第1 会派への加入は任意である
弁護士会の会派に入るかどうかは,会派で得たいものと,費用・時間の負担を確認して判断する問題である。
弁護士会への所属と,会派への加入は別である。
大阪弁護士会の企業内弁護士向けFAQのQ23は,会派への入会が任意であると説明している。
その上で,交友関係の広がりや,弁護士会関係の情報を得やすくなることを,加入者が感じるメリットとして紹介している。
これは大阪の企業内弁護士に向けた説明であり,全国の加入率や,全ての弁護士が同じ利益を得ることを示す統計ではない。
会派の名称や東京三会・大阪・愛知の構成については,弁護士会の会派に関する記事を参照してほしい。
本記事では,加入を検討する際の確認事項と,加入しない場合の交流・相談の機会を整理する。
第2 会派に入るメリットをどう考えるか
1 事務所や世代を超えた交流と情報交換
会派は,同じ事務所の弁護士だけでなく,異なる事務所や世代の弁護士と交流する機会になり得る。
東京弁護士会のインハウス向けFAQも,会派を任意団体と説明し,業務上の協力,悩み事の相談,研修及び親睦を通じた交流を紹介している。
相談できる先輩や実務の情報交換相手を求める場合は,会員数だけでなく,実際の研修日程や交流の方法を見て判断するのがよい。
人脈ができることと,仕事の紹介や収入の増加が保証されることは別である。
2 研鑽,政策議論及び会務への関与
第一東京弁護士会全期会の規約は,第2条で親睦・研鑽と弁護士会の民主的運営等を目的とし,第3条で司法制度・会務・弁護士業務の研究や,人事候補者の推薦等を事業としている。
大阪の法友倶楽部の紹介にも,研修,政策の検討及び親睦等の活動が掲げられている。
実務の研修に参加したいのか,政策を議論したいのか,会務に関わりたいのかによって,確認すべき活動は異なる。
会派からの候補者推薦と,日弁連又は弁護士会の正式な選任手続も区別して考える必要がある。
日弁連の会長・副会長の選任方法については,日弁連の会長・副会長に関する記事を参照してほしい。
第3 会費と時間の負担は加入前に確認する
1 会費の納入義務と金額を区別する
第一東京弁護士会全期会の規約第5条は所定の年会費の納入を義務付け,第14条は年会費の額の決定・改定を総会の審議事項としている。
同規約の掲載本文だけでは,現在の具体的な年会費額までは分からない。
会派の会費は,弁護士会・日弁連の会費と混同せず,加入を検討する会派に確認する必要がある。
年会費のほか,入会金,行事ごとの参加費,減額・免除,年度途中の加入又は退会の精算の有無も確認項目になる。
これらの費用や制度が全会派に存在するという意味ではない。
2 役割を引き受ける場合の負担を確かめる
親睦行事に参加する場合と,幹事等の役割を引き受ける場合では,必要な時間も異なる。
全期会の規約第9条は,幹事長,常任幹事,事務局等の職務を定めているが,通常の会員が全て同じ職務を負うという規定ではない。
行事への参加が任意か,役職を依頼された場合に何を担当するか,仕事や家庭の事情に合わせて参加できるかを,具体的に聞いておくのがよい。
会派の一般的な紹介文だけから,実際の拘束時間や出席の必要性を決め付けることはできない。
第4 入会・退会の手続は会派ごとに異なる
1 第一東京弁護士会全期会と東京弁護士会法友会の例
全期会の規約第4条は,第一東京弁護士会の弁護士会員で,入会申込みをした者を会員としている。
第6条は,第一東京弁護士会の会員でなくなった場合や,幹事長に書面で退会意思を表明した場合に,会員資格を失うと定めている。
これに対し,東京弁護士会法友会のFAQは,法友会を構成する部のいずれかに入り,その幹事長の承認を得る方法を案内している。
退会は所属する部の幹事長に連絡し,その部から退会すると法友会全体及び法友全期会からも退会となると説明している。
同FAQでいう「単位会」は,法友会内部の部を指す用語であり,東京弁護士会等の単位弁護士会と混同しないようにしたい。
このように,申込先,承認の要否,書面の要否及び関連する組織の扱いは,会派ごとの規約・案内で確認する必要がある。
2 加入を決める前の確認表
| 確認事項 | 確認する内容 | 判断との関係 |
|---|---|---|
| 加入資格・手続 | 所属弁護士会,申込先,承認の要否 | 自分が入れる組織と窓口を確認する |
| 会費 | 年会費,その他の費用,減額等の有無 | 年間の支出を把握する |
| 研修・交流 | 最近の活動実績,日程,参加方法 | 求める交流や研鑽の機会と合うかを見る |
| 時間・役割 | 行事参加の扱い,役職を引き受ける場合の職務 | 継続できる参加の仕方を考える |
| 若手組織 | 対象者,加入との連動,独自の活動 | 親会派と若手組織の関係を確認する |
| 退会 | 連絡先,書面,効力発生,会費精算 | 将来の変更手続を把握する |
この表は加入先に質問するための整理であり,全国の会派に共通する制度を示すものではない。
第5 無所属でも交流や相談の機会を探せる
会派に入らない場合も,所属弁護士会の研修,委員会,相談窓口等の利用条件を確認して,交流や情報収集の機会を探すことができる。
東京弁護士会のインハウス向けFAQは,会派の活動に加え,新入会員のクラス別研修,会員サポート窓口及び若手相談室を紹介している。
大阪弁護士会の企業内弁護士向けFAQのQ24は,他社の企業内弁護士との情報交換の場として,弁護士会の委員会・部会や日本組織内弁護士協会を紹介している。
これらにはそれぞれ対象者や参加条件があり,全ての会員が無条件に利用できるという意味ではない。
会派加入は交流の一つの選択肢である。
入る場合も,入らない場合も,自分が必要とする相談先・研修・会務情報をどこで得るかを具体的に考えるのがよい。
第6 よくある疑問
1 事務所の先輩と同じ会派に入るべきか
勧誘があっても,会派の活動と自分の目的が合うかを確認して判断するのがよい。
紹介者の説明だけでなく,規約,最近の行事及び会費の案内を見ておくと,入会後の認識の違いを減らしやすい。
2 無所属だと必ず不利益を受けるのか
会派への加入が任意であることから,無所属という選択もできる。
ただし,任意加入という説明だけでは,個々の研修・会務人事・情報入手の条件まで一律に判断できない。
具体的な制度については,担当部署の案内や規程を確認する必要がある。
3 会派に入ると選挙活動への参加も必要になるのか
全期会の規約には候補者推薦や選挙対策に関する事項があるが,それだけで全会員に一律の選挙活動義務があるとはいえない。
参加の扱いは加入先に確認し,実際に選挙活動を行う場合は,日弁連会長選挙の選挙運動規制に関する記事と,対象となる選挙の最新の規程・案内も確認してほしい。
第7 出典
1 大阪弁護士会「大阪で企業内弁護士の就職が決まっている方へ」Q23・Q24
2 東京弁護士会「インハウス向けFAQ」
3 第一東京弁護士会全期会「規約」第2条~第6条,第9条,第14条,第19条及び第38条
4 東京弁護士会法友会「よくあるご質問」
5 大阪弁護士会法友倶楽部「法友倶楽部とは」
公開資料の確認日:令和8年10月13日。
個別会派の規定を全国共通の制度として扱わず,具体的な費用・参加条件は加入を検討する会派の最新案内で確認する必要がある。