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人身傷害保険金請求訴訟の訴状作成チェックリスト―管轄,当事者,請求原因,保険金計算,既払金及び保険代位(AI作成)

人身傷害保険金の請求では、交通事故の損害額を計算するだけでは足りない。誰のどの契約に基づく請求か、事故時に適用される約款はどれか、被保険者及び保険金請求権者は誰か、加害者側の賠償金等がいつ、誰に、どの費目について支払われたかを整理する必要がある。

訴状作成では、①保険契約、②被保険者、③保険事故、④損害額、⑤約款上の保険金計算、⑥既払金、⑦支払期限、⑧保険代位を別々の欄で確認すると、請求原因の抜けと計算の二重控除を見つけやすい。本記事は、その確認順序と提出資料を説明する。

第1 最初に作る三つの表

1 契約・当事者表

保険証券だけでなく、契約申込書、更新案内、変更届、普通保険約款及び特約を揃える。契約者、記名被保険者、被保険自動車、運転者、事故時の搭乗者、保険金請求権者及び原告候補を一つの表にする。

死亡事故では、被保険者本人の保険金請求権を誰が相続したか、約款上の死亡保険金請求権者が別に定められていないかを確認する。未成年者、成年被後見人、法人名義車両又は家族所有車両では、契約者と被保険者を混同しない。

2 支払時系列表

事故日から提訴日までについて、治療費の一括対応、自賠責保険金、任意対人賠償金、人身傷害保険金、労災給付その他の給付を、支払日、支払者、受領者、名目、対象期間及び対象費目ごとに並べる。

医療機関へ直接支払われた治療費も含める。単に「既払金合計」とせず、元本と遅延損害金のどこへ充当されるか、保険代位の対象となるかを分けて検討する。

3 損害・保険金計算表

次の三段階を混ぜないことが重要である。

段階計算対象主な確認資料
①民法上の損害治療費、休業損害、慰謝料、後遺障害逸失利益等診療録、診断書、収入資料、裁判基準の計算書
②加害者への賠償請求過失相殺、素因減額、既払金等を反映した額過失資料、医学資料、支払一覧
③人身傷害保険金約款所定の損害額基準、限度額、控除条項等を反映した額事故時約款、特約、保険会社の計算書

人身傷害保険金は、裁判所が認定する損害額と常に一致するわけではない。事故時の約款が「裁判上の請求」又は判決・和解等について特別の計算条項を置くかも確認する。

第2 管轄と当事者

1 管轄は保険契約上の金銭請求として確認する

人身傷害保険金請求は、通常、保険会社に対する保険契約上の金銭請求である。被告保険会社の普通裁判籍、義務履行地、約款の合意管轄条項及び請求額による事物管轄を確認する。

事故現場があるという理由だけで、その土地の裁判所に保険金請求の管轄が当然に生じるとは限らない。加害者に対する不法行為損害賠償請求を併合する場合は、各請求の管轄と併合の可否を別に検討する。

2 原告となる者を確定する

原告欄には、約款上の保険金請求権者を記載する。保険契約者であることだけで当然に請求権者になるとは限らない。被保険者本人、相続人、法定代理人、破産管財人等のうち誰が権利を行使するかを、戸籍、登記事項証明書、審判書その他の資格資料で裏付ける。

相続人が複数いる場合は、請求権の帰属、相続分、遺産分割又は共同訴訟の要否を検討する。死亡保険金請求権の性質は約款文言により異なるため、一般論だけで相続財産と決めない。

3 被告の表示を確認する

保険証券の会社名が現在の商号と一致するか、合併又は商号変更がないかを法人番号公表サイト及び登記事項証明書等で確認する。代理店又は事故受付窓口を被告としない。

第3 請求原因の骨格

1 保険契約

契約日、保険期間、保険種類、証券番号、記名被保険者、被保険自動車、保険金額及び人身傷害条項・特約の組込みを特定する。訴状の別紙として、適用約款と特約の版、条項名及び必要な定義を整理すると分かりやすい。

「現在の約款」ではなく、事故日に適用されていた約款を提出する。更新前後、車両入替え、運転者範囲又は記名被保険者の変更があれば、その効力発生日も確認する。

2 保険事故と被保険者該当性

事故日時、場所、事故態様、運転・搭乗・歩行中等の別、受傷又は死亡結果を記載する。被保険者の範囲を、契約車両搭乗中、他車搭乗中、歩行中等の約款区分に当てはめる。

警察資料、交通事故証明書、実況見分調書、車両写真、ドライブレコーダー、診療録等により、事故と傷害との因果関係を示す。対象外事故又は免責事由が争われる可能性があるときは、否認を予想して関連事実と証拠を準備する。

3 損害と保険金額

損害項目ごとに、発生日、対象期間、単価、数量、根拠資料及び計算式を示す。後遺障害では症状固定日、等級、労働能力喪失率・期間、基礎収入及び中間利息控除を、死亡では相続人、逸失利益、生活費控除及び葬儀費等を整理する。

約款基準額と裁判基準損害額が異なる場合は、どちらの数値をどの条項に用いたかを明示する。表の列名を「裁判基準」「約款基準」「賠償既払」「人傷既払」「請求残額」に分けると検算しやすい。

4 保険金請求と支払期限

保険会社へ請求した日、提出した書類、追加資料の要求と提出日、調査完了又は不払通知の日を記載する。支払期限は保険法の規定だけでなく、約款が定める必要書類、調査事項及び延長条項を確認する。

遅延損害金の起算日は、事故日と保険金支払期限を混同しない。請求書、配達記録、受付メール及び保険会社の受領通知を保存する。

第4 人身傷害保険金と賠償金の順序

1 人傷先行

人傷社から先に保険金を受け取った後に加害者へ損害賠償請求をする場合、保険会社が代位取得した部分と被害者に残る部分を分ける。

最高裁判所第一小法廷平成24年2月20日判決が参照する同日判決(平成21年(受)第1461号・第1462号、民集66巻2号742頁)は、被害者に過失がある場合の代位範囲について、裁判基準損害額が被害者に確保されるようにする考え方を示した。実際の計算では事故時約款の代位条項を確認する。

2 賠償先行

加害者側の賠償金を先に受領した後で人身傷害保険金を請求する場合、その賠償金を約款計算のどこで控除するかが問題となる。最高裁判所第一小法廷令和4年3月24日判決と事故時約款を確認し、賠償先行の計算式を別紙で示す。

3 死亡事故と素因減額

最高裁判所第一小法廷令和5年10月16日判決は、死亡事故における人身傷害保険金と損害賠償請求権の代位・控除を扱う。相続人ごとの受領額と請求権を区別する必要がある。

最高裁判所第三小法廷令和7年7月4日判決(令和5年(受)第1838号)は、民法722条2項の類推適用による素因減額がある場合の人傷社の代位範囲を示した。裁判所の2026年版共通書式等マニュアルも、人身傷害充当について平成24年判決と同判決を反映している。

第5 提出証拠チェックリスト

1 契約関係

①保険証券及び契約内容確認書。
②事故時に適用される普通保険約款及び全特約。
③申込書、更新・変更書類及び重要事項説明書。
④記名被保険者、運転者範囲及び被保険自動車の資料。
⑤保険会社との照会・回答及び不払又は計算通知。

2 事故・損害関係

①交通事故証明書、刑事記録、車両写真及び映像。
②診断書、診療報酬明細書、診療録、画像及び後遺障害資料。
③休業損害証明書、確定申告書、給与資料及び事業資料。
④損害項目別計算書と各領収書。
⑤過失割合又は素因減額に関する事実・医学資料。

3 既払・代位関係

①各支払の支払日、金額、支払者、受領者及び費目の一覧。
②自賠責、対人賠償、人傷、労災その他給付の支払通知。
③医療機関への直接払の明細。
④保険代位通知、求償に関する書面及び債権残額の計算。
⑤和解書、免責証書、判決書又は調停調書。

第6 訴状の最終点検

1 請求の趣旨と計算が一致しているか

元本、遅延損害金率、起算日及び仮執行宣言を確認する。訴額、印紙、郵券及び管轄を再計算し、別紙計算書の最終残額と請求の趣旨の金額を照合する。

2 二重控除と控除漏れがないか

同じ治療費が人傷既払と対人賠償既払の双方に入っていないか、医療機関への直接払を落としていないか、相続人間の受領額を混ぜていないかを確認する。支払日が異なると遅延損害金の計算も変わるため、合計額だけで処理しない。

3 電子提出用データを分けておく

訴状本文、当事者目録、請求額計算書、証拠説明書及び書証を、提出単位とファイル名が分かるように保存する。TreeeSによる提出操作は、TreeeSで訴訟を提起する方法を参照されたい。

第7 関連する記事

1 人身傷害保険の請求順序

人身傷害保険の補償範囲と請求順序では、人傷先行・賠償先行、保険代位及び主要最高裁判例を説明している。

2 訴状提出の操作

TreeeSで訴訟を提起する方法は、訴状フォーム、当事者・代理人、添付資料及び受付番号の確認を扱う。

第8 出典と確認範囲

1 法令・裁判例等

① e-Gov法令検索「保険法」「民法」「民事訴訟法」。
②最高裁判所第一小法廷平成24年2月20日判決(平成21年(受)第1461号・第1462号、民集66巻2号742頁)。
③最高裁判所第一小法廷令和4年3月24日判決。
④最高裁判所第一小法廷令和5年10月16日判決。
⑤最高裁判所第三小法廷令和7年7月4日判決。
⑥裁判所「交通事故損害賠償請求事件の共通書式等マニュアル」。

2 実務資料と限界

日弁連交通事故相談センター東京支部編・発行『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準』2017年版講演録の訴状作成に関する実務整理を参照した。

本記事作成時、判例秘書は検索しておらず、掲載された下級審裁判例の判決全文、確定状況及び後続審を網羅確認していない。個別事件では、事故時約款、全既払金資料及び必要な判決本文を改めて確認する必要がある。