第1 この記事の対象と結論
令和元年司法試験の租税法第2問を対象に,低額取引の所得税・法人税と,規制法からの借用概念の解釈を整理する。
法務省の出題の趣旨と採点実感から独自に抽出した評価項目は31項目,重み5は6項目,重み合計は115である。
この重みは法務省の公式採点基準,項目別配点又は得点予測ではない。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 令和元年司法試験・租税法第2問,配点50点 |
| 問題文 | 法務省・選択科目問題のPDF8〜9頁 |
| 法令の基準時 | 令和元年の試験時。所得税・法人税の該当条文は2019年4月1日施行版で確認 |
| 公式資料 | 出題の趣旨PDF26〜27頁,採点実感PDF9〜12頁の第2問を実読済み |
| 主要事項 | 取得費1400万円の承継とX自身の登記費用,その他の取引,取引法と規制法の区別 |
| 判例 | 支払利子付随費用,ゴルフ会員権贈与,南西通商,武富士の各最高裁判決 |
| 答案分量 | 改行を除き2429字。上限2500字 |
| 確認日 | 令和8年10月19日(日本時間) |
設問1では,譲渡収入を2500万円とし,承継取得費1400万円にX自身の登記費用を加え,特別控除後の長期譲渡所得の2分の1を総所得金額へ算入する。
設問2では,B社の差額利益1500万円を「その他の取引」に係る当期収益として扱う。
設問3では,民商法からの借用概念の統一解釈を確認した上で,規制法である薬機法の定義をそのまま移すことには批判の余地があると考える。
評価表は第4,完成答案と対応・解説は第5,資料の確認範囲は第7に示す。
第2 評価項目の示し方と重み付けの基準
1 評価項目の示し方
一つの項目に一つの判定対象を置き,公式資料の記載を答案の何を評価するかが分かる形へ言い換えた。
根拠欄はPDF実頁と要旨であり,公式文をそのまま引用したものではない。
「記載なし」は当該問題の関連範囲を読んだ結果をいい,未取得・未読を意味しない。
必須・高評価・負例・許容分岐の区分は重みと独立であり,条件付きの別構成を全答案へ累積要求しない。
所有擬制の主体,購入代金の二重加算,損失否認による取得費減額という負例は番号8の裏返しなので,独立の項目にせず番号8にまとめた。
半価「以下」という負例は番号3,半額計算の順序の負例は番号13,限定文言を定義とする負例は番号28の裏返しなので,それぞれにまとめた。
2 5段階の重み付けの基準
| 重み | 判断基準 |
|---|---|
| 5 | 採点実感が評価の分かれ目とした事項,又は答案の骨格そのもの |
| 4 | 出題の趣旨が検討を求め,採点実感も取り上げた(高く評価した・多数の答案の不足を指摘した)事項 |
| 3 | どちらか一方が明示する中核の理由付け |
| 2 | 一方が軽い表現で触れる補強の事項,又は典型的な誤りとして指摘された事項 |
| 1 | 一方が控えめに触れるだけの事項 |
重み5は,番号1の譲渡所得の分類,番号6の取得費割れ,番号8の取得費承継,番号14の当期差額利益,番号16の条文文言への包摂,番号27の取引法と規制法の区別である。
いずれも本問の答案を組み立てる骨格に当たる。
第3 本問の概要
1 問題文と事実関係
Aは昭和56年に1400万円で甲土地を取得し,小公園として開放した。
平成10年,Aは公園を手伝っていたXへ,時価2200万円の土地を1000万円で売り,Xが登記費用を負担した。
平成30年,Xは,子供たちのために土地を活用したいという思いから,時価2500万円の土地を保育所を開設するB社へ1000万円で売ることを考えた。
また,Xは医師の勧めによるサプリメントを使用し,薬機法上の医薬品を税法上も同義に解することを前提に医療費控除を検討している。
事実の全文と参照条文は公式問題文のPDF8〜9頁を参照されたい。
2 設問が求めること
| 設問 | 立場・対象 | 指定・除外 | 到達点 |
|---|---|---|---|
| 1 | Xの平成30年分所得税 | 根拠条文に触れる。租税特別措置法は除外 | 収入・取得費・長期譲渡所得の計算 |
| 2 | B社の取得年度法人税 | 有償譲受けの列挙がないことに留意 | 22条2項の文言を特定し差額益金の理由を示す |
| 3 | Xが前提とする解釈方法 | サプリ費用の具体的な控除可否は論じない | 借用概念の原則と規制法からの借用の問題を評価 |
第4 評価項目と重み
1 設問1
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 【必須】資産の譲渡による所得であり,所得税法33条2項の除外に該当しないことを示す。 | 5 | PDF26頁:所得税法第33条第1項及び第2項 | PDF9頁:第2項に該当しない譲渡による所得 |
| 2 | 【必須】総収入金額から取得費・譲渡費用を控除し,次に特別控除をする計算構造を示す。 | 4 | PDF26頁:譲渡所得の基本的な論点 | PDF9頁:この順序で検討を進めるのが自然 |
| 3 | 【必須】法人B社への対価1000万円が時価2500万円の半額未満であるため,59条1項2号・令169条で総収入2500万円とする。 | 4 | PDF26頁:第59条第1項第2号と同法施行令第169条 | PDF9頁:総収入金額は譲渡時の時価である |
| 4 | 【必須】平成10年取引が個人Aから個人Xへの譲渡であると指摘する。 | 4 | PDF26頁:個人間の譲渡 | PDF10頁:①個人Aから個人Xへの譲渡 |
| 5 | 【必須】平成10年対価1000万円が当時時価2200万円の2分の1未満であると指摘する。 | 4 | PDF26頁:時価の2分の1未満の対価 | PDF10頁:②譲渡時の時価である2200万円 |
| 6 | 【必須】平成10年対価1000万円がAの取得費1400万円にも不足することを示す。 | 5 | PDF26頁:対価が取得費等の合計額に満たないこと | PDF10頁:③Aが昭和56年に甲土地を取得した際の取得価額が1400万円 |
| 7 | 【必須】59条2項がAの譲渡損失の計上を否定することを示す。 | 4 | PDF26頁:第59条第2項や第60条第1項第2号 | PDF10頁:第59条第2項が適用された |
| 8 | 【必須】60条1項2号により取得者Xが引き続き所有したものとみなし,Aの取得費1400万円を引き継ぐ。Aを擬制の主体とせず,Xの代金を加算・承継取得費を減額しない。 | 5 | PDF26頁:第60条第1項第2号 | PDF10頁:XがAの取得価額1400万円を引き継ぐ |
| 9 | 【必須】38条1項の取得費に取得代金以外の付随費用が含まれることを支払利子付随費用判決に関連付ける。 | 4 | PDF26頁:所有権移転登記の費用の扱いについて,判例への言及 | PDF10頁:支払利子付随費用判決 |
| 10 | 【必須】取得費引継ぎでもX自身の登記費用を加えることを,ゴルフ会員権贈与事件判決の趣旨から説明する。 | 4 | PDF26頁:所有権移転登記の費用の扱いについて,判例への言及 | PDF10頁:ゴルフ会員権贈与事件 |
| 11 | 【必須】5年を超える保有により33条3項2号の長期譲渡所得に当たることを示す。 | 4 | PDF26頁:長期譲渡所得 | PDF10頁:5年を超える期間 |
| 12 | 【高評価】60条1項2号によりAの取得時期も引き継ぎ,昭和56年からの保有期間を通算すると指摘する。 | 3 | 記載なし | PDF10頁:保有期間も通算され |
| 13 | 【必須】特別控除後の長期譲渡所得金額の2分の1を22条2項2号で総所得金額へ算入し,収入を先に半減しない。 | 4 | PDF26頁:同法第22条第2項第2号 | PDF11頁:2分の1課税の後に特別控除 |
2 設問2
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 14 | 【必須】B社が低額取得時に得た時価と対価の差額1500万円を当該事業年度の益金とする。 | 5 | PDF26頁:1500万円が益金に算入されるべき | PDF11頁:時価と対価との差額に相当する利益 |
| 15 | 【必須】南西通商事件の低額譲渡を有償譲渡とする理解との平仄から,低額譲受けも有償であると位置付ける。 | 4 | PDF26頁:南西通商事件 | PDF11頁:低額譲渡を有償譲渡と位置付けている |
| 16 | 【必須】有償譲受けは22条2項に列挙されないことを踏まえ,本件を「その他の取引」に包摂する構成を示す。 | 5 | PDF26頁:同項の文言 | PDF11頁:その他の取引 |
| 17 | 【必須】その他の取引構成では22条4項の公正処理基準により差額収益を認識することを示す。 | 3 | 記載なし | PDF11頁:法人税法第22条第4項 |
| 18 | 【必須】有償譲受けの列挙欠如を,適正対価による等価交換では利益が生じない趣旨から説明する。 | 4 | PDF26頁:無償による資産の譲受けから益金が発生するとしている趣旨 | PDF11頁:有償による資産の譲受けから益金が発生すると規定していない趣旨 |
| 19 | 【必須】低額譲受けの利益を無償取得等の利益と比較し,課税の公平を理由に差額課税を説明する。 | 4 | PDF26頁:無償による資産の譲受けから益金が発生するとしている趣旨 | PDF11頁:無償による資産の譲受け等との課税の公平 |
| 20 | 【許容分岐】有償1000万円・無償1500万円へ分解する構成を採る場合,その必要性を説得的に論じる。 | 3 | 記載なし | PDF11頁:そのような分析の必要性を説得的に論じている |
| 21 | 【負例】「受贈益」という語だけから25条の2の問題にしない。 | 2 | 記載なし | PDF11頁:法人税法第25条の2の問題であるとした答案 |
| 22 | 【負例】差額益金を認めるために「著しく低い対価」という独自の閾値を課さない。 | 2 | 記載なし | PDF11頁:「著しく低い対価」による場合に限定して |
| 23 | 【負例】B社がXに寄附金を支出したとして寄附金論へ逸脱しない。 | 2 | 記載なし | PDF11頁:寄附金の問題を論じている答案 |
| 24 | 【負例】取得原価の低額化を理由に,実現した差額利益への課税を後の譲渡時へ繰り延べない。 | 3 | 記載なし | PDF12頁:課税を繰り延べるべき積極的な理由が存在しない |
3 設問3
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 25 | 【必須】他の法分野で既に意味内容が確立した用語を租税法規が用いることを借用概念の意義として示す。 | 4 | PDF26頁:借用概念に関する問題 | PDF12頁:他の法分野(法領域)において既に意味内容が確立した用語 |
| 26 | 【必須】統一説を借用元の意味に従う解釈方法として示し,納税者の予測可能性から基礎付ける。 | 4 | PDF26頁:借用元の法律と同義に解する考え方 | PDF12頁:納税者の予測可能性 |
| 27 | 【必須】取引法からの借用と規制法固有の目的による特別定義とを区別し,薬機法定義の当然の移植には批判の余地があると評価する。 | 5 | PDF27頁:商法又は民法という取引法の基本法 | PDF12頁:それぞれの法律の趣旨目的に応じた特別な定義 |
| 28 | 【負例】医薬品の概念の外延と「治療又は療養に必要な」という別の限定要件を区別し,定義が広いことだけで統一説を否定しない。 | 3 | 記載なし | PDF12頁:同号の制限に服することを見落とした解釈論 |
| 29 | 【必須】借用概念の意義と,同義に解するという解釈方法を混同せず,前者だけで統一説を前提化しない。 | 3 | 記載なし | PDF12頁:借用概念の意義(上述の①)とその解釈方法(②)とを区別せず |
| 30 | 【高評価】統一説に立つ判例の理解を,利益配当・住所等の具体例で示す。 | 3 | PDF26頁:「住所」 | PDF12頁:武富士事件判決 |
| 31 | 【負例】サプリメント購入費が医療費控除対象かという具体的結論へ逸脱しない。 | 2 | 記載なし | PDF12頁:題意に沿わない |
4 重みの分布
重み1=0項目,2=4項目,3=7項目,4=14項目,5=6項目であり,総項目数は31,単純な重み合計は115である。
条件付きの番号20も公開表の項目数には含むが,その他の取引構成を採る答案に分解構成まで要求するものではない。
件数や合計から難易度,公式得点又は合格可能性を推測してはならない。
第5 模範解答
1 答案の前提と表記
試験時の法令・判例を前提とした一つの答案例である。
設問2では「その他の取引」の構成を採り,設問3では薬機法の定義を当然には借用しない立場から評価する。
答案は改行を除き2429字であり,見出し・句読点・空白も字数に含めた。
登記費用と譲渡費用の額は与えられていないためE・Fとし,他の譲渡所得がない場合の計算例を条件付きで示す。
2 答案
1 設問1
(1)甲土地の譲渡による所得は,資産の譲渡による所得であり,棚卸資産の譲渡や営利を目的とする継続的な譲渡等でもないから,所得税法33条1項に該当し,2項の除外にも当たらず,譲渡所得となる。
譲渡所得は,総収入金額から取得費及び譲渡費用を控除し,更に特別控除をして計算する(同条3・4項)。
(2)法人への著しい低額譲渡は,時価による譲渡とみなされる(59条1項2号)。
対価1000万円は時価2500万円の2分の1である1250万円未満であり(施行令169条),相手方は法人B社であるから,総収入金額は2500万円となる。
Xに利益を得る意思がなくても,保有中の増加益を譲渡時に精算する課税を免れない。
(3)取得費の原則は取得に要した金額等である(38条1項)。
もっとも,平成10年の取引は,①個人Aから個人Xへの譲渡,②対価1000万円が時価2200万円の半額1100万円未満,③対価がAの取得費1400万円を下回る,という59条2項の要件を満たす。
その不足額はAの譲渡所得計算上なかったものとされる。
そして,60条1項2号により,取得者Xが引き続き甲土地を所有していたものとみなされ,Aの取得費1400万円と取得時期を引き継ぐ。
Aの保有中の増加益への課税を留保し,Xの後の譲渡時に清算するため,取得価額と取得時期を連続させるのである。
失われるのは譲渡損失の計上であり,承継する取得費が1000万円へ減額されるのではない。
X自身の購入代金1000万円を1400万円に重ねて加算することもできない。
(4)取得費には取得代金のほか登録免許税等の取得付随費用も含まれる(最判平成4年7月14日)。
取得費引継ぎの場合でも,受贈者自身の取得付随費用を取得費に加えるとした最判平成17年2月1日の趣旨が妥当する。
所有継続の擬制から,Xへの移転も費用支出もなかったとする反論が考えられる。
しかし,60条の目的は増加益課税の繰延べであり,A・Xの保有期間の増加益の合計を超える課税ではない。
X自身の取得付随費用を控除しなければその負担分まで所得とすることになる。
よって,Xが平成10年に支出した登記費用Eも取得費に算入する。
(5)昭和56年からの保有期間も通算され,5年超の長期譲渡所得となる(33条3項2号)。
譲渡費用をFとすると譲渡益は2500万円-(1400万円+E)-Fである。
特別控除50万円は2分の1計算より先に適用し,控除後の譲渡所得の2分の1を総所得金額に算入する(22条2項2号)。
他に譲渡所得がなく50万円を全額控除できる場合は,(1050万円-E-F)÷2となる。
租税特別措置法は考慮しない。
2 設問2
(1)B社は時価2500万円の土地を1000万円で取得し,取得時に1500万円の利益を実現している。
これは資本等取引によるものではなく,その取引日を含む事業年度の益金に算入する(法人税法22条2項)。
(2)同項が有償譲受けを列挙しないのは,通常の適正対価による取得では,取得資産と支出対価が釣り合い収益が生じないからである。
しかし,低額取得には差額の経済的利益があり,無償取得による利益を課税する取扱いとの公平からも,対価があるというだけで非課税とすべきではない。
南西通商事件(最判平成7年12月19日)は,低額譲渡を「有償による資産の譲渡」に当たるとしつつ,適正価額と対価との差額も収益に含める。
その位置付けと整合させれば,本件も有償譲受けであり,直ちに全体を「無償による資産の譲受け」とはいえない。
そこで22条2項の「その他の取引」に当たり,同条4項の公正処理基準に従い差額1500万円を当期の収益と認識する。
対価の授受があることは取引の有償性を示すが,取得価値と支出額との差による純資産増加がないことまでは意味しない。
B社は土地を取得して既にその価値を支配している。
土地の取得価額は2500万円となり,購入代金をそのまま当期の損金とするのではない。
既に実現した利益の課税を後の譲渡時まで繰り延べる理由もない。
3 設問3
(1)他の法分野で既に意味内容の確立した用語を租税法規が用いる場合,これを借用概念という。
これが何を指す概念かという問題と,借用元と同じ意味に解するべきかという解釈方法の問題は区別する必要がある。
(2)解釈方法については,納税者の予測可能性と法的安定性から,原則として借用元の意味に従う統一説に理由がある。
判例も,例えば武富士事件(最判平成23年2月18日)が贈与税の「住所」を民法上の生活の本拠として解しているように,民商法上の概念を同じ意味に解する立場を採る。
Xの考え方も,この一般論からは支持できる。
同じ法律用語の意味が課税の場面ごとに変われば,私人が他法に従って形成した関係への課税を事前に予測しにくくなるからである。
(3)しかし,民商法等の取引法の概念は,課税対象となる法律関係を構成する共通の基礎である。
これに対し,行政法・規制法は,それぞれの規制目的に応じた特別な定義を置くことがある。
薬機法も,医薬品等の品質・有効性・安全性の確保と保健衛生上の危害防止を目的とする(1条)。
その定義は規制の対象範囲を定めるためのものである。
他方,医療費控除は治療等の支出による担税力の減殺に配慮する制度であり,規制対象であることと控除制度で捉える物の範囲が一致すべきかは別途検討を要する。
この相違を検討せず,薬機法2条1項の定義をそのまま所得税法73条2項・施行令207条2号に用いるXの考え方には,批判の余地がある。
ただし,薬機法上の定義が予防目的等を含んで広いというだけでは反論として足りない。
医薬品という物の範囲と,その購入が「治療又は療養に必要」かという控除要件は別であり,広い定義を採っても後者の限定は働く。
限定文言自体を医薬品の定義とするのも誤りである。
本件サプリメントの具体的な控除可否には立ち入らない。
以上
3 出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説
(1) 答案と評価項目の対応
| 番号 | 答案又は解説の対応箇所 |
|---|---|
| 1 | 答案1(1):33条1項該当・2項除外の不該当。 |
| 2 | 答案1(1):収入,取得費・譲渡費用,特別控除の順。 |
| 3 | 答案1(2):法人B社,1000万円と1250万円の比較,時価2500万円。 |
| 4 | 答案1(3)①:個人Aから個人Xへの譲渡。 |
| 5 | 答案1(3)②:1000万円が当時の半額1100万円未満。 |
| 6 | 答案1(3)③:対価がAの取得費1400万円を下回る。 |
| 7 | 答案1(3):不足額はAの計算上なかったものとする。 |
| 8 | 答案1(3):取得者Xの所有擬制,1400万円承継,代金の二重加算等を否定。 |
| 9 | 答案1(4):38条と平成4年判決による取得付随費用。 |
| 10 | 答案1(4):平成17年判決の趣旨とX自身の登記費用。 |
| 11 | 答案1(5):5年超の長期譲渡所得。 |
| 13 | 答案1(5):特別控除を先にし,22条2項2号で総所得へ半額算入。 |
| 14 | 答案2(1):差額1500万円の取得年度益金。 |
| 15 | 答案2(2):南西通商事件と有償取引という位置付けの整合。 |
| 16 | 答案2(2):22条2項の「その他の取引」への包摂。 |
| 18 | 答案2(2):通常の等価交換に収益が生じないという説明。 |
| 19 | 答案2(2):無償取得との課税の公平。 |
| 25 | 答案3(1):意味内容が確立した用語を用いる借用概念の意義。 |
| 26 | 答案3(2):統一説と予測可能性・法的安定性。 |
| 27 | 答案3(3):取引法の共通基礎と規制法の特別定義を区別。 |
| 20(条件付き) | 次の(3)の分解構成の解説。主位答案では不採用のため充足を累積要求しない。 |
| 12・17 | 答案1(5)の昭和56年からの通算,答案2(2)の22条4項。 |
| 21〜24 | 答案2は22条を根拠に当期益金とする。25条の2・独自閾値・BからXへの寄附金・課税繰延べを採らない。 |
| 28〜31 | 答案3(1)〜末尾の定義と解釈・限定の区別,武富士事件,具体的控除可否の除外。 |
(2) 設問1の取得費と計算
半額未満であることだけでは59条2項の全要件を示したことにならない。
対価がAの取得費等にも不足することを確認して初めて,同項から60条1項2号へ進める。
同条の所有擬制の主体はXであり,「Aが引き続き所有していた」とするのは正しくない。
取得費1400万円とXの代金1000万円を合算せず,X自身の登記費用だけを付随費用として加える。
平成17年判決は贈与の事案であるが,増加益課税の繰延べを理由とする説明は本問の低額譲受けにも妥当する。
特別控除を先にし,その後の譲渡所得金額を半額にする。
公式資料の半額算入に関する説明には「総収入金額」との表現があるが,所得税法22条2項の法文に従い,本稿では総所得金額への算入と記す。
(3) 設問2の文言と許容分岐
「受贈益1500万円」と結論だけを書くと,有償取引をどの文言へ包摂したかが分からない。
南西通商事件が低額譲渡を有償譲渡とした理解との整合を示し,その他の取引という入口と公正処理基準による収益認識を接続するのが主位答案である。
有償取得と無償取得へ分解する答案も,そのような分解が必要である理由を説得的に示した場合は相応の評価を受けると採点実感が述べている。
したがって,分解構成を一律に誤りとするのでも,理由なく自由な言換えとして認めるのでもない。
取得土地の資産計上と購入代金の即時損金否定は計算を理解するための補足であり,独立の公式評価項目として加算していない。
(4) 設問3の借用概念
借用概念の存在と統一説の採否を別の問いとして扱う。
判例の私法概念に関する統一的理解から,規制目的に応じた行政法上の定義も当然に同義とすることはできない。
薬機法の定義に予防目的等が含まれることだけでは反論にならず,広い定義の下でも治療・療養の必要性という独立の限定が働く。
武富士事件の法廷意見による住所概念を例示したが,同事件の個別意見を法廷意見の理由へ混ぜていない。
(5) 答案の弱点と扱わなかった事項
登記費用・譲渡費用の具体額と他の譲渡所得の有無は問題文から確定できないため,数式と条件を用いた。
サプリメントの具体的な控除可否,贈与税,租税特別措置法及び更正処分取消訴訟は答案の対象外である。
東京高裁平成14年2月28日判決は,建築基準法上の「改築」の概念を住宅取得等特別控除へ当然には移さず,法文と制度目的から検討した。
東京高裁平成27年11月26日判決も,薬事法から概念を借用していても当然に同義と解すべきものではないとし,規制目的と医療費控除の趣旨の違いを検討した。
これらは本問の解釈手法を理解するために参照し,その具体的事件の結論を本問サプリメントの控除可否へ移していない。
第6 関連記事
1 同じ年度の司法試験の記事
①令和元年司法試験論文式試験の主要7科目の模範解答(AI作成)
2 同じ科目の別の年度の記事
①令和2年司法試験租税法第1問の模範解答と評価項目―公式資料から抽出した50項目と5段階の重み付け(AI作成)
②令和2年司法試験租税法第2問の模範解答と39の評価項目―5段階の重み付け(AI作成)
3 本問の論点に関連する記事
①司法試験の過去問・参考答案一覧―令和元年~令和8年の年度別・科目別ガイド(AI作成)
本問の個別論点を直接扱うブログ記事は確認範囲で特定しておらず,関連年度と総合索引への導線を示した。
第7 出典及び確認状態
1 公式資料
①令和元年司法試験論文式試験・選択科目問題:PDF8〜9頁の租税法第2問を実読済み。
②令和元年司法試験論文式試験問題出題の趣旨:PDF26頁第2問から27頁経済法見出し直前まで実読済み。
③令和元年司法試験の採点実感・選択科目:PDF9頁第2問から12頁の同問末尾,及び14〜15頁の共通学習指摘の関連部分を実読済み。
2 法令
①所得税法・2019年4月1日施行版:22・33・38・59・60・73条を確認。
②法人税法・2019年4月1日施行版:22条を確認。
③所得税法施行令169条・207条,薬機法1条・2条は公式問題の参照条文も確認した。
試験後の改正を本問の法状態へ遡及させていない。
3 裁判例
①最高裁平成4年7月14日第三小法廷判決・昭和61年(行ツ)第115号:民集46巻5号492頁。
取得付随費用の原文をPDF2〜3頁で確認。
②最高裁平成17年2月1日第三小法廷判決・平成13年(行ヒ)第276号:訟月52巻3号1034頁。
取得費引継ぎと受贈者の付随費用の法廷意見をPDF1〜5頁で確認。
③最高裁平成7年12月19日第三小法廷判決・平成6年(行ツ)第75号:民集49巻10号3121頁。
低額譲渡の有償性と差額収益に関する法廷意見をPDF1〜2頁で確認。
④最高裁平成23年2月18日第二小法廷判決・平成20年(行ヒ)第139号:判時2111号3頁。
住所に関する法廷意見のPDF6〜8頁を確認。
個別意見は本稿の根拠としていない。
⑤東京高裁平成14年2月28日判決・平成13年(行コ)第136号:訟月48巻12号3016頁。
「改築」の意義に関する裁判所の判断をPDF4〜6頁で確認。
⑥東京高裁平成27年11月26日判決:国税庁「税務訴訟資料」第265号-177,順号12760。
借用概念の解釈に関する判示をPDF5〜6頁で確認。国税庁公表画像では事件番号が伏字であり,順号を事件番号として扱っていない。
4 確認状態
問題文・出題の趣旨・採点実感は,上記の対象範囲について実読・校正済みである。
評価項目,重み,答案及び解説は記事独自の分析であり,法務省作成の模範解答ではない。
未読のまま独立作成した版と,公式資料の確認後に校正した完成版は区別し,本稿には完成版を掲げる。
平成10年当時版の所得税法原文の独立確認には至っていない。
本問の平成10年取引に59条2項・60条1項2号を適用して1400万円を引き継ぐ処理は,公式採点実感PDF10頁の明示に依拠し,平成10年原文を確認したとの意味ではない。
平成30年中に施行された所得税法の3版では,本稿の使用条文が2019年版と同文であることを確認した。
法人税法22条2項も同文であり,4項は平成30年4月施行版で「別段の定めがあるものを除き」が加わるが,本問の差額利益について公正処理基準を適用する説明を変えるものではない。
| 答案の結論 | 確認済みの直接根拠 | 確認限界 |
|---|---|---|
| 総収入2500万円 | 平成30年・試験時所得税法59条1項2号,問題文の令169条,公式採点実感PDF9〜10頁 | 平成10年版の確認を要する結論ではない |
| 取得費1400万円の承継 | 公式採点実感PDF10頁の平成10年取引への明示的な当てはめ,試験時59条2項・60条1項2号 | 平成10年版の原文を独立確認したとはいえない |
| X自身の登記費用を加算 | 平成4年・平成17年の最高裁判決原文,採点実感PDF10頁 | 平成17年判決の事案は贈与であり,本問の低額譲受けへの適用は理由の共通性による |
| B社の1500万円を当期益金 | 平成30年・試験時法人税法22条,南西通商判決,採点実感PDF11〜12頁 | 有償・無償への分解構成は条件付きの許容分岐 |
| 薬機法定義の当然の移植を批判 | 問題文の各法目的,趣旨PDF26〜27頁,実感PDF12頁,上記東京高裁2判決の判示 | 本件サプリメントの具体的控除可否は論じない |