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自転車同士の事故の過失割合―交差点・追抜き・進路変更・追突・横断の基準(AI作成)

自転車同士の事故では,自動車事故と同じ基準をそのまま使うのではなく,自転車の速度,不安定性,歩道通行,二段階右折及び児童・高齢者等の事情を反映した基準を確認する必要がある。

赤い本講演録2016には「自転車同士の事故の過失相殺基準(第一次試案)」が既に収録されており,少なくとも2016年時点には第一次試案が示されていた。したがって,赤い本講演録2022を第一次試案の初出として扱うのは正確でない。その後,令和8年刊行の別冊判例タイムズ39号は「第6章 自転車同士の事故」を新設し,交差点,同方向,追突及び横断等の類型ごとに基本割合と修正要素を整理した。現在は同号を出発点とし,赤い本講演録2016及びその後の講演録は基準形成の経緯を理解する資料として位置付けるのが相当である。

第1 自転車同士の過失割合の現在の基準

道路交通法上,自転車は軽車両であり,信号,左側通行,一時停止,優先道路,徐行,安全運転,右左折方法及び灯火等の規制を受ける。

もっとも,道路交通法違反があれば直ちに一定の民事上の過失割合になるわけではない。民事上の過失割合は,事故態様,違反と事故発生との関係,予見可能性,回避可能性及び被害者保護の必要性等を踏まえて判断される。

第2 基本割合と修正要素の読み方

次章以下の数字は,別冊判例タイムズ39号が示す典型的な事故の「基本割合」であり,AとBの過失を合計100として表記する。現場の信号,規制,進行方向又は衝突位置が異なれば,別の類型になる。

児童等・高齢者,速度差,右側通行,見通し,合図,著しい前方不注視,スマートフォン使用その他の著しい過失・重過失等により修正されるため,基本割合だけで示談してはならない。

第3 交差点で直進車同士が衝突した場合

1 信号機がある交差点

事故態様AB
A青信号・B赤信号0100
A黄信号・B赤信号2080
A赤信号・B赤信号5050

青信号側にも,通常の安全確認を怠った,赤信号車を容易に発見して回避できたなどの事情があれば修正され得る。赤信号側の違反が重大であるため,青信号側の軽い不注意まで機械的に加算するものではない。

2 信号機がない交差点

事故態様AB
同幅員・A左方車/B右方車4555
A一方通行無違反/B一方通行違反3070
A広路車/B狭路車4060
A一時停止規制なし/B一時停止規制あり3070
A優先道路車/B非優先道路車2080

同幅員の交差点では左方優先が出発点となるが,右側通行,減速の有無,明らかな速度差及び見通し等が修正要素となる。一時停止側は,停止線で止まるだけで左右が見えない場合,徐行して安全確認できる位置まで進む必要がある。

第4 直進車と右折車・左折車の事故

直進車と右折車がともに青信号で交差点に進入した場合,二段階右折をすべき右折車に方法違反がある典型例では,直進車A20・右折車B80が基本となる。

ただし,直進車が黄信号又は赤信号で進入した場合,右折車が交差点内で待機していた場合,右折車が早回り又は大回りをした場合等は別の類型又は修正となる。歩道から横断を開始する自転車が従う信号と,車道を進行する自転車が従う信号が異なる場合もあるため,対面信号を写真及び信号周期表で特定する必要がある。

第5 道路外出入・正面衝突の事故

駐車場,店舗又は住宅等の道路外から道路へ進入する自転車は,直進車の進行を妨げないよう慎重に安全確認する必要がある。他方,直進車にも前方注視が求められ,路外車がすでに道路へ頭を出して待機していたか,直進車が高速度であったか,見通しが悪かったか等により割合が変わる。

対向する自転車同士が同程度の条件で正面衝突した典型例は50対50が出発点となるが,左側通行違反,車道又は歩道の通行位置及び回避可能性を個別に確認する。

第6 追抜き・進路変更・追突事故

事故態様AB
A先行車/B追抜車0100
A後続直進車/B進路変更車4060
A追突車/B停車中の自転車1000

追抜車は,バックミラーがないことの多い先行自転車の動きを予測し,十分な側方間隔を確保する必要がある。先行車の通常のふらつきには追抜車側が対応すべきであるが,通常予想される範囲を超えるふらつきは修正要素となり得る。

進路変更事故では,後続直進車も前方車の動きを見て減速できるため40・60が基本となる。進路変更車が手信号等の合図をした場合,後続車の予見可能性が高まるため修正され得る。

停車中の自転車への追突は,追突車100・被追突車0が基本である。ただし,被追突車が危険防止のためやむを得ない場合でないのに急停止し,後続車が制動距離上回避できなかったなどの事情があれば修正されることがある。

第7 交差点以外で横断した自転車の事故

交差点以外で自転車が道路又は歩道を横断し,直進自転車と衝突した典型例は,直進車A30・横断車B70が基本となる。横断直前後の急な横断,横断車又は直進車の高速度,見通し,右側通行及び児童等・高齢者等が修正要素となる。

交差点の直近では,交差点事故の基準と横断事故の基準の中間的な評価が必要になることがあり,衝突地点を正確に特定する必要がある。

第8 基本割合を修正する主な事情

修正事情には,例えば,児童等・高齢者が被害者であること,高速度,明らかな速度差,右側通行,歩道通行の可否,無灯火,合図,見通し,著しい前方不注視,スマートフォン操作,酒気帯びその他の著しい過失・重過失がある。

同じ事情を二重に評価してはならない。例えば,一方通行違反や赤信号違反が基本割合に既に織り込まれている場合,その違反自体を再度「著しい過失」として加算することはできない。

第9 事故直後に保存すべき証拠

双方の自転車の停止位置,衝突位置,進行方向,車道・歩道・路側帯の幅,停止線,標識,信号機及び見通しを写真と動画で記録する。車体の損傷,衣服,ヘルメット,路面痕及び負傷部位も撮影し,修理又は処分前に型式及び損傷状態を保存する。

ドライブレコーダー又は自転車用カメラ,店舗・住宅の防犯カメラ,目撃者,スマートフォンの位置・時刻情報,配達アプリの走行記録及び信号周期表等を早期に確認する。事故後の説明は,信号,速度,左右の確認及び回避行動について変遷が生じないよう,記憶が鮮明なうちに時系列で作成する。

第10 青切符と民事の過失割合の違い

令和8年4月1日から,16歳以上の自転車運転者には交通反則通告制度が適用されている。警察庁は,自転車が軽車両であり,車道の左側通行,信号,一時停止,夜間灯火等を守る必要があると案内している。

青切符の告知又は反則金の納付は,刑事手続を簡略化する制度上の処理であり,民事の過失割合を確定するものではない。反対に,青切符を受けなかったことだけで民事上の過失がないことにもならない。

第11 出典及び関連記事

① e-Gov法令検索「道路交通法」

② 警察庁「自転車は車のなかま~自転車はルールを守って安全運転~」

③ 警察庁「自転車の交通ルール」

④ 菊池憲久・堂薗幹一郎・伊東智和編『民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準〔全訂6版〕』(別冊判例タイムズ39号,判例タイムズ社,令和8年)466頁~543頁

⑤ 公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部編『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準 2022年版 下巻(講演録編)』121頁~160頁

⑥ 自転車の青切符とは

⑦ 交通事故の実況見分調書作成時の留意点

⑧ 物損事故の示談