法律事務所が生成AIを利用するとき,DPA(Data Processing Addendum。データ処理契約又はデータ処理に関する追加条項)は重要な確認資料である。もっとも,「DPAがある」「学習に使わない」「ZDRである」という一つの表示だけで,事件記録を入力してよいと判断することはできない。
確認すべき単位は,情報の種類及び利用目的と,現に使用するサービス,プラン,アカウント,機能・APIエンドポイント,適用契約,保持条件,コネクタ及び実行権限の組合せである。本記事は,個人情報保護委員会,日本弁護士連合会並びにOpenAI,Anthropic及びGoogleの公式資料を基礎に,DPAを実務で読む順序を整理する。各事業者についての記載は令和8年10月1日に確認した資料の要約であり,特定サービスの安全性を保証又は推奨するものではない。
第1 結論―DPAがあるだけでは足りない
DPAは,データ処理に関する当事者の役割,処理指示,安全管理,再委託,事故通知,監査,国外処理及び契約終了時の取扱いを確認するための契約資料である。DPAの適用範囲,版及び利用契約への組込みを確認しないまま,名称だけを台帳へ記録しても意味は乏しい。
他方,DPAが適用されても,次の事項は別に確認する必要がある。
①当該事件資料を入力する必要性及び目的
②弁護士の守秘義務,依頼者との契約及び個人情報保護法との関係
③正確なプラン,アカウント,機能又はAPIエンドポイント
④学習利用,通常ログ,安全監視ログ,アプリケーション状態及びフィードバック
⑤ゼロデータリテンション(ZDR)の適格性,対象範囲及び例外
⑥データ所在地と実際の推論処理場所
⑦MCP,プラグイン又はコネクタの第三者条件
⑧AIエージェントが読む,書く,送る,公開する又は削除する権限
⑨人が承認する位置及び事故時の停止・復旧
したがって,DPAの確認は「入力してよい」という結論ではなく,利用可否判断の一工程である。
第2 DPAの位置付け
1 確認できること
DPAからは,少なくとも,①適用主体,②管理者・処理者等の役割,③処理対象・期間・目的,④文書化された指示への従属,⑤秘密保持,⑥安全管理措置,⑦再委託,⑧本人からの請求等への協力,⑨事故通知,⑩削除・返還,⑪監査及び⑫国外移転の枠組みを確認する。
個人情報保護委員会の通則編ガイドラインは,個人データの取扱いを委託する場合,委託元に委託先の必要かつ適切な監督を求めている。DPAは,その監督の基礎資料になり得る。しかし,契約条項の存在だけで実際の設定又は運用まで確認したことにはならない。
2 確認できないこと
DPAだけでは,個別事件への利用目的,入力の必要性,守秘義務上の正当な理由,依頼者への説明,実際に選択された設定,端末内の保存,外部コネクタの権限又はAI出力の正確性は決まらない。
また,事業者が公表するDPA,製品資料及び管理画面は,事業者が説明する契約・製品の挙動を確認する一次資料であるが,日本法上の適法性又は当該案件への利用の相当性を直接証明する法的資料ではない。
第3 三つの層を分ける
| 層 | 主な確認事項 | 典型的な資料 |
|---|---|---|
| データ処理 | 目的,学習利用,保持,人的アクセス,再委託,国外処理,削除,事故通知 | DPA,利用規約,プライバシー資料,製品別データ資料,管理画面 |
| アクセス・実行権限 | 読取り,書込み,送信,公開,削除,決済,権限変更,接続先 | 権限表,コネクタ設定,MCP設定,OS・クラウド設定,承認フロー |
| 弁護士の職務上の義務 | 守秘義務,必要性,依頼者との関係,安全管理,委託先監督,出力確認 | 法令,会規,委任契約,事務所規程,案件別利用判断 |
この三層は相互に関係するが,一つで他を代替できない。DPAが整っていても送信権限が広すぎれば誤送信の危険は残り,権限を絞っても目的外利用又は長期保存の確認を省くことはできない。依頼者の同意があっても,安全管理又は出力確認を免れるわけではない。
第4 利用単位を固定する
「OpenAIを使う」「Claudeを使う」「Googleを使う」という事業者名だけでは,確認単位として広すぎる。次の項目を一組として固定する。
①情報区分と案件
②利用目的
③サービス名
④個人向け・法人向け等のプラン
⑤利用アカウント及び管理主体
⑥対話画面,API,端末上のエージェント等の機能
⑦モデル又はAPIエンドポイント
⑧コネクタ,MCPサーバー及び外部ツール
⑨適用される利用規約及びDPA
⑩データの保存先,保持期間及び削除方法
⑪人の承認を要する操作
⑫確認日
同じ組織向けプランでも,会話履歴,プロジェクト,ファイル,バッチ処理,状態保持型API又は外部コネクタで保持条件が異なることがある。モデル名だけを変えた場合でも,接続先又は処理条件が変わるなら再確認する。
Google Workspaceについては,業務用のメールアドレス又は有料契約という表示だけで確認を終えない。
同じアカウントでも,エディション,Geminiのコアサービス・追加サービスの区分及び利用機能により,適用条件が異なる。
アカウントと機能の組合せを記録してから,契約と設定を照合する。
第5 DPAのチェックリスト
1 適用関係と役割
①契約主体は誰か。
②DPAは自動的に組み込まれるのか,別途締結又は同意が必要か。
③対象サービス,プラン及びアカウントはDPAの適用範囲に入るか。
④DPAの版,発効日及び変更履歴を確認できるか。
⑤法律事務所と事業者の役割はどのように定義されるか。
⑥法律事務所の指示以外に事業者が独自目的で処理できる範囲はあるか。
2 目的,学習利用及び派生データ
①入力,出力及びアップロードファイルをモデル学習又はサービス改善に利用するか。
②既定値と利用者が変更できる設定は何か。
③フィードバック送信時に会話又は周辺文脈が別条件で保存されるか。
④不正利用監視,安全性確認又は法的義務への対応のため人的アクセスがあり得るか。
⑤ログ,分類結果,利用統計,埋め込み,評価結果その他の派生データを独自目的で使えるか。
⑥学習不使用の説明が,当該プラン,機能及びアカウントへ適用されるか。
3 保持,削除及び契約終了
①通常の入力・出力は何日保持されるか。
②安全監視又は法的義務による例外保持はあるか。
③会話履歴,プロジェクト,ファイル,APIログ及びアプリケーション状態は別々に削除できるか。
④利用者による削除後,バックエンドからの削除が完了するまでの期間は何日か。
⑤契約終了時にデータを返還又は取得できるか。
⑥終了後の削除時期,バックアップ内の取扱い及び削除証明の有無はどうか。
削除条項は,保存日数の確認に加え,本人請求又は契約終了を実際に処理できるかという観点から確認する。
①法律事務所と提供者のどちらが受付・本人確認・対象特定を担当するか,②提供者から再委託先へどの情報を通知するか,③完了又は不対応をいつどう報告するか,④証明対象と残存範囲を何で確認するかを定める方法が考えられる。
契約で確保する報告には,受付・停止反映,提供先への依頼,受領者の実施及び対象と対応する完了記録という段階を設けることが考えられる。
法35条7項の通知と,法36条の理由説明努力義務,契約上の証明・監査協力は別である。法定通知だけで全削除ログ又は第三者証明を当然に得られるとは扱わない。
バックアップ復元時は,再消去の対象一覧を誰が保管し,復元データとどう照合し,誰が完了確認をするかまで決めることが望ましい。
この一覧自体についても,必要な情報量・保持期間・閲覧権限を管理し,削除対象の原文を無期限に保存する運用にしない。
バックアップの即時消去ができない場合も,保持理由・期限,現用処理からの隔離,利用制限,復元時の再削除及び完了確認を分けて検討する。
これらは契約・運用の確認事項であり,法がすべての場面で特定様式の削除証明を義務付けるという意味ではない。
法35条による本人の請求は,保有個人データへの該当性,請求理由及び必要な処理の限度を確認する。モデルの重みからの影響除去と,入力・ファイル等の原データの消去を同じ保証にまとめない。
手続の整理は,個人データの利用停止・消去を求める方法を参照されたい。
4 安全管理,事故及び監査
①転送中及び保存時の暗号化はどうなっているか。
②提供者の従業者のアクセス制御及び秘密保持はどうなっているか。
③事故通知の対象,方法及び時期はどう定められているか。
④SOC報告書又は国際認証等の監査資料を取得又は閲覧できるか。
⑤質問票,追加監査又は規制当局への協力に関する条項はあるか。
⑥法律事務所側で必要な設定,端末管理,アクセス制御及びログ保存は何か。
5 再委託,国外処理及び変更管理
①再委託先の一覧,役割及び所在地を確認できるか。
②再委託先の追加又は変更はどのように通知されるか。
③異議申立て,利用停止又は契約終了の選択肢はあるか。
④保存国と処理国を分けて確認できるか。
⑤データ所在地を選択しても,サポート,安全監視又は推論が地域外で行われる余地はあるか。
⑥外国制度を把握し,相当措置の実施状況を定期的に確認する責任者を決めているか。
⑦表示されたモデル以外のモデル又は他の事業者へ入力を転送することがないか(障害時の自動切替え及び事業者が独自に行う転送を含む。)。
⑦は,令和8年9月にAnthropicが公表した報告書で,一部の事業者が利用者に知らせないまま依頼を他社のAIへ転送していたと指摘されたことを踏まえた確認事項である。詳しくは,表示されたAIと実際に答えたAIは同じとは限らない―Anthropic報告書(令和8年9月)が指摘した利用者データの転送・蒸留と法律事務所の確認事項(AI作成)で説明している。
海外提供の点検では,個人情報保護法28条1項の本人同意,同等の保護制度を有する指定国又は基準適合体制のどの経路を用いるかを固定する。
指定国・基準適合体制による場合も,法27条の第三者提供,委託・共同利用等の要件を別に検討する。DPAに委託と記載されていても,提供者が独自の学習・製品開発目的で利用する範囲があるかを確認する。
基準適合体制による提供では,相当措置と影響を及ぼす外国制度の定期確認,支障発生時の是正,継続確保が困難な場合の提供停止及び本人への情報提供を担当者・記録と結び付ける。
外国にある第三者への提供編6によれば,提供先が当該データを扱い続ける限り,法28条3項の措置等が必要である。契約終了又は将来の送信停止だけで点検を終了しない。
同意を根拠とする海外提供など,別の経路にこの義務を一律に当てはめない。
6 返還データで業務を再開できるかを確認する
契約終了時にデータを取得できるという条項があっても,返還対象,形式及び期間が不明なら,必要な業務を再開できるとは限らない。入力・出力,添付ファイル,注釈,引用先,版情報,承認記録,ログ及びサービス内の状態について,取得できるものと取得できないものを分ける。提供者に存在しない記録まで当然に返還されるとは扱わず,必要な原資料と判断記録は事務所側でも管理する。
確認事項は,①機械で扱える形式と文字コード,②原資料・添付・引用の対応,③取得可能な期間と終了前の申請期限,④返還・移行支援の費用,⑤容量又は権限上の制約,⑥返還後の削除・例外保持である。公開資料又は架空の模擬案件を実際に取り出し,ファイルを開けるか,内容が欠けていないか,現在状態と根拠を再構成できるかを確認する。
返還・削除の条件はDPAを確認し,料金改定,利用量上限,モデル・機能の終了,通知期間及び移行支援は利用契約,注文書,料金表,製品資料も併せて確認する。これらをDPAに必ず書かれる事項と混同しない。取得できたファイルを別サービスへ入力することは新たなデータ処理であり,移行先の契約,保持,国外処理,必要性及び権限を別に点検する。以上は契約と運用の確認提案であり,特定提供者が全項目を保証しているという説明ではない。
第6 学習不使用,保持,ZDR及びアプリケーション状態を分ける
「学習に使わない」は,通常,モデルの訓練又は改善への利用を制限する説明である。入力が直ちに消えること,人が一切見ないこと,安全監視ログがないこと,又は外部コネクタへ渡らないことを意味しない。
ZDRは,対象となる入力・出力について通常の保持を行わない条件であるが,誰でも無条件に利用できるとは限らず,対象エンドポイント及び例外がある。状態保持を前提とする機能では,ZDRと両立しないこともある。したがって,「アカウントにZDRがある」だけでなく,実際に使う機能又はエンドポイントが対象かを確認する。
アプリケーション状態とは,会話,スレッド,プロジェクト,アップロードファイルその他サービス機能を提供するために保存される状態である。通常の不正利用監視ログとは目的及び保持条件が異なるため,別欄で記録する。
第7 OpenAI,Anthropic及びGoogleの公式資料から分かること
令和8年10月11日に確認したOpenAIの「How your data is used to improve model performance」は,個人向けChatGPT及びCodexの学習利用を止める設定があっても,利用者が評価等のフィードバックを送る場合は,関連する会話全体が学習に使われることがあると説明する。
また,Codexの「Include environments」は,タスクの内容だけでなく実行環境全体を学習に含める別設定であり,ChatGPTの設定又はプライバシーポータルでのオプトアウトだけでは変更されない。会話・タスクの学習利用,実行環境の学習利用及びフィードバック送信を分けて確認する。
同資料は,ChatGPT Business,Enterprise,Edu及びAPIの入力・出力について,初期状態では学習に使わないと説明する。APIでデータ共有を有効にした場合等は別途確認する。これらは提供者による現行の製品説明であり,個人向けサービスと業務向けサービスの設定を混同しない。学習不使用という説明だけで,保持,第三者への送信又は事務所の入力権限まで確認したことにはならない。
OpenAIのDPAは,再委託先,監査資料,終了時の返還・削除等を定める一方,利用者がサービス及び機能を適切に設定する責任も明記している。APIのデータ管理資料は,ZDRの利用に適格性確認及び承認が必要であること,保持条件がエンドポイントごとに異なること及びリモートMCPサーバーへ送られたデータは第三者の保持・所在地条件に従うことを示している。
令和8年10月19日に確認したOpenAIの常時稼働型エージェント「dots」のプライバシー等に関するFAQは,個人向けプランでは「すべての人のためにモデルを改善する」の設定により,dotの会話・作業,他のエージェントに委任した作業及び接続アプリのデータが学習に使われうると説明する。
同FAQは,モデルの改善をオフにしていても,安全に関する場合等の限られた場面では人が確認することがあること,及びdotの記憶は個別に確認・削除できず,dotを削除するまで保持されることも明記している。
dotsの取扱いは,弁護士・税理士がOpenAIのdotsを使う前に―常時稼働のAIエージェントと守秘義務,接続アプリ,消せない記憶及び承認ルールで詳しく整理している。
Anthropicの商用利用規約は,商用サービスの顧客コンテンツをモデル学習に使用しない旨を示している。DPAは,再委託先の一般的な承認,変更通知,安全管理,監査等を定めている。これらは商用契約の確認資料であり,個人向けサービス又は当該機能へ当然に適用されると決めつけない。
Google CloudのDPAは,契約終了後の削除,処理場所及び再委託先等を定める。Google WorkspaceのGeminiに関する管理者向け資料は,Geminiが原則として利用者自身がアクセスできるコンテンツへアクセスし,管理者及びコンテンツ所有者の権限設定が適用されることを説明している。したがって,DPAの確認と,Workspace内の共有設定・アクセス権の確認を分けて行う。
Googleの公式ヘルプ及びWorkspaceのPrivacy Hub(令和8年10月12日~13日確認)は,対象ライセンス等に応じたGeminiのコアサービスと追加サービスの区別を示す。
追加サービスには別の利用規約・プライバシー条件が適用される場合がある。
Privacy Hubの企業向け説明は対象エディション等の範囲を持ち,個人向けサービスへ当然に広げられない。
| 確認する単位 | 記録・照合する内容 |
|---|---|
| 契約とアカウント | 契約主体,エディション,ライセンス,利用者,管理者及び実際にログインしているアカウント |
| サービス区分と機能 | Geminiがコアサービスか追加サービスか。Workspace内の機能,Geminiアプリ,API及び外部接続を分ける |
| 適用条件 | 主契約,CDPA,サービス固有条件,対象範囲及び確認した版・日付 |
| 学習・人的アクセス | 入力・出力の学習利用,フィードバックの扱い及び人的レビューの条件 |
| 保持と削除 | 会話履歴,アップロード,Workspace側の記録,管理者設定,例外保持及び削除方法 |
| アクセス権 | Drive等の所有者,共有相手,外部共有,コネクタ及び管理者が変更できる範囲 |
学習不使用は履歴の無保存を意味しない。
Geminiアプリの会話とWorkspace内のGemini機能で履歴管理が異なるため,保持を一つの数字にまとめない。
管理者の設定と個々のサービスの説明を照合する。
また,個人環境の資料をWorkspaceの利用者に共有しただけでは,所有者,旧コピー又は適用契約が移ったとは扱わない。
この表は入力可否の実務上の確認例であり,税理士団体等の指針を弁護士に直接適用するものでも,DPAという名称の契約があれば一律に適法となるという説明でもない。
以上は各提供者の一次資料から確認できる契約・製品上の事実である。
事業者間の優劣又は法律事務所における安全性を一括して判定する資料ではない。
第8 MCP・コネクタとAIエージェントの権限
生成AIがMCPサーバー,電子メール,クラウドストレージ,事件管理システム又はブラウザと接続する場合,基盤モデル提供者のDPAだけで情報経路全体を確認したことにはならない。接続先の事業者,利用規約,DPA,保持,処理場所及び再委託先を別に確認する。
また,接続の存在と操作権限を分ける。読む権限,書く権限,送信する権限,公開する権限,削除する権限及び権限を変更する権限を別々に台帳化し,業務に不要な権限を与えない。外部へ効果が生じる操作,秘密情報が管理境界を越える操作及び回復困難な操作は,対象と影響が確定した実行直前に人が承認する。
ウェブページ,電子メール,PDFその他の外部資料に書かれた指示は,資料であって権限付与ではない。外部資料中の命令を実行指示へ昇格させず,指示者,伝達経路,対象及び権限範囲を確認する。
一つの製品のために接続したアプリの権限が,同じ事業者の別の製品にも及ぶことがある。
前記FAQによれば,プラグインの権限はdots,ChatGPT,ChatGPT Work及びCodexで共有され,dotは既存の接続を,許可された権限の範囲で使うことができる。
また,接続を解除しても,dotが既に文脈に取り込んだ情報は削除されないから,依頼者の情報を含むアカウントを接続するかどうかは,接続する前に判断する必要がある。
第9 法律事務所の利用可否判断
| 区分 | 原則 | 例 |
|---|---|---|
| 公開情報だけ | 承認済みサービスで利用しやすい | 公表法令・裁判例の整理,見出し案,文章校正 |
| 仮名化した内部情報 | 再識別可能性と既存コネクタを確認 | 事実経過の類型化,論点候補の抽出 |
| 事件の秘密情報 | プラン・契約・設定・必要性を案件単位で確認 | 書証の整理,準備書面の下書き |
| 特に高い機密性又は不要な第三者情報 | 入力しない選択を含めて比較 | 秘密保持命令対象,認証情報,マイナンバー,訴訟に不要な病歴等 |
| 外部送信・提出・公開・削除 | 人の明示承認と読戻し | メール送信,裁判所提出,WordPress公開,ファイル削除 |
利用可否は,DPAの有無だけでなく,目的に必要な情報量,代替手段,誤り又は漏えい時の影響,回復可能性及び人の確認能力を含めて判断する。確認できない項目が残る場合は,公開情報に限定する,仮名化する,機能又はコネクタを外す,又は利用しないという順で危険を下げる。
第10 依頼者への説明及び同意
依頼者へ説明する場合は,製品名又は「学習オフ」という短い表示だけでなく,利用目的,入力する情報の範囲,主要な保持・人的アクセス・再委託・国外処理,外部コネクタの有無,代替手段及び人が最終判断することを,案件の性質に応じて説明する。
包括的な同意条項があっても,弁護士の守秘義務,安全管理措置,委託先の監督,必要最小限の入力及び出力確認は残る。新しいサービス,プラン又はコネクタへ切り替える場合,説明時の前提から外れるなら再説明又は再同意の要否を検討する。
第11 台帳,定期点検及び証拠化
法律・税務の説明や要約を短くするときに条件を落とさない確認方法は,「AIで法律・税務の文章を短くするときの確認方法―要件,例外,適用時期及び出典を残す」を参照。
学習利用の欄は,①会話・タスク,②Codex等の実行環境,③評価・問題報告等のフィードバックに分ける。各欄に,適用するサービス・アカウント,設定の状態,変更できる者,確認日及び根拠資料を記録する。
フィードバックを送る前にも,その会話や添付資料に依頼者情報等が含まれていないか,送信が許されるかを確認する。匿名化やオプトアウトの有無だけで,フィードバック送信を一律に許可しない。
確認結果は,サービス名,プラン,アカウント,機能・エンドポイント,DPAの版・URL・確認日,学習利用,保持,ZDR,アプリケーション状態,人的アクセス,再委託先,処理国・保存国,コネクタ,権限,承認者及び次回確認日を一行ずつ台帳へ記録する。
規約又はDPAの変更通知,モデル・機能・APIエンドポイントの変更,コネクタの追加,再委託先又は処理国の変更,事故又はヒヤリ・ハットの発生及び定期点検時に再確認する。URLだけでなく,取得日,版,該当箇所及び必要に応じて設定画面を保存し,後から判断の前提を再現できるようにする。
ただし,画面の写し又は監査ログは,その時点で表示又は実行された事実の資料であって,日本法上の適法性,裁判例の不存在又は出力内容の正しさを当然に証明するものではない。
台帳には,海外提供の法的根拠,提供データと提供日,保持・削除の期限,本人請求の受付主体,提供先・再委託先への通知,例外保持の根拠及び処理証明の保存先も記録することが考えられる。
提供元の送信停止,受領先での原データ消去及びモデルへの影響除去は,それぞれ別の欄で実施状況と未確認事項を管理する。
Googleの欄は「学習に使わない」だけでなく,コア・追加サービスの区分,対象エディションと機能,現在の履歴設定及び管理者を併記する。
契約や設定の根拠を確認できないときは,確認待ちの項目と入力を止める情報範囲を明確にする。
個人から業務環境への移行は,GmailとGoogle Workspaceのアカウント・容量・端末管理も参照されたい。
第12 一次資料及び判例の確認状況
本記事の法的枠組みは,個人情報保護法,個人情報保護委員会の注意喚起及びガイドライン並びに日本弁護士連合会の会規を一次資料としている。各サービスの契約・技術条件は,各事業者のDPA,商用利用規約,データ管理資料及び管理者向け資料を一次資料としている。元となったnote記事その他の解説は,論点の発見及び比較の参考にとどめ,現在の契約条件又は日本法上の結論の裏付けには用いていない。
令和8年10月1日の今回の確認では,判例秘書は入口画面の確認にとどまり,ログイン済みの判例検索を実行していない。検索回数は0回,ヒット件数は不明,判決本文の確認は0件である。したがって,DPA又は法律事務所の生成AI利用を直接判断した日本の裁判例が存在しないとは述べられない。本記事のチェック項目は,直接判示した裁判例に基づく結論ではなく,法令・会規,行政資料及び契約・製品の一次資料を踏まえた実務上の提案である。
令和8年10月3日の関連調査では,判例秘書でnote・学習,学習対価還元,生成AI・削除及び学習データ・利用停止に関する語を追加検索した。
これは法律事務所のDPA全般について網羅的に裁判例を再検索したものではない。学習済みモデルの消去又は海外提供先の処理を直接判断する裁判例を確認できたとは扱っていない。
削除依頼後の回答評価,完了記録,残存バックアップ及び海外受領者への追跡は,AI事業者へのデータ削除を依頼した後の確認事項―消去の意味,完了通知,バックアップ及び海外提供先で詳しく説明している。
第13 関連記事
①学習オフ設定のClaudeコード及びGoogle AI Ultraの利用は弁護士の守秘義務等に違反しないという個人的意見(AIリライト)
②法律事務所の生成AI利用ガイドラインの作り方(AI作成)
③法律事務所のAIエージェント業務設計(AI作成)
④法律事務所がAIエージェントに専用PCを与えるときの安全設計(AI作成)
⑤AIエージェントを使って裁判所提出書面を作成するときに行うべきハルシネーション防止方法(AI作成)
⑥生成AIを使った本人訴訟(AI作成)
⑦表示されたAIと実際に答えたAIは同じとは限らない(AI作成)
⑧弁護士・税理士がOpenAIのdotsを使う前に―常時稼働のAIエージェントと守秘義務,接続アプリ,消せない記憶及び承認ルール(AI作成)
第14 出典・参考資料
①個人情報の保護に関する法律(e-Gov法令検索)
②個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」
③個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)
④個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(外国にある第三者への提供編)
⑤弁護士職務基本規程(日本弁護士連合会)
⑥弁護士情報セキュリティ規程(日本弁護士連合会)
⑦OpenAI「Data Processing Addendum」及び「API data controls」
⑧Anthropic「Data Processing Addendum」及び「Commercial Terms of Service」
⑨Google Cloud「Cloud Data Processing Addendum」
⑩Google Workspace「Gemini がアクセスできる情報及び管理者の設定」
⑪Google「Gemini Appsの業務・学校アカウント向けサービス区分」及び「Generative AI in Google Workspace Privacy Hub」。
前記Googleの適用確認例は,令和8年10月12日~13日に対象範囲,学習,履歴保持及び権限の説明を照合したものである。
令和8年10月4日の補充は,個人情報保護委員会のQ&A1-8・9-16・9-18,外国にある第三者への提供編4-2・6及びnoteの公式FAQ・専用ヘルプの該当箇所による。追加の証明・台帳は実務上の提案であり,事業者の実履行を確認したものではない。