第1 結論
Windows 11でCPU使用率が100%近くまで上がると,文字入力,ウィンドウの切替え及び軽いアプリの起動まで遅くなることがある。
本記事は,CPU使用率の読み方,重い処理と自動起動の減らし方及び「最大のプロセッサの状態」を95%に設定する場合の意味と注意点を説明する。
CPU使用率100%は,その測定ツールと区間における値が上限付近にあることを示すにとどまり,CPUの物理的な全能力を使い切ったこと,又は故障・フリーズの原因を確定する表示ではない。
短い上昇と継続する上昇,PC全体の値と個別プロセスの値,CPU・メモリ・ディスク・GPUの負荷を分ける必要がある。
利用者が意図して動かしている重い処理が競合している場合,軽いアプリをいつでも開きやすい状態にする第一候補は,同時実行数を減らし,不要なスタートアップアプリを見直し,一度に多数の処理を再開しないことである。
原因不明の場合は,先に上位プロセスと他の資源を確認する。
発熱又は高い性能状態での動作が関与する疑いがあり,影響を測定しながら試す場合には,最大のプロセッサの状態を95%にする方法もある。
ただし,一律に推奨されるフリーズ対策ではなく,CPUの5%を軽いアプリ専用に取り置く設定でもない。
特定のアプリではなく,使用中の電源プランについて,プロセッサの最大性能状態を最大性能の95%までとする設定である。
軽いアプリを含む全体に作用し,実際の効果はCPU,ファームウェア及び電源プランによって異なることがあるため,現行値を記録し,一つの変更として比較する必要がある。
第2 CPU使用率100%の意味
1 短時間の上昇と継続する上昇を分ける
アプリの起動,Windows Update,圧縮・展開,ウイルス検査,検索索引,PDF変換又はビルドの開始時には,CPU使用率が短時間だけ大きく上がることがある。
短い上昇だけで異常とはいえない。
一方,CPU使用率が長く100%近くに張り付き,その間に文字入力,マウス操作,ウィンドウの切替え又は軽いアプリの起動まで遅くなる場合は,CPUの飽和が応答低下に関与している可能性が高くなる。
一律の秒数・分数の基準はなく,同時発生と再現性を確認する。
高いCPU使用率は原因である場合も,他の問題の結果である場合もあるため,発生時刻と継続時間を記録し,平常時と比較する。
2 PC全体とプロセス別の値を分ける
タスクマネージャー又はパフォーマンスモニターでは,PC全体のCPU使用率と,プロセス別のCPU使用率を分けて見る。
Microsoftの性能カウンター資料によれば,Processor(_Total)の% Processor Timeは全プロセッサの平均使用率であり,範囲は0から100である。
これに対し,パフォーマンスモニターのProcess又はProcess V2の% Processor Time等,プロセス内の全スレッドの使用率を合算するカウンターでは,複数のプロセッサを使うプロセスが100%を超える表示になり得る。
この説明を,タスクマネージャーのプロセス欄へそのまま当てはめてはならない。
タスクマネージャー内の値と,パフォーマンスモニターの特定カウンターは分けて読む。
標本化時刻,丸め,System及び割込み等のため,単純な足し算と一致しない場合もある。
総CPUが高いのか,特定プロセス又はその子プロセスが高いのかを確認する。
第3 最初に確認する項目
1 時刻と継続時間
CPU使用率が上がった時刻,何分続いたか,入力遅延が始まった時刻及び自然に戻ったかを記録する。
再起動後に調べる場合は,パフォーマンスモニターの記録と同じ時刻で照合する。
2 上位プロセスと子プロセス
タスクマネージャーの「プロセス」又は「詳細」でCPU順に並べ,上位のプロセス名,可能であればPID,開始時刻及び親子関係を記録する。
AIアプリ,ブラウザー又は開発ツールは,一つの画面から複数の子プロセスを起動する場合があるため,画面上のセッション数だけで負荷を判断しない。
プロセスを終了する前に,編集中のファイル,データベース,同期,バックアップ又は外部操作を保持していないかを確認する。
プロセス名だけを見て不要と判断し,一括終了すると,未保存データの消失又は同期の不整合を招き得る。
画面写真又はログを第三者へ渡す前には,利用者名,事件名,ファイル名,保存先及びアカウント情報をマスキングする。
3 メモリ,ディスク及びGPU
CPUだけでなく,利用可能メモリ,コミット,ディスクのアクティブ時間と待ち時間,GPU及びネットワークも同時に見る。
CPUが高く見えても,実際の操作遅延がページング,ストレージ待ち又は表示処理と重なっている場合がある。
第4 自動起動と同時実行を見直す
1 スタートアップアプリを確認する
Microsoftは,スタートアップアプリがWindowsの起動速度とシステム全体の性能に影響し得ると説明している。
具体的には,サインイン直後の起動時間と,常駐後のCPU・メモリ・ディスク使用量を分けて確認する。
設定の「アプリ」から「スタートアップ」を開くか,タスクマネージャーの「スタートアップ アプリ」で一覧と起動への影響を確認し,業務に不要なものを一つずつ無効にする。
ただし,ウイルス対策,バックアップ,クラウド同期,端末管理又は認証に関係するものを,名称だけで一括無効化してはならない。
発行元,ファイルの場所,デジタル署名,業務上の役割,管理方針及び戻し方を確認し,不明なものは無効化しない。
2 期限業務に必要な軽いアプリを先に開く
再起動後は,多数のAIセッション,ブラウザータブ,PDF変換,OCR,検索索引及び同期を一度に戻さない。
まず,期限管理,連絡又は文書確認に必要な一つの軽いアプリを開き,応答を確認してから重い処理を段階的に戻す。
スタートアップの無効化と,作業中の同時実行数の制限は別の対策である。
前者だけで,手動で起動した重い処理の競合まで防げるわけではない。
第5 最大のプロセッサの状態を95%にする方法
1 95%の意味
Microsoft LearnのMaxPerformanceの資料は,PROCTHROTTLEMAXの設定について,プロセッサの最大性能状態を最大性能に対する百分率で0から100まで指定すると説明している。
95%は,CPU時間の5%を軽いアプリへ予約する設定ではない。
資料が定めるのは最大性能に対する百分率であり,Windowsのスケジューラーが軽いアプリへ5%を与えることを保証する説明はない。
クロック周波数又は処理性能が直線的に95%になると説明するものでもない。
そのため,軽いアプリの応答改善を目的とする場合も,同時実行数,スタートアップ及びプロセス優先順位等と意味を混同しない。
2 現行値を記録して変更する
コントロールパネルの電源オプションで「プロセッサの電源管理」及び「最大のプロセッサの状態」が表示される機種では,使用中の電源プランの詳細設定から,電源接続時とバッテリー使用時を分けて変更できる。
機種又は電源モデルによっては,項目が画面に表示されない場合もある。
コマンドで確認・変更する場合の例は次のとおりである。
管理者として開いたターミナルを用い,変更前にqueryの出力,使用中の電源プラン,AC値及びDC値を記録する。
組織管理端末では管理者の方針を優先する。
powercfg /query SCHEME_CURRENT SUB_PROCESSOR PROCTHROTTLEMAX
powercfg /setacvalueindex SCHEME_CURRENT SUB_PROCESSOR PROCTHROTTLEMAX 95
powercfg /setdcvalueindex SCHEME_CURRENT SUB_PROCESSOR PROCTHROTTLEMAX 95
powercfg /setactive SCHEME_CURRENT
setacvalueindexは電源接続時,setdcvalueindexはバッテリー使用時の値を設定する。
デスクトップPCであっても,どの設定を変更したかが分かるよう両者を混同しない。
元へ戻す場合は,記録しておいた変更前のAC値及びDC値へ戻し,再び電源プランを有効化する。
変更前が100であった場合に限り,100へ戻すことになる。
3 機種によって効果が異なる
最大性能状態とCPUのクロック,ターボ又はブーストの関係は,CPU,ハイブリッド構成,ファームウェア,OEM制御,ドライバー及び電源プランで異なることがある。
95%にすれば必ずブーストが無効になる,周波数又は処理性能が5%下がる,温度が一定量下がる,又はフリーズを防げるとは断定できない。
設定項目が画面に表示されること,コマンド上で値を設定できること及び実機で効果が反映されることも別の問題である。
Microsoftの資料は,種類の異なるコアを持つCPUについて,効率クラス1のコア用の設定を末尾に1を付けた別の名称で扱っており,MaxPerformanceにもPROCTHROTTLEMAX1の別名がある。
このため,PROCTHROTTLEMAXだけを変更しても,全てのコアに同じ上限が掛かるとは限らない。
業務上重要な処理の途中で初めて試さず,戻し方を確認した上で,比較可能な時間帯に一つの変更として試す。
第6 変更前後を比較する
変更前後で,①Word・ブラウザー等の軽いアプリの起動時間,②文字入力とウィンドウ切替え,③重い処理の所要時間,④CPU使用率と周波数,⑤フリーズ又は入力遅延の有無を比較する。
CPU温度はWindows標準のタスクマネージャーでは通常確認できないため,確認できる機種ではメーカー提供機能等の信頼できる方法を用いる。
電源接続,電源モード,再起動後の経過時間,対象ファイル,操作,試行回数,室温及び更新・同期の状態をできる限りそろえる。
軽いアプリが明確に改善しない,又は重い処理の時間だけが長くなる場合は,最大のプロセッサの状態を記録しておいた変更前の値へ戻し,同時実行数又はスタートアップの見直しを優先する。
複数の設定を同時に変えると,どの変更が有効であったかを判定しにくい。
第7 CPU以外を調べる場合
CPU使用率が高くないのにPCが固まる場合は,利用可能メモリとコミット,ディスク待ち,GPU又は表示ドライバー,電源,温度,アプリ固有の停止及び通信待ちを確認する。
Kernel-PowerのイベントID 41は,Windowsが正常にシャットダウンせずに再起動したことを示す手掛かりである。
ただし,それだけで何が起きたかを特定できるとは限らず,CPUが原因であったことを示すものでもない。
フリーズ直前の性能ログ,最後の操作及び同時刻のイベントを突き合わせる。
第8 確認用チェックリスト
① CPU100%は短時間か,継続していたか
② PC全体とプロセス別の値を分けたか
③ 上位プロセス,PID,子プロセス及び直前の処理を記録したか
④ メモリ,ディスク,GPU及び同期処理も確認したか
⑤ 不要なスタートアップアプリを一つずつ見直したか
⑥ セキュリティ,バックアップ及び同期を無差別に止めていないか
⑦ 95%設定の現行値と戻し方を記録したか
⑧ 電源接続時とバッテリー使用時を区別したか
⑨ 変更前後を同じ条件で比較したか
第9 関連記事
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第10 出典・参考資料
① Microsoft Support, Tips to improve PC performance in Windows
② Microsoft Support, Configure Startup Applications in Windows
③ Microsoft Learn, MaxPerformance
④ Microsoft Learn, powercfg command-line options
⑤ Microsoft Learn, Collecting Performance Data
⑥ Microsoft Learn, CPU Analysis
⑦ Microsoft Learn, PERFBOOSTMODE
⑧ Microsoft Learn, Event ID 41 The system has rebooted without cleanly shutting down first
⑨ Microsoft Learn, Processor power management options