第1 家裁修習の意味と本記事の範囲
1 家裁修習とは
本記事でいう家裁修習とは,司法修習生が分野別実務修習の期間中に家庭裁判所で行う修習をいう。
家裁修習は,民事裁判修習,刑事裁判修習,検察修習及び弁護修習と並ぶ独立の分野ではなく,民事裁判修習又は刑事裁判修習の中で行われる。
本記事は,司法研修所の通知等の原資料から,その位置付け,修習地ごとの実施時期,日程表に現れた実例及び欠席の扱いを整理するものである。
基準日は令和8年10月25日である。
修習地ごとの実施時期は,本記事で確認できた最新の資料である第78期の「修習開始等について」(令和7年2月4日付けの司法研修所事務局長の事務連絡)に基づいている。
第79期については,事務便覧(令和8年3月)は確認できたが,同種の「修習開始等について」は本記事の資料に含まれていない。
実施時期は期によって変わるため(後記第3),自分が採用された期の通知と配属先の日程表で確認する必要がある。
2 独立した修習単位ではないこと
司法研修所長の通知「司法修習生の規律等について」(平成29年11月1日付け司研企二第1018号)第1の2は,「修習単位」を,配属庁会における民事裁判修習,刑事裁判修習,検察修習,弁護修習及び選択型実務修習並びに司法研修所における集合修習によって分けられる各修習の単位と定めている。
その上で,同項ただし書は,「民事裁判修習又は刑事裁判修習中に家庭裁判所における修習を実施したときは,その修習は,その修習の日が属する修習単位に属するものとみなす。」としている。
したがって,家裁修習は,それを行った日の民事裁判修習又は刑事裁判修習の一部として扱われる。
司法研修所事務局の第79期司法修習生の司法修習に関する事務便覧(令和8年3月)も,凡例でこの通知を「規律通知」として掲げている。
3 司法修習生に関する規則との関係
司法修習生に関する規則5条2項は,実務修習の期間のうち,少なくとも4箇月は裁判所で修習しなければならないと定め,同条3項は,実務修習の時期及び場所を司法研修所長が定めるとしている。
同規則7条は,実務修習を地方裁判所,地方検察庁又は弁護士会(及び高等裁判所又は高等検察庁)に委託して行うとしており,家庭裁判所を委託先として挙げていない。
家裁修習を民事裁判修習又は刑事裁判修習の一部とする前記の扱いは,この規則の構造と整合する(本記事の整理)。
なお,前記の規律通知は,地方裁判所長,家庭裁判所長,地方検察庁検事正及び弁護士会会長に宛てて発出されている。
第2 第78期の修習地ごとの実施時期
1 「修習開始等について」別紙3の家裁修習期間の欄
司法研修所事務局長の事務連絡「令和6年度(第78期)司法修習生の修習開始等について」(令和7年2月4日付け)の別紙3「令和6年度(第78期)司法修習における実務修習順序について」は,修習地ごとに,各班の分野別実務修習の順序(4つのクール)と並べて「家裁修習期間」の欄を設けている。
同欄の記載は,立川を含む51の修習地について,次の5つの型に分けられる。
| 記載の型(要旨) | 修習地 | 数 |
|---|---|---|
| 裁判実務修習中に行う | 東京,立川,横浜,静岡,甲府,長野,大阪,京都,奈良,大津,名古屋,津,岐阜,山口,鳥取,長崎,大分,宮崎,那覇,福島,山形,盛岡,秋田,青森,釧路,高松,徳島,高知 | 28 |
| 刑事裁判実務修習中に行う | さいたま,千葉,宇都宮,神戸,和歌山,福井,富山,福岡,鹿児島,函館,旭川 | 11 |
| 刑事裁判実務修習中に5日間行う | 新潟,岡山,松江,仙台 | 4 |
| 民事裁判実務修習中に行う | 広島 | 1 |
| 班ごとに日付を示す | 水戸,前橋,金沢,佐賀,熊本,札幌,松山 | 7 |
大津については,裁判実務修習中に行う旨に加えて,民事裁判実務修習中に家事3日程度,刑事裁判実務修習中に少年2日程度を行い,少年鑑別所の見学を2回(2班合同)実施する旨が記載されている。
「裁判実務修習中に行う」とする修習地では,民事裁判修習と刑事裁判修習のどちらの期間に行うかは別紙3からは分からないため,配属先の日程表等で確認する必要がある。
2 班ごとに日付を示した修習地
班ごとに日付を示した7つの修習地の記載は,次のとおりである(いずれも令和7年)。
| 修習地 | 班ごとの家裁修習期間 |
|---|---|
| 水戸 | 1班:9月25日~10月2日(9月29日を除く。),2班:6月2日~6日,3班:9月17日~24日,4班:6月9日~16日(6月11日を除く。) |
| 前橋 | 1班:9月17日~24日,2班:6月2日~6日,3班:11月12日~18日,4班:7月24日~30日 |
| 金沢 | 1班:11月12日~18日,2班:6月2日~6日,3班:7月31日~8月7日,4班:7月24日~30日 |
| 佐賀 | 1班:9月17日~24日,2班:6月2日~6日 |
| 熊本 | 1班:11月12日~18日,2班:7月24日~30日,3班:7月31日~8月7日,4班:6月2日~6日 |
| 札幌 | 1班:9月16日~22日,2班:11月10日~14日,3班:6月2日~6日,4班:7月14日~18日 |
| 松山 | 1班:6月2日,8月1日及び8月5日~7日,2班:7月23日及び11月12日~17日,3班:6月2日~6日,4班:7月23日~29日 |
同じ別紙3の修習順序の欄と照らし合わせると,松山の1班及び2班を除き,これらの日付はいずれもその班が刑事裁判修習を行う期間内にある(本記事の整理)。
松山の1班及び2班は,民事裁判修習の期間内の日と刑事裁判修習の期間内の日の双方に分かれている。
第3 第77期からの変更
司法研修所事務局長の事務連絡「令和5年度(第77期)司法修習生の修習開始等について」(令和6年2月7日付け)の別紙3と,第78期の別紙3を51の修習地について対照すると,家裁修習期間の欄の記載の型が変わったのは次の9つの修習地である。
それ以外の42の修習地は,記載の型が同じである(班ごとに日付を示す修習地は,日付自体は期ごとに異なる。)。
| 修習地 | 第77期 | 第78期 |
|---|---|---|
| 和歌山 | 裁判実務修習中に行う | 刑事裁判実務修習中に行う |
| 津 | 班ごとに日付を示す | 裁判実務修習中に行う |
| 福井 | 班ごとに日付を示す(1班:令和6年4月16日~6月10日,2班:9月27日~11月20日。いずれもその班が刑事裁判修習を行うクールの全期間であり,実質的には刑事裁判修習中に行う点で第78期と同じ) | 刑事裁判実務修習中に行う |
| 金沢 | 裁判実務修習中に行う | 班ごとに日付を示す |
| 広島 | 刑事裁判実務修習中に行う | 民事裁判実務修習中に行う |
| 長崎 | 1班・2班は第1クール,3班・4班は第3クールの裁判実務修習中に,それぞれ3日間 | 裁判実務修習中に行う |
| 函館 | 裁判実務修習中に行う | 刑事裁判実務修習中に行う |
| 釧路 | 刑事裁判実務修習中に行う | 裁判実務修習中に行う |
| 徳島 | 1班・2班と3班・4班に分けて日付を示す(一部の日付の後に「他」と付記) | 裁判実務修習中に行う |
このように,同じ修習地でも,家裁修習を民事裁判修習と刑事裁判修習のどちらで行うか,日付をあらかじめ示すかは,期によって変わっている。
過去の期の体験記や日程表だけで,自分の期の家裁修習の時期を判断することはできない。
第4 第77期の日程表に見る家裁修習の実例
1 東京
第77期の全国の実務修習日程を綴った資料(以下「全国版」という。)のPDF5頁は,PDF4頁から始まる3班の刑事裁判実務修習日程表に続く頁である。
修習地名の記載はないが,東京家庭裁判所(少年部)での修習と刑事第14部(令状部)での実務修習が組まれていることから,東京地方裁判所の刑事部配属者の日程表とみられる。
同頁では,令和6年5月8日午後に全員を対象とする家裁修習の少年部講義が置かれ,その後,配属部の組合せ(1部・10部,8部・15部,4部・7部,3部・16部)ごとに,東京家庭裁判所(少年部)で2日ずつの家裁修習が組まれている。
2 岡山
全国版のPDF128頁から始まる岡山地方裁判所・岡山地方検察庁・岡山弁護士会の実務修習日程表のうち,PDF132頁及び133頁(令和6年5月及び6月の頁で,第2クールの初めを含む)では,令和6年5月23日に1班・2班合同の家裁修習の共通講義が置かれ,2班の欄に,5月28日から30日まで及び6月3日に「家裁修習A班」,6月4日から6日まで及び6月10日に「家裁修習B班」が記載されている(PDF133頁の備考によれば第2クールは6月11日からであり,これらの日はいずれも第1クール内にある。)。
第77期の別紙3によれば,岡山の2班は第1クールに刑事裁判修習を行う班であり,岡山の家裁修習は刑事裁判実務修習中に5日間行うものとされていた。
共通講義の日を含めると,A班・B班とも5日となり,別紙3の記載と合う(本記事の整理)。
3 秋田
全国版のPDF564頁には秋田地方裁判所長から司法研修所長への第4クールの送付文があり,PDF566頁(第4クールの日程表)では,刑事裁判修習(1班)の欄に,令和6年10月28日から11月1日までの5日間,家裁修習が記載されている。
第77期の別紙3は,秋田の家裁修習を裁判実務修習中に行うとしており,実際の日程表では刑事裁判修習の期間に置かれていたことになる。
これらは第77期の例であり,他の期の日程,日数及び行き先が同じになるとは限らない。
大阪の第77期の家裁修習の日程は,「大阪修習の裁判修習―第77期日程表で見る民事・刑事・家裁・保全・執行・令状修習(AI作成)」で扱っている。
第5 欠席の扱い
前記の規律通知は,欠席を修習単位ごとに扱っている。
同通知第5の2によれば,病気その他の正当な理由により欠席しようとするときは,あらかじめ承認を受けなければならず,配属庁会における実務修習中は当該配属庁会の長の承認を受ける。
病気,災害その他やむを得ない理由により,あらかじめ承認を得ることができずに欠席したときは,同通知第5の3により,速やかに,その理由を添えて欠席の承認を受けなければならない。
同通知第5の11は,一つの修習単位における欠席期間の日数が,その修習単位のうちの修習を要する日の2分の1を超えたときは,司法修習生指導要綱(甲)第4に定める成績の評定において原則として「不可」と取り扱うとしている。
家裁修習は,その日が属する民事裁判修習又は刑事裁判修習の修習単位に属するから,家裁修習の日の欠席も,その民事裁判修習又は刑事裁判修習の欠席として数えられることになる(本記事の整理)。
病気,妊娠・出産,忌引等による欠席の一般的な扱いは,「司法修習生の欠席・休暇・修習停止―病気,妊娠・出産,忌引,就職活動及び修習給付金への影響(AI作成)」に整理している。
第6 関連記事
家裁修習が組み込まれる民事裁判修習及び刑事裁判修習の指導内容は,「民事裁判修習の実際――配属庁で行われる指導の内容(AI作成)」及び「刑事裁判修習の実際――配属庁で行われる指導の内容(AI作成)」に整理している。
分野別実務修習と選択型実務修習の全体の関係は,「実務修習とは-規則上の位置付け,分野別実務修習の4分野及び選択型実務修習との関係(AI作成)」を参照されたい。
修習地ごとの日程表の詳細は,「各地の修習情報」カテゴリーの各記事(例えば「秋田修習の情報―第80期日程・配属人数・修習先・住居と生活(AI作成)」及び「岡山修習の情報―第80期日程・配属人数・修習先・住居と生活(AI作成)」)で扱っている。
第7 出典
1 最高裁判所規則・司法研修所の通知
①司法修習生に関する規則(昭和23年8月18日最高裁判所規則第15号)5条,7条(山中弁護士ブログ掲載の条文)
②司法研修所長通知「司法修習生の規律等について」(平成29年11月1日付け司研企二第1018号)第1の2,第5の2,第5の3,第5の11(「弁護実務修習指導のしおり」からの抜粋,山中弁護士ブログ掲載版PDF1頁は送付文,2頁は第1の2,4頁は第5の2・第5の3・第5の11)
③司法研修所事務局「第79期司法修習生の司法修習に関する事務便覧」(令和8年3月)凡例(山中弁護士ブログ掲載版PDF2頁)
2 修習開始等の通知
①司法研修所事務局長事務連絡「令和6年度(第78期)司法修習生の修習開始等について」(令和7年2月4日)別紙3(山中弁護士ブログ掲載版PDF9頁~14頁)
②司法研修所事務局長事務連絡「令和5年度(第77期)司法修習生の修習開始等について」(令和6年2月7日)別紙3(山中弁護士ブログ掲載版PDF9頁~14頁)
3 日程表
①「77期実務修習の日程」(全国版,山中弁護士ブログ掲載版)PDF4頁,5頁,128頁,132頁,133頁,564頁,566頁