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SNS投稿後のログイン通信と発信者情報開示―最も近い1回と残り7回を分けた最高裁令和6年12月23日判決(AI作成)

SNS上の投稿について発信者を特定するため,投稿後のログイン通信に係る情報の開示を求める場合,複数のログイン通信がすべて開示対象になるとは限りません。

最高裁令和6年12月23日第二小法廷判決は,8回のログイン通信のうち,投稿と最も時間的に近接する1回について開示を認める一方,その余の7回については,追加して開示を求める必要性を基礎付ける事情がないとして開示を否定しました。実務では,投稿との関連性と,そのログイン情報を取得する必要性とを,通信ごとに整理する必要があります。

第1 最高裁令和6年12月23日判決の結論

最高裁令和6年12月23日第二小法廷判決(令和5年(受)第1583号,民集78巻6号1445頁)は,ログイン通信が「侵害情報の送信と相当の関連性を有するもの」に当たるかについて,次の考え方を示しました。

  • 個々のログイン通信と侵害情報の送信との関連性の程度を検討する。
  • そのログイン通信に係る情報の開示を求める必要性も検討する。
  • 時間的近接性以外に関連性を示す事情が明らかでない場合,少なくとも投稿と最も時間的に近接するログイン通信が対象となる。
  • それ以外のログイン通信は,あえて追加して開示を求める必要性を基礎付ける事情がある場合に対象となり得る。

したがって,「同じアカウントへのログインである」というだけで,保存されている全ログイン通信の開示が認められるわけではありません。

第2 事案と通信の時系列

本件では,Instagram上のアカウントに,被害者を被写体とする写真を無断掲載し,人格的利益を侵害する投稿がされました。アカウント運営者はログイン時のIPアドレスと通信日時を記録していましたが,投稿時の通信に係る情報を記録していませんでした。

判決が前提とした主な時系列は次のとおりです。

時期出来事
令和3年4月29日投稿①~④
同日及び同年5月1日同じ経由プロバイダを利用した介在ログイン。ただし,経由プロバイダは保有記録から対応する通信を特定できなかった
同年5月20日~6月13日開示請求の対象となった8回のログイン通信
投稿の21日後8回の中で投稿①~④に最も近いログイン②

投稿⑤については投稿日時が不明であり,8回のログイン通信のどれが最も近いかも明らかではありませんでした。

第3 改正法が施行前の投稿・通信にも適用された理由

本件各投稿及びログイン通信は,令和3年改正法が施行された令和4年10月1日より前に行われていました。しかし,原審の口頭弁論終結時には改正法が施行済みでした。

最高裁は,施行前の投稿・通信について改正後の規定の適用を排除する経過措置が置かれていないこと,改正法が発信者情報開示請求権そのものを新設したものではなく,要件を整理したものであることを理由に,改正後法5条2項が適用されると判断しました。

以下では判決の表記に合わせて「改正後法」といいます。現在の法令は,特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律で確認できます。

第4 侵害関連通信と「相当の関連性」

投稿時のIPアドレス等が保存されていない場合,ログイン通信等に係る情報が発信者特定の手掛かりになります。しかし,ログイン通信自体には権利侵害性がありません。

最高裁は,ログイン通信の開示により,通信の時間・場所,利用機器,インターネット接続契約を締結した第三者の情報等が推知され得ることを指摘しました。開示する通信数が増えるほど,通信者等のプライバシー,表現の自由及び通信の秘密への制約も大きくなります。

このため,施行規則5条の「侵害情報の送信と相当の関連性を有するもの」という要件は,関連性だけでなく,発信者を特定するために必要な限度へ開示対象を絞る働きを持つと解されています。

第5 最も近い1回と残り7回を分けた判断

1 ログイン②

投稿①~④と8回のログイン通信との関連性を示す事情は,時間的近接性以外にはうかがわれませんでした。8回のうち投稿に最も近かったのは,投稿の21日後に行われたログイン②でした。

投稿とログイン②の間には2回の介在ログインがありましたが,経由プロバイダは自らの保有記録から対応する通信を特定できませんでした。このため,介在ログインの情報から投稿者を特定することは困難であり,ログイン②の情報開示を求める必要性が認められました。

2 ログイン①・③~⑧

その余の7回はログイン②より投稿との時間的近接性が低く,経由プロバイダがログイン②の発信者情報を保有していました。さらに7回分を開示させる必要性を基礎付ける事情もありませんでした。

そこで最高裁は,ログイン②については開示を認めましたが,ログイン①・③~⑧については「相当の関連性」を否定し,開示請求を棄却しました。

第6 発信者情報開示を検討する際の確認事項

投稿後のログイン通信に係る情報の開示を求める場合は,少なくとも次の事項を時系列に整理します。

  1. 侵害情報が投稿された正確な日時又は推定できる時間帯。
  2. コンテンツプロバイダが投稿時のIPアドレス等を保有しているか。
  3. 取得できた各ログイン通信の日時,IPアドレス及び利用された経由プロバイダ。
  4. 投稿と各ログイン通信との間に別のログイン通信があるか。
  5. 介在する通信について,経由プロバイダの通信記録から契約者を特定できるか。
  6. 最も近いログイン通信だけでは発信者を特定できない事情があるか。
  7. 追加のログイン通信を開示させる必要性を基礎付ける具体的事情があるか。

ログ保存期間は事業者や情報の種類によって異なります。保存期間を一般化せず,各事業者への照会,証拠保全の必要性及び手続選択を個別に検討する必要があります。

第7 判決の射程と注意点

本判決は,「常に投稿に最も近い1回だけが開示される」という固定的なルールを示したものではありません。時間的近接性以外に関連性を示す事情がある場合,又は最も近い通信だけでは発信者を特定できず,他の通信を取得する必要性が具体的に示される場合には,複数のログイン通信が開示対象となる余地があります。

反対に,投稿時期が不明で最も近い通信を特定できず,他に関連性を示す事情もない場合には,同一アカウントへのログインであることだけから開示対象になるとは限りません。申立て又は訴訟では,通信ごとに関連性と必要性を説明することが重要です。

本判決を含む令和6年の最高裁民事破棄判決19件・破棄決定2件の一覧は,「令和6年度最高裁民事破棄判決等の実情-19判決・2決定の一覧と判旨の読み方」で整理しています。

第8 出典・参考資料

  1. 最高裁令和6年12月23日第二小法廷判決・裁判例結果詳細(令和5年(受)第1583号,民集78巻6号1445頁)。
  2. 同判決全文PDF。
  3. 特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律5条。
  4. 同法施行規則5条。
  5. 一藤哲志「令和6年度最高裁民事破棄判決等の実情」判例時報2629号。