第1 この記事の対象と結論
本問は,食品成分の測定方法について,発明を完成させた従業者と会社との権利帰属,製品に対する差止めと廃棄,公開出願の補償金,国外使用向け専用品の供給を検討する問題である。
以下では,公式資料から独自に抽出した27項目と,重み5の12項目を中心に答案の組み立て方を示す。
重み合計は113であり,法務省の公式採点基準・項目別配点・予測得点ではない。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 令和元年司法試験・知的財産法第1問。各設問は独立する。 |
| 公式問題文 | https://www.moj.go.jp/content/001293669.pdf のPDF18~19頁 |
| 答案の基準時 | 令和元年5月15日の試験時の法令・判例 |
| 資料状態 | 問題・出題の趣旨・採点実感は対象範囲を実読済み。対象外の他問題は評価に用いていない。 |
| 主要事項 | 職務発明,単純方法と生産方法,補償金,再警告,国外使用と間接侵害 |
| 評価の集計 | N=27,重み5=12,重み合計W=113 |
| 主な最高裁判例 | 平成11年7月16日・生理活性物質測定法事件,昭和63年7月19日・アースベルト事件 |
| 答案分量 | 改行を除き2,460字。見出し・句読点・末尾の「以上」を含む。上限2,500字。 |
| 試験後の資料 | 後年の法令・判例を答案の法源に用いていない。 |
| 年度別記事への入口 | 司法試験の過去問・参考答案一覧―令和元年~令和8年の年度別・科目別ガイド(AI作成) https://yamanaka-bengoshi.jp/2026/10/11/shihoushiken-kakomon-touan-index/ |
| 確認日 | 令和8年10月19日(日本時間) |
採用する結論は,職務発明を肯定して冒認の抗弁を退ける一方,Y製品の製造販売差止め・廃棄を否定するものである。
当初発明の補償金請求には公然実施を理由とする権利行使制限を認め,補正後は本件の期待保護を理由に再警告を必要とする。
専用品については,国外使用に直接侵害が成立しない趣旨を重視し,Zを介した国内供給の間接侵害を否定する。
再警告と間接侵害について,公式資料は自説の説得的な理由付けを求めており,この結論だけを正解として指定しているわけではない。
評価表は第4,答案全文は第5の2,判例と条文の対応は第5の3及び第7に置く。
第2 評価項目の示し方と重み付けの基準
1 評価項目の示し方
一項目につき一つの判定対象を置き,答案の何を評価するかが分かる形に言い換えた。
必須・高評価・誤りの回避・許容分岐を重みから独立に扱う。
「必須」は本記事の分類であり,公式の必須項目の公表を意味しない。
各表の「出題の趣旨」「採点実感」はPDFの頁と短い根拠表現を示す。
「記載なし」は関連範囲を実読した結果,当該個別指摘が見当たらないという意味である。
番号18は公知の構成を採る場合だけの条件付き項目であり,公用の構成を採る答案へ累積的に要求しない。
誤りの裏返しである注意は,番号21の減縮と範囲の当てはめにまとめた。
独立した注意である番号2・14・27にはそれぞれ重みを付け,合計から除外していない。
2 5段階の重み付けの基準
| 重み | 判断基準 |
|---|---|
| 5 | 採点実感が評価の分かれ目とした事項,又は答案の骨格そのもの |
| 4 | 出題の趣旨が検討を求め,採点実感も取り上げた事項(高く評価した・多数の答案の不足を指摘した) |
| 3 | どちらか一方が明示する中核の理由付け |
| 2 | 一方が軽い表現で触れる補強の事項,又は典型的な誤りとして指摘された事項 |
| 1 | 一方が控えめに触れるだけの事項 |
この重みは記事独自の分析であり,項目数や合計から公式得点,難易度,合格可能性を推測するものではない。
第3 本問の概要
1 問題文と事実関係
Xの特許請求の範囲は,工程aと工程bを含む食品中の成分P含有量の測定方法である。
研究開発部門の甲は,勤務時間中にXの施設・資材を用いて発明を完成したが,上司は研究に反対していた。
Xには,完成時に特許を受ける権利を取得する職務発明規程がある。
Yは測定を加工工程へ組み込み,成分量が基準以上の食品を表示して販売する。
設問2では,当初請求項は工程aを含む測定方法であり,その方法は出願前から広く使われていた。
設問2⑵では工程bを加えて補正したが,再警告をしていない。
設問3では専用機器MをYが国内でZに全数販売し,Zが全数を輸出する。
各設問の追加事実を別の設問へ流用しない。
2 設問が求めること
| 設問 | 立場・対象 | 指定・仮定・除外 | 到達点 |
|---|---|---|---|
| 1 | Yの反論とその妥当性 | 請求は製品の製造販売差止めと廃棄。方法使用の差止めと区別 | 冒認抗弁及び請求対象・予防措置の限界 |
| 2⑴ | 当初発明の補償金請求へのYの反論 | 当初発明の設定登録を仮定 | 公用・無効理由・準用による行使制限 |
| 2⑵ | 補正後の補償金請求への反論と妥当性 | 警告後の減縮,再警告なし | 警告制度の趣旨とYの期待の保護 |
| 3 | XによるM製造販売差止めの可否 | 全数国内販売,全数輸出。外国特許は与えられない | 国内供給と国外実施の関係を含めた間接侵害 |
第4 評価項目と重み
1 設問1
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 【必須】職務発明を否定する反論を冒認出願による権利行使制限へ接続する。 | 5 | p31「権利行使制限の抗弁」 | p26「根拠条文」 |
| 2 | 【誤りの回避】上司の反対は従業者の職務所属の問題として扱い,会社の業務範囲と混同しない。 | 3 | p30「「職務」該当性」 | p26「Xの「業務範囲」の問題」 |
| 3 | 【必須】自発的研究の職務所属を判断する客観的基準を示す。 | 5 | p30「客観的に見て」 | p26「判断基準を示さない答案」 |
| 4 | 【高評価】上司の反対と一般的な予定・期待の関係を説明し,研究部門・時間・施設・資材を評価する。 | 5 | p31「設例の事実関係を踏まえて」 | p26「上司の反対と発明完」 |
| 5 | 【必須】事前規程を35条3項に当てはめ,Xへの原始帰属から冒認抗弁の成否を導く。 | 5 | p31「Xに原始的に帰属」 | p26「原始的に帰属」 |
| 6 | 【高評価】無効審判請求適格と104条の3第3項によるYの抗弁資格を区別する。 | 4 | p31「権利行使制限の抗弁を主張することは可能」 | p23「高く評価した」 |
| 7 | 【高評価】単純方法か生産方法かを特許請求の範囲の記載に基づき判定する。 | 5 | p31「特許請求の範囲の記載に基づ」 | p27「最判の基準を示した答案」 |
| 8 | 【必須】発明類型により2条3項の実施の範囲が異なることを示す。 | 4 | p31「「実施」(法第2条第3項)の範囲」 | p23「「実施」(同法第2条第3項)」 |
| 9 | 【高評価】測定方法を製造工程に組み込んでも生産方法と同視しない。 | 4 | p31「本件事案に当てはめる」 | p27「方法の発明」 |
| 10 | 【必須】方法使用の侵害と,請求されたY製品の製造販売の差止めとを区別する。 | 5 | p31「Y製品の製造販売」 | p26「特許権の侵害」 |
| 11 | 【高評価】100条2項の廃棄請求は1項の差止請求に附帯することを示す。 | 4 | p31「差止請求に附帯して」 | p23「差止請求に附帯して」 |
| 12 | 【高評価】侵害予防に必要な行為を,差止めの実効性とその実現に必要な範囲という基準で判断する。 | 5 | p31「差止請求権の行使を実効あらしめる」 | p27「「侵害の予防に必要な行為」」 |
| 13 | 【必須】測定済み食品の廃棄は方法使用の予防に必要な範囲を超えると具体的に当てはめる。 | 4 | p31「Y製品の廃棄は」 | p27「Y製品の廃棄請求」 |
| 14 | 【誤りの回避】Xの請求内容を冗長に繰り返さず,Yの反論とその妥当性に答える。 | 2 | 関連範囲に個別指摘なし | p27「冗長な繰り返し」 |
2 設問2⑴
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 15 | 【必須】出願前の広い使用を29条1項2号の公然実施として新規性欠如へ結び付ける。 | 4 | p31「公然実施された発明」 | p27「公用発明」 |
| 16 | 【必須】新規性欠如を123条1項2号の無効理由へ接続する。 | 4 | p31「法第123条第1項第2号」 | p27「同法第123条第1項第2号」 |
| 17 | 【必須】65条6項準用104条の3第1項により補償金請求権の行使を制限する。 | 5 | p31「法第65条第6項」 | p27「第65条第6項を摘示」 |
| 18 | 【許容分岐】公知構成を採る場合,知られ得る状態か現実の知得かを検討し,後者なら知得者を論ずる。 | 2 | 関連範囲に個別指摘なし | p27「知得者の存在」 |
3 設問2⑵
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 19 | 【必須】65条1項の警告又は悪意と,不意打ち防止という制度趣旨を示す。 | 4 | p31「第三者に対する不意打ち防止」 | p27「趣旨を不意打ち防止」 |
| 20 | 【高評価】減縮補正で補正前後とも技術的範囲に属するときの再警告不要という原則を示す。 | 5 | p31「再度の警告は不要」 | p27「再警告が不要」 |
| 21 | 【必須】工程bの追加は範囲の減縮であり,Y方法が補正前後とも範囲内であると当てはめ,拡張と誤解しない。 | 4 | p31「Y方法は補正前後を通じて」 | p27「技術的範囲に関する基礎的な理解」 |
| 22 | 【高評価】拒絶・未登録へのYの期待を保護するかを,減縮補正の原則との関係で理由を示して論じる。 | 5 | p31「そのような期待が保護されるべきか否」 | p27「そのような問題意識を有する答案は極めて」 |
4 設問3
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 23 | 【必須】方法の発明の専用品について101条4号の間接侵害を問題にする。 | 4 | p31「法第101条第4号」 | p27「同法第101条第4号」 |
| 24 | 【高評価】直接侵害不成立時の判断基準を明示し,折衷説との関係を踏まえ自説を説明する。 | 4 | p31「独立説,従属説,折衷説」 | p28「折衷説」 |
| 25 | 【高評価】外国での方法使用に直接侵害が成立しない根拠を属地主義で説明する。 | 5 | p31「外国で直接実施」 | p28「属地主義」 |
| 26 | 【高評価】Zの輸出前のYの国内製造販売を独立に評価し,Z介在でも結論が変わらない理由を示す。 | 5 | p32「Yが国内で製造販売したMをZが輸」 | p28「Zが介在しても外国で実施される以上」 |
| 27 | 【誤りの回避】101条4号に輸出の列挙がないというだけで,輸出者でないYの間接侵害を否定しない。 | 2 | 関連範囲に個別指摘なし | p28「「輸出」が規定されていないことのみ」 |
5 重みの分布
重み5は12項目,重み4は11項目,重み3は1項目,重み2は3項目,重み1は0項目であり,総数は27項目,単純合計は113である。
重み5は,番号1・3・4・5・7・10・12・17・20・22・25・26である。
職務発明と冒認抗弁のつながり,職務基準の具体的適用,権利の原始帰属,請求項からの類型判定,差止めと予防措置の限界,補償金の準用条文,減縮後の再警告と期待保護,属地主義とZ介在の評価が答案の骨格又は評価の差となる。
これらのうち高評価項目は,公式が示す「一応の水準」の事項と区別して読む必要がある。
第5 模範解答
1 答案の前提と表記
以下は試験時の特許法を基準とする答案の一例である。
条文番号は特許法であり,各設問を独立に扱う。
「1→(1)」の順序で,反論,基準,事実評価,効果を示す。
改行を除く本文は2,460字であり,見出し・句読点・「以上」を含めて2,500字以内である。
再警告及び間接侵害の採用結論は自説であり,最高裁が本問の結論をそのまま判示したとするものではない。
2 答案
1 設問1
(1)Yは,甲が特許を受ける権利を有し,Xの出願は冒認であるから,123条1項6号,104条の3第1項により権利行使できないと反論する。
冒認を理由とする無効審判を請求できるのは特許を受ける権利を有する者に限られるが(123条2項),104条の3第3項によりYの抗弁提出は妨げられない。
しかし,職務発明とは,性質上使用者の業務範囲に属し,発明に至る行為が従業者の現在又は過去の職務に属する発明である(35条1項)。
後者は,従業者の本来の職務内容から発明完成が客観的に予定・期待され,使用者が便宜供与等によって完成に寄与したかにより判断する。
職務上の研究による成果を使用者にも配分する制度趣旨から,具体的な発明命令がある場合に限るべきではない。
食品の成分測定は食品加工会社Xの業務範囲に属する。
上司の反対は予定・期待を否定する方向に働くが,個別研究への反対と研究職務一般への期待は異なる。
甲は研究開発部門に所属し,食品測定の時間短縮という職務に関連する改良を勤務時間中に追求しており,私的な活動とは評価できない。
研究部門では成果を事前に確定できず,反対された研究でもこのような改良の探索は一般的に予定される。
Xの施設・資材を用いたことによるXの寄与もあるから,職務発明に当たる。
事前の職務発明規程により,特許を受ける権利は発生時からXに帰属する(同条3項)。
したがって,冒認の抗弁は認められない。
(2)Yは,請求対象が本件特許権の効力外であると反論する。
発明類型は,特許請求の範囲の記載に基づき判断する(70条1項参照)。
本件請求項は工程a・bによる含有量の「測定方法」を対象とし,物の生産を記載していないから,単純な方法の発明である。
生産方法なら生成物の譲渡等にも効力が及ぶが(2条3項3号),本件では方法の使用に限られる。
Y方法の使用は業としての実施に当たるが(同項2号,68条),その測定を経た食品の製造販売は本件発明の実施ではない。
測定を製造工程に組み込んでも,測定によって食品が生産されるわけではない。
基準値以上の食品の選別・表示も既存成分の認識を利用するにとどまり,測定を食品の生産へ転化させない。
したがって,方法使用の差止めは可能であるが,Y製品の製造販売自体の差止めは100条1項により認められない。
100条2項の請求は1項の差止請求に附帯するから,製品の差止請求を前提とする廃棄請求も認められない。
仮に方法使用の差止めを前提としても,予防措置は発明内容,侵害態様及び差止めの具体的内容に照らし,差止めの行使を実効的にするため必要な範囲に限られる。
測定済みの食品は侵害行為を組成した物や生産方法による生成物ではなく,廃棄しても今後の方法使用を防止するものではない。
よって廃棄は必要な範囲を超える。
2 設問2
(1)Yは,65条6項が準用する104条の3第1項により,本件当初発明の特許は無効にされるべきであると反論すべきである。
工程aのみの測定方法は出願前から広く使用されており,工程aを含む当初発明はその公知の方法を包含するため,公然実施された発明として新規性を欠く(29条1項2号)。
これは123条1項2号の無効理由であり,無効審決の確定を待たずに補償金請求を排斥できる。
公知だと信じたという主観だけを抗弁とするものではない。
(2)Yは,補正後の本件発明の内容を提示した警告がないから補償金を請求できないと反論する。
65条1項の警告は,実施者に発明の内容を知らせ,後の補償金負担という不意打ちを防ぐ趣旨である。
もっとも,出願時の記載の範囲内で請求範囲を減縮する補正であり,実施方法が補正の前後を通じて技術的範囲に属するなら,通常は再警告を要しない。
既に負担を予告された範囲内の実施について請求されても不意打ちにはならないからである。
本件も工程bの追加により対象を狭める。
当初請求項の「工程aを含む」はbの併用を排除せず,Y方法はa・bを備えるので前後とも範囲内にあり,Xは再警告不要と主張できる。
確かに,審査中の出願は補正され得るため,拒絶されるとの一方的期待を保護すべきでないとも考えられる。
Y自身bを併用しており,改良部分に限定して登録される可能性も予測できる。
しかし,Yは工程aのみの方法が従来から使用されていることを知り,当初発明には新規性がなく補償金負担が生じないと考えて実施を継続した。
その期待は単なる審査結果の楽観ではなく,出願前の広い使用という客観的事情に支えられている。
工程bを加えた有効な発明へ限定して請求する場合まで,当初の警告だけで負担を予測させるのは不意打ちとなる。
本件では再警告を要する特段の事情があると解し,Yの反論を認める。
補正後の発明を知ったとの事実も示されておらず,同項後段による請求も認められない。
bを使用していることと,補正後の出願内容を知っていることは別である。
3 設問3
Mは方法の使用にのみ用いる物であり,Yの業としての国内製造販売は101条4号の文言上,間接侵害に当たり得る。
独立説によれば差止めを認める余地があり,従属説によれば直接侵害がない以上否定される。
もっとも,一律の独立説では本来保護しない利用まで禁止する一方,従属説を直接侵害の現実の発生が必要とする趣旨に解すると予防制度として狭すぎる。
そこで,直接侵害が成立しない趣旨に即して間接侵害の成否を判断する折衷説による。
間接侵害は,国内の直接侵害を生じさせる蓋然性の高い予備的行為を抑止する制度であり,特許権の効力が及ばない国外での方法使用まで保護するものではない。
ZはMを全数輸出し,国内で方法を使用するおそれを示す事情はない。
Zの介在は供給の経路を変えるだけで,国内で予防すべき方法使用の危険を新たに生じさせない。
Yの製造販売自体は国内でも,国外使用による利益を保護するために供給を禁止すれば,属地主義を超える保護となる。
よって,本件で間接侵害は成立せず,Xの差止請求は認められない。
以上
3 出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説
(1) 答案と評価項目の対応
| 番号 | 答案の箇所 | 対応の内容 |
|---|---|---|
| 1 | 1(1) | 職務発明を否定する反論を冒認出願による権利行使制限へ接続する。 |
| 3 | 1(1) | 自発的研究の職務所属を判断する客観的基準を示す。 |
| 4 | 1(1) | 上司の反対と一般的な予定・期待の関係を説明し,研究部門・時間・施設・資材を評価する。 |
| 5 | 1(1) | 事前規程を35条3項に当てはめ,Xへの原始帰属から冒認抗弁の成否を導く。 |
| 6 | 1(1) | 無効審判請求適格と104条の3第3項によるYの抗弁資格を区別する。 |
| 7 | 1(2) | 単純方法か生産方法かを特許請求の範囲の記載に基づき判定する。 |
| 8 | 1(2) | 発明類型により2条3項の実施の範囲が異なることを示す。 |
| 9 | 1(2) | 測定方法を製造工程に組み込んでも生産方法と同視しない。 |
| 10 | 1(2) | 方法使用の侵害と,請求されたY製品の製造販売の差止めとを区別する。 |
| 11 | 1(2) | 100条2項の廃棄請求は1項の差止請求に附帯することを示す。 |
| 12 | 1(2) | 侵害予防に必要な行為を,差止めの実効性とその実現に必要な範囲という基準で判断する。 |
| 13 | 1(2) | 測定済み食品の廃棄は方法使用の予防に必要な範囲を超えると具体的に当てはめる。 |
| 15 | 2(1) | 出願前の広い使用を29条1項2号の公然実施として新規性欠如へ結び付ける。 |
| 16 | 2(1) | 新規性欠如を123条1項2号の無効理由へ接続する。 |
| 17 | 2(1) | 65条6項準用104条の3第1項により補償金請求権の行使を制限する。 |
| 18 | 2(1) | 採用しない。公用構成を採り,公知構成を併記しない。 |
| 19 | 2(2) | 65条1項の警告又は悪意と,不意打ち防止という制度趣旨を示す。 |
| 20 | 2(2) | 減縮補正で補正前後とも技術的範囲に属するときの再警告不要という原則を示す。 |
| 21 | 2(2) | 工程bの追加は範囲の減縮であり,Y方法が補正前後とも範囲内であると当てはめ,拡張と誤解しない。 |
| 22 | 2(2) | 拒絶・未登録へのYの期待を保護するかを,減縮補正の原則との関係で理由を示して論じる。 |
| 23 | 3 | 方法の発明の専用品について101条4号の間接侵害を問題にする。 |
| 24 | 3 | 直接侵害不成立時の判断基準を明示し,折衷説との関係を踏まえ自説を説明する。 |
| 25 | 3 | 外国での方法使用に直接侵害が成立しない根拠を属地主義で説明する。 |
| 26 | 3 | Zの輸出前のYの国内製造販売を独立に評価し,Z介在でも結論が変わらない理由を示す。 |
重み3以下の番号2は1(1)で業務と職務を分け,番号14は請求原因の冗長な再現を避け,番号27は3でYの国内行為を検討することで対応する。
(2) 職務発明と冒認の抗弁
上司の反対は,発明の性質がXの業務範囲に入るかとは別に,甲の職務に属するかを検討させる事実である。
本答案は,一般的に予定・期待される研究活動と,特定テーマに対する上司の個別の反対を分け,研究職,勤務時間,施設・資材の提供を総合して肯定した。
原始帰属は35条3項と事前規程によるものであり,甲が一旦取得してXへ譲渡したとの説明に置き換えない。
Yの抗弁資格は104条の3第3項により別に認められるが,資格があることと冒認の実体的理由があることは異なる。
(3) 差止めと廃棄の対象
平成11年7月16日最高裁判決は,発明類型を請求項の記載から判定し,製造工程への組込みだけで生産方法の効力を与えることを否定した。
本件でも請求項は「測定方法」を対象とするため,食品の製造販売自体と方法使用を区別する。
また,100条2項は1項の請求に附帯し,必要な予防措置の範囲を超える廃棄を認める規定ではない。
測定済み食品の廃棄が将来の測定方法使用の防止へつながるかまで確認する。
(4) 補償金請求と再警告
設問2⑴では,29条1項2号,123条1項2号,65条6項,104条の3第1項の連鎖を閉じる。
公然実施を「公知」とだけ書き換えると,実際の知得者を必要とするかという別の検討を生むので,本答案は公用の構成に統一した。
設問2⑵の工程b追加は,要件を増やすことによって範囲を狭める減縮である。
昭和63年7月19日最高裁判決は旧実用新案法の事案であり,減縮の前後を通じて範囲内の実施者には,再警告等による補正後内容の知得を不要とした。
本問では,その一般則に加えて,当初発明が公用で登録されないというYの期待を保護するかが問われる。
本答案は期待保護を認めるが,審査中の補正は予測される以上,拒絶期待を保護しないとする反対結論も,理由と事実の評価を一貫させて論じ得る。
最高裁が拒絶期待を理由とする一般的な再警告義務を認めたとの帰属はしない。
(5) 国外実施と国内の専用品供給
本答案は,直接侵害不成立の趣旨に即して間接侵害を判断する折衷説を採る。
国内の私的使用等の問題と,属地主義によりそもそも日本の特許権の効力が及ばない国外使用とを同じ理由で処理しない。
Yが国内で製造販売している点を認めた上で,Zの介在は国外使用への供給経路を変えるだけで,国内の方法使用の危険を生まないと評価した。
101条4号に輸出の語がないというだけの理由では,輸出者でないYの国内供給行為への答えにならない。
(6) 答案の弱点と扱わなかった事項
この答案は職務発明を肯定し,再警告を必要とし,間接侵害を否定する一つの構成である。
とりわけ再警告の期待保護は,最高裁の減縮原則からの本件固有の評価であり,反対結論の理由を踏まえて判断する必要がある。
甲の相当の利益,先使用,外国特許に基づく救済,損害額は設問の直接の対象として扱っていない。
後発判例を試験時の規範へ遡及させず,公開答案や受験者の再現答案との比較も行っていない。
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2 同じ科目の別の年度の記事
①令和7年度司法試験知的財産法第1問の模範解答と評価項目(AI作成) https://yamanaka-bengoshi.jp/2026/10/09/r7-shihoushiken-chizai1-mohan-kaitou-hyouka-koumoku/
②令和2年司法試験知的財産法第1問の模範解答と評価項目(AI作成) https://yamanaka-bengoshi.jp/2026/10/18/r2-shihoushiken-chizai1-mohan-kaitou-hyouka-koumoku/
3 本問の論点に関連する山中弁護士ブログの記事
①特許無効を争う三つの手続―無効審判・審決取消訴訟・侵害訴訟の無効の抗弁(AI作成) https://yamanaka-bengoshi.jp/2026/09/25/tokkyo-mukou-tetsuzuki-hikaku/
②特許出願前に販売・展示してしまったとき―公然実施,分析可能性及び新規性喪失の例外(AI作成) https://yamanaka-bengoshi.jp/2026/10/15/tokkyo-shutsuganmae-hanbai-kouzen-jisshi/
関連記事は学習の導線であり,本問の答案内容を作るための法源として用いたものではない。
第7 出典及び確認状態
1 公式資料
問題:https://www.moj.go.jp/content/001293669.pdf 。知的財産法第1問,PDF18~19頁。
出題の趣旨:https://www.moj.go.jp/content/001305186.pdf 。PDF30頁の知的財産法見出しから32頁の第2問直前まで。印刷頁は31~32頁に相当する。
採点実感:https://www.moj.go.jp/content/001308864.pdf 。PDF23~24頁の「2 採点方針等」第1問,26~28頁の「3 採点実感等」第1問及び30頁の共通末尾注記。
2 法令
特許庁『工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第20版〕』(平成29年3月)の条文を参照した。
https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/kaisetu/kogyoshoyu/cikujyoukaisetu.html
特許法35条,65条,100条,101条,104条の3及び123条の関係を確認した。
答案に用いたのは当時の制度であり,令和元年試験後の制度を遡及適用していない。
3 裁判例
最高裁平成11年7月16日判決・民集53巻6号957頁(生理活性物質測定法事件)。原文の3~5頁を中心に確認した。
https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-52227.pdf
最高裁昭和63年7月19日判決・民集42巻6号489頁(アースベルト事件)。旧実用新案法の補償金に関する原文6~8頁を確認した。
https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-52204.pdf
大阪地裁平成6年4月28日判決(判時1542号115頁)及び東京地裁平成14年9月19日中間判決(判時1802号30頁)は,公式資料が職務発明に関して紹介する裁判例である。
その紹介内容と,本記事の事実評価とを区別する。
東京地裁平成14年9月19日中間判決の関連原文では,業務命令に反したとの主張があっても,研究者の職務,勤務時間,会社の施設・設備・補助者の労力等を踏まえて職務発明性を肯定している。
https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-34344.pdf
当該判決の旧35条の承継制度と,本問の改正後35条3項による使用者への原始帰属は区別する。
4 確認状態
公式資料の本問範囲と前記最高裁2判決の関連理由部分は実読済みである。
東京地裁平成14年9月19日中間判決は,裁判所掲載原文のPDF9頁の職務発明該当性の理由を追加確認した。
大阪地裁平成6年4月28日判決の原文は独立確認していない。
評価項目の区分・重みと,本問について採用する事実評価・結論は記事独自の分析である。
原始帰属,請求対象,補償金の準用を示す法文と,公式資料が許容する理由付けの幅を区別している。