メインコンテンツへスキップ
       

早期事業再生法でリース料はどうなる?―対象債権,支払継続及び設備を使い続けるための確認事項(AI作成)

第1 早期事業再生法でリース料を支払い続けられるか

1 対象になるリースでも支払継続の余地がある

早期事業再生法の対象となるファイナンス・リース料は,原則として一時停止要請と弁済禁止の対象となる。
ただし,担保で保全される部分や少額の対象債権について,所定の要件を満たせば約定どおりの支払を継続できる場合がある。
設備が事業に必要であるという事情だけで,当然に支払を継続できるわけではない。

判断の順序は,①リース契約が制度の対象になるか,②担保で保全される部分はいくらか,③非保全部分について少額債権の例外を使えるか,④支払継続が資金繰りと再生計画に与える影響はどうか,である。
経済産業省Q&AのQ86は,このような例外を利用した約定弁済の継続を説明している。

2 施行日とこの記事の範囲

令和8年10月13日現在,本格的な早期事業再生手続の施行日は同年12月11日であり,利用開始前である。
指定確認調査機関の準備に関する先行施行と,事業者による権利変更手続の利用開始は区別する必要がある。
以下は,同年12月11日施行版の法律・施行規則と経済産業省Q&Aに基づく説明である。

制度全体の対象,確認申請,多数決及び裁判所認可は,早期事業再生法の概要―対象債権,4分の3決議及び裁判所認可(AI作成)を参照されたい。
この記事は,主として確認前に締結されたリース契約について,手続中の支払継続を判断する場面を扱う。

第2 どのリース契約が対象になるか

1 名称だけでなく契約の実質を確認する

施行規則3条及び5条は,対象となるリース業者とリース契約に係る債権を定めている。
経済産業省Q15・Q31によれば,対象となるのは,原則として中途解約ができず,借主が資産の使用による経済的利益を実質的に享受し,使用に伴う費用を実質的に負担するファイナンス・リースに係る債権である。
契約書に「リース」と書かれていることや,請求書の費目が「リース料」であることだけで対象性を決めることはできない。

中途解約条項,解約時の残額精算,取得費用と総支払額の関係,保守・保険等の負担及び返却条件を確認する。
対象となる業者が保有する債権でも,その業者に対する全ての債務が一律に対象となるわけではない。

2 確認前の契約と確認後の新規取引を分ける

対象債権は,法3条1項の確認前の原因に基づいて生じた貸付債権等であり,期限未到来の請求権や将来の請求権も含む(法2条3項)。
確認前の契約に基づく将来のリース料を,支払期日が確認後に来るという理由だけで手続外と扱うことはできない。
確認後に新たに締結する契約の債務とは,発生原因を分けて整理する必要がある。

確認事項判断の要点
契約の種類ファイナンス・リースに当たるかを契約の実質から判断する
債権者の地位法令上の金融機関等に該当するかを確認する
債権の発生原因確認前の契約による将来の請求か,確認後の新規取引かを分ける
担保性所有権等の形式だけで判断せず,当該債権が担保付債権に該当するかを確認する

第3 一時停止と弁済禁止をどう理解するか

1 債権者への要請と事業者の支払制限は異なる

指定確認調査機関は,確認後,速やかに,全ての対象債権者に対象債権の回収等の一時停止を要請し,その要請をした旨を確認事業者に通知する(法6条1項)。
確認事業者の対象債権に係る債務の弁済禁止は,この通知があった時から始まる(同条2項)。
終期は,権利変更議案につき議決権者全ての同意が得られた時,議案が否決された時,又は権利変更決議の認可若しくは不認可の決定が確定した時である。

権利変更決議が認可の決定の時から効力を生ずることと,弁済禁止が認可等の決定の確定まで続くことは区別しなければならない(法28条1項,6条2項)。
したがって,リース会社から請求を受けていないことと,事業者が任意に支払ってよいことは同じではない。

法6条2項ただし書には,全ての対象債権者の同意を得る場合と,施行規則で定める対象債権についての例外がある。
リース料を引き続き支払う場合には,どの例外による支払なのかを明確にする必要がある。

2 対象外の契約でも設備利用の条件を確認する

早期事業再生法の対象外となる賃貸借等は,この制度による対象債権の弁済禁止とは分けて扱う。
もっとも,対象外であることは,契約上の解除条件,既存の滞納又は返却義務が消えることを意味しない。
対象性の判断と,設備を使用し続けるための契約上の条件の確認を並行して行うことが必要である。

第4 支払継続が認められる例外

1 担保で保全される部分

担保付債権に該当するリース債権の保全部分については,弁済額が保全部分から控除され,早期の弁済が事業の再生に支障を及ぼさない場合に,例外弁済が可能となる(施行規則11条3項2号)。
経済産業省Q86は,キャッシュフローに著しい影響を与えない限り,この再生に支障を及ぼさないという要件に該当すると考えられる旨を説明する。

正式な資産評定書を提出する前でも,弁済時点の担保評価の見込みから,支払額が保全部分に収まる蓋然性を把握できれば弁済する余地がある(Q79)。
ただし,後に保全部分を超えて支払っていたことが判明すると,平等原則に基づく計画上の調整が問題となる。
設備が重要であることだけで,保全部分の評価を省略することはできない。

2 非保全部分が少額である場合

担保評価の結果,非保全部分が残る場合には,少額の対象債権として例外弁済できるかを検討する。
要件は,早期弁済によって手続を円滑に進めることができ,かつ,事業の再生に支障を及ぼさないことであり,指定確認調査機関の確認が必要である(施行規則11条3項4号)。

少額性は,1件の契約ごとではなく債権者単位の非保全部分について判断する(Q83)。
一律の金額基準はなく,事業者の規模,手続コスト及び資金繰り等を踏まえる。
多数の小口リースについて約定の分割弁済を続けることで,手続コストが減少し,計画の立案・可決が円滑になる場合も想定されている(Q83・Q86)。

少額債権以外の例外について,法令上は指定確認調査機関の事前確認が義務となっていない。
しかし,弁済禁止違反は調査や裁判所の不認可の問題になり得るため,経済産業省Q84は,少額債権以外についても事前に確認を経ておくことが望ましいと説明する。
法令上必要な確認と,実務上望ましい事前協議を区別して進める必要がある。

第5 リース資産の評価と債権者の扱い

1 残リース料と設備の評価額は同じとは限らない

資産評定基準13号は,未払リース料相当額を負債計上し,見合いのリース資産を「その他償却資産」に準じて評定するとしている。
同基準12号によれば,観察可能な市場価格があればその価格を使い,なければ原価法,収益還元法又は適正に算定された未償却残高等による。
貸借対照表に既に計上されている場合も,同じく12号に基づいて評定する(Q86)。

Q86は,適正な未償却残高による場合,多くの事例では残リース料相当額がおおむね担保でカバーされると説明している。
これは,全ての契約で残リース料の全額が保全部分となるという意味ではない。
帳簿残高だけで結論を出さず,評定方法とその合理性を確認する必要がある。

2 分割払を続けても債権者は当然には手続から外れない

例外弁済によって,ある債権者が有する対象債権の全てが消滅すれば,その者は対象債権者としての地位を失う。
一方,約定弁済を続けても対象債権が残る場合には,対象債権者会議や集会の招集対象となり,残る非保全部分について議決権が認められる(Q87)。
将来も満額で支払う予定であるというだけで,対象債権者から除外することはできない。

第6 支払と設備利用を協議するための資料

1 施行前にリース会社との協議のため何を集めるか

支払継続の可否を判断するには,契約書だけでなく,残高,資産評価及び資金繰りを対応させる必要がある。
次の表は,法令上の一律の提出書類一覧ではなく,事業者と専門家が論点を整理するための確認項目である。

資料確認する内容
契約書・変更合意・支払予定表中途解約,残額精算,残リース料,担保性及び発生原因
債権者別の契約・残高一覧同じリース会社への複数契約をまとめた非保全部分の額
設備明細・評価資料市場価格,合理的な評定方法,保全部分の見込み
月次資金繰り・再生計画案支払継続の負担と,設備利用が売上・事業継続に与える影響
例外弁済の協議記録適用する例外,要件,必要な確認,債権者への説明内容

少額性は毎月の請求額や契約ごとではなく,債権者単位の非保全部分で検討する(Q83)。
例えば,同じリース会社との二つの契約が対象債権かつ担保付債権に該当し,残額と保全部分が次のように評価されたと仮定する。

契約仮定する残額・保全部分・非保全部分
契約A残額600万円-保全部分400万円=非保全部分200万円
契約B残額400万円-保全部分300万円=非保全部分100万円

この仮例では,同じリース会社に対する非保全部分は合計300万円となる。
これは計算方法を示す仮定であり,300万円なら少額として弁済できるという基準ではない。
少額性は事業者の規模,手続コスト及び資金繰り等によって判断され,手続の円滑な進行と事業再生に支障を及ぼさないことについて指定確認調査機関の確認が必要である(規則11条3項4号,Q83・Q86)。

設備の評価額が変われば保全部分と非保全部分も変わるため,契約一覧に評価資料と支払継続による資金繰りの負担を対応させる必要がある。
会社全体の書類収集と協議の順序は,早期事業再生法の施行前準備―必要書類・資金繰り・金融機関との協議(AI作成)を参照されたい。

2 会社とリース会社で対応方針を共有する

例外弁済を予定している場合,確認や一時停止要請の通知の時期に合わせ,事業者から対象債権者に対応方針を説明することが,理解と手続の円滑な進行につながる(Q87)。
支払方法,評価資料,確認の時期及び契約上の設備利用条件を,指定確認調査機関も交えて整理することが重要である。

会社の借入れに経営者保証が付いている場合は,リース料とは別に保証債務の整理も検討する必要がある。
この点は,早期事業再生法で経営者保証はどうなる?―保証債務が残る理由とガイドラインによる一体整理(AI作成)で説明する。

第7 根拠資料

1 法令と資産評定基準

早期事業再生法(令和7年法律第67号)(https://laws.e-gov.go.jp/law/507AC0000000067)2条・6条・19条,施行規則(令和8年経済産業省令第58号)(https://laws.e-gov.go.jp/law/508M60000400058)3条・5条・11条を参照した。
いずれも令和8年12月11日施行版を対象とする。
資産評定基準(令和8年経済産業省告示第79号)(https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/jigyosaisei/file/soukijugyousaiseihou_sekoukisoku_15-5shisanhyouteikijun.pdf)12号・13号も参照した。

2 経済産業省の解説

経済産業省Q&A(令和8年6月版)(https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/jigyosaisei/file/soukijugyousaiseihou_QA.pdf)Q7(PDF14頁),Q15(PDF18〜19頁),Q31(PDF26頁),Q78〜Q79(PDF47〜48頁),Q83〜Q87(PDF50〜52頁)を参照した。
施行日は,金融庁の令和8年7月9日公表資料(https://www.fsa.go.jp/news/r8/ginkou/20260709/20260709.html)でも確認できる。