第1 結論――発効日に変わったことと続いたこと
昭和27年(1952年)4月28日,日本国との平和条約(サンフランシスコ平和条約)が発効しました。同日に日本は主権を回復し,占領は終了しました。他方で,米軍の日本駐留や沖縄等に対する米国の施政は,平和条約の発効だけで終わったわけではありません。これらは条約の別の規定や旧日米安全保障条約と分けて読む必要があります。ここでいう「占領終了」は,国立公文書館の解説に従った歴史的な整理です。
| 論点 | 発効前 | 昭和27年4月28日の発効後 |
|---|---|---|
| 戦争状態・主権 | 連合国による占領の下にあった | 条約第1条により,日本と当該連合国との戦争状態の終了及び日本国民の完全な主権の承認が定められた |
| 占領軍 | 占領軍が日本に駐留していた | 条約第6条に撤収義務が置かれ,国立公文書館は発効をもって占領が終わったと説明している |
| 米軍駐留 | 占領に伴う駐留 | 条約第6条の留保と,同日発効した旧日米安全保障条約に基づく駐留が続いた |
| 沖縄等 | 米国の統治下にあった | 条約第3条により,米国の施政が続いた。日本の主権の承認と施政権の帰属は別の問題である |
以下では,条文に書かれたことと,発効の歴史的な帰結を区別します。条約の全27条の構成は,サンフランシスコ平和条約の条文別解説を参照してください。
第2 署名日と発効日は違う
国立公文書館の解説によれば,平和条約は昭和26年(1951年)9月8日にサンフランシスコで署名され,昭和27年4月28日に発効しました。署名した日に占領が終わったわけではありません。
また,条約第1条(a)は,日本国と「各連合国」との戦争状態が,この条約が日本国と当該連合国との間で効力を生ずる日に終了すると定めています。したがって,4月28日という日付を,全ての国との戦争状態の一律の終了日と説明することはできません。署名国,非署名国及び各国との発効関係は,署名国・批准国・不参加国の記事で分けて整理しています。
第3 主権回復と占領終了
平和条約原文の第1条(a)は戦争状態の終了を,同条(b)は連合国による日本国民の完全な主権の承認を定めます。第6条(a)本文は,連合国の占領軍が,日本国との関係で条約が効力を生じた後,できる限り速やかに日本国から撤退することを定めています。
条約の一つの条文に「昭和27年4月28日に占領が終了する」との文言があるわけではありません。ただし,国立公文書館は,平和条約の発効により日本の占領が終わり,主権を回復したと説明しています。条文の文言と公的な歴史解説を,このように区別して読むのが適切です。占領終了日をめぐる説明は,日本の占領はいつ終わったのかでも扱っています。
第4 占領終了後の米軍駐留
占領の終了は,米軍が同日に全て撤退したことを意味しません。平和条約第6条(a)は占領軍の撤収を定める一方,二国間又は多数国間の協定に基づく外国軍隊の駐留を妨げないとしています。
外務省の条約資料によれば,旧日米安全保障条約は平和条約と同じ昭和26年9月8日に署名され,昭和27年4月28日に効力が発生しました。その第1条は,米国の陸海空軍を日本国内及びその付近に配備する権利を定めています。平和条約と旧日米安全保障条約は別の条約であり,役割も異なります。両者の対比は,平和条約と旧日米安全保障条約の違いを参照してください。
第5 沖縄・奄美・小笠原の施政
平和条約第3条は,沖縄を含む琉球諸島,奄美群島及び小笠原諸島などについて,米国が一定の施政上の権限を行使する仕組みを定めました。平和条約の発効により日本の主権が承認されても,これらの地域に対する米国の施政が直ちに終わったわけではありません。
この規定を読む際は,主権と施政権を区別する必要があります。発効後の施政と返還の経過については,沖縄・奄美・小笠原の軍政と返還を参照してください。本記事は,後年の各返還の日付や個々の地域の法的評価を,平和条約第3条だけから導くものではありません。
第6 領土・賠償・請求権は別に読む
平和条約には,領土に関する第2条,賠償に関する第14条,請求権等に関する第19条などもあります。これらは,昭和27年4月28日を境に生じた法的変化を考える上で重要ですが,主権回復や占領終了と同じ内容ではありません。特に,領土条項から現在の個別の領有権問題の結論を直ちに引き出したり,賠償・請求権条項だけで個人の具体的な請求の可否を断定したりすることは避けるべきです。
各条文の位置付けは,全27条の法的構造を参照してください。
第7 読み分けの要点
昭和27年4月28日は,日本の主権回復と占領終了を説明する基準日です。しかし,「署名」と「発効」,「占領軍」と「協定に基づく駐留軍」,「主権」と「施政権」,「日本との条約発効」と「各連合国との条約発効」を混同すると,この日付の意味を誤ります。個別の問題では,対応する条文と相手国との発効関係を確認する必要があります。
第8 出典
1 国立公文書館「日本国との平和条約」原本・解説(条約第1条,第2条,第3条,第6条,第14条,第19条,第23条を確認)。
2 国立公文書館「日本国との平和条約の調印」(署名日,発効日,占領終了及び主権回復の説明)。
3 国立公文書館「日米安全保障条約の発効」(旧日米安全保障条約の発効日)。
4 外務省「旧日米安全保障条約」(署名・発効及び条約第1条)。
5 国立国会図書館「日本国との平和条約」(法令沿革)。