設問1⑵(Cの過失の有無)PDF24頁・知的財産法設問1⑵(Cに過失が認め)
20C自身が複製物を制作・販売した場面に,侵害物譲渡時の善意者保護(113条の2)を適用しない。2記載なしPDF27頁・知的財産法設問1⑵(著作権法第113条の2)

4 設問2

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
21映画γを漫画αの二次的著作物として2条1項11号に位置付ける。4PDF32頁・設問2(映画γが漫画αの二次的著作物)PDF28頁・知的財産法設問2(映画γが漫画αの二次的著作物)
22Yの配信差止めの前提として漫画αの共同著作物性を示す。4PDF32頁・設問2(漫画αはXとYの共同著作物)PDF24頁・知的財産法設問2(漫画αはXとYの共同著作物)
23Yの主張を28条・23条1項の公衆送信権侵害のおそれに基づく112条1項の予防請求として構成する。5PDF32頁・設問2(Yの公衆送信権)PDF28頁・知的財産法設問2(公衆送信権)
24共有著作権の利用許諾に65条2項の全員合意が必要で,Xのみの許諾では足りないと論ずる。4PDF32頁・設問2(共有者全員の合意)PDF28頁・知的財産法設問2(第65条第2項)
25Dの反論として65条3項の正当理由のない合意拒絶禁止を主張する。4PDF32頁・設問2(法第65条第3項)PDF24頁・知的財産法設問2(同法第65条第3項)
26正当な理由の判断を共有者利益と円滑利用の調整から規範・考慮要素として定立する。5PDF32頁・設問2(「正当な理由」の存否)PDF28頁・知的財産法設問2(判断規範及び考)
27正当な理由の規範に出版後十年,人気回復,交渉,高額使用料,人的拒否理由を当てはめる。4PDF32頁・設問2(具体的に論述)PDF24頁・知的財産法設問2(本問の事実関係に適切)
28拒否に正当理由がなくても合意成立と即断せず,合意を命ずる判決を経ない侵害訴訟上の抗弁の可否を論証する。5PDF32頁・設問2(「合意をせよ」との判決)PDF28頁・知的財産法設問2(侵害訴訟における抗弁)

5 設問3⑴

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
29コマ絵のコピー作成に21条の複製権を対応させる。4PDF32頁・設問3⑴(複製権)PDF25頁・知的財産法設問3⑴(複製権)
30スライド投影に22条の2の上映権を対応させ,展示権・公衆送信権と取り違えない。5PDF33頁・設問3⑴(第22条の2)PDF28頁・知的財産法設問3⑴(展示権)
31拡大コピーの作成に21条の複製権を対応させる。4PDF33頁・設問3⑴(複製権)PDF25頁・知的財産法設問3⑴(複製権)
32拡大コピーの受講生への配布に26条の2第1項の譲渡権を対応させる。4PDF33頁・設問3⑴(譲渡権)PDF25頁・知的財産法設問3⑴(譲渡権)
33作画指導目的を踏まえ32条1項の引用の適用を検討する。5PDF33頁・設問3⑴(引用)PDF25頁・知的財産法設問3⑴(引用)
34引用などの制限について,条文を挙げるだけでなく各利用態様へ具体的に当てはめる。4PDF33頁・設問3⑴(権利制限規定の適用の余地)PDF28頁・知的財産法設問3⑴(当てはめが不十分)

6 設問3⑵

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
35Xの主張として,物理的に描かないFを複製主体と評価する理由を示す。5PDF33頁・設問3⑵(Xの主張として)PDF28頁・知的財産法設問3⑵(Xの主張として)
36ロクラクⅡ事件の複製主体判断を対象・方法・関与内容と程度等の総合評価として用いる。5PDF33頁・設問3⑵(複製主体の判断基準)PDF25頁・知的財産法設問3⑵(複製主体の判断基準)
37X側から対象選定・施設教材提供・指導・受講料収入の社会的経済的意味を論じる。4PDF33頁・設問3⑵(社会的、経済的側面)PDF25頁・知的財産法設問3⑵(社会的、経済的)
38F側から生徒の任意かつ自主的な学習と物理的複製主体性を反論として論じる。4PDF33頁・設問3⑵(任意かつ自主的)PDF25頁・知的財産法設問3⑵(任意かつ自主的)
39Fを複製主体と肯定する構成では,生徒を手足と呼ぶだけでなく本件事実で実質的帰責理由を説明する。(条件付き)3記載なしPDF28頁・知的財産法設問3⑵(実質)
40両当事者の主張を本件事実に照らして評価し,模写についての差止めの当否まで示す。4PDF33頁・設問3⑵(具体的に論述)PDF25頁・知的財産法設問3⑵(妥当性を具体的)

7 重みの分布

重み1は0項目,重み2は3項目,重み3は3項目,重み4は21項目,重み5は13項目である。
総数N=0+3+3+21+13=40,重み合計W=0+6+9+84+65=164となる。
これらは項目数と独自の重み合計であり,試験の得点又は科目の難易度ではない。

番号1:漫画αにつき共同創作と寄与の分離利用不能を示して共同著作物性を判断する。 共同著作物性がX・Yの請求の権利帰属を決める前提となり,採点実感は要件への丁寧な当てはめを高く評価する。

番号4:模型βを甲のイラストの二次的著作物として2条1項11号に位置付ける。 模型を二次的著作物と把握しなければ28条による利用規律へ到達できないため,請求全体の骨格である。

番号6:漫画全体の共同性からYの権利行使を直結せず,Xが制作した甲のイラストの部分利用へ権利が及ぶかを理由付きで検討する。 趣旨が部分利用へのYの行使を独立に求め,採点方針24頁は意識的な検討を良好・優秀評価の要素とする。

番号11:Bが模型を譲渡済みで侵害のおそれがないことを差止め否定へ接続する。 実感27頁はBの差止め否定と賠償の区別を的確に指摘した答案を高く評価すると明示する。

番号16:Cがαを知らずβに依拠した事実から,αの甲イラストへの間接的依拠の可否を論証する。 採点方針24頁はαを知らないCの依拠を意識的に論じる答案を良好・優秀評価の要素とする。

番号19:Cのオリジナル作品との誤信を踏まえ,玩具製造業者の確認義務と過失の有無を具体的に検討する。 採点方針24頁はCの誤信と過失を意識的に論ずる答案を良好・優秀評価の要素とする。

番号23:Yの主張を28条・23条1項の公衆送信権侵害のおそれに基づく112条1項の予防請求として構成する。 配信行為に適合する公衆送信権と予防請求の接続がYの主張の骨格。実感28頁は頒布権等への取り違えを低く評価する。

番号26:正当な理由の判断を共有者利益と円滑利用の調整から規範・考慮要素として定立する。 採点方針24頁は正当理由の判断基準と当てはめを良好・優秀評価の要素とし,実感28頁も規範定立を要求する。

番号28:拒否に正当理由がなくても合意成立と即断せず,合意を命ずる判決を経ない侵害訴訟上の抗弁の可否を論証する。 採点方針24頁は合意判決を経ない抗弁を説得的に論証する答案を良好・優秀評価の要素とする。

番号30:スライド投影に22条の2の上映権を対応させ,展示権・公衆送信権と取り違えない。 採点実感28頁は各行為の適切な支分権の特定を一応の水準の前提とし,上映を展示等とする誤答を明示する。

番号33:作画指導目的を踏まえ32条1項の引用の適用を検討する。 趣旨33頁が引用等の検討を求め,採点実感28頁は引用検討の少なさを指摘する。権利制限の中核分岐である。

番号35:Xの主張として,物理的に描かないFを複製主体と評価する理由を示す。 模写を物理的に行わないFへの請求なので,Xの主張段階での主体帰責が構成の骨格。実感28頁もその配置を要求する。

番号36:ロクラクⅡ事件の複製主体判断を対象・方法・関与内容と程度等の総合評価として用いる。 趣旨・採点方針・実感がロクラクⅡ基準を踏まえた主体論を要求し,両当事者の議論の共通の骨格となる。

第5 模範解答

1 答案の前提と表記

令和4年5月11日の試験時に施行されていた法令及び同日以前の裁判例を基準とする。
答案本文は改行を除いて2495字である。
条番号のみの表記は著作権法を指し,民法は法令名を示す。
引用の範囲,正当理由の抗弁及び模写主体の結論は,本答案が採用した解釈である。

2 答案

1 設問1
(1) 漫画αは,X・Yが物語,ネーム,人物と背景の作画につき協議し,互いに修正して完成させたものである。
各寄与は一体として漫画の表現を形成し,漫画として分離利用できないから,共同著作物である(2条1項12号)。
ただし,甲の具体的イラストはXの創作であり,抽象的な人物像自体を保護するのではない。
共同著作物の一部でも両者の権利が及ぶとの見解はあるが,独立利用できる人物の外見にはYの背景・物語表現が再製されず,ネームも記号にとどまるので,本答案はその利用についてYの権利行使を否定する。
肯定説でも,差止めと自己の持分の損害賠償は各人が単独で請求できる(117条1項)。

(2) Bの模型βは甲の具体的特徴を忠実に再現し,衣装・ポーズに独自の表現を加えるから,甲のイラストの二次的著作物である(2条1項11号)。
制作は変形権(27条),Cへの譲渡は原著作者Xの譲渡権(28条,26条の2第1項)の侵害となる。
C一人への譲渡でも,人的結合のない相手への提供は不特定者への提供と評価する。
学園祭での公衆展示が制作目的なので,私的使用のための複製等(30条1項,47条の6第1項1号)は許されない。
他方,Bはβの原作品所有者として室内で一時的に展示できる(28条,25条,45条1項)。
模型は既にCへ移転し,Bの侵害継続・再制作のおそれも示されていないため,Bに対する差止め・廃棄請求(112条)は認められない。
Xは,無許諾の制作・譲渡について,故意又は過失,損害及び因果関係を示して損害賠償を請求できる(民法709条)。
Yについては前記見解によれば請求できず,肯定説では自己の持分の損害賠償が問題となる。

(3) Cはβを精巧に模倣し,それを通じて甲の創作的表現を再製している。
原作品を直接認識しなくても,二次的著作物を介する間接的依拠は認められる。
Xは28条を介する複製権(21条)・譲渡権(26条の2第1項)の侵害を理由に,制作・販売の停止,侵害在庫の廃棄を請求できる(112条1・2項)。
所有権取得は複製の許諾ではなく,C自身の制作・販売は侵害物の譲渡時における善意者の保護(113条の2)の対象でない。
差止めには故意・過失を要しない。
損害賠償には故意・過失を要し,Cの誤信により故意は否定されるが,玩具製造業者として出所・権利関係を確認すべき注意を怠ったかを検討する。
βを独創作品と思ったことだけから無過失と即断できず,必要な確認を怠った場合は賠償責任を負う(民法709条)。
Yについては前記見解が妥当する。

2 設問2
(1) Yは,映画γが共同著作物である漫画αを映画化した二次的著作物(2条1項11号)であり,その配信は自己の公衆送信権(28条,23条1項)を侵害するおそれがあるとして,予防を請求する(112条1項)。
共有著作権の利用許諾には全員の合意が必要であり(65条2項),Xだけの承諾では足りない。
侵害に対する差止めはY単独で請求できる(117条1項)。

(2) Dは,Yの合意拒絶には正当な理由がなく(65条3項),これを侵害訴訟で抗弁として主張できると反論する。
正当な理由は,共有著作権の円滑な利用と各共有者の利益の調整という趣旨から,利用の目的・態様,作品及び権利者への影響,経済的条件,拒否理由を総合して判断する。
本件アニメ化は十年を経た漫画の人気回復に資し,Eは何度も交渉し,相場を大幅に超える使用料も提示した。
Yの拒否理由はXと関わりたくないという人的関係だけで,作品利用への具体的な不利益は示されていないから,正当な理由はないと解する。

(3) もっとも,同条2項が全員の合意を要件とする以上,Yは,Xが合意を命ずる判決を得るべきであり,拒否が不当でも合意が当然に成立しないと主張できる。
しかし,3項による拒否禁止を実効的にし,不当な拒否による利用の阻止を避けるため,侵害訴訟でも拒否に正当な理由がないことを抗弁として許すべきである。
合意そのものを擬制するのでなく,不当な拒否を根拠とする差止請求を制限する。
したがって本件ではDの抗弁を認め,Yの差止請求を否定する。

3 設問3
(1) Fのコピー作成は複製(21条),スライド投影は上映(22条の2),拡大コピーの作成・配布は複製及び公衆への譲渡(21条,26条の2第1項)に当たる。
一般募集した受講生はFにとって公衆である。
有料の営利教室には35条1項及び38条1項は適用されず,作画学習と併せて表現の享受目的もあるから30条の4も適用されない。

Fは引用(32条1項)を主張できる。
公表済み作品の利用が公正な慣行に合致し,批評・研究等の目的上正当な範囲かを,解説との関係,必要性,利用量・態様から判断する。
十数枚を選んで個々の構図等を詳説するコピー・上映は,解説の対象を示す従たる利用として正当な範囲にあると解する。
出所は合理的に明示すべきである(48条)。
他方,4倍の拡大コピーを模写のお手本として提供する行為は,絵自体の再製利用が中心であり,本件では引用の範囲を超え,複製権・譲渡権を侵害する。
適法な引用複製物の配布なら47条の7も適用されるため,配布一般を禁止する趣旨ではない。

(2) Xは,Fが模写対象を選び,施設・教材を提供し,模写を指導・評価して受講料を得ることから,Fが複製主体であるとして差止めを請求する(21条,112条1項)。
ロクラクⅡ事件の基準に従い,複製の対象・方法・関与内容と程度などを総合して判断すべきである。
Fは,生徒が自ら技術を向上させるため任意かつ自主的に描くのであり,対象選定・教材提供は準備行為にすぎず,複製主体は生徒で,30条1項の私的使用として許されると反論する。
音楽教室事件の生徒の自主性を重視する考え方が参考となる。
本件でも生徒は顧客として自ら練習し,Fに作品を供給する義務は示されていない。
指導と利益だけで生徒をFの手足とみるのは相当でなく,Fを模写の主体と認めず,その模写の差止請求は否定する。
この結論は,F自身の拡大コピーの作成・配布の侵害とは別である。
以上

3 出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説

(1) 答案と評価項目の対応

答案1(1)は番号1~7,除外事項は番号8,1(2)は番号9~13,1(3)は番号14~20に対応する。
答案2は番号21~28,答案3(1)は番号29~34,3(2)は番号35~40に対応する。
番号7及び39は,本答案が採用しない肯定枝の評価であり,それぞれの条件を付して示している。

(2) 共同性・部分利用とB・Cへの救済

漫画全体が共同著作物かという判断と,Xが描いた人物イラストの利用にYの権利が及ぶかという判断は別である。
本答案は漫画全体の共同性を認めた上で,人物の視覚表現へのYの権利行使を否定する。
肯定構成を採る場合には117条の単独行使を落としてはならない。

Bは既に模型を譲渡し侵害のおそれがないため,過去の制作・譲渡への賠償が問題となる。
Cの間接的な依拠は,αを知っているかという故意・過失とは別の問題である。
C自身の制作・販売に,譲渡時に侵害物と知らなかった者の保護を移してはならない。

(3) 合意拒否と配信差止め

正当理由は,人気回復や使用料という事実の列挙に先立って判断規範を示す。
拒否が不当でも,全員合意という利用許諾の要件が当然に充足するわけではない。
本答案は,侵害訴訟で不当拒否の抗弁を認める理由を示して差止請求を制限している。

(4) 引用と模写主体

教材の直接複製・上映・譲渡と,生徒による模写を分ける。
引用の条文を挙げるだけでなく,個々の絵の説明との関係と,拡大コピーをお手本とする利用の違いを評価する。
営利目的だから引用が一切成立しないという説明も,教育目的だから全て許されるという説明も適切でない。

模写主体では,対象選定・教材提供・指導と収益を重視するXの主張に対し,生徒の任意・自主性を重視するFの反論を論ずる。
令和3年の音楽教室判決は,指導・環境提供があることだけから生徒の行為を事業者へ帰責しない理由を示している。
本答案はこの理由を重視してF主体性を否定するが,具体的な関与から肯定する立場も,事実に即した実質的理由を要する。

(5) 答案の限界と扱わなかった事項

Yの部分利用への行使の可否,引用の正当な範囲及び模写主体については,反対構成を検討した上で自説を一貫させる必要がある。
BやCの損害額を算定する具体的な数値はなく,本答案は過失と請求の構成を中心に示した。
著作者人格権の成否は設問の指定により扱っていない。

第6 関連記事

1 同じ年度の司法試験の別の模範解答

①令和4年度司法試験論文式試験の主要7科目の模範解答と評価項目(AI作成)
②令和4年度司法試験民事系第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した55項目と5段階の重み付け(AI作成)
③令和4年度司法試験論文式試験の選択科目8科目の模範解答(AI作成)

2 本問の模範解答と関連する山中弁護士ブログの記事

①共同著作物・二次的著作物の権利行使―単独差止め・損害賠償・原著作者の権利(AI作成)

第7 出典及び確認状態

1 公式資料

①法務省・令和4年司法試験問題の選択科目問題PDF:PDF22~23頁。
②法務省・令和4年司法試験論文式試験出題の趣旨:PDF32頁の知的財産法第2問から33頁の同問末尾まで。
③法務省・令和4年司法試験の採点実感の選択科目PDF:PDF23頁の科目総論,24~25頁の第2問採点方針,27~28頁の第2問採点実感及び29頁の科目総括。

2 法令

①e-Gov・著作権法:本記事は令和4年5月1日施行版を使用した。
②e-Gov・民法:令和4年4月1日施行版の1条・709条を確認した。
③文化庁・柔軟な権利制限規定の基本的な考え方:令和元年10月24日版,PDF14~16頁。

3 裁判例

①知財高裁令和3年3月18日音楽教室事件:PDF29・40~44頁の演奏主体に関する理由を確認した。
②最判平成23年1月20日ロクラクⅡ事件:公式趣旨・採点実感及び上記知財高裁判決が示す判断基準を参照した。
同最高裁判決の日本語原文を直接実読した範囲とは区別する。

4 確認状態

問題・公式趣旨・採点実感の関連本文,当時版の条文及び上記知財高裁判決の関連理由を確認した。
公式が述べる評価,原資料から確認した法規範及び本記事の解釈・重み付けは区別している。
本記事は法務省による公式模範解答ではなく,評価表の数字も配点・予測得点ではない。