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不起訴理由の違いと確認方法―罪とならず・嫌疑なし・嫌疑不十分・起訴猶予,処分通知と理由告知(AI作成)

第1 不起訴の結果と理由を分けて確認する

1 不起訴は無罪判決とは異なる

不起訴は,検察官が公訴を提起しない処分であり,裁判所が審理して言い渡す無罪判決とは異なる。
同じ不起訴でも,犯罪が成立しない場合,証拠がない又は足りない場合,犯罪の嫌疑が認められても訴追を必要としないと判断された場合などがある。
「不起訴になった」という結果だけで,どの理由による処分かを決めつけないことが大切である。

検察庁の「捜査について」と事件事務規程75条は,不起訴の理由を区別して説明している。
本記事は令和8年10月14日時点で確認した刑事訴訟法,事件事務規程及び検察庁の公表資料に基づき,主要な理由と結果の確認方法を整理する。
具体的な事件では,処分をした検察庁,対象となった被疑事実及び実際の告知・通知内容を確認する必要がある。

2 一人の一事件でも処分を一括りにしない

複数の被疑事実又は罪名がある場合は,どの事実について,いつ,どのような処分がされたのかを分けて確認する。
一部が不起訴でも,別の事実について起訴されたり,捜査が続いたりする場合がある。
釈放されたこと,呼出しがしばらくないこと又は警察の聴取が終わったことだけから,不起訴処分の存在を推測することはできない。

第2 主要な不起訴理由の違い

1 四つの区分の比較

次の表は,事件事務規程75条2項16号・17号・18号・20号の主要な区分を要約したものである。
これらは検察官の不起訴裁定の主文の区分であり,民事責任の有無を決める分類ではない。

裁定の主文規程が定める内容の要旨確認の着眼点
罪とならず犯罪の構成要件に該当しない,又は犯罪成立を阻却する事由が証拠上明確である場合。ただし刑事未成年・心神喪失の区分を除く。認定された事実と,犯罪成立に関する法律上の評価を分ける。
嫌疑なし被疑者が行為者でないことが明白,又は犯罪の成否を認定すべき証拠がないことが明白である場合。行為者の特定に関する問題か,証拠の不存在に関する問題かを確かめる。
嫌疑不十分犯罪の成立を認定すべき証拠が不十分である場合。どの要件に関する証拠が足りないのかを,得られた説明と資料から確認する。
起訴猶予被疑事実が明白な場合に,性格・年齢・境遇,犯罪の軽重・情状,犯罪後の情況から訴追を必要としないと判断する場合。示談,弁償等の事情と,犯罪成立・証拠に関する判断を混同しない。

2 罪とならずと証拠の不足は別の問題である

「罪とならず」は,認定される事実が構成要件に該当しない場合など,犯罪の成立に関する区分である。
これに対し,「嫌疑不十分」は,犯罪の成立を認定するための証拠が不十分であるという区分である。
交通事故でも,注意義務違反がないと判断された場合と,事故態様等の証拠が足りない場合を,同じ説明に置き換えるべきではない。

「嫌疑なし」も,単に「有罪にする証拠が十分でない」という意味の言換えではない。
規程が区別する主文と,担当者から説明された具体的な内容を対応させて読む必要がある。
理由の表示だけから,通知書に書かれていない事実認定まで推測しないことが重要である。

3 起訴猶予と示談の関係

刑事訴訟法248条は,犯人の性格,年齢及び境遇,犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により,訴追を必要としないときは公訴を提起しないことができると定める。
事件事務規程の起訴猶予の区分も,これらの事情を判断要素としている。
示談や被害弁償は事件によって判断資料となるが,示談したことだけで必ず起訴猶予になるという一律の基準ではない。

否認している被疑者の意見書では,犯罪が成立しないという主張又は証拠が不足するという主張と,情状に関する説明を区別することが有用である。
示談の成立を示す資料だけで,争っている行為や故意・過失を認めたことになると決めつけず,示談書の文言と本人の説明を確認する。

4 不起訴理由は四種類だけではない

事件事務規程75条2項には,主要な四区分のほか,被疑者死亡,親告罪の告訴等の欠如・無効・取消し,公訴時効完成,刑の免除などの区分がある。
通知又は説明が四区分に当てはまらないからといって,誤った処分であるとは限らない。
実際の裁定主文を確認した上で,その区分に対応する法令と事実関係を調べる必要がある。

第3 処分の告知・通知は立場により異なる

1 被疑者への不起訴処分の告知

刑事訴訟法259条は,検察官が不起訴処分をした場合に,被疑者から請求があれば,速やかにその旨を告げなければならないと定める。
被疑者への告知は請求を要件としており,すべての被疑者へ自動的に書面が郵送される制度と理解してはならない。
この条文による告知の対象は不起訴処分となった旨であり,告訴人等に対する261条の理由告知と同じではない。

事件事務規程76条1項は,この告知を書面でするときに,不起訴処分告知書を用いると定める。
書面による告知を希望するときは,処分した検察庁に,請求の方法,本人確認資料,代理人による請求及び交付方法を確認する。
条文だけから,全国一律の郵送・電子メール等の受付方法まで確定することはできない。

2 告訴人・告発人等への処分通知

刑事訴訟法260条は,告訴,告発又は請求のあった事件について,検察官が起訴又は不起訴の処分をしたとき,速やかに告訴人,告発人又は請求人へ通知することを定める。
公訴を取り消したとき,又は他の検察庁の検察官へ事件を送致したときも同様である。
この通知義務は,告訴人等から通知の請求があった場合に限られるという規定ではない。

事件事務規程60条は,260条の通知に処分通知書を用いると定める。
手元の書面では,対象となる被疑者・罪名・被疑事実,処分の種類と日付,発出した検察庁を確認する。
通知を受けた日も,後の問い合わせや不服申立ての検討に備えて記録しておくとよい。

3 告訴人・告発人等が不起訴理由を知りたい場合

刑事訴訟法261条は,告訴,告発又は請求のあった事件が不起訴となった場合に,告訴人,告発人又は請求人から請求があれば,検察官が速やかに理由を告げることを定める。
処分結果の通知と理由の告知は別の手続であるため,処分通知を受けただけで,必要な理由の説明もすべて受けたと考えない方がよい。
事件事務規程76条2項は,理由を書面で告げるときに,不起訴処分理由告知書を用いると定める。

理由告知を受けることと,検察庁内部の不起訴・中止裁定書又は捜査記録一式の交付を受けることは,同じ手続ではない。
得られた主文や説明でなお不明な点がある場合は,どの事実・罪名について何を確認したいのかを具体化して担当検察庁へ問い合わせる。
内部書類や供述調書等の開示は,記録の種類,申請者の立場,利用目的及び開示による弊害等に応じた別の検討となる。

4 被害届を提出した被害者等への情報提供

被害届を提出したことだけで,当然に260条・261条の告訴人等として扱われるわけではない。
提出した書類が被害届か告訴状か,誰のどの資格による申立てとして扱われたかを確認する必要がある。
もっとも,告訴人等に当たらない被害者へ情報が一切提供されないという意味ではない。

検察庁は,被害者や参考人等に事件の処分結果や刑事裁判の結果等を知らせる被害者等通知制度を設けている。
この制度の通知希望と,刑事訴訟法上の処分通知・理由告知を区別し,担当検察官又は被害者支援員等へ希望する事項と連絡方法を伝える。
実際にどの情報を受け取れるかは,申出先で確認する必要がある。

第4 担当検察庁へ確認するときの準備と伝え方

1 事件の特定情報を整理する

確認前には,①本人の氏名と事件における立場,②被疑者名,③事件の日時・場所・罪名,④担当警察署と送致先,⑤検番等の事件番号,⑥受け取った通知を整理する。
番号が分からない場合は,分かっている事実を示して事件の特定方法を相談する。
現在の担当検察庁が不明なときは,送致・移送の経過を確認し,最初に連絡を受けた検察庁が現在も担当していると推測だけで決めない。

2 求める内容を立場に合わせて伝える

被疑者本人であれば,例えば「私が被疑者となっている事件について,不起訴処分がされている場合には,刑事訴訟法259条による処分の告知を請求したい。書面での告知を希望するので,必要な手続を教えてほしい」と伝える方法がある。
これは問い合わせの文例であり,検察庁所定の請求書式ではない。
捜査中の事件について,259条により直ちに不起訴処分をするよう求められるという意味でもない。

告訴人等であれば,例えば「私が告訴した事件について,不起訴処分の通知を受けた。刑事訴訟法261条に基づき,その理由の告知を請求したい。対象となった被疑事実と,書面による告知の手続を確認したい」と伝える方法がある。
処分結果がまだ分からない場合は,まず260条による通知の状況と,事件が移送されていないかを確認する。
代理人から問い合わせる場合は,代理関係の確認資料と受付方法も確認する。

3 請求・回答の経過を残す

請求した日,提出先,担当者,対象事件,求めた内容,提出書類及び回答を受けた日を記録する。
処分日,通知書の作成日,通知を受け取った日,理由告知を請求した日及び理由を告げられた日は,それぞれ別の事実である。
電話で説明を受けた場合も,担当者の説明と,自分がその説明から推測したことを分けて控えておくとよい。

第5 不起訴と民事責任・刑事記録の取得

1 不起訴だけで民事賠償の結論は決まらない

刑事上の犯罪成立・起訴判断と,民事上の損害賠償責任は,適用法令や判断する事項が異なる。
不起訴処分がされたことだけで,損害賠償請求が当然に認められなくなるわけではない。
反対に,起訴猶予という主文だけから,民事請求の要件,損害額又は過失割合がすべて証明されたと扱うこともできない。

民事事件では,契約・不法行為等の請求根拠,具体的な行為,因果関係,損害及び既存の証拠を別に検討する。
刑事処分の資料を使うときも,処分の理由を説明する資料と,事故態様等を直接示す資料の役割を区別する必要がある。

2 通知書の取得と捜査記録の開示を分ける

不起訴処分告知書や理由告知書を受け取っても,それだけで捜査記録を閲覧・謄写できることにはならない。
実況見分調書,写真,供述調書等が必要なときは,対象文書,利用目的及び必要性を特定して,記録を保管する検察庁へ別に申請方法を確認する。
具体的な取得方法は,不起訴事件記録(実況見分調書・物件事故報告書)の入手方法で説明している。

第6 説明を受けても納得できないとき

告訴人・被害者等が不起訴処分に納得できない場合は,対象となった被疑事実,不起訴理由及び手元の証拠を整理し,検察審査会への申立て等を検討する。
理由の説明を求めることと,処分の当否を審査する制度を利用することは別である。
制度ごとの申立資格,対象事件,公訴時効等を確認し,まず担当弁護士と検討することが望ましい。

民事の損害賠償請求や証拠保存についても,刑事の処分確認とは別に期限や必要な対応を確認する。
問い合わせへの回答を待つことだけで,民事の時効や証拠消失への対応を済ませたことにはならない。
具体的な申立ての検討は,次の関連記事も参照されたい。

第7 関連記事

①在宅事件とは―身柄事件との違い,捜査から処分までの流れと結果の確認
②令和6年警察庁通達に基づく告訴・告発の取扱い
③交通事故で検察庁から呼び出されたら―検察官の取調べ・持ち物・起訴・不起訴
④交通事故の検番・送致番号の入手方法と弁護士会照会の手続(大阪)

第8 出典

①刑事訴訟法247条・248条・259条~261条。令和8年8月13日施行版を確認した。
https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000131

②法務省「事件事務規程」60条・75条・76条。令和8年3月23日最終改正・同年5月21日施行版。主文の区分及び告知・通知の書面様式を確認した。
https://www.moj.go.jp/content/001400166.pdf

③検察庁「捜査について」。不起訴の理由と起訴猶予の説明を参照した。
https://www.kensatsu.go.jp/qa/qa2.htm

④佐賀地方検察庁「被害者ホットライン・被害者等通知制度」(令和8年5月11日最終更新)。被害者等通知制度の目的と対象者の説明を参照した。
https://www.kensatsu.go.jp/kakuchou/saga/page1000083.html

⑤検察庁「検察審査会」。不起訴処分の当否を審査する制度の説明を参照した。
https://www.kensatsu.go.jp/shinsakai/