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導入修習の初年度評価とカリキュラムの改訂―第68期から第70期への見直し(AI作成)

第1 公式評価資料から読む導入修習

導入修習は,第68期司法修習から新設された。初年度の評価は,不足している実務基礎知識・能力への気付きと,分野別実務修習への円滑な移行という二つの目的について,一定の成果を認めるものであった。一方で,短期間に扱う内容,事前学修及び科目間の連携には改善の余地があり,第69期,第70期へとカリキュラムの見直しが続いた。

本記事は,司法研修所の第68期導入修習の評価の概要(平成28年4月,資料54),刑事弁護教官室の評価(同月,資料59)及び第69期導入修習の評価の概要(平成29年6月,資料67)を基に,初年度の評価と翌期以降の改訂を整理する。資料67には第70期への見直しも記載されているが,第70期の実施後の成果を評価した資料ではない。

制度の位置付け,新設の経緯及び期間は「導入修習とは」,第68期の個別事案・起案事項は「68期導入修習カリキュラムの概要」を参照されたい。

第2 第68期の二つの目的と評価方法

1 不足への気付きと実務修習への移行

資料54の1頁は,導入修習の目的を,修習開始時に不足している実務基礎知識・能力に気付かせることと,分野別実務修習をより効果的・効率的かつ円滑に行えるようにすることの二つに整理している。

したがって,即日起案や演習でうまく処理できない事項が現れたことは,それだけで導入修習の失敗を意味しない。不足を認識した後に,基礎事項を復習し,実務修習で何を学ぶかを具体化することが,この目的に沿った使い方となる。

2 アンケートと教官・指導担当者の所感

評価に用いられたのは,修習生のアンケート,各配属庁会の指導担当者の所感及び司法研修所教官の所感等である。導入修習終了時だけでなく,分野別実務修習を経た集合修習の開始時や,集合修習における起案の状況からも評価されている(資料54・1~2頁)。

これらは,受講者や指導者からみた評価を示す資料である。導入修習だけの効果を,実務修習での指導その他の要因から切り離して測定した結果とは区別して読む必要がある。

第3 初年度に認められた成果と残った課題

1 実務修習のイメージと学修への姿勢

資料54の1~2頁には,指導担当者からの肯定的な所感がまとめられている。民事裁判では記録の読み方や主張整理,刑事裁判では問題意識を持った傍聴,検察では職務や検討順序のイメージ,弁護では円滑で積極的な修習への移行が挙げられた。

集合修習についても,要件事実の基本的理解を欠く起案の減少,争点整理や当事者の主張を踏まえた事実認定,主体的な取組み等が指摘された。ただし,同資料2頁は,これらの成果に実務修習における指導等も大きく寄与したと考えられる旨を留保している。

2 成果があっても基礎理解と負担の問題は残る

導入修習の評価は,すべての修習生の基礎知識が十分になったという結論ではない。資料54の3頁は,事前学修,科目間の連携,指導担当弁護士との連携及び法科大学院との連携を今後の課題に挙げている。資料67の3頁も,一部の修習生について実体法・手続法の基本的知識の不足が指摘されたことや,不足を自覚しても自学自修に取り組まなかった者がいたことを踏まえ,基礎理解と自学自修の重要性を強調する必要があるとしている。

刑事弁護では,初年度にカリキュラムごとに異なる事案を扱っていたため,短期間に集中して学ぶ構成としては修習生の負担が重く,効率性に欠けるという意見も示された(資料59・2頁)。翌期の「同一事案を段階的に扱う」という改訂は,この課題に対応するものである。

3 実務修習期間の短縮に関する評価の範囲

資料54の2頁及び資料67の1~2頁は,導入修習が当時の規模であれば,分野別実務修習期間の短縮による格別の支障は生じていないという総括を示している。

この総括は,各配属庁会の事情や個々の修習生の経験をすべて同一と評価するものではない。さらに,その後に期間や実施方法が変更された場合の影響まで保証するものでもない。当時の制度規模と,評価資料の方法・時点を併せて確認する必要がある。

第4 第69期に向けたカリキュラムの改訂

1 争点整理,段階的学修及び時間配分

資料54の3頁と資料67の1頁は,第68期の課題を受けて第69期に行われた見直しを,次のように整理している。

科目主な見直し
民事裁判法科大学院では経験していない争点整理手続に重点を置き,講義にメリハリをつけ,カリキュラム間の連携を意識した。
刑事裁判事前課題から導入修習の各カリキュラムを通じ,事実認定を段階的に学べるよう工夫した。
民事弁護民事保全・執行の講義時間を拡大し,基礎的内容から実務的内容まで扱うようにした。
刑事弁護否認事件は一つの事案を複数のカリキュラムで継続して扱い,量刑が問題となる事件の弁護も取り上げた。

この表は,評価概要に挙げられた改訂例をまとめたものであり,全科目の変更点を網羅した一覧ではない。

2 刑事弁護で同じ事件を継続して扱う意味

資料59の2~3頁と資料67の別紙では,第69期の否認事件について,正当防衛の成否が問題となる傷害事件を用い,接見から公判前整理手続,模擬証人尋問・模擬被告人質問,最終弁論の準備へと弁護活動を連続して検討する構成が説明されている。量刑事件については,強盗致傷事件が取り上げられた。

同じ事案を継続して扱えば,最初の聴取事項,証拠開示,証拠評価及び公判での活動がどうつながるかを検討しやすい。これは,個々の書面の形式を覚えるだけでなく,後の手続を見通して活動する視点を育てる構成と読める。

第5 第70期へ続いた見直し

1 争点整理に時間を割く民事系科目

資料67の3頁によれば,民事裁判・民事弁護では,民事第一審手続を解説する講義の内容を絞り込み,争点整理手続にさらに時間を割くとともに,模擬争点整理の実演を行うなどの見直しがされた。

2 刑事裁判の教材と刑事弁護の事前課題

刑事裁判では,事実認定の基本的能力を身に付けやすくするために教材を改訂し,修習開始前に復習しておくべき刑事訴訟手続の事項をまとめた新教材を作成・配布するなどした。刑事弁護では,事前課題を,導入修習の初回の演習に向けて準備させる内容に改めた(資料67・3頁)。

これらは,導入修習の短い時間だけで基礎事項の復習から実践的検討までを完結させるのではなく,事前学修と当日の演習を接続しようとする見直しである。同資料は,こうした改訂の効果も踏まえ,今後も検討を続ける必要があるとしている。

第6 現在の修習準備に生かす読み方

1 過去の課題と自分の期の課題を分ける

第68~70期の資料からは,争点整理,事実認定,証拠収集,手続の進行及び各法曹の立場を具体的な事案で学ぶという方向が読み取れる。しかし,教材,起案事項,提出方法及び時間配分が現在も同じであるとは限らない。準備の際には,自分の期に配布された教材,事前課題及び通知を優先する。

最高裁判所の司法修習の概要や,そこから案内される教官室のページも確認できる。刑事裁判教官室コーナーには,科目の位置付けや教材が掲載されている。公式に公開された概要・教材と,各期の個別課題の全内容とは分けて確認する必要がある。

2 講評を次の学修につなげる

過去の評価資料から得られる実践上の示唆は,講評で分かった不足を次の学修へつなげることである。例えば,主張整理ができなければ訴訟物・請求原因・抗弁を具体的な事案で復習し,事実認定が難しければ,認定すべき事実,証拠,間接事実及び反対方向の説明を整理する。その上で,実務修習の傍聴や指導担当者との意見交換に臨むことが考えられる。

これは評価資料を踏まえた学修上の提案であり,司法研修所がすべての期に一律に指定した課題や方法を示すものではない。

第7 関連記事と出典

1 関連記事

導入修習とは―制度の位置付け,新設の経緯及び実施期間
68期導入修習カリキュラムの概要―個別事案と起案事項
導入修習カリキュラムの概要―期別資料とアンケートへの案内

2 公式評価資料

①司法研修所「第68期導入修習の評価の概要」(平成28年4月,資料54)。本文1~3頁と別紙カリキュラム一覧。

②刑事弁護教官室「第68期導入修習の評価について(刑事弁護)」(平成28年4月,資料59)。1~3頁。

③司法研修所「第69期導入修習の評価の概要」(平成29年6月,資料67)。本文1~3頁と別紙カリキュラム一覧。第70期への見直しは3頁。

④最高裁判所「司法修習の概要」及び「刑事裁判教官室コーナー」(令和8年10月7日確認)。