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平成9年度最高裁民事破棄判決の実情―72件から学ぶ理由不備・経験則違反・主文設計の実務(AI作成)

平成9年中の最高裁民事破棄判決72件を,原審がどのような理由で破棄されたかという観点から整理する。個々の結論を並べるのではなく,理由不備・理由齟齬の読み分け,経験則違反,請求・抗弁と主文の対応及び旧法から現行法への接続という,現在の事件処理に再利用できる実務原則を抽出する。

第1 本記事の対象と資料の位置付け

入口とした資料は,野山宏「平成9年度最高裁民事破棄判決の実情(1)~(6・完)」(判例時報1636号,1638号,1639号,1641号,1642号及び1644号)の全6回・合計109頁である。論文名は「年度」であるが,対象は平成9年1月から12月までに言い渡された民事・行政・労働事件である。

同論文は,72件の所在,原審判断及び破棄理由を把握するための有力な二次資料である。しかし,判決そのものではない。本記事では,論文から把握した年度全体の件数・類型と,裁判所ウェブサイトの判決情報・本文で確認した3事件とを区別する。

72件はすべて旧民事訴訟法が適用された事件である。また,旧破産法その他の改正前法令を前提とする事件も含まれる。判決から思考方法を学ぶことと,当時の条文番号又は制度を現行事件へ直接適用することは別である。

第2 平成9年の破棄判決の概況

年次論文の集計によれば,平成9年中に判決で終結した民事事件は2973件,破棄判決は72件であり,破棄率は2.42%であった。72件の内訳は破棄差戻し35件,破棄自判37件である。職権破棄は5件,上告理由に応答した破棄は67件であり,民集登載28件,裁判集民事登載17件,いずれにも登載されなかったもの27件とされる。

この2.42%は,個別事件の「最高裁で勝てる確率」ではない。分母には事件類型,主張された上告理由及び審理状況の異なる事件が含まれる。破棄率は年度全体の概況であり,具体的事件では原判決の法令解釈,手続,事実認定の推論及び主文を個別に監査する必要がある。

第3 72件から学ぶ5つの実務原則

1 「理由不備・理由齟齬」の二つの用法を分ける

最高裁判決又は年次論文で用いられる「理由不備」「理由齟齬」は,常に旧民事訴訟法395条6号の絶対的上告理由を意味するわけではない。実体法の解釈適用を誤った結果,原判決の理由付けが不十分又は整合しないという慣用的な表現もある。

年次論文が同号の絶対的上告理由として整理したものは,第6事件から第8事件までの3件である。残る事件の判決文に「理由不備」等の文言があっても,その一語だけで絶対的上告理由と評価してはならない。①主文を導く理由が欠けるのか,②理由同士又は理由と主文が論理的に両立しないのか,③単なる法令解釈・事実認定の誤りに伴う表現なのかを分ける必要がある。

2 経験則違反は推論の飛躍を特定する

医療,労災,転落事故及び契約書の信用性等を扱う事件では,別の証拠評価も可能であると述べるだけでは足りない。原審の推論を,基礎事実,中間推認及び最終認定に分け,どの矢印が経験則又は専門知見に反するのかを示す。

専門家意見については,結論又は肩書だけでなく,前提事実,使用資料,競合原因,医学的・技術的な推論過程及び反対資料への応答を確認する。記録に検査所見がない場合も,検査・問診が実施されなかった結果である可能性を点検し,記録の不存在を直ちに症状の不存在と同一視しない。

3 請求・抗弁・主文の対応表を作る

平成9年の破棄事件には,複数請求の一部について理由を示さなかったもの,支払済みと認定しながら請求を認容したもの,価額弁償の抗弁と主文の対応が問題となったもの,相殺に供する自働債権の特定又は充当順序を欠いたものが含まれる。

最終準備書面と判決点検では,請求ごとの訴訟物,請求原因,抗弁,再抗弁,証拠,認定,金額計算及び主文を一表にする。相殺,既払金,価額弁償,遅延損害金,一部認容・棄却及び仮執行宣言まで照合することにより,実体判断が妥当でも生じ得る主文設計の不整合を発見しやすくなる。

4 形式要件の後に制度目的と具体的事情を見る

借地権の対抗力,保険約款,ゴルフ会員権及び契約解釈等では,登記・登録又は契約文言の形式確認が出発点となる。しかし,そこで検討を止めず,当事者の認識,取引経緯,権利者側の必要性,相手方の信頼及び制度目的を具体的事実に落とす必要がある。

形式要件を軽視するのではなく,形式要件を確認した後に,権利濫用,信義則,契約解釈その他の規範が働く具体的事情を主張立証するという順序が重要である。

5 古い判例は規範と旧制度を分離する

平成9年判例を現在の事件へ用いるときは,①現在も有用な思考方法,②改正後も維持される判例規範,③旧制度に固有の条文・手続という三層に分ける。現行法,経過措置及び後続判例を確認せず,当時の条文番号又は結論をそのまま引用してはならない。

第4 裁判所公式本文で確認した3判決

  • 最高裁平成9年2月25日第三小法廷判決(平成7年(オ)第1205号,民集51巻2号502頁):複数薬剤のうち一つを唯一の起因剤とし,発症日を限定した原審認定の経験則違反並びに必要な検査・治療を速やかに受けられるようにする開業医の配慮義務を扱う。
  • 最高裁平成9年9月9日第三小法廷判決(平成6年(オ)第978号,民集51巻8号3804頁):一般読者の普通の注意と読み方による事実摘示と意見・論評の区別,前提事実の真実性・相当性及び広く報道された疑惑の扱いを示す。
  • 最高裁平成9年12月18日第一小法廷判決(平成7年(オ)第863号,民集51巻10号4210頁):支払停止後の転売契約解除,動産取戻し及び売主への代物弁済を一連の行為として捉え,旧破産法72条4号による否認の対象とした。

この3事件は裁判所公式の裁判例ページ・判決全文に加え,判例秘書の認証済み判決全文でも照合した。残る69件は,本記事では年次論文による論点整理までであり,個別の判決全文を確認済みとは表示しない。

第5 上告・判決点検での使い方

年次論文は,類似する破棄類型を探すための論点地図として使う。具体的事件では,手続,実体法,事実認定及び主文設計を分け,原判決のどこに結論へ影響する違法があるかを特定する。

理由不備・理由齟齬を主張する場合は,判決文のどの部分からどの主文が論理的に導けないかを示す。経験則違反を主張する場合は,原審が採用した経験則又は専門的前提,客観資料との矛盾,検討されなかった競合原因・反対意見及び違法が主文へ及ぼす影響を一続きに記載する。

破棄差戻しは実体法上の最終勝訴を常に意味しない。最高裁が確定した規範,原審の誤り及び差戻審に残る事実・抗弁・損害を区別し,追加立証を準備する。

第6 一次資料・判例秘書・二次資料の確認状態

件数,年度全体の類型及び絶対的上告理由3件という整理は,判例時報掲載の年次論文を通読して確認した二次資料ベースである。OCRは検索補助に用いたが,日付,事件番号,条文番号又は引用文言の最終根拠にはしていない。

第4の3事件は裁判所公式本文及び判例秘書全文を確認した。第70事件は,年次論文上は最高裁平成9年12月18日判決・平成7年(オ)第2148号であるが,判例秘書の事件番号検索では0件であった。これは判決の不存在又は未収録を意味せず,今回の検索条件では照合できなかったという意味である。

その他68件も年次論文から論点を索引化したが,個別判決全文の照合は未了である。したがって,具体的事件へ引用する前に,裁判所判例検索,公式判例集又は認証判例データベースで当該判決本文を確認する必要がある。

第7 出典・関連記事

① 野山宏「平成9年度最高裁民事破棄判決の実情(1)~(6・完)」判例時報1636号,1638号,1639号,1641号,1642号及び1644号
② 最高裁平成9年2月25日判決全文
③ 最高裁平成9年9月9日判決全文
④ 最高裁平成9年12月18日判決全文
⑤ 薬剤性疾患の原因薬剤を一つに特定できない場合の医療過誤訴訟―最高裁平成9年2月25日判決と因果関係・経験則違反(AI作成)
⑥ 民事判決の理由不備・理由の食違い・判断遺脱-上告理由と再審事由の見分け方(AI作成)
⑦ 上告審に関するメモ書き(AIリライト)
⑧ 最高裁民事破棄判決等の実情(平成元年度~令和2年度)―年度別記事と判例時報の掲載号の一覧(AI作成)