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被害回復給付金とは―没収・追徴された犯罪被害財産の支給申請,期限と被害回復分配金との違い(AI作成)

第1 被害回復給付金は,検察官が行う別の申請手続である

被害回復給付金は,犯罪被害財産の没収・追徴によって得られた資金や,外国から譲与された犯罪被害財産等を,法律に定める手続によって被害者等へ支給する制度である。
銀行口座の残存資金から支払われる「被害回復分配金」と名称が似ているが,原資,手続を行う機関及び申請先が異なる。
警察への被害届,銀行への被害申告又は被害回復分配金の申請だけで,被害回復給付金の申請まで済むわけではない。

本記事では,令和8年10月14日時点の施行中の「犯罪被害財産等による被害回復給付金の支給に関する法律」と施行規則を基に,国内の犯罪被害財産を原資とする通常の支給手続を中心に説明する。
外国から譲与された財産にも同法の別の手続があるため,実際の公告がどの手続についてのものかを確認する必要がある。

詐欺送金の直後には,まず被害の拡大を止め,金融機関と警察に連絡する。
その段階の対応は,詐欺で送金してしまった直後の対応―組戻し・口座凍結・被害回復分配金・銀行補償の違い(AI作成)で整理している。
被害回復給付金については,これとは別に,検察庁の公告,支給対象の犯罪行為及び申請期限を確認する。

第2 被害回復分配金との違い

確認事項被害回復給付金被害回復分配金
主な原資犯罪被害財産の没収・追徴によって得られた資金等振り込め詐欺救済法の手続により消滅した預金等債権に相当する資金
手続・申請先公告に記載された検察官・検察庁対象口座の金融機関
期限の確認支給手続開始の公告に記載された申請期間金融機関・預金保険機構の公告に記載された申請期間
全額回復の保証原資と認められた被害額等によって支給額が定まり,全額回復が保証されるものではない残存資金等に左右され,全額回復が保証されるものではない

被害回復分配金は,金融庁の制度案内及び対象口座の公告により確認する。
同じ被害について複数の回収手続が進むこともあるが,既に補塡・賠償を受けた金額は,被害回復給付金の被害額の認定に関わる。
銀行からの支払,犯人からの弁償及び他の回収額を記録し,申請時と申請後の報告に反映させる必要がある。

第3 誰が申請できるか,対象となる被害は何か

1 支給対象の犯罪行為による財産被害を確認する

国内の犯罪被害財産支給手続では,支給対象犯罪行為によって財産を失った被害者と,その一般承継人が基本的な支給対象である(同法3条)。
被害者には法人も含まれる。
申請する会社では,送金した名義だけでなく,誰の財産が失われたのか,申請人の法人名と代表者,代理人の権限及び被害を示す資料を整理する。

逮捕,起訴又は有罪判決があったことだけで,すべての被害について給付金が支払われるわけではない。
検察官が法律に従って定めた「支給対象犯罪行為の範囲」に,自分の被害が含まれているかを公告等で確認する(同法5条・7条)。
支給手続が開始されるかどうかについても,資金の保管や手続に要する費用等に関する法律上の条件がある(同法6条)。

2 既に回復した被害と除外事由を確認する

損害の全部について,被害者又はその一般承継人以外の者から補塡又は賠償を受けた者は,支給対象から除かれる。
また,犯罪への加功,不正な利益を得る目的又は不法な原因による財産の提供など,支給することが社会通念上適切でない場合にも除外事由がある(同法4条)。
一部の回収があった場合は,直ちに申請できなくなるという意味ではなく,認定される犯罪被害額から控除される金額を確認することになる(同法10条)。

第4 公告と申請期限を先に確認する

1 通知が来ても,申請は別に必要である

支給手続が開始されると,検察官は官報に,手続の開始,担当する検察官,支給対象犯罪行為の範囲,給付資金及び申請期間等を公告する(同法7条)。
検察庁の被害回復給付金の案内・公告も確認し,公告に記載された担当検察庁へ問い合わせる。

検察官は,知れている被害者等に対して所定の通知も行うが,通知を受けただけで受給資格が認められたり,支払われたりするわけではない。
通知に添付された書類を確認し,期間内に申請する必要がある。
通知を受けていない場合も,自分の被害が公告された対象範囲に含まれる可能性があれば,担当検察庁へ確認する。

2 「被害に遭った日から30日」ではない

申請期間は,手続開始の公告があった日の翌日から起算して30日以上の期間として定められる(同法7条2項)。
実際の締切日は個別の公告で確認する。
被害日から一律30日,通知を読んだ日から一律30日,又はいつでも申請できる制度として扱ってはならない。

通常の申請は,公告された申請期間内に行う必要があり,期間を過ぎた申請は却下事由になる(同法9条・11条)。
資料不足があるときも,締切前に担当検察庁へ連絡し,提出方法と補足資料の扱いを確認する。
郵送する場合は,発送日だけで期限内と判断せず,到達の扱いと必要な日程を担当窓口に確認する。

第5 申請書と証拠をどのように準備するか

申請書には,申請人に関する事項,支給対象犯罪行為により被害を受けたこと,失った財産の価額,既に補塡・賠償を受けた額等を記載し,必要な資料を添える(同法9条,施行規則)。
現在の様式は,法務省の申請に関するQ&Aから案内されている。
実際の提出には,担当検察庁の案内と現行の様式を用いる。

準備する資料は,①本人・法人を確認する資料,②被害の経緯を示すメール,契約書,広告等,③送金日・金額・相手先を示す通帳や振込明細,④既に回収した額の明細,⑤相続又は代理権を示す資料である。
本人確認資料は,申請時に有効で,現住所等との一致を確認できるものを準備し,必要な補足資料を担当検察庁に確認する。

弁護士へ依頼する場合も,送金の一覧と被害の経緯を作り,証拠の原本又は保存データを保持する。
被害者が複数いる案件では,被害者ごとの送金と回収額を分け,名義だけで合算しない。
これらの整理は,被害者と支給対象犯罪行為との関係及び被害額を説明するための実務上の準備である。

法定代理人による場合を除き,申請等を代理できる者は弁護士,弁護士法人等の法律で定める者に限られる(同法9条3項)。
税理士に送金記録・帳簿の整理を依頼することと,この支給手続の申請代理を依頼することは区別する。
提出方法は,法務省Q&Aで持参又は郵送が案内されており,ファックス又は電子メールは受け付けないとされている(Q12)。

第6 被害者が死亡した場合の申請と届出

被害者の相続人等が申請する場合は,一般承継を示す資料を添える。
通常の申請期間のほか,期間内に申請した被害者が,受給資格等の裁定が確定する前に死亡した場合には,その一般承継人は,申請期間を過ぎても承継の日から60日以内に申請できる特則がある(同法9条2項)。
この特則は,死亡した被害者が期間内に申請していたこと等を前提とするため,すべての相続案件で締切が60日延びるわけではない。

受給資格等の裁定が確定した後に死亡した場合は,未支給の給付金について,承継の日から60日以内に届出をする手続になる(同法17条)。
申請前,裁定確定前又は確定後のどの段階で相続が生じたかを確認し,申請と届出を取り違えない。
戸籍等の必要書類と期限は,法務省Q&A13・14及び担当検察庁の案内で確認する。

第7 いくら支払われるか,追加支給はあるか

検察官は,受給資格の有無と犯罪被害額を裁定し,理由を付した裁定書の謄本を送達する(同法10条・12条)。
支給額は,認められた犯罪被害額を上限とする。
給付資金から被害回復事務管理人の報酬と手続費用を控除した額が,対象者全員の犯罪被害額の合計に足りない場合は,各人の犯罪被害額に応じて按分される(同法14条)。

例えば,支給に使える資金が100万円,認められた犯罪被害額がAに100万円,Bに300万円だけであると仮定すれば,原則的な按分額はAが25万円,Bが75万円となる。
この例の100万円は,報酬・手続費用を控除した後の額であり,実際には認定額,控除額及び端数処理を確認する必要がある。

後から追加の給付資金が保管された場合は,所定の条件の下で追加支給が行われることがある(同法16条)。
他方,申請期間を逃した者についての特別支給手続は,残余の資金等の法律上の条件を前提とする別の手続であり,必ず行われる期限後の救済ではない(同法18条・19条)。
将来の追加支給や特別支給を当てにして,当初の申請を遅らせてはならない。

第8 給付金を受けると,損害賠償請求権はどうなるか

給付金が支給された場合,支給対象犯罪行為に係る損害賠償請求権その他の請求権は,受け取った額の限度で消滅する(同法29条)。
一部の給付を受けただけで,残りの損害についての請求権まで当然に全部消滅するという意味ではない。
民事訴訟,示談又は強制執行を並行して行うときは,各手続で実際に回収した金額を照合し,重複して請求・受領しないように管理する。

また,受給資格の申請期限と,支給決定後に給付金を受け取るための権利行使の期間は別である。
通常の犯罪被害財産支給手続では,同法14条3項等の公告があった時から6か月間行使しないと,支給を受ける権利が消滅する(同法31条)。
資格が認められた後も,支給の公告と受取りの案内を確認する必要がある。

第9 裁定などに不服がある場合

1 検察庁の長への審査申立て

受給資格の有無や犯罪被害額の裁定,支給対象犯罪行為の範囲を定める処分等に不服がある場合には,その処分等をした検察官が所属する検察庁の長へ審査の申立てをする制度がある(同法40条)。
裁定については裁定書の謄本が送達された日の翌日から,対象範囲を定める処分等については公告日の翌日から,原則として30日以内に申し立てる。
正当な理由による期間経過後の特則もあるが,通常の期限内に手続を進めることが重要である。

法律に従った按分の結果として実際の支給額が少ないというだけでは,その金額自体について審査を求められるわけではない。
受給資格,被害額,対象範囲又は報酬の決定など,どの判断に異議があるのかを区別する(法務省Q&A19・20)。
罰金や訴訟費用の執行についての刑事訴訟法502条の異議とは,対象と申立先が異なる。

2 取消訴訟の期限にも特則がある

同法40条1項各号の処分等についての取消訴訟は,原則として審査申立てに対する裁決を経た後に提起する(同法46条)。
その取消訴訟等は,同法47条により,担当検察庁の所在地を管轄する地方裁判所の専属管轄となり,裁決書謄本の送達を受けた日から30日を経過すると提起できないという特則がある。
この30日は不変期間であるため,一般的な行政訴訟の期限をそのまま当てはめない。

審査申立て後も裁決がない場合や緊急の必要がある場合には,裁決を経ることを要しない例外が問題となる。
処分等の内容,送達・公告の日付及び緊急性を保存し,期限が迫る前に弁護士へ相談する。

第10 出典と関連記事

制度と期限の根拠は,犯罪被害財産等による被害回復給付金の支給に関する法律3~19条・29条・31条・40条・46条・47条及び同法施行規則である。
申請の案内は,法務省制度の概要Q&A,申請・届出のQ&A,不服申立てのQ&A及び検察庁の制度案内・公告を参照した。

罰金・追徴・訴訟費用の徴収と執行異議は,刑事事件の裁判の執行―拘禁刑・財産刑・労役場留置・執行異議で説明している。
銀行への初動と被害回復分配金は,詐欺で送金してしまった直後の対応も参照されたい。