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早期事業再生法の施行前準備―必要書類・資金繰り・金融機関との協議(AI作成)

第1 早期事業再生法の施行前に何を準備するか

早期事業再生法の利用を検討する事業者は,施行前から,決算書と資金繰り資料をそろえ,金融機関等の債権・担保・保証を一覧にし,事業を続けるために必要な資金と金融機関との協議方針を整理することが重要である。
会社の借入金の減免だけを考えるのではなく,取引先への支払,経営者保証,リース設備及び手続が成立しない場合の対応を合わせて検討する必要がある。

早期事業再生法の本体の施行日は,2026年12月11日である。
本稿は,2026年10月14日時点で公表されている経済産業省のQ&A,施行規則及び施行予定の法文に基づき,主に会社が制度利用を準備する際の確認事項を整理したものである。
施行前に準備できることと,施行後に指定確認調査機関の確認を受けて行う法定手続とは区別しなければならない。

制度全体の対象債権,決議及び裁判所の認可については,早期事業再生法の概要―対象債権,4分の3決議及び裁判所認可(AI作成)を参照されたい。
以下の準備の順序や担当の割り振りは,法令上の一律の着手順序ではなく,資料の漏れと資金不足を把握するための整理例である。

第2 準備はどの順序で進めるか

まず,資金繰りの状況を把握し,制度の施行や申請準備を待てる状態かを確認する。
その上で,債権・担保・保証の関係をそろえ,収益改善の方針と金融機関への説明資料を具体化する。
法令所定の資料をそろえても利用要件を満たすとは限らないため,資料収集と制度の適合性の検討を並行して進めることになる。

準備の段階主な作業確認する点
資金不足の把握預金残高,入出金予定及び返済予定を集める直近の給与,仕入代金,税金等を支払えるか
債権関係の整理借入,リース,担保及び保証の資料を照合する金融機関等の債権を漏らしていないか
事業の見通しの整理窮境に至った原因,改善策及び収支見込みをまとめる借入条件の変更に加えて何を改善するか
金融機関との協議説明の窓口,交渉経過及び異議の有無を整理する入口の確認要件と最終的な可決見込みを分けているか
申請内容の具体化所定書類と追加資料をそろえ,受付条件を確認する最新の書式と申請先の案内に適合しているか

経理担当者は残高と入出金,事業部門は収益改善と設備の必要性,経営者は事業方針と保証関係を担当するなど,資料ごとに収集担当を決めると整理しやすい。
弁護士,公認会計士,税理士等に相談する際は,既存の資料を先に集め,不足する資料と見解が分かれる点を明らかにしておくことが有用である。
専門家への相談を,すべての資料が完成するまで遅らせる必要はない。

第3 確認申請にはどのような書類が必要か

1 法令所定の申請書・添付書類

確認申請には,施行規則の様式第一による申請書,権利変更概要書及び貸付債権等一覧表のほか,定款,登記事項証明書,決算書,資金繰り資料等が必要となる(法3条,規則8条,Q&AのQ52)。
次の表は主に国内の会社を念頭に置いたものであり,外国法人の代替書類や,申請者の形態に応じた取扱いは別途確認する必要がある。

書類対象・期間準備の際の確認点
申請書施行規則の様式第一申請先の最新の受付案内と様式を確認する
権利変更概要書権利変更の方針,収支見込み等金融機関との交渉経過と事業方針を対応させる
貸付債権等一覧表金融機関等の貸付債権等債権,担保,保証及び連絡先を照合する
定款・登記事項証明書申請者の組織・登記現在の代表者,商号等との一致を確認する
貸借対照表・損益計算書申請日前3年以内に法令に基づき作成された3期分決算期の変更等がある場合も,単に暦年で3年分と扱わない
資金繰りの実績・見込み申請日前1年間の実績及び申請日以後6か月間の見込み申請予定日が動いたときは対象期間を更新する
代理権を証する書面代理人による申請の場合委任する手続の範囲を確認する
その他の資料指定確認調査機関が必要と判断する事業・財産等の資料法令所定の書類だけで準備が完了すると考えない

経済産業省のQ&Aでは決算書を過去3期分と説明しているが,施行規則8条6項3号には,申請日前3年以内に法令の規定に基づき作成された3期分という定めがある。
設立からの期間が短い会社や決算期を変更した会社は,保有する決算書を整理した上で,不足や期間の取扱いを申請先に確認することが必要である。
未作成の資料をそのまま不要と判断することはできない。

2 資料の数値と基準日をそろえる

決算書,借入残高証明,返済予定表及び預金残高の基準日が異なる場合は,その違いを説明できるようにする。
例えば,決算日後の返済,新規借入及び保証履行があれば,決算書の借入残高と申請時の債権一覧が一致しないことがある。
比較表に基準日と増減の理由を記載することは,数値の不一致を見落とさないための方法である。

提出資料には,金融機関の名称,契約番号,残高,担保及び保証人を対応付けると確認しやすい。
資料の作成者と更新日も管理しておけば,申請時期が変わった場合に差し替える範囲を把握しやすくなる。

第4 権利変更概要書と債権一覧には何を整理するか

1 権利変更概要書は事業と協議の見通しを説明する

権利変更概要書には,権利変更の方針,収入・支出の見込み,今後の事業活動の方向性,所定の金融機関等の異議の有無及び対象債権者集会の時期の見込み等を記載する(法3条2項)。
施行規則では,事業・従業員・財産の状況,申請に至った事情及び金融機関等との交渉経過等も求めている(規則8条4項,Q&AのQ53)。
単に債務の減額率を記載するだけでは,事業を続けられる理由や可決の見込みを説明したことにならない。

準備段階では,売上や利益が悪化した原因と,これから改善できる要因を分けて整理する。
例えば,不採算事業の縮小,価格改定,設備の維持・入替え,スポンサー支援等を検討する場合には,それが収支と必要資金にどう反映されるかを確認する。
これらは事案ごとの検討例であり,特定の改善策が一律に要求されるという意味ではない。

2 貸付債権等一覧表は担保・保証・訴訟まで照合する

貸付債権等一覧表には,債権の内容と原因,金融機関等の名称・住所,担保の内容と目的財産等を記載する(法3条3項)。
連絡先,保証の内容と保証人,第三者が提供した担保,執行力ある債務名義・終局判決及び係属訴訟等も整理する必要がある(規則8条5項,Q&AのQ55)。

整理する項目照合する資料の例見落としやすい点
債権の内容・原因金銭消費貸借契約,返済予定表,残高資料借換えや債権譲渡後の現在の債権者
担保と目的財産担保設定契約,登記,資産台帳同じ財産への複数の担保,担保の順位
保証・第三者担保保証契約,保証残高の資料,担保資料会社の資料だけでは分からない個人の負担
連絡先・交渉経過担当部署の記録,協議メモ,書面回答窓口の担当者と最終的な判断部署の違い
判決・訴訟等判決,債務名義,訴訟関係書類残高や当事者の表示との不一致

担保がある債権も,対象債権に含まれることがある。
担保で保全されている部分を権利変更や議決権の計算から除くことと,その金融機関を債権一覧や連絡対象から外すことは別である(Q&AのQ6,Q8,法11条・19条)。

入口の確認でも,金融機関等の一般の利益に適合する見込みを検討するため,清算価値との比較が問題となる(Q&AのQ60)。
資産台帳,担保資料及び評価資料を集め,事業を続ける場合と清算する場合の回収見込みを説明できるようにすることが有用である。
評価額を都合のよい数字で固定せず,その根拠と評価時点を明らかにする必要がある。

第5 資金繰りは何か月分作り,どこまで見通すか

申請に必要な資金繰り資料は,申請日前1年間の実績と申請日以後6か月間の見込みである(規則8条6項4号,Q&AのQ52・Q57)。
したがって,施行日を起点に固定した表を作れば足りるというものではなく,実際の申請予定日に合わせて更新する必要がある。
また,6か月分の見込みを提出することは,すべての手続が6か月以内に終わることを意味しない。

法14条は,指定確認調査機関の確認後6か月以内に早期事業再生計画と権利変更議案を提出することを定め,所定の場合には6か月以内の延長を認めている。
申請後6か月の資金繰り資料の期間と,確認後の計画提出期限は,起算点も役割も異なる。
計画提出後の決議,認可や資金調達の実行時期も踏まえ,必要に応じてより先まで資金繰りを見通すことが有用である。

資金繰り表では,金融機関への返済予定と,給与,仕入代金,賃料,税金等の事業継続に必要な支出を分けて把握する。
対象債権の範囲は金融機関等と貸付債権等の両方から判断されるため,会社の債務全体が一括して減免されることを前提にはできない(Q&AのQ5)。
支払の継続や例外弁済の見込みは,契約と法令上の扱いを確認して織り込む必要がある。

売上が計画を下回る場合,回収が遅れる場合,スポンサー資金の入金が遅れる場合なども計算しておくと,いつ資金が不足するかを把握しやすい。
その時点で必要となるつなぎ資金と,制度利用が成立しない場合の対応を検討することが重要である。
資金供与を受けられることと,その債権が法的にどのように扱われるかは区別して検討する。

手続の選択と手続中の資金繰りについては,DIP型会社更生と東京地裁の小規模会社更生―経営陣が残ったまま担保権を手続に取り込む方法と,民事再生・早期事業再生法との比較(AI作成)も参照されたい。

第6 金融機関との協議では何を確認するか

1 入口の5分の1と決議の4分の3は異なる

指定確認調査機関の確認を受ける入口では,貸付債権等一覧表に記載された貸付債権等の総額の5分の1以上を有する一又は複数の金融機関等が,その確認を受けることに異議を述べていないことが求められる(規則8条2項・3項,Q&AのQ59)。
この総額には担保による保全部分も含まれる。
特定の金融機関が制度利用の入口に異議を述べていないことは,債務の減免や最終的な権利変更議案への賛成が確定したことを意味しない。

権利変更議案の可決には,原則として議決権者の議決権総額の4分の3以上の同意が必要となる(法20条1項)。
一の議決権者が総額の4分の3以上を有する場合には,これに加えて出席した議決権者の過半数の同意が必要である。
議決権は法19条に従って算定され,担保で保全される部分等の扱いが入口の貸付債権等の総額と異なるため,同じ残高表の割合だけで判断してはならない。

確認する場面計算・判断の対象準備する資料
確認申請の入口貸付債権等総額の5分の1以上を有する金融機関等の異議の有無保全部分を含む債権残高と協議記録
権利変更議案の可決法19条による議決権総額の4分の3以上の同意等担保評価,議決権の算定及び議案に対する意向
事業再生の成立の見通し事業を継続できる収支・資金と必要な手続事業計画,資金繰り及び認可等の見通し

2 申請前に全金融機関の同意をそろえる必要があるか

確認申請の時点で,すべての対象債権者に制度利用を説明する法令上の義務はない(Q&AのQ58)。
ただし,その後の手続と可決の見込みを考えれば,事業者の事情に応じて金融機関等との協議を進め,交渉経過を残すことが重要である。
申請前の説明義務の有無と,申請後に対象債権者全体への通知・説明等が必要になることを混同してはならない。

各金融機関との協議では,説明した資料,質問,回答,条件付きの意向及び回答日を記録する。
事業計画や残高が変わった場合には,前の回答が変更後の内容にも当てはまるかを確認する。
資料には金融機関等の異議の有無だけでなく,交渉経過の概要も記載することになるためである。

第7 経営者保証とリースは会社の準備と並行して確認する

1 経営者保証は会社の債務とは別に整理する

会社の権利変更決議は,金融機関等が保証人に対して有する権利や,第三者が提供した担保には影響を及ぼさない(法28条3項)。
そのため,会社の債務が減免されても,経営者の保証債務が同じ割合で当然に減るとはいえない。
会社の債権一覧を作る段階で,保証契約,保証残高,個人資産及び個人の他の債務を把握することが有用である。

経済産業省のQ&AのQ178は,経営者保証に関するガイドラインの要件を満たす場合に,会社の早期事業再生手続と保証債務の整理を一体で進めることが可能であると説明している。
ただし,保証債務の整理では対象債権者全員の合意が必要であり,会社側の多数決とは分けて確認しなければならない。
詳しくは,早期事業再生法で経営者保証はどうなる?―保証債務が残る理由とガイドラインによる一体整理(AI作成)を参照されたい。

2 リースは契約と設備の必要性をそろえて検討する

金融機関等が有するファイナンス・リースに係る債権は,対象債権として扱われ,一時停止の要請と弁済禁止の問題が生じる(Q&AのQ86)。
支払を継続できるかは,保全部分や少額の対象債権についての例外の要件等に照らして検討する必要がある。
月々の請求額が小さいことだけで,支払を継続できると判断することはできない。

契約書,未払リース料の残額,資産の評価資料,解約・返還の条件及び設備を失った場合の事業への影響を整理しておくことが有用である。
同じリース会社との複数の契約については,少額性を債権者単位で判断する点にも注意する(Q&AのQ83)。
詳しくは,早期事業再生法でリース料はどうなる?―対象債権,支払継続及び設備を使い続けるための確認事項(AI作成)を参照されたい。

第8 施行日まで待てない場合と先行する私的整理

1 資金が不足する場合は施行を待つこと自体を再検討する

施行日まで,あるいは制度利用の準備中に資金が不足する場合は,早期事業再生法の利用だけを前提にせず,現行の私的整理,資金調達,民事再生等の選択肢を検討することが必要である。
制度の施行や申請書類の完成を待つことにより,給与・仕入代金等の支払や事業継続が困難になることを避けるためである。
どの手続が適するかは,資金の残存期間,事業の見通し及び債権者の協力状況によって異なる。

新しい法律に申請する準備をしているというだけで,金融機関への返済やリース料の支払が停止されるわけではない。
法6条2項の弁済禁止は,同条1項の一時停止要請をした旨の通知が確認事業者にあった時から始まるものである。
施行前・申請前の支払変更は,別途の合意や利用する手続のルール等を確認して判断する必要がある。

2 先行する私的整理の資料と協議記録を引き継ぐ

先行して私的整理を進めている場合でも,法3条の要件を満たせば,早期事業再生法の手続を利用することが可能である(Q&AのQ175)。
一定の準則に基づく手続で事業再生計画について協議していた場合には,対象債権者会議を開催することを要しない取扱いがある(規則12条4項,Q&AのQ176)。
ただし,準則に基づかない純粋な私的整理を含め,一律に会議を省略したり,法15条の調査を省略したりできるものではない。

これまでの事業計画,資産評価,債権者への説明資料及び協議の記録を保存し,早期事業再生手続で必要な内容と照合することが有用である。
先行手続における合意や融資条件が,新しい手続でも同じ扱いになると決め付けず,担当専門家及び申請先に確認する必要がある。

第9 施行前準備についてよくある質問

1 赤字でなければ準備を始められないか

赤字であることだけが制度利用を検討する基準ではない。
経済産業省のQ&AのQ1は,2年以内に支払不能に陥る可能性が高い場合や,低収益・赤字が続き将来の元本償還が難しくなるリスクがある場合等を,経済的に窮境に陥るおそれの例としている。
将来の返済と事業の見通しに問題があると分かった段階で,資料整理と相談を進めることが有用である。

2 中小企業や個人事業者も対象になるか

企業規模や法人格の有無による一律の利用制限はない(Q&AのQ2・Q3)。
ただし,利用要件を満たすことが必要であり,提出資料の扱いも申請者の形態に応じて確認する必要がある。
本稿の会社向けの資料例を,個人事業者にそのまま当てはめることはできない。

3 いまの段階で費用と受付方法まで確定できるか

利用を具体化する際は,指定確認調査機関の受付窓口,提出方法,書式,追加資料,費用及び支払時期を確認する必要がある。
施行規則の書類一覧だけから,個別の案件で必要な費用や申請先の受付条件まで決めることはできない。
資金繰りには,確認できた費用と未確定の費用を分けて記載し,後者については余裕を見込んで検討することが有用である。

第10 参照資料

1 経済産業省「早期事業再生法」:施行日及び関連資料の公表ページ。
https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/jigyosaisei/index.html

2 経済産業省「早期事業再生法Q&A」:本稿では主にQ1〜Q8(PDF12〜14頁),Q52〜Q60(PDF37〜40頁),Q83〜Q88(PDF50〜52頁),Q175・Q176・Q178(PDF83〜84頁)を参照した。
https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/jigyosaisei/file/soukijugyousaiseihou_QA.pdf

3 経済産業省「施行規則」:8条の申請書類・異議の有無,11条の弁済禁止の例外,12条の対象債権者会議等。
https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/jigyosaisei/file/soukijugyousaiseihou_sekoukisoku.pdf

4 e-Gov法令検索「円滑な事業再生を図るための事業者の金融機関等に対する債務の調整の手続等に関する法律」:2026年12月11日施行予定版の3条,6条,11条,14条,19条,20条,28条及び29条を参照した。
https://laws.e-gov.go.jp/law/507AC0000000067/20261211_000000000000000?occasion_date=20261211